特許第5775512号(P5775512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5775512ハニカムフィルタ及びハニカムフィルタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775512
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ及びハニカムフィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20150820BHJP
   B01J 23/656 20060101ALI20150820BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20150820BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20150820BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20150820BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20150820BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20150820BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20150820BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   B01J35/04 301L
   B01J35/04 301E
   B01J23/656 A
   B01D53/94 241
   B01D46/00 302
   B01D39/20 DZAB
   F01N3/02 301C
   F01N3/02 321A
   F01N3/28 301Q
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-509533(P2012-509533)
(86)(22)【出願日】2011年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2011058081
(87)【国際公開番号】WO2011125771
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2013年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-81903(P2010-81903)
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 智由
(72)【発明者】
【氏名】水谷 貴志
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−189027(JP,A)
【文献】 特開2006−175386(JP,A)
【文献】 特開2002−177794(JP,A)
【文献】 特開2003−154223(JP,A)
【文献】 特開2004−216226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 39/20
B01D 46/00
B01D 53/94
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に触媒が担持されており一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、
前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集・除去する層である捕集層と、を備え、
前記セルの上流側の隔壁部である上流側隔壁部の触媒量をa、前記セルの下流側の隔壁部である下流側隔壁部の触媒量をbとすると、1.05≦a/b≦3.00を満たし、
前記捕集層は少なくとも一部に触媒が担持されており、前記上流側隔壁部に形成された捕集層である上流側捕集層の触媒量をA、前記下流側隔壁部に形成された捕集層である下流側捕集層の触媒量をBとすると、1.08≦A/B≦5.00を満たす、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記捕集層は少なくとも前記流路側の捕集層表面に触媒が担持されており、前記上流側捕集層のセル表面である上流側捕集層表面の触媒量をAS、前記下流側捕集層のセル表面である下流側捕集層表面の触媒量をBSとすると、1.10≦AS/BS≦8.00を満たす、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記捕集層は、前記隔壁部の平均細孔径よりも小さい平均粒径で前記隔壁部と同種の材料によって構成された粒子群により前記隔壁部上に形成されている、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
流体に含まれる固体成分を捕集・除去するハニカムフィルタの製造方法であって、
一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部を備えたハニカム構造体に、流体に含まれる固体成分を捕集・除去する層である捕集層を形成する捕集層形成工程と、
前記ハニカム構造体全体を触媒成分に接触させて触媒を形成する全体触媒形成工程と、
前記ハニカム構造体の上流側だけ触媒成分に接触させて触媒を形成する部分触媒形成工程と、を含み、
前記全体触媒形成工程及び前記部分触媒形成工程では、前記セルの上流側の隔壁部である上流側隔壁部の触媒量をa、前記セルの下流側の隔壁部である下流側隔壁部の触媒量をbとすると、1.05≦a/b≦3.00を満たし、前記上流側隔壁部に形成された捕集層である上流側捕集層の触媒量をA、前記下流側隔壁部に形成された捕集層である下流側捕集層の触媒量をBとすると、1.08≦A/B≦5.00を満たすものとする、
ハニカムフィルタの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のハニカムフィルタの製造方法であって、
前記ハニカム構造体の下流側だけ前記部分触媒形成工程での触媒成分よりも低濃度の触媒成分に接触させて触媒を形成する処理を前記全体触媒形成工程に代えて行う下流側触媒形成工程、を含むハニカムフィルタの製造方法。
【請求項6】
前記捕集層形成工程では、前記隔壁部の平均細孔径よりも小さい平均粒径で前記隔壁部と同種の材料によって構成された粒子群により前記隔壁部上に前記捕集層を形成する、請求項4又は5に記載のハニカムフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタ及びハニカムフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハニカムフィルタとしては、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセルと、一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口するセルとが交互に配設されるよう形成された多孔質の隔壁部と、この隔壁部上に形成された排ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集・除去する層が形成されているものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。このハニカムフィルタでは、捕集層によりPMを捕集することにより、圧力損失を低減させつつPMの捕集を行うことができる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−216226号公報
【特許文献2】特開平6−33734号公報
【特許文献3】特開平1−304022号公報
【発明の開示】
【0004】
ところで、このようなハニカムフィルタでは、例えば、捕集したPMを燃焼させることによりフィルタの機能を回復させる「再生処理」を行うことがあり、予めハニカムフィルタに触媒を担持してPMの燃焼を促進することがある。また、例えば、排ガス中に存在するHCやCOなどの酸化を促進する酸化触媒を担持して、これらを酸化除去することがある。このとき、触媒量を多くすると、排ガスを浄化する効率を高めることができる。また、酸化反応に伴う発熱量の増加によってハニカムフィルタの温度を高め、PMの燃焼を促進したり、触媒の活性を高めて排ガスを浄化する効率をより高めることができる。一方で、触媒量が多くなると、隔壁部の孔を触媒が塞いで排ガスの流通が阻害されるなどして圧力損失が増加することがある。そこで、圧力損失を上昇させることなく、浄化効率や、昇温性能を高めることが望まれていた。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、圧力損失の上昇を抑制し、浄化効率や昇温性能をより高めることができるハニカムフィルタ及びハニカムフィルタの製造方法を提供することを主目的とする。
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
即ち、本発明のハニカムフィルタは、
少なくとも一部に触媒が担持されており一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、
前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集・除去する層である捕集層と、を備え、
前記セルの上流側の隔壁部である上流側隔壁部の触媒量をa、前記セルの下流側の隔壁部である下流側隔壁部の触媒量をbとすると、1.05≦a/b≦3.00を満たすものである。
【0008】
