(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の壁部のうち前記突起部を基点として前記インペラとは反対側に位置する部位の内側面を、前記第1の壁部の内側面から相対的に離れるように配置することにより、前記送風路に拡張部を設けたことを特徴とする請求項2、3又は4に記載の車両用送風ユニット。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置用や車両用発熱体冷却装置用等の車両用として使用される送風ユニットは、例えば特許文献1や特許文献2に示されるように、回転により空気流を発生させるインペラと、このインペラを回転駆動させるためのモータと、ケース、特にインペラを収容してこのインペラの径方向側の周囲に形成された周壁を主としたスクロールケース部分と、モータが取り付けられるモータフランジとで基本的に構成されている。そして、送風ユニットは、モータでインペラを回転駆動させることにより、スクロールケース部分に開口した空気吸込口から空気をスクロールケース部分内に吸い込み、スクロールケース部分内でかかる空気を昇圧した後、スクロールケース部分に開口した空気吐出口から空気を吐出させる作用が可能となっている。
【0003】
そして、車両用送風ユニットが上記のような構成及び作用を有する場合には、特許文献1でも指摘されているように、インペラの底面と前記ケースを構成するモータフランジの上面との間に形成された隙間空間を通過するかたちで、スクロールケース部分内の相対的に高い気圧となる部位(送風路)から相対的に低い気圧となる部位(空気吸込口)に向かって空気が逆流し、送風ユニットの送風効率が低下してしまうおそれがあることが知られている。
【0004】
このインペラの底面とモータフランジの上面との間の隙間空間は、小さい方が吐出空気の昇圧を高める観点からは好ましいが、モータの回転軸の軸方向での振動によるインペラとモータフランジとの衝突や、インペラとモータとの隙間への異物の挟み込みによるインペラの回転のロック等のリスクを回避する観点から、所定基準値の寸法の確保が必要である。
【0005】
また、車両用送風ユニットにあっては、車両外部から雨水や雪等の水分の浸入や、気温が氷点下となるような環境下での車両の長時間の停留があっても車両用空調装置の機能を維持することができることが求められるところ、インペラの底面とモータフランジの上面との間に形成された隙間空間に所定の寸法が確保されていない或いはインペラの底面とモータフランジの上面との間に形成された隙間空間が複雑な形状であると、当該隙間空間に水分が滞留することが考えられ、この水分が氷結した場合には、モータを駆動させてもインペラがロックされて回転せず、状況によっては発火に至る不具合も予想される。このように浸入した水分の凍結を原因とするインペラの回転ロックのリスクを回避する観点からも、当該隙間空間は、所定基準値の寸法の確保が必要である。
【0006】
この点、特許文献1の遠心送風機では、モータフランジの上面からインペラ側に突出形成された筒状のリブと、このフランジ側リブの内径寸法より外径寸法が小さくなるようにインペラの底面からモータフランジ側に突出形成された筒状のリブとを組み合わせることで、インペラの底面とモータフランジの上面との間の隙間空間をインペラの径方向外側から径方向内側にかけて複雑な区域とするラビリンス構造にして、空気の逆流防止を図ろうとしている。もっとも、この特許文献1の遠心送風機では、インペラの底面とモータフランジの上面との間に形成された隙間空間は、モータフランジ側やインペラ側に形成された筒状のリブによって狭く且つ複雑な構造となっているので、振動によるインペラとモータフランジとの衝突や、インペラの回転ロック等のリスクが高くなっている。
【0007】
その一方で、特許文献2の遠心送風機に示されるように、モータフランジの上面のインペラよりも径方向外側となる部位に筒状のリブをインペラ側に突出形成することにより、インペラの底面とモータフランジの上面との間の隙間が複雑なラビリンス構造となるのを回避して、インペラの底面とモータフランジの上面との間の隙間空間について、所定基準値の寸法を確保しつつ空気の逆流を防止し、インペラの回転のロックのリスクを抑制することを図ろうとしている。この特許文献2の遠心送風機に示される構成を、本願の
図8として示されるように、モータフランジの代わりにスクロールケース部分100の上面のインペラ101よりも径方向外側となる部位に、インペラ101側に突出する筒状のリブ102を形成することによっても、インペラ101の底面とスクロールケース部分100の上面との間の隙間空間103について、所定基準値の寸法を確保しつつ空気の逆流を防止し、インペラ101の回転のロックのリスクを抑制することを図ることが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本願の
