特許第5775563号(P5775563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775563
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】テザークリップ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/213 20110101AFI20150820BHJP
【FI】
   B60R21/213
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-262733(P2013-262733)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2014-122030(P2014-122030A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2014年6月25日
(31)【優先権主張番号】13/723,335
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591033250
【氏名又は名称】イリノイ ツール ワークス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 猛
(72)【発明者】
【氏名】本多 貴
(72)【発明者】
【氏名】谷 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】マーク アール.リズデール
(72)【発明者】
【氏名】マーク オー.レッパー
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文人
【審査官】 水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−051272(JP,A)
【文献】 特開2004−136862(JP,A)
【文献】 特開2001−277985(JP,A)
【文献】 特開2005−014694(JP,A)
【文献】 特開2011−111001(JP,A)
【文献】 特開2010−047135(JP,A)
【文献】 特開2000−344045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/213
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグ袋体が収納される車体ピラーを車室側から覆うガーニッシュを前記車体ピラーに係止するテザークリップであって、
前記ガーニッシュに係止される第1係止部と、前記車体ピラーに係止される第2係止部と、前記第1係止部と前記第2係止部を結合する結合部と、前記第1係止部と前記第2係止部を繋ぐ紐状部材と、を有し、
前記第1係止部と前記第2係止部と前記結合部とを有してなる本体部が1ピース構成であり、
前記結合部は、膨張展開する前記エアバッグ袋体が前記ガーニッシュを押圧するときの押圧力に対して脆弱に形成され、
前記紐状部材は、前記第1係止部または前記第2係止部の一方において、前記第1係止部から前記第2係止部に向かう軸回りに巻きつけられ
前記結合部は、前記第1係止部と前記第2係止部が対向する面に形成される結合環であって、
前記結合環は、前記第1係止部及び前記第2係止部よりも細い軸径で中空に形成されている
ことを特徴とするテザークリップ。
【請求項2】
前記車体ピラーから、前記第1係止部から前記第2係止部に向かう軸方向に前記ガーニッシュを係止し、
前記軸方向と異なる方向に作用する前記押圧力に対して前記結合部が脆弱に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のテザークリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のピラーにガーニッシュを係止するテザークリップに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体ピラーに組み込まれたエアバッグ袋体が車室内の側方で膨張展開するエアバッグ装置(カーテンエアバッグ装置)は、エアバッグ袋体が車体ピラーとガーニッシュの間に収納され、車室側がピラーガーニッシュで覆われて形成される。
そして、インフレータからガスが供給されたエアバッグ袋体は膨張し、ピラーガーニッシュを押圧して当該ピラーガーニッシュを車体ピラーから解放し、車体ピラーとピラーガーニッシュの間に形成される間隙から車室内に展開するように構成される。