このハニカムフィルタは、隔壁部と、捕集層とを備え、上流側隔壁部の触媒量aと、下流側隔壁部の触媒量bとが、1.05≦a/b≦3.00を満たす。このような本願発明のハニカムフィルタでは、圧力損失の上昇を抑制し、浄化効率や昇温性能をより高めることができる。この理由は、以下のように考えられる。一般に、自動車の排ガスなどの流体は上流側ほど高温であるが、通常の使用範囲(0〜200℃程度)では流体が高温であるほど触媒による浄化効率が高いため、上流側での流体と触媒との接触が多いほど浄化効率が向上する。また、流体と触媒との接触によって未燃焼成分などの酸化が促進されて酸化熱の発生が促進されるが、上流側でより多くの酸化熱が発生し、下流側への熱の伝播によりハニカムフィルタ全体の温度が上昇するため、酸化熱を無駄なく利用可能である。すなわち、昇温性能が向上する。そして、圧力損失をより低減する効果を有する捕集層が隔壁への流体の流通を促進するため、上流側での流体と触媒との接触が促進され、浄化効率や昇温性能をより向上することができる。このようなハニカムフィルタでは、捕集した固体成分を燃焼させることによりフィルタの機能を回復させる「再生処理」を行うことがある。昇温性能をより高めることができる本発明のハニカムフィルタでは、所定時間燃焼したときに高温を維持可能な時間が長く、1回の再生処理での固体成分の燃焼量が増加するため、再生処理における再生効率をより高めることができる。a/bが1.05以上であれば、浄化効率を向上する効果や、昇温性能を向上する効果が得られる。また、a/bが3.00以下であれば、上流側の隔壁部に形成される触媒が多すぎず、上流側の隔壁部への流体の流通を阻害しないため、浄化効率や昇温性能を向上する効果を阻害しない。ここで、「上流側」とは流体の流入する側をいい、「下流側」とは、流体の流出する側をいうものとする。また、「隔壁部の触媒量」とは、電子顕微鏡観察での元素分析により求めた触媒量(質量%)をいうものとする。なお、触媒量(質量%)に対して、計測対象であるハニカムフィルタの総重量を掛けて、ハニカムフィルタの体積で割ることによって、その計測部における見かけ上の単位体積あたりの触媒量(g/L)として扱ってもよい。
【0009】
このハニカムフィルタにおいて、前記セルには、入口が開放され出口が封止材により封止された入口開放セルと、入口が封止材により封止され出口が開放された出口開放セルとがあり、該入口開放セルと該出口開放セルとが隣接するように設けられているものとしてもよい。
【0010】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記捕集層は少なくとも一部に触媒が担持されており、前記上流側隔壁部に形成された捕集層である上流側捕集層の触媒量をA、前記下流側隔壁部に形成された捕集層である下流側捕集層の触媒量をBとすると、1.08≦A/B≦5.00を満たすものとしてもよい。こうすれば、浄化効率をより高めることができる。ここで、「捕集層の触媒量」とは、電子顕微鏡観察での元素分析により求めた触媒量(質量%)をいうものとする。なお、触媒量(質量%)に対して、計測対象であるハニカムフィルタの総重量を掛けて、ハニカムフィルタの体積で割ることによって、その計測部における見かけ上の単位体積あたりの触媒量(g/L)として扱ってもよい。
【0011】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記捕集層は少なくとも前記流路側の捕集層表面に触媒が担持されており、前記上流側捕集層のセル表面である上流側捕集層表面の触媒量をAS、前記下流側捕集層のセル表面である下流側捕集層表面の触媒量をBSとすると、1.10≦AS/BS≦8.00を満たすものとしてもよい。こうすれば、昇温性能をより高めることができ、再生処理における再生効率をより高めることができる。ここで、「捕集層表面の触媒量」とは、電子顕微鏡観察での元素分析により求めた触媒量(質量%)をいうものとする。なお、触媒量(質量%)に対して、計測対象であるハニカムフィルタの総重量を掛けて、ハニカムフィルタの体積で割ることによって、その計測部における見かけ上の単位体積あたりの触媒量(g/L)として扱ってもよい。
【0012】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記捕集層は触媒が厚さ方向に均一に担持されたものとしてもよい。こうしても、圧力損失の上昇を抑制し、浄化効率や昇温性能をより高めることができるからである。ここで、「触媒が厚さ方向に均一」とは、隔壁表面に垂直な方向での触媒量が均一であることをいい、完全に均一であってもよいし、ある程度のばらつきがあってもよい。例えば、隔壁表面に垂直な方向で触媒量が最大となる部分と最小となる部分の触媒量の差が0.2g/L以下や、0.1g/L以下などとすることができる。
【0013】
また、本発明のハニカムフィルタにおいて、下流側の捕集層の厚さを上流側の捕集層の厚さよりも厚いものとしてもよい。下流側の捕集層を厚くすれば、透過抵抗の小さい上流側隔壁部により多くの流体を流通させることができるからである。
【0014】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記隔壁部は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。また、前記捕集層は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このとき、前記捕集層は、前記隔壁部と同種の材料により形成されているものとすることが好ましい。
【0015】
本発明のハニカムフィルタの製造方法は、
流体に含まれる固体成分を捕集・除去するハニカムフィルタの製造方法であって、
一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部を備えたハニカム構造体に、流体に含まれる固体成分を捕集・除去する層である捕集層を形成する捕集層形成工程と、
前記ハニカム構造体全体を触媒成分に接触させて触媒を形成する全体触媒形成工程と、
前記ハニカム構造体の上流側だけ触媒成分に接触させて触媒を形成する部分触媒形成工程と、
を含むものである。
【0016】
このハニカムフィルタの製造方法では、ハニカム構造体全体に触媒成分を接触させ、さらに、上流側だけに触媒成分を接触させて触媒を形成する。このようにして、上流側の触媒量を下流側より多くするのである。このような本願発明のハニカムフィルタの製造方法では、圧力損失の上昇を抑制し、浄化効率や昇温性能をより高めることが可能なハニカムフィルタを製造することができる。このハニカムフィルタの製造方法では、セルの上流側の隔壁部である上流側隔壁部の触媒量をa、セルの下流側の隔壁部である下流側隔壁部の触媒量をbとすると、1.05≦a/b≦3.00を満たすように触媒を形成することが好ましい。
【0017】
ここで、全体を触媒成分に接触させて触媒を形成する全体触媒形成工程と、上流側だけ触媒成分に接触させて触媒を形成する部分触媒形成工程は、どちらを先としてもよいが、全体触媒形成工程を先とするほうが好ましい。また、全体触媒形成工程は、捕集層形成工程前に行うものとしてもよいし、捕集層形成工程後に行うものとしてもよい。また、部分触媒形成工程は、捕集層形成工程前に行うものとしてもよいし、捕集層形成工程後に行うものとしてもよい。部分触媒形成工程を捕集層形成工程後に行う場合には、触媒成分の粒径は、捕集層の粒径より小さく、捕集層を流通して隔壁部上に形成されるものであることが好ましい。
【0018】
あるいは、本発明のハニカムフィルタの製造方法は、
流体に含まれる固体成分を捕集・除去するハニカムフィルタの製造方法であって、
一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止された流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部を備えたハニカム構造体に、流体に含まれる固体成分を捕集・除去する層である捕集層を形成する捕集層形成工程と、
前記ハニカム構造体の上流側だけ触媒成分に接触させて触媒を形成する上流側触媒形成工程と、
前記ハニカム構造体の下流側だけ前記触媒成分よりも低濃度の触媒成分に接触させて触媒を形成する下流側触媒形成工程と、
を含むものとしてもよい。
【0019】
このハニカムフィルタの製造方法では、ハニカム構造体の上流側には高濃度の触媒を接触させ、下流側には低濃度の触媒を接触させて、触媒成分を形成する。このようにしても、上流側の触媒担持量を下流側より多くすることができる。ここで、上流側だけ触媒成分に接触させて触媒を形成する上流側触媒形成工程と、下流側だけ触媒成分に接触させて触媒を形成する下流側触媒形成工程とは、どちらが先であってもよい。また、上流側触媒形成工程は、捕集層形成工程前に行うものとしてもよいし、捕集層形成工程後に行うものとしてもよい。また、下流側触媒形成工程は、捕集層形成工程前に行うものとしてもよいし、捕集層形成工程後に行うものとしてもよい。上流側触媒形成工程を捕集層形成工程後に行う場合には、触媒成分の粒径は、捕集層の粒径より小さく、捕集層を流通して隔壁部上に形成されるものであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図である。
図2】ハニカムセグメント21の縦断面の概略の一例を示す説明図である。
図3】SEM観察による捕集層厚さの算出方法の説明図である。
図4】ハニカムフィルタ20の触媒の分布の一例を示す模式図である。
図5】ハニカムフィルタ20の触媒の分布の一例を示す模式図である。
図6】ハニカムフィルタ20の触媒の分布の一例を示す模式図である。
図7】触媒量の測定位置の説明図である。
図8】ハニカムフィルタ20の製造方法の概略の一例を示す説明図である。
図9】ハニカムフィルタ20の上流側を触媒成分に接触させた様子を示す説明図である。
図10】ハニカムフィルタ40の構成の概略の一例を示す説明図である。
図11】捕集層形成装置50の構成の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。本発明のハニカムフィルタは、例えば、自動車のエンジンの排気浄化用にエンジンの排気管に配設されるものであり、排気中に含まれる固体成分(粒子状物質、以下PMとも称する)を捕集・除去するものである。このハニカムフィルタでは、PMの捕集量が所定値に達すると、燃料濃度を高めて捕集したPMを燃焼する処理(再生処理)を実行する。
【0022】
