(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775609
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】圧力センサの素子に対する応力効果の補償
(51)【国際特許分類】
G01L 9/00 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
G01L9/00 303D
【請求項の数】38
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-554615(P2013-554615)
(86)(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公表番号】特表2014-505894(P2014-505894A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】US2012025497
(87)【国際公開番号】WO2012112803
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2014年3月4日
(31)【優先権主張番号】13/029,114
(32)【優先日】2011年2月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513204665
【氏名又は名称】シリコン マイクロストラクチャーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SILICON MICROSTRUCTURES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】オーガスト, リチャード, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ドール, マイケル, ビー.
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5057606(JP,B2)
【文献】
特表2002−530641(JP,A)
【文献】
特表2006−516359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 9/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイの第1の面の上の、第1の特性を有する第1の素子と、
前記第1の素子の上方の第1の層と、
前記第1の層にパターニングされた第1の形状と、を備え、
第1の応力が前記第1の素子に対して第1の方向に加えられ、
前記第1の形状は、第2の応力が前記第1の素子に対して第2の方向に加えられ、前記第1の応力に起因する前記第1の素子の前記第1の特性における変化が少なくとも前記第2の応力によって低減されるようにパターニングされている、
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記第2の応力は、前記第2の方向における前記第1の形状の外形によって定められる、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記第1の応力に起因する前記第1の素子の前記第1の特性における前記変化は、前記第2の応力によってほぼ相殺される、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記第1の方向における前記第1の応力は、第1のソースによって前記第1の素子に加えられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記第1のソースは、第2の層の第2の形状、第2の素子、および前記圧力センサのためのパッケージのうちの1つである、
ことを特徴とする請求項4に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記第1の方向における前記第1の応力は、前記第1の層における前記第1の形状によって前記第1の素子に対して加えられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記第1の素子は拡散抵抗を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記第1の素子は、低濃度ドープの抵抗である、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項9】
前記第1の素子の前記第1の特性における前記変化は、抵抗の抵抗値の変化である、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項10】
前記第1の方向および前記第2の方向は、前記第1の素子の前記第1の特性における前記変化を最小化するように決定された任意の角度関係を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項11】
