(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775480
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】ネジ締付方法及びネジ締付装置
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
B25B23/14 630G
B25B23/14 630D
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-71448(P2012-71448)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-202705(P2013-202705A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000177128
【氏名又は名称】三洋機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】安藤 史朗
(72)【発明者】
【氏名】両田 寿
【審査官】
小川 真
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/074543(WO,A1)
【文献】
特開平08−001536(JP,A)
【文献】
特表2005−523174(JP,A)
【文献】
特開昭52−046599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
B25B 23/151
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを駆動源としてネジ部品の締付を行うネジ締付方法であって、
締付を開始し、前記ネジ部品が着座して締付トルクが立ち上がる着座点に達した後、所定の切換点に達するまで、連続的に締付トルクを付与して回転を制御する速度制御を実行し、
締付トルクの上昇変化率が所定の閾値に達したとき、前記切換点に達したと判定し、
前記切換点に達した後は、周期的に増減する締付トルクを付与して回転を制御するパルス制御を実行することを特徴とするネジ締付方法。
【請求項2】
締付を開始し、前記着座点に達するまでは、高速回転で締付を行い、前記着座点に達した後、前記切換点に達するまでは、低速回転で締付を行うことを特徴とする請求項1に記載のネジ締付方法。
【請求項3】
締付トルクが所定の着座トルクに達したとき、高速回転から低速回転に切換えることを特徴とする請求項1又は2に記載のネジ締付方法。
【請求項4】
電動モータを駆動源としてネジ部品の締付を行うネジ締付装置であって、締付トルクを検出するトルクセンサと、前記電動モータの回転を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、締付を開始し、前記ネジ部品が着座して締付トルクが立ち上がる着座点に達した後、所定の切換点に達するまで、連続的に締付トルクを付与して回転を制御する速度制御を実行し、
締付トルクの上昇変化率が所定の閾値に達したとき、前記切換点に達したと判定し、
前記切換点に達した後は、周期的に増減する締付トルクを付与して回転を制御するパルス制御を実行することを特徴とするネジ締付装置。
【請求項5】
前記制御制御装置は、締付を開始し、前記着座点に達するまでは、高速回転で締付を行い、前記着座点に達した後、前記切換点に達するまでは、低速回転で締付を行うことを特徴とする請求項4に記載のネジ締付装置。
【請求項6】
前記制御制御装置は、締付トルクが所定の着座トルクに達したとき、高速回転から低速回転に切換えることを特徴とする請求項4又は5に記載のネジ締付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト、ナット等のネジ部品を電動モータを駆動源として締付けるネジ締付方法及びネジ締付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の組立ライン等においては、多数のボルト、ナット等のネジ部品を規定のトルクで締付けるためにネジ締付装置が用いられている。ネジ締付装置は、モータを駆動源として、ネジ締めツールが取付けられた出力軸を回転させて、ネジ部品の締付を行い、締付トルクが規定値に達したとき、モータを停止し、又は、クラッチ機構により、モータの駆動力を遮断することにより、締付を完了する。
