(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
飛行体と、該飛行体に設けられた航行手段と、位置測定部と、前記航行手段を制御する飛行制御部と、前記位置測定部と前記飛行制御部とを制御する主演算制御部とを具備し、前記位置測定部は飛行体の地上座標を測定するGPS装置と、飛行体下方のデジタル画像を撮像する鉛直カメラと、該鉛直カメラを傾斜させる傾動機構部とを有し、該鉛直カメラにより撮像した2地点の画像と、前記GPS装置により測定した2地点の地上座標と、前記鉛直カメラの焦点距離に基づき前記飛行体の地表からの高さ距離を測定し、前記主演算制御部は測定された少なくとも3点の高さ距離に基づき地表の傾斜角を演算し、前記飛行体が傾斜面を飛行する場合は、前記傾動機構部が前記鉛直カメラの光軸が傾斜面に対して垂直となる様に前記鉛直カメラを傾斜させることを特徴とする飛行体の飛行制御システム。
前記位置測定部は、第1地点から第2地点迄連続して画像を取得し、第1地点で取得した画像から特徴点を抽出し、第1地点から第2地点に至る画像中で画像トラッキングにより第2地点での画像中に第1地点の画像中の特徴点を特定し、第1地点の画像と第2地点の画像に基づき、前記特徴点に対応する地表の測定点の3次元測定を行う請求項1の飛行体の飛行制御システム。
前記飛行体は、飛行体の傾斜を検出する姿勢検出器を具備し、該姿勢検出器は前記鉛直カメラの撮像時の前記飛行体の傾斜を検出し、前記位置測定部は、前記飛行体の傾斜に基づき第1地点の画像と第2地点の画像とを絶対標定する請求項1の飛行体の飛行制御システム。
【背景技術】
【0002】
上空からの写真撮影、或は上空からの測量では、地上からの写真撮影、地上での測量では得られない情報が得られ、或は人の立入れない場所の写真撮影、測量が困難な場所の情報が得られる。又、近年、遠隔操作される小型飛行機、小型ヘリコプタ等の小型飛行体の性能向上、遠隔操作技術の向上、更に撮像装置の性能の向上、小型化の促進等により小型飛行体に撮像装置を搭載し、遠隔操作により上空からの写真撮影が無人で行える様になっている。更に、予め設定した飛行スケジュールに従い、自律飛行も可能となっている。
【0003】
小型飛行体を遠隔操作により飛行させる場合、或は自律飛行させる場合、飛行中の小型飛行体自体の正確な位置情報が必要となる。
【0004】
位置情報を取得する手段として、近年ではGPS位置測定装置が普及しており、簡便に地心座標(平面位置情報)が測定できる様になっている。更に、GPS位置測定装置の小型軽量化が進み、飛行体等にも容易に設置することが可能となっている。
【0005】
GPS位置測定装置は、地心座標については高い精度で測定することができるが、地表からの高さについては測定精度が悪い。小型飛行体が飛行する地域は、必ずしも平坦とは限らず、地表の起伏、或は構築物、建造物のある場合では、地表の起伏、或は構築物、建造物に合わせて小型飛行体の高度を制御する必要がある。
【0006】
この為、高さ測定の精度を上げるには、別途、地表迄の高さを測定する測定装置を用意する必要がある。ところが、小型飛行体の飛行能力から、小型飛行体の搭載能力は、数百グラムと極めて限定されており、種々の測定機器を搭載することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は斯かる実情に鑑み、簡便に而も高精度に飛行体の高さ位置の測定を可能とし、無人飛行時の飛行体の飛行高度を適正に制御可能とした飛行制御システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、飛行体と、該飛行体に設けられた航行手段と、位置測定部と、前記航行手段を制御する飛行制御部と、前記位置測定部と前記飛行制御部とを制御する主演算制御部とを具備し、前記位置測定部は飛行体の地上座標を測定するGPS装置と、飛行体下方のデジタル画像を撮像する鉛直カメラと