このとき、車体ピラーから解放されたピラーガーニッシュが車室に向かって飛散することを防止するように、ピラーガーニッシュが車体ピラーに係止される構成が好ましい。
例えば特許文献1には、エアバッグの膨張で車体ピラーから解放されたピラーガーニッシュの飛散を防止可能な取付機構が記載されている。
【0003】
特許文献1に開示される取付機構は、係止部材の軸方向にピラーガーニッシュがスライド移動可能であり、エアバッグの膨張時に車体ピラーから解放されたピラーガーニッシュは係止部材の軸方向にスライド移動する。
特許文献1に開示される取付機構は、1方向にのみピラーガーニッシュがスライド移動可能に構成される。したがって、エアバッグがピラーガーニッシュを押圧する方向と、ピラーガーニッシュがスライド移動可能な軸方向が異なる場合もある。この場合、ピラーガーニッシュはスライド移動可能な方向と異なる方向に押圧されるため好適にスライド移動できない。したがって、エアバッグの押圧によってピラーガーニッシュが破損する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−344045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、ガーニッシュを車体ピラーに係止し、エアバッグ袋体の膨張時にはガーニッシュを破損することなく車体ピラーから解放できるとともにガーニッシュの飛散を防止可能なテザークリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明は、エアバッグ袋体が収納される車体ピラーを車室側から覆うガーニッシュを前記車体ピラーに係止するテザークリップであって、前記ガーニッシュに係止される第1係止部と、前記車体ピラーに係止される第2係止部と、前記第1係止部と前記第2係止部を結合する結合部と、前記第1係止部と前記第2係止部を繋ぐ紐状部材と、を有し、前記第1係止部と前記第2係止部と前記結合部とを有してなる本体部が1ピース構成であり、前記結合部は、膨張展開する前記エアバッグ袋体が前記ガーニッシュを押圧するときの押圧力に対して脆弱に形成され、前記紐状部材は、前記第1係止部または前記第2係止部の一方において、前記第1係止部から前記第2係止部に向かう軸回りに巻きつけられ、前記結合部は、前記第1係止部と前記第2係止部が対向する面に形成される結合環であって、前記結合環は、前記第1係止部及び前記第2係止部よりも細い軸径で中空に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、車体ピラーに係止される第2係止部と、ガーニッシュに係止される第1係止部と、を結合する結合部が脆弱に形成され、第1係止部と第2係止部と結合部とを有してなる本体部が1ピース構成であり、さらに、第1係止部と第2係止部が紐状部材で繋がれたテザークリップとすることができる。したがって、車体ピラーに収納されたエアバッグ袋体が膨張展開してガーニッシュを押圧したときに、結合部で容易に破断するテザークリップとすることができる。さらに、結合部が破断して分離した第1係止部と第2係止部を、紐状部材で繋いだ状態とすることができる。
また、紐状部材を第1係止部または第2係止部の一方に巻きつけた状態とすることができる。例えば、紐状部材が弛んだ状態であっても、この弛んだ紐状部材を第1係止部または第2係止部の一方に巻きつけることができ、紐状部材の弛みを解消できる。
また結合部は、第1係止部と第2係止部が対向する面に形成される結合環であって、結合環は、第1係止部及び第2係止部よりも細い軸径で中空に形成されているので、第1係止部および第2係止部よりも細い軸径で脆弱な結合部を形成することができる。
【0009】
また本発明のテザークリップは、前記車体ピラーから、前記第1係止部から前記第2係止部に向かう軸方向に前記ガーニッシュを係止し、前記軸方向と異なる方向に作用する前記押圧力に対して前記結合部が脆弱に形成されていることを特徴とする。
この発明によると、テザークリップの軸方向と異なる方向に作用する押圧力で容易に破断するテザークリップとすることができ、膨張展開するエアバッグ袋体で、車体ピラーからピラーガーニッシュを容易に解放できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ガーニッシュを車体ピラーに係止し、エアバッグ袋体の膨張時にはガーニッシュを破損することなく車体ピラーから解放できるとともにガーニッシュの飛散を防止可能なテザークリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は車体ピラーに収納されるエアバッグ袋体を示す図、(b)は(a)のSec1−Sec1での断面図であって、ピラーガーニッシュがテザークリップで車体ピラーに係止された状態を示す図である。