【0003】
ネジ締付装置を作業者が手持ちで操作する場合、締付トルクの反力が問題となる。出力軸を連続的に回転させて締付を行うものでは、締付トルクの反力を作業者が手で直接受けることになるため、負担が大きく、締付トルクが大きいネジの締付には適さない。これに対して、出力軸の回転速度を周期的に増減し、締付トルクを断続的に発生させて、打撃力によって締付を行うパルス方式のネジ締付装置がある。このようなパルス方式のネジ締付装置では、締付トルクの反力をネジ締付装置の回転慣性によって吸収することができ、作業者の負担を軽減することができる。
【0004】
また、特許文献1には、締付開始時には、電動モータにより、出力軸を高速で連続的に回転させ、その後、ネジ部品がねじ込まれ、被結合部材に着座して締付トルクが立ち上がる着座点に達したとき、パルス電流の供給により電動モータの駆動トルクを断続的に発生させて、打撃力による締付に切換えるようにしたネジ締付装置が開示されている。このネジ締付装置によれば、大きな締付トルクが発生しない着座点までは、出力軸の連続的な高速回転により、締付時間を短縮することができ、着座点に達した後は、打撃力による締付に切換えることにより、締付トルクの反力による作業者の負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−1676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたものでは、次のような問題がある。
ネジ部品によって締結されるワッシャ、ブッシュ等の介装部品が多い場合、あるいは、介装部品にゴム等の弾性体が含まれる場合、いわゆる軟体締結となり、着座点に達してから、これらの介装部品がネジ部品の締付による軸力により、ある程度圧縮、変形されるまでの間、締付トルクが変動して不安定になる。また、弾性体は、変形速度によって反力特性が変化するため、打撃力によるパルス方式の締付では、充分な変形が得られない場合がある。このため、締付の際、介装部品がネジ部品と共回りすることがあり、また、正確な締付トルクの計測が困難になるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みて成されたものであり、軟体締結においても、締付トルクの反力を軽減しつつ、効率よく締付を行うことができ、正確な締付トルクの管理が可能なネジ締付方法装置及びネジ締付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係るネジ締付方法は、電動モータを駆動源としてネジ部品の締付を行うネジ締付方法であって、
締付を開始し、前記ネジ部品が着座して締付トルクが立ち上がる着座点に達した後、所定の切換点に達するまで、連続的に締付トルクを付与して回転を制御する速度制御を実行し、
締付トルクの上昇変化率が所定の閾値に達したとき、前記切換点に達したと判定し、
前記切換点に達した後は、周期的に増減する締付トルクを付与して回転を制御するパルス制御を実行することを特徴とする。
また、本発明に係るネジ締付装置は、電動モータを駆動源としてネジ部品の締付を行うネジ締付装置であって、締付トルクを検出するトルクセンサと、前記電動モータの回転を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、締付を開始し、前記ネジ部品が着座して締付トルクが立ち上がる着座点に達した後、所定の切換点に達するまで、連続的に締付トルクを付与して回転を制御する速度制御を実行し、
締付トルクの上昇変化率が所定の閾値に達したとき、前記切換点に達したと判定し、
前記切換点に達した後は、周期的に増減する締付トルクを付与して回転を制御するパルス制御を実行することを特徴とする。
【0009】
(発明の態様)
以下に、本発明において特許請求が可能と認識される発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の(1)乃至(
6)の内容が請求項1乃至
6に対応する。
【0010】
(1)電動モータを駆動源としてネジ部品の締付を行うネジ締付方法であって、
締付を開始し、前記ネジ部品が着座して締付トルクが立ち上がる着座点に達した後、所定の切換点に達するまで、連続的に締付トルクを付与して回転を制御する速度制御を実行し、
締付トルクの上昇変化率が所定の閾値に達したとき、前記切換点に達したと判定し、
