(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775622
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】液晶シャッタを備える電子機器および方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20150820BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20150820BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1333
G02F1/1347
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-98270(P2014-98270)
(22)【出願日】2014年5月12日
(62)【分割の表示】特願2011-199018(P2011-199018)の分割
【原出願日】2011年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-197203(P2014-197203A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2014年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
(74)【代理人】
【識別番号】100132595
【弁理士】
【氏名又は名称】袴田 眞志
(72)【発明者】
【氏名】土橋 守幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 晃司
(72)【発明者】
【氏名】服部 進
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 孝明
(72)【発明者】
【氏名】▲テイ▼ 懿
【審査官】
右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0315570(US,A1)
【文献】
特開2010−015015(JP,A)
【文献】
特開2006−220786(JP,A)
【文献】
特開2009−223219(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0077279(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0212555(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13 505
G02F 1/1333
G02F 1/1347
G09F 9/30 − 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブ・マトリクス駆動方式の液晶パネルと、
前記液晶パネルの表示画面の周囲に配置された縁枠の領域の中の部分的に透過率が高い領域でかつ前記液晶パネルの液晶を充填する領域を拡張した領域に配置された、パネル透過率の制御が可能な液晶シャッタと、
前記液晶シャッタの裏側に配置されたカメラ・モジュールと、
前記液晶シャッタのパネル透過率が第1のパネル透過率と該第1のパネル透過率よりも高い第2のパネル透過率のいずれかとなるように液晶の分子配列を制御する制御部と
を有する電子機器。
【請求項2】
前記液晶シャッタの電極がセグメント電極と拡張した前記液晶パネルの対向電極で構成されている請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記縁枠の色が黒で、前記液晶パネルの動作モードがノーマリ・ホワイト・モードで、前記液晶シャッタの動作モードがノーマリ・ブラック・モードである請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記液晶パネルの裏面に配置された裏面偏光板と、前記液晶パネルの表面に配置された表面偏光板とを有し、
前記液晶シャッタの液晶は前記液晶パネルの液晶と同一のシール材の区画に充填され、前記液晶シャッタは前記表面偏光板の偏光軸または前記裏面偏光板の偏光軸と偏光軸が同一方向となるように配置された第1の偏光板と該第1の偏光板と偏光軸が平行になるように配置された第2の偏光板を含む請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記液晶シャッタの電極が前記液晶パネルの駆動回路によりアクティブ・マトリクス駆動方式で制御される画素マトリクスの一部と延長した前記液晶パネルの対向電極で構成されている請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記表示画面の領域と前記縁枠の領域を平坦なガラス基板で覆ったフルフラット・デザインを採用する請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記縁枠が前記ガラス基板に印刷されたインクのパターンで形成されている請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記制御部は前記液晶シャッタを前記第2のパネル透過率に制御する際にバックライトの輝度を前記液晶パネルに画像を表示するときの最大輝度よりも一時的に上昇させる請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
