特許第5775595号(P5775595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775595
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】シリル化ポリブタジエン
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/25 20060101AFI20150820BHJP
   C08F 36/00 20060101ALI20150820BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20150820BHJP
   C08F 299/00 20060101ALI20150820BHJP
   C09J 115/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C08C19/25
   C08F36/00 510
   C08L15/00
   C08F299/00
   C09J115/00
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-537535(P2013-537535)
(86)(22)【出願日】2012年10月3日
(86)【国際出願番号】JP2012075664
(87)【国際公開番号】WO2013051613
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2013年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2011-221960(P2011-221960)
(32)【優先日】2011年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】山手 太軌
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−344110(JP,A)
【文献】 米国特許第03324089(US,A)
【文献】 Ovchinnikova, T.A.; Yakubchik, A.I.,Addition of triphenylsilane to polybutadiene in the presence of radical initiators,Vestnik Leningradskogo Universiteta, Seriya 4,1971年,No.4,134-140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00−19/44
C08F8/00−8/50
C08F299/00
C08L15/00
C09J115/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式(I)中、R、R、及びRは、各々独立して、無置換又は置換基を有するアリール基、アルキル基、または、アラルキル基を表す。ただし、R〜Rのうち、少なくとも1つはアリール基またはアラルキル基である。)で表される繰り返し単位を含有し、シリル化率が21〜37%であることを特徴とするシリル化ポリブタジエン。
【請求項2】
75〜100モル%の下記式(II)で表される繰返し単位及び0〜25モル%の下記式(III)で表される繰返し単位からなるポリブタジエンをシリル化して得られたものであることを特徴とする請求項に記載のシリル化ポリブタジエン。
【化2】
【請求項3】
数平均分子量が500〜10,000であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリル化ポリブタジエン。
【請求項4】
式(I)
【化3】
(式(I)中、R、R、及びRは、各々独立して、無置換又は置換基を有するアリール基、アルキル基、または、アラルキル基を表す。ただし、R〜Rのうち、少なくとも1つはアリール基またはアラルキル基である。)で表される繰り返し単位を含有するシリル化ポリブタジエンと重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項5】
前記シリル化ポリブタジエンが、前記式(I)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位中1〜50モル%含有することを特徴とする請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記シリル化ポリブタジエンが、75〜100モル%の下記式(II)で表される繰返し単位及び0〜25モル%の下記式(III)で表される繰返し単位からなるポリブタジエンをシリル化して得られたものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の硬化性組成物。
【化4】
【請求項7】
前記シリル化ポリブタジエンの数平均分子量が500〜10,000であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化させて得られた硬化物。
【請求項9】
式(I)
【化5】
(式(I)中、R、R、及びRは、各々独立して、無置換又は置換基を有するアリール基、アルキル基、または、アラルキル基を表す。ただし、R〜Rのうち、少なくとも1つはアリール基またはアラルキル基である。)で表される繰り返し単位を含有するシリル化ポリブタジエンと、重合開始剤とを含有することを特徴とする接着剤。
【請求項10】
前記シリル化ポリブタジエンが、前記式(I)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位中1〜50モル%含有することを特徴とする請求項9に記載の接着剤。
【請求項11】
前記シリル化ポリブタジエンが、75〜100モル%の下記式(II)で表される繰返し単位及び0〜25モル%の下記式(III)で表される繰返し単位からなるポリブタジエンをシリル化して得られたものであることを特徴とする請求項9又は10に記載の接着剤。
【化6】
【請求項12】
前記シリル化ポリブタジエンの数平均分子量が500〜10,000であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項13】
式(I)
【化7】
(式(I)中、R、R、及びRは、各々独立して、無置換又は置換基を有するアリール基、アルキル基、または、アラルキル基を表す。ただし、R〜Rのうち、少なくとも1つはアリール基またはアラルキル基である。)で表される繰り返し単位を含有するシリル化ポリブタジエンと、重合開始剤とを含有することを特徴とする薄膜形成用組成物。
【請求項14】
前記シリル化ポリブタジエンが、前記式(I)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位中1〜50モル%含有することを特徴とする請求項13に記載の薄膜形成用組成物。
