(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775597
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】フランカルボン酸モメタゾン及び塩酸アゼラスチンを含む鼻内投与用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/55 20060101AFI20150820BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20150820BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20150820BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20150820BHJP
A61M 11/00 20060101ALI20150820BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20150820BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20150820BHJP
A61K 47/42 20060101ALI20150820BHJP
A61K 47/34 20060101ALI20150820BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20150820BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20150820BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20150820BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
A61K31/55
A61K31/58
A61P37/08
A61P11/02
A61M11/00 A
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/42
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/18
A61P43/00 121
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-540886(P2013-540886)
(86)(22)【出願日】2011年11月18日
(65)【公表番号】特表2013-543889(P2013-543889A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】KR2011008826
(87)【国際公開番号】WO2012074231
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年8月14日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0119632
(32)【優先日】2010年11月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512046866
【氏名又は名称】ハンリム ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】イ,サンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,グンヒョグ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ビョンソン
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ジョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジンハ
(72)【発明者】
【氏名】オ,ミジン
【審査官】
石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−521812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/55
A61K 31/58
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/18
A61K 47/26
A61K 47/34
A61K 47/38
A61K 47/42
A61M 11/00
A61P 11/02
A61P 37/08
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランカルボン酸モメタゾン及び塩酸アゼラスチンを含む鼻内投与用医薬組成物であって、苦味及び刺激の緩和剤としてタウマチンを含む鼻内投与用医薬組成物。
【請求項2】
前記タウマチンの含有量が0.1ないし0.5w/v%であることを特徴とする請求項1に記載の鼻内投与用医薬組成物。
【請求項3】
フランカルボン酸モメタゾン0.01ないし1.0w/v%;塩酸アゼラスチン0.05ないし1.0w/v%;タウマチン0.1ないし0.5w/v%;増粘剤1.0ないし5.0w/v%;緩衝剤0.2ないし0.6w/v%;界面活性剤0.001ないし0.1w/v%;等張化剤5.0ないし10.0w/v%;安定化剤0.01ないし1.0w/v%;及び保存剤0.002ないし0.05w/v%を、水性媒質中に含む請求項1に記載の鼻内投与用医薬組成物。