前記電子機器がタブレット型コンピュータまたはスマートフォンである請求項1から請求項8のいずれかに記載の電子機器。
【請求項10】
アクティブ・マトリクス駆動方式の液晶パネルを備える電子機器に設けられたカメラ・モジュールを使用する方法であって、
前記液晶パネルの縁枠に全体的に透過率が低い領域と部分的に透過率が高い領域を配置するステップと、
前記部分的に透過率が高い領域でかつ前記液晶パネルの液晶を充填する領域を拡張した領域にパネル透過率の制御が可能な液晶シャッタを配置するステップと、
前記液晶シャッタの裏側に前記カメラ・モジュールを配置するステップと、
前記カメラ・モジュールの撮影状態に連動して前記液晶シャッタのパネル透過率が第1のパネル透過率または該第1のパネル透過率よりも高い第2のパネル透過率のいずれかとなるように制御するステップと
を有する方法。
【請求項11】
前記縁枠の色が黒で、前記液晶パネルの動作モードがノーマリ・ホワイト・モードで、前記液晶シャッタの動作モードがノーマリ・ブラック・モードである請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスを視覚的に露出させたり隠蔽したりする電子機器のシャッタ機構に関し、さらに詳細には信頼性に優れかつデザイン的な一体感を醸し出すことができるシャッタ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型パーソナル・コンピュータ(ノートPC)、タブレット型コンピュータ(タブレットPC)、または多機能携帯電話(スマートフォン)などにはフラット・ディスプレイ・パネルとして液晶ディスプレイ(LCD)を使用するものがある。従来はLCDの周囲にLCDと筐体内面の隙間を隠すために樹脂で形成した縁枠を設けていたが、近年表示画面とその周囲の縁枠に相当する部分(縁枠領域)を含む全体を平坦なガラスで覆ういわゆるフラット・デザインを採用するものが多くなってきている。
【0003】
たとえばフラット・デザインのLCDを採用するタブレットPCでは、ガラス基板の縁枠領域に黒インクで印刷をしている。このようなタブレットPCは、縁枠部分の色が全体的に黒であることがデザイン的に好まれる傾向にある。したがって黒を基調とする縁枠の色の一体感を優先する場合には、縁枠部分に視覚的に露出することで機能するデバイスを設けることが困難であった。
【0004】
特許文献1は、電源がオン状態およびオフ状態のいずれの場合であっても社名のような識別用の記号などの模様を表示することができる液晶表示装置を開示する。同文献には、模様を表示させる領域に部分的に光反射領域を設けさらにその部分の偏光板を一部除去することが記載されている。特許文献2は、利用者が周囲の明るさに応じてノーマリ−・ホワイト・モードとノーマリ・ブラック・モードを切り換えることができる液晶表示装置を提供する。同文献には、偏光板を回転させて表示モードを切り換えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−157297号公報
【特許文献2】特開2008−9019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フル・フラット・デザインの液晶ディスプレイであっても、縁枠の背後にカメラ・モジュールを配置する場合がある。その場合、カメラ・モジュールのレンズに光を取り入れるために、ガラス基板から縁枠のインクを部分的に除去して透過率を高めた開口を形成する必要がある。その結果、外側から開口の背後にあるレンズが白っぽくみえてしまい。縁枠との色彩上の一体感が損なわれてしまう。
【0007】
またユーザは、カメラ・モジュールが動作していないときであっても開口が開いているとカメラ・モジュールが動作して意図しない撮影が行われているのではないかという不安を感じることもある。カメラ・モジュールを使用しないときに開口を閉じ、かつ開口と縁枠との色彩上の一体感を醸し出すためには、開口に黒の機械的なシャッタを設ける方法が考えられる。しかし、機械的なシャッタは開閉動作を電気的に制御する場合に信頼性を維持することが困難であったり、スペース上の制約があったり、およびコスト増の要因になったりするなどの問題がある。