、該鉛直カメラを傾斜させる傾動機構部とを有し、該鉛直カメラにより撮像した2地点の画像と、前記GPS装置により測定した2地点の地上座標と、前記鉛直カメラの焦点距離に基づき前記飛行体の
地表からの高さ距離を測定し、前記主演算制御部は測定された
少なくとも3点の高さ距離に基づき
地表の傾斜角を演算し、前記飛行体が傾斜面を飛行する場合は、前記傾動機構部が前記鉛直カメラの光軸が傾斜面に対して垂直となる様に前記鉛直カメラを傾斜させる飛行体の飛行制御システムに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記位置測定部は、第1地点から第2地点迄連続して画像を取得し、第1地点で取得した画像から特徴点を抽出し、第1地点から第2地点に至る画像中で画像トラッキングにより第2地点での画像中に第1地点の画像中の特徴点を特定し、第1地点の画像と第2地点の画像に基づき、前記特徴点に対応する地表の測定点の3次元測定を行う飛行体の飛行制御システムに係るものである。
【0011】
又本発明は、前記主演算制御部には、飛行計画データが設定され、該主演算制御部は前記飛行計画データに基づき前記飛行体の飛行コース、
地表からの飛行
高さを制御する飛行体の飛行制御システムに係るものである
。
【0012】
又本発明は、前記飛行体は前方の画像を取得する前視カメラを具備し、前記主演算制御部は前記前視カメラが取得した画像から前方の障害物を判断し、障害物の回避を行う飛行体の飛行制御システムに係るものである。
【0013】
又本発明は、前記飛行体は、飛行体の傾斜を検出する姿勢検出器を具備し、該姿勢検出器は前記鉛直カメラの撮像時の前記飛行体の傾斜を検出し、前記位置測定部は、前記飛行体の傾斜に基づき第1地点の画像と第2地点の画像とを絶対標定する飛行体の飛行制御システムに係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、飛行体と、該飛行体に設けられた航行手段と、位置測定部と、前記航行手段を制御する飛行制御部と、前記位置測定部と前記飛行制御部とを制御する主演算制御部とを具備し、前記位置測定部は飛行体の地上座標を測定するGPS装置と、飛行体下方のデジタル画像を撮像する鉛直カメラと
、該鉛直カメラを傾斜させる傾動機構部とを有し、該鉛直カメラにより撮像した2地点の画像と、前記GPS装置により測定した2地点の地上座標と、前記鉛直カメラの焦点距離に基づき前記飛行体の
地表からの高さ距離を測定し、前記主演算制御部は測定された
少なくとも3点の高さ距離に基づき
地表の傾斜角を演算し、前記飛行体が傾斜面を飛行する場合は、前記傾動機構部が前記鉛直カメラの光軸が傾斜面に対して垂直となる様に前記鉛直カメラを傾斜させるので、地形の変化がある場所でも適正な自律飛行が可能となる。
【0015】
又本発明によれば、前記位置測定部は、第1地点から第2地点迄連続して画像を取得し、第1地点で取得した画像から特徴点を抽出し、第1地点から第2地点に至る画像中で画像トラッキングにより第2地点での画像中に第1地点の画像中の特徴点を特定し、第1地点の画像と第2地点の画像に基づき、前記特徴点に対応する地表の測定点の3次元測定を行うので、地表面の画像を適正な状態で撮影できると共に地表面の3次元データを合わせて取得できる
。
【0016】
又本発明によれば、前記飛行体は前方の画像を取得する前視カメラを具備し、前記主演算制御部は前記前視カメラが取得した画像から前方の障害物を判断し、障害物の回避を行うので、障害物のある場所でも、自律飛行が可能である。
【0017】
又本発明によれば、前記飛行体は、飛行体の傾斜を検出する姿勢検出器を具備し、該姿勢検出器は前記鉛直カメラの撮像時の前記飛行体の傾斜を検出し、前記位置測定部は、前記飛行体の傾斜に基づき第1地点の画像と第2地点の画像とを絶対標定するので、撮影時に飛行体が傾斜していた場合でも、精度の高い高度測定、地表の3次元測定が可能となる等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0020】
先ず、
図1に於いて、本発明に係る飛行体の飛行高度制御システムの概略を説明する。
