特許第5775507号(P5775507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775507
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23L 1/00 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   F23L1/00 F
   F23L1/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-252866(P2012-252866)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2013-152066(P2013-152066A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2013年12月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-284782(P2011-284782)
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120802
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 章夫
(72)【発明者】
【氏名】赤木 万之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英男
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 特公平04−018208(JP,B2)
【文献】 実公昭64−003960(JP,Y2)
【文献】 特開平09−126513(JP,A)
【文献】 特開平10−047723(JP,A)
【文献】 特開平05−296442(JP,A)
【文献】 実開昭54−055731(JP,U)
【文献】 特開2000−161650(JP,A)
【文献】 実公昭52−054024(JP,Y2)
【文献】 実公昭64−003961(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 1/00 − 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、バーナからの燃焼ガスで加熱される熱交換器を内蔵する燃焼筐と、燃焼筐に連なる排気通路と、バーナに燃焼用空気を供給するファンとを備える燃焼装置であって、ファンの羽根車を収納するファンケーシングに形成した吸込み口に連通する所定長さの吸気ダクトを備えるものにおいて、
吸気ダクトに、ファンケーシングの吸込み口よりも小径且つ吸込み口と同心で吸込み口に臨む下流端の出口筒部と、出口筒部に隣接する吸気ダクトの外周部分から径方向外方に張出してファンケーシングの吸込み口の開設箇所の周囲に当接するフランジ部とが設けられ、フランジ部に、出口筒部の周囲の空間に連通する補助吸込み口が形成され、フランジ部は、ファンケーシングに対向するフランジ部の面の外周部に突設した環状壁でファンケーシングの吸込み口の開設箇所の周囲に当接しており、出口筒部は吸込み口に挿入されていないが、出口筒部の先端と吸込み口との間の距離は、ファンケーシングとこれに対向するフランジ部の面との間の距離の1/2以下であることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記補助吸込み口の数は2個以上であることを特徴とする請求項1記載の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナと、バーナからの燃焼ガスで加熱される熱交換器を内蔵する燃焼筐と、燃焼筐に連なる排気通路と、バーナに燃焼用空気を供給するファンとを備える燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃焼装置においては、100Hz以下の低周波共鳴音を生じやすい。これは、ファンの羽根車を収納するファンケーシングに形成した吸込み口から排気通路の下流端の排気口までの開管相当長さ(両端が自由端の開管に相当する長さ)が、燃焼振動で発生する燃焼音に含まれる100Hz以下の周波数成分の半波長の倍数に相当する長さになり、この周波数の気柱振動を生ずるためである。
【0003】
かかる不具合を解消するため、従来、ファンケーシングの吸込み口に連通する所定長さの吸気ダクトを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、ファンの実質的な吸込み口が吸気ダクトの上流端の入口になる。そして、この入口から排気口までの開管相当長さが長くなって、燃焼音に含まれる100Hz以下の周波数成分の半波長の倍数に相当する長さからずれ、気柱振動が抑制されて、100Hz以下の低周波共鳴音を抑制することができる。然し、吸気ダクトを設けると、吸気ダクトを設けない場合には生じなかった400〜800Hzの低周波共鳴音が発生する。これは、吸気ダクトの上流端の入口から排気口までの開管相当長さが、燃焼音に含まれる400〜800Hzの周波数成分の半波長の倍数に相当する長さになり、この周波数の気柱振動を生ずるためである。
【0004】
そこで、従来、ファンケーシングの吸込み口に連通する吸気ダクトの下流端近傍に、吸気ダクト内に連通する補助吸込み口を形成したものも知られている(例えば、特許文献2参照)。これによれば、400〜800Hzの周波数の気柱振動を生ずるはずの周波数成分の圧力エネルギーの一部が補助吸込み口から抜け出て、この周波数の気柱振動が抑制される。そのため、100Hz以下及び400〜800Hzの異なる低周波共鳴音を抑制することができる。