【請求項15】
前記シリル化ポリブタジエンが、75〜100モル%の下記式(II)で表される繰返し単位及び0〜25モル%の下記式(III)で表される繰返し単位からなるポリブタジエンをシリル化して得られたものであることを特徴とする請求項13又は14に記載の薄膜形成用組成物。
【化8】
【請求項16】
前記シリル化ポリブタジエンの数平均分子量が500〜10,000であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載の薄膜形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブタジエンの一部をシリル化したポリブタジエン及びその硬化性組成物に関する。
本願は、2011年10月6日に、日本に出願された特願2011−221960号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来から、側鎖の二重結合の一部をシリル化したポリブタジエンが知られている。例えば特許文献1では、側鎖の炭素−炭素二重結合の一部にシリル基が付加したポリブタジエンと炭素質材料とを含む硬化性組成物が提案されている。具体的には、側鎖の炭素−炭素二重結合の20.5%又は25.2%をトリエチルシリル化したポリブタジエンを含む硬化性組成物が開示されている。当該硬化性組成物から得られた硬化物は、耐熱水性、導電性等に優れているため、燃料電池用セパレータ、電極、電磁波シールド、放熱材料、電池用集積体等としての用途が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−344110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、ポリブタジエン及びその誘導体を含有する硬化性組成物を硬化した硬化物について、より高い接着性が求められている。しかしながら、側鎖の二重結合の一部がシリル化されているポリブタジエンを含む硬化性組成物については、これまで、接着剤として好適な高いせん断力を備える硬化物が得られるものはなかった。
そこで、本発明は、高いせん断力を備える硬化物を得るための硬化性組成物の材料として好適なポリブタジエンの誘導体を提供することを目的とする。
また、薄膜材料の分野においては、高い屈折率を有する薄膜材料が求められていた。本発明は、高い屈折率を有する薄膜材料を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリブタジエンの側鎖の二重結合に一定の割合でシリル基を付加した重合体を用いることにより、せん断力に優れる硬化性組成物が得られることを見出した。また、そのような重合体を硬化して得られる薄膜材料は、高い屈折率を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記(1)〜(8)を提供する。
(1) 式(I)
【0007】
【化1】
【0008】
(式(I)中、R、R、及びRは、各々独立して、無置換又は置換基を有するアリール基、アルキル基、または、アラルキル基を表す。ただし、R〜Rのうち、少なくとも1つはアリール基またはアラルキル基である。)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とするシリル化ポリブタジエン。
(2) 前記式(I)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位中1〜50モル%含有することを特徴とする前記(1)に記載のシリル化ポリブタジエン。
(3) 75〜100モル%の下記式(II)で表される繰返し単位及び0〜25モル%の下記式(III)で表される繰返し単位からなるポリブタジエンをシリル化して得られたものであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のシリル化ポリブタジエン。
【0009】
【化2】
【0010】
(4) 数平均分子量が500〜10,000であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のシリル化ポリブタジエン。
(5) 前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のシリル化ポリブタジエンと重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性組成物。
(6) 前記(5)に記載の硬化性組成物を硬化させて得られた硬化物。
(7) 前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のシリル化ポリブタジエンと、重合開始剤とを含有することを特徴とする接着剤。
(8) 前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のシリル化ポリブタジエンと、重合開始剤とを含有することを特徴とする薄膜形成用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシリル化ポリブタジエンを含有する硬化性組成物は、その硬化体として、優れたせん断力を有する。このため、当該硬化性組成物は、溶剤型接着剤、2液アクリル接着剤等の各種接着剤や、各種塗膜等の薄膜の材料等として有用である。また、本発明のシリル化ポリブタジエンを含有する硬化性組成物を硬化して得られる薄膜は、高い屈折率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<シリル化ポリブタジエン>
本発明のシリル化ポリブタジエンは、下記式(I)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする。全繰り返し単位中に含まれる式(I)で表される繰り返し単位の割合は特に限定されない。硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物が、高い接着性を有するという観点からは、式(I)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位中1〜30モル%含有することが好ましい。硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物が、高い屈折率を有するという観点からは、式(I)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位中1〜50モル%含有することが好ましい。式(I)中、R、R、及びRは、各々独立して、無置換又は置換基を有するアリール基、アルキル基、または、アラルキル基を表す。ただし、R〜Rのうち、少なくとも1つはアリール基またはアラルキル基である。
【0013】
【化3】
【0014】
、R、又はRにおけるアリール基は、単環のアリール基であってもよく、多環のアリール基であってもよい。具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0015】