前記第1の素子はMOSFETである、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項12】
前記第1の素子はMOSFETであり、
前記第1の素子の前記第1の特性における前記変化は、前記MOSFETのモビリティにおける変化である、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項13】
前記第1の層はポリシリコン層である、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項14】
前記第1の層はメタル層である、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項15】
前記第1の層は、酸化層または窒化層である、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項16】
前記第1の方向と前記第2の方向とは、少なくとも略直交している、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項17】
フレームによって取り囲まれたダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの上に又は少なくとも前記ダイヤフラムの近くに位置する抵抗と、
前記抵抗の上の第1の層と、
前記第1の層に形成された第1の形状と、を備え、
第1の応力は、前記抵抗に対して第1の方向に加えられ、かつ、前記第1の形状は、前記第1の形状が第2の応力を前記抵抗に対して第2の方向に加えるように前記抵抗の上に形成され、
前記第2の応力は、前記第1の応力によって生じた前記抵抗の抵抗値の変化を低減する、
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項18】
前記第1の方向における前記第1の応力は、第1のソースによって前記抵抗に対して加えられる、
ことを特徴とする請求項17に記載の圧力センサ。
【請求項19】
前記第1のソースは、第2の層における第2の形状、第1の素子、および前記圧力センサのためのパッケージのうちの1つである、
ことを特徴とする請求項18に記載の圧力センサ。
【請求項20】
前記第1の方向における前記第1の応力は、前記第1の層における前記第1の形状によって前記抵抗に対して加えられる、
ことを特徴とする請求項17に記載の圧力センサ。
【請求項21】
前記第1の形状は、外形において略長方形である、
ことを特徴とする請求項17に記載の圧力センサ。
【請求項22】
前記第1の形状は、複数の開口を含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の圧力センサ。
【請求項23】
前記抵抗は、N型領域の中の低濃度ドープのP型抵抗である、
ことを特徴とする請求項17に記載の圧力センサ。
【請求項24】
前記第1の層は、ポリシリコン層である、
ことを特徴とする請求項23に記載の圧力センサ。
【請求項25】
前記抵抗は、ホイートストン・ブリッジにおける抵抗である、
ことを特徴とする請求項24に記載の圧力センサ。
【請求項26】
ウエハの第1の面の上に、第1の抵抗値を有する第1の抵抗を形成する工程と、
前記第1の抵抗の上方に第1の層を形成する工程と、
前記第1の層に第1の形状を形成する工程と、を有し、
第1の応力が、前記第1の抵抗に対して第1の方向に加えられ、
前記第1の形状は、前記第1の抵抗に対して第2の方向に加えられる第2の応力を、前記第1の応力に起因する前記第1の抵抗の前記第1の抵抗値における変化が少なくとも前記第2の応力によって低減されるように生じさせる、
ことを特徴とする圧力センサの製造方法。
【請求項27】
前記第1の方向における前記第1の応力は、第1のソースによって前記第1の抵抗に対して加えられる、
ことを特徴とする請求項26に記載の圧力センサの製造方法。
【請求項28】
前記第1のソースは、第2の層における第2の形状、第1の素子、および前記圧力センサのためのパッケージのうちの1つである、
ことを特徴とする請求項27に記載の圧力センサの製造方法。
【請求項29】
前記第1の方向における前記第1の応力は、前記第1の層における前記第1の形状によって前記第1の抵抗に対して加えられる、
ことを特徴とする請求項26に記載の圧力センサの製造方法。
【請求項30】
前記第1の抵抗は、N型領域の中に位置する低濃度ドープのP型抵抗である、
ことを特徴とする請求項26に記載の圧力センサの製造方法。
【請求項31】
前記第1の層は、ポリシリコン層である、
ことを特徴とする請求項26に記載の圧力センサの製造方法。
【請求項32】
前記第1の形状は、複数の開口を含む、
ことを特徴とする請求項26に記載の圧力センサの製造方法。
【請求項33】
前記第1の方向と前記第2の方向とは、少なくとも略直交している、
ことを特徴とする請求項26に記載の圧力センサの製造方法。
【請求項34】
前記第1の方向および前記第2の方向は、前記第1の抵抗の前記第1の抵抗値における前記変化を最小化するように決定された任意の角度関係を有する、