本発明のハニカムフィルタの一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図である。図2は、ハニカムセグメント21の縦断面の概略の一例を示す説明図である。図3は、SEM観察による捕集層厚さの算出方法の説明図である。また、図4〜6は、本発明のハニカムフィルタ20の触媒の分布の一例を示す模式図である。本発明の一実施形態であるハニカムフィルタ40の構成の概略の一例を示す説明図である。図7は触媒量の測定位置の説明図である。図8は、ハニカムフィルタ20の製造方法の概略の一例を示す説明図であり、図9は、ハニカムフィルタ20の上流側を触媒成分に接触させた様子を示す説明図である。
【0023】
本実施形態のハニカムフィルタ20は、図1に示すように、隔壁部22を有する2以上のハニカムセグメント21の外周面同士が接合層27によって接合された形状を有し、その外周に外周保護部28が形成されている。このハニカムフィルタ20は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止部26により目封止され、流体としての排ガスの流路となる複数のセル23を形成する多孔質の隔壁部22と、隔壁部22上に形成され流体(排ガス)に含まれる固体成分(PM)を捕集・除去する層である捕集層24と、を備えている。このハニカムフィルタ20では、隔壁部22は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセル23と一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口したセル23とが交互に配置されるよう形成されている。また、ハニカムフィルタ20では、入口側が開口しているセル23(入口側セルとも称する)へ入った排ガスが捕集層24及び隔壁部22を介して出口側が開口しているセル23(出口側セルとも称する)を通過して排出され、このとき、排ガスに含まれるPMが捕集層24上に捕集される。
【0024】
このハニカムフィルタ20の外形は、特に限定されないが、円柱状、四角柱状、楕円柱状、六角柱状などの形状とすることができる。ハニカムセグメント21の外形は、特に限定されないが、接合しやすい平面を有していることが好ましく、断面が多角形の角柱状(四角柱状、六角柱状など)の形状とすることができる。セルは、その断面の形状として3角形、4角形、6角形、8角形などの多角形の形状や円形、楕円形などの流線形状、及びそれらの組み合わせとすることができる。例えば、セル23は排ガスの流通方向に垂直な断面が4角形に形成されているものとしてもよい。ここでは、ハニカムフィルタ20の外形が円柱状に形成され、ハニカムセグメント21の外形が矩形柱状に形成され、セル23が矩形状に形成されている場合について主として説明する。
【0025】
ハニカムフィルタ20において、セルピッチは、1.0mm以上2.5mm以下とするのが好ましい。PM堆積時の圧力損失は、濾過面積が大きいほど小さい値を示す。一方、初期の圧力損失は、セル直径が小さいほど大きい値を示す。したがって、初期圧力損失、PM堆積時の圧力損失、PMの捕集効率のトレードオフを考慮して、セルピッチ、セル密度や隔壁部22の厚さを設定するものとすればよい。
【0026】
隔壁部22は、多孔質であり、例えば、コージェライト、Si結合SiC、再結晶SiC、チタン酸アルミニウム、ムライト、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このうち、コージェライトやSi結合SiC、再結晶SiCなどが好ましい。隔壁部22は、その気孔率が30体積%以上85体積%以下であることが好ましく、35体積%以上65体積%以下であることがより好ましい。この隔壁部22は、その平均細孔径が10μm以上60μm以下の範囲であることが好ましい。この気孔率や平均細孔径は、水銀圧入法により測定した結果をいうものとする。また、隔壁部22は、その厚さが150μm以上600μm以下であることが好ましく、200μm以上400μm以下であることがより好ましい。厚さが150μm以上であれば、機械的強度を高めることができ、600μm以下であれば、圧力損失をより低減することができる。このような気孔率、平均細孔径、厚さで隔壁部22を形成すると、排ガスが通過しやすく、PMを捕集・除去しやすい。
【0027】
捕集層24は、排ガスに含まれるPMを捕集・除去する層であり、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径で構成された粒子群により隔壁部22上に形成されているものとしてもよい。捕集層24は、平均細孔径が、0.2μm以上10μm以下であることが好ましく、気孔率が40体積%以上95体積%以下であることが好ましく、捕集層を構成する粒子の平均粒径が0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。平均細孔径が0.2μm以上であればPMが堆積していない初期の圧力損失が過大になるのを抑制することができ、10μm以下であればPM捕集効率が良好なものとなり、捕集層24を通り抜け細孔内部にPMが到達するのを抑制可能であり、PM堆積時の圧力損失の悪化を抑制することができる。また、気孔率が40体積%以上であると、PMが堆積していない初期の圧力損失が過大となるのを抑制することができ、95体積%以下では耐久性のある捕集層24としての表層を作製することができる。また、捕集層を構成する粒子の平均粒径が0.5μm以上であれば捕集層を構成する粒子の粒子間の空間のサイズを十分に確保可能であるため捕集層の透過性を維持でき急激な圧力損失の上昇を抑制することができ、15μm以下であれば粒子同士の接触点が十分に存在するから粒子間の結合強度を十分に確保可能であり捕集層の剥離強度を確保することができる。このように、良好なPM捕集効率の維持、PM捕集開始直後の急激な圧力損失上昇防止、PM堆積時の圧力損失低減、捕集層の耐久性を実現することができる。この捕集層24の平均厚さは、10μm以上80μm以下であることが好ましい。捕集層の厚さが10μm以上ではPMを捕集しやすく、80μm以下では流体が隔壁を通過する抵抗をより低減可能であり、圧力損失をより低減することができる。この捕集層の平均厚さは、20μm以上60μm以下であることがより好ましく、30μm以上50μm以下であることが更に好ましい。また、この捕集層がPMを捕集して隔壁部22の内部へPMが侵入するのを抑制するため、後述する触媒のうち、隔壁部22内に担持された触媒について、例えば、硫黄分を含むPMとの直接接触による触媒の被毒を抑制することができる。
【0028】
この捕集層24は、排ガスの入口側セル及び出口側セルの隔壁部22に形成されているものとしてもよいが、図1に示すように、入口側セルの隔壁部22上に形成されており、出口側セルには形成されていないものとするのが好ましい。こうすれば、より圧力損失を低減して流体に含まれているPMをより効率よく除去することができる。また、ハニカムフィルタ20の作製が容易となる。また、本発明のハニカムフィルタにおいて、下流側捕集層24bの厚さを上流側捕集層24aの厚さよりも厚いものとしてもよい。下流側捕集層24bを厚くすれば、透過抵抗の小さい上流側隔壁部により多くの流体を流通させることができるからである。また、下流側捕集層24bが厚ければ、触媒を担持する際に触媒成分が下流側隔壁部内に流通しにくいため、上流側の触媒量を多くすることがより容易となるからである。また、下流側捕集層24bを厚くすれば、下流側隔壁部22bの内部に到達するPM量を低減可能であり、触媒量の少ない下流側隔壁部の触媒のPMとの接触による被毒をより抑制することができるからである。この捕集層24は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このとき、捕集層24は、隔壁部22と同種の材料により形成されているものとすることが好ましい。また、捕集層24は、セラミック又は金属の無機繊維を70重量%以上含有しているものとするのがより好ましい。こうすれば、繊維質によりPMを捕集しやすい。また、捕集層24は、無機繊維がアルミノシリケート、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びムライトから選択される1以上の材料を含んで形成されているものとすることができる。なお、捕集層24の粒子群の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で捕集層24を観察し、撮影した画像に含まれる捕集層24の各粒子を計測して求めた平均値をいうものとする。また、原料粒子における平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として原料粒子を測定したメディアン径(D50)をいうものとする。
【0029】
捕集層24の形成方法は、例えば、捕集層24の原料になる無機粒子を含むスラリーなどを用いてセル23の表面に形成するものとしてもよいし、捕集層24の原料になる無機粒子の微粉体などを気体によりセル内部に流入させてセル23の表面に形成するものとしてもよい。この無機粒子は、上述した無機材料としてもよく、隔壁の平均細孔径よりも小さい平均粒径を有することが好ましい。
【0030】