図8(b)に示される送風ユニットの構成では、インペラ101からこのインペラ101の径方向の外側に向かって流れる空気104の流路上に筒状のリブ102を突出形成したために、このリブ102よりもインペラ101の径方向外側にて、空気105の流れが渦を巻き、騒音の増加や送風効率の低下を招く等の不具合が生ずるおそれがあり、この不具合は上記した特許文献2の送風ユニットでも同様に生ずる。
【0010】
そこで、本発明は、インペラの底面とモータフランジの上面との間の隙間空間をインペラの回転のロックのリスクを抑制することができる位置に空気の当該隙間空間への逆流を防止する逆流防止手段を備えながら、この逆流防止手段の採択による騒音の発生や水分の滞留も抑制し、更にはスクロールケース部分内での空気の昇圧にも好適な構成の車両用送風ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る車両用送風ユニットは、インペラとこのインペラを回転軸により回転駆動させるモータとを有する送風手段と、前記送風手段のインペラを内包すると共に前記スクロールケース部分の巻き始めから巻き終わりにかけて前記インペラの径方向外側に向かって暫時に拡がる送風路が形成されたスクロールケース部分を備えたケースとを有し、前記ケースの前記インペラの軸方向の一方側に位置する第1の壁部には、外部から当該ケース内に空気を吸い込むための空気吸込口が開口し、前記スクロールケース部分の巻き終わり側部分には、前記ケース外に空気を吹き出すための空気吹出口が開口している車両用送風ユニットにおいて、前記ケースの前記インペラの軸方向の他方側に位置する第2の壁部の内側に空気逆流防止手段を有し、この空気逆流防止手段は、前記インペラの径方向外側端よりも前記インペラの径方向外側にて当該インペラの径方向外側端との間に所定の隙間を有して位置
していると共に、前記第2の壁部の前記スクロールケース部分の巻き始め部分に対応する部位の空気逆流防止手段が、前記第2の壁部のうち前記インペラの径方向外側に位置する部位の内側面を前記第1の壁部の内側面に相対的に近接するように配置することで形成された段差面及びこの段差面の前記インペラ側に連接する立面を有して構成された段差部を備えることで構成され、前記第2の壁部の前記スクロールケース部分の巻き終わり部分に対応する部位の空気逆流防止手段が、前記送風路内に突出した突起部を有して構成されることにより、少なくとも前記第2の壁部の前記スクロールケース部分の巻き始め部分に対応する部位と前記第2の壁部の前記スクロールケース部分の巻き終わり部分に対応する部位とで前記空気逆流防止手段の構成が異なっており、更に、前記第2の壁部のうち前記突起部を基点として前記インペラとは反対側に位置する部位の内側面を、前記第1の壁部の内側面から相対的に離れるように配置することにより、断面面積が段差部を有する部位よりも大きな送風量増大部が前記送風路に設けられ、前記インペラの径方向外側から前記送風路内に移行する空気の流れを調整して、前記送風路内に移行する空気が前記インペラの径方向外側に向かって円滑に流れることができるようにしたことを特徴としている(請求項1)。ここで、第2の壁部は、スクロールケース部分の壁部であっても、モータフランジの壁部であっても、更にケースを構成する別の部材の壁部であっても良い。
また、送風量増大部とは、段差部の段差面よりも第1の壁部から離れた位置にある第2の壁を有することでその断面面積が送風路の段差部を有する部位よりも相対的に大きくなっている送風路の部位の全てをいい、下記の請求項5に記載の拡張部のみならず下記の請求項3、4に記載の突起部の頂部からインペラの径方向外側で且つ第1の壁部に対して離れる方向に延びる傾斜面を有する送風路の部位も含まれる。
【0012】
これにより、インペラの底面と第2の壁部の上面との間に所定基準値の寸法の隙間空間を有していても、空気逆流防止手段によって、この隙間を通って送風路から空気吸込口側に逆流しようとする空気の流れが解消されると共に、送風路内に空気が移行する際に空気が空気逆流防止手段の存在のために渦を巻くことも防止され、更にこの空気逆流防止手段があってもインペラの底面とモータフランジ等の第2の壁部の上面との隙間空間が複雑な形態となっていないためこの隙間空間に水分が滞留し難いので、水分の凍結によるインペラの回転がロックされることがない。
【0013】