、R、又はRにおけるアリール基が有する置換基の数は特に制限されず、R、R、又はRは各々独立して、1の置換基を有していてもよく、2以上の置換基を有していてもよい。
、R、又はRにおけるアリール基が有する置換基としては、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状の基が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状の基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の単環又は2環の基が挙げられる。R、R、又はRにおけるアリール基が有する置換基としては、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0016】
、R、又はRにおけるアルキル基は、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を意味する。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
、R、又はRにおけるアルキル基が有する置換基としては、アリール基が有する置換基として挙げたものと同じものを挙げることができる。
【0017】
、R、又はRにおけるアラルキル基は、前記アリールと前記アルキルが結合した基を意味し、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル等が挙げられる。
【0018】
また、R、R、又はRにおけるアリール基同士、アルキル基同士、アラルキル基同士は、全て同種の基であってもよく、それぞれ別個の基であってもよい。本発明のシリル化ポリブタジエンとしては、R、R、及びRが各々独立して、無置換又は置換基を有するアリール基であることが好ましく、無置換又は置換基を有するフェニル基であることがより好ましく、R、R、及びRが全て、無置換又は置換基としてアルキル基若しくはアルコキシ基を有するフェニル基であることがさらに好ましく、R、R、及びRが全て無置換のフェニル基であることが特に好ましい。
【0019】
本発明のシリル化ポリブタジエンは、式(I)で表される繰り返し単位を含有することにより、その硬化物が高いせん断力を示し、また、その硬化膜が高い屈折率を示す。本発明のシリル化ポリブタジエンの全繰り返し単位に対する式(I)で表される繰り返し単位の含有率は、1〜50モル%が好ましく、1〜30モル%がより好ましく、1〜25モル%がさらに好ましく、1〜20モル%がよりさらに好ましく、1〜15モル%が特に好ましく、1〜10モル%がより特に好ましく、2〜9モル%が最も好ましい。
【0020】
本発明のシリル化ポリブタジエンは、式(I)で表される繰り返し単位の他に、下記式(II)で表される繰り返し単位及び下記式(III)で表される繰り返し単位からなる群より選択される1種以上を含有することが好ましい。式(II)及び式(III)中の二重結合は、その一部が水添(水素添加により飽和炭素−炭素結合となる)されていてもよい。また、式(III)中の二重結合は、シス結合又はトランス結合のいずれであってもよく、かつ、一分子のシリル化ポリブタジエン中に、式(III)中の二重結合がシス結合である繰返し単位と、式(III)中の二重結合がトランス結合である繰返し単位とが混在していてもよい。
【0021】
【化4】
【0022】
本発明のシリル化ポリブタジエンとしては、式(I)で表される繰り返し単位と式(II)で表される繰り返し単位の和が全繰り返し単位中75〜100モル%であることが好ましく、80〜100モル%であることがより好ましい。また、本発明のシリル化ポリブタジエンとしては、式(III)で表される繰り返し単位が全繰り返し単位中0〜25モル%であることが好ましく、0〜20モル%であることがより好ましい。
【0023】
本発明における、シリル化ポリブタジエンの末端構造には特に制限はなく、ポリマー末端の構造を種々に変性したものも使用できる。それらの具体例としては、末端を水酸基に変性したものや、末端をアクリル変性したものや、末端をメタクリル変性したものや、末端をカルボン酸基に変性したもの等種々の構造のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明のシリル化ポリブタジエンの分子量は、特に限定されるものではない。本発明のシリル化ポリブタジエンとしては、ポリスチレンを指標として用いたGPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)法による数平均分子量(Mn)が500〜10,000であることが好ましく、1,000〜5,000であることがより好ましい。
本発明のシリル化ポリブタジエンの分散度(Mw/Mn)は1.01〜4.00であることが好ましく、1.01〜3.00であることがより好ましく、1.01〜2.50であることがさらに好ましい。
【0025】
<シリル化ポリブタジエンの製造方法>
本発明のシリル化ポリブタジエンは、いずれの手法により製造されたものであってもよい。例えば、ポリブタジエンと、下記式(IV)で表されるシラン化合物を触媒の存在下、反応させることにより製造することができる。
【0026】
【化5】
【0027】
式(IV)中、R、R、又はRは、前記式(I)におけるものと同様である。式(IV)で表されるシラン化合物として具体的には、トリフェニルシラン、トリス(4−メチルフェニル)シラン、トリス(4−エトキシフェニル)シラン、ジメチルフェニルシラン、エチルメチルフェニルシラン、ジエチルフェニルシラン等を挙げることができ、これらのうちトリフェニルシランがより好ましい。
【0028】
シラン化合物を反応させるポリブタジエンは、全繰返し単位中の1モル%以上が式(II)で表される繰返し単位であることが好ましいが、特に制限されない。本発明のシリル化ポリブタジエンの原料としては、式(II)で表される繰返し単位に加えて、式(III)で表される繰り返し単位を含むものであることが好ましく、75〜100モル%の式(II)で表される繰返し単位及び0〜25モル%の式(III)で表される繰返し単位からなるポリブタジエンであることがより好ましい。
【0029】
75〜100モル%の式(II)で表される繰返し単位及び0〜25モル%の式(III)で表される繰返し単位からなるポリブタジエンとしては、具体的に、NISSO−PB B−1000、NISSO−PB B−2000、NISSO−PB B−3000(以上、日本曹達社製)等を例示することができる。
【0030】
シリル化反応に使用するシラン化合物の使用量は、ポリブタジエン中の全繰り返し単位中の何モル%をシリル化するかに応じて、適宜使用量を決めることができる。シリル化しようとする繰り返し単位1モルに対して1モルのシラン化合物を使用することが好ましい。また、シリル化しようとする繰り返し単位1モルに対して、過剰量のシラン化合物を使用することもできる。過剰量のシラン化合物を使用する場合は、目的のシリル化率まで反応が進行した時点で、反応を停止することにより、目的のシリル化ポリブタジエンを得ることができる。