【0021】
図1中、1は自律飛行する飛行体、2は地上に設置される基地制御装置であり、該基地制御装置2は、前記飛行体1とデータ通信可能であり、前記飛行体1の飛行の制御、飛行計画の設定、変更、前記飛行体1が収集した情報を保存、管理する。
【0022】
前記飛行体1は、例えば自律飛行する小型飛行体としてのヘリコプタである。該ヘリコプタ1は前記基地制御装置2から遠隔操作で操縦され、或は前記基地制御装置2から前記ヘリコプタ1の制御装置(後述)に飛行計画が設定され、飛行計画に従って、自律飛行する。
【0023】
前記ヘリコプタ1は、機体3、該機体3に設けられた所要数のプロペラ、例えば前後左右、計4組のプロペラ4,5,6,7を有し、該プロペラ4,5,6,7はそれぞれ個別に第1モータ8、第2モータ9、第3モータ10、第4モータ11(後述)に連結され、又後述する様に各第1モータ8、第2モータ9、第3モータ10、第4モータ11は独立して駆動が制御される様になっている。尚、前記プロペラ4,5,6,7及び前記第1モータ8、第2モータ9、第3モータ10、第4モータ11等は飛行体の航行手段を構成する。
【0024】
前記ヘリコプタ1の機体3には、撮像装置及び制御装置が設けられている。撮像装置はデジタル画像を取得する、鉛直カメラ13と前視カメラ14から構成される。該鉛直カメラ13、該前視カメラ14は、静止画像を所定時間間隔で撮像するカメラであってもよいし、或は画像を連続的に撮像するビデオカメラであってもよい。前記鉛直カメラ13は前記機体3の下面に設けられている。又、撮像装置は、撮像素子として、画素(ピクセル)の集合体であるCCD、CMOSセンサを有しており、各画素は撮像素子上の位置(座標)が特定でき、更に各画素の画角が分る様になっている。
【0025】
前記鉛直カメラ13は、前記機体3の基準位置(例えば機械中心)を通過する光軸15を有し、該光軸15は、前記ヘリコプタ1が水平姿勢で、鉛直線と合致する。前記鉛直カメラ13は、角度θの視野角を持っており、航空写真用の画像を取得可能となっている。又、該鉛直カメラ13で撮像した画像は、後述する様に、位置測定用の画像データとしても使用される。
【0026】
前記鉛直カメラ13は、好ましくは、前記光軸15が前記基準位置を中心として進行・後退方向(以下、前後方向)に傾動する様に支持され、又前記鉛直カメラ13を前後方向に傾動させる傾動機構部30(後述)が設けられている。該傾動機構部30は前記光軸15が地表に対して常に垂直となる様に前記鉛直カメラ13の傾きを調整する。
【0027】
又、前記前視カメラ14は、前記機体3の前面に設けられ、前方の画像を取得するものであり、前記前視カメラ14の光軸は、水平であるか、又は水平から下方に所要角度傾斜している。従って、前記前視カメラ14は、前記ヘリコプタ1が飛行する前方の景色を撮影し、撮影した画像は、前方の地形の変化の判断、或は障害物の認識に供される。
【0028】
前記鉛直カメラ13、前記前視カメラ14で撮像された画像は、撮像した時間、GPS装置23(後述)で測定した地心座標、ジャイロユニット29(後述)で検出した前記ヘリコプタ1の姿勢状態(飛行体の傾斜)に関連付けられて、後述する第1記憶部25に格納される。
【0029】
図2は、前記機体3に設けられる制御装置16を示している。該制御装置16は、主に位置測定部17、飛行制御部18、主演算制御部19、通信部20、電源部21から構成される。
【0030】
前記位置測定部17は、平面位置測定装置としてのGPS装置23、位置演算用CPU24、第1記憶部25、前記鉛直カメラ13、前記前視カメラ14等から構成される。
【0031】
前記GPS装置23は、前記ヘリコプタ1の基準位置、例えば機械中心を測定する様に構成され、又、前記GPS装置23の測定値は地心座標(絶対座標)系から求められる地上座標系を表すので、前記GPS装置23は前記基準位置の地上座標系の座標を測定する。
【0032】