図2】テザークリップを構成する本体部とワイヤユニットを示す斜視図である。
図3図2のSec2−Sec2での断面図である。
図4】(a)は本体部にワイヤユニットが取り付けられたテザークリップを示す斜視図、(b)は結合部が破断し、ワイヤで繋がれた状態で分離した内側係止部と外側係止部を示す図である。
図5】テザークリップが車体ピラーとピラーガーニッシュに係止される構造の一例を示す斜視図である。
図6】膨張するエアバッグ袋体でピラーガーニッシュが押圧されて車体ピラーから解放される状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための実施形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1は本実施形態に係るテザークリップが備わるカーテンエアバッグ装置を示す。
図1の(a)に示すように、カーテンエアバッグ装置1は、車室側の側方に沿って膨張展開するエアバッグ袋体1aと、エアバッグ袋体1aを膨張展開させるためのガス(展開圧力)を供給するインフレータ1bと、インフレータ1bを作動させる信号を発生する制御部(図示せず)と、を含んで構成される。そして、適宜折り畳まれた状態のエアバッグ袋体1aとインフレータ1bとが、車両の前方で上下方向に延伸するフロントピラーおよび当該フロントピラーが車両後方に延伸するルーフサイド部に収納される。以下、本実施形態においては、フロントピラーとルーフサイド部を合わせて車体ピラー2と称する。
【0013】
図1の(b)は、車体ピラー2における車両左側のフロントピラーの断面図であり、フロントウィンド10の左端を前方で支持する状態を示している。
図1の(b)に示すように、車体ピラー2は、車外の側に膨らんだアウタパネル2aの内側(車室側)にインナパネル2bが溶接等で張り合わせられた二重構造を呈し、インナパネル2bの側がガーニッシュ(ピラーガーニッシュ3)で覆われる。ピラーガーニッシュ3は車室側に膨らんだ形状でインナパネル2bとの間に空間を形成する。そして、ピラーガーニッシュ3とインナパネル2bの間に形成される空間にエアバッグ袋体1aとインフレータ1bが収納される。
【0014】
また、ピラーガーニッシュ3はテザークリップ4によって車体ピラー2に係止される。本実施形態において、インナパネル2bは、車室側を臨む略平面の部分でテザークリップ4の外側係止部40b(第2係止部)を係止する。また、ピラーガーニッシュ3にはインナパネル2bと対向する係止部3aが形成され、この係止部3aでテザークリップ4の内側係止部40a(第1係止部)を係止する。
なお、インナパネル2bおよびピラーガーニッシュ3がテザークリップ4で係止される構造の詳細は後記する。
【0015】
車体ピラー2のフロントピラーにおいては、右方を臨むインナパネル2bにテザークリップ4の外側係止部40bが係止され、このインナパネル2bに対向する係止部3aにテザークリップ4の内側係止部40aが係止される。
テザークリップ4の軸方向を内側係止部40aから外側係止部40bに向かう方向とすると、フロントピラーにおいてテザークリップ4は軸方向を略左右方向として、インナパネル2bにピラーガーニッシュ3を係止する。
【0016】
本実施形態に係るテザークリップ4は、図2に示すように、本体部40とワイヤユニット49とを含んで構成される。
本実施形態に係る本体部40は樹脂成形による1ピース構成であり、ピラーガーニッシュ3(図1の(b)参照)に係止される側の内側係止部40aと、インナパネル2b(図1の(b)参照)に係止される側の外側係止部40bと、が軸方向に直列に形成され、内側係止部40aと外側係止部40bは、図3に示すように構成される結合部40cで結合される。
なお、テザークリップ4は1ピース構成に限定されるものではなく、別体に形成される内側係止部40aと外側係止部40bが結合部40cで結合される構成であってもよい。
【0017】
外側係止部40bは、軸方向に延びる略直方体形状の挿入部45を含んで構成され、挿入部45の内側係止部40a側端部は径方向に円板状に広がってワイヤ巻付部46が形成される。このワイヤ巻付部46は円筒形の巻付胴体部46aの周囲に、軸方向から径方向に広がるフランジ状部46bが形成されてなり、ワイヤユニット49を構成するワイヤ49b(紐状部材)がフランジ状部46bの内側係止部40a側に巻きつけられる。
また、詳細は後記するが、ワイヤ巻付部46はテザークリップ4がインナパネル2bに係止されるときに、車室側での係止位置を規制する規制部となる。
なお、挿入部45は直方体形状に限定されない。例えば、略円筒形状の挿入部45であってもよい。また、ワイヤ巻付部46も円板状に限定されず、挿入部45の径方向に矩形状に広がるワイヤ巻付部46であってもよい。
