特許第5775601号(P5775601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5775601駐車ブレーキによって与えられる締付力の調節方法、それを実行する閉ループ制御器または開ループ制御器、および、それを備える駐車ブレーキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775601
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】駐車ブレーキによって与えられる締付力の調節方法、それを実行する閉ループ制御器または開ループ制御器、および、それを備える駐車ブレーキ
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20150820BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20150820BHJP
   H02P 15/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   B60T13/74 G
   B60T8/00 Z
   H02P15/00 K
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-543581(P2013-543581)
(86)(22)【出願日】2011年10月11日
(65)【公表番号】特表2014-504978(P2014-504978A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2011067682
(87)【国際公開番号】WO2012079802
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年7月26日
(31)【優先権主張番号】102010063374.7
(32)【優先日】2010年12月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】ビールツ,カルステン
(72)【発明者】
【氏名】ハウバー,ジーモン
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−169327(JP,A)
【文献】 特開2008−213683(JP,A)
【文献】 特表2007−515344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/74
B60T 8/00
H02P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
締付力(F)の少なくとも一部が、電気式ブレーキ・モータ(3)を有する電動式ブレーキ装置によって提供される、駐車ブレーキ(1)によって与えられる締付力(F)の調節方法であって、
閉ループ制御器または開ループ制御器が、
前記電動式ブレーキ装置内の全抵抗(Rgesを、閉じられた電流回路における前記電動式ブレーキ装置内の電圧(UMess,1)と、前記電流回路を開いたときの誘導電圧(UEMK)との差の、閉じられた前記電流回路における電流(IMess,1)に対する比から決定
前記全抵抗(Rges)に基づいて、前記締付力(F)決定または調節する
駐車ブレーキ(1)によって与えられる締付力(F)の調節方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記全抵抗(Rges)は、線路抵抗(R)とモータ抵抗(R)とを含む方法
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の方法であって、
前記誘導電圧(UEMK)を決定するための電流遮断が、前記駐車ブレーキ(1)の作動の間に行われる方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の方法であって、
前記誘導電圧(UEMK)を決定するための電流遮断が、前記電気式ブレーキ・モータ(3)のアイドル過程の間に行われる方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の方法であって、
閉じられた前記電流回路における電流(IMess,1)および電圧(UMess,1の測定が、前記誘導電圧(UEMK)を決定するための電流遮断の直前に行われる方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の方法であって、
前記締付力の少なくとも一部は、追加的なブレーキ装置によって提供される方法。
【請求項7】
請求項に記載の方法であって、
追加的なブレーキ装置として、油圧式車両ブレーキが使用される方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の方法を実行する閉ループ制御器または開ループ制御器。
【請求項9】
請求項に記載の閉ループ制御器または開ループ制御器を備える車両内の駐車ブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内の駐車ブレーキによって与えられる締付力の調節方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両内の駐車/パーキング・ブレーキは、停車中に車両を持続的に固定するために使用される。操作要素として電気式ブレーキ・モータを有し、電気式ブレーキ・モータを介して、ブレーキ・ライニングを有するブレーキ・ピストンがブレーキ・ディスクに圧着される電気機械式駐車ブレーキが既知である。このような駐車ブレーキが、例えばドイツ特許第10361042号に記載されている。
【0003】