ことを特徴とする請求項26に記載の圧力センサの製造方法。
【請求項35】
前記第1の形状は開口を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項36】
前記第1の形状は複数の開口を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項37】
前記第1の形状は開口を含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の圧力センサ。
【請求項38】
前記第1の形状は開口を含む、
ことを特徴とする請求項26に記載の圧力センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2011年2月16日出願の米国特許出願第13/029,114号の優先権を主張し、これを参照して本明細書に組み込んだものとする。
【背景技術】
【0002】
圧力センサは、いくつかの新型の製品への適用があり、この何年かで一般的なものになった。圧力センサは、自動車用、産業用、民生用および医療用品に利用され、需要が急増し、減少する気配がない。
【0003】
圧力センサは、一般には、フレームにより支持されたダイヤフラムを含む。圧力センサが圧力を検知したとき、ダイヤフラムは外形が変化することによって反応する。このことは、ダイヤフラム上の電子部品の1またはそれ以上の特性に変化をもたらす。これらの変化する特性は測定され得、該圧力から決定されうる。
【0004】
多くの場合、該電子部品は、ダイヤフラムの上に位置したホイートストン・ブリッジとして構成された抵抗である。ダイヤフラムは圧力に起因して歪曲するため、該抵抗の抵抗値は変化する。この変化はホイートストン・ブリッジの出力をもたらし、これにより圧力が測定されうる。
【0005】
あいにく、他の要素がこれらの素子(component)の特性に変化をもたらす。例えば、様々な層または他の素子は、抵抗のような素子に対して加わる応力をもたらし、これらの値を変化させる。また、圧力センサの製造に用いられる様々な層は、シリコンとは異なる熱膨張の係数を有しうる。圧力センサが温度変化するとき、これらの層は、該素子に対する異なる応力をもたらしうる。例えば、1又はそれ以上のこれらの層は、ホイートストン・ブリッジにおける抵抗に応力をもたらしうる。これらの応力は、それらの抵抗値を変化させ得、及び/又は、ダイヤフラムを変形させ得、それによって、圧力が加わっていないときでもホイートストン・ブリッジの出力をもたらす。入力圧力がないときのこの出力信号は、オフセットとして参照されうる。さらに、温度による応力の変化のため、該オフセットも温度に応じて変化し得、これは、オフセットの温度係数として参照される。
【0006】
該オフセットや他の不整合は、エラー、斜行圧測、および圧力センサの実用性の限界をもたらしうる。該オフセットおよびオフセットの温度係数に起因する該エラーを低減するのに、高価な外部補償が必要とされうる。
【0007】
よって、必要とされるのは、様々な層に起因する応力による変形が低減された素子および製造プロセスに含まれる素子を有する圧力センサを具備する回路、方法および装置である。
【発明の概要】
【0008】
結果的に、本発明の実施形態は、様々な層に起因する応力による変形が低減された素子および製造プロセスに含まれる素子を有する圧力センサを提供する。
【0009】
本発明の1つの典型的な実施形態では、第1の方向における第1の応力は、素子の特性における変化をもたらす。第2の方向における第2の応力が加えられることにより、該素子の特性における該変化が低減する。第2の方向は、該素子の特性を最小化するように定められた任意の方向でありうる。
【0010】
本発明の1つの典型的な実施形態では、該素子は拡散抵抗である。結晶シリコンに拡散された抵抗に対するこの影響の数学的な記載は、
図15に示される。本発明の他の実施形態では、該素子は、注入されたポリシリコン若しくは他のタイプの抵抗、キャパシタ、トランジスタ、ダイオード、又は他の能動若しくは受動素子でありうる。
【0011】
本発明の他の典型的な実施形態では、第1の応力は、該素子の上方のポリシリコン層に形成された形状(geometry)により生じる。本発明の他の実施形態では、第1の応力は、他の層における形状によって、圧力センサの一部として形成された他の能動又は受動素子によって、又は、デバイスパッケージから生じた影響のような他の影響によって、生じうる。
【0012】
本発明の他の典型的な実施形態では、該素子の上方のポリシリコン層に形成された形状のサイズ及び/又は外形は、第1の応力により生じた該素子の特性の変化が、第2の応力が加えられることによって低減されるように調整される。本発明の他の実施形態では、第2の応力は、他の層によって、圧力センサの一部として形成された他の能動又は受動素子によって、又は、デバイスパッケージから生じた影響のような他の影響によって、生じうる。
【0013】