【0018】
略直方体形状(または略円筒形状)を呈する挿入部45の対向する2つの側面には、軸方向端部(より詳細には、ワイヤ巻付部46が形成されない側の端部)の側からワイヤ巻付部46の側に向かって所定の傾斜で外方に広がる傾斜面47aと、傾斜面47aのワイヤ巻付部46側でワイヤ巻付部46と対向する対向面47bとを有し側面視で略直角三角形に突起するスナップ爪47が1つずつ形成される。
なお、挿入部45の軸方向端部は先細りに形成されていてもよい。
【0019】
さらに、挿入部45のスナップ爪47が形成されない側面(つまり、スナップ爪47が形成される面と直交する側面)には、対向する側面に向かって貫通するワイヤ係止溝48が軸方向端部からワイヤ巻付部46の位置まで軸方向に沿って形成される。このワイヤ係止溝48は、後記するようにワイヤ49bを係止する機能を有する。
【0020】
そしてスナップ爪47の軸方向端部側を除いた周囲に、ワイヤ係止溝48に達する深さの貫通溝47cが形成される。この構成によってスナップ爪47は貫通溝47cが形成されない軸方向端部側を支点として挿入部45の表面から沈み込む方向に弾性変形する。ワイヤ巻付部46と対向面47bの間の間隙の幅をインナパネル2b(図1の(b)参照)の板厚と等しくすると、ワイヤ巻付部46と対向面47bの間でインナパネル2bを係止できる。また、スナップ爪47の、挿入部45から沈み込む方向への弾性変形によってスナップフィット機構が構成され、テザークリップ4をインナパネル2bにスナップフィットによって容易に係止できる。
【0021】
ワイヤ巻付部46のフランジ状部46bには、ワイヤ係止溝48が形成される位置に切込溝46dが形成される。ワイヤ係止溝48は、挿入部45において対向する2つの面を貫通する構成であるため、切込溝46dはワイヤ巻付部46の周方向において対向する位置(つまり、180°ずれた位置)に2つ形成される。切込溝46dは、フランジ状部46bの外周から径方向に形成される切込であり、ワイヤユニット49を構成するワイヤ49bが通る幅に形成されることが好ましい。
【0022】
なお、本実施形態においてワイヤ巻付部46は外側係止部40bに形成したが、ワイヤ巻付部46が内側係止部40aに形成される構成であってもよい。この場合、外側係止部40bの側が開放され、内側係止部40aと外側係止部40bが分離したときに、ワイヤ49bが外側係止部40bの側に伸長してワイヤ巻付部46から解放される構成とすればよい。
【0023】
内側係止部40aは、外側係止部40bのワイヤ係止溝48が形成される面側からの側面視で略「横向きのH字」状を呈し、軸方向の端部側に形成される端末部42と、外側係止部40bの側に形成される抜止部43と、の間に形成される凹部でピラーガーニッシュ3の係止部3a(図1の(b)参照)に係合する係合溝41が形成される。なお、抜止部43には係合溝41の側に凸となる任意の形状の突起部43aが形成されていてもよい。このように形成される突起部43aは、係合溝41にピラーガーニッシュ3の係止部3aが係合したときの抜け止めとして機能する。
【0024】
端末部42には、軸方向端部から軸方向に沿って円筒形のワイヤ取付孔44が開口する。このワイヤ取付孔44には、ワイヤユニット49の胴体部49aが嵌合し、ワイヤユニット49の本体部40への取り付け部となる。
また、挿入部45においてワイヤ係止溝48が形成される面と同じ方向を臨む内側係止部40aの側面には軸方向端部から結合部40cまで、軸方向に延びるように溝状のワイヤ案内溝42aが形成される。ワイヤ案内溝42aは、ワイヤユニット49が本体部40に取り付けられた際、ワイヤユニット49に備わるワイヤ49bを軸方向に沿って外側係止部40bの方向に案内するために形成される溝であって、内側係止部40aの対向する2つの側面に1つずつ形成される。
【0025】
結合部40cは内側係止部40aと外側係止部40bを結合する部位であり、図3に示すように、内側係止部40aの抜止部43と、外側係止部40bのワイヤ巻付部46と、が対向する面に、例えば円板状のワイヤ巻付部46と同心円の結合環40c1として形成される。そして、結合環40c1は内側係止部40aおよび外側係止部40bよりも細い軸径で、かつ、径方向に肉薄であることが好ましい。例えば、ワイヤ取付孔44の深さが結合部40cに達する構成とし、そのワイヤ取付孔44の周囲に中空で肉薄の結合環40c1が形成される構成とすればよい。
【0026】
ワイヤ取付孔44はワイヤユニット49の胴体部49aが嵌合する径であればよく、内側係止部40aおよび外側係止部40bよりも細い径で形成できる。したがって、ワイヤ取付孔44の周囲に肉薄に形成される結合環40c1は、内側係止部40aおよび外側係止部40bよりも細い軸径で、かつ、径方向に肉薄とすることができる。