ここで、捕集層24の厚さの測定方法について図3を用いて説明する。捕集層24の厚さ、換言すると捕集層を構成する粒子群の厚さは、以下のようにして求めるものとする。ここでは、ハニカムフィルタ20の隔壁基材を樹脂埋めした後に研磨した観察用試料を用意し、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い得られた画像を解析することによって捕集層の厚さを求める。まず、流体の流通方向に垂直な断面を観察面とするように切断・研磨した観察用試料を用意する。次に、SEMの倍率を100倍〜500倍に設定し、後述する測定位置において、視野をおよそ500μm×500μmの範囲として用意した観察用試料の観察面を撮影する。次に、撮影した画像において、隔壁の最外輪郭線を仮想的に描画する。この隔壁の最外輪郭線とは、隔壁の輪郭を示す線であって、隔壁表面(照射面、図3上段参照)に対して垂直の方向からこの隔壁表面に仮想平行光を照射したものとしたときに得られる投影線をいうものとする(図3中段参照)。即ち、隔壁の最外輪郭線は、光が当たっているものとする高さの異なる複数の隔壁上面の線分と、隣り合う高さの異なる隔壁上面の線分の各々をつなぐ垂線とにより形成される。この隔壁上面の線分は、例えば、100μmの長さの線分に対して5μmの長さ以下の凹凸については無視する「5%解像度」により描画するものとし、水平方向の線分が細かくなりすぎないようにするものとする。また、隔壁の最外輪郭線を描画する際には、捕集層の存在については無視するものとする。続いて、隔壁の最外輪郭線と同様に、捕集層を形成する粒子群の最外輪郭線を仮想的に描画する。この粒子群の最外輪郭線とは、捕集層の輪郭を示す線であって、捕集層表面(照射面、図3上段参照)に対して垂直の方向からこの捕集層表面に仮想平行光を照射したものとしたときに得られる投影線をいうものとする(図3中段参照)。即ち、粒子群の最外輪郭線は、光が当たっているものとする高さの異なる複数の粒子群上面の線分と、隣り合う高さの異なる粒子群上面の線分の各々をつなぐ垂線とにより形成される。この粒子群上面の線分は、例えば、上記隔壁と同じ「解像度」により描画するものとする。多孔性の高い捕集層では、樹脂埋めして研磨して観察用試料を作製すると、空中に浮いているように観察される粒子群もあることから、このように仮想平行光の照射による投影線を用いて最外輪郭線を描画するのである。続いて、描画した隔壁の最外輪郭線の上面線分の各々の高さ及び長さに基づいて隔壁の最外輪郭線の平均線である隔壁の標準基準線を求める(図3下段参照)。また、隔壁の標準基準線と同様に、描画した粒子群の最外輪郭線の上面線分の各々の高さ及び長さに基づいて粒子群の最外輪郭線の平均線である粒子群の平均高さを求める(図3下段参照)。そして、得られた粒子群の平均高さと隔壁の標準基準線との差をとり、この差(長さ)を、この撮影画像における捕集層の厚さ(粒子群の厚さ)とする。このようにして、捕集層の厚さを求めることができる。
【0031】
また、捕集層24の平均細孔径及び気孔率は、SEM観察による画像解析によって求めるものとする。上述した捕集層の厚さと同様に、図3に示すように、ハニカムフィルタ20の断面をSEM撮影して画像を得る。次に、隔壁の最外輪郭線と粒子群の最外輪郭線との間に形成される領域を捕集層の占める領域(捕集層領域)とし、この捕集層領域のうち、粒子群の存在する領域を「粒子群領域」とすると共に、粒子群の存在しない領域を「捕集層の気孔領域」とする。そして、この捕集層領域の面積(捕集層面積)と、粒子群領域の面積(粒子群面積)とを求める。そして、粒子群面積を捕集層面積で除算し100を乗算することにより、得られた値を捕集層の気孔率とする。また、「捕集層の気孔領域」において、粒子群及び隔壁の最外輪郭線と粒子群の外周とに内接する内接円を直径が最大になるように描く処理を行う。このとき、例えばアスペクト比の大きい長方形の気孔領域など、1つの「捕集層の気孔領域」に複数の内接円を描くことができるときには、気孔領域が十分に埋められるように、できるだけ大きい内接円を複数描くものとする。そして、観察した画像範囲において、描いた内接円の直径の平均値を捕集層の平均細孔径とするものとする。このようにして、捕集層24の平均細孔径及び気孔率を求めることができる。
【0032】
ハニカムフィルタ20において、隔壁部22は、触媒を含むものである。また、捕集層24は、触媒を含むものとしてもよい。この触媒は、排ガスに含まれる未燃焼ガス(HCやCOなど)を酸化する触媒、捕集されたPMの燃焼を促進する触媒及びNOxを吸蔵/吸着/分解する触媒のうち少なくとも1種以上としてもよい。こうすれば、未燃焼ガスを効率よく酸化することやPMを効率よく除去することやNOxを効率よく分解することなどができる。この触媒としては、例えば、貴金属元素、遷移金属元素を1種以上含むものとするのがより好ましい。また、ハニカムフィルタ20では、他の触媒や浄化材が担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)などを含むNOx吸蔵触媒、少なくとも1種の希土類金属、遷移金属、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が挙げられる。具体的には、貴金属としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)や、金(Au)及び銀(Ag)などが挙げられる。触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sc,Ti,V,Cr等が挙げられる。また、希土類金属としては、例えば、Sm,Gd,Nd,Y,La,Pr等が挙げられる。また、アルカリ土類金属としては、例えば、Mg,Ca,Sr,Ba等が挙げられる。このうち、白金及びパラジウムがより好ましい。また、貴金属及び遷移金属、助触媒などは、比表面積の大きな担体に担持してもよい。担体としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトなどを用いることができる。PMの燃焼を促進する触媒を有するものとすれば、捕集層24上に捕集されたPMをより容易に除去することができるし、未燃焼ガスを酸化する触媒やNOxを分解する触媒を有するものとすれば、排ガスをより浄化することができる。触媒は、隔壁部22において厚さ方向に均一に担持されたものとしてもよい。また、触媒は、捕集層24において厚さ方向に均一に担持されたものとしてもよい。ここで、「触媒が厚さ方向に均一」とは、隔壁表面に垂直な方向での触媒量が均一であることをいい、完全に均一であってもよいし、ある程度のばらつきがあってもよい。例えば、隔壁表面に垂直な方向で触媒量が最大となる部分と最小となる部分の触媒量の差が0.2g/L以下や、0.1g/L以下などとすることができる。
【0033】
隔壁部22では、セルの上流側の隔壁部である上流側隔壁部22aの触媒量をa、セルの下流側の隔壁部である下流側隔壁部22bの触媒量をbとすると、1.05≦a/b≦3.00を満たす。このため、圧力損失の上昇を抑制し、浄化効率や昇温性能をより高めることができる。ここで、上流側隔壁部22aとは、例えば、排ガス流れ方向の上流側1/3の範囲をいうものとしてもよい。また、下流側隔壁部22bとは、例えば、排ガス流れ方向の下流側1/3の範囲をいうものとしてもよい。触媒量a及び触媒量bは1.5≦a/b≦3.0を満たすことがより好ましい。こうすれば、浄化効率や昇温性能をより高めることができるからである。ここで、「隔壁部の触媒量」とは、電子顕微鏡観察での元素分析により求めた触媒量(質量%)をいうものとする。なお、触媒量(質量%)に対して、計測対象であるハニカムフィルタの総重量を掛けて、ハニカムフィルタの体積で割ることによって、その計測部における見かけ上の単位体積あたりの触媒量(g/L)として扱ってもよい。この「触媒量」は、触媒量aと触媒量bとの相対関係が把握できればよく、具体的な触媒成分、例えばPtやPdなどの貴金属元素の量を直接電子顕微鏡観察での元素分析により求めた量としてもよいし、例えばアルミナなど貴金属元素が担持される触媒担体を電子顕微鏡観察での元素分析により求めた量を間接的に貴金属元素の量の代わりに用いるものとしてもよい。なお、触媒担体(例えばアルミナ)と同じ元素が隔壁の構成元素である場合は、触媒成分(貴金属など)の測定結果を用いて、触媒量aと触媒量bとの相対関係を求めるものとすればよい。
【0034】
図4〜6は、本発明のハニカムフィルタ20の触媒の分布の一例を示す模式図である。この図4のハニカムフィルタ20では、上流側隔壁部22aの触媒量が、下流側隔壁部22bの触媒量よりも多く、捕集層24および捕集層表面25では、上流側と下流側の触媒量が均一になっている。このように、捕集層24では、触媒が均一に担持されていてもよい。また、捕集層24には、触媒が担持されていなくてもよい。こうしても、圧力損失の上昇を抑制し、浄化効率や昇温性能を高めることができるからである。ここで、「触媒が均一」とは、上流側・下流側で触媒量に差がないことをいい、例えば、上流側と下流側との触媒量の差が0.02g/L以下や、0.01g/L以下などとすることができる。
【0035】
図5のハニカムフィルタ20では、上流側隔壁部22aの触媒量が、下流側隔壁部22bの触媒量よりも多く、上流側捕集層24aの触媒量が、下流側捕集層24bの触媒量よりも多く、捕集層表面25では、上流側と下流側の触媒量が均一になっている。このように、捕集層24では、例えば、少なくとも一部に触媒が担持されており、上流側捕集層24aの触媒量をA、下流側捕集層24bの触媒量をBとすると、1.08≦A/B≦5.00を満たすことが好ましい。こうすれば、浄化効率をより高めることができるからである。このうち、1.50≦A/B≦5.00を満たすことが好ましく、2.00≦A/B≦5.00を満たすことがより好ましい。こうすれば、浄化効率をより高めることができるからである。この場合、捕集層の上流側で、捕集層を形成する粒子表面に触媒粒子が担持されているため、排ガスと触媒との接触時間がより長くなることによって浄化効率や昇温性能をより高めることができると考えられる。ここで、「捕集層の触媒量」は、「隔壁部の触媒量」と同様であり、捕集層に担持された触媒量であって、ハニカムフィルタの単位体積(L)あたりの触媒の重量(g)をいうものとしてもよい。
【0036】
図6のハニカムフィルタ20では、上流側隔壁部22aの触媒量が下流側隔壁部22bの触媒量よりも多く、上流側捕集層24aの触媒量が、下流側捕集層24bの触媒量よりも多く、上流側捕集層表面25aの触媒量が下流側捕集層表面25bの触媒量よりも多くなっている。このように、例えば、ハニカムフィルタ20では、捕集層表面25に触媒が担持されており、上流側捕集層表面25aの触媒量をAS、下流側捕集層表面25bの触媒量をBSとすると、1.10≦AS/BS≦8.00を満たすものであることがより好ましい。こうすれば、昇温性能をより高めることができ、再生処理における再生効率をより高めることができるからである。このうち、1.50≦AS/BS≦8.00であることがより好ましく、3.00≦AS/BS≦8.00であることがより好ましい。こうすれば、昇温性能をより高めることができ、再生処理における再生効率をより高めることができるからである。この場合、セルに入った排ガスが、より早期に触媒と接触して酸化熱を発生させるため、この熱の伝播によってハニカムフィルタ全体が早期に高温となり、昇温性能をより高めることができ、浄化効率を高めることができると考えられる。ここで、「捕集層表面の触媒量」は、「隔壁部の触媒量」と同様であり、捕集層表面に担持された触媒量であって、ハニカムフィルタの単位体積(L)あたりの触媒の重量(g)をいうものとしてもよい。
