【実施例】
【0028】
図1は、本願発明の実施の形態に係る検出システムの構成の一例を示す図である。検出システム1は、指示針式メータ3と、指示針式メータ用撮影装置5と、指示針式メータ用画像解析装置7を備える。
【0029】
指示針式メータ3は、針支点のまわりに回転する指示針を設け、測定しようとする量や方向を、指示針の振れ量で知ることができるものである。指示針は、先端が細く、他端に向けて徐々に幅が広くなる形状である。指示針は、目盛が付されたメータ面と透光面の間で回転する。そのため、一般的に、利用者は、透光面から指示針の先端が示す目盛を読み取ることによって、測定しようとする量や方向を知ることができる。
【0030】
指示針式メータ用撮影装置5は、指示針式メータ3の指示針を撮影するものである。指示針式メータ用撮影装置5は、取り付け部11(本願請求項の「取り付け手段」の一例)と、撮影部13(本願請求項の「撮影手段」の一例)と、撮影通信部15を備える。取り付け部11は、指示針式メータ3の透光面に取り付けるためのものである。撮影部13は、少なくとも指示針の一部とメータ面の一部を撮影して撮影データを得る。撮影通信部15は、撮影データを指示針式メータ用画像解析装置7に送信するものである。本願発明では、指示針の全体を撮影する必要はない。そのため、取り付け部13により透光面に取り付けた状態で、撮影部13が撮影することができる。そのため、指示針式メータ用撮影装置5は、指示針式メータ3に容易に取り付けることができる。
【0031】
指示針式メータ用画像解析装置7は、画像データにおける指示針の先端側と反対側で横切る閉凸線を用いて、指示針の先端が指し示す向きを検出するものである。以下では、閉凸線の一例として円を用いて説明する。指示針式メータ用画像解析装置7は、解析通信部17と、画像基準設定部19(本願請求項の「画像基準設定手段」の一例)と、円設定部21(本願請求項の「閉凸線設定手段」の一例)と、2値化処理部23(本願請求項の「2値化処理手段」の一例)と、抽出部25(本願請求項の「抽出手段」の一例)と、補正部27(本願請求項の「補正手段」の一例)と、選択部29(本願請求項の「選択手段」の一例)と、方向特定部31(本願請求項の「方向特定手段」の一例)と、表示部33を備える。
【0032】
解析通信部17は、撮影通信部15から送信された画像データを受信し、図示を省略する記憶部に記憶させる。画像基準設定部19は、記憶部に記憶された画像データに画像基準点を原点とするメッシュ座標を設定する。円設定部21は、画像基準点を中心とし、指示針を先端側と他端側で横切る一つ又は複数の円を設定する。2値化処理部23は、円設定部21が設定した円周の各メッシュにおいて、メータ面かメータ面でない(非メータ面)かによって2値化する。抽出部25は、円周のうち、指示針を横切る2か所の部分を特定する。一方端側を「一方端側部分」と呼び、他方端側を「他方端側部分」という。補正部27は、後に説明するように、各メッシュにおける各値を補正する。選択部29は、指示針の先端側を特定して、一方端側部分と他方端側部分の一方を先端側部分とする。方向特定部31は、画像基準点と先端側部分から指示針の向きを特定する。表示部33は、画像処理の過程や指示針の向きや指示針の向きに対応する目盛などを表示する。
【0033】
なお、指示針式メータ用撮影装置5と指示針式メータ用画像解析装置7は、一つの装置として実現してもよい。その場合、撮影通信部15及び解析通信部17は省略することができる。
【0034】
図2を参照して、
図1の解析システム1の動作の一例を説明する。
図2は、
図1の検出システム1の動作の一例を示すフロー図である。
【0035】
指示針式メータ用撮影装置5は、取り付け部11によって指示針式メータ3の透光面に取り付けられた状態である。撮影部13は、指示針式メータ3の指示針の一部又は全部を撮影して撮影データを得る(ステップST1)。撮影通信部15は、撮影データを送信し、解析通信部17が受信する。
【0036】
画像基準設定部19は、画像基準点を原点とするメッシュ座標を設定する(ステップST2)。
【0037】
円設定部21は、画像基準点を中心とし、指示針を先端側と他端側で横切る円を設定する(ステップST3)。
【0038】
2値化処理部23は、円設定部21が設定した円周の各メッシュにおいて、メータ面か非メータ面かによって2値化する(ステップST4)。抽出部25は、円周のうち、指示針を横切る2か所の部分を特定する。一方端側を「一方端側部分」と呼び、他方端側を「他方端側部分」という。