【0008】
そこで本発明の目的は、電子機器に信頼性の高いシャッタ機構を設けることにある。さらに本発明の目的は、デザイン上の一体感を維持しながら電子機器の表示画面の周囲に配置した縁枠にデバイスを設けることにある。さらに本発明の目的は、表示画面の周辺に設けた縁枠の利用性を高めることにある。さらに本発明の目的は、電子機器にカメラ・モジュールを設ける際に、ユーザにプライバシー上の安心感を与えることにある。さらに本発明の目的は、液晶シャッタを利用したデバイスの使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アクティブ・マトリクス駆動方式の液晶パネルと、液晶パネルの表示画面の周囲に配置された縁枠の領域の中の部分的に透過率が高い領域でかつ液晶パネルの液晶を充填する領域を拡張した領域に配置された、パネル透過率の制御が可能な液晶シャッタと、液晶シャッタの裏側に配置されたデバイスと、液晶シャッタのパネル透過率が第1の透過率と第1の透過率よりも高い第2の透過率のいずれかとなるように液晶の分子配列を制御する制御部とを有する電子機器を提供する。液晶シャッタは第1のパネル透過率となるように制御されたときは閉じたことに相当し、第2のパネル透過率となるように制御されたときは開いたことに相当する。
【0010】
デバイスは液晶シャッタが開いて表側との間に光の経路が形成されたときに少なくとも一部が機能するデバイスとすることができる。デバイスは、表側の光を受光して機能するカメラ・モジュールまたは裏側から光を放射して機能する状態表示デバイスとすることができる。液晶シャッタは、使用するときだけデバイスを視覚的に露出させ、使用しないときには視覚的に隠蔽することができる。液晶シャッタは機械的な機構を含まないため、機械式シャッタに比べて信頼性が高く厚さ方向に余分なスペースを必要とせず消費電力も少ない。したがって機械式シャッタに比べて、カメラ・モジュールの撮影頻度が高いときに特に有利になる。
【0011】
液晶シャッタは液晶パネルの液晶を充填する領域を拡張した領域に形成すれば、液晶シャッタを液晶パネルの製造プロセスの中で形成することができるため製造が容易になる。このとき液晶シャッタの電極をセグメント電極と液晶パネルの対向電極に連絡する対向電極で構成することができる。セグメント電極は画素マトリクスに比べて画素の開口率に起因したパネル透過率の低下がないので液晶シャッタが開いたときに高いパネル透過率を得る上で有利である。また、液晶シャッタの対向電極を独立させないで延長した液晶パネルの対向電極を利用すると、液晶シャッタの対向電極に対する配線を省略することができる。
【0012】
液晶シャッタの電極を液晶パネルの駆動回路によりアクティブ・マトリクス駆動方式で制御される画素マトリクスの一部と延長した液晶パネルの対向電極で構成することができる。この場合は、液晶パネルの画素マトリクスを拡張して液晶シャッタの電極を形成することができるため製造プロセスが容易になり、かつ液晶シャッタの数が多くなってもその配置や形状に容易に対応できる。さらに液晶シャッタの開閉制御に、液晶パネルの制御回路を利用することができるのでセグメント電極の場合のように液晶パネルの制御回路とは別の制御回路を設ける必要がなくなる。
【0013】
表示画面の周囲に配置された縁枠は、ガラス基板に印刷されたインクのパターンで形成することができる。縁枠を形成するガラス基板が液晶パネルの一部を構成する場合は、液晶パネル以外のガラス基板を除去することができるので、重量および厚さの点で有利になる。制御部はデバイスの使用状態に連動して液晶シャッタを制御することができる。
【0014】
デバイスはカメラ・モジュールとすることができる。液晶シャッタは、カメラ・モジュールを使用するときだけレンズを露出させ、使用しないときにはレンズを隠すことができるため、ユーザはカメラ・モジュールによる意図しない撮影に対する安心感を得ることができる。制御部は、カメラの動作に連動して液晶シャッタの開閉を制御すれば、ユーザを液晶シャッタの操作に関する煩わしさから解放することができるとともに、不用意に撮影されない安心感を与えることができる。制御部は液晶シャッタを第2のパネル透過率に制御する際にバックライトの輝度を液晶パネルに画像を表示するときの最大輝度よりも一時的に上昇させることができる。
【0015】