ここで、前記空気逆流防止手段は、前記送風路内に突出した突起部を有して構成され、この突起部の前記インペラとは反対側に位置する面は、前記回転軸から離れるに従い前記第2の壁部の前記突起部以外の内側面に近接する方向に傾斜した傾斜面となっていることを特徴としている(請求項2)。突起部は、第2の壁部に対し送風路内にその厚みを増すかたちで形成されたものであっても、第2の壁部を送風路内に折り曲げることにより形成されたものであっても良い。
【0014】
また、スクロールケース部分の巻き始め部分では、送風路の断面面積が相対的に小さくなるので、送風路に送られた空気を効率良く昇圧させることができ、スクロールケース部分の巻き終わり部分では、送風路の断面面積が相対的に大きくなるので、送風路の通気抵抗を小さくし、送風ユニットの送風効率の低下を抑制することができる。
【0015】
ここで、前記第2の壁部の前記スクロールケース部分の巻き終わり部分に対応する部位の空気逆流防止手段の突起部は、この突起部の前記インペラとは反対側に位置する面が、前記回転軸から離れるに従い前記第2の壁部の前記突起部以外の内側面に近接する方向に傾斜した傾斜面となっていることを特徴としている(請求項2)。突起部は、第2の壁部に対し送風路内にその厚みを増すかたちで形成されたものであっても、第2の壁部を送風路内に折り曲げることにより形成されたものであっても良い。
【0016】
これにより、前記第2の壁部の前記スクロールケース部分の巻き終わり部分に対応する部位の空気逆流防止手段の突起部がインペラとは反対側に傾斜面を有することにより空気逆流防止手段を通風路内に設けてもインペラからの空気流が渦を巻くことが防止され、且つ突起部の傾斜面の傾斜方向を、空気吸込口からインペラの径方向外側に流れてきた空気の当該流れの方向と同方向に調整することによって、インペラの径方向外側に流れてきた空気が突起部の傾斜面をガイドとして通風路内に拡がる流れが強められて、突起部とインペラの径方向端部との間からインペラの底面とモータフランジ等の第2の壁部の上面との間の隙間空間に流れようとするのが抑制される。
【0017】
また、前記第2の壁部の前記スクロールケース部分の巻き終わり部分に対応する部位の空気逆流防止手段の突起部は、前記第1の壁部側に頂部を有し、この頂部と前記インペラのうちの当該インペラの径方向の外側で且つ前記インペラの軸方向の前記第2の壁部側に位置する端部とは、前記インペラの径方向側から見たときに略同じ位置になっていることを特徴としている(請求項3)。ここで、突起部の頂部は、インペラのうちの当該インペラの径方向の外側で且つインペラの軸方向の第2の壁部側に位置する端部の第1の壁部側面と同じ位置としても、インペラのうちの当該インペラの径方向の外側で且つインペラの軸方向の第2の壁部側に位置する端部の第2の壁部側面と同じ位置としても、更には第1の壁部側面と第2の壁部側面との間の位置としても良い。これにより、送風路内の空気がインペラの底面、すなわちインペラの第2の壁部側面と第2の壁部の内側面との間の隙間空間を通り逆流しようとするのが抑制されると共に空気吸込口からインペラの径方向外側に流れてきた空気が送風路に送られるときに、特にコーン部に沿って流れてきた空気の流れを阻害することがないので、送風ユニットの送風効率を低下させることがない。
【0018】
更に、前記第2の壁部の前記スクロールケース部分の巻き終わり部分に対応する部位の空気逆流防止手段の突起部は、その頂部に平坦面又は曲面を有することが望ましい(請求項4)。これにより、突起部の頂部が鋭角であると送風ユニット内部の空気流により意図しない風切り音が発生する可能性があるところ、突起部の頂部に平坦面又は曲面を有することでかかる不具合を回避することができる。
【0019】
その一方で、この発明に係る車両用送風ユニットは、前記第2の壁部のうち前記突起部を基点として前記インペラとは反対側に位置する部位の内側面を、前記第1の壁部の内側面から相対的に離れるように配置することにより、前記送風路に拡張部を設けた構成としても良い(請求項5)。これにより、送風路の断面面積が相対的に大きくなるので、送風路の通気抵抗を小さくし、送風ユニットの送風効率を低下させることがない。
【0020】
更にまた、前記第2の壁部の前記スクロールケース部分の巻き始め部分に対応する部位の空気逆流防止手段の段差部は、この段差部の段差面と前記インペラのうちの当該インペラの径方向の外側で且つ前記インペラの軸方向の前記第2の壁部側に位置する端部とが、前記インペラの径方向側から見たときに略同じ位置になっていることを特徴としている(請求項6)。これにより、送風路内の空気がインペラの底面と第2の壁部との間の隙間空間を通り逆流しようとするのが抑制される。しかも、送風路の断面面積が相対的に小さくなるので、送風路に送られた空気を効率良く昇圧をさせることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、請求項1から