【請求項4】
フランカルボン酸モメタゾン0.01ないし1.0w/v%;塩酸アゼラスチン0.05ないし1.0w/v%;タウマチン0.1ないし0.5w/v%;微結晶セルロースとカルボキシルメチルセルロースナトリウムとの混合物1.0ないし5.0w/v%;クエン酸とクエン酸ナトリウムとの混合物0.2ないし0.6w/v%;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート0.001ないし0.1w/v%;グリセリンとソルビトールとの混合物5.0ないし10.0w/v%;エデト酸ナトリウム0.01ないし1.0w/v%;及び塩化ベンザルコニウム0.002ないし0.05w/v%を、水性媒質中に含む請求項3に記載の鼻内投与用医薬組成物。
【請求項5】
フランカルボン酸モメタゾン0.05w/v%;塩酸アゼラスチン0.14w/v%;タウマチン0.25w/v%;微結晶セルロースとカルボキシルメチルセルロースナトリウムとの混合物2.0w/v%;クエン酸0.2w/v%;クエン酸ナトリウム0.28w/v%;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート0.01w/v%;グリセリン2.1w/v%;ソルビトール6.6w/v%;エデト酸ナトリウム0.1w/v%;塩化ベンザルコニウム0.02w/v%;及び残量は水で構成された請求項4に記載の鼻内投与用医薬組成物。
【請求項6】
鼻腔スプレー(nasal spray)の形態に製剤化されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の鼻内投与用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランカルボン酸モメタゾン及び塩酸アゼラスチンを含む鼻内投与用医薬組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、タウマチンの使用により、塩酸アゼラスチンの苦味及び刺激を緩和させて点鼻感を改善した医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性鼻炎治療に使用されるステロイドの一つであるフランカルボン酸モメタゾンは、持続的な症状緩和の効果がすぐれていることが知られている。短時間作用型抗ヒスタミン剤の一つである塩酸アゼラスチンは、即時的な症状改善の効果がすぐれていることが知られている。従って、それら2つの薬物を複合剤として投与すれば、即時的な症状改善を伴いながら、アレルギー性鼻炎の長期的治療において優れた効果を示すことが期待される。
【0003】
特許文献1は、アゼラスチンまたはその塩;及びベクロメタゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、デキサメタゾンまたはブデソニドを含む鼻腔スプレー剤(nasal spray formulation)または点鼻剤(nasal drop formulation)を開示している。また、特許文献2は、アゼラスチンまたはその塩と、フランカルボン酸モメタゾンなどのステロイドとを含む鼻内投与または眼球投与に適した医薬製剤(例えば、鼻腔スプレー)を開示している。
【0004】
一方、塩酸アゼラスチンは、強い苦味を有している。苦味の程度が非常に強く、1×10
6倍に希釈しても、不快な味が残ることが知られている(特許文献3)。塩酸アゼラスチンが鼻腔内に投与されると、その苦味は咽頭に伝えられ、不快な味覚及び刺激を引き起こす。特許文献4は、塩酸アゼラスチンの苦味を緩和するための、ポリビニルピロリドン及び/またはコポリビドンの使用を開示している。また、特許文献5は、スクラロースを苦味マスキング剤として使用した塩酸アゼラスチン及びフランカルボン酸モメタゾンを含む医薬組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許公開WO97/01337号パンフレット
【特許文献2】国際特許公開WO2003/105856号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5,164,194号明細書
【特許文献4】米国特許第6,576,677号明細書
【特許文献5】国際特許公開WO2006/058022号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フランカルボン酸モメタゾン及び塩酸アゼラスチンを含む鼻内投与用医薬組成物であって、天然物、すなわち、クズウコン科タウマトコッカス・ダニエリ(Thaumatococcus daniellii Benth)から抽出されたタウマチンの使用により、塩酸アゼラスチンの苦味及び刺激を緩和させて点鼻感を改善した鼻内投与用医薬組成物を提供する。
【0007】
すなわち、苦味及び刺激の緩和剤としてタウマチンを使用した、フランカルボン酸モメタゾン及び塩酸アゼラスチンを含む鼻内投与用医薬組成物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によって、フランカルボン酸モメタゾン及び塩酸アゼラスチンを含む鼻内投与用医薬組成物であって、苦味及び刺激の緩和剤としてタウマチンを含む鼻内投与用医薬組成物が提供される。
【0009】