デバイスは電子機器の動作状態を表示するインディケータとしたり電子ペーパとしたりすることができる。液晶シャッタは、状態表示デバイスを使用するときだけ表示部分を視覚的に露出させ、使用しないときには表示部分を視覚的に隠すことができるため縁枠の色に適応するデザインを実現することができる。電子機器は、全体を平坦なガラスで覆うフラット・デザインを採用したタブレット型コンピュータまたはスマートフォンとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、電子機器に信頼性の高いシャッタ機構を設けることができた。さらに本発明により、デザイン上の一体感を維持しながら電子機器の表示画面の周囲に配置した縁枠にデバイスを設けることができた。さらに本発明により、表示画面の周辺に設けた縁枠の利用性を高めることができた。さらに本発明により、ユーザにプライバシー上の安心感を与えながら電子機器にカメラ・モジュールを設けることができた。さらに本発明により、液晶シャッタを利用したデバイスの使用方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】液晶ディスプレイと液晶シャッタを備える電子機器の平面図である
【
図3】シール材の内側に配置されたアレイ基板上の画素マトリクスとセグメント電極の平面図である。
【
図4】電子機器の概略の構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】液晶パネルと液晶シャッタの電気的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】電子機器の動作状態と液晶シャッタの動作状態を説明する図である。
【
図7】液晶シャッタの電極を画素マトリクスで構成する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、液晶ディスプレイと液晶シャッタを備える電子機器の平面図で、
図2は
図1のA−A矢視を示す断面図である。
図3は、シール材の内側に配置されたアレイ基板上の画素マトリクスとセグメント電極の平面図である。電子機器10は、タブレットPC、多機能携帯電話、またはノートPCのディスプレイ側のユニットとすることができる。電子機器10がノートPCの場合は、図示しないシステム側の筐体も含むことになる。表示画面13の周囲には黒色の縁枠15が形成されている。
【0019】
縁枠15の平面的な領域には、周囲よりも透過率が高い領域となっているシャッタ開口17、19が形成されている。シャッタ開口17、19の開閉は、シャッタ開口17、19の裏側に配置された液晶のパネル透過率を変化させて制御する。パネル透過率は導光板69から裏面偏光板53に入射した光が、液晶パネル87および表面偏光板55を透過して外に放射される割合をいう。なお、本明細書では、表示画面の方向を表側または表面といい、導光板69の方向を裏側または裏面ということにする。
【0020】
図2、
図3において、液晶シャッタ100は液晶ディスプレイ81のアレイ基板85とカラー・フィルタ(CF)基板83を拡張して、その周囲をシール材61で囲み、その中に液晶65を注入することで液晶ディスプレイ81と一体的に形成されている。液晶ディスプレイ81と液晶シャッタ100の複合体は筐体52の内部に収納されている。液晶ディスプレイ81は、バックライトLED67、バックライトLED67から側面に放射された光を多重反射させて面光源として裏面偏光板53に放射する導光板69、裏面偏光板53、液晶パネル87、および表面偏光板55などで構成されている。
【0021】
表面偏光板55は液晶シャッタ100を構成する領域まで延びている。裏面偏光板53は、液晶ディスプレイ81を構成する領域にだけ配置されている。表示画面13の表面は表面偏光板55で構成されている。表面偏光板55の表面には必要に応じて保護用のコーティングを施すこともできる。液晶ディスプレイ81は、表側に配置されるガラス基板と液晶パネル87を構成する表面ガラス基板51を兼用している。
【0022】
ただし、本発明は表面偏光板55の外側にさらに別のガラス基板を配置するような液晶ディスプレイに適用することもできる。液晶パネル87は、アレイ基板85、CF基板83、アレイ基板85とCF基板83の間に挟まれた液晶65、液晶を封じ込めるシール材61、およびアレイ基板85とCF基板83の間隔を維持するスペーサ(図示せず。)などで構成されている。
【0023】
アレイ基板85は、裏面ガラス基板57、画素マトリクス59、および配向膜(図示せず。)などで構成されている。CF基板83は表面ガラス基板51、カラー・フィルタ58、対向電極63、および配向膜(図示せず。)などで構成されている。表面ガラス基板51の裏面には黒色のインクによるスクリーン印刷で縁枠15が形成されている。縁枠15は、表面ガラス基板51の表面に形成してもよい。縁枠15は、液晶パネル87の周辺部を隠す役割を果たしている。シャッタ開口17、19は、縁枠15からインクを除去して形成している。したがって、表面偏光板55の表面に相当する表示画面13、縁枠15、およびシャッタ開口17、19は見かけ上同一の表面上にあり物理的な一体感を醸し出している。
【0024】