【0037】
ハニカムフィルタ20には、上述した図4〜6に示したように触媒が担持されていてもよいが、上流側隔壁部22aと下流側隔壁部22bの触媒量が上述した関係を満たしていれば、捕集層24の内部や捕集層表面25の触媒については、特に限定されない。例えば、捕集層24の内部には触媒が形成されておらず捕集層表面25にのみ触媒が形成されていてもよいし、捕集層表面25には触媒が形成されておらず捕集層24内部にのみ触媒が形成されていてもよい。また、上流側捕集層24aより下流側捕集層24bの触媒量が多くてもよいし、上流側捕集層表面25aより下流側捕集層25bの触媒量が多くてもよい。また、触媒は、隔壁部や捕集層の厚さ方向について触媒量が変化するものであってもよい。
【0038】
ここで、触媒量の測定方法について説明する。上流側の触媒量a,A,ASの測定位置は、図7に示すように、ハニカムフィルタ20の上流側端面から全長の約1/6の位置の断面において、中央点及び、この中央点に対して上下左右に位置する任意の4点を含む5箇所とし、5箇所の測定値の平均を触媒量とする。また、下流側の触媒量b,B,BSの測定位置は、図7に示すように、ハニカムフィルタ20の下流側端面から全長の約1/6の位置の断面において、中央点及び、この中央点に対して上下左右に位置する任意の四点を含む5箇所とし、5箇所の測定値の平均を触媒量とする。測定は以下のように行うものとする。まず、隔壁部22の触媒量a,b及び捕集層24の触媒量A,Bの測定用試料として、ハニカムフィルタ20の隔壁基材を測定断面(X−Y平面)が測定面となるように切り出し、樹脂埋めした後に研磨したものを用意する。また、捕集層表面25の触媒量AS,BSの測定用試料として、ハニカムフィルタ20の隔壁基材を捕集層24の表面(膜面)が測定面となるように切り出したものを用意する。続いて、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い、観察した領域で元素分析を行うことにより触媒量を算出する。ここで、SEMの倍率は100倍〜1000倍とすることが好ましい。元素分析には、例えばエネルギー分散型X線分析装置(EDX)や、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)などを用いることができる。EDXでの計測は、観察視野におけるスキャン計測を行い、得られた値(質量%)をその計測領域における濃度とし、各測定部位での値同士を相対比較することで各測定部の相対関係を評価するものとしてもよい。なお、触媒中の貴金属成分(以下PGMとも称する)を測定するものとしてもよいし、貴金属成分の担体としてのアルミナの量を測定し、これを貴金属成分の含有量に対応する触媒量としてもよい。具体的には、観察視野における5〜10点の任意の位置において元素分析を行い、検出された成分の中の触媒成分に分類されるものの中で最も多いものを触媒担体と判定し、その触媒担体の質量%をその観察視野における触媒量として扱うものとする。例えば、酸化触媒がコートされており、検出された触媒成分の内、最も多いものがアルミナであれば、そのアルミナの量を触媒量として扱うものとしてもよい。あるいは、触媒成分(Ptなど)が直接測定可能であれば、コートされている触媒における触媒成分(例えばPt)の質量%をその計測領域における触媒量として扱うものとしてもよい。例えば、上流側隔壁部と下流側隔壁部での触媒量の比較を行う場合など、各計測部の触媒量の相対関係を評価する場合には、EDXにて得られた質量%の値をそのまま比較に用いてもよい。また、質量%に対して、計測対象であるハニカムフィルタの総重量を掛けて、ハニカムフィルタの体積で割ることによって、その計測部における見かけ上の単位体積あたりの触媒量として扱ってもよい。
【0039】
接合層27は、ハニカムセグメント21を接合する層であり、無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。無機粒子は、上述した無機材料の粒子とすることができ、その平均粒径は0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。無機繊維は、上述したものとしてもよく、例えば平均径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であることが好ましい。結合材としてはコロイダルシリカや粘土などとすることができる。接合層27は、0.5mm以上2mm以下の範囲で形成されていることが好ましい。なお、平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として測定したメディアン径(D50)をいうものとする。外周保護部28は、ハニカムフィルタ20の外周を保護する層であり、上述した無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。
【0040】
ハニカムフィルタ20において、40℃〜800℃におけるセル23の通過孔方向の熱膨張係数は、6.0×10-6/℃以下であることが好ましく、1.0×10-6/℃以下であることがより好ましく、0.8×10-6/℃以下であることが更に好ましい。この熱膨張係数が6.0×10-6/℃以下であると、高温の排気に晒された際に発生する熱応力を許容範囲内に抑えることができる。
【0041】
次に、このハニカムフィルタ20の製造方法について説明する。このハニカムフィルタ20の製造方法は、例えば、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する多孔質の隔壁部22を形成する隔壁部形成工程と、排気に含まれるPMを捕集・除去する捕集層24を形成する捕集層形成工程と、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部を備えたハニカム構造体を、全体を触媒成分に接触させて触媒を形成する全体触媒形成工程と、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部を備えたハニカム構造体を、上流側だけ触媒成分に接触させて触媒を形成する部分触媒形成工程と、を含むものとしてもよい。
【0042】
このハニカムフィルタの製造方法において、隔壁部形成工程では、隔壁部22の原料を混合し、所定の成形方法で隔壁部22を成形する。ここでは、隔壁部22は、捕集層24の形成前且つ焼成前の成形体であるハニカム成形体の成形に伴い成形される。隔壁部22の原料としては、例えば基材と造孔材と分散媒とを混合して坏土やスラリーを調製してもよい。基材としては、上述した無機材料を用いることができる。例えば、SiCを基材とするものにおいてはSiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、水等の分散媒、造孔材を加えて、更に、これに有機バインダ等を添加して混練し、可塑性の坏土を形成することができる。SiC粉末及び金属Si粉末原料(成形原料)を混練して坏土を調製する手段は、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。造孔材としては、のちの焼成により燃焼するものが好ましく、例えば澱粉、コークス、発泡樹脂などを用いることができる。この坏土には、適宜、バインダーや分散剤などを添加してもよい。バインダーとしては、例えばセルロース系などの有機系バインダを用いることが好ましい。分散剤としては、エチレングリコールなど界面活性剤を用いることができる。この隔壁部22は、例えば、セル23が並んで配設される形状の金型を用いて上述した任意の形状に押出成形することによりハニカム成形体として形成するものとしてもよい。続いて、ハニカム成形体に目封止部26を形成する処理を行う。この目封止部26は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセル23と、一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口されたセル23と、が交互に配置されるよう形成することが好ましい。目封止に用いる原料は、上述した隔壁部22を形成する原料を用いるものとしてもよい。また、得られたハニカム成形体は、乾燥処理・仮焼処理・焼成処理を行うことが好ましい。仮焼処理は、焼成温度よりも低い温度でハニカム成形体に含まれる有機物成分を燃焼除去する処理である。焼成温度は、コージェライト原料では、1400℃〜1450℃とし、Si結合SiCでは、1450℃とすることができる。このような工程を経て、捕集層24を形成する前のハニカム構造体を得ることができる。なお、ここでいうハニカム構造体とは、ハニカムセグメント21を形成するものであってもよいし、複数のハニカムセグメント21を接合したハニカムフィルタ20を形成するものであってもよい。
【0043】
このハニカムフィルタの製造方法において、捕集層形成工程は、湿式で行ってもよいし、乾式で行ってもよい。また、これらの捕集層形成工程では、ハニカムフィルタ20の下流側捕集層24bが上流側捕集層24aより形成厚が厚くなるよう捕集層24を形成してもよい。この捕集層24の平均厚さは、10μm以上80μm以下であることが好ましい。捕集層の厚さが10μm以上ではPMを捕集しやすく、80μm以下では流体が隔壁を通過する抵抗をより低減可能であり、圧力損失をより低減することができる。この捕集層の平均厚さは、20μm以上60μm以下であることがより好ましく、30μm以上50μm以下であることが更に好ましい。
【0044】
