特許第5775465号(P5775465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775465
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】帽子
(51)【国際特許分類】
   A42B 1/18 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   A42B1/18 E
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-4247(P2012-4247)
(22)【出願日】2012年1月12日
(65)【公開番号】特開2013-142212(P2013-142212A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2013年10月29日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504113190
【氏名又は名称】株式会社finetrack
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金山 洋太郎
【審査官】 山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−302506(JP,A)
【文献】 特開2002−138318(JP,A)
【文献】 特開2001−115326(JP,A)
【文献】 実開昭59−153327(JP,U)
【文献】 実開平06−021667(JP,U)
【文献】 米国特許第02410033(US,A)
【文献】 登録実用新案第3068329(JP,U)
【文献】 米国特許第05862523(US,A)
【文献】 登録実用新案第3170320(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 1/00−1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿性を有する帽子本体生地の額部にのみ設けられる生地部であって、空気層を含む透湿性層と不透湿性層とを有する生地部を有し、
前記生地部が、肌側に近い順に前記透湿性層、前記不透湿性層の順に配置され、
前記空気層が面圧縮に抗する圧縮復元性を有する、帽子。
【請求項2】
前記不透湿性層は、表面に不透湿性コーティングが形成されたポリエステル生地あるいはナイロン生地である、請求項1に記載の帽子。
【請求項3】
前記空気層が、第1表面層と第2表面層と、前記第1表面層と前記第2表面層とを繋ぐ立設構造の繊維層とで構成される請求項1または2に記載の帽子。
【請求項4】
前記生地部は、生地面方向に伸縮性を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の帽子。
【請求項5】
前記透湿性層を構成する生地と前記不透湿性層を構成する生地とが、両側端部および額下端部で縫製されて積層されている、請求項14のいずれか1項に記載の帽子。
【請求項6】
前記透湿性層と前記不透湿性層とを有する前記生地部は、帽子本体を構成する本体生地部の内部に挿入される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば防寒用の帽子に関する。より詳細には、ゴーグル、眼鏡などをその額部にかけることが可能な帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スキー、登山などでは、防寒用帽子をかぶり、両目の保護のためにゴーグルや眼鏡(サングラス)をかける。この防寒用帽子として、透湿性のニット帽が知られている。しかしこのような帽子では、ゴーグルなどを帽子額部(前頭部)にかけたときに、帽子額部を通過した湿分(汗の蒸れ、湿気(蒸気))や湿った帽子が乾燥する過程で生じる湿気(蒸気)がゴーグル内面に付着してゴーグル内面を曇らせてしまう。このようなとき、曇ったゴーグル内面を清掃する必要があった。
【0003】
また、湿気処理帽子が知られている(特許文献1)。この湿気処理帽子は、湿気移動挿入部が王冠前部の内側に備えられ、この湿気移動挿入部はニットで構成され、疎水性供水繊維を含んでいることで、着帽者の前頭部から帽子の乾燥部に向けて汗を移動させる。しかしながら、この湿気処理帽子は、汗(液体)を疎水性供水繊維で帽子の乾燥部へ移動させるものであって、帽子額部から外部へ湿気(蒸気)が出ること自体に変わりはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−97704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、帽子額部から外部へ湿気を出すことを防止し、例えばゴーグル等の内面が曇ることを防止可能な帽子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る帽子は、額部に設けられかつ透湿性層と不透湿性層とを有する生地部を有し、
前記生地部が、前記透湿性層、前記不透湿性層の順に額側に配置される。
【0007】
この構成によれば、透湿性層の湿気(蒸気)は、不透湿性層で遮られて外部へ出て行くことはない。そして、湿気(蒸気)は、透湿性層の端部方向から出て行くことになるため、額部にかけられたゴーグル面に湿気(蒸気)が到達することはない。よって、帽子額部(面方向)から外部へ湿気(蒸気)を出すことを防止し、例えばゴーグル等の内面が曇ることを好適に防止できる。
【0008】
上記発明において、帽子は、例えば防寒用、運動用に用いられ、着帽者がゴーグルや眼鏡(サングラスを含む)等をかけるときに用いられることが好ましい。
【0009】
また、上記発明において、透湿性層と不透湿性層とを有する生地部は、特に制限されない生地素材で構成される。透湿性層は、特に制限されない生地素材で構成され、帽子と同じ素材で構成されていてもよく、帽子本体を構成する本体生地部の前額部と兼用していてもよい。すなわち、帽子の本体生地を透湿性層とし、これに重ねるように不透湿性層が設けられている構造である。例えば、帽子の本体生地(二重生地構造)の内部に不透湿性層が設けられている構造(縫い付け、接着形成)や、帽子の本体生地の表表面に不透湿性層が設けられている構造(縫い付け、接着形成)などが例示される。不透湿性層は、透湿性層の生地に防水コーティングを施した層でもよく、透湿性層の生地とは別の不透湿性生地でもよい。不透湿性層は、湿気(蒸気)を実質的に通過させない生地であり、織り構造、編み構造は特に制限されない。不透湿性層は、湿気(蒸気)を実質的に通過させないフィルム製の生地であってもよい。
