特許第5775605号(P5775605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775605
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 11/18 20060101AFI20150820BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20150820BHJP
   H02J 17/00 20060101ALI20150820BHJP
   B60K 1/04 20060101ALI20150820BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   B60L11/18 A
   H02J7/00 303C
   H02J7/00 P
   H02J7/00 301D
   H02J17/00 B
   B60K1/04 Z
   B60K7/00
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-549026(P2013-549026)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2011079072
(87)【国際公開番号】WO2013088554
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】小林 正規
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正浩
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−226880(JP,A)
【文献】 特開2010−183813(JP,A)
【文献】 特開2006−174548(JP,A)
【文献】 特開2006−160033(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/131349(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−15/42
B60K 1/00−8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源より取得した直流電力を蓄える第1蓄電池と、
前記第1蓄電池に接続され、前記直流電力を交流電力に変換する第1変換器と、当該交流電力を無線送電する送電アンテナを有する第1送電手段と、
前記交流電力を無線受電する受電アンテナと、当該交流電力を直流電力へ変換する第2変換器を有する第1受電手段と、
前記第1蓄電池に接続され、前記第1蓄電池の直流電力を送電する第2送電手段と、
前記第2送電手段と導電性を有するコネクタにより接続され、前記第2送電手段により送電された直流電力を受電する第2受電手段と、
車輪のハブに装着され、当該車輪を駆動するインホイールモータと、
前記車輪に設けられ、前記第1受電手段および前記第2受電手段により受電した直流電力を蓄える第2蓄電池と、
前記車輪に設けられ、前記第2蓄電池の直流電力を交流電力に変換するインバータと、
前記インホイールモータの回転駆動を制御する駆動制御手段と、
前記第1送電手段より前記第1受電手段への無線給電、および、前記第2送電手段より前記第2受電手段への前記コネクタによる給電を制御する給電制御手段と、
を備えること
を特徴とする車両駆動装置。
【請求項2】
前記給電制御手段は、前記第2送電手段より前記第2受電手段へ送電される電力量と、前記第2蓄電池の容量と、当該第2蓄電池の電圧とのうち少なくとも一つに基づき、前記コネクタによる給電が可能かを判別するコネクタ給電可能判断手段を備え、
前記給電制御手段は、前記コネクタ給電可能判別手段により前記コネクタによる給電が可能でない場合に前記無線給電を行うように制御すること
を特徴とする請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項3】
前記給電制御手段は、前記第1蓄電池より前記第2蓄電池への急速給電を行うか否かを判別する急速給電要否判別手段を備え、
前記給電制御手段は、前記急速給電要否判別手段により急速給電を行う場合に、前記無線給電及び前記コネクタによる給電を併用するように制御すること
を特徴とする請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項4】
前記コネクタは、前記車輪の中心軸に配置された車両側と前記車輪側の一対の接点からなり、当該コネクタは、地面に対しほぼ水平にばね部材で保持されており、前記車輪の左右あるいは上下の動作に追従すること
を特徴とする請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項5】
前記コネクタは半球面形状で形成され、かつ前記車輪の中心軸に配置された車両側と前記車輪側の一対の接点からなり、当該コネクタは、地面に対しほぼ水平方向にばね部材で保持されており、
一方のコネクタの接点は、半球面形状とされ、
他方のコネクタの接点は、前記一方のコネクタの半球面上を移動することにより、前記車輪の左右あるいは上下の動作に追従すること
を特徴とする請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項6】
前記第2送電手段より前記第2受電手段へ所定値未満の直流電流を送電することにより、前記コネクタによる給電が可能かを判別するコネクタ給電可能判別手段をさらに備え、
前記給電制御手段は、前記コネクタ給電可能判別手段により前記コネクタによる給電が可能な場合に、前記第2送電手段より前記第2受電手段へ前記所定値以上の直流電流を送電させること
を特徴とする請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項7】
前記車輪の旋回角度を検出する検出手段をさらに備え、
前記給電制御手段は、前記車輪の旋回角度が所定角度未満の場合、かつ、前記コネクタ給電可能判別手段により前記コネクタによる給電が可能な場合に、前記第2送電手段より前記第2受電手段へ前記所定値以上の直流電流を送電すること
を特徴とする請求項6に記載の車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のモータへ電源を供給し車両を駆動する車両駆動装置に関する。ただし、この発明の利用は、上述した車両駆動装置には限られない。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体である電気自動車(EV)にモータを設け、車輪を駆動する構成において、モータを車輪に設けるインホイールモータ構造とし、このモータに対する電源を車両から供給するものとして、下記の各技術が開示されている。
【0003】
一つ目の技術は、車体と車輪との間の電気配線に螺旋部を設け、この螺旋部を車体とアクセルとの間に設けられたリンクに支持させる構造としている。これにより、電気配線の垂れ下がりを防止し、車輪の上下ストローク等の動作に追従できるようにしたものである(たとえば、下記特許文献1参照。)。
【0004】
二つ目の技術は、インホイールモータの配線構造にかかり、ターミナル基板の配線接続部にステータコイルからの配線を接続して各相ごとに電気的に集約する構成としている。これにより、コスト低減と組付作業を容易化でき、ステータの側方に設置位置が制約される結線用ユニットを用いず、インホイールモータの車幅方向の縮小化を達成している(たとえば、下記特許文献2参照。)。
【0005】
三つ目の技術は、車両には、車輪(ホイール)に近い側に、インバータ、モータ、減速機を配置している。これにより、高周波電流の経路のループの大きさを小さくして高周波電流に起因する放射ノイズの発生を抑制している(たとえば、下記特許文献3参照。)。
【0006】
四つ目の技術は、車体からモータへの電線をサスペンションのキングピン中心線Kiを中心として渦巻き状に巻いた構成としている。これにより、ホイールの転舵時に渦巻き状に巻かれた部分がキングピン中心線を中心として巻き取られまたは巻き戻され、電線による転舵の妨げを防止して転舵性を高め、電線の耐久性を確保している(たとえば、下記特許文献4参照。)。