捕集層形成工程を湿式で行う場合、例えば、捕集層24の原料を含むスラリーを調製し、このスラリーをセル23へ供給することにより捕集層24を形成するものとしてもよい。このスラリーは、捕集層24の原料として、例えば、無機繊維と結合材とバインダーと分散媒とを混合して調製してもよい。あるいは、捕集層24の原料として、例えば、無機粒子と結合材とバインダーと分散媒とを混合して調製してもよい。無機繊維は、上述したものを用いることができ、例えば平均径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であるものが好ましい。無機粒子としては、上述した無機材料の粒子を用いることができる。例えば、SiCを基材とするものにおいては、例えば平均粒径が0.1μm以上30μm以下のSiC粒子を用いることができる。結合材としては、コロイダルシリカや粘土などを用いることができる。バインダーとしては、例えばセルロース系の有機系バインダを用いることが好ましい。分散剤としては、エチレングリコールなど界面活性剤を用いることができる。なお、平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として測定したメディアン径(D50)をいうものとする。
【0045】
この捕集層形成工程では、セル23の出口側から吸引することによりスラリーに含まれる固形分を隔壁部22上に形成するものとしてもよいし、セル23の入口側からスラリーを圧送することによりスラリーに含まれる固形分を隔壁部22上に形成するものとしてもよい。このうち、後者の方が捕集層24の厚さをより均一にすることができる。捕集層24は、隔壁部22上に原料の層を形成したあと乾燥及び熱処理を行い固定化することが好ましい。熱処理での温度としては、例えば200℃以上900℃以下の温度とすることが好ましく、650℃以上750℃以下の温度とするのがより好ましい。熱処理温度が200℃以上では含まれている有機物を十分除去することができ、900℃以下では細孔の減少を抑制することができる。
【0046】
捕集層形成工程を乾式で行う場合、例えば、気体(空気)を捕集層の原料の搬送媒体とし、捕集層の原料を含む気体を入口セルへ供給するものとしてもよい。こうすれば、捕集層を構成する粒子群がより粗に形成されるため、極めて高い気孔率の捕集層を作製することができ、好ましい。捕集層の原料は、例えば、無機繊維や無機粒子を用いてもよい。無機繊維は上述したものを用いることができ、例えば平均径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であるものが好ましい。無機粒子としては、上述した無機材料の粒子を用いることができる。例えば、平均粒径が0.5μm以上15μm以下のSiC粒子やコージェライト粒子を用いることができる。この捕集層の原料は、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径を有することが好ましい。このとき、隔壁部22と捕集層24との無機材料を同じ材質とすることが好ましい。また、無機粒子を含む気体を流入させる際に、気体の出口側を吸引することが好ましい。また、捕集層24の形成において、無機繊維や無機粒子と共に結合材も供給してもよい。結合材としてはゾル材料、コロイド材料から選択でき特にコロイダルシリカを用いることが好ましい。無機粒子はシリカにより被覆されており且つ無機粒子同士、及び無機粒子と隔壁部の材料とがシリカにより結合されていることが好ましい。例えば、コージェライトやチタン酸アルミニウムなどの酸化物材料の場合には、無機粒子同士、及び無機粒子と隔壁部の材料とが焼結により結合されているのが好ましい。捕集層24は、隔壁部22上に原料の層を形成したあと、熱処理を行い結合することが好ましい。熱処理での温度としては、例えば650℃以上1350℃以下の温度とするのが好ましい。熱処理温度が650℃以上では十分な結合力を確保することができ、1350℃以下であると過度な粒子の酸化による細孔の閉塞を抑制することができる。
【0047】
このハニカムフィルタ20の製造方法では、ハニカム構造体を、全体を触媒成分に接触させて触媒を形成する全体触媒形成工程及び、上流側だけ触媒成分に接触させて触媒を形成する部分触媒形成工程を行う。この全体触媒形成工程及び部分触媒形成工程は、隔壁部形成工程後、捕集層形成工程前に行ってもよいし、捕集層形成工程後に行ってもよい。また、全体触媒形成工程と部分触媒形成工程は、どちらを先に行ってもよい。全体触媒形成工程を先に行う場合、例えば、全体触媒形成工程ののち、触媒を乾燥させる全体触媒乾燥工程を行い、次いで、部分触媒形成工程ののち、触媒を乾燥させる部分触媒乾燥工程を行い、最後に焼成または高温での熱処理により触媒を担持させる焼成工程(熱処理工程)を行うものとしてもよい。また、全体触媒形成工程の後に焼成又は高温での熱処理により触媒を担持させる焼成工程(熱処理工程)を行い、その後部分触媒形成工程を行い、さらに焼成工程(熱処理工程)を行うものとしてもよい。部分触媒形成工程を先に行う場合も、同様とすることができる。捕集層24に形成する触媒としては、上述したような、未燃焼ガスを酸化する触媒やNOxを分解する触媒などを適宜選択することができる。また、触媒の形成方法は特に限定されないが、例えば、ハニカム構造体の捕集層24に対して、触媒成分を含む触媒液をウォッシュコートしてもよいし、ディッピング法等の従来公知のセラミック膜形成方法を利用してもよい。この際、触媒量は触媒を含む触媒液の濃度や触媒担持に要する時間等を制御することにより所望の値に調整することができる。なお、未燃焼ガスを酸化する触媒やNOxを分解する触媒などの触媒成分は、高分散状態で担持させるため、予めアルミナのような比表面積の大きな耐熱性無機酸化物に一旦担持させた後、ハニカム構造体の隔壁等に担持させてもよい。また、触媒は、例えば、吸引法等の従来公知の触媒担持方法を応用して、触媒スラリーを隔壁及び/又はPM捕集層の細孔内に担持させ、乾燥、焼成する方法等により形成してもよい。
【0048】
ここでは、触媒の形成方法としてディッピング法を用いた場合について、図8,9を用いて説明する。まず、ハニカム構造体の全体が浸かるように触媒を含む触媒液を満たした容器を準備し、そこにハニカム構造体の全体を浸漬する(図8(a)参照)。所定時間浸漬したハニカム構造体を容器から引き上げ、触媒成分を十分に乾燥させる(図8(b)参照)。このようにして、ハニカム構造体の上流側及び下流側の両方に均一に触媒を形成する。また、触媒を乾燥することにより、部分触媒形成工程において、全体触媒形成工程で形成された触媒成分の溶出を抑制することができる。次に、ハニカム構造体の上流側が浸漬するように触媒液を満たした容器を準備し、そこにハニカム構造体の上流側を浸漬する(図8(c)参照)。所定時間浸漬したハニカム構造体を容器から引き上げ、触媒成分を十分に乾燥させる(図8(d)参照)。これにより、ハニカム構造体の上流側にはさらに触媒が形成されるされるため、上流側の触媒量が多くなる。上流側を浸漬する触媒液の触媒の濃度をより高いものとしておけば、上流側の触媒の濃度を下流側よりもより容易に大きくすることができる。なお、図8(c)のようにハニカム構造体の上流側を触媒液に浸漬している場合には、触媒液側が開口しているセルのみならず、触媒液側に目封止部26を有するセルについても触媒液が侵入するため(図9参照)、上流側全体は均一に触媒成分が形成される。このとき、触媒粒子は隔壁部内の細孔よりも粒径が小さく、隔壁内部を通過可能であることが好ましい。
【0049】
また、このハニカムフィルタ20の製造方法は、例えば、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する多孔質の隔壁部22を形成する隔壁部形成工程と、排気に含まれるPMを捕集・除去する捕集層24を形成する捕集層形成工程と、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部を備えたハニカム構造体を、上流側だけ触媒成分に接触させて触媒を形成する上流側触媒形成工程と、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部を備えたハニカム構造体を、下流側だけ前記触媒成分よりも低濃度の触媒成分に接触させて触媒を形成する下流側触媒形成工程と、を含むものとしてもよい。
【0050】
隔壁部形成工程及び捕集層形成工程は、上述と同様に行うものとすることができる。このハニカムフィルタ20の製造方法では、ハニカム構造体を、上流側だけ触媒成分に接触させて触媒を形成する上流側触媒形成工程及び、下流側だけ上流側と接触させた触媒成分よりも低濃度の触媒成分に接触させて触媒を形成する下流側触媒形成工程を行う。この上流側触媒形成工程及び下流側触媒形成工程は、隔壁部形成工程後、捕集層形成工程前に行ってもよいし、捕集層形成工程後に行ってもよい。また、上流側触媒形成工程と下流側触媒形成工程は、どちらを先に行ってもよい。上流側触媒形成工程を先に行う場合、例えば、上流側触媒形成工程ののち、触媒を乾燥させる上流側触媒乾燥工程を行い、次いで、下流側触媒形成工程ののち、触媒を乾燥させる下流側触媒乾燥工程を行い、最後に、焼成又は高温での熱処理により触媒を担持させる焼成工程(熱処理工程)を行うものとしてもよい。また、上流側触媒形成工程の後に焼成又は高温での熱処理により触媒を担持させる焼成工程(熱処理工程)を行い、その後下流側触媒形成工程を行い、さらに焼成工程(熱処理工程)を行うものとしてもよい。下流側触媒形成工程を先に行う場合も、同様とすることができる。捕集層24に形成する触媒としては、上述したような、未燃焼ガスを酸化する触媒やNOxを分解する触媒などを適宜選択することができる。また触媒の形成方法も、上述の全体触媒形成工程や部分触媒形成工程と同様の方法を用いることができる。
【0051】
以上説明した実施形態のハニカムフィルタ及び、以上説明した実施形態の製造方法によって製造したハニカムフィルタによれば、上流側隔壁部22aの触媒量aと下流側隔壁部22bの触媒量bとの比率が適切であり、固体成分を捕集・除去する層である捕集層とを備えているため、圧力損失の上昇を抑制し、浄化効率や昇温性能をより高めることができる。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0053】