本発明の鼻内投与用医薬組成物において、前記タウマチンの含有量は0.1ないし0.5w/v%とすることができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、フランカルボン酸モメタゾン0.01ないし1.0w/v%;塩酸アゼラスチン0.05ないし1.0w/v%;タウマチン0.1ないし0.5w/v%;増粘剤1.0ないし5.0w/v%;緩衝剤0.2ないし0.6w/v%;界面活性剤0.001ないし0.1w/v%;等張化剤5.0ないし10.0w/v%;安定化剤0.01ないし1.0w/v%;及び保存剤0.002ないし0.05w/v%を、水性媒質中に含む鼻内投与用医薬組成物が提供される。特に望ましい実施形態においては、フランカルボン酸モメタゾン0.05w/v%;塩酸アゼラスチン0.14w/v%;タウマチン0.25w/v%;微結晶セルロースとカルボキシルメチルセルロースナトリウムとの混合物2.0w/v%;クエン酸0.2w/v%;クエン酸ナトリウム0.28w/v%;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート0.01w/v%;グリセリン2.1w/v%;ソルビトール6.6w/v%;エデト酸ナトリウム0.1w/v%;塩化ベンザルコニウム0.02w/v%;及び残量は水で構成された鼻内投与用医薬組成物が提供される。
【0011】
本発明による鼻内投与用医薬組成物は、鼻腔スプレー(nasal spray)の形態で投与されることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
タウマチンは塩酸アゼラスチンの苦味及び刺激を効果的に緩和し、それにより鼻腔内投与時に優れた点鼻感が得られるということが本発明によって明らかになった。従って、苦味及び刺激の緩和剤としてタウマチンを用いてフランカルボン酸モメタゾン及び塩酸アゼラスチンを製剤化し、得られた製剤を鼻腔内投与に使用すれば、患者の服薬遵守(drug compliance)を高めることができる。また、本発明によってタウマチンと共に製剤化されたフランカルボン酸モメタゾン及び塩酸アゼラスチンを含む鼻内投与用製剤は、優れた安定性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、フランカルボン酸モメタゾン及び塩酸アゼラスチンを含む鼻内投与用医薬組成物であって、苦味及び刺激の緩和剤としてタウマチンを含む鼻内投与用医薬組成物を提供する。
【0014】
前記「タウマチン」は、西アフリカ産の植物であるクズウコン科タウマトコッカス・ダニエリ(Thaumatococcus daniellii Benth)の種子を水で抽出したものを精製して得られたタンパク質複合物である。前記タンパク質複合物は、タウマチンI,II,III,a及びbの5種類のタンパク質を含み、主成分はタウマチンI及びIIである。タウマチンI及びIIは、ほぼ同一のアミノ酸配列を有する。タウマチンは、韓国食品添加物コードに記載されており、主に氷菓子、清涼飲料水などに、甘味料及び香味料として使用されている。タウマチンは、ウイロイド病原体の攻撃に対抗して生成されるタンパク質として知られている。タウマチン類は、真菌の菌糸成長及び胞子形成に対して阻害活性を示す。
【0015】
タウマチンは塩酸アゼラスチンの苦味及び刺激を効果的に緩和し、それにより鼻腔内投与時に優れた点鼻感が得られるということが本発明によって明らかになった。本発明の医薬組成物において、前記タウマチンの含有量は、組成物の総容量に対して、0.1ないし0.5w/v%の範囲、望ましくは、0.2ないし0.4w/v%の範囲、さらに望ましくは、約0.25w/v%とすることができる。
【0016】
本発明による鼻内投与用医薬組成物において、活性成分の一つであるフランカルボン酸モメタゾンの含有量は、組成物の総容量に対して、0.01ないし1.0w/v%の範囲、望ましくは、0.05ないし0.5w/v%の範囲、さらに望ましくは、約0.05w/v%とすることができる。また、他の活性成分である塩酸アゼラスチンの含有量は、組成物の総容量に対して、0.05ないし1.0w/v%の範囲、望ましくは、0.1ないし0.5w/v%の範囲、さらに望ましくは、約0.14w/v%とすることができる。
【0017】
本発明による鼻内投与用医薬組成物は、鼻内投与用製剤に一般的に使用される増粘剤、緩衝剤、界面活性剤、等張化剤、安定化剤、保存剤などの添加剤を含んでもよい。
【0018】
増粘剤として、微結晶セルロースとカルボキシルメチルセルロースナトリウムとの混合物(例えば、Avicel RC 591、Avicel RC 581、Avicel CL 611など)が使用される。前記増粘剤は、使用する増粘剤の種類によって異なるが、組成物の総容量に対して、1.0ないし5.0w/v%の範囲、望ましくは、1.0ないし4.0w/v%の範囲、さらに望ましくは、約2.0w/v%で使用される。
【0019】
緩衝剤として、酸及びその塩を組み合わせたもの(例えば、クエン酸及びクエン酸ナトリウムの組み合わせ)が使用される。前記緩衝剤は、使用する緩衝剤の種類、緩衝容量などによって異なるが、組成物の総容量に対して、0.2ないし0.6w/v%の範囲、望ましくは、0.3ないし0.5w/v%の範囲で使用される。一実施形態において、組成物の総容量に対して、クエン酸(またはその水和物)約0.2w/v%、及びクエン酸ナトリウム(またはその水和物)0.28w/v%の組み合わせが使用される。
【0020】