請求項6に記載の発明によれば、インペラとモータフランジ等の第2の壁部との間に所定基準値の寸法の隙間空間を有していても、空気逆流防止手段によって、この隙間空間を通って送風路から空気吸込口側に逆流しようとする空気の流れを解消または抑制することが可能であると共に、送風路内に空気が移行する際に空気が空気逆流防止手段の存在のために渦を巻くことも防止される。そして、空気逆流防止手段があってもインペラとモータフランジ等の第2の壁部との隙間空間が複雑に区画されていないため、この隙間空間に水分が滞留し難いので、水分の凍結によるインペラの回転がロックされることを防止することができる。
【0022】
また、請求項1から請求項6に記載の発明によれば、スクロールケース部分の巻き始め部分では、送風路の断面面積を相対的に小さくすることができるので、送風路に送られた空気を効率良く昇圧させることが可能であり、スクロールケース部分の巻き終わり部分では、送風路の断面面積を相対的に大きくすることができるので、送風路の通気抵抗を小さくし、送風ユニットの送風効率の低下を抑制することが可能である。
【0023】
特に請求項2に記載の発明によれば、空気逆流防止手段の突起部をインペラとは反対側に傾斜面を有する構成とすることにより、空気逆流防止手段を通風路内に設けてもインペラからの空気流が渦を巻くことを防止することが可能であり、且つ突起部の傾斜面の傾斜方向を、空気吸込口からインペラの径方向外側に流れてきた空気の当該流れの方向と同方向に調整することによって、インペラの径方向外側に流れてきた空気が突起部の傾斜面をガイドとして通風路内に拡がる流れが強められて、突起部とインペラの径方向端部との間からインペラの底面と第2の壁部の上面との間の隙間空間に流れようとするのを抑制することが可能である。
【0024】
特に請求項3に記載の発明によれば、送風路内の空気がインペラの底面と第2の壁部との間の隙間空間を通り逆流しようとするのを抑制することができると共に、空気吸込口からインペラの径方向外側に流れてきた空気が送風路に送られるときに、特にコーン部に沿って流れてきた空気の流れを阻害することがないので、送風ユニットの送風効率を低下させることも抑制することができる。
【0025】
特に請求項4に記載の発明によれば、空気逆流防止手段の突起部の頂部が鋭角であると送風ユニット内部の空気流により意図しない風切り音が発生する可能性があるところ、突起部の頂部に平坦面又は曲面を有する構成としたので、かかる不具合を回避することができる。
【0026】
特に請求項5に記載の発明によれば、送風路の断面面積を相対的に大きくすることができるので、送風路の通気抵抗を小さくし、送風ユニットの送風効率を低下させる不具合を抑制することができる。
【0027】
特に請求項6に記載の発明によれば、送風路内の空気がインペラの底面と第2の壁部との間の隙間空間を通り逆流しようとするのを抑制することができる。しかも、送風路の断面面積を相対的に小さくすることができるので、送風路に送られた空気を効率良く昇圧をさせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1(a)は、送風ユニットの全体構成を空気吸込口の開口とは反対側から見た状態を示した説明図であり、
図1(b)は、送風ユニットの全体構成を空気吸込口に対し径方向側から見た状態を示した説明図である。
【
図2】
図2(a)は、同上の送風ユニットを回転軸の径方向に沿って切断した状態の概略の構成を示す断面図であり、
図2(b)は、同上の送風ユニットを回転軸の軸方向に沿って切断した状態の概略の構成を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は、この発明の実施例1を説明するものであって、突起部の構成を用いた状態を示す要部拡大図であり、
図3(b)は空気逆流防止手段としてこの実施例1に係る突起部を用いた場合の空気の流れを簡略化して示した説明図である。
【
図4】
図4(a)は、この発明の実施例2を説明するものであって、実施例1とは異なる突起部の構成を用いた状態を示す要部拡大図であり、
図4(b)は空気逆流防止手段としてこの実施例2に係る突起部を用いた場合の空気の流れを簡略化して示した明図である。
【
図5】
図5(a)は、この発明の実施例3を説明するものであって、実施例1及び2とは異なる突起部の構成を用いた状態を示す要部拡大図であり、
図5(b)は空気逆流防止手段としてこの実施例3に係る突起部を用いた場合の空気の流れを簡略化して示した説明図である。
【
図6】
図6(a)は、この発明の実施例4を説明するものであって、突起部の構成とインペラに対しこの突起部よりも離れた側の下側面を低くした構成との組み合わせを用いた状態を示す要部拡大図であり、