【0031】
シリル化反応に使用される触媒については、ヒドロシリル化反応に対する活性があれば特に制限されるものはないが、白金触媒が好ましい。白金触媒としては、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、ヘキサクロロ白金(IV)酸等が挙げられる。
【0032】
シリル化反応の反応温度は特に制限されないが、50〜150℃が好ましく、80℃〜130℃がより好ましい。シリル化反応の反応時間は特に制限されず、所望のシリル化率を考慮して、適宜決定することができる。
シリル化反応に用いる溶媒は、ポリブタジエンが溶解する溶媒であれば特に制限されない。具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、ジエチルエーテル、クロロホルム等の無極性溶媒を挙げることができ、これらのうち、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましい。
このような条件でシリル化反応を行うと、シラン化合物は、1,4−結合の主鎖二重結合に対してではなく、大部分が1,2−結合の側鎖二重結合に対して付加する。また、側鎖の二重結合に対するシリル化反応は、anti−Markovnikov型で進行する。
【0033】
合成したシリル化ポリブタジエンのミクロ構造を確認する方法には、特に制限はなく、どのような方法で確認してもよい。例えば、核磁気共鳴法(以下、「NMR法」と略す。)や、フーリエ変換赤外分光法(以下、「FT−IR法」と略す。)等で行うことができる。これらの具体的な手法は、例えば、「高分子合成の実験法(株式会社化学同人発行1984年3月1日第8刷発行)」の「実験例223赤外スペクトルによるポリブタジエンのミクロ構造の測定」の項(45ページ)や、「高分子合成の実験法(株式会社化学同人発行1984年3月1日第8刷発行)」の「実験例225NMRによるポリブタジエンのミクロ構造の測定」の項(49ページ)や、「高分子合成の実験法(株式会社化学同人発行1984年3月1日第8刷発行)」の「実験例226NMRによるポリイソプレンのミクロ構造の測定」の項(51ページ)に記載されている。
【0034】
<硬化性組成物及び硬化物>
本発明のシリル化ポリブタジエンに、シリル化ポリブタジエンを硬化するための他の成分を添加することにより、硬化性組成物が得られる。
なお、本発明及び本願明細書においては、硬化する前の組成物を硬化性組成物といい、硬化性組成物を硬化させたものを硬化物という。
【0035】
本発明の硬化性組成物は、本発明のシリル化ポリブタジエンと、重合開始剤とを含有することを特徴とする。本発明の硬化性組成物は、本発明のシリル化ポリブタジエンを1種類のみ含有していてもよく、組成の異なる2種類以上を混合して含有させてもよい。
【0036】
本発明の硬化性組成物に含有させる重合開始剤としては、特に限定されないが、熱重合開始剤または光重合開始剤であるのが好ましい。
熱重合開始剤としては、無機過酸化物や有機過酸化物等の過酸化物を挙げることができる。また、過酸化物は、1種単独で本発明の硬化性組成物に含有させてもよく、2種以上の混合物を含有させてもよい。
【0037】
無機過酸化物としては、過酸化水素、過酢酸等が挙げられる。
有機過酸化物としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシデカノエート等のパーオキシエステル類;1,5−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;アセト酢酸エチルパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類等が挙げられる。その他、ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシフェニルアセトフェノン、2−エチルアントラキノン、1,3−ジ(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−テトラキス(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)(商品名イルガキュア784、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、ジクミル ペルオキシド(dicumyl peroxide(DCP))、t−ブチルペルベンゾアート(t−butylperbenzoate(TBPB))、t−ブチルペロキシヘキシン−3 (t−butylperoxyhexyne−3)等が挙げられる。
【0038】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、p,p’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジメチルアセタール(商品名イルガキュア651;チバ・ガイギー社製)、イルガキュア184、イルガキュア907(いずれもチバ・ガイギー社製)、ジエチルチオキサントン、カンファーキノン、p−ジメチルアミノカルコン、カルボニルビス(ジエチルアミノクマリン)等が挙げられる。
【0039】
本発明の硬化性組成物中の重合開始剤の含有量は、シリル化ポリブタジエンを充分に硬化可能な量であれば特に制限されない。本発明の硬化性組成物中の重合開始剤の含有量としては、シリル化ポリブタジエン100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜30質量部がより好ましい。
【0040】
本発明の硬化性組成物は、さらに重合性ビニル化合物を含有していてもよい。シリル化ポリブタジエンと重合開始剤のみでも硬化反応を行うことができるが、重合性ビニル化合物をさらに添加した場合でも、硬化反応を行うことができる。
【0041】