前記切換点に達した後は、周期的に増減する締付トルクを付与して回転を制御するパルス制御を実行することを特徴とするネジ締付方法。
(2)(1)の構成において、締付を開始し、前記着座点に達するまでは、高速回転で締付を行い、前記着座点に達した後、前記切換点に達するまでは、低速回転で締付を行うことを特徴とするネジ締付方法。
(3)(1)又は(2)の構成において、締付トルクが所定の着座トルクに達したとき、高速回転から低速回転に切換えることを特徴とするネジ締付方法。
(4)電動モータを駆動源としてネジ部品の締付を行うネジ締付装置であって、締付トルクを検出するトルクセンサと、前記電動モータの回転を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、締付を開始し、前記ネジ部品が着座して締付トルクが立ち上がる着座点に達した後、所定の切換点に達するまで、連続的に締付トルクを付与して回転を制御する速度制御を実行し、
締付トルクの上昇変化率が所定の閾値に達したとき、前記切換点に達したと判定し、
前記切換点に達した後は、周期的に増減する締付トルクを付与して回転を制御するパルス制御を実行することを特徴とするネジ締付装置。
(5)(4)の構成において、前記制御制御装置は、締付を開始し、前記着座点に達するまでは、高速回転で締付を行い、前記着座点に達した後、前記切換点に達するまでは、低速回転で締付を行うことを特徴とするネジ締付装置。
(6)(4)又は(5)の構成において、前記制御制御装置は、締付トルクが所定の着座トルクに達したとき、高速回転から低速回転に切換えることを特徴とするネジ締付装置。
【0011】
このように構成したことにより、締付開始から着座点を経て切換点まで、連続的に締付トルクを付与する速度制御を実行することにより、着座点までの締付、及び、軟体締結時の着座点から切換点までの圧縮、変形を効率よく行うことができ、切換点に達した後、パルス制御に切換えることにより、締付トルクの反力を軽減した締付を行うことができる。
このとき、軟体締結おいて、圧縮、変形の終了時に、締付トルクの上昇変化率(傾き)が増大するので、締付トルクを監視し、締付トルクの上昇変化率の増大を、閾値と比較することにより、切換点を検知することができる((1)及び(4))。
締付開始から着座点まで高速回転で締付を行うことにより、締付時間を短縮することができ、着座点から切換点まで低速回転で締付を行うことにより、軟体締結時の圧縮、変形を効率よく行うことができる(
(2)及び(5))。
なお、速度制御(高速回転及び低速回転)における回転速度は、一定の速度に限定されず、始動時、停止時、その他において、適宜、速度を加減してもよい。また、制御の切換点となる着座点、切換点において、電動モータを一旦停止し、あるいは、停止することなく、制御を切換えてもよい。
着座点において、締付トルクが立ち上がるので、締付トルクを監視し、締付トルクが所定の着座トルクに達したことを検知することにより、着座点を検知することができる
((3)及び(6))。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る締付装置及び締付制御方法によれば、軟体締結においても、締付トルクの反力を軽減しつつ、効率よく締付を行うことができ、正確な締付トルクの管理が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るネジ締付装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図1に示すネジ締付装置の制御装置によるネジ締付制御を示すグラフ図である。
【
図3】
図2に示すネジ締付制御を実行するためのフローチャートである。
【
図4】軟体締結におけるネジ部品の回転角と締付トルクとの関係を示すグラフ図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るネジ締付制御を実行するための制御フローの一部を示すフローチャートのである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1実施形態について、
図1乃至
図4を参照して説明する。