図5(b)は空気逆流防止手段としてこの実施例4に係る突起部を用いた場合の空気の流れを簡略化して示した説明図である。
【
図7】
図7(a)は、この発明の実施例5を説明するものであり、段差部を有する構成を示す要部拡大図であり、
図7(b)は空気逆流防止手段としてこの実施例5に係る段差部を用いた場合の空気の流れを簡略化して示した説明図である。
【
図8】
図8(a)は、従来例の一例を説明したものであり、スクロールケース部分の上面のインペラよりも径方向外側となる部位に、インペラ側に突出する筒状のリブを形成した構成を示す要部拡大図であり、
図8(b)はこのリブを有することにより空気が渦をまく不具合を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1及び
図2において、本件の発明が用いられる送風ユニット1の一例が示されている。この送風ユニット1は、例えば車両用空調装置の一部を構成する等、車両用に用いられるもので、インペラ2と、インペラ2を回転駆動させるためのモータ3と、空気吸込口5及び空気吹出口6が形成されたケース4とを有して構成されている。
【0031】
インペラ2は、回転することにより空気流を発生させるためのものであり、この実施例では遠心式多羽翼型のものとなっている。すなわち、インペラ2は、モータ3と対面し、略三角錘形状を有するコーン部7や、このコーン部7の外縁に沿って立設する複数の翼部8や、後述する空気吸込口5と対面し各翼部8の空気吸込口側端と連結するリング状の開口縁面部9を有して構成され、コーン部7の頂部には円筒状のボス部10が形成されている。
【0032】
モータ3は、電磁石、ロータ等を収容するモータ本体11と、このモータ本体11内で発生した駆動力を外部に回転力として伝達する回転軸12とを有して構成され、インペラ2のボス部10に回転軸12を挿入し適宜連結することにより、インペラ2を回転させるための駆動源となっている。
【0033】
ケース4は、樹脂等の素材で成るもので、この実施例では、インペラ2とモータ3の大部分とを収容していると共に巻き始めから巻き終わりにかけてインペラ2の径方向外側に暫時拡がるスクロール状の送風路15の周壁を構成するスクロールケース部分13と、モータ3が固定されるモータフランジ14とを有して構成され、更にスクロールケース部分13は、壁部16に空気吸込口5が開口したパーツ13aと、空気吸込口5とは反対側に位置してモータフランジ14と連結する壁部17を有するパーツ13bとを組み合わせて形成されている。そして、スクロールケース部分13のパーツ13aの空気吸込口5の周縁全域には、
図2(b)及び、
図3から
図7に示されるように、ベルマウス18が形成されており、送風路15のスクロールの最下流側には、空気吹出口6が開口している。
【0034】
これによって、モータ3を駆動してインペラ2を回転させることにより、空気吸込口5からインペラ2に対し回転軸12の軸方向に沿って吸い込まれた空気は、インペラ2の翼部8間から回転軸12の略径方向に沿って送風路15内に送られた後、この送風路15を通る際に加圧されて空気吹出口6から他のユニットの空気流路に向けて吹き出される。
【0035】
次に、この発明の空気逆流防止手段について実施例1から実施例6として個別に説明する。
【実施例1】
【0036】
実施例1では、
図3に示されるように、ケース4は、壁部17の内側面とモータフランジ14の内側面とが略同一線上にあると共に、壁部17のモータフランジ14との連結部位に、インペラ2のフランジ側面とモータフランジ14の内側面との間の隙間空間30に空気が逆流するのを防止する空気逆流防止手段として突起部20を有している。
【0037】
この突起部20は、インペラ2の径方向外側端よりも更に径方向の外側に環状に形成されており、インペラ2のフランジ側面とモータフランジ14の内側面との隙間空間30内には位置しないものとなっている。更に、突起部20は、壁部17と一体形成されるかたちで、壁部17の内側面から送風路15内に突出しているもので、その先端がコーン部7の径方向外側端の壁部17とは反対側の面まで突出している。更にまた、突起部20は、インペラ2の径方向に沿ってインペラ2とは反対側に進むに従い壁部17の内側面に近接していく傾斜面20aを有し、且つその頂部が鋭角な断面三角形状となっている。そして、この突起部20の傾斜面20aの傾斜角度は、
図3(b)に示されるように、インペラ2から送風路15内に移行する空気50の流動方向と略平行になるように設定されている。
【0038】