又、前記ヘリコプタ1が水平姿勢で、前記鉛直カメラ13が基準姿勢では、前記光軸15は前記基準位置を通過すると共に鉛直となっている。従って、前記鉛直カメラ13は、前記ヘリコプタ1直下の所要の画角θの範囲の画像を取得可能であり、更に画像の中心は前記基準位置と合致する様に設定されている。
【0033】
前記第1記憶部25には、前記鉛直カメラ13で取得した画像及び画像を取得した位置、時刻が前記画像に関連付けられて格納される様になっており、更に、画像を取得した時刻に同期させて前記GPS装置23によって前記ヘリコプタ1の地上座標が測定され、測定された地上座標も画像を取得した時刻に関連付けられて前記第1記憶部25に格納される様になっている。
【0034】
又、前記第1記憶部25には、画像処理プログラム、3次元位置測定プログラム、撮像制御プログラム等のプログラムが格納されている。更に、前記第1記憶部25には、前記鉛直カメラ13、前記前視カメラ14で撮像された画像が、撮像時の時間、地上座標、前記ヘリコプタ1の姿勢状態(飛行体の傾斜)に関連付けられて格納される。
【0035】
前記画像処理プログラムは、前記鉛直カメラ13で取得した画像から特徴点を抽出する等の画像処理を行い、又前記前視カメラ14で取得した画像から、前方の地形を判断し、或は前方の障害物の認識を行う。前記3次元位置測定プログラムは、前記鉛直カメラ13の画像から抽出した特徴点に基づき、前方交会法、後方交会法等の測定方法により前記ヘリコプタ1の高さ距離を演算する。又、前記GPS装置23の測定結果から、地上座標を求め、求めた高さ距離と地上座標により前記機体3の3次元位置を演算する。前記撮像制御プログラムは、前記鉛直カメラ13、前記前視カメラ14の撮像状態を制御する。
【0036】
前記飛行制御部18は、前記第1モータ8、第2モータ9、第3モータ10、第4モータ11及びこれらモータを個別に駆動制御するモータコントローラ26、該モータコントローラ26を制御する飛行制御用CPU27、第2記憶部28、前記ヘリコプタ1の水平に対する姿勢状態(傾斜)を検出して姿勢状態信号を発する姿勢検出器、例えばジャイロユニット29を具備する。
【0037】
前記第2記憶部28には、前記位置測定部17からの飛行誘導データに基づき、飛行速度、上昇速度、降下速度、飛行方向、飛行高度等の飛行状態を演算する飛行制御プログラム、前記ジャイロユニット29からの前記姿勢状態信号に基づき姿勢制御用の情報を演算する姿勢制御プログラム等が格納されている。前記飛行制御用CPU27は、前記飛行制御プログラムに基づき飛行制御指令を前記モータコントローラ26に送出して該モータコントローラ26を介して前記第1モータ8、第2モータ9、第3モータ10、第4モータ11を制御し、所定の飛行を実行し、又前記姿勢制御プログラムに基づき姿勢制御指令を前記モータコントローラ26に送出して、該モータコントローラ26を介して前記第1モータ8、第2モータ9、第3モータ10、第4モータ11をそれぞれ制御することで、前記ヘリコプタ1の姿勢を所望の状態(例えば水平状態)に制御する。
【0038】
前記主演算制御部19は、主CPU32、第3記憶部33、入出力制御部34を具備し、該第3記憶部33には、統合プログラム、飛行制御プログラム、測量画像処理プログラム、通信制御プログラム、撮像部姿勢制御プログラム等のプログラム及び飛行計画データが格納されている。該飛行計画データに格納されているデータとしては、例えば飛行コース、飛行高度、撮影する場所、範囲等である。
【0039】
前記統合プログラムは、前記位置測定部17、前記飛行制御部18を統合して制御する。前記飛行制御プログラムは、飛行計画データに基づき自律飛行する様、前記飛行制御部18に飛行制御信号を発し、又、前記位置測定部17からの高度測定結果に基づき、地表に対し所定の高度を維持する様前記飛行制御部18に飛行制御信号を発する。更に前記飛行制御プログラムは、前記前視カメラ14からの画像に基づき、前方の地形の変化の判断、或は障害物の認識を行い、危険回避、飛行コース変更の判断を行う。
【0040】