重合性ビニル化合物としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(ポリ)エチレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールのモノ−又はジ−(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのモノ−、ジ−又はトリ−(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル類;ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、o,o’−ジアリルビスフェノールA、o,o’−ジアリルビスフェノールF、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(p−ヒドロキシ−o−アリルフェニル)プロパン、アリル化フェノールノボラック、1,1,3−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとの脱水縮合物等のアリル化物;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;TEA−1000,TE−1000,TEAI−1000(日本曹達製)等の末端アクリル変性ポリブタジエン等が挙げられる。また、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン化合物、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、グリシジルメタクリレート、ビニルピリジン、ジエチルアミノエチルアクリレート、N−メチルメタクリルアミド、アクリロニトリル等の反応性官能基含有化合物が挙げられる。これらの重合性ビニル化合物は、1種単独で本発明の硬化性組成物に含有させてもよく、2種以上の混合物を含有させてもよい。
【0042】
本発明の硬化性組成物には、接着性向上や屈折率向上や溶液特性の改善等種々の目的で、本発明の効果を損なわない範囲で任意に各種添加剤を配合することができる。当該添加剤としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、充填剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、溶剤等が挙げられる。
【0043】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾールフェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等が使用できる。
【0044】
熱可塑性樹脂としては、例えば、芳香族又は脂肪族系の石油樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等を使用することができる。
【0045】
光硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系化合物を主成分とする紫外線硬化性樹脂、ウレタンアクリレートオリゴマー又はポリエステルウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とする紫外線硬化性樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルフェノール系樹脂等を使用することができる。
【0046】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−0−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ぺンチルフェニル)]アクリレート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロビオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネートペンタエリスリトールーテトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等を使用することができる。
【0047】
紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、ブチルフェニルサリシレート及びオクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸類;ジヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシオクトキシベンゾフェノン、ヒドロキシドデシルオキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシスルホベンゾフェノン及びビス(メトキシヒドロキシベンゾイルフェニル)メタン等のベンゾフェノン類;(ヒドロキシメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(ヒドロキシブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(ヒドロキシジブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(ヒドロキシブチルメチルフェニル)クロロベンゾトリアゾール、(ヒドロキシジブチルフェニル)クロロベンゾトリアゾール、(ヒドロキシジアミルフェニル)ベンゾトリアゾール及び[ヒドロキシ(テトラヒドロフタルイミドメチル)メチルフェニル]ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類;エチルヘキシルシアノジフェニルアクリレート及びエチルシアノジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート類;ヒンダードアミン類等を使用することができる。
【0048】
レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチン、又はそれらの混合物等の公知のものを使用することができる。
【0049】
消泡剤としては、例えば、シリコーン油等を使用することができる。
【0050】
増粘剤としては、例えば、ポリメタクリル酸アルキル単独重合体、異種のメタクリル酸エステルの共重合体、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルの共重合体、アクリルゴム、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル−α−シアノアクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は、1種単独で本発明の硬化性組成物に含有させてもよく、2種以上の混合物を含有させてもよい。具体的な化合物としては、例えば、ポリメタクリル酸アルキル単独重合体としては、ポリメチルメタクリレート(PMMAと以下略記する。)、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等が挙げられる。異種のメタクリル酸エステルの共重合体、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルの共重合体の原料として使用される化合物としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−iso−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−iso−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−iso−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−iso−ブチル等が挙げられる。