【0007】
五つ目の技術は、車両から車輪のモータへ給電する電線(給電ケーブル)の接続にかかり、車両前進時のホイールの回転方向の下流側に接続端子箱を設けた構成としている。これにより、ホイールの内周面に異物が固着した状態で車両が前進した場合に、異物が給電ケーブルよりも先に端子箱に衝突して粉砕され、給電ケーブルの損傷を抑制している(たとえば、下記特許文献5参照。)。
【0008】
六つ目の技術は、車両から車輪のモータへ給電する電線の支持構造にかかり、電線(三相高圧ケーブル)を一括してシースで内包してケーブル支持部材で支持し、このケーブル支持部材の支持部を車体の前後方向、幅方向および高さ方向等の任意の方向に移動可能となるように車体に設置した構成としている。これにより、車輪が凸凹路を転動するときや運転者により操舵されるときなど、モータと電源側との直線距離が変化しても、三相高圧ケーブルが支持部と共に車体の前後方向、幅方向および高さ方向に移動し、三相高圧ケーブルの撓み部分が変形することでインホイールモータとバッテリ側との直線距離の変化が吸収されて三相高圧ケーブルの耐久性を向上させている(たとえば、下記特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−301472号公報
【特許文献2】特開2004−120909号公報
【特許文献3】特開2005−29086号公報
【特許文献4】特開2006−62388号公報
【特許文献5】特開2009−96429号公報
【特許文献6】特開2010−221902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の特許文献1〜6に記載の技術は、いずれも車両側のインバータと、車輪側のモータとに分離されているため、インバータと車輪の間に高電圧の大電流が流せる電源ケーブルが必要となる。
【0011】
この高電圧大電流の電源ケーブルには、操舵による車輪の回転等により撓みの負荷がかかるが、径が太いためケーブルの耐久性を低下させるとともに、操舵性を高めることができない。また、車両と車輪との間のホイールスペースに太い電源ケーブルが存在するため、サスペンションと干渉しないように配線することが困難であるとともに、泥や粉塵、雨や雪等が付着しやすく、劣化しやすいため、交換等のメンテナンスに手間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる車両駆動装置は、外部電源より取得した直流電力を蓄える第1蓄電池と、前記第1蓄電池に接続され、前記直流電力を交流電力に変換する第1変換器と、当該交流電力を無線送電する送電アンテナを有する第1送電手段と、前記交流電力を無線受電する受電アンテナと、当該交流電力を直流電力へ変換する第2変換器を有する第1受電手段と、前記第1蓄電池に接続され、前記第1蓄電池の直流電力を送電する第2送電手段と、前記第2送電手段と導電性を有するコネクタにより接続され、前記第2送電手段により送電された直流電力を受電する第2受電手段と、車輪のハブに装着され、当該車輪を駆動するインホイールモータと、前記車輪に設けられ、前記第1受電手段および前記第2受電手段により受電した直流電力を蓄える第2蓄電池と、前記車輪に設けられ、前記第2蓄電池の直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インホイールモータの回転駆動を制御する駆動制御手段と、前記第1送電手段より前記第1受電手段への無線給電、および、前記第2送電手段より前記第2受電手段への前記コネクタによる給電を制御する給電制御手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施の形態1にかかる車両駆動装置が搭載された車両の構成を示す概要図である。
図2図2は、車両駆動装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、有線および無線の電力伝送を説明する図である。
図4図4は、インバータの回路例を示す図である。
図5図5は、双方向チョッパの回路例を示す図である。
図6-1】図6−1は、コネクタの構成を示す図である(上面図)。
図6-2】図6−2は、コネクタの構成を示す図である(正面図)。
図7図7は、バッテリ間の電力伝送の概要を示す図である。
図8図8は、電力伝送にかかる全体の制御内容を示すフローチャートである。
図9図9は、力行トルク制御の制御内容を示すフローチャートである。
図10図10は、回生トルク制御の制御内容を示すフローチャートである。
図11図11は、第2バッテリの電圧検出回路の例を示す図である。
図12図12は、電圧検出回路の電圧検出状態に基づく給電制御の概要を示す図である。
図13図13は、実施の形態1にかかる電力伝送の制御手順の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、力行時のトルク指令値を示す図表である。
図15図15は、回生時のトルク指令値を示す図表である。
図16図16は、ペダルを離したときのトルク指令値を示す図表である。
図17図17は、モータ効率マップを示す図表である。
図18図18は、バッテリ残量が少なくなったときのトルクの再配分例を説明する図である。
図19-1】図19−1は、実施の形態で用いる協調ブレーキの制御特性を示す図である。
図19-2】図19−2は、実施の形態で用いる協調ブレーキのほかの制御特性を示す図である。
図20図20は、実施の形態2にかかる電力伝送の制御手順の一例を示すフローチャートである。
図21図21は、実施の形態2にかかる電力伝送の制御手順の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる車両駆動装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。以下の説明では、各車輪にモータを備えたインホイール型の構成を例に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
実施の形態1では、モータ駆動の電力を無線および有線により車両から車輪に電力伝送(ハイブリッド伝送)する構成である。電力伝送は、無線(第1送電・受電手段)と有線(第2送電・受電手段)を併用して行う構成とするほか、有線と無線との組み合わせを車両の走行状況等に応じて切り替えて電力伝送する構成とすることができる。
【0016】
(車両の構成)
図1は、実施の形態1にかかる車両駆動装置が搭載された車両の構成を示す概要図である。車両100は、左右の前車輪FL,FRと、左右の後車輪RL,RRを有する4輪駆動車である。これら四つの各車輪FL,FR,RL,RRのハブには、それぞれインホイール型のモータユニットM1〜M4が設けられ、独立に駆動される。
【0017】
これらモータユニットM1〜M4には、それぞれモータ駆動用のインバータ回路(後述する)と、第2バッテリ等が設けられ、各インバータ回路はコントローラ(ECU)101の制御に基づき、モータユニットM1〜M4を駆動する。このコントローラ101には各種情報が入力され、トルク配分された結果、各モータユニットM1〜M4に設けられたモータ(インホイールモータ)を駆動する。
【0018】
コントローラ101に対する入力としては、以下がある。ハンドル102からは操舵角が入力される。アクセルペダル103からは、全トルク指令値が入力される。ブレーキペダル104からはブレーキ量が入力される。シフトブレーキ105からはシフトブレーキ量が入力される。セレクタ106からはR,N,D等のセレクトポジションが入力される。
【0019】
また、各車輪FL,FR,RL,RRのモータユニットM1〜M4には、それぞれ回転速度Vを検出するセンサが設けられており、各車輪FL,FR,RL,RRの回転速度Vfl,Vfr,Vrl,Vrrがコントローラ101に入力される。
【0020】
このほか、車両100には、加速度センサとヨーレートセンサ(不図示)が設けられ、検出した加速度およびヨーレートがコントローラ101に入力される。
【0021】