そして、この構成によって、結合環40c1は、内側係止部40aと外側係止部40bにそれぞれ入力される異なった方向の力に対して脆弱に形成され、ひいては、結合部40cが脆弱に形成される。
【0027】
ワイヤユニット49は、図2に示すように、テザークリップ4のワイヤ取付孔44に嵌合する円筒形の金属体(胴体部49a)に1本のワイヤ49bの両端部が取り付けられて構成される。また、ワイヤ49bは両端が胴体部49aに取り付けられることによってリング状を呈する。ワイヤ49bの両端部は、胴体部49aの軸方向端部の固定面49a1の略中心に径方向に並んで固定される。例えば、ワイヤ49bの両端は固定面49a1に垂直に差し込まれ、胴体部49aに鋳込まれて固定される構成とすればよい。そしてワイヤ49bは、胴体部49aが本体部40のワイヤ取付孔44に嵌合した状態で、内側係止部40aの軸方向の長さより充分に長いことが好ましい。ワイヤ49bは金属製であればよいが、その材質は限定されない。
【0028】
本実施形態に係るテザークリップ4は、前記したように構成される本体部40にワイヤユニット49が組み込まれて構成される。
図4の(a)に示すように、本体部40のワイヤ取付孔44にワイヤユニット49の胴体部49aが、固定面49a1をワイヤ取付孔44の開口に向けた状態で嵌め込まれて固定される。このとき、固定面49a1においてワイヤ49bの両端部が並んだ方向が、本体部40に形成される2つのワイヤ案内溝42aの方向であることが好ましい。
そして、胴体部49aに取り付けられたワイヤ49bは、固定面49a1に固定される両端部のそれぞれから、2つ形成されるワイヤ案内溝42aの側に向かって広がり、ワイヤ案内溝42aのそれぞれに嵌って外側係止部40bの側に案内される。
ワイヤユニット49の胴体部49aをワイヤ取付孔44に固定する方法は限定されない。例えば、胴体部49aがワイヤ取付孔44に圧入される構成であってもよいし、接着剤等によって、胴体部49aがワイヤ取付孔44に固定される構成であってもよい。
【0029】
そして外側係止部40bの側に案内されたワイヤ49bは、挿入部45の軸方向端部からワイヤ係止溝48にはめ込まれて係止される。
なお、ワイヤ係止溝48の幅はワイヤ49bが嵌まり込み、嵌まり込んだワイヤ49bを係止可能な幅に形成されることが好ましい。具体的には、ワイヤ49bの径より僅かに小さな幅であることが好ましい。
【0030】
前記したように、ワイヤ49bは内側係止部40aの軸方向の長さより充分長く形成されるため、ワイヤ係止溝48に嵌め込まれると弛みが生じる。
そこで、ワイヤ49bの弛んだ部分が切込溝46dを通してフランジ状部46bの内側係止部40aの側に案内され、ワイヤ49bがワイヤ巻付部46に軸回りに巻きつけられる構成とする。この構成によって、ワイヤ49bの弛みを解消することができる。
【0031】
以上のように、ワイヤユニット49の胴体部49aはテザークリップ4の内側係止部40aに固定される。また、ワイヤ49bは両端部が胴体部49aに取り付けられてリング状を呈し、両端部の間が外側係止部40bのワイヤ係止溝48で係止される。この構成によって、テザークリップ4の内側係止部40aと外側係止部40bがワイヤ49bによって繋がれた状態になる。
また、ワイヤ巻付部46は内側係止部40aの側が開放された構成であり、ワイヤユニット49の胴体部49aが外側係止部40bから離反する方向に移動したとき、ワイヤ巻付部46に巻きつけられているワイヤ49bは伸長しながらワイヤ巻付部46から解放される。
【0032】
前記したように、内側係止部40aと外側係止部40bは、脆弱に形成される結合部40c(図3参照)で連結されており、結合部40cを形成する脆弱な結合環40c1(図3参照)の破断によって、図4の(b)に示すように、内側係止部40aと外側係止部40bは容易に分離する。このように内側係止部40aと外側係止部40bが分離するとワイヤ巻付部46に巻きつけられているワイヤ49bが伸長し、ワイヤ49bによって内側係止部40aと外側係止部40bが繋がれた状態が維持される。
【0033】
なお、結合環40c1から放射状に形成されるリブ40c2は結合部40cにおける内側係止部40aと外側係止部40bの強度を調節するために適宜設けられる補強リブである。このリブ40c2は、例えば結合環40c1のみで形成される結合部40cで必要な強度が得られない場合に必要に応じて設けられることが好ましい。
もちろんリブ40c2が形成されない構成であってもよい。または、変形例として、結合環40c1が形成されず、リブ40c2のみで構成される結合部40cであってもよい。