又、撮像部姿勢制御プログラムは、地形の変化の判断に基づき、前記傾動機構部30を制御して前記鉛直カメラ13の光軸15が地表に対して垂直になる様、前記鉛直カメラ13の傾きを制御する。
【0041】
前記通信部20は、無線通信部35、情報通信部36等からなり、前記無線通信部35は、地上基地からの遠隔飛行制御指令を受信し、又ヘリコプタ1の飛行状態を地上基地に通信する。又、前記情報通信部36は、無線LAN或はブルートゥース(Bluetooth:登録商標)等の通信手段を用いて地上基地とヘリコプタ1間の情報の授受を行うものであり、例えば前記ヘリコプタ1が基地に着陸した状態で、前記飛行計画データが基地から前記ヘリコプタ1に送信され、或は飛行中撮像した画像、位置、時刻情報がヘリコプタ1から基地に送信される。
【0042】
前記電源部21は、例えば可充電電池であり、基地に着陸した状態で充電され、飛行中は前記位置測定部17、前記飛行制御部18、前記主演算制御部19、前記通信部20、前記傾動機構部30に必要な電力を供給する。
【0043】
前記鉛直カメラ13が取得した画像、前記位置測定部17が測定した位置情報は、前記通信部20を介して前記基地制御装置2に通信され、該基地制御装置2では、前記画像からステレオ画像を作成し、或はステレオ画像に基づき写真測量を行う。
【0044】
次に、写真測量の測定精度について、
図3を参照して説明する。
【0045】
図3は、写真測量に用いられる画像が、撮影距離(高さ)H、撮影基線長B、カメラの焦点距離f、カメラの画素サイズΔpで撮像され、この条件での平面精度Δxyと高さ精度Δzとを示している。
【0047】
高さ精度:Δz =H×H×Δp/(B×f)となる。
【0048】
従って、高さ精度ΔzはH
2 に比例するので、撮影距離Hを正確に維持すること、即ち前記機体3の高度を所定の値に正確に維持することが精度の高い写真測量を実行する条件となる。ここで撮影距離Hは、画像中の特徴点について演算した高さ距離であり、更に特徴点の高さ距離の加重平均値であり、或いは画像について得られた3次元座標全体の平均でもよい。
【0049】
前記機体3の高度を所定の値に維持する為に、前記機体3の高度を測定する測定方法としては、レーザ測量機を搭載し、該レーザ測量機により測定した高度に基づき前記機体3の飛行高度を制御することも考えられるが、レーザ測量機は高価であり、又前記機体3の機器構成が複雑となる。何よりも、前記機体3の搭載能力による制限がある。本実施例では、既に搭載されている鉛直カメラ13を用いて、機体3の高度をリアルタイムで測定し、更に測定結果を機体3の飛行に反映させ、地表からの高度を一定に保とうとするものである。
【0050】
先ず、
図4により、写真測量による距離測定についての概略を説明する。
【0051】
図4では、前記鉛直カメラ13により、既知点O1地点、既知点O2地点で測定点P点を含む画像を取得した場合であり、O1地点とO2地点とは撮影基線長Bだけ離れている。又、説明を簡略化する為、O1地点、O2地点で撮影した場合の前記鉛直カメラ13の光軸は平行であるとする。又、前記鉛直カメラ13は撮像素子41を有し、図中、41-1,41-2は、それぞれO1地点、O2地点で撮像した状態での撮像素子である。
【0052】
O1地点で撮像した測定点Pの画像上(即ち撮像素子上)の位置は、p1(x1,y1)、O2地点で撮像した測定点Pの画像上(即ち撮像素子上)の位置は、p2(x2,y2)となる。撮像素子41-1の中心0-1(原点)からp1迄の距離をl1、撮像素子41-2の中心0-2(原点)からp2迄の距離をl2とすると、前記撮影基線長BからP迄の距離Zは、3角形O1,O2,Pと3角形O1,0-1,p1及び3角形O2,0-2,p2との相似関係から、Z=Bf/(l1+l2)となる。
【0053】
ここで、前記O1地点、O2地点の地上座標は前記GPS装置23によって測定でき、又前記撮影基線長Bは前記O1地点とO2地点の2点間の距離となり、前記GPS装置23の測定結果に基づき前記撮影基線長Bを求めることができる。又、測定点Pの地心位置(平面座標)も、同様にp1(x1,y1)及びp2(x2,y2)と前記GPS装置23で測定したO1地点、O2地点の地心位置から求めることができる。