コントローラ101は、上記の入力に基づき、各車輪FL,FR,RL,RRを駆動する。駆動のための制御信号S1〜S4は、各車輪FL,FR,RL,RRごとに適切にトルク配分され、各モータユニットM1〜M4に供給される。
【0022】
また、車両100には、バッテリが搭載され、車両100全体に対して電源供給する。バッテリは、車両側に設けられ、車両外部の外部電源より取得した直流電力を蓄える第1蓄電池(第1バッテリ)111と、モータユニットM1〜M4内部に設けられ、第1バッテリ111との間で電力伝送される第2蓄電池(第2バッテリ)とからなる。各車輪FL,FR,RL,RRのモータユニットM1〜M4は、第2バッテリに蓄電された電力により駆動される。これらバッテリとしては、ニッケル水素、リチウムイオン等の二次電池や燃料電池などが適用される。また、バッテリの代わりに電気二重層キャパシタを用いても良い。図中L1〜L4が電源ラインである。
【0023】
なお、回生時には、モータへの電源供給(力行)のときとは逆に、モータユニットM1〜M4によって発生した電源をバッテリ側に供給する。この回生とは、車両100を運転するドライバによるブレーキペダル104の操作や、走行中にアクセルペダル103の踏み込みを緩和することによって、モータに発生する逆起電力を用いた発電を示す。
【0024】
第1バッテリ111から各車輪のモータユニットM1〜M4にそれぞれ設けられる第2バッテリに対して、電源ラインL1〜L4を介して無線と有線で電力を伝送可能である。
【0025】
無線の電力伝送の構成を説明すると、車両側および車輪側(モータユニットM1〜M4)の電源ラインL1〜L4上には、それぞれ電圧変換部が設けられる。この電圧変換部は、車両側に設けられる第1変換器(DC−AC変換部)121(121a〜121d)と、車輪側各モータユニットM1〜M4内部に設けられるAC−DC変換部(後述する)によって構成される。
【0026】
車両側と車輪側には、電力を無線送電するための電力伝送アンテナ122(122a〜122d)、123(123a〜123d)が設けられる。
【0027】
そして、コントローラ101は、車両側の第1バッテリ111から供給可能な電源ラインL1〜L4の各電源を、制御信号S11〜S14により、車輪別のモータユニットM1〜M4に供給制御する。この際、電源ラインL1〜L4の電源は、車両側のDC−AC変換部121(121a〜121d)により直流電力が交流電力に変換される。そして、無線による電力伝送の一対の電力伝送アンテナ122(122a〜122d)、123(123a〜123d)を用いて、車輪側のモータユニットM1〜M4に無線送電される。
【0028】
そして、車輪側のモータユニットM1〜M4に設けられるAC−DC変換部により交流電力が直流電力に変換された後、第2バッテリに供給される。第2バッテリに蓄電された電力を用いて、後述するインバータ203(203a〜203d)は、モータユニットM1〜M4のモータを駆動する。
【0029】
なお、上記モータユニットM1〜M4のモータの回生時には、車輪側のモータユニットM1〜M4から車両側(第1バッテリ111)に向けて電力を伝送(送電)することができる。
【0030】
有線の電力伝送については、バッテリ111とモータユニットM1〜M4(第2バッテリ)との間が有線接続され、電力伝送する。
【0031】
有線による電力伝送と、無線による電力伝送は、常時併用する構成とするほか、各種組み合わせでおこなうことができる。たとえば、通常は有線による電力伝送をおこない、車両の走行状態に応じて無線による電力伝送もおこなう方法、有線による電力伝送が困難な状況が生じたときに、無線による伝送をおこなう方法、急速充電時に有線と無線を併用して電力伝送する方法等、がある(詳細は後述する)。
【0032】
(車両駆動装置の構成)
図2は、車両駆動装置の構成を示すブロック図である。主にモータへの電力伝送にかかる構成を記載してある。車両駆動装置200は、図1に記載のコントローラ101に設けられる送電制御部221と、各モータユニットM1〜M4に設けられる受電制御部151(151a〜151d)により、第1バッテリ111と第2バッテリ212(212a〜212d)間における電源ラインL1〜L4を用いた電力伝送を制御する。
【0033】
なお、上述したように、回生時には、送電制御部221が受電を制御し、受電制御部151が送電を制御する。図中、各モータユニットM1〜M4に設けられる回転制御部220(220a〜220d)は、受電制御部151(151a〜151d)により受電した電力に基づくモータMの回転を制御する。
【0034】
電源ラインL1〜L4は、第1バッテリ111とモータユニットM1〜M4の間において、有線と無線の2系統の伝送系統を有する。すなわち、電源ラインL1〜L4のうち、車両100と、各車輪FL,FR,RL,RRとの間のホイールスペース部分は、有線と無線の2系統に分かれていずれも電力伝送可能に構成されている。
【0035】
無線側は、上述した一対の電力伝送アンテナ122(122a〜122d)、123(123a〜123d)を有する。有線側は、一対のコネクタ231(231a〜231d)を介して電力伝送される。
【0036】
(有線および無線の電力伝送の構成)
図3は、有線および無線の電力伝送を説明する図である。図には、車両100と、モータユニットM1間の電源ラインL1上の構成について記載してある。
【0037】
車両100側の第1バッテリ111は、電源ラインL1を介してDC−AC変換部121aに接続されている。DC−AC変換部121aは、直流電力を交流電力に変換し、電力伝送アンテナ(送電アンテナ)122aに出力する。
【0038】
車輪側のモータユニットM1には、電力伝送アンテナ122aと対の電力伝送アンテナ(受電アンテナ)123aが設けられる。この電力伝送アンテナ123aは、車両側の電力伝送アンテナ122aから送電された電力を受電する。これら電力伝送アンテナ122a,123aには、たとえば、巻回されたコイルを用いることができ、車両100と車輪のモータユニットM1との間を非接触で電力伝送できる。
【0039】
また、第1バッテリ111のDC出力を直接、第2バッテリ212aに接続するために、DC−AC変換部121aの前段と、AC−DC変換部201aの後段との間がケーブル等で有線接続され、車両100と車輪との間のホイールスペース部分には、それぞれコネクタ231(231a)が設けられる。コネクタ231aを介して電力が有線伝送できる。
【0040】
モータユニットM1側において、電力伝送アンテナ123a、あるいはコネクタ231aを介して受電した電力は、第2変換器(AC−DC変換部)201aにより交流電力が直流電力に変換され、双方向チョッパ202aに出力される。双方向チョッパ202aは、双方向(正方向あるいは逆方向)への電力伝送を行うための回路である。
【0041】
双方向チョッパ202aの出力は、第2バッテリ212aに出力される。これにより、車両側の第1バッテリ111の電源を車輪側の第2バッテリ212aに供給し(正方向)、第2バッテリ212aに蓄電されるとともに、インバータ203aを介してモータユニットM1内のモータMに供給され、モータMを駆動させる。
【0042】
モータMの回生時には、モータMで発生した電力がインバータ203aを介して第2バッテリ212aに供給されるとともに、双方向チョッパ202aから無線および有線の電力伝送により、DC−AC変換部121aを介して第1バッテリ111に至る経路(電源ラインL1)で電力伝送することができる(逆方向)。これにより、第2バッテリ212aを介して第1バッテリ111への蓄電を行うことができる。なお、AC−DC変換部201aとDC−AC変換部121aは共に双方向であるため、この場合は、AC−DC変換部201aはDC−AC変換をおこない、DC−AC変換部121aはAC−DC変換をおこなう。また、123aは送電アンテナとなり、122aは受電アンテナとなる。
【0043】
車両100に設けられるコントローラ101は、上記の送電制御部(給電制御手段)221と、車輪の回転駆動を制御するトルク制御部(駆動制御手段)222とを有している。送電制御部221は、第2バッテリ212aに対する電源供給を制御する。
【0044】