【0051】
難燃剤としては、公知の無機系又は有機系の難燃剤、例えば水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、パークロロペンタシクロデカン、テトラブロモビスフェノールA、ペンタブロモフェノールメタクリレート、ハロゲン化エポキシ樹脂、4−ブロモフェニルマレイミド、2,4−ジブロモフェニルマレイミド、2,4,6−トリブロモフェニルマレイミド、及びこれらのブロモフェニルマレイミド類のオリゴマー等を使用することができる。
【0052】
充填剤としては、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、アルミナ、酸化マグネシウム(マグネシア)、ウォラストナイト、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、ガラス等の無機質充填剤が好適に配合される。これらの充填剤は、粉末状、粒子状、フレーク状又は繊維状の充填剤としてそのままで、若しくはカップリング剤で表面処理したものを使用することができる。さらに、テトロン、ビニロン、芳香族ポリアミド等有機質繊維をチョップドストランドとしたものも用いることができる。
【0053】
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル類;トリクレジルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート等のリン酸エステル類;ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等の二塩基酸エステル類等が使用される。
【0054】
顔料としては、酸性顔料、中性顔料、塩基性顔料のいずれの顔料を用いることもできる。例えば、酸性顔料としては、硫酸バリウム等が使用でき、中性顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、非晶質シリカ、クレー、カオリン、焼成カオリン、タルク、サテンホワイト、プラスチックピグメント等が使用でき、塩基性顔料としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム等を使用することができる。
【0055】
帯電防止剤としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物;スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物;アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物;アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物;スズ及びチタンのアルコキシド等の有機金属化合物、並びにそれらのアセチルアセトナート塩等の金属キレート化合物等が使用できる。さらに、上記に列記した化合物を高分子量化した化合物も使用できる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、若しくは金属キレート部を有し、かつ電離放射線により重合可能なモノマー又はオリゴマーや、電離放射線により重合可能な官能基を有するカップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物も、帯電防止剤として使用できる。
【0056】
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル等のエステル系溶媒;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、スチレン、プロピレン等の重合性単量体;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ジメチルスルホキシド;ヘキサメチルフォスホラストリアミド(HMPT)、ヘキサメチルフォスホロアミド(HMPA)等のリン酸アミド系溶媒等が挙げられる。また、溶媒としては、一種のみを使用してもよく、二種以上の混合物を使用することができる。
【0057】
本発明のシリル化ポリブタジエンは、重合開始剤と共に加熱、光照射等により硬化することができる。よって、本発明の硬化性組成物は、例えば、加熱処理、光照射処理等により硬化させることができる。
【0058】
本発明の硬化性組成物を加熱する方法としては、特に限定されず、ヒーター等の従来公知の加熱方法を用いることができる。
【0059】
本発明の硬化性組成物の光照射処理には、例えば、紫外線、可視光、X線、電子線等を用いることができる。
可視光を照射する方法としては特に限定されず、例えば、白熱球、蛍光灯等を用いる方法等が挙げられる。また、紫外線を照射する方法としては特に限定されず、例えば、有電極方式としてメタルハライドランプ、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯等を、無電極方式としてエキシマランプ、メタルハライドランプ等を用いる方法等を挙げることができる。紫外線を使用する場合、その波長範囲は特に限定されないが、150nm〜400nmが好ましく、200nm〜380nmがより好ましい。紫外線を照射する雰囲気としては、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気、又は酸素濃度を低下させた雰囲気が好ましいが、通常の空気雰囲気とすることも可能である。照射雰囲気温度は、通常10〜200℃とすることができる。
【0060】
本発明の硬化性組成物の光照射処理には、紫外線を用いることが好ましい。紫外線はエネルギーが高いため、紫外線を本発明の硬化性組成物に照射することにより硬化反応を促進することができ、硬化性組成物の硬化速度を速めることができると共に、硬化物における未反応の硬化性組成物の量を低減することができる。
【0061】
得られた硬化物の硬化状態は、フーリエ変換赤外分光分析装置や光化学反応熱量計等を用いて測定することができる。これらの装置を用いて硬化状態を調べることにより、硬化物が完全に硬化するための硬化条件(光の照射時間、光強度等、加熱温度、加熱時間等)を適宜選定することができる。
【実施例】
【0062】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例1]
窒素気流下、冷却管を付けたフラスコに1,2−ポリブタジエン(NISSO−PB B−1000(数平均分子量(Mn):1300、1,2−結合含有率:83%、日本曹達社製))30.0gをトルエン42.0gに溶解させた1,2−ポリブタジエン溶液に、トリフェニルシラン2.82gとトルエン51.1gの混合物を加えて、メカニカルスターラーで撹拌した。この溶液に白金触媒(3%Pt−CTSトルエン溶液(エヌ・イーケムキャット(株)製造))を0.29g加えた後、内温100℃〜110℃に保ちながら撹拌した。H−NMRにてトリフェニルシランの消失を確認した後、溶媒を減圧濃縮で除去し、28.50gのトリフェニルシリル化したポリブタジエンを得た。NMR法によってミクロ構造を測定したところ、得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエンのシリル化率は2%であった。