【0005】
然し、吸気ダクトに上記の如く補助吸込み口を形成すると、補助吸込み口から吸気ダクト内の吸引空気流に交差するように空気が吸い込まれ、補助吸込み口からの空気が吸気ダクト内の吸引空気流に干渉する。その結果、吸気ダクトの通過抵抗が大きくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1−129556号公報
【特許文献2】特開平2−29505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、吸気ダクトの通過抵抗を大きくすることなく、100Hz以下及び400〜800Hzの異なる低周波共鳴音を抑制できるようにした燃焼装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナと、バーナからの燃焼ガスで加熱される熱交換器を内蔵する燃焼筐と、燃焼筐に連なる排気通路と、バーナに燃焼用空気を供給するファンとを備える燃焼装置であって、ファンの羽根車を収納するファンケーシングに形成した吸込み口に連通する所定長さの吸気ダクトを備えるものにおいて、吸気ダクトに、ファンケーシングの吸込み口よりも小径且つ吸込み口と同心で吸込み口に臨む下流端の出口筒部と、出口筒部に隣接する吸気ダクトの外周部分から径方向外方に張出してファンケーシングの吸込み口の開設箇所の周囲に当接するフランジ部とが設けられ、フランジ部に、出口筒部の周囲の空間に連通する補助吸込み口が形成され、フランジ部は、ファンケーシングに対向するフランジ部の面の外周部に突設した環状壁でファンケーシングの吸込み口の開設箇所の周囲に当接しており、出口筒部は吸込み口に挿入されていないが、出口筒部の先端と吸込み口との間の距離は、ファンケーシングとこれに対向するフランジ部の面との間の距離の1/2以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、吸気ダクトを設けることにより、上記従来例と同様に、吸気ダクトの上流端の入口からバーナの燃焼ガスを排気する排気口までの開管相当長さを、燃焼音に含まれる100Hz以下の周波数成分の半波長の倍数に相当する長さからずらして、100Hz以下の低周波共鳴音を抑制できると共に、400〜800Hzの周波数成分の圧力エネルギーの一部が補助吸込み口から抜け出て、400〜800Hzの低周波共鳴音も抑制できる。
【0010】
更に、本発明では、補助吸込み口からの空気が出口筒部の周囲の空間を介して吸込み口に吸い込まれることになる。そのため、出口筒部の内部に流れる吸気ダクト内の吸引空気流に補助吸込み口からの空気が干渉することを抑制して、吸気ダクトの通過抵抗が大きくなることを防止できる。
【0011】
また、出口筒部が吸込み口に挿入されていなくても、出口筒部の先端と吸込み口との間の距離が、上記の如くファンケーシングとこれに対向するフランジ部の面との間の距離の1/2以下であれば、吸気ダクト内の吸引空気流に補助吸込み口からの空気が干渉することを効果的に抑制できる。
【0012】
また、補助吸込み口がゴミ詰りで閉塞されると、400〜800Hzの低周波共鳴音を抑制できなくなる。そのため、補助吸込み口の数を2個以上とすることが望ましい。これによれば、何れかの補助吸込み口がゴミ詰りで閉塞されても、全ての補助吸込み口が閉塞されない限り400〜800Hzの低周波共鳴音を抑制でき、ゴミ詰りに対する冗長性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の燃焼装置の構成を示す模式図。
図2図1のII−II線で切断したファン及び吸気ダクトの断面図。
図3】吸気ダクトの要部の斜視図。
図4】他の実施形態のファン及び吸気ダクトの要部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、給湯用熱源機から成る本発明の実施形態の燃焼装置を示している。この燃焼装置は、上部のバーナ1と、バーナ1の下方に連設され、バーナ1からの燃焼ガスで加熱される給湯用の熱交換器3を収納した燃焼筐2と、燃焼筐2の背面下部に形成した開口2aを介して燃焼筐2に連通し、この開口2aから上方にのびる排気通路たる排気ダクト4と、バーナ1に燃焼用空気を供給するファン5とを備えている。
【0015】
熱交換器3は、燃焼筐2の上部に収納した顕熱回収型の第1熱交換器3と、燃焼筐2の下部に収納した潜熱回収型の第2熱交換器3とで構成されている。そして、第2熱交換器3の上流側の給水管3aからの水Wを第2熱交換器3においてバーナ1からの燃焼ガスの潜熱で加熱した後、第1熱交換器3において燃焼ガスの顕熱で加熱し、第1熱交換器3の下流側の出湯管3bに所定の設定温度に加熱された温水HWが出湯されるようにしている。また、第1と第2の両熱交換器3,3を通過した燃焼ガスは排気ダクト4を介してその下流端(上端)の排気口4aから外部に排出される。
【0016】
バーナ1は、混合室1aと、その下面に装着した多数の炎孔(図示せず)を有するセラミックス製の燃焼プレート1bと、混合室1aに連通する上部の給気室1cとを備えており、ファン5からの空気が給気室1cを介して混合室1aに燃焼用の一次空気として供給される。また、混合室1aには、ガス供給路1dからの燃料ガスGが複数のガスノズル1eを介して供給される。そして、ファン5の回転数を制御することにより、混合室1aで理論空燃比よりも燃料濃度が希薄な混合気(燃料ガスと一次空気との混合ガス)を生成し、この混合気を燃焼プレート1bの炎孔から噴出させて全一次燃焼(二次空気が不要な燃焼)させるようにしている。