第1バッテリ111および第2バッテリ212aのバッテリ量(バッテリ残量)は、送電制御部221が検出しており、たとえば、第2バッテリ212aのバッテリ残量が少なくなったときには、DC−AC変換部121a、AC−DC変換部201aに対し、車両100から車輪のモータユニットM1に対する電力伝送を制御信号S11を介して行う。この際、制御信号S11により双方向チョッパ202aは、車両100からモータユニットM1へ向う正方向の電力伝送を行う。
【0045】
一方、送電制御部221は、モータMの回生時に、モータユニットM1から車両側へ向う逆方向の電力伝送を行う場合についても、制御信号S11を用いて行う。この場合、双方向チョッパ202aに対しては、伝送の有無を制御する。伝送を行わない制御時には、第2バッテリ212aから第1バッテリ方向への電力伝送は行わない。伝送を行う制御時には、電力伝送の方向を第2バッテリ212aから第1バッテリ111の方向に切り替える。
【0046】
トルク制御部222は、全トルク指令値を走行状態に応じて各車輪FL,FR,RL,RRごとにトルク配分する。図示の右前輪FRのモータユニットM1に対しては、インバータ203aに対するトルク配分値を制御信号S1aで出力することにより行う。
【0047】
また、モータユニットM1は、第2バッテリ212aの電流値および電圧値を信号S1bとしてコントローラ101に出力し、モータMの回転速度を信号S1cとしてコントローラ101に出力する。
【0048】
これら制御信号S1a〜S1c,S11は、車両100と車輪側のモータユニットM1との間で有線接続された制御線を介して伝送させる。これら制御信号S1a〜S1c,S11については、データ送信できればよいため、制御線に細線を用いることができ、大容量の電力伝送を行うような太線を用いる必要はないため、車輪の操舵性を低下させることがない。
【0049】
図4は、インバータの回路例を示す図である。インバータ203aは、第2バッテリ212aから供給される直流電力をモータMの3相交流電力に変換する。U,V,Wの各相±にそれぞれダイオード301と、駆動トランジスタ302とを設け、PWM変調により、電圧と周波数を制御した正弦波を生成してモータMの各相に供給してモータMを回転駆動する。
【0050】
図5は、双方向チョッパの回路例を示す図である。双方向チョッパ202aは、一次側ハーフブリッジ回路501と、二次側ハーフブリッジ回路502と、リアクトル503とを備えている。一次側ハーフブリッジ回路501は、AC−DC変換部201aに接続されるスイッチング素子504と、ダイオード505を有している。二次側ハーフブリッジ回路502は、第2バッテリ212aに接続されるスイッチング素子506と、ダイオード507とを有している。リアクトル503は、一次側と二次側との間に接続されている。そして、スイッチング素子504,506の制御により、リアクトル503を介して一次側から二次側への正方向の電力伝送、あるいは二次側から一次側への逆方向の電力伝送を行うことができる。
【0051】
上記構成により、車両100側に第1バッテリ111を設け、インバータ203aと第2バッテリ212aをモータユニットM1に内蔵して設けているため、DCの電源を車両100側から供給することにより、モータMを駆動することができる。この際、車両100と車輪のモータユニットM1との間におけるDC電力の供給は、大電流を必要としない。これは、モータMの駆動には、第2バッテリ212aに蓄電されている電力を用いるためであり、大きなトルクを出力する際に必要な電力量を多少の余裕を持って第2バッテリ212aに蓄電しておけば良い。モータMには、インバータ203aを介して駆動に必要な高電圧で大電流の電力を供給することができる。したがって、第1バッテリ111と第2バッテリ212aの間の電力伝送を連続的に行うようにしておけば、大電流を流さなくても済むのである。
【0052】
したがって、第1バッテリ111と第2バッテリ212aとの間の電源ラインL1は、これらの間をDC低電流で電力伝送させることができればよい。このため、車両100と、車輪のモータユニットM1間を電力伝送アンテナ122a,123aを用いて、非接触な無線による電力伝送を行うことができる。また、有線による電力伝送についても、従来のような太く本数が多い3相大電流ケーブルは不要であり、細線を用いることができる。このように、車両100と車輪との間のケーブルを設ける場合、このケーブルとして細線を用いることができる。
【0053】
(コネクタの構成)
図6−1および図6−2は、それぞれコネクタの構成を示す図である。図6−1は車両100の上面から見た図、図6−2は、車両100の前面から見た図である。これらの図に示すように、電源ラインL1〜L4上における有線の電力伝送の系統において、車輪601内部にはモータMが設けられ、モータM側と車両100側は、車輪601の中心軸に配置されたコネクタ231を介して電力が伝送される。
【0054】
図6−1の(a)に示すように、コネクタ231は、具体的には、車輪601側に設けられるモータ側接点611と、車両100側から地面に対しほぼ水平に突出する接触棒612によって構成されている。接触棒612の先端には車両側接点613が形成され、モータ側接点611に導通接触する。接触棒612は、車両100側に設けられたばね部材614によりモータ側接点611の方向に常時付勢されている。
【0055】
そして、モータ側接点611は、車両側接点613の中心に向けて全方向に所定の曲率を有する半球状に形成されている。したがって、図6−1の(b)に示すように、ハンドル操作に基づき、タイロッド620を介して車輪601が転舵(旋回)したとき、車輪が上下したときにおいても、接触棒612の先端の車両側接点613は、車輪の左右あるいは上下の動作に追従してモータ側接点611に導通接触した状態を保つことができる。
【0056】
また、図6−2の(a)に示すように、車輪601は、サスペンション630により車両100に対し上下動自在に支持されており、たとえば、(b)に示すように、車両100に対して車輪601が上がった場合においても、接触棒612の先端の車両側接点613は、モータ側接点611に導通接触した状態を保つことができる。なお、接触棒612は、ばね部材614により車両側接点613がモータ側接点611に付勢されているが、車両100の振動や、車輪601の旋回の角度等によっては、車両側接点613がモータ側接点611から離れることがある。
【0057】
(バッテリ間の電力伝送の概要)
図7は、バッテリ間の電力伝送の概要を示す図である。この図には、複数のモータユニットM1〜M4のうち、モータユニットM1に設けられている各部を示している。4輪駆動の場合、四つのモータユニットM1〜M4を有し、第1バッテリ111は、これら四つのモータユニットM1〜M4のモータMを駆動する比較的大きな容量を有するものを用いる。一方、モータユニットM1に設ける第2バッテリ212aは、単一のモータMを駆動すればよく、比較的小容量のものを用いることができ、重量を軽量化できる。
【0058】
第1バッテリ111と、第2バッテリ212aとの間における電力伝送は、モータユニットM1内の第2バッテリ212aの残量(現在値B1)が、常に目標残量値BS(Set)に近づくように制御する。この制御は、上記コントローラ101の送電制御部221が行う。目標残量値BSは、充電上限値BU(Upper)と充電下限値BL(Lower)との間の所定値に設定される。また、目標残量値BSと充電上限値BUとの間に、電圧設定値1を設定し、目標残量値BSと充電下限値BLとの間に、電圧設定値2を設定する。電圧設定値1は、充電上限値BUに近いか同じでもよい。電圧設定値2は、充電下限値BLに近いか同じでも良い。図中RL(Lower)は、現在値B1と充電下限値BLとの差分であり、第2バッテリ212aで使用可能な容量である。
【0059】
電力の伝送方向は、上述したように双方向、すなわち正方向と逆方向がある。正方向は、第1バッテリ111→第2バッテリ212aの方向である。逆方向は、第2バッテリ212a→第1バッテリ111の方向である。
【0060】
コントローラ101は、基本的には、
1.正方向への電力伝送は、力行制御時に行う。力行制御は、たとえば、アクセルペダル103の踏み込みを検出したときに行う。
2.逆方向への電力伝送は、回生制御時に行う。回生制御は、たとえば、ブレーキペダル104の踏み込みを検出したときに行う。