界面活性剤は、難溶性薬物の一つであるフランカルボン酸モメタゾンの懸濁を促進する。界面活性剤として、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(例えば、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80など)が使用される。前記界面活性剤は、使用する界面活性剤の種類によって異なるが、組成物の総容量に対して、0.001ないし0.1w/v%の範囲、望ましくは、0.005ないし0.05w/v%の範囲、さらに望ましくは、約0.01w/v%で使用される。
【0021】
等張化剤として、グリセリン、ソルビトール、またはグリセリンとソルビトールとの組み合わせが使用される。糖類の使用は甘味を加えることができるので、ソルビトールなどの糖類が望ましく使用される。前記等張化剤は、使用する等張化剤の種類によって異なるが、組成物の総容量に対して、5.0ないし10.0w/v%の範囲、望ましくは、6.0ないし9.0w/v%の範囲で使用される。一実施形態において、組成物の総容量に対して、グリセリン約2.1w/v%及びソルビトール(例えば、D−ソルビトール)6.6w/v%の組み合わせが使用される。
【0022】
安定化剤として、エデト酸ナトリウムまたはその水和物が使用される。前記安定化剤は、組成物の総容量に対して、0.01ないし1.0w/v%の範囲、望ましくは、約0.1w/vで使用される。また、保存剤として、塩化ベンザルコニウムなどの一般的な保存剤が、組成物の総容量に対して、0.002ないし0.05w/v%の範囲、望ましくは、約0.02w/vで使用される。
【0023】
本発明の一実施形態において、フランカルボン酸モメタゾン0.01ないし1.0w/v%;塩酸アゼラスチン0.05ないし1.0w/v%;タウマチン0.1ないし0.5w/v%;増粘剤1.0ないし5.0w/v%;緩衝剤0.2ないし0.6w/v%;界面活性剤0.001ないし0.1w/v%;等張化剤5.0ないし10.0w/v%;安定化剤0.01ないし1.0w/v%;及び保存剤0.002ないし0.05w/v%を、水性媒質(例えば、精製水など)中に含む鼻内投与用医薬組成物が提供される。
【0024】
本発明の他の実施形態において、フランカルボン酸モメタゾン0.01ないし1.0w/v%;塩酸アゼラスチン0.05ないし1.0w/v%;タウマチン0.1ないし0.5w/v%;微結晶セルロースとカルボキシルメチルセルロースナトリウムとの混合物1.0ないし5.0w/v%;クエン酸とクエン酸ナトリウムとの混合物0.2ないし0.6w/v%;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート0.001ないし0.1w/v%;グリセリンとソルビトールとの混合物5.0ないし10.0w/v%;エデト酸ナトリウム0.01ないし1.0w/v%;及び塩化ベンザルコニウム0.002ないし0.05w/v%を、水性媒質(例えば、精製水など)中に含む鼻内投与用医薬組成物が提供される。
【0025】
本発明の特に望ましい実施形態においては、フランカルボン酸モメタゾン0.05w/v%;塩酸アゼラスチン0.14w/v%;タウマチン0.25w/v%;微結晶セルロースとカルボキシルメチルセルロースナトリウムとの混合物2.0w/v%;クエン酸0.2w/v%;クエン酸ナトリウム0.28w/v%;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート0.01w/v%;グリセリン2.1w/v%;ソルビトール6.6w/v%;エデト酸ナトリウム0.1w/v%;塩化ベンザルコニウム0.02w/v%;及び残量は水で構成された鼻内投与用医薬組成物が提供される。
【0026】
本発明による鼻内投与用医薬組成物は、鼻腔スプレー(nasal spray)の形態で投与されることが望ましい。従って、本発明による鼻内投与用医薬組成物は、鼻腔スプレー(nasal spray)の形態に製剤化されることが望ましい。
【実施例】
【0027】
本発明について、下記実施例を参照してさらに詳細に説明する。これらの実施例は、単に説明のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0028】
実施例1及び2.鼻腔スプレー用懸濁液
下記表1の組成及び含量に従って、鼻腔スプレー用懸濁液を製造した。表1のそれぞれの量は、w/v%含量を示す。
【0029】
Avicel RC 591とグリセリンとを、滅菌精製水に、ホモミキサを使用して分散させた(混合物I)。別の容器に、塩酸アゼラスチン、塩化ベンザルコニウム、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、エデト酸ナトリウム水和物、D−ソルビトール及びタウマチンを加えて撹拌しながら滅菌精製水に溶解させた(混合物II)。別の容器に、フランカルボン酸モメタゾンとポリソルベート80とを、滅菌精製水に分散させた(混合物III)。混合物Iと混合物IIとを撹拌しながら混合した後、得られた混合物を混合物IIIと撹拌しながら混合した。滅菌精製水を加えて、得られた混合物の最終体積を調節した。
【0030】
【表1】
【0031】
比較例1ないし3.
タウマチンの代わりに種々の人工甘味料を使用し、下記表2の組成及び含量に従って、鼻腔スプレー用懸濁液を実施例1と同様の方法で製造した。表2のそれぞれの量は、w/v%含量を示す。
【0032】
【表2】
【0033】
試験例1.点鼻感評価