例えば、上述した実施形態では、ハニカムセグメント21を接合層27により接合したハニカムフィルタ20としたが、図10に示すように、一体成形されたハニカムフィルタ40としてもよい。ハニカムフィルタ40において、隔壁部42、セル43、捕集層44、目封止部46及び外周保護部48などは、ハニカムフィルタ20の隔壁部22、セル23、捕集層24、目封止部26及び外周保護部28と同様の構成とすることができる。このようにしても、圧力損失の上昇を抑制し、浄化効率や昇温性能をより高めることができる。
【0054】
上述した実施形態では、ハニカムフィルタ20には触媒が含まれるものとしたが、流通する流体に含まれる除去対象物質を浄化処理可能なものであれば特にこれに限定されない。また、上述した実施形態では、自動車用のハニカムフィルタ20として説明したが、流体に含まれる固体成分を捕集・除去するものであれば特にこれに限定されず、発電エンジン用のハニカムフィルタとしてもよいし、建設機器用のハニカムフィルタとしてもよい。
【実施例】
【0055】
以下には、ハニカムフィルタを具体的に製造した例を実施例として説明する。
【0056】
[ハニカムフィルタの作製]
まず、以下のようにハニカムセグメントを作製した。SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して混練し、可塑性の坏土を得て、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、所望形状のハニカムセグメント成形体を成形した。ここでは、隔壁部の厚さが305μm、断面が35mm×35mm、長さが152.4mmの形状に成形した。次に、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波により乾燥させ、更に熱風にて乾燥させたあと、目封止をして、酸化雰囲気において550℃、3時間で仮焼きした後に、不活性雰囲気下にて1400℃、2時間の条件で本焼成を行った。目封止部の形成は、セグメント成形体の一方の端面のセル開口部に交互にマスクを施し、マスクした端面をSiC原料を含有する目封止スラリーに浸漬し、開口部と目封止部とが交互に配設されるように行った。また、他方の端面にも同様にマスクを施し、一方が開口し他方が目封止されたセルと一方が目封止され他方が開口したセルとが交互に配設されるように目封止部を形成した。このようにしてハニカムセグメントを作製した。隔壁部の気孔率は42%であった。
【0057】
次に、捕集層の形成を湿式で行った。まず、上述のように作製したハニカムセグメントについて、無機粒子としてSiC(平均粒径15μm)を2.5重量%、有機バインダとしてカルボキシメチルセルロースを0.5重量%、結合材としてコロイダルシリカを2重量%、分散媒としての水を95重量%となるよう混合し、捕集層形成用のスラリーを得た。次に、図11に示す捕集層形成装置50を用いて捕集層を形成した。まず、作製したハニカムセグメントの一端に治具51に固定すると共に、ハニカムセグメントの他端に供給固定筒54を固定した。治具51の中央には貫通孔52が形成されている。また、供給固定筒54の先端には、スラリー供給用の供給口53が形成されている。供給固定筒54とハニカムセグメント21との間には、スラリーの供給量を調整する供給量調整板56が配設されている。この供給量調整板56は、スラリーの流量を調整する部材である。次に、所定の膜厚が形成されるよう予め経験的に得た位置に供給量調整板56を固定し、供給口53からスラリーを圧送し供給口53側に目封止部26が形成されていないハニカムセグメントのセル内部にスラリーを供給した(図11の左図)。次に、治具51の貫通孔52を吸引し、スラリーの溶媒である水を隔壁部22を介して排出させた(図11の中央図)。このとき、供給固定筒54側に開口部を有するセル23の内部にスラリーの固体分が残留し隔壁部上に捕集層が形成された。そして、得られたハニカム構造体を熱風乾燥機で乾燥させたのち、700℃で1時間熱処理して捕集層を形成したハニカムセグメントを得た(図11右図)。
【0058】
次に、捕集層を形成したハニカムセグメントの側面に、アルミナシリケートファイバ、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、炭化珪素、および水を混練してなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角形状のハニカムセグメント接合体を得た。さらに、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周囲を、接合用スラリーと同等の材料からなる外周コート用スラリーで被覆し、乾燥により硬化させることにより所望の形状、セグメント形状、セル構造を有する円柱形状のハニカムフィルタを得た。ここでは、ハニカムフィルタは、断面の直径が143.8mm、長さが152.4mmの形状とした。
【0059】
(比較例1)
次に、触媒の担持を以下のように行った。まず、重量比でアルミナ:白金:セリア系材料=7:0.5:2.5とし、セリア系材料を重量比でCe:Zr:Pr:Y:Mn=60:20:10:5:5とした原料を混合し、溶媒を水とした触媒のスラリーを調製した。以下では、触媒のスラリーとはこの組成のものを示し、触媒の粒径や濃度を適宜調整して用いるものとした。また、触媒の粒径が捕集層の細孔径よりも小さく捕集層を通過可能なものを小粒径、触媒の細孔径が捕集層の細孔径よりも大きく捕集層の表面に捕集されるものを大粒径と称するものとした。次に、所定濃度の小粒径の触媒のスラリーに、ハニカムフィルタの下流側端面を所定の高さまで浸漬させ、上流側より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定時間にわたって吸引して触媒を形成し、120℃2時間で乾燥させ、550℃1時間で焼付けを行った。なお、ハニカムフィルタの単位体積あたりの触媒量は全体で20g/Lとなるようにした(以下同様とする)。このようにして、上流側隔壁部の触媒量aと下流側隔壁部の触媒量bとの比がa/b=1,上流側捕集層の触媒量Aと下流側捕集層の触媒量Bとの比がA/B=1,上流側捕集層表面の触媒量AS、下流側捕集層表面の触媒量BSとの比がAS/BS=1となるように触媒を担持した比較例1のハニカムフィルタを作製した。
【0060】
(比較例2)
所定濃度の小粒径の触媒のスラリーに、ハニカムフィルタの下流側端面を所定の高さまで浸漬させ、上流側より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定時間にわたって吸引して触媒を形成し、120℃2時間で乾燥させた。これにより、上流側・下流側で均一な濃度の触媒が隔壁部,捕集層,捕集層表面に固定された。次に、所定濃度の小粒径の触媒スラリーにハニカムフィルタの上流側端面を所定の高さまで所定時間浸漬させて触媒を形成し、捕集層表面から隔壁部に向けて押出し圧力0.3MPaでエアーを吹き付けて捕集層及び捕集層表面に形成された触媒を隔壁部に押し出した。そして、120℃2時間で乾燥させた後、550℃1時間で焼付けを行った。このようにして、a/b=1.03,A/B=1,AS/BS=1となるように比較例2のハニカムフィルタを作製した。
【0061】
(実施例1〜6)
a/b=1.05となるようにした以外は比較例2と同様の工程により実施例1のハニカムフィルタを作製した。また、a/b=1.08となるようにした以外は比較例2と同様の工程により実施例2のハニカムフィルタを作製した。また、a/b=1.1となるようにした以外は比較例2と同様の工程により実施例3のハニカムフィルタを作製した。また、a/b=1.5となるようにした以外は比較例2と同様の工程により実施例4のハニカムフィルタを作製した。また、a/b=2となるようにした以外は比較例2と同様の工程により実施例5のハニカムフィルタを作製した。また、a/b=3となるようにした以外は比較例2と同様の工程により実施例6のハニカムフィルタを作製した。
【0062】
(比較例3)
a/b=5となるようにした以外は比較例2と同様の工程により比較例3のハニカムフィルタを作製した。
【0063】
(比較例4〜6)
捕集層を形成する工程を省略し、a/b=1.05となるようにした以外は比較例2と同様の工程により比較例4のハニカムフィルタを作製した。また、a/b=1.5となるようにした以外は比較例4と同様の工程により比較例5のハニカムフィルタを作製した。また、a/b=3.0となるようにした以外は比較例4と同様の工程により比較例6のハニカムフィルタを作製した。
【0064】
(実施例7〜15)
所定濃度の小粒径の触媒のスラリーに、ハニカムフィルタの下流側端面を所定の高さまで浸漬させ、上流側より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定時間にわたって吸引して触媒を形成し、120℃2時間で乾燥させた。次に、所定濃度の小粒径の触媒スラリーに、ハニカムフィルタの上流側端面を所定の高さまで所定時間浸漬させて触媒を形成し、その後捕集層表面から隔壁部に向けてエアーを吹き付けて捕集層及び捕集層表面の触媒を隔壁部に押し出し、120℃2時間で乾燥させた。これにより、隔壁部は上流側が高濃度、捕集層及び捕集層表面は上流側・下流側で均一な濃度の触媒が固定された。さらに、所定濃度の小粒径の触媒スラリーに、ハニカムフィルタの上流側端面を所定の高さまで所定時間浸漬させて触媒を形成し、その後捕集層表面から隔壁部に向けてエアーを吹き付けて捕集層表面の触媒を捕集層内部に押し出し、120℃2時間で乾燥させた後、550℃1時間で焼付けを行った。このようにして、a/b=1.5,A/B=1.03,AS/BS=1となるように実施例7のハニカムフィルタを作製した。また、A/B=1.05となるようにした以外は実施例7と同様の工程により実施例8のハニカムフィルタを作製した。また、A/B=1.08となるようにした以外は実施例7と同様の工程により実施例9のハニカムフィルタを作製した。また、A/B=1.1となるようにした以外は実施例7と同様の工程により実施例10のハニカムフィルタを作製した。また、A/B=1.5となるようにした以外は実施例7と同様の工程により実施例11のハニカムフィルタを作製した。また、A/B=2となるようにした以外は実施例7と同様の工程により実施例12のハニカムフィルタを作製した。また、A/B=3となるようにした以外は実施例7と同様の工程により実施例13のハニカムフィルタを作製した。また、A/B=5となるようにした以外は実施例7と同様の工程により実施例14のハニカムフィルタを作製した。また、A/B=8となるようにした以外は実施例7と同様の工程により実施例15のハニカムフィルタを作製した。