【0061】
そして、コントローラ101(送電制御部221およびトルク制御部222)は、充電の現在値B1が第2バッテリ212aの充電上限値BUを超えないように、回生時の回生電力を制御する。また、充電の現在値B1が第2バッテリ212aの充電下限値BLを下回らないように、力行時の力行電力を制御する。
【0062】
(電力伝送の制御内容)
図8は、電力伝送にかかる全体の制御内容を示すフローチャートである。コントローラ101が行う電力伝送とトルク制御の処理について示している。はじめに、コントローラ101は、モータユニットM1〜M4のセンサにより、現在の走行速度を検出する。また、アクセルペダル103とブレーキペダル104の踏み込みを検出する(ステップS801)。
【0063】
そして、現在の走行状態と制御形態の組み合わせを特定する(ステップS802)。上記のように、
1.アクセルペダル103の踏み込みを検出したときには、力行制御と特定する。
2.ブレーキペダル104の踏み込みを検出したときには、回生制御と特定する。このほか、
3.アクセルペダル103およびブレーキペダル104の踏み込みを検出せず、かつ、車両100の速度が遅い場合には、力行制御と特定する。この場合、後述する擬似クリープトルクの制御を行う。
4.アクセルペダル103およびブレーキペダル104の踏み込みを検出せず、かつ、車両100の速度が速い場合には、回生制御と特定する。この場合、後述する擬似エンジンブレーキの制御を行う。
5.アクセルペダル103およびブレーキペダル104の踏み込みを検出せず、かつ、車両100の速度が中程度(速くなく、また遅くない速度)の場合には、制御なし(惰行運転)と特定する。
【0064】
つぎに、制御形態がいずれであるかを判断する(ステップS803)。制御形態が力行制御のときには(ステップS803:力行)、力行トルク制御を行い(ステップS804)、ステップS806に移行する。制御形態が回生制御のときには(ステップS803:回生)、回生トルク制御を行い(ステップS805)、ステップS806に移行する。制御形態が惰行の場合には(ステップS803:惰行)、特に制御を行わず、ステップS806に移行する。
【0065】
つぎに、ステップS806では、電力伝送制御を行い(ステップS806)、処理を終了する。コントローラ101は、上記の各処理を経時的に連続して行う。
【0066】
(力行トルク制御について)
図9は、力行トルク制御の制御内容を示すフローチャートである。図8のステップS804に示した力行トルク制御の詳細な制御内容を示している。はじめに、コントローラ101は、モータユニットM1〜M4にそれぞれ設けられる第2バッテリ212(212a〜212d:ただし212b〜212dはモータユニットM2〜M4の第2バッテリを指し不図示)の各値を検出する(ステップS901)。
【0067】
第2バッテリ212(212a〜212d)の充電下限値はBLとし、現在値(残量)はB1〜B4とし、現在の電圧はV1〜V4とする。モータユニットM1〜M4の第2バッテリ212a〜212dは、モータMの駆動状態に対応してそれぞれ現在値B1〜B4が異なり常に変動する。
【0068】
つぎに、アクセルペダル103の踏み込み量と、所定のトルク配分値により、各車輪(各モータユニットM1〜M4)へのトルク配分値T1〜T4を決定し、後述するモータ効率マップを用いた電力推定方法により、必要な力行電力W1〜W4を算出する(ステップS902)。
【0069】
つぎに、第2バッテリ212の電力使用可能な容量RLを算出する(ステップS903)。具体的には、モータユニットM1〜M4にそれぞれ設けられる第2バッテリ212(212a〜212d)について、
使用可能な容量RL1〜RL4=現在値B1〜B4−充電下限値BL
により算出する。
【0070】
つぎに、各モータユニットM1〜M4で必要な力行電力W1〜W4と、ステップS903で算出した第2バッテリ212(212a〜212d)で使用可能な容量RL1〜RL4とを比較する(ステップS904)。この結果、各モータユニットM1〜M4で必要な力行電力W1〜W4が対応する第2バッテリ212(212a〜212d)で使用可能な容量RL1〜RL4を超えた場合には(ステップS904:Yes)、力行電力が使用可能な容量RL1〜RL4以下となるように、各車輪のトルク配分値を再計算する(ステップS905)。すなわち、全トルク指令値をトルク配分する際に、残量が少ない第2バッテリ212のモータユニットへのトルク配分値を少なくし、その割合で、他のモータユニットのトルク配分値も少なくする。
【0071】
一方、ステップS904で各モータユニットM1〜M4で必要な力行電力W1〜W4が対応する第2バッテリ212(212a〜212d)で使用可能な容量RL1〜RL4に収まっていれば(ステップS904:No)、ステップS905の処理を行わず、ステップS906に移行する。
【0072】
そして、ステップS906では、各モータユニットM1〜M4に対するトルク配分値を用いて、力行トルク制御を行い(ステップS906)、処理を終了する。
【0073】
(回生トルク制御について)
図10は、回生トルク制御の制御内容を示すフローチャートである。図8のステップS805に示した回生トルク制御の詳細な制御内容を示している。回生時には、モータMが電力を発生する。はじめに、コントローラ101は、モータユニットM1〜M4にそれぞれ設けられる第2バッテリ212(212a〜212d)の各値を検出する(ステップS1001)。第2バッテリ212の充電上限値はBUとし、現在値(残量)はB1〜B4とし、現在の電圧はV1〜V4とする。
【0074】
つぎに、ブレーキペダル104の踏み込み量と、所定のトルク配分値により、各車輪(各モータユニットM1〜M4)へのトルク配分値T1〜T4を決定し、後述するモータ効率マップを用いた電力推定方法により、回生電力W1〜W4を算出する(ステップS1002)。
【0075】
つぎに、第2バッテリ212の電力回生可能な容量RUを算出する(ステップS1003)。具体的には、モータユニットM1〜M4にそれぞれ設けられる第2バッテリ212(212a〜212d)について、
回生可能な容量RU1〜RU4=充電上限値BU−現在値B1〜B4
により算出する。
【0076】
つぎに、各モータユニットM1〜M4での回生電力W1〜W4と、ステップS1003で算出した第2バッテリ212(212a〜212d)で回生可能な容量RUとを比較する(ステップS1004)。この結果、各モータユニットM1〜M4の回生電力W1〜W4が対応する第2バッテリ212(212a〜212d)で回生可能な容量RU1〜RU4を超えた場合には(ステップS1004:Yes)、回生電力が回生可能な容量RU1〜RU4以下となるように、各車輪のトルク配分値を再計算する(ステップS1005)。すなわち、全トルク指令値をトルク配分する際に、残量が多い第2バッテリ212のモータユニットへのトルク配分値を少なくし、その割合で、他のモータユニットのトルク配分値も少なくする。
【0077】
一方、ステップS1004で各モータユニットM1〜M4の回生電力W1〜W4が対応する第2バッテリ212(212a〜212d)で回生可能な容量RU1〜RU4に収まっていれば(ステップS1004:No)、ステップS1005の処理を行わず、ステップS1006に移行する。
【0078】
そして、ステップS1006では、各モータユニットM1〜M4に対するトルク配分値を用いて、回生トルク制御を行い(ステップS1006)、処理を終了する。
【0079】
(電力伝送の制御)
図11は、第2バッテリの電圧検出回路の例を示す図である。各モータユニットM1〜M2に設けられる第2バッテリ212(212a〜212d)は、それぞれ電圧検出回路1100により電圧検出され、コントローラ101に信号S1bとして出力される。
【0080】
電圧検出回路1100は、2つのコンパレータ1101,1102を有しており、コンパレータ1101には上限側比較用の電圧設定値1が設定され、コンパレータ1102には下限側比較用の電圧設定値2が設定されている。そして、第2バッテリ212(212a〜212d)がそれぞれのコンパレータ1101,1102に接続されている。コンパレータ1101は、上限側の電圧設定値1を閾値として第2バッテリ212(212a〜212d)の電圧変化を検出し、閾値を跨いだときに出力を変化させる。コンパレータ1102は、下限側の電圧設定値2を閾値として第2バッテリ212(212a〜212d)の電圧変化を検出し、閾値を跨いだときに出力を変化させる。