画素マトリクス59は液晶ディスプレイ81を構成する領域にだけ形成されているが、対向電極63は液晶シャッタ100を構成する領域まで延びている。すなわち、液晶シャッタ100は液晶パネル87の対向電極63を延長して利用する。こうすることで、液晶シャッタ100に単独で対向電極を設けるよりも電源回路205(
図5参照)までの配線を省略することができるので都合がよい。
【0025】
液晶ディスプレイ81は、電気アドレス方式にアクティブ・マトリクス駆動を採用する。液晶ディスプレイ81は、液晶表示形式にツイスト・ネマティック(TN)型を採用し、動作モードに画素電極に電圧が印加されないときにパネル透過率を最大にするノーマリ・ホワイト・モードを採用している。TN型では理論的に画素電極に電圧が印加されないときにパネル透過率を最小にするノーマリ・ブラック・モードを採用することもできるが、通常はコントラストに優れたノーマリ・ホワイト・モードを採用している。
【0026】
アレイ基板85の配向膜とCF基板83の配向膜は、画素電極に電圧が印加されないときの液晶分子の配列方向を決めるための溝が相互に直角になるようにラビング処理されている。表面偏光板55の偏光軸はCF基板83の配向膜の溝方向に一致し、裏面偏光板53の偏光軸はアレイ基板85の配向膜の溝方向に一致する。すなわち、液晶ディスプレイ81は、表面偏光板55と表面偏光板53の偏光軸が直角になるように配置されている。
【0027】
液晶シャッタ100は、液晶ディスプレイ81と共通する要素とそれから独立した要素で構成されている。共通する要素は、裏面ガラス基板57、液晶65、対向電極63、アレイ基板85の配向膜、CF基板83の配向膜、表面ガラス基板51、および表面偏光板55を含む。独立した要素は、裏面ガラス基板57の下に配置された裏面偏光板103、セグメント電極105、および縁枠15に形成されたシャッタ開口17を含む。アレイ基板85の配向膜は、セグメント電極105の上を越える位置まで延びており、CF基板の配向膜はシャッタ開口17の上を越える位置まで延びており、ともに液晶ディスプレイ81を構成する領域と同じ方向にラビングされている。
【0028】
したがって、液晶シャッタ100の液晶表示形式は液晶ディスプレイ81と同様にTN型となる。裏面偏光板103は表面偏光板55に対して、偏光軸が平行になるように配置されており、液晶シャッタ100はセグメント電極105に電圧が印加されないときにパネル透過率が最小になるノーマリ・ブラック・モードで動作する。液晶シャッタ100は、シャッタ開口17、19の領域全体にわたって透過率が2値で制御されるため、ノーマリ・ブラック・モードを採用してもコントラストの問題を生じさせない。液晶シャッタ100をノーマリ・ブラック・モードにするためには、裏面偏光板53を液晶シャッタ100の領域まで延ばし、表面偏光板55を液晶ディスプレイ81の領域にだけ配置し、液晶シャッタ100を構成する領域に裏面偏光板103の偏光軸と平行になる偏光板を配置してもよい。
【0029】
裏面偏光板103の裏側にはカメラ・モジュール101が配置されている。カメラ・モジュール101は、イメージ・センサおよび画像処理回路などで構成され、被写体の像をディジタル・データに変換してシステム150(
図4参照)に送る。シャッタ開口17の形状は、カメラ・モジュール101のレンズが集光に支障のない範囲で最低の大きさにすることが望ましい。こうすることでシャッタ開口17が開いたときにカメラ・モジュール101のレンズ以外の部分を縁枠15の裏側に隠すことができる。
【0030】
図3において、シール材61で囲まれた領域は液晶ディスプレイ81と液晶シャッタ領域102に区分されている。液晶シャッタ領域102において、セグメント電極105はシャッタ開口17の下に配置され、セグメント電極107はシャッタ開口19の下に配置される。セグメント電極105、107は、画素マトリクス59の画素電極と同一のレイヤーに透明導電膜(ITO)で形成されている。シャッタ制御回路207(
図5参照)は、セグメント電極105と対向電極63の間に交流電圧を印加することでシャッタ開口17の開閉を制御し、セグメント電極107と対向電極63の間に交流電圧を印加することでシャッタ開口19の開閉を制御する。
【0031】
液晶シャッタ100の電極にセグメント電極105、107を使用すると、後に説明する画素マトリクスを使用する方法に比べて、画素の開口率に起因するパネル透過率の低下がないので有利である。セグメント電極107とシャッタ開口19を含んで構成される液晶シャッタの構成は、裏面偏光板103の裏側に状態表示デバイス151(
図4参照)を配置することを除いて液晶シャッタ100と同一である。したがって、以後の説明ではセグメント電極107とシャッタ開口19を含んで構成される液晶シャッタの構造も液晶シャッタ100ということにする。
【0032】