【0065】
(実施例16〜25)
所定濃度の小粒径の触媒のスラリーに、ハニカムフィルタの下流側端面を所定の高さまで浸漬させ、上流側より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定時間にわたって吸引して触媒を形成し、120℃2時間で乾燥させた。次に、所定濃度の小粒径の触媒スラリーに、ハニカムフィルタの上流側端面を所定の高さまで所定時間浸漬させて触媒を形成し、120℃2時間で乾燥させた。これにより、上流側が高濃度となるように隔壁部,捕集層,捕集層表面に触媒が固定された。ついで、所定濃度の大粒径の触媒スラリーにハニカムフィルタの上流側端面を所定の高さまで所定時間浸漬させて触媒を形成し、120℃2時間で乾燥させた後、550℃1時間で焼付けを行った。このようにして、a/b=1.5,A/B=1.5,AS/BS=1.03となるように実施例16のハニカムフィルタを作製した。また、AS/BS=1.05となるようにした以外は実施例16と同様の工程により実施例17のハニカムフィルタを作製した。また、AS/BS=1.08となるようにした以外は実施例16と同様の工程により実施例18のハニカムフィルタを作製した。また、AS/BS=1.1となるようにした以外は実施例16と同様の工程により実施例19のハニカムフィルタを作製した。また、AS/BS=1.5となるようにした以外は実施例16と同様の工程により実施例20のハニカムフィルタを作製した。また、AS/BS=2となるようにした以外は実施例16と同様の工程により実施例21のハニカムフィルタを作製した。また、AS/BS=3となるようにした以外は実施例16と同様の工程により実施例22のハニカムフィルタを作製した。また、AS/BS=5となるよにした以外は実施例16と同様の工程により実施例23のハニカムフィルタを作製した。また、AS/BS=8となるようにした以外は実施例16と同様の工程により実施例24のハニカムフィルタを作製した。また、AS/BS=10となるようにした以外は実施例16と同様の工程により実施例25のハニカムフィルタを作製した。
【0066】
(実施例26)
捕集層の形成を乾式で行った以外は、実施例22と同様の工程により実施例26のハニカムフィルタを作製した。乾式での捕集層の形成は、以下のように行った。まず、上述のように作製したハニカムセグメントの排ガス流入側の開口端部より、隔壁の平均細孔径よりも小さい平均粒径を有するSiC粒子を含む空気を流入させ、且つハニカムセグメントの流出側より吸引しながら、排ガス流入側の隔壁の表層に堆積させた。次に、大気雰囲気下にて1300℃、2時間の条件の熱処理により、隔壁の表層に堆積させたSiC粒子同士、及び堆積させたSiC粒子と隔壁を構成するSiC及びSi粒子と結合させた。このように、捕集層を形成したハニカムセグメントを得た。
【0067】
(実施例27)
比較例6と同様に捕集層のないハニカムセグメントへa/b=3となるように触媒をコートしたあとで、実施例1と同様の工程を経て捕集層の形成を湿式で行い、得られたハニカムフィルタを実施例27とした。即ち、この実施例27は、隔壁部には触媒が形成されているが捕集層には触媒が形成されていないものであり、a/b=3、A/B=なし、As/Bs=なし、である。この実施例27の測定結果は、上記実施例と共に後述する表1に記載した。
【0068】
[触媒量の測定]
作成したハニカムフィルタについて、触媒量を以下のように測定した。まず、隔壁部22の触媒量a,b及び捕集層24の触媒量A,Bの測定用試料として、ハニカムフィルタ20の隔壁基材を測定断面(X−Y平面)が測定面となるように切り出し樹脂埋めした後に研磨したものを用意した。樹脂埋めには、スペシフィックスエポキシ系樹脂(ストルアス社製)とスペシフィックス−20硬化剤(ストルアス社製)を混合して硬化させる2液タイプのものを用いた。また、捕集層表面25の触媒量AS,BSの測定用試料として、ハニカムフィルタ20の隔壁基材を捕集層24の表面(膜面)が測定面となるように切り出したものを用意した。続いて、走査型電子顕微鏡(S−3200N,日立ハイテクノロジーズ製)を用いて500倍の倍率でSEM観察を行い、観察した領域でエネルギー分散型X線分析装置(EMAX−5770W,堀場製作所製)を用いて元素分析を行った。元素分析では、アルミニウム量を測定し、これを触媒量とした。なお、隔壁部および捕集層では、それぞれ触媒が厚さ方向に均一に担持されていた。
【0069】
[耐久後HC浄化試験]
流入ガス温度200〜650℃の昇降温を270secで行うサイクルを1サイクルとして排ガスを流入し、これを200サイクル繰り返す耐久試験を実施した。耐久試験後のハニカムフィルタを2.0Lディーゼルエンジンの排ガス後流部に設置し、エンジン回転数2000rpm、トルク60Nmの定常状態でエンジンを駆動し、ハニカムフィルタの上流側のガスの温度が安定したときの入口のHCに対する出口のHC量の割合を耐久後浄化効率(%)として算出した。
【0070】
[圧力損失試験]
PMを含む200℃の排ガスを2.27Nm3/分の流量で流して、ハニカムフィルタ内部にPMを徐々に堆積させ、ハニカムフィルタの外形体積に対するPM体積量が6g/Lに達した時点におけるハニカムフィルタの入口と出口との圧力を測定し、入口側と出口側の圧力差を圧力損失(kPa)として算出した。
【0071】
[PM再生試験]
圧力損失試験と同様にしてPMを堆積させたハニカムフィルタを用意た。次に、2.0Lディーゼルエンジンの排ガス後流部に設置し、エンジン回転数2000rpm、トルク60Nmの定常状態でエンジンを駆動し、ハニカムフィルタの上流側のガス温度が安定したらポストインジェクションを入れ、ガス温度650度の燃焼ガスを流入させて再生を10分間行った。PM堆積後再生前後のハニカムフィルタの重量を測定し、(再生前重量−再生後重量)/初期PM重量で表されるPMの再生効率(%)を算出した。
【0072】
[実験結果]
表1には、実施例1〜6及び比較例1〜6の実験結果を示した。比較例1は、隔壁部,捕集層,捕集層表面のいずれも上流側・下流側で均一に触媒が担持されたものである。実施例1〜6及び比較例2,3は、隔壁部のみ上流側に触媒が多く担持され、捕集層,捕集層表面には上流側・下流側で均一に触媒が担持されたものである。比較例4〜6は、捕集層が形成されていないものである。この結果より、a/bを大きくすると、耐久後浄化効率(HC除去効率)が向上することが分かった。捕集層が形成されていない比較例4〜6では、a/b=1の実施例よりも耐久後浄化効率が低いことから、捕集層を設けることとa/bを所定値とすることとの相乗効果によって、耐久後浄化効率が高められることが分かった。特に、1.05≦a/b≦3.00であれば、圧力損失の上昇を抑制し、耐久後浄化効率を低減できることが分かった。このうち、1.5≦a/b≦3.0であれば、耐久後浄化効率をより高めることができることが分かった。このような効果が得られた理由としては、排ガスと触媒との上流側での接触が多いと、HC成分などの酸化により発生した酸化熱がハニカムフィルタ全体により早くより無駄なく伝播するため昇温性能が良好となり、触媒の活性が高まって浄化効率が向上したり、1回の再生処理でのPMの燃焼量が増加したためと推察された。また、隔壁表面に捕集層が存在することで隔壁内部の触媒がPMなどと直接接触することを抑制し、PMに含まれる硫黄などによる触媒の被毒を抑制するなどして、耐久試験後であってもHCの浄化効率を良好にできるものと推察された。また、捕集層には触媒が形成されていない実施例27では、耐久後浄化効率が68.8%、この変化率が43%、圧損が7kPa、この変化率が0%、PM再生効率が69.6%、この変化率が4%であった。この結果より、捕集層に触媒が形成されていなくても、上流側と下流側との触媒量が異なると、よい特性が得られることがわかった。
【0073】
【表1】
【0074】
表2には、実施例4,7〜15の実験結果を示した。実施例4,7〜15は、隔壁部の触媒がa/b=1.5で一定,捕集層表面の触媒がAS/BS=1で一定であり、A/Bを1〜8までの間で変化させたものである。この結果より、A/Bを大きくすると、耐久後浄化効率(HC除去効率)がより向上することが分かった。また、1.08≦A/B≦5.00であれば、圧力損失の上昇をより抑制し、耐久後浄化効率をより高めることができることが分かった。このうち、1.50≦A/B≦5.00であれば浄化効率をより高めることができ、2.00≦A/B≦5.00であれば浄化効率をさらに高めることができることが分かった。
【0075】
【表2】
【0076】
表3には、実施例11,16〜26の実験結果を示した。実施例11,16〜25は、隔壁部の触媒がa/b=1.5で一定、捕集層の触媒がA/B=1.5で一定であり、AS/BSを1〜10までの間で変化させたものである。この結果より、AS/BSを大きくすると、耐久後浄化効率(HC除去効率)が向上し、PM再生効率も向上することが分かった。また、1.10≦AS/BS≦8.00であれば、圧力損失の上昇をより抑制し、PM再生効率もより向上することが分かった。このうち、1.50≦AS/BS≦8.00であればPM再生効率がより向上し、3.00≦AS/BS≦8.00であればPM再生効率が更に向上することが分かった。また、捕集層を乾式で形成した実施例26は、捕集層の形成方法以外は同様の工程で作製した実施例22とほぼ同等の結果であったことから、捕集層の形成方法はどのようなものであってもよいと推察された。
【0077】
【表3】
【0078】
本出願は、2010年3月31日に出願された日本国特許出願第2010−81903号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、自動車用エンジン、建設機械用及び産業用の定置エンジン並びに燃焼機器等から排出される排ガスを浄化するためのフィルターとして好適に使用することができる。
図1
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図9
図10
図11