【0064】
[実施例2]
窒素気流下、冷却管を付けたフラスコに1,2−ポリブタジエン(NISSO−PB B−1000(数平均分子量(Mn):1300、1,2−結合含有率:83%、日本曹達社製))30.0gをトルエン39.7gに溶解させた1,2−ポリブタジエン溶液に、トリフェニルシラン6.98gとトルエン39.9gの混合物を加えて、メカニカルスターラーで撹拌した。この溶液に白金触媒(3%Pt−CTSトルエン溶液(エヌ・イーケムキャット(株)製造))を0.29g加えた後、内温100℃〜110℃に保ちながら撹拌した。H−NMRにてトリフェニルシランの消失を確認した後、溶媒を減圧濃縮で除去し、27.9gのトリフェニルシリル化したポリブタジエンを得た。NMR法によってミクロ構造を測定したところ、得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエンのシリル化率は5%であった。
【0065】
[実施例3]
窒素気流下、冷却管を付けたフラスコに1,2−ポリブタジエン(NISSO−PB B−1000(数平均分子量(Mn):1300、1,2−結合含有率:83%、日本曹達社製))30.0gをトルエン42.0gに溶解させた1,2−ポリブタジエン溶液に、トリフェニルシラン13.94gとトルエン43.2gの混合物を加えて、メカニカルスターラーで撹拌した。この溶液に白金触媒(3%Pt−CTSトルエン溶液(エヌ・イーケムキャット(株)製造))を0.27g加えた後、内温100℃〜110℃に保ちながら撹拌した。H−NMRにてトリフェニルシランの消失を確認した後、溶媒を減圧濃縮で除去し、27.47gのトリフェニルシリル化したポリブタジエンを得た。NMR法によってミクロ構造を測定したところ、得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエンのシリル化率は9%であった。
【0066】
[実施例4]
窒素気流下、冷却管を付けたフラスコに1,2−ポリブタジエン(NISSO−PB B−1000(数平均分子量(Mn):1300、1,2−結合含有率:83%、日本曹達社製))20.0gをトルエン21.0gに溶解させた1,2−ポリブタジエン溶液に、トリフェニルシラン18.8gとトルエン43.2gの混合物を加えて、メカニカルスターラーで撹拌した。この溶液に白金触媒(3%Pt−CTSトルエン溶液(エヌ・イーケムキャット(株)製造))を0.60g加えた後、内温100℃〜110℃に保ちながら撹拌した。H−NMRにてトリフェニルシランの消失を確認した後、溶媒を減圧濃縮で除去し、18.0gのトリフェニルシリル化したポリブタジエンを得た。NMR法によってミクロ構造を測定したところ、得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエンのシリル化率は21%であった。
【0067】
[実施例5]
窒素気流下、冷却管を付けたフラスコに1,2−ポリブタジエン(NISSO−PB B−1000(数平均分子量(Mn):1300、1,2−結合含有率:83%、日本曹達社製))3.60gをトルエン10.61gに溶解させた1,2−ポリブタジエン溶液に、トリフェニルシラン6.06gを加えて、メカニカルスターラーで撹拌した。この溶液に白金触媒(3%Pt−CTSトルエン溶液(エヌ・イーケムキャット(株)製造))を0.06g加えた後、内温100℃〜110℃に保ちながら撹拌した。H−NMRにてトリフェニルシランの消失を確認した後、溶媒を減圧濃縮で除去し、9.45gのトリフェニルシリル化したポリブタジエンを得た。NMR法によってミクロ構造を測定したところ、得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエンのシリル化率は37%であった。
【0068】
[比較例1]
窒素気流下、冷却管を付けたフラスコに1,2−ポリブタジエン(NISSO−PB B−1000(数平均分子量(Mn):1300、1,2−結合含有率:83%、日本曹達社製))40.0gをトルエン42.7gに溶解させた1,2−ポリブタジエン溶液に、トリエチルシラン41.4gとトルエン36.6gの混合物を加えて、メカニカルスターラーで撹拌した。この溶液に白金触媒(ヘキサクロロ白金(VI)酸6水和物)を0.032g加えて内温100℃〜110℃に保ちながら撹拌した。途中、トリエチルシラン11.37gをトルエン20.23gに溶解した溶液を加えた後、内温100℃〜110℃に保ちながら撹拌を続けた。H−NMRにて反応の進行を確認した後、溶媒、過剰のトリエチルシランを減圧濃縮で除去し、18.0gのトリエチルシリル化したポリブタジエンを得た。NMR法によってミクロ構造を測定したところ、得られたトリエチルシリル化ポリブタジエンのシリル化率は4%であった。
【0069】
[比較例2]
窒素気流下、冷却管を付けたフラスコに1,2−ポリブタジエン(NISSO−PB B−1000(数平均分子量(Mn):1300、1,2−結合含有率:83%、日本曹達社製))30.1gをトルエン40.0gに溶解させた1,2−ポリブタジエン溶液に、トリエチルシラン6.2gとトルエン40.8gの混合物を加えて、メカニカルスターラーで撹拌した。この溶液に白金触媒(3%Pt−CTSトルエン溶液(エヌ・イーケムキャット(株)製造))を0.31g加えた後、内温100℃〜110℃に保ちながら撹拌した。途中、トリエチルシラン17.4g、トルエン11.4gを加えて内温100℃〜110℃に保ちながら撹拌を続けた。H−NMRにて反応の進行を確認した後、溶媒および過剰のトリエチルシランを減圧濃縮で除去し、29.4gのトリエチルシリル化したポリブタジエンを得た。NMR法によってミクロ構造を測定したところ、得られたトリエチルシリル化ポリブタジエンのシリル化率は9%であった。
【0070】
[比較例3]
窒素気流下、冷却管を付けたフラスコに1,2−ポリブタジエン(NISSO−PB B−1000(数平均分子量(Mn):1300、1,2−結合含有率:83%、日本曹達社製))30.5gをトルエン70.1gに溶解させた1,2−ポリブタジエン溶液に、トリエチルシラン50.8gとトルエン16.1gの混合物を加えて、メカニカルスターラーで撹拌した。この溶液に白金触媒(ヘキサクロロ白金(VI)酸6水和物)を0.031g加えた後、内温100℃〜110℃に保ちながら撹拌した。途中、トリエチルシラン8.31g、白金触媒(ヘキサクロロ白金(VI)酸6水和物)0.016gを加えて内温100℃〜110℃に保ちながら撹拌を続けた。H−NMRにて反応の進行を確認した後、溶媒および過剰のトリエチルシランを減圧濃縮で除去し、25.4gのトリエチルシリル化したポリブタジエンを得た。NMR法によってミクロ構造を測定したところ、得られたトリエチルシリル化ポリブタジエンのシリル化率は17%であった。