この文献から、さらに、摩耗、熱的影響または電気抵抗の変化に基づいて発生する締付力の変化を補償することが既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許第10361042号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、簡単な手段を用いて、電気機械式駐車ブレーキによって提供されるべき締付力を高い精度で調節することである。この場合、特に、簡単な手段を用いて、提供されるべき締付力に影響を及ぼすモータ・パラメータの変化が測定可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴によって解決される。従属請求項は目的に適った変更態様を与える。
【0007】
本発明による方法は、電気機械式操作要素またはアクチュエータによって車両を固定するための締付力が発生される車両内の電気機械式パーキング/駐車ブレーキに関するものである。電気機械式操作要素は、電気式ブレーキ・モータであることが好ましい。場合により、例えば、ブレーキ・モータによって操作されるブレーキ・ピストンに油圧式車両ブレーキが圧力を加え、これにより、全締付力が電気機械式成分と油圧式成分とから構成されるように、車両内の油圧式ブレーキ装置が駐車ブレーキと協働してもよい。しかしながら、基本的には、駐車ブレーキは、電気機械式ブレーキ装置のみを介して締付力を提供可能である。
【0008】
本発明の方法により、電動式ブレーキ装置内の全抵抗が決定可能である。正確な抵抗の検出は、電動式ブレーキ装置によって提供されるべき締付力の決定のために重要である。抵抗は、経時変化および温度影響により変化可能であり、さらに、抵抗値の製造ばらつきが考慮されるべきである。
【0009】
本発明により、電動式ブレーキ装置内の全抵抗が、ブレーキ装置の電流回路内の誘導電圧に基づいて決定される。この場合、電流回路が遮断され、これにより電流はもはや流れないが、なおも回転し続けるモータによって電圧が誘導され、この電圧を測定または決定することが可能である。電流回路は開かれているので、誘導電圧以外の他の電圧は作用していない。したがって、誘導電圧の値を決定し、この値を全抵抗の計算において考慮することが可能である。例えば、温度影響または経時変化に基づく抵抗の変化が、自動的に同時に測定される。全抵抗を検出したとき、電動式に調節可能な締付力が決定または調節することが可能である。例えば、温度影響に基づいて全抵抗が変化したとき、例えば、締付力を調整するための措置を講じることができる。モータ・パラメータの変化に基づいて、要求された目標締付力が電気機械式ブレーキ装置のみを介してはもはや発生可能ではないことが特定された場合、追加的なブレーキ装置を介して補足締付力が提供されてもよい。追加的なブレーキ装置は、油圧式車両ブレーキであることが好ましい。
【0010】
追加的に、または、代替態様として、全抵抗を検出し、それに基づいて提供されるべき電動式締付力による他の手段もまた考慮される。例えば、経時変化によってモータ・パラメータの顕著な悪化が現われた場合、場合によりエラー信号が発生されてもよく、エラー信号は、ドライバに指示されるか、または、その他の方法で処理される。
【0011】
全抵抗の決定において、閉じられた電流回路における電圧と、電流回路を開いたときの誘導電圧との差が決定され、この差が、閉じられた電流回路における電流によって除算される。閉じられた電流回路における電圧は種々の成分から構成され、これらの成分は、線路抵抗に基づく電圧成分と、電気式ブレーキ・モータの電圧成分と、誘導電圧からの電圧成分とを含む。閉じられた電流回路におけるこれらの電圧成分の和と、このとき流れる電流とが測定される。閉じられた電流回路における個々の電流成分の和から、同様に測定された、電流回路を開いたときに誘導された電圧が減算される。この方法は、閉じられた電流回路内において作動する個々の電圧成分が別々に決定される必要はなく、抵抗の計算内に一括して含められるという利点を有している。
【0012】
決定されるべき抵抗は、一方の電流回路内の線路抵抗と、他方のモータ抵抗とを含む全抵抗である。
【0013】
本発明の他の観点により、誘導電圧を決定するための電流遮断は、駐車ブレーキの作動の間に行われる。さらに、誘導電圧を決定するための電流遮断が、電気式ブレーキ・モータのアイドル過程の間に行われることは目的に適っている。この過程において、モータ回転数は比較的高いレベルを有している。電流回路を開くことによって、ロータは、慣性に基づいてさらに回転し続け、この場合、モータ回転数は、慣性に基づいて、電流に比較して極めて緩やかに変化するにすぎない。モータ回転数に直接関係する逆誘導電圧もまた、電流に比較して緩やかに変化するにすぎない。
【0014】
電流回路の開放が短時間の電流遮断の範囲内で行われ、この場合、開放後に電流回路が短時間内に再び閉じられ且つ作動過程が継続されることが目的に適っている。電流回路を、数分の1秒間、例えば最大で1/10秒間遮断することで十分である。
【0015】
閉じられた電流回路における電流および電圧の測定が電流遮断の直前に行われ、この間に誘導電圧が決定されることは有利である。これにより、電流回路が閉じられたり開かれたりしたときの測定値が少なくともほぼ同じモータ回転数におけるものであることが保証されている。
【0016】
本発明による方法は、車両内の閉ループ制御器または開ループ制御器において行われ、閉ループ制御器または開ループ制御器は、駐車ブレーキ・システムの構成部分であってもよい。
【0017】
その他の利点および目的に適った態様は、その他の請求項、図面の説明および図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電気式ブレーキ・モータを介して締付力が発生される車両用電気機械式駐車ブレーキの断面図を示す。
図2】駐車ブレーキの締付過程における、電流、電圧、モータ回転数、締付力および調節ストロークの、時間の関数としての経過線図を示す。
図3】スイッチが閉じられたときに電気式ブレーキ・モータを操作するための簡略化代替回路図を示す。