【0034】
図4の(a)に示すように構成されるテザークリップ4は、図1の(b)に示すようにピラーガーニッシュ3を車体ピラー2に係止する係止部材として使用される。そして、ピラーガーニッシュ3と車体ピラー2の間にカーテンエアバッグ装置1が組み込まれる。
【0035】
例えば、図5に示すように、ピラーガーニッシュ3の車体ピラー2側(インナパネル2b側)に、テザークリップ4を係止するための係止部3aが形成される構成とする。
係止部3aは、インナパネル2bと対向する係止面3a1と、係止面3a1をインナパネル2bの側に突出させた状態で支持する支持部3a2と、を有して形成される。また、係止面3a1には、ピラーガーニッシュ3の延伸方向に延びるスライド溝3a3が形成される。スライド溝3a3は係止面3a1を厚み方向に貫通するように形成され、かつ、ピラーガーニッシュ3の延伸方向の一端が開放されている。そして、スライド溝3a3はテザークリップ4の係合溝41が係合する大きさに形成される。
この構成によって、テザークリップ4の係合溝41が、開放されている一端からスライド溝3a3に係合し、テザークリップ4がピラーガーニッシュ3に係止される。
【0036】
また、インナパネル2bには、テザークリップ4の挿入部45が貫通する係合孔2b1が形成される。係合孔2b1は挿入部45より僅かに大きな寸法で形成されることが好ましい。挿入部45が係合孔2b1に係合するとき、挿入部45から突起するスナップ爪47は係合孔2b1によって沈み込む方向に弾性変形する。そして、スナップ爪47の対向面47b(図2参照)が係合孔2b1の位置を通過したときにスナップ爪47は弾性力によって挿入部45から突起した状態に戻る。この構成によって、テザークリップ4はインナパネル2bにスナップフィットで係止される。
なお、挿入部45は径方向に広がるワイヤ巻付部46によって、係合孔2b1への挿入が規制される。つまり、テザークリップ4はワイヤ巻付部46によって、ピラーガーニッシュ3側(車室側)の係止位置が規制される。
また、図示はしないが、ワイヤ巻付部46が内側係止部40a(図4の(a)参照)に形成される場合、挿入部45の一部が適宜径方向に突出して、挿入部45の係合孔2b1への挿入を規制する構成とすればよい。
【0037】
このようにテザークリップ4は、軸方向の一方をなす外側係止部40bがインナパネル2bに係止され、軸方向の他方をなす内側係止部40aがピラーガーニッシュ3に係止される。したがって、テザークリップ4は、インナパネル2b(車体ピラー2)から軸方向にピラーガーニッシュ3を係止する。
【0038】
本実施形態に係るインナパネル2bとピラーガーニッシュ3は、例えば、以上のような構造であり、テザークリップ4の内側係止部40aの係合溝41(図5参照)がピラーガーニッシュ3に係止され、外側係止部40bの挿入部45(図5参照)がインナパネル2bに係止される。つまり、内側係止部40aがピラーガーニッシュ3に係止され、外側係止部40bが車体ピラー2(図1の(b)参照)に係止される。この構成によって、ピラーガーニッシュ3は、テザークリップ4の脆弱な結合部40c(図2参照)を介し、図1の(b)に示すように車体ピラー2に係止される。
【0039】
なお、テザークリップ4がピラーガーニッシュ3に係止される構成は一例であって、係合溝41がスライド溝3a3に係合する構成に限定されない。また、テザークリップ4がインナパネル2bに係止される構成も一例であって、スナップフィットによる係止に限定されない。
【0040】
図示しない制御部が衝撃を感知してインフレータ1b(図1の(a)参照)を作動させる信号を発生すると、インフレータ1bからエアバッグ袋体1a(図1の(b)参照)にガス(展開圧力)が供給される。エアバッグ袋体1aは供給されたガスで膨張し、ピラーガーニッシュ3(図1の(b)参照)をインナパネル2b(図1の(b)参照)の側から押圧する。例えば、車両の前方で上下方向に延伸するフロントピラーに配置されるエアバッグ袋体1aは後方に向かって膨張展開するように構成され、図6に示すように、ピラーガーニッシュ3を後方に向かって押圧する。
【0041】
このとき、テザークリップ4の内側係止部40aにはピラーガーニッシュ3を介して後ろ向きの力(押圧力)が作用する。一方、車体ピラー2のフロントピラーに係止されている外側係止部40bには、結合部40c(図2参照)を介して作用する後ろ向きの押圧力に抗する前向きの力が作用する。
また、図3図4の(b)に示すように、結合部40cは、内側係止部40aおよび外側係止部40bよりも細い軸径の円環状を呈する肉薄の結合環40c1で形成される。この構成によって、軸方向と異なる方向に作用する力に対しても脆弱な結合部40cとすることができる。