シャッタ開口17、19を開くときは、シャッタ制御回路207がシャッタを開く間セグメント電極105、107と対向電極63の間に個別に連続して交流電圧を印加する。この点で、液晶シャッタ100の電気アドレス方式は、複数のエレメントで構成されたセグメント電極を、各エレメントに表示期間中個別に電圧を印加するスタティック駆動の範疇に含めることができる。
【0033】
図4は、電子機器10の概略の構成を示す機能ブロック図である。システム150は、CPU、メイン・メモリ、チップセット、HDD、および電源回路などのハードウェアと、OS、デバイス・ドライバ、アプリケーション・プログラムなどのソフトウェアで構成されている。システム150には、液晶ディスプレイ81、液晶シャッタ100、カメラ・モジュール101、および状態表示デバイス151が接続される。
【0034】
電子機器10は、すべての機能を発揮することができるパワー・オン状態、すべての機能が停止するパワー・オフ状態、一部の機能を維持したり短時間でパワー・オン状態に遷移したりすることができるサスペンド状態といった複数のパワー・ステートを備えている。液晶ディスプレイ81、液晶シャッタ100、カメラ・モジュール101、および状態表示デバイス151、は、パワー・オン状態のとき以外は電力が停止する。状態表示デバイス151はLEDで構成されたインディケータとすることができる。状態表示デバイス151は、無線モジュールの動作状態、HDDに対するアクセス状態、バッテリィの充電状態などのように電子機器がパワー・オン状態のときに必要な情報を表示する。
【0035】
図5は液晶パネル87と液晶シャッタ100の電気的な構成を示す機能ブロック図である。液晶パネル87は、画素マトリクス59、信号線駆動回路201、走査線駆動回路203、電源回路205、基準電圧回路207、および信号制御回路209を含んで構成されている。信号制御回路209は、システム150から受け取ったRGBデータ信号から液晶パネル87を動作させるために必要な制御信号を生成して、信号線駆動回路201および走査線駆動回路203に送る。基準電圧回路207は、階調電圧を生成するための複数の値の基準電圧を信号線駆動回路201に送る。電源回路205は、液晶ディスプレイ81および液晶シャッタ100に電力を供給し、さらに、画素マトリクス59に基準電位を提供する。
【0036】
画素マトリクス59は、図では3×3の画素91を示しているが実際には、画素規格に適合した複数の画素が走査信号線と表示信号線の交差部分に形成される。各画素91は、薄膜トランジスタ(TFT)、画素電極、液晶容量、および補助容量などで構成される。液晶容量は、画素電極と電源回路205に接続された対向電極63との間に形成される。補助容量は補助容量線61で電源回路205に接続される。液晶ディスプレイ81では、システム150から受け取ったRGBデータ信号、同期信号、およびクロック信号に基づいて、信号線駆動回路201と走査線駆動回路203が画素マトリクスを線順次走査してRGBデータ信号を各画素に書き込む。
【0037】
液晶シャッタ100においては、セグメント電極105、107がそれぞれシャッタ制御回路207に接続されている。セグメント電極105、107は対向電極63との間に液晶を挟んで液晶容量を構成する。シャッタ制御回路207は液晶シャッタ100の一部を構成し、電子機器10がパワー・オン状態のときにシステム150からの指示に応じて、セグメント電極105、107に60Hzの交流電圧を印加したり停止したりする。液晶シャッタ100の動作に交流電圧を使用するのは、画素マトリクス59をフレーム反転駆動して液晶の劣化を防止するのと同じ理由である。したがって、セグメント電極105、107は、画素マトリクス59とは独立した動作をする。セグメント電極105、107は、画素マトリクス59のように線順次走査をすることがないので、補助容量を設ける必要がない。
【0038】
シャッタ制御回路207は、信号線駆動回路201が画素電極に階調電圧を印加するのとは異なり、異なる透過率を得るための2つの電圧値のいずれかだけを印加する。2値の電圧は、階調電圧の中から選択した任意の2つの電圧値としてもよいが、本実施の形態ではパネル透過率を最大にする電圧値と最小にする電圧値のいずれかだけを印加する。シャッタ制御回路207はノーマリ・ブラック・モードの液晶シャッタ100を開く間、セグメント電極105、107にパネル透過率を最大にする電圧を印加する。
【0039】
[液晶シャッタの動作]
つぎに、液晶シャッタ100の動作を説明する。
図6は、電子機器10の動作状態と液晶シャッタ100の動作状態を説明する図である。
図6(A)は、電子機器10がパワー・オフ状態またはサスペンド状態のときの動作状態を示し、
図6(B)、(C)はパワー・オン状態のときの動作状態を示している。
【0040】
システム150の電力がパワー・オフ状態またはサスペンド状態のときは、液晶ディスプレイ81の電力が停止するため、