【0081】
図12は、電圧検出回路の電圧検出状態に基づく給電制御の概要を示す図である。(a)に示すように、第2バッテリ212が残量変化とともに電圧値(現在値B1)が変化する。この際、(b)に示すように、コンパレータ1101は、現在値B1が上限側の電圧設定値1より低い場合ON電圧を出力し、現在値B1が電圧設定値1を超えた場合OFF電圧を出力する。また、コンパレータ1102は、現在値B1が下限側の電圧設定値2より低い場合ON電圧を出力し、現在値B1が電圧設定値2を超えた場合OFF電圧を出力する。
【0082】
コントローラ101の送電制御部221は、これらコンパレータ1101,1102が出力する信号S1bの状態に基づき、第1バッテリ111から第2バッテリ212(212a〜212d)に対する給電状態を制御する。たとえば、(c)に示すように、コンパレータ1101がOFF電圧を出力し、コンパレータ1102がOFF電圧出力時には、給電をおこなわない(給電なし)。コンパレータ1101がON電圧を出力し、コンパレータ1102がOFF電圧出力時には、通常給電をおこなう。コンパレータ1101,1102ともにON電圧を出力するときには、急速給電をおこなう。送電制御部221は、上述した急速給電の要否を判断する急速給電要否判別手段を備える。
【0083】
図13は、実施の形態1にかかる電力伝送の制御手順の一例を示すフローチャートである。図8のステップS806の処理内容を示す。図13の説明では、モータユニットM1に設けられる第2バッテリ212aに対する電力伝送を例に説明するが、他のモータユニットM2〜M4に設けられる第2バッテリ212b〜212dについても同様の処理を行えばよい。以下の処理は、コントローラ101の送電制御部221がおこなう。
【0084】
はじめに、コントローラ101の送電制御部221は、第2バッテリ212aの電圧(現在値B1)を検出し、この電圧が電圧設定値1以下であるか判断する(ステップS1301)。第2バッテリ212aの電圧が電圧設定値1以下であれば(ステップS1301:Yes)、ステップS1302に移行するが、電圧設定値1より高ければ(ステップS1301:Noのループ)、以降の送電制御はおこなわずに待機する(給電なしに相当)。
【0085】
つぎに、ステップS1302では、回生動作中であるか判断し、回生動作中であれば(ステップS1302:Yes)、以降の送電処理はおこなわず、処理を終了する。回生動作中でなければ(ステップS1302:No)、つぎに、第2バッテリ212aの急速充電が必要か判断する(ステップS1303)。第2バッテリ212aの電圧が電圧設定値2以下であれば(ステップS1303:Yes)、急速充電が必要と判断し、ステップS1304以下の処理を実行する。第2バッテリ212aの電圧が電圧設定値2より高ければ(ステップS1303:No)、急速給電は不要であり、通常給電が必要と判断し、ステップS1309以下の処理を実行する。
【0086】
ステップS1304では、急速給電をおこなうため、有線と無線による電力伝送をおこなう。上述したように、有線の電力伝送については、コネクタ231を介してバッテリ111の電力を第2バッテリ212aに給電開始し(ステップS1304)、無線の電力伝送については、電力伝送アンテナ122a,122bを介して、有線と併用してバッテリ111の電力を第2バッテリ212aに給電開始する(ステップS1305)。
【0087】
この後、第2バッテリ212aが充電済みであるか判断する(ステップS1306)。第2バッテリ212aの電圧が目標残量値BSより低ければ(ステップS1306:Noのループ)、ステップS1304,1306による有線および無線の給電を継続する。第2バッテリ212aの電圧が目標残量値BS以上となれば(ステップS1306:Yes)、有線によるコネクタ231を介しての給電を終了し(ステップS1307)、無線による電力伝送アンテナ122a,122bを介しての給電についても終了し(ステップS1308)、以上の送電制御を終了する。
【0088】
ステップS1309では、通常給電をおこなうため、有線のコネクタ231を介してバッテリ111の電力を第2バッテリ212aに給電開始する(ステップS1309)。この後、第2バッテリ212aが充電済みであるか判断する(ステップS1310)。第2バッテリ212aの電圧が目標残量値BSより低ければ(ステップS1310:Noのループ)、ステップS1309による有線の給電を継続する。第2バッテリ212aの電圧が目標残量値BS以上となれば(ステップS1310:Yes)、有線によるコネクタ231を介しての給電を終了し(ステップS1311)、以上の送電制御を終了する。
【0089】
また、ステップS1309において、有線のコネクタ231による給電が実施不可能なときには、無線による給電を開始する(ステップS1312)。有線側の電力伝送を構成する接触棒612の車両側接点613は、車両100の振動や車輪601の旋回等によって、モータ側接点611から離れることがある。このような場合、無線による給電をおこなう。たとえば、有線給電時をおこなっているものの、伝送される電力の量が遮断されたことを検出したり、第2バッテリ212aの容量や電圧が変化しないことを検出する等により、送電制御部221が有線のコネクタ231による給電が実施不可能な状態であるか否かを判断する。
【0090】
そして、第2バッテリ212aが充電済みであるか判断する(ステップS1313)。第2バッテリ212aの電圧が目標残量値BSより低ければ(ステップS1313:Noのループ)、ステップS1314による無線の給電を継続する。第2バッテリ212aの電圧が目標残量値BS以上となれば(ステップS1313:Yes)、無線による給電を終了し(ステップS1314)、以上の送電制御を終了する。
【0091】
(力行トルク指令値について)
図14は、力行時のトルク指令値を示す図表である。アクセルペダル103の踏み込み量(横軸)に対する力行トルク指令値(縦軸)の関係を示している。コントローラ101のトルク制御部222は、図示のように、これらアクセルペダル103の踏み込み量と、力行時の全トルク指令値とは、比例する直線関係で制御するのではなく、アクセルペダル103の踏み込み量に対してはじめはなだらかに変化する曲線を有して力行トルク指令値を出力する。また、車両100の前進時に比べて後退時の力行トルク指令値は、さらになだらかとなるよう設定している。
【0092】
(回生トルク指令値について)
図15は、回生時のトルク指令値を示す図表である。ブレーキペダル104の踏み込み量(横軸)に対する回生トルク指令値(縦軸)の関係を示している。コントローラ101は、図示のように、ブレーキペダル104の踏み込み量に対し、回生トルク指令値は、ほぼ直線関係となるよう制御している。また、車両の前進時に比べて後退時の回生トルク指令値は、なだらかに変化するよう設定している。
【0093】
(擬似クリープトルクと擬似エンジンブレーキについて)
図16は、ペダルを離したときのトルク指令値を示す図表である。コントローラ101は、アクセルペダル103もブレーキペダル104も踏まれない場合、図示のように、車速に応じてトルク指令値を変えている。
【0094】
そして、車速が遅い場合は、プラス(+)のトルクとして擬似クリープトルクを生成する。車速が速い場合は、マイナス(−)のトルクとして擬似エンジンブレーキを生成する。図示の例では、車速が40km/h程度以上で擬似エンジンブレーキをかけ、60km/h程度が最も大きなトルク値をかけるようになっている。60km/h程度以上の速度では、次第に小さなトルク値をかけるようになっている。車速が中程度の場合は(図中Nの速度領域)、トルク指令値をゼロにして惰行運転する。
【0095】
また、通常モードとエコモードとを切り替えるように構成した場合、切り替えたモード別に、車速に対するトルク指令値の特性を変えてもよい。図示の例では、通常モードに比べてエコモード時には、擬似クリープトルク値を少なくし、擬似エンジンブレーキは、マイナスの大きなトルク値としている。