尚、突起部20の傾斜面20aに対しインペラ2側に位置する面20bは、この実施例ではパーツ13bの壁部17に対し略垂直になっているが必ずしもこれに限定されず、インペラ2やモータ3のケース4内への収納やパーツ13bとモータフランジ14との組み付けに好適な構成であれば良い。
【0039】
そして、突起部20のインペラ2側に位置する面20bからインペラ2の径方向外側端までの間の寸法L1の値は、例えば4mmに設定されている。
【0040】
よって、上記のような形態及び配置の突起部20を有することにより、前記インペラ2とモータフランジ14との間の寸法L2について、モータ3の回転軸12の軸方向での振動によるインペラ2とモータフランジ14との衝突や、インペラ2とモータフランジ14との隙間空間30への異物の挟み込みによるインペラ2の回転のロック等のリスクを回避するのに必要な所定基準値(例えば6mm)を採っても、前記インペラ2とモータフランジ14との間の空間への空気の逆流が抑制される。
【0041】
すなわち、空気吸込口5からインペラ2の翼部8間を通って送風路15内に斜め方向の流れにて移行する(送り出される)空気50は、この空気の流れに沿って傾斜した突起部20の傾斜面20aにガイドされながら、送風路15に円滑に送られる。しかも、インペラ2とモータフランジ14との間の隙間空間30は、回転軸12の径方向の外側から見た場合には突起部20により遮蔽された状態にあり、且つインペラ2とモータフランジ14との間の隙間空間30に連なる、突起部20のインペラ2側に位置する面20bからインペラ2の径方向外側端までの隙間空間31は、インペラ2から送風路15内に移行する空気50の流動方向と交差するかたちで上側に開口している。従って、インペラ2とモータフランジ14との間の隙間空間30の寸法L2を所定基準値(例えば6mm)に採っても、送風路15から当該隙間空間30内に空気が逆流するのを抑制することができる。
【0042】
しかも、突起部20は上記した傾斜面20aを有しているので、インペラ2から送風路15内に移行する空気50が、傾斜面20aの近傍で、従来例として先示した
図8(b)に示されるような空気105の流れがリブ102よりもインペラ101の径方向外側にて渦を巻く(巻き風が発生する)不具合を抑制している。
【実施例2】
【0043】
図4において、この発明の実施例2が示されている。以下、この発明の実施例2について
図4を参照しつつ説明する。但し、送風ユニット1の基本的な構成は、実施例1で示した
図1、
図2と略同様であることから、原則としては、この実施例2の差異点を主に説明し、実施例1と共通の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
この実施例2においても、ケース4は、壁部17の内側面とモータフランジ14の内側面とが略同一線上にあると共に、壁部17のモータフランジ14との連結部位に、インペラ2のフランジ側面とモータフランジ14の内側面との間の隙間空間30に空気が逆流するのを防止する空気逆流防止手段として、突起部20を有している。
【0045】
この突起部20は、壁部17の一部を送風路15内に折り曲げることにより壁部17と一体形成されているもので、インペラ2の径方向外側端よりも更に径方向の外側に環状に形成されている。また、突起部20は、頂部の先端がコーン部7の径方向外側端の壁部17とは反対側の面まで突出している。更に、突起部20は、インペラ2の径方向に沿ってインペラ2とは反対側に進むに従い壁部17の内側面に近接していく傾斜面20aを有し、且つその頂部が鋭角な略逆V字形状となっている。そして、この突起部20の傾斜面20aの傾斜角度は、
図4(b)に示されるように、インペラ2から送風路15内に移行する空気50の流動方向と略平行になるように設定されている。
【0046】
尚、突起部20のインペラ2側に位置する面20bが図示されるような壁部17に対する垂直面でなくても良いことについては、先の実施例1と同様である。また、突起部20のインペラ2側に位置する面20bからインペラ2の径方向外側端までの間の寸法L1が例えば4mmであることも、先の実施例1と同様である。
【0047】
これにより、
図4に示される突起部20を有することで、インペラ2とモータフランジ14との間の隙間空間30の寸法L2について所定基準値(例えば6mm)を採っても、実施例1と同様に、インペラ2とモータフランジ14との間の隙間空間30への空気の逆流が抑制される。
【実施例3】
【0048】
図5において、この発明の実施例3が示されている。以下、この発明の実施例3について
図5を参照しつつ説明する。但し、送風ユニット1の基本的な構成は、実施例1で示した
図1、
図2と略同様であることから、原則としては、この実施例3の差異点を主に説明し、実施例1と共通の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