【0054】
従って、前記ヘリコプタ1が移動する過程で順次撮像した2つの画像から、ヘリコプタ1の高度をリアルタイムで測定(高さ距離測定)することができる。
【0055】
図5は、飛行中のヘリコプタ1で撮像した画像から順次高度測定を行っている状態を模式化したものである。又、
図4では、ヘリコプタ1の高度測定について説明したが、前記鉛直カメラ13で撮像した画像全体について、画像の任意の部位についての高さ測定、即ち画像の部位に対応する地表面42の部位の高さ測定を実施することができる。
【0056】
前記鉛直カメラ13で撮像した地表面の画像について、画像処理を行い、画像中から特徴点a〜nを抽出する。特徴点の抽出については、エッジ処理、コントラスト処理等適宜な画像処理により実行される。
【0057】
又、O1地点での画像から抽出した特徴点をO2地点で撮像した画像中に特定する必要があるが、特定する方法として画像トラッキングがある。画像トラッキングでは、O1地点からO2地点迄連続的に画像を取得し、時間的に隣接する画像に次々に特徴点を特定(画像トラッキング)し、O1地点の画像の特徴点をO2地点の画像中に特定する。
【0058】
尚、画像トラッキングについては、本出願人が先に出願した特願2005−370867(特開2007−171048号公報)に示されている。
【0059】
抽出した特徴点について、又O1地点の画像とO2地点の画像中とに基づき、各特徴点について上記した測定方法を実行し、同様にして各特徴点の高さ距離、平面座標が求められる。特徴点は、画像全体に亘るので、従って、地表面42の状態、例えば凹凸、傾斜等も測定でき、測定結果を取得した画像に関連付けることで、3次元座標を有する航空写真が得られる。
【0060】
図6は、地表面42が隆起している場所をヘリコプタ1が飛行する場合を示している。
【0061】
前記ヘリコプタ1は、前記鉛直カメラ13で取得した画像から、高度をリアルタイムで測定しており、測定した高度は前記主演算制御部19にフィードバックされる。該主演算制御部19では、入力された高度から地表から前記ヘリコプタ1迄の距離を一定に保つ様に、高度の修正指令を前記飛行制御部18に出力し、該飛行制御部18は高度が一定となる様に前記モータコントローラ26を介して前記第1モータ8〜第4モータ11の駆動を制御する。
【0062】
又、低所平面42aを飛行していた前記ヘリコプタ1が、傾斜面42bに到達すると(
図6(A)中1−3の位置)、前記鉛直カメラ13で撮像した画像中の、前方側の部位(
図6(A)中、右の部位)に存在する特徴点の高さ距離が他の部位の特徴点の高さ距離より小さくなる。従って、画像中の特徴点の高さ距離が部分的に小さくなることで傾斜面42bに達したことが判断できる。又前記傾斜面42bでの測定点が3点以上得られると斜面の状態の情報、例えば傾斜角が演算できる。
【0063】
前記主演算制御部19は演算された傾斜角に基づき、前記傾動機構部30を駆動制御し、光軸15が前記傾斜面42bと垂直となる様に前記鉛直カメラ13を傾斜させる。而して、前記傾斜面42bに対して高さ距離が所定の値となる様に前記飛行制御部18が制御される。
【0064】
次に、前記ヘリコプタ1が前記傾斜面42bの最高点付近に達すると(
図6(A)中1nの位置)、前記鉛直カメラ13で撮像した画像の右の部位に存在する特徴点の高さ距離が他の部位の高さ距離より大きくなる。画像中の部分的な高さ距離の変化で、傾斜面42bから高所平面42cへ移行することが判断できる。
【0065】