図4】スイッチが開かれたときに電気式ブレーキ・モータを操作するための代替回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に、停車中に車両を固定するための電気機械式駐車ブレーキ1が示されている。駐車ブレーキ1は、クランプ・ストッパ9を有するブレーキ・キャリパ2を含み、クランプ・ストッパ9は、ブレーキ・ディスク10を覆っている。操作要素として、駐車ブレーキ1は、ブレーキ・モータ3としての電動機を有し、ブレーキ・モータ3は、スピンドル4を回転駆動し、スピンドル4上に、スピンドル構造部分5が回転可能に支持されている。スピンドル4が回転したとき、スピンドル構造部分5は軸方向に調節される。スピンドル構造部分5は、ブレーキ・ピストン6の内部で移動し、ブレーキ・ピストン6は、ブレーキ・ライニング7の支持体であり、ブレーキ・ライニング7は、ブレーキ・ピストン6によってブレーキ・ディスク10に圧着される。ブレーキ・ディスク10の反対側に他のブレーキ・ライニング8が存在し、他のブレーキ・ライニング8は、クランプ・ストッパ9に位置固定された状態で保持されている。
【0020】
ブレーキ・ピストン6の内部において、スピンドル構造部分5は、スピンドル4が一方の方向に回転運動したとき、ブレーキ・ディスク10に向かう方向へ軸方向前方に移動し、あるいは、スピンドル4が反対方向に回転運動したとき、ストッパ11に到達するまで軸方向後方に移動する。締付力を発生させるために、スピンドル構造部分5は、ブレーキ・ピストン6の内部正面側に力を加え、これにより、駐車ブレーキ1内において軸方向に移動可能に支持された、ブレーキ・ライニング7を有するブレーキ・ピストン6は、ブレーキ・ディスク10の対向正面に圧着される。
【0021】
駐車ブレーキは、必要な場合、油圧式車両ブレーキによって支援されてもよく、これにより、締付力は、電動式成分および油圧式成分から構成される。油圧式支援においては、ブレーキ・ピストン6の、ブレーキ・モータに対向する背面側に、加圧された油圧流体によって力が加えられる。
【0022】
図2に、締付過程に関して、電気式ブレーキ・モータの電流経過I、電圧U、回転数経過n、スピンドル構造部分5の調節ストロークs、および、発生された電気機械式締付力Felの、時間の関数としての線図が示されている。時点t1において、閉じられた電流回路において電圧が印加され且つブレーキ・モータに電流が流れることにより、締付過程が開始される。時点t2において、電圧Uおよびモータ回転数nは、それらの最大値に到達している。t2およびt3の間の過程はアイドル過程を示し、アイドル過程内においては、電流Iは最小レベルで推移する。その後に、時点t3から時点t4まで、電気機械式締付力Felが上昇する力上昇過程が続き、この過程において、ブレーキ・ライニングがブレーキ・ディスクに当接し、締付力Felの増大と共にブレーキ・ディスクに圧着される。時点t4において、電流回路を開くことによって電気式ブレーキ・モータの遮断が行われ、遮断過程は時点t5まで継続し、時点t5において、ブレーキ・モータの回転数nは0まで低下する。
【0023】
図3および図4にそれぞれ、電気式ブレーキ・モータを操作するための代替回路図が示されており、図3においては、スイッチs1が閉じられた位置にあり、これによって、閉じられた電流回路が形成されており、図4においては、スイッチs1は開かれ、これによって、電流回路は遮断されている。
【0024】
電流回路は、線路抵抗Rと、電気式ブレーキ・モータ3のモータ抵抗RMとから構成されている。全抵抗Rgesは、線路抵抗Rとモータ抵抗Rとの和として構成されている。
ges=R+R
【0025】
スイッチs1が閉じられたとき、線路抵抗を含めてブレーキ・モータ3を介しての全作動電圧UMess,1が決定され、全作動電圧UMess,1は、線路抵抗を介しての個別電圧UR0と、ブレーキ・モータを介しての電圧URMと、逆誘導電圧としての電圧UEMKとから構成されている。
Mess,1=UR0+URM+UEMK
【0026】
電圧UMess,1が測定可能であり、同様に、閉じられた電流回路において流れる電流IMess,1が測定可能である。
【0027】
これに対して、スイッチs1が開かれたとき(図4)には、電流回路内に電流が流れないので、この測定電圧IMess,2は0に等しい。スイッチs1を開くことにより、モータ回転数は、ロータの慣性に基づいて、電流に比較して緩やかに変化するにすぎないので、スイッチs1が開かれたときにも逆誘導電圧UEMKが発生され、逆誘導電圧UEMKは、測定電圧UMess,2として決定可能である。閉じられた電流回路において測定された電圧UMess,1と、測定された電流IMess,1とを用いて、次式
ges=R+R=(UMess,1−UMess,2)/IMess,1
によって全抵抗Rgesが計算可能である。これにより、電気式ブレーキ・モータ内の実際の全抵抗が確定され、この場合、全抵抗Rgesの値の中に、経時変化、温度影響およびその他の影響によって発生する変化も考慮されている。全抵抗Rgesは、例えば、電気機械式締付力またはその他の変数を決定するために、数学モデル、例えば電動式微分方程式において使用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…駐車ブレーキ
2…ブレーキ・キャリパ
3…ブレーキ・モータ
4…スピンドル
5…スピンドル構造部分
6…ブレーキ・ピストン
7,8…ブレーキ・ライニング
9…クランプ・ストッパ
10…ブレーキ・ディスク
11…ストッパ
F…締付力
el…電気機械式締付力
I…電流
Mess,1…閉じられた電流回路における電流
Mess,2…電流回路を開いたときの電流
U…電圧
EMK…誘導電圧(逆誘導電圧)
R0…線路抵抗を介しての電圧
RM…ブレーキ・モータを介しての電圧
n…モータ回転数
s…調節ストローク
s1…スイッチ
n…モータ回転数
ges…全抵抗
…線路抵抗
…モータ抵抗
図1
図2
図3
図4