この実施例3においても、実施例1、実施例2と同様に、壁部17の内側面とモータフランジ14の内側面とが略同一線上にあると共に、壁部17のモータフランジ14との連結部位に、インペラ2のフランジ側面とモータフランジ14の内側面との間の隙間空間30に空気が逆流するのを防止する空気逆流防止手段として、突起部20を有している。
【0050】
この突起部20は、壁部17の一部を送風路15内に折り曲げることにより構成されている点や、インペラ2の径方向外側端よりも更に径方向の外側に環状に形成されている点については、実施例1、2と同様である。また、突起部20は、インペラ2の径方向に沿ってインペラ2とは反対側に進むに従い壁部17の内側面に近接していく傾斜面20aを有し、その傾斜面20aの傾斜角度が、
図5(b)に示されるように、インペラ2から送風路15内に移行する空気50の流動方向と略平行になるように設定されている点についても、実施例1、2と同様である。
【0051】
その一方で、この実施例3では、突起部20の頂部は、
図5に示されるように、鋭角になっておらず平坦面20cを有しているもので、これにより突起部20の断面形状は略台形状となっている。そして、突起部20の平坦面20cは、例えばコーン部7の径方向外側端の壁部17とは反対側の面と同じ位置になるように突起部20が突出している。尚、突起部20のインペラ2側の面20bが図示されるような壁部17に対する垂直面でなくても良いことについては、先の実施例1、2と同様である。また、突起部20のインペラ2側に位置する面20bからインペラ2の径方向外側端までの間の寸法L1が例えば4mmであることも、先の実施例1、2と同様である。
【0052】
これにより、
図5に示される突起部20を有することで、インペラ2とモータフランジ14との間の隙間空間30の寸法L2について所定基準値(例えば6mm)を採っても、実施例1及び2と同様に、インペラ2とモータフランジ14との間の隙間空間30への空気の逆流が抑制される。しかも、突起部20の頂部に平坦面20cを有しているので、突起部20の頂部が鋭角である場合に比較して、意図しない風切り音突が発生するのを抑制することができる。
【0053】
尚、この実施例3の説明として、
図5では突起部20の頂部に平坦面20cを有するとして説明したが、これに限定されず、図示しないが、断面形状が送風路15側に向けて凸状に湾曲した曲面を有するものとしても良い。
【実施例4】
【0054】
図6において、この発明の実施例4が示されている。以下、この発明の実施例4についてこの
図6に基づいて説明する。但し、送風ユニット1の基本的な構成は、実施例1で示した
図1、
図2と略同様であることから、原則としては、この実施例4の差異点を主に説明し、実施例1と共通の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0055】
この実施例4では、これまでの実施例1乃至3と同様に、パーツ13bのモータフランジ14との連結部位に、インペラ2のフランジ側面とモータフランジ14の内側面との間の隙間空間30に空気が逆流するのを防止する空気逆流防止手段として突起部20を有しており、この突起部20は、実施例3に示される突起部20と同様に頂部に平坦面20cを有する断面形状が略台形状の構成となっている。すなわち、この実施例4の突起部20は、インペラ2から送風路15内に移行する空気50の流動方向と略平行になるように設定された傾斜面20aと、例えばコーン部7の径方向外側端の壁部17とは反対側の面と同じ位置にある平坦面20cとを有している。また、突起部20のインペラ2側に位置する面20bは図示されるように垂直でなくても良いことについては、先の実施例1乃至3と同様である。そして、突起部20のインペラ2側に位置する面20bからインペラ2の径方向外側端までの間の寸法L1が例えば4mmであることも先の実施例1乃至3と同様である。
【0056】
その一方で、この実施例4では、パーツ13bの壁部17の内側面は、モータフランジ14の内側面よりも空気吸込口5から離れた位置にあり、これに伴い、送風路15の空気吸込口5とは反対側に拡張部21が構成されて、送風路15の断面面積も相対的に大きくなっている。
【0057】
これにより、
図6に示される突起部20を有することで、インペラ2とモータフランジ14との間の隙間空間30の寸法L2について所定基準値(例えば6mm)を採っても、実施例1乃至3と同様に、インペラ2とモータフランジ14との間の隙間空間30への空気の逆流が抑制される。しかも、突起部20の頂部に平坦面20cを有しているので、実施例3と同様に、突起部20の頂部が鋭角である場合に比較して、意図しない風切り音が発生するのを抑制することができる。