本発明の多様な実施形態では、ポリシリコンや他の層に形成され、素子の変化を低減するような大きさに形成された形状は、多様な外形を有しうる。本発明の多様な実施形態では、これらの形状は、長方形、正方形、円形、又は他の外形を有しうる。本発明の多様な実施形態では、これらは、1又はそれ以上の開口又はギャップを有しうる。さらに、これらの形状は、典型的には近接するところ、応力に敏感な部材から離れて位置する。
【0014】
本発明の多様な実施形態は、1又はそれ以上の上記特徴と、以下に記載されたその他の特徴とを包含しうる。本発明の本質および利点の更なる理解は、以下の詳細な記載および添付図面を参照することにより得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ポリシリコン層に形成された形状に起因する第1の方向の第1の応力を受けた抵抗の側面図。
【
図2】ポリシリコン層に形成された形状に起因する第1の方向の第1の応力を受けた抵抗の上面図。
【
図3】第1の方向の第1の応力および第2の方向の第2の応力を受ける抵抗を描いた図。
【
図4】本発明の1つの実施形態に基づく素子の特性の変化を低減する方法のフローチャート。
【
図5】第1の方向の第1の応力および第2の方向の第2の応力を受ける抵抗を描いた図。
【
図6】本発明の1つの実施形態に基づく素子の特性の変化を低減する方法のフローチャート。
【
図7】本発明の1つの実施形態に基づくポリシリコン層に形成された形状を描いた図。
【
図8】本発明の1つの実施形態に基づくポリシリコン層に形成された他の形状を描いた図。
【
図9】本発明の1つの実施形態に基づく圧力センサのダイヤフラムの上に位置するホイートストン・ブリッジにおける抵抗を、線形構成における2つの抵抗対および折り畳み構造における他の2つの抵抗対と共に描いた図。
【
図10】本発明の1つの実施形態に基づく線形抵抗構造における抵抗対の上方に位置しうるポリシリコン形状を描いた図。
【
図11】本発明の1つの実施形態に基づく折り畳み抵抗構造における他の抵抗対の上方に位置しうるポリシリコン形状を描いた図。
【
図12】ポリシリコン形状を含み、線形抵抗構造及び折り畳み抵抗構造の双方における抵抗を包含するダイヤフラムの一部を描いた図。
【
図13】本発明の1つの実施形態に基づく線形構造における抵抗に接続するのに用いられた低抵抗領域を描いた図。
【
図14】本発明の1つの実施形態に基づく折り畳み構造における抵抗に接続するのに用いられた低抵抗領域を描いた図。
【
図15】抵抗の位置における応力のバランスを取ることにより、応力に起因する結晶シリコンに拡散された抵抗における変化を最小化するための数学的な記載を描いた図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、ポリシリコン層に形成された形状に起因する第1の方向の第1の応力を受けた抵抗の側面図である。この図は、他の図と同様、例示を目的とするものであり、本発明の為しうる実施形態およびクレームを制限するものではない。
【0017】
この図において、低濃度ドープのP型抵抗120は、N型ウエル130の中に位置しうる。ウエル130は、圧力センサのダイヤフラムとなりうる基板110の中に存在しうる。基板110は、P型部材で形成されうる。抵抗120は、ポリシリコン層140で覆われうる。
【0018】
ポリシリコン層140は、電荷トラップや電荷移動のような外部の影響から抵抗120を保護するためのシールドとして用いられうる。そのため、ポリシリコン層140は、ウエル130に電気的に接続され得、及び、適切なバイアスまたは電圧供給のような低インピーダンスに電気的に接続されうる。
【0019】
典型的には、圧力センサのダイヤフラム全体をポリシリコン層140で覆わないことが望ましい。このことは、圧力センサの感度を低減させうるからである。また、ポリシリコン層140の分離部を、該分離部が電気的に接続されないように、ダイヤフラムの上の各抵抗の上方に有することが望ましい。このようにして、各抵抗に関連付けられたポリシリコンは、該抵抗のウエルに個々に関係し得、それにより、電圧の影響を低減し、デバイスの整合を向上させる。そこで、典型的には、抵抗120の上方の領域のような保護されるべき特定の領域のみがポリシリコン層140で覆われる。
【0020】
あいにく、該層における応力および応力勾配に起因して、ポリシリコン層140に形成された形状は、本質的に、反り、撓り、又は外形が変形しうる。この撓りは、第1の方向における応力150をもたらしうる。この応力は、抵抗120の抵抗値を変化させうる。この変化は、圧力センサのオフセット信号をもたらしうる。ポリシリコン層140は、さらに、抵抗120を含むシリコンとは異なる膨張係数を有しうる。熱係数におけるこの変化は、抵抗120の抵抗値を温度に応じて変化させうる。非繰り返し性や、オフセットの温度ヒステリシスに知られる温度に応じて変化するオフセットのヒステリシスのような他の効果もまた同様である。そこで、本発明の実施形態は、抵抗120の抵抗値の変化のような素子の変化を低減する第2の応力を適用する。
【0021】