尚、前記ヘリコプタ1の前方は前記前視カメラ14によって撮像されており、該前視カメラ14からの映像から、前方に傾斜面が存在することを判断できる。傾斜面の傾斜角が大きくない場合は、上記した様に鉛直カメラ13の画像からも傾斜が判断できるので、前記前視カメラ14で取得した画像を飛行に反映させる必要はないが、前記傾斜面42bの傾斜角が大きく、該傾斜面42bの最高点が飛行高度を超える様な場合、或は建築物が垂直に立っている様な場合、ヘリコプタ1が傾斜面42b、建築物に衝突する危険が生じる。前記主演算制御部19は前記前視カメラ14で取得された画像から前方の障害物を判断し、前記飛行制御部18に対して飛行コースの変更等の指令を発し、障害物と前記ヘリコプタ1とが干渉又は衝突する可能性を回避する。
【0066】
上記した様に、前記ヘリコプタ1は前記飛行制御部18によって水平に制御されているが、傾斜面に沿って上昇、或は下降している場合、又傾斜面に光軸が垂直となる様に前記傾動機構部30によって前記鉛直カメラ13が傾斜されている場合等では、O1地点で撮像する鉛直カメラ13の姿勢と、O2地点での鉛直カメラ13の姿勢とが異なる場合がある。
図7は、O1地点で撮像した画像とO2地点で撮像した画像の傾きの状態を示す模式図である。画像の傾きは、光軸15の鉛直(Z軸)を基準とすると、Z軸を中心とする回転角κ、水平第1軸(X軸)を中心とした回転角ω、水平第2軸(Y軸)を中心とした回転角φによって表され、O1地点で撮像した画像とO2地点で撮像した画像とをκ,ω,φを変数として絶対標定することで、図中破線で示す状態(
図4の状態)に変換することができる。又、絶対標定することで、測定点Pの3次元座標が演算でき、更にO1地点、O2地点でのヘリコプタ1の高度を測定できる。
【0067】
ここで、O1地点、O2地点での前記3軸の回転角は、前記ジャイロユニット29によって測定でき、O1地点での画像中のp1の座標(x1,y1)、O2地点での画像中のp2の座標(x2,y2)は、撮像素子の画素の位置から測定できる。従って、絶対標定後の変換座標系でのp1の座標を(X1,Y1,Z1)とし、絶対標定後の変換座標系でのp2の座標を(X2,Y2,Z2)、鉛直カメラ13の焦点距離fとすれば、
【0068】
変換座標系でのp1,p2の座標は以下に表される。
【0069】
X1=x
1 cosφ
1 ・cosκ
1 −y
1 cosφ
1 ・sinκ
1 −fsinφ
1
Y1=x
1 sinκ
1 −y
1 cosκ
1
Z1=−x
1 sinφ
1 ・cosκ
1 −y
1 sinφ
1 ・sinκ
1 −fcosφ
1
X2=x
2 cosφ
2 ・cosκ
2 −y
2 cosφ
2 ・sinκ
2 −fsinφ
2 +1
Y2=x
2 (cosω
2 sinκ
2 +sinω
2 ・sinφ
2 cosκ
2 )+
y
2 (cosω
2 cosκ
2 −sinω
2 ・sinφ
2 ・sinκ
2 )+
fsinω
2 ・cosφ
2
Z2=x
2 (sinω
2 ・sinκ
2 −cosω
2 ・sinφ
2 ・cosκ
2 )+
y
2 (sinω
2 ・cosκ
2 +cosω
2 ・sinφ
2 ・sinκ
2 )−
fcosω
2 ・cosφ
2
【0070】
従って、得られたp1の座標(X1,Y1,Z1)、p2の座標(X2,Y2,Z2)に基づき
図4で示したと同様にして測定点Pの3次元座標を演算することができる。
【0071】
尚、上記した実施例では、前記位置測定部17が位置演算用CPU24、第1記憶部25を具備し、該位置演算用CPU24、第1記憶部25によって画像処理、地表面42の3次元測定を行ったが、前記主CPU32、前記第3記憶部33が前記位置演算用CPU24、前記第1記憶部25の機能を兼用してもよい。尚、前記位置演算用CPU24及び前記第1記憶部25が省略された場合は、前記主CPU32、前記第3記憶部33及び前記GPS装置23、前記鉛直カメラ13等が前記位置測定部17を構成する。
【0072】
上記した様に、本発明によれば、搭載したカメラのみで地表面42からのヘリコプタ1の高度を測定できると共に前記地表面42の凹凸等、地表面42の3次元測定が可能となる。従って、適正な高度で而も適正な位置での地表面42の撮影が可能であり、又地表面42の3次元測定の結果と撮像画像を関連付けることで、3次元位置情報付の画像を取得することができる。