【0017】
図2を参照して、ファン5は、モータ5aで回転駆動される羽根車5bと、羽根車5bを収納するファンケーシング5cとを有する遠心型ファンで構成されている。ここで、ファンケーシング5cに形成する吸込み口5dから排気口4aまでの開管相当長さ(両端が自由端の開管に相当する長さであって、具体的には、吸込み口5dから排気口4aまでの実際の長さに燃焼プレート1や熱交換器3等での通気抵抗に相当する長さを加えた長さ)が、燃焼振動で発生する燃焼音に含まれる100Hz以下の周波数成分の半波長の倍数に相当する長さになると、この周波数の気柱振動を生じて、100Hz以下の大きな低周波共鳴音が発生する。
【0018】
そこで、吸込み口5dに連通する所定長さの吸気ダクト6を設けている。これによれば、吸気ダクト6の上流端の入口6aがファン5の実質的な吸込み口となる。そして、入口6aから排気口4aまでの開管相当長さが、燃焼音に含まれる100Hz以下の周波数成分の半波長の倍数に相当する長さからずれ、この周波数の気柱振動が抑制されて、100Hz以下の低周波共鳴音が抑制される。
【0019】
但し、このままでは、入口6aから排気口4aまでの開管相当長さが、燃焼音に含まれる400〜800Hzの周波数成分の半波長の倍数に相当する長さになって、この周波数の気柱振動を生じ、400〜800Hzの大きな低周波共鳴音が発生する。
【0020】
そこで、本実施形態では、図2図3に示す如く、吸気ダクト6に、ファンケーシング5cの吸込み口5dよりも小径且つ吸込み口5dと同心で吸込み口5dに臨む下流端の出口筒部6bと、出口筒部6bに隣接する吸気ダクト6の外周部分から径方向外方に張出してファンケーシング5cの吸込み口5dの開設箇所の周囲に当接するフランジ部6cとを設け、フランジ部6cに、出口筒部6bの周囲の空間に連通する補助吸込み口6dを形成している。より具体的に説明すれば、出口筒部6bを吸込み口5dに挿入すると共に、ファンケーシング5cに対向するフランジ部6cの面(上面)の外周部に、ファンケーシング5cに当接する環状壁6eを突設し、この環状壁6eの周方向複数箇所(本実施形態では6箇所)を切欠いて、これら各切欠き部により環状壁6eを径方向に貫通する補助吸込み口6dを形成している。尚、環状壁6eには、フランジ部6cをファンケーシング5cに締結する取付孔6fが形成されている。
【0021】
以上の如く補助吸込み口6dを形成すれば、400〜800Hzの周波数の気柱振動を生ずるはずの周波数成分の圧力エネルギーの一部が補助吸込み口6dから抜け出て、この周波数の気柱振動が抑制される。また、100Hz以下の周波数成分の圧力エネルギーの一部が補助吸込み口6dから抜け出ても、この周波数成分の圧力エネルギーは400〜800Hzの周波数成分の圧力エネルギーに比しかなり大きいため、100Hz以下の周波数の振動形態に補助吸込み口6dによる影響は殆ど及ばず、吸気ダクト6の効果で100Hz以下の周波数の気柱振動は抑制されたままになる。その結果、100Hz以下及び400〜800Hzの異なる低周波共鳴音を抑制することができる。
【0022】
更に、本実施形態では、補助吸込み口6dからの空気が出口筒部6bの周囲の空間を介して吸込み口5dに吸い込まれることになる。そのため、出口筒部6bの内部に流れる吸気ダクト6内の吸引空気流に補助吸込み口6dからの空気が干渉することを抑制して、吸気ダクト6の通過抵抗が大きくなることを防止できる。
【0023】
尚、100Hz以下及び400〜800Hzの異なる低周波共鳴音の抑制効果は補助吸込み口6dの数が1個であっても得られるが、補助吸込み口6dがゴミ詰りで閉塞されると、400〜800Hzの低周波共鳴音を抑制できなくなる。これに対し、補助吸込み口6dの数を2個以上にすれば、何れかの補助吸込み口6dがゴミ詰りで閉塞されても、全ての補助吸込み口6dが閉塞されない限り400〜800Hzの低周波共鳴音を抑制でき、ゴミ詰りに対する冗長性が向上する。
【0024】
ところで、本実施形態では、吸気ダクト6内の吸引空気流に補助吸込み口6dからの空気が干渉することを確実に抑制できるように、出口筒部6bを吸込み口5dに挿入しているが、出口筒部6bは吸込み口5dに挿入されていなくてもよい。即ち、図4に示す実施形態の如く、出口筒部6bの先端と吸込み口5dとの間の距離L1がファンケーシング5とこれに対向するフランジ部6cの面との間の距離L2の1/2以下であれば、吸気ダクト6内の吸引空気流に補助吸込み口6dからの空気が干渉することを効果的に抑制して、吸気ダクト6の通過抵抗が大きくなることを防止できる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、吸気ダクト6のフランジ部6cに突設した環状壁6eの一部を切欠いて補助吸込み口6dを形成しているが、環状壁6eに形成した径方向に貫通する孔で補助吸込み口を構成することも可能である。また、出口筒部6bの周囲の空間に対向するフランジ部6cの内周寄りの部分に、その板厚方向に貫通するように補助吸込み口を形成してもよい。
【0026】
また、バーナ1は、上記実施形態の全一次燃焼式バーナに限らず、二次空気を必要とするバーナであってもよい。更に、上記実施形態は、給湯用熱源機から成る燃焼装置に本発明を適用したものであるが、暖房用といった給湯以外の用途の熱交換器を有する燃焼装置にも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0027】
1…バーナ、2…燃焼筐、3…熱交換器、4…排気ダクト(排気通路)、5…ファン、5b…羽根車、5c…ファンケーシング、5d…吸込み口、6…吸気ダクト、6b…出口筒部、6c…フランジ部、6d…補助吸込み口。
図1
図2
図3
図4