これらの例では、変化を受けた素子は、低濃度ドープのP型抵抗120である。本発明の他の実施形態では、該素子は、注入された抵抗のような他のタイプの抵抗、キャパシタ、ダイオード、トランジスタ、又は、他の能動もしくは受動素子でありうる。さらに、この例では、第1の応力は、ポリシリコン層140における形状から生じる。本発明の他の実施形態では、シリコン酸化物、シリコン窒化物、金属、又は、その他の層のような他の層が、抵抗120への応力をもたらしうる。本発明のさらに他の実施形態では、他の能動もしくは受動素子、又はデバイスパッケージが、抵抗120への応力をもたらしうる。再び、抵抗120は、圧力センサのダイヤフラムの中に位置するホイートストン・ブリッジにおける抵抗でありうる。このことや他に含まれる例では、抵抗および他の層はシリコンベースのプロセスの一部であるが、本発明の他の実施形態はシリコンゲルマニウムのような他のプロセスや、その他のタイプのプロセスにも有用である。
【0022】
図2は、ポリシリコン層に形成された形状に起因する第1の方向の第1の応力を受けた抵抗の上面図である。この例では、抵抗220はウエル230の中に存在する。ポリシリコン層240は、抵抗220を覆っており、抵抗220に対して第1の方向に応力250を加えている。
【0023】
再び、抵抗220に対して第1の方向に加えられた応力250は、抵抗220の抵抗値における変化をもたらしうる。これらの変化は、オフセット、熱的な不整合およびその他の誤差をもたらしうる。そこで、本発明の1つの実施形態は、この変化を低減するために第2の応力を第2の方向に加える。1つの例が以下の図に示される。
【0024】
図3は、第1の方向の第1の応力および第2の方向の第2の応力を受ける抵抗を描いている。この例では、第1の応力はポリシリコン層340に起因するが、本発明の他の実施形態では第1の応力は他の原因を有しうる。第2の方向における第2の応力360は、抵抗320の抵抗値の変化を低減するために加えられる。この特定の例においては、第2の応力は、第1の応力に対して少なくとも略直交するように示されているが、本発明の他の実施形態では、2つの応力は、素子の特性を最小化するように定められた異なる関係を有しうる。また、本発明の他の実施形態では、さらに第3の応力が抵抗320に対して加えられうる。本発明のさらに他の実施形態では、4又はそれ以上の応力が抵抗320に対して加えられうる。
【0025】
本発明の多様な実施形態では、第1の応力および第2の応力は、素子の変化を最小化することを試みて加えられる。本発明の他の実施形態では、2又はそれ以上の応力が、正味の変化が保たれるように、相対的に調整されうる。この変化は、これにより、他の応力の影響により、さらに相殺され、低減されうる。例えば、デバイスパッケージのような影響が応力をもたらすことが知られているとしたときに、応力が加わった該パッケージを補償するように、ポリシリコン層により生じた2又はそれ以上の応力が適用されうる。
【0026】
第2の応力が加えられたことによる変化を低減する方法を描いたフローチャートが、以下の図に示される。
【0027】
図4は、本発明の1つの実施形態に基づく素子の特性の変化を低減する方法のフローチャートである。アクト410では、第1の素子が、シリコンウエハの第1の面の上に形成される。この第1の素子は、抵抗またはその他のタイプの能動もしくは受動素子でありうる。ウエハは、ダイヤフラムもしくは圧力センサの他の部分または他の電子部品でありうる。アクト420では、第1の層が、第1の素子の上方に形成される。前述のとおり、これは、ポリシリコン層または他のタイプの層でありうる。アクト430では、第1の層がパターニングされて、第1の素子の上方に、第1の応力が該素子に対して第1の方向に加えられるように第1の形状を形成する。アクト440では、第2の応力が、第1の応力に起因する第1の素子における変化が第2の応力によって低減されるように、該素子に対して第2の方向に加えられる。
【0028】
本発明の多様な実施形態では、第2の応力は、1又はそれ以上の異なる原因を有しうる。例えば、第2の応力は、ポリシリコン層140において生じうる。本発明の他の実施形態では、第2の応力は、他の層、又は、他の能動もしくは受動素子において生じうる。本発明の他の実施形態では、第2の応力は、パッケージまたは他の起源のような他の起源から生じうる。本発明の特定の実施形態では、素子の上方のポリシリコンの形状は、第1の応力により生じた1又はそれ以上の素子の特性の変化を低減するために変形される。1つの例が以下の図に示される。
【0029】
図5は、第1の方向の第1の応力および第2の方向の第2の応力を受ける抵抗を描いている。この例では、ポリシリコン層540が、第2の方向における第2の応力560を生成するために、ある大きさに形成されている。前述のとおり、ポリシリコン層540は、第1の応力550を抵抗520に対して第1の方向に加える。第2の応力560を含むことは、抵抗520の抵抗値における変化を低減する。
【0030】
図6は、本発明の1つの実施形態に基づく素子の特性の変化を低減する方法のフローチャートである。アクト610では、素子がウエハの第1の面に形成される。アクト620では、第1の層が第1の素子の上方に形成される。アクト630では、第1の層がパターニングされて、第1の素子の上方に、第1の応力が該素子に対して第1の方向に加えられるように第1の形状を形成する。アクト640では、第1の形状がパターニングされて、素子の特性の変化が低減されるように、第2の応力を第1の素子に対して第2の方向に加える。