【0096】
(モータ効率マップを用いたモータの電力推定)
つぎに、モータ効率マップを用いたモータMの消費電力(回生電力)推定について説明する。図17は、モータ効率マップを示す図表である。効率マップ1700は、モータMの回転速度−トルク特性を示すものであり、横軸は回転速度、縦軸はトルクである。コントローラ101の記憶部には、図示の4象限の効率マップ1700を予め格納しておく。
【0097】
効率マップ1700の第1〜第4象限は、それぞれ、
1.正転力行:前進中にアクセルペダルを踏んでいる状態
2.逆転力行:後退中にアクセルペダルを踏んでいる状態
3.逆転回生:後退中にブレーキペダルを踏んでいる状態
4.正転回生:前進中にブレーキペダルを踏んでいる状態
である。
【0098】
コントローラ101のトルク制御部222は、アクセルペダル103やブレーキペダル104の踏み込み量から、全トルク指令量を算出する。そして、この全トルク値を所定のトルク配分によって、各車輪のモータMごとのトルク配分値Tに配分する。
【0099】
また、コントローラ101は、車両100の走行中、各モータユニットM1〜M4のセンサにより回転速度Vfl,Vfr,Vrl,Vrrを検出する。ここでは、回転速度をωとして説明する。そして、コントローラ101は、モータMについて、効率マップ1700を参照し、トルクTと回転速度ωから効率ηを得る。
【0100】
そして、コントローラ101は、以下の式から、力行時の消費電力と、回生時の回生電力をそれぞれ推定する。
・力行時
効率η=(T・ω)/(V・I)
・回生時
効率η=(V・I)/(T・ω)
(V,Iは、モータMの電圧と電流、あるいはインバータ203の電圧と電流)
【0101】
上記の(V・I)がモータMの力行時の消費電力、および回生時の回生電力Wに相当する。コントローラ101は、上述したように、第2バッテリ212(212a〜212d)について、現在値と、使用可能あるいは回生可能な電力量を求める。そして、使用可能あるいは回生可能な電力量と、算出した上記消費電力(回生電力)とを比較し、範囲内に収まるように、モータMに対するトルク配分値を修正する。
【0102】
そして、効率マップ1700を用いることにより、より正確にモータMの消費電力(回生電力)を判断できるようになる。これにより、電力伝送時における必要な電力量を精度よく推定することができ、電力伝送時の電力量を正確に算出でき、効率的な電力伝送を行うことができるようになる。
【0103】
効率マップ1700は、予め取得しておくに限らない。たとえば、車両100の走行中に効率マップ1700を作成してもよい。コントローラ101は、効率マップ生成部を備え、走行時にモータMの消費電力と、回転数とを取得して、上記の効率マップ1700を生成する。
【0104】
このほか、予め取得した効率マップ1700を更新する構成とすることもできる。この際、
・モータMに流れる電流Iからトルク値を検出
・レゾルバ等の回転位置センサにより車輪の回転速度を検出
・第2バッテリ212aとインバータ203a間に設けた電流センサおよび電圧センサにより電流と電圧を検出し、電力を算出
コントローラ101は、上記の検出および算出によって、車両100の走行時に、記憶部に格納した効率マップ1700を随時更新していくことができる。
【0105】
(トルク配分例)
つぎに、各車輪のモータMに対するトルク配分値の再配分例について説明する。図18は、バッテリ残量が少なくなったときのトルクの再配分例を説明する図である。コントローラ101に対し、たとえば、アクセルペダル103の踏み込みにより、全トルク指令値が100[Nm]として入力された場合を例に説明する。
【0106】
図18中の(a)に示すように、仮に、コントローラ101のトルク制御部222が、トルク配分値として、左右の前輪を20[Nm]、左右の後輪を30[Nm]にトルク配分としたとする。
【0107】
ここで、図18の(b)に示すように、左前輪FLのモータユニットM2に設けられた第2バッテリ212(212bに相当)のバッテリ残量が少なくなり、左前輪FLのモータMで16[Nm]しか出力できなくなったとする。これに対応して単に左前輪FLだけのトルクを下げてしまうと、左右の前輪の駆動力がアンバランスになり、車両100の進行の向きが変わるという影響が生じる。
【0108】
このため、コントローラ101のトルク制御部222は、図18(c)に示すように、トルクの再配分を行う。すなわち、左右の前輪に対し、同じトルク16[Nm]となるようトルク配分する。また、前輪のトルクを20[Nm]から16[Nm]に変更した割合(4/5)に対応して左右の後輪についても、同じ割合にするため、30[Nm]から24[Nm]にトルクを変更する。この場合、全トルク値は、100[Nm]から80[Nm]に変更されることになる。
【0109】
上記説明では、第2バッテリ212の残量が少なくなることに基づくトルクの再配分について説明したが、バッテリ212が満充電に近い場合に、車両100の制動時(ブレーキ時)についても、同様に行う。ただし、この場合、制動力としてモータMの回生ブレーキだけでは足りなくなるため、この不足分の制動力は機械式ブレーキを併用する必要がある。
【0110】
(協調ブレーキについて)
協調ブレーキとは、モータMによる回生ブレーキと、油圧制御による機械式ブレーキとを組み合わせて、必要な制動力を生成するブレーキである。回生ブレーキと機械式ブレーキの組み合わせについては、各種方法がある。
【0111】
たとえば、常に、回生ブレーキと機械式ブレーキとを所定の比率でいずれも使用する方法、所定の制動量までは回生ブレーキを使用し、所定の制動量以上となると機械式ブレーキを加えて用いる方法、所定の制動量までは機械式ブレーキを使用し、所定の制動量以上となると回生ブレーキを加えて用いる方法、等がある。
【0112】
図19−1は、実施の形態で用いる協調ブレーキの制御特性を示す図である。横軸は速度、縦軸は制動トルクである。モータMは、速度が低いとき回転数が小さい。したがって、図示のように、このような速度が低いときには逆起電力も小さくなるため、大きな回生ブレーキを得ることができない。
【0113】
したがって、実施の形態のコントローラ101では、モータMの回生ブレーキだけではなく、回生ブレーキでは得られない不足分の制動トルクを機械式ブレーキにより得る協調ブレーキ制御を行うようにしている。図示の例では、機械式ブレーキの制動トルクは、回生ブレーキと逆の特性を有し、速度が低いほど大きく、速度が高くなるにつれて減少させている。これにより、ブレーキペダル104の踏み込み量に対応した制動トルク値を、回生ブレーキと機械式ブレーキ双方の制動力により得る。
【0114】
また、第2バッテリ212の現在値が満充電に近くなって大きな回生ブレーキをかけることができない場合、コントローラ101は、低速時と同じように、回生ブレーキの制動トルクの割合を小さくし、機械式ブレーキによる制動トルクの割合を大きくして、必要な制動トルクを得るよう協調ブレーキ制御を行う。
【0115】
図19−2は、実施の形態で用いる協調ブレーキのほかの制御特性を示す図である。図示の例では、回生ブレーキによって発生する電力が充電できなくなった時点で、次第に回生ブレーキによる制動トルクの割合を小さくし、逆に機械式ブレーキによる割合を大きくさせている。
【0116】
以上説明したように、制動トルクをモータMによる回生ブレーキだけではなく、機械式ブレーキを併用する協調ブレーキ制御により、広範囲な速度に渡り必要な制動トルクを発生させることができ、車両100の走行を安全に行うことができるようになる。そして、第2バッテリ212の充電容量の変化により、第2バッテリ212に充電できないような状態が生じたときであっても、必要な制動トルクを得ることができるようになる。
【0117】
以上説明した実施の形態1によれば、車両と車輪にそれぞれバッテリを設け、車両と車輪の間を有線および無線により電力伝送する構成とした。これにより、車両と車輪との間に大容量の電力伝送ケーブルを設ける必要がなく、ケーブルの損傷や交換を不要にできる。また、相互のバッテリ間での電力伝送は、車輪側の第2バッテリの容量が常に目標残量値に近づくよう制御する。これにより、常時モータに対して安定な電力を供給できるようになる。