本実施形態に係るネジ締付装置は、作業者が手持ちで操作することができ、ボルト、ナット等のネジ部品を規定のトルクで締付けて、被結合部材をねじ結合するためのものである。また、このネジ締付装置は、被結合部材との間にワッシャ、ブッシュ等の介装部品を介装してねじ結合を行う、いわゆる軟体締結の場合に特に適しているので、以下、便宜上、介装部品がある場合について説明するが、本発明は、介装部品の有無にかかわらず、ネジ部品の締付に適用することができる。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る締付装置1は、駆動源である電動モータ2と、電動モータ2の回転を減速する減速機構3と、減速機構3の出力軸のトルクを検出するトルクセンサ4と、減速機構3の出力軸に連結されて、ボルト、ナット等のネジ部品(図示せず)を係合して保持するソケット5と、電動モータ2の回転を制御する制御装置6とを備えている。
【0016】
電動モータ2は、ACサーボモータであり、制御装置6からの駆動電流(制御電流)により回転を制御可能となっている。電動モータ2は、後述の回転制御を実行可能なものであれば、DCサーボモータ等の他の形式のものでもよい。減速機構3は、電動モータ2の回転を減速して必要な締付トルクを得るためのものであり、各種歯車機構等、公知の減速機構を用いることができる。また、電動モータ2の出力によって必要な締付トルクが得られる場合には、減速機構3を省略して、電動モータ2によって直接、ソケット5を駆動してもよい。ソケット5は、ボルト、ナット等の締付けるべきネジ部品に応じて適宜選択することができる。制御装置6は、ACサーボモータである電動モータ2を駆動する駆動電流を発生するドライバ回路を含み、設定情報に基づく回転速度の制御、及び、トルクセンサ4からのトルク信号に基づく回転制御を実行する。
【0017】
制御装置6による電動モータ2の制御について更に詳細に説明する。
被結合部材にワッシャ、ブッシュ等の介装部品を介装してボルト、ナット等のネジ部品を螺合させ、このネジ部品にソケット5を係合して電動モータ2の駆動により締付を行う。この場合のネジ部品の回転角度Aと締付トルクTとの関係を
図4に示す。
図4を参照して、締付を開始し、回転角度A1でネジ部品の頭部が介装部品又は結合部材に当接する着座点Sに達すると、ネジ部品に軸力が生じて、締付トルクTが立ち上がる。その後、ネジ部品の締付によるワッシャ、ブッシュ等の介装部品の圧縮、変形に伴い締付トルクTが上昇する。そして、回転角度A2(締付トルクTsw)で、介装部品の圧縮、変形が終了(圧縮、変形が進み、軸力、締付トルクが安定)する切換点SWに達すると、締付トルクTの上昇変化率(傾き)が増大する。その後、回転角度Aの増大に伴い、締付トルクTが上昇し、回転角度A3で規定の締付トルクTcに達する。
【0018】
図2を参照して、制御装置6は、電動モータ2の回転を開始し、トルクセンサ4により減速機構3の出力軸のトルク、すなわち、ネジ部品の締付トルクTを監視する。はじめに、電動モータ2を一定速度で高速回転させる高速速度制御(速度制御)を実行する。そして、時刻t1で、着座点Sに達するとネジ部品に軸力が生じて、締付トルクTが立ち上がる。このとき、トルクセンサ4による締付トルクTの検出値が所定の着座トルクTsに達することにより、着座点Sを検知することができる。そして、着座点Sに達したとき、電動モータ2の回転速度を低下させ、電動モータ2を一定速度で低速回転させる低速速度制御(速度制御)を実行する。
【0019】
その後、ネジ部品の締付による介装部品の圧縮、変形に伴い、締付トルクTが上昇し、時刻t2で介装部品の圧縮、変形が終了して切換点SWに達する。このとき、トルクセンサ4による締付トルクTの検出値が所定の切換トルクTswに達することにより、切換点SWを検知することができる。そして、切換点SWに達したとき、電動モータ2への制御を切換え、電動モータ2の回転速度を一定周期で増減してパルス状の締付トルクを発生させて締付を行うパルス制御を実行する。そして、時刻t3で締付トルクが規定トルクTcに達したとき、電動モータ2を停止して締付を終了する。
【0020】
次に、制御装置6による上述の制御を実行するための制御フローについて
図3を参照して説明する。
図3を参照して、締付を開始し、ステップS1で、電動モータ2を一定速度で高速回転させる高速速度制御を実行してステップS2に進む。ステップS2で、トルクセンサ4の検出トルク(締付トルクT)が着座トルクTsに達したか否かを判定する。締付トルクTが着座トルクTsに達していない場合にはステップS1に戻り、達している場合にはステップS3に進む。
【0021】