【0010】
また、上記発明において、前記透湿性層と不透湿性層とを有する生地部は、帽子本体を構成する本体生地部の内部に挿入されている。また、別実施形態として、前記透湿性層と不透湿性層とを有する生地部は、帽子本体を構成する本体生地部の表面に、または裏面に(額に直接に透湿性層が接するように)設けられていてもよい。
【0011】
また、上記発明において、前記透湿性層と不透湿性層とを有する生地部は、当該不透湿性層を当該透湿性層と別の生地層で挟むように構成されていてもよい。
【0012】
また、上記発明において、前記生地部または前記透湿性層は、空気層を含みかつ面圧縮に抗する圧縮復元性を有することが好ましい。この構成によれば、額部にゴーグルをかけたときに、バンド(ゴム)締め付け器具によって、ゴーグル面が額側に締め付けられても、生地部または透湿性層が面圧縮に抗して層厚み(空気層の厚み)を維持することで、ゴーグルの面圧に対しても完全に層厚みが潰れることがなく、空気層が維持されて、湿気(蒸気)の移動経路が完全に遮断されることなく、湿気(蒸気)が生地部端部から好適に放出させることができる。
【0013】
また、上記発明において、前記生地部は、生地面方向に伸縮性を有することが好ましい。この構成では、生地面方向いずれでも伸縮させることができ、帽子に取り付けた(縫製された)後でも帽子の伸縮性能を低下させることがない。前記生地部を帽子に縫製するときに、伸縮性のある糸で縫製してもよく、頭周回りの伸縮性を維持するために、上下方向の縫製や、部分的な縫製をすることが好ましい。
【0014】
また、上記発明において、前記透湿性層を構成する生地と前記不透湿性層を構成する生地とが、両側端部および額下端部で縫製されて積層されていることが好ましい。この構成では、透湿性層を構成する生地と不透湿性層を構成する生地とが額上端部以外を縫製してあり、すなわち額上端部が開放されていることで、頭頂方向へ湿気(蒸気)が移動しやすくなる。額下部(顔面部)への湿気移動が抑制され、顔面への蒸れを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明の帽子の正面視の外観図である。
図1B】本発明の帽子の側面視の外観図である。
図2A】生地部の断面図である。
図2B】生地部を説明するための模式図である。
図3】透湿性層の生地を説明するための模式図である。
図4】蒸気の移動状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態の帽子について、図面を参照しながら説明する。この帽子は、頭部の湿気(蒸気)が帽子の額部を通過しないため、額部にかけたゴーグルや眼鏡などの内面を湿気(蒸気)で曇らせることがない。図1Aは帽子1を正面視した(顔面を見た)ときの外観図である。図1Bは帽子1を側面視した(耳部から見た)ときの外観図(断面図)である。図2Aは生地部10の層構造を示す図である。帽子1の正面の額部に、透湿性層11と不透湿性層12とを有する生地部10が、帽子生地本体の内部1Aに挿入されて縫製されている。帽子1と生地部10との縫製箇所は不図示であるが、生地面方向に伸縮性を維持するように縫製されている。図2Bは生地部10の縫製箇所13を示す図である。透湿性層11と不透湿性層12とが、生地部の両側端部および額下端部(縫製箇所13)とで縫製されて積層されている。額上端部が縫製されていないため、未縫製部Aがある。図4に示すように、透湿性層11から侵入した汗の湿気(蒸気)Bが不透湿性層12の面で遮られ、未縫製部Aの隙間および生地部端部から湿気(蒸気)B´が放出される。この不透湿性層12の面で湿気(蒸気)Bが遮られ、帽子額部表面から外部へ湿気(蒸気)が放出されることはない。
【0017】
本実施形態において生地部10の一部を構成している不透湿性層12は、表面に不透湿性コーティング(防水コーティング)が形成されたポリエステル生地あるいはナイロン生地である。また、図3に示す透湿性層11は、第1表面層111と第2表面層112と、第1表面層111と第2表面層112とを繋ぎ、空気層を形成する立設構造の繊維層113とで構成されている。第1表面層111および第2表面層112は、メッシュ構造であるが、特にこれに制限されない。
【0018】
立設構造の繊維層113によって、厚み方向の面圧強度が高く(面圧強度性がある)、生地面を圧縮させてもその圧縮復元力によって厚みが元に戻る。ゴーグルの締め付け力でゴーグルと当接した位置の生地部10(透湿性層11)の厚みが薄くなるが完全に押し潰されることがなく、空気層が維持されているため、湿気(蒸気)の移動経路が完全に遮断されることはない。
【0019】
(別実施形態)
透湿性層の生地の糸は、特に制限されず、例えば、ナイロン、ポリエステル、ウレタン、コットン、レーヨン、アクリル、ウール等があげられる。また、編織方法は特に制限されず、1種以上の方法で編まれていてもよく、織られていてもよい。編み方法としては、例えば、ラッセル編み、フライス編み、天竺編み、丸編み、メッシュ編み(レース編み)等があげられる。織り方法として、例えば、平織、綾織等があげられる。生地部10のストレッチ性の向上のために、ストレッチ糸が生地構成要素の一部に用いられていてもよい。
【0020】
また、不透湿性層12の不透湿性コーティング(防水性コーティング)は、その材料が特に制限されず、コーティング方法も特に制限されない。コーティング加工のほかに、生地を浸漬(ディッピング)、スプレー塗布、プリント、転写等の加工で不透湿性層12を形成してもよい。
【0021】
また、透湿性層11と不透湿性層12とが縫製されて積層されていてもよく、他の方法、例えば、接着剤、溶着などで積層されていてもよい。生地部10は1枚生地でもよく複数生地からなる積層生地で構成されていてもよい。また、不透湿性層12が帽子1の最外表面になるように取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 帽子
10 生地部
11 透湿性層
12 不透湿性層
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4