そして、内側係止部40aと外側係止部40bに異なった方向の力を作用させることによって係合部40cを容易に破断させることができる。
【0042】
したがって、エアバッグ袋体1aの膨張展開によってピラーガーニッシュ3を後ろ方に押圧する押圧力が発生し、その反作用として外側係止部40bに前向きの力が作用する場合、係合部40cに作用する力がテザークリップ4の軸方向と異なる方向であっても、図6に示すようにテザークリップ4の結合部40cは容易に破断する。そして、ピラーガーニッシュ3は車体ピラー2から解放されて車体ピラー2から離反する。
【0043】
このとき、テザークリップ4の外側係止部40bはインナパネル2bに係止された状態で残存し、内側係止部40aはピラーガーニッシュ3に係止された状態でインナパネル2bから離反する。
しかしながら、内側係止部40aと外側係止部40bはワイヤ49bで繋がれた状態が維持される。したがって、インナパネル2bに係止された外側係止部40bとピラーガーニッシュ3に係止された内側係止部40aはワイヤ49bで繋がれた状態が維持される。
この構成によって、インナパネル2bとピラーガーニッシュ3がワイヤ49bで繋がれた状態が維持されることになり、インナパネル2bから解放されたピラーガーニッシュ3が車室内に向かって飛散することが防止される。
【0044】
また、テザークリップ4の内側係止部40aと外側係止部40bが結合した状態のとき、ワイヤ49bはワイヤ巻付部46に巻きついた状態にある。したがって、長いワイヤ49bであっても、インナパネル2bとピラーガーニッシュ3の間に弛んだワイヤ49bが広がることが防止される。弛んだワイヤ49bがインナパネル2bとピラーガーニッシュ3の間に広がるとエアバッグ袋体1aの膨張展開が妨げられる場合がある。しかしながら、ワイヤ巻付部46に巻きついた状態のワイヤ49bはエアバッグ袋体1aの膨張展開を妨げない。したがって、この構成によって、ワイヤ49bの長さを長くすることも可能であり、ワイヤ49bの長さを好適な長さに設定できる。
【0045】
また、円環状の結合環40c1(図3参照)として形成されるテザークリップ4の結合部40cは、ピラーガーニッシュ3が膨張展開するエアバッグ袋体1aによって押圧されたときに破断する。したがって、エアバッグ袋体1aの膨張展開で必ずテザークリップ4を破断させることができ、ピラーガーニッシュ3自体の破損を防止できる。
【0046】
また、本実施形態に係るテザークリップ4は、内側係止部40aと外側係止部40bが1ピース構造で形成される。したがって、テザークリップ4の製造が容易になる。また、内側係止部40aと外側係止部40bにガタが生じることがなく、インナパネル2bにピラーガーニッシュ3をガタつきなく係止できる。そして、インナパネル2bにピラーガーニッシュ3のガタつきによる騒音の発生を確実に防止できる。
【0047】
なお、結合部40c(図3参照)は、内側係止部40aおよび外側係止部40bよりも細い軸径で肉薄の結合環40c1(図3参照)で形成される。したがって、結合部40cは軸方向に作用する力に対しても脆弱に構成される。したがって、エアバッグ袋体1a(図1の(b)参照)による押圧力がピラーガーニッシュ3(図1の(b)参照)の軸方向に作用する場合であっても、テザークリップ4(図1の(b)参照)を容易に破断させることができる。
【0048】
また、車両の前後方向に延伸するルーフサイドに備わるエアバッグ袋体1a(図1の(b)参照)は下方に向かって膨張展開するように構成され、ピラーガーニッシュ3(図1の(b)参照)には下方に向かう押圧力が作用する。
この場合、テザークリップ4の内側係止部40a(図1の(b)参照)には下向きの力(押圧力)が作用し、その反作用として外側係止部40b(図1の(a)参照)には上向きの力が作用する。つまり、内側係止部40aと外側係止部40bに異なる方向の力が作用し、テザークリップ4は結合部40cで破断する。
このように、車両の前後方向に延伸するルーフサイドにおいてもフロントピラーと同様にエアバッグ袋体1aの膨張展開でピラーガーニッシュ3を車体ピラー2から容易に解放させることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 カーテンエアバッグ装置
1a エアバッグ袋体
1b インフレータ
2 車体ピラー
3 ピラーガーニッシュ(ガーニッシュ)
4 テザークリップ
40a 内側係止部(第1係止部)
40b 外側係止部(第2係止部)
40c 結合部
49 ワイヤユニット
49a 胴体部
49b ワイヤ(紐状部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6