【0058】
また、送風路15が拡張部21の存在によりその断面面積を相対的に大きくしているので、送風路15の通気抵抗が下がり、好適な送風効率を得ることができる。
【0059】
尚、この実施例4においても、
図6では突起部20の頂部に平坦面20cを有するとして説明したが、これに限定されず、図示しないが、断面形状が送風路15側に向けて凸状に湾曲した曲面を有するものとしても良いことは、実施例3と同様である。
【実施例5】
【0060】
図7において、この発明の実施例5が示されている。以下、この発明の実施例5についてこの
図7に基づいて説明する。但し、送風ユニット1の基本的な構成は、実施例1で示した
図1、
図2と略同様であることから、原則としては、この実施例4の差異点を主に説明し、実施例1と共通の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0061】
この実施例5では、空気逆流防止手段として、これまでの実施例1乃至4に示される突起部20を有さず、代わりに、スクロールケース部分13のパーツ13bの壁部17全体を例えばコーン部7の径方向外側端の壁部17とは反対側の面と同じ位置となるように、モータフランジ14よりも空気吸込口5側に配置することにより、パーツ13bとモータフランジ14との境界において、段差面22と、この段差面22のインペラ2側の縁からモータフランジ14側に延びる立面23とを有する段差部24を備えたものとなっている。送風路15の断面面積も相対的に小さくなっている。そして、段差部24の立面23は例えばインペラ2の軸方向に沿って直線的に延びているもので、段差部24の立面23からインペラ2の径方向外側端までの寸法L1は、例えば4mmとなっている。
【0062】
このように、インペラ2とモータフランジ14との間の隙間空間30に連なる、段差部24の立面からインペラ2の径方向外側端までの間の隙間空間31は、インペラ2から送風路15内に移行する空気50の流動方向と交差するかたちで空気吸込口5側に開口していることにより、インペラ2とモータフランジ14との間の隙間空間30の寸法L2を所定基準値(例えば6mm)に採っても、送風路15から当該隙間空間30に空気が逆流するのを抑制することができる。また、送風路15の断面面積が相対的に小さくなっているので、送風路15を流れる空気の昇圧を効率的に行うことができる。更に、送風路15の回転軸12の軸方向の寸法が相対的に小さくなっているので、送風ユニット1の小型化を図ることができる。
【実施例6】
【0063】
この送風ユニット1のケース4では、これまで説明してきた実施例1乃至実施例4に示される逆流防止手段たる突起部20並びに実施例5に示される段差部24や、実施例4に示される送風路15の拡張部21をそれぞれ個別に用いる場合に限定されず、これらの実施例を適宜組み合わせて用いることも可能である。
【0064】
すなわち、ケース4のスクロールケース部分13の巻き始め部分では、
図7に示されるように、壁部17の全部をモータフランジ14よりも空気吸込口5側に配置した段差面22と、この段差面22のインペラ2側端と連接する立面23とからなる段差部24を設けたものとする。そして、ケース4のスクロールケース部分13の巻き終わり部分では、
図3から
図6に示されるように、壁部17に突起部20を設け、壁部17の突起部20よりもインペラ2に対し径方向外側に位置する内側面を段差部24の段差面22よりも空気吸込口5から離れた配置とすることにより、送風路15のうち段差部24を有する部位よりも断面面積が大きな送風量増大部を形成する。より具体的には、壁部17の突起部20よりもインペラ2に対し径方向外側に位置する内側面を
図3から
図5に示されるようにモータフランジ14の内側面と略同じ位置にするか、
図6にモータフランジ14よりも空気吸込口5から離れた配置にある拡張部21を有することにより、送風量増大部を形成するものとする。
【0065】
これにより、スクロールケース部分13の巻き始め部分に対応する部位では、送風路15の断面面積が相対的に小さくなるので、送風路15に送られた空気を効率良く昇圧させることができると共に、スクロールケース部分13の巻き終わり部分に対応する部位では、前記のように拡張部21等の送風量増大部を有することから送風路15の断面面積が相対的に大きくなるため、通気抵抗を小さくし、送風効率の低下を抑制することができるので、送風ユニット1の性能を向上させることができる。
【0066】
尚、送風ユニット1のケース4の全体構造は、これまで説明してきたものに限定されず、突起部20や段差部24をインペラ2の径方向外側に形成可能な壁部17を有するものであれば良い。