【0031】
上述の例では、ポリシリコン層540は立体幾何学(solid geometry)であるとして示される。本発明の他の実施形態では、これらの形状は、1又はそれ以上の開口を含みうる。これらの開口は、素子の特定の部分に対する直接的な応力にとって有用でありうる。それらは、注入、拡散、ボンディングのような他の製造工程において、又は、その他の理由においても有用でありうる。1つの例が以下の図に示される。
【0032】
図7は、本発明の1つの実施形態に基づくポリシリコン層に形成された形状を描いている。この形状は、抵抗720の上方に存在し、開口770を有する。この形状は、第1の方向における第1の応力750および第2の方向における第2の応力760を抵抗720にもたらす。2つの応力の正味の結果は、抵抗720の抵抗値の低減された変化となる。
【0033】
図8は、本発明の1つの実施形態に基づくポリシリコン層840に形成された他の形状を描いている。この例では、該形状は開口870を含む。前述のとおり、この形状は、第1の方向における第1の応力850および第2の方向における第2の応力860を抵抗820にもたらす。前述のとおり、第2の応力860は、素子820における変化を低減し、又は、消去する。
【0034】
再び、これらの抵抗は、圧力センサのダイヤフラムの上に位置するホイートストン・ブリッジにおける抵抗でありうる。これらの抵抗は、個々の抵抗であり得、又は、抵抗の直列もしくは並列の組み合わせの一部でありうる。例えば、これらは、ホイートストン・ブリッジの抵抗を形成する抵抗対における、2つの抵抗の一連の抵抗でありうる。1つの例が以下の図に示される。
【0035】
図9は、本発明の1つの実施形態に基づく圧力センサのダイヤフラムの上に位置するホイートストン・ブリッジにおける抵抗を描いている。この例では、抵抗対930が、検出ダイヤフラムの上部および下部に示されており、抵抗対940が、該ダイヤフラムの左側および右側に示されている。ダイヤフラムの上部および下部の抵抗対930は、一連の2つの線形抵抗で形成され、ダイヤフラムの左側および右側の抵抗対940は、2つの折り畳み抵抗で形成されている。この例では、ダイヤフラムの上および下に位置する抵抗は、第1のポリシリコン形状に関連付けられ、ダイヤフラムの左および右に位置する抵抗は、第2のポリシリコン形状に関連付けられる。いくつかの例が、以下の2つの図に示される。
【0036】
図10は、本発明の1つの実施形態に基づく抵抗対の上方に位置しうるポリシリコン形状を描いている。ポリシリコン形状1040は開口1070を含む。ポリシリコン形状1040は抵抗1020を覆っている。
【0037】
図11は、本発明の1つの実施形態に基づく他の抵抗対の上方に位置しうるポリシリコン形状を描いている。ポリシリコン形状1140は開口1170を含む。ポリシリコン形状1140は抵抗1120を覆っている。
【0038】
図12は、ポリシリコン形状1230及び1240を含むダイヤフラムの一部1210を描いている。これらのポリシリコン形状1230及び1240は、
図9の例における抵抗920を覆うのに用いられうる。
【0039】
本発明の多様な実施形態では、ダイヤフラム1210のようなダイヤフラムの上方にメタル配線を経由させることは、熱的ヒステリシスをもたらしうるため、好ましくない。そこで、P+部材で形成された極低抵抗領域が、抵抗920のような抵抗に接続するのに用いられうる。いくつかの例が以下の図に示される。
【0040】
図13は、本発明の1つの実施形態に基づく線形構造における抵抗対に接続するのに用いられた低抵抗領域を描いている。この例では、低抵抗領域1350及び1360は、抵抗1320と互いに接続し、抵抗1320を他の相互接続ライン(不図示)に接続するのに用いられる。
【0041】
図14は、本発明の1つの実施形態に基づく折り畳み構造における抵抗対に接続するのに用いられた低抵抗領域を描いている。この例では、低抵抗領域1450及び1460は、抵抗1420と互いに接続し、抵抗1420を他の相互接続ライン(不図示)に接続するのに用いられる。
【0042】
図15は、抵抗の位置における応力のバランスを取ることにより、応力に起因する結晶シリコンに拡散された抵抗における変化を最小化するための数学的な記載を描いている。
【0043】
本発明の実施形態の上記記載は、図示および説明を目的として示されたものである。本発明は、上述の実施形態がその全てではなく、又は、記載された厳格な型式に制限されるものではなく、また、上記示唆を踏まえて多くの改良および変更が可能なものである。実施形態は、発明の原理およびその実用的応用を最もよく説明するために選ばれて記載され、それによって、当業者が、予測される特定の用途に適用されるように、多様な実施形態で、且つ、多様な改良を伴って実施形態の発明をよく活用することを可能にしている。よって、発明は、以下のクレームの範囲内で、全ての改良物および均等物を含むと考えるとよい。