点鼻感は、4項目、すなわち、「苦味を感じる」、「甘味を感じる」、「刺激感」及び「刺激の持続」に基づいて評価した。各項目の評価点数は、「弱い」から「強い」まで1ないし5を割り当てた。すなわち、「苦味を感じる」、「甘味を感じる」、「刺激感」の項目において、評価点数が「1」は、「弱い苦味を感じる」、「弱い甘味を感じる」、「弱い刺激がある」を意味し、一方、評価点数「5」は、「強い苦味を感じる」、「強い甘味を感じる」、「強い刺激がある」を意味する。また、「刺激の持続」の項目において、評価点数「1」は、「刺激が短く持続する」を意味し、一方、評価点数「5」は、「刺激が長い間持続する」を意味する。
【0034】
実施例1及び比較例1ないし3で製造した懸濁液をそれぞれ鼻腔スプレー容器に充填し、志願者30人を対象に10秒間鼻腔内噴霧を行った。次いで、前記項目に係わる点鼻感評価を行った。その結果は、以下の表3の通りである。表3の結果は、各項目における評価点数の平均値を示す。
【0035】
【表3】
【0036】
前記表3の結果から、本発明によって、タウマチンを含む組成物は、ほとんど苦味がなく、比較的強い甘味を示し、また刺激感及び刺激の持続項目においても、特に優れた特性を示した。人工甘味料の一つであるネオヘスペリジンを含む組成物(すなわち、比較例1)は、塩酸アゼラスチンに由来する苦味及び刺激感に対するマスキング効果が非常に低かった。また、スクラロースを含む組成物(すなわち、比較例2)は、苦味に対して比較的良好なマスキング効果を示したが、刺激感に対するマスキング効果は非常に低かった。アセスルファムカリウムを含む組成物(すなわち、比較例3)は、刺激感に対するマスキング効果が非常に低い上に、長い間刺激の持続が見られた。従って、本発明によるタウマチンを含む組成物は、他の甘味料を含んだ組成物に比べて、優れた点鼻感を示すということが分かる。
【0037】
試験例2.粘膜刺激試験
眼粘膜が鼻粘膜に比べて、刺激にさらに敏感であり、また試験方法が十分に確立されており結果の解釈が容易であることから、粘膜刺激試験として、眼粘膜に対する刺激試験を行った。該試験は、内部管理プロトコル(10−BL−455)に従って行った。このプロトコルの作成及び試験遂行は、医薬品などの毒性試験規準(Guideline on Toxicity Study of Drugs,No.2009−116,KFDA,2009年08月04日)、非臨床試験管理基準(Good Laboratory Practice,No.2009−183,KFDA,2009年12月22日)、及びOECD Principles of Good Laboratory Practice(1997)に従って行われた。ニュージーランド白色種ウサギの眼粘膜に、実施例1の懸濁液を0.1mL/headの用量で投与し、その後、症状を7日間観察した。
【0038】
その結果は、次の通りである:(1)試験期間中、試験物質の適用に関連した一般症状及び動物死亡は観察されず、(2)試験期間中、試験物質の適用に関連した体重変化は観察されず、(3)試験物質の適用後、眼反応を観察した結果、洗眼群及び非洗眼群のいずれにおいても何ら変化は観察されず、(4)試験物質の適用後、眼反応を観察した結果、試験期間中の急性眼刺激指数(IAOI:The Index of Acute Ocular Irritation)は、洗眼群及び非洗眼群のいずれにおいても0(すなわち、非刺激性)と評価された。
【0039】
従って、本発明によって製造された医薬組成物は、眼粘膜に適用した場合に非刺激性であることが示され、従って、鼻腔に適用しても刺激性を誘発しないことが示唆された。
【0040】
試験例3.物理的及び化学的な安定性試験
(1)長期保存試験
実施例1で製造した懸濁液を、20±5℃及び60%相対湿度の条件下で、24ヵ月間保管しながら、長期保管による安定性試験を行った。性状(appearance)は、肉眼で観察し、pHは、pH測定器を使用して測定した。塩酸アゼラスチン及びその分解産物の定量分析、並びにフランカルボン酸モメタゾン及びその分解産物の定量分析は、いずれも高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて行い、それぞれ下記条件下で分析した。
【0041】
<塩酸アゼラスチン及びその分解産物の定量分析のためのHPLC条件>
-カラム:Capcellpak C
18 Column(4.6×250mm、5μm)
-カラム温度:30℃
-検出器:紫外分光光度計(波長:212nm)
-移動相:40%アセトニトリル溶液1Lに1−ヘキサンスルホン酸ナトリウム941.1mgを添加して調製
<フランカルボン酸モメタゾン及びその分解産物の定量分析のためのHPLC条件>
-カラム:Capcellpak C
18 Column(4.6×150mm、5μm)
-カラム温度:30℃
-検出器:紫外分光光度計(波長:254nm)
-移動相:水/アセトニトリル(50/50)の混合溶媒
20±5℃及び60%相対湿度の条件下で24ヵ月間実施した、長期保管による安定性試験の結果は、以下の表4の通りである。
【0042】
【表4】
【0043】
前記表4の結果から、本発明の組成物は、24ヵ月間にわたって優れた物理的及び化学的な安定性を有していることが分かる。
【0044】
(2)加速試験
実施例1で製造した懸濁液を、40℃及び75%相対湿度の条件下で、6ヵ月間保管しながら、加速試験を行った。性状観察、pH測定、塩酸アゼラスチン及びその分解産物の定量分析、並びにフランカルボン酸モメタゾン及びその分解産物の定量分析は、前記(1)と同様の方法で行った。その結果は、以下の表5の通りである。
【0045】
【表5】
【0046】
前記表5の結果から、本発明の組成物は、6ヵ月間の加速試験においても、優れた物理的及び化学的な安定性を有していることが分かる。