図6(A)に示すように、パワー・オフ状態の液晶ディスプレイ81は表示画面13が黒に近いグレーになる。液晶ディスプレイ81がノーマリ・ホワイト・モードであるにもかかわらず表示画面13が黒に近いグレーになっている理由は、カラー・フィルタ58が表面から入射する光を吸収したり、カラー・フィルタ58を透過した光がさらに導光板69を透過して反射しなくなったりするためである。
【0041】
またシステム150の電力がパワー・オフ状態またはサスペンド状態のときは、液晶シャッタ100の電力も停止するため、ノーマリ・ブラック・モードの液晶シャッタ100は閉じて黒になり、シャッタ開口17、19は色彩的に縁枠15の色と同調する。ユーザはカメラ・モジュール101が配置されているシャッタ開口17が閉じていることで不用意に撮影されないという安心感を得ることができる。
【0042】
つぎに、
図6(B)に示すようにシステム150がパワー・オン状態になると、液晶ディスプレイ81および液晶シャッタ100に電力が供給され表示画面13には画像が表示される。状態表示デバイス151は、システム150がパワー・オン状態になると同時に動作を開始する。シャッタ制御回路207には、電子機器10がパワー・オン状態になると同時に電力が供給される。システム207は、パワー・オン状態になったことに連動してシャッタ開口19を開くためにシャッタ制御回路207に開信号を送る。
【0043】
開信号を受け取ったシャッタ制御回路207は、セグメント電極107にパネル透過率を最大にする電圧を印加する。その結果、
図6(B)に示すようにシャッタ開口19の背後に配置された状態表示デバイス151が視覚的に露出してユーザがLEDの発光状態を認識できるようになる。以後、シャッタ制御回路207はシステム150から閉信号を受け取るまでセグメント電極107に同じ電圧を印加し続ける。
【0044】
この時点ではカメラ・モジュール101を使用しないので、システム150はシャッタ開口17を閉じたままにしている。つづいて、ユーザがカメラ・モジュール101を使用するためにシステム150に指示する。システム150はカメラ・モジュール10に動作信号を送るとともに、シャッタ開口17を開くためにシャッタ制御回路207に開信号を送る。開信号を受け取ったシャッタ制御回路207は、セグメント電極105にパネル透過率を最大にする電圧を印加する。その結果、
図6(C)に示すようにセグメント開口17の背後に配置されたカメラ・モジュール101のレンズが視覚的に露出して撮影可能な状態になる。
【0045】
システム150は、つづいてカメラ・モジュール101に撮影を開始するための信号を送る。システム150は撮影が終了するまで、シャッタ開口17を開いた状態にする。ユーザは撮影が終了するとシステム150に指示する。システム150はカメラ・モジュール101の動作を停止するとともに、シャッタ開口17を閉じるためにシャッタ制御回路207に閉信号を送る。閉信号を受け取ったシャッタ制御回路207はセグメント電極105にパネル透過率を最小にする電圧を印加する。このようにユーザがカメラ・モジュール101に対して撮影操作をする指示をシステムに行うと、シャッタ開口17はそれに連動して開閉動作をする。
【0046】
[撮影フラッシュ]
システム150は、カメラ・モジュール101の静止画像の撮影動作に連動して、表示画面13を撮影フラッシュとして利用することもできる。バックライトLED67は、寿命を考慮して実用的な最大輝度を設定することになっているが、一時的であれば液晶ディスプレイ81が画像を表示するときの最大輝度よりも高い輝度に設定することができる。
【0047】
たとえば、表示画面13の最大輝度を400nitとしたときに、静止画像の撮影のタイミングのときだけ表示画面13の輝度が白表示で600nitになるようにバックライトLED65の電流を制御し、撮影が終了してから400nitに戻すようにすることができる。カメラ・モジュール101が静止画像を撮影するときは、シャッタ開口17はそれに連動して開閉動作をするようになっている。したがって、バックライトLED67の輝度は、シャッタ開口17の開閉のタイミングに合わせて制御することができる。
【0048】
[他の実施態様]
本発明では、シャッタ開口17、19および縁枠15に対して表面状態および色彩においてデザイン的な一体感を実現する。表面状態に関しては、シャッタ100および縁枠15を表面ガラス基板51の内側に配置して表面が表示画面13と同一平面上に存在するようにしている。ただし、本発明は、縁枠がガラス基板とは別部材で構成されている場合にも当該縁枠を切り抜いてシャッタ開口17、19を形成し、そこに液晶シャッタを配置した信頼性の高いシャッタ機構を実現することができる。
【0049】