ステップS3で、電動モータ2を一旦停止し、ステップS4に進む。ステップS4で、電動モータ2を一定速度で低速回転させる低速速度制御を実行してステップS5に進む。ステップS5でトルクセンサ4の検出トルク(締付トルクT)が切換トルクTswに達したか否かを判定する。締付トルクTが切換トルクTswに達していない場合にはステップS4に戻り、達している場合にはステップS6に進む。
【0022】
ステップS6で電動モータ2を一旦停止し、ステップS7に進む。ステップS7で電動モータ2への制御電流を切換え、電動モータ2の回転速度を一定周期で増減しながら締付を行うパルス制御を実行してステップS8に進む。ステップS8で、トルクセンサ4の検出トルク(締付トルクT)が規定トルクTcに達したか否かを判定する。締付トルクTが規定トルクTcに達していない場合にはステップS7に戻り、達している場合にはステップS9に進む。ステップS9で、電動モータS9を停止して締付を終了し、ステップS10に進む。ステップS10で、必要に応じて抜取り検査あるいは全数検査を実行し、締付けられたネジ部品の締付トルクTを測定して良否を判定する。
【0023】
このように、締付開始時に高速速度制御を実行して、電動モータ2を一定速度で高速回転させることにより、締付時間を短縮することができる。その後、着座点Sから切換点SWまでは、低速速度制御を実行して、電動モータ2を一定速度で低速回転させることにより、介装部品が弾性を有するブッシュ等を含む軟体締結の場合であっても、介装部品に適度な軸力を連続的に付与できるので、過度の反力を発生させることなく、介装部品を円滑に充分に圧縮、変形させることができ、トルクセンサ4により、締付トルクTを精度よく安定的に検出することができる。また、締付に伴う結合部品の共回りを抑制することができる。そして、切換点SWにおいて、低速速度制御からパルス制御に切換えて電動モータ2を駆動することにより、締付を行うことができ、締付の反力による作業者の負担を軽減しつつ、効率よく締付を行うことができる。
【0024】
次に、本発明の第2実施形態について、
図5を参照して説明する。
なお、以下の説明において、上記第1実施形態に対して、同様の部分には同じ参照符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
上記第1実施形態では、制御装置6は、締付トルクTが所定の切換トルクTswに達したとき、切換点SWに達したと判定して、低速速度制御からパルス制御への切換えを実行しているのに対して(
図3のステップS5)、本実施形態では、これに加えて、ネジ部品の回転角度Aに対する締付トルクTの上昇変化率(傾き)の増大に基づき、切換点SWへの到達を判定する制御を選択可能としている。
【0025】
本実施形態では、制御装置6は、
図3に示す上記第1実施形態の制御フローにおいて、ステップS4及びステップS5からなる制御フロー(A)の代りに
図5に示す制御フロー(B)を適用する。
図5を参照して、ステップS3で電動モータ2を一旦停止した後、制御フロー(B)では、ステップS3−1に進み、切換点SWの設定方法(手動設定又は自動設定)の選択を判定する。自動設定が選択されている場合(Y)は、ステップS4´に進み、ステップS4と同様の低速速度制御を実行して、ステップS5´に進む。
【0026】
ステップS5´で、トルクセンサ4により検出した締付トルクTに基づき、ネジ部品の一定の回転角度毎に周期的に測定した締付トルクTを前周期の測定値と比較して、締付トルクの上昇変化率ΔT(傾き)を演算し、締付トルクの上昇変化率ΔTが事前の評価等に基づき予め設定した閾値である剛性変化判断率Rに達しているか否かを判定する。締付トルクの上昇変化率ΔTが剛性変化判断率Rに達していない場合には、ステップS4´に戻る。締付トルクの上率変化率ΔTが剛性変化判断率Rに達している場合には、切換点SWに到達したと判定してステップS6に進む。
【0027】
また、ステップS3−1で、手動設定が選択されている場合(N)は、上記第1実施形態と同様、ステップS4及びステップS5を実行して、締付トルクTが切換トルクTswに達したとき、ステップS6に進む。
【0028】
以上のようにして、自動又は手動で設定された切換点SWに基づき、電動モータ2の制御を切換える。自動設定を選択することにより、介装部品等の異なる条件のネジ部品の締付に対して、切換点SWを自動的に設定することができるので、締付装置1の汎用性を高めることができる。
【符号の説明】
【0029】
1…ネジ締付装置、2…電動モータ、4…トルクセンサ、6…制御装置、S…着座点、SW…切換点、T…締付トルク