【0118】
さらに、電力伝送を車両の走行状態にあわせて、力行時と回生時、および各モータに対するトルク配分、および制動トルクの変化に対応して制御するため、運転の安全性を確保できるとともに、電力伝送を効率的に行えるようになる。
【0119】
そして、第2バッテリの残量に応じて急速給電と通常給電とを切り替え、残量が少ないときには、急速給電時には、有線と無線の電力伝送により、伝送する電力量を増大させ、できるだけ短時間で第2バッテリを目標残量値に達することができるようになる。また、残量が多いときには、有線による通常充電をおこなうが、車両の振動や車輪の旋回角度が大きいとき等、コネクタが離れて有線による電力伝送が困難な状況の場合には、無線による電力伝送に切り替えて電力の伝送を継続するようにしたので、車両の走行状況等の影響を受けずにできるだけ早く第2バッテリの容量不足を解消できるようになる。
【0120】
(実施の形態2)
実施の形態2では、有線による電力伝送の遮断後に再度、有線による電力伝送を開始するときの突入電流を少なくできるよう制御する構成について説明する。有線によるコネクタ231(231a〜231d)を用いた給電では、実施の形態1で説明したように、車輪601の旋回角度が大きいときには、車両側接点613がモータ側接点611から離れ、給電できない状態が生じる。
【0121】
この後、車輪601の旋回状態が復帰して、再度、車両側接点613がモータ側接点611に接触することにより、コネクタ231を用いた有線による給電を再開することができる。ただし、給電を再開する際には、コネクタ231を構成する車両側接点613がモータ側接点611に接触した際に、大きな突入電流が生じるおそれがある。この突入電流は、第2バッテリ212(212a〜212d)を構成する二次電池やキャパシタに悪影響を及ぼす。
【0122】
このため、実施の形態2では、送電制御部221は、ハンドル102の操作角度、あるいは車輪601の旋回角度、あるいはタイロッド620の移動状態を検出するセンサ等の検出出力に基づいて、コネクタ231(車両側接点613とモータ側接点611)の接触の有無を判断する。この際、検出した角度等から車輪601の旋回角度を求め、この旋回角度が所定角度以上のとき、コネクタ231(車両側接点613とモータ側接点611)の接触が離れていると判断する。この場合、実施の形態1同様に、有線による給電が行えない状態となる。
【0123】
この後、再度、ハンドル102の操作角度等により、送電制御部221は、コネクタ231(車両側接点613とモータ側接点611)が再度接触している可能性が高いと判断し、給電を再開できる状態となったときには、一端弱い電流(微少電流)を流す。そして、微少電流が流れていることを確認した後にはじめて必要な電流量での電力伝送をおこなう。送電制御部221は、微少電流が流れているかに基づきコネクタ231を介した給電が可能であるか判別するコネクタ給電可能判別手段を備える。
【0124】
図20は、実施の形態2による電力伝送制御手順の一例を示すフローチャートである。車両100側に設けられる送電制御部221がおこなう処理について説明する。図20には、コネクタ231(車両側接点613とモータ側接点611)が離れ、有線による電力伝送が給電不能な状態になった以降の処理について記載してある。この処理では、送電制御部221は、車両100側の電源ラインL1に流れる電流値を検出する。
【0125】
はじめに、送電制御部221は、ハンドル102の操作角度、あるいは車両100に対する車輪601の旋回角度を検出する(ステップS2001)。あらかじめ送電制御部221は、車輪の旋回角度に対する給電可能な角度範囲を図示しない記憶部に記憶してある。また、ハンドル102の操作角度を検出する場合には、この操作角度を車輪601の旋回角度に変換する。
【0126】
つぎに、送電制御部221は、検出された車輪601の旋回角度が給電可能範囲内であるか判断する(ステップS2002)。給電可能範囲内でなければ(ステップS2002:No)、ステップS2001に戻り、車輪601の旋回角度が給電可能範囲内に入るまで待つ。給電可能範囲内に入ったことが検出されれば(ステップS2002:Yes)、第2バッテリ212aに対する給電を開始する(ステップS2003)。この給電開始時には、微少電流を流すことにより、突入電流を回避する。
【0127】
つぎに、送電制御部221は、電源ラインL1上で微少電流が流れているか確認する(ステップS2004)。微少電流が流れていることを検出できなければ(ステップS2004:No)、ステップS2001に戻る。微少電流が流れていることを検出できれば(ステップS2004:Yes)、送電制御部221は、第2バッテリ212aに対する給電電流をあらかじめ設定した所定値まで徐々に増加させる(ステップS2005)。
【0128】
この後、送電制御部221は、給電電流が所定値まで増加した後に、本来伝送しようとした定常時の電流値で給電を開始させる(ステップS2005)。そして、第2バッテリ212aが目標残量値BSに達したか判断し(ステップS2006)、達していなければ(ステップS2006:No)、給電を続け、達すれば(ステップS2006:Yes)、処理を終了する。
【0129】
図21は、実施の形態2による電力伝送制御手順の他の例を示すフローチャートである。この処理では、車輪601(モータユニットM1)側では、電源ラインL1に流れる電流値を検出し、上記の信号S1bを介して送電制御部221に出力する。
【0130】
はじめに、送電制御部221は、第2バッテリ212aに対する給電を開始する(ステップS2101)。この給電開始時には、微少電流を流すことにより、突入電流を回避する。
【0131】
つぎに、車輪601のモータユニットM1側で電源ラインL1上で微少電流が流れていることを検出できたか確認する(ステップS2102)。送電制御部221は、モータユニットM1からの信号S1bにより、微少電流が流れているか否かを確認できる。微少電流が流れていることを検出できなければ(ステップS2102:No)、検出できるまで待機する。微少電流が流れていることを検出できれば(ステップS2102:Yes)、送電制御部221は、第2バッテリ212aに対する給電電流をあらかじめ設定した所定値まで徐徐に増加させる(ステップS2103)。
【0132】
この後、送電制御部221は、給電電流が所定値まで増加した後に、本来伝送しようとした定常時の電流値で給電を開始させる(ステップS2104)。そして、第2バッテリ212aが目標残量値BSに達したか判断し(ステップS2105)、達していなければ(ステップS2105:No)、給電を続け、達すれば(ステップS2105:Yes)、処理を終了する。
【0133】
この実施の形態2によれば、車輪の旋回角度によりコネクタが離れ有線による給電が遮断された後において、再度給電を開始するときには、微少電流を流した後に電流量を増大させる構成としたので、給電再開時における突入電流を回避でき、第2バッテリや、コネクタ(車両側接点、およびモータ側接点)の損傷を防止でき、また、突入電流を起因とする電源ノイズの発生を防止することができる。
【0134】
なお、本実施の形態で説明した方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0135】
100 車両
101 コントローラ
102 ハンドル
103 アクセルペダル
104 ブレーキペダル
105 シフトブレーキ
106 セレクタ
111 第1バッテリ
121(121a) 第1変換器(DC−AC変換部)
122(122a),123(123a) 電力伝送アンテナ
201(201a) 第2変換器(AC−DC変換部)
202a 双方向チョッパ
203a インバータ
212(212a) 第2バッテリ
221 送電制御部
222 トルク制御部
231(231a〜231d) コネクタ
611 モータ側接点
613 車両側接点
1100 電圧検出回路
M1〜M4 モータユニット
M モータ(インホイールモータ)
L1〜L4 電源ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19-1】
図19-2】
図20
図21