色彩に関しては、縁枠の色、液晶シャッタ100の動作モード、および液晶シャッタ100の裏側に配置されるデバイスの種類により同調のさせ方が異なってくる。デバイスがカメラ・モジュール101のときはパワー・オフ状態またはサスペンド状態のときにシャッタ開口17が閉じることがユーザの安心感につながるので液晶シャッタの動作モードはノーマリ・ブラック・モードが望ましい。本実施の形態ではこの場合に、縁枠15の色を黒にして電子機器10がパワー・オフ状態またはサスペンド状態のときと、パワー・オン状態でシャッタ開口17、19が閉じている状態のときのいずれでも色彩上の一体感を醸し出すことができる。
【0050】
デバイスが、パワー・オフ状態またはサスペンド状態のときに表示させる状態表示デバイスの場合は、液晶シャッタ100の動作モードをノーマリ・ホワイト・モードにする必要がある。このような状態表示デバイスとしては、バッテリィの充電状態、電子機器のパワー・ステート、またはAC/DCアダプタの接続状態などを表示するインディケータがある。また、状態表示デバイスが黒白表示の電子ペーパの場合は、縁枠を白にするとパワー・オフ状態またはサスペンド状態のときに縁枠とシャッタ開口19の内部の電子ペーパの背景の色を同一にして色彩上の一体感を醸し出すことができる。
【0051】
上記実施の形態では、セグメント電極107にパネル透過率を最小にする電圧値と最大にする電圧値を印加してシャッタ開口17、19の開閉を制御したが、本発明はこれらとは異なる2値の電圧を印加することもできる。たとえば、縁枠の色がグレーの場合は、パネル透過率を最小にする電圧値に代えて縁枠の色に近い色となる電圧値を印加することもできる。
【0052】
本実施の形態では液晶シャッタ100を液晶ディスプレイ81の要素と共通する要素を利用して構成する例を説明したが、本発明は液晶シャッタの要素をすべて液晶ディスプレイの要素から独立させることもできる。また液晶シャッタ100の開閉制御をセグメント電極105、107によるスタティック駆動を例示して説明したが、アクティブ・マトリクス駆動を採用することもできる。
【0053】
図7は、液晶シャッタにアクティブ・マトリクス駆動を採用する例を示す図である。液晶パネル201は、液晶シャッタ領域203を構成する領域まで画素マトリクス211が拡大して形成されている。液晶はシール材205で囲まれた領域に充電される。配向膜のラビング方向、偏光板の偏光軸の方向、シャッタ開口などは
図2で説明したのと同じ構成にする。ただし、液晶シャッタ領域203には、カラー・フィルタ58を設ける必要はない。液晶シャッタ領域203を構成する画素マトリクス211には、シャッタ開口17に対応する位置に画素領域207を定義し、シャッタ開口19に対応する位置には画素領域209を定義する。
【0054】
信号制御回路209は、すべての画素について線順次走査を実行して液晶ディスプレイ201と液晶シャッタ領域203のパネル透過率を制御する。システム150は、画素領域207、209に囲まれた画素電極には、常に2値の階調電圧のいずれかを印加するようなRGBデータ信号を信号制御回路209に送る。システム150は液晶シャッタ領域203に含まれる画素の中で、画素領域207、209以外の領域の画素電極には、常にパネル透過率が最小にする階調電圧を印加するようなRGBデータ信号を信号制御回路209に送る。液晶シャッタの電極に画素マトリクス211を採用すれば、アレイ基板を製造するプロセスの延長で画素マトリクスを形成できるためシャッタ開口の数が多くなってもコストを抑えることができる。
【0055】
また、システム150が信号制御回路209に供給するRGBデータを変更するだけで任意の位置に任意の形状の液晶シャッタを形成することができる。さらに、信号制御回路209とは別にシャッタ制御回路207を設ける必要がない。本実施の形態では、液晶表示形式にノーマリ・ホワイト・モードで使用するTN型を採用し、液晶シャッタには偏光板の偏光軸の方向を変更してノーマリ・ブラック・モードを採用したが、本発明は液晶ディスプレイおよび液晶シャッタの液晶表示形式にノーマリ・ブラック・モードで使用するIPS(In-Plane Switching)型またはVA(Vertical Alignment)型を採用することもできる。
【0056】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0057】
10 電子機器
13 表示画面
15 縁枠
17、19 シャッタ開口
51 表面ガラス基板
53、103 裏面偏光板
55 表面偏光板
57 裏面ガラス基板
58 カラー・フィルタ
59 画素マトリクス
61 シール材
63 対向電極
65 液晶
67 バックライトLED
69 導光板
81 液晶ディスプレイ
83 CF基板
85 アレイ基板
87 液晶パネル
91 画素
100 液晶シャッタ
101 カメラ・モジュール
105、107 セグメント電極