【0071】
[試験例1](せん断力試験)
実施例1で得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエン(シリル化率2%)1gと、パークミルD(日油(株)製)0.02gをよく混ぜ合わせた(組成物A)。縦10cm、横2.5cm、厚さ約1mmの鉄板の縦1.25cm、横2.5cmに、0.01gの組成物Aを均等に塗布した。組成物Aを塗布した鉄板に、もう1枚の鉄板を重ね合わせ、貼り合わせた鉄板をオーブンで110℃にて3時間加熱し、さらに150℃にて3時間加熱した後、室温まで放冷した。
島津製作所 AGS-J(5kN)を使用し、貼り合わせた鉄板のつかみ具間距離を125mmとして、引張り速度10mm/minにて、剥離を行った。このときに発生した応力の最大値(最大応力(MPa))を測定した。表1に結果を示す。
【0072】
[試験例2〜4](せん断力試験)
実施例1で得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエンの代わりに、実施例2〜4で得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエン(シリル化率5%、9%、21%)を用いた以外は、試験例1と同様にして、各トリフェニルシリル化ポリブタジエンによって貼り合わされた鉄板を剥離する際の最大応力(MPa)を測定した。表1に結果を示す。
【0073】
[比較試験例1](せん断力試験)
実施例1で得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエンの代わりに、NISSO−PB B−1000(数平均分子量(Mn):1300、1,2−結合含有率:83%、日本曹達社製)を用いた以外は、試験例1と同様にして、各トリフェニルシリル化ポリブタジエンによって貼り合わされた鉄板を剥離する際の最大応力(MPa)を測定した。表1に結果を示す。
【0074】
[比較試験例2〜4](せん断力試験)
実施例1で得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエンの代わりに、比較例1〜3で得られたトリエチルシリル化ポリブタジエン(シリル化率4%、9%、17%)を用いた以外は、試験例1と同様にして、各トリフェニルシリル化ポリブタジエンによって貼り合わされた鉄板を剥離する際の最大応力(MPa)を測定した。表1に結果を示す。
【0075】
[試験例5〜7](せん断力試験)
縦10cm、横2.5cm、厚さ約1mmの鉄板の代わりに、縦10cm、横2.5cm、厚さ約1mmのアルミニウム板を用いた以外は、試験例1〜3と同様にして、最大応力(MPa)を測定した。表1に結果を示す。
【0076】
[比較試験例5](せん断力試験)
縦10cm、横2.5cm、厚さ約1mmの鉄板の代わりに、縦10cm、横2.5cm、厚さ約1mmのアルミニウム板を用いた以外は、比較試験例1と同様にして、最大応力(MPa)を測定した。表1に結果を示す。
【0077】
【表1】
【0078】
この結果、鉄板を用いた試験例1〜4及び比較試験例1〜4においては、本発明のシリル化ポリブタジエンを含む硬化性組成物を用いた試験例1〜4では、シリル化されていないポリブタジエンを用いた比較試験例1や、トリエチルシリル化ポリブタジエンを用いた比較試験例2〜4よりも、貼り合わされた鉄板を剥離する際の最大応力が明らかに大きかった。また、アルミニウム板を用いた場合にも、シリル化率が2〜9%の本発明のシリル化ポリブタジエンを含む硬化性組成物を用いた試験例5〜7では、シリル化されていないポリブタジエンを用いた比較試験例5よりも、貼り合わされたアルミニウム板を剥離する際の最大応力が明らかに大きかった。これらの結果から、本発明のシリル化ポリブタジエンを含む硬化性組成物から、せん断力に優れた硬化物が得られることが明らかである。
【0079】
[試験例8] 屈折率評価試験
(硬化性組成物の調製)
実施例1で得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエン(シリル化率2%)4gをメチルイソブチルケトン36gに溶解した。その溶液に、商品名イルガキュアー907(BASF社製)0.16gを添加し、硬化性組成物を調製した。
【0080】
(硬化薄膜の作成)
1cm×2cmのシリコンウェハ上に500nmとなるように、ディップコート法で処理をした。80℃で3分間乾燥した後、ベルトコンベア式UV照射機でUV硬化を行った。高圧水銀ランプ出力:120W/cm、UVランプ距離:9.8cmの条件で、365nmにおける積算照射量が2000mJ/cmとなるようにUV照射を行い、硬化薄膜を得た。
【0081】
(屈折率測定)
分光エリプソメトリー(J.A.Woolam Japan社製)にて、400nmおよび550nmにおける屈折率を測定した。表2に結果を示す。
【0082】
[試験例9〜11]屈折率評価試験
実施例1で得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエンの代わりに、実施例3〜5で得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエン(シリル化率9%、21%、37%)を用いた以外は、試験例8と同様にして、硬化薄膜の屈折率を測定した。表2に結果を示す。
【0083】
[比較試験例6]
実施例1で得られたトリフェニルシリル化ポリブタジエンの代わりに、NISSO−PB B−1000(シリル化率0%)を用いた以外は、試験例8と同様にして、硬化薄膜の屈折率を測定した。表2に結果を示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表2に示す通り、シリル化率が2〜37%の本発明のシリル化ポリブタジエンを含む硬化性組成物由来の硬化薄膜を用いた試験例8〜11では、シリル化されていないポリブタジエンを含む硬化性組成物由来の硬化薄膜を用いた比較試験例6よりも、400nm、550nmのいずれにおいても、高い屈折率を示していた。特に、シリル化率が21〜37%のシリル化ポリブタジエン由来の硬化薄膜を用いた試験例10、11では、400nm、550nmのいずれにおいても、顕著に高い屈折率を示していた。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のシリル化ポリブタジエンを含有する硬化性組成物は、その硬化体として、優れたせん断力を有する。このため、当該硬化性組成物は、溶剤型接着剤、2液アクリル接着剤等の各種接着剤や、各種塗膜等の薄膜の材料等として有用である。また、シリル化ポリブタジエンを含有する硬化性組成物を、硬化して得られる薄膜は、高い屈折率を有する。以上のことから、本発明は産業上極めて有用である。