【0039】
円設定部21は、設定された円周上に2か所の横断部分があるか否かを判定する(ステップST5)。横断するのであれば、ステップST3に戻り、半径を小さくして新たな円を設定し、ステップST4により2値化する。これを、横断しなくなるまで繰り返す。
【0040】
なお、ステップST5は、
図4を参照して説明するように、複数の円を用いて処理をする場合の一例である。複数の円は、例えば、最初に小さな円を設定して半径を大きくして設定してもよく、半径を増減させつつ設定してもよい。また、
図3を参照して説明するように、一つの円を用いて円を指示針の向きを検出する場合には、ステップST5に関する処理を省略すればよい。また、増減の幅は、メッシュ幅等を基準とした一定値でもよく、不均一なものであってもよい。
【0041】
補正部27は、各メッシュにおける各値を補正する(ステップST6)。補正部27による補正処理については、
図3(c)及び
図4(b)を参照して具体的に説明する。
【0042】
画像基準設定部19は、画像基準点が適切か否かの判断をする(ステップST7)。適切でないならば、一方端側基準点と他方端側基準点を演算し(ステップST8)、修正後画像基準候補点を演算し(ステップST9)、ステップST2に戻り、修正後画像基準候補点を新たな画像基準点としてメッシュ座標を設定する。具体例については、
図5を参照して説明する。
【0043】
画像基準点が適切ならば、選択部29は、指示針の先端側を特定して、一方端側部分と他方端側部分の一方を先端側部分とする(ステップST10)。そして、方向特定部31は、先端側部分から方向基準点を求め(ステップST11)、画像基準点と方向基準点から指示針の向きを特定する(ステップST12)。
【0044】
図3〜
図5を参照して、具体的に説明する。
【0045】
図3は、一つの円を用いて指示針の向きを検出する場合を説明するための図である。
【0046】
(手順1−1)
図3(a)は、指針メータの全体像である。中心の星印は、画像基準点であり、これを原点とするメッシュ座標(X−Y軸)を設定する。以下では、図中、原点から下向きのMの向きに対して、指示針が向く角度θを特定する。
図3では、簡単のために、指示針の回転軸と一致している例を示す。次に、画像基準点(星印)を中心に円周を描く。
図3(a)では、破線の円で示す。続いて、円周上の各メッシュに対して、表1の二値化換算表を用いて2値化処理を行う。
図3(b)は、二値化処理後の結果を示すものである。一方端側と他方端側で横断する部分で、「1」のメッシュ群が検出されている。
【0047】
【表1】
【0048】
(手順1−2)次に、円周上の座標と、画像基準点(星印、メッシュ座標の原点)に対して対角線上にある座標の数値化した値を表2の補正換算表を用いて数値補正を行う。
図3(c)は、補正後の各メッシュの値を示す。例えば、aのメッシュを起点座標とすると、対角座標はa’である。起点座標は“1”であるのに対し、対角座標は“1”である。そのため、補正後も“1”のままである。同様に、bのメッシュを起点座標とする対角座標b’も、ともに“1”であるために、補正後も“1”のままである。cのメッシュを起点座標とする対角座標c’は、起点座標が“1”で対角座標が“0”であるために起点座標を“2”に補正する。また、c’のメッシュを起点座標とする対角座標cは、起点座標が“0”で対角座標が“1”であるために起点座標を“3”に補正する。dのメッシュを起点座標とする対角座標d’の場合、起点座標が“1”で対角座標が“0”であるために、起点座標を“2”に補正する。また、d’のメッシュを起点座標とする対角座標dは、起点座標が“0”で対角座標が“1”であるために起点座標を“3”に補正する。
【0049】
【表2】
【0050】
(手順1−3)補正後の値により、指針部と特定された座標以外の部分(補正換算表では“0”、“2”、“3”)は、指針部の対象から除外することで、円周上を横切る指針部の最小単位(最小幅)が求められる。ここでは、a−b、a’−b’となる。
【0051】
(手順1−4)
図3(d)に示すように、円周上を横切る指針部の最小幅(a−b、a’−b’)それぞれの中心点(1/2幅)と円の中心点(画像基準点)を直線で結ぶ。
【0052】
(手順1−5)手順1−4で求められた指針部の中心点π/2(a−b/2)、π’/2(a’−b’/2)の座標点から円周上に補正換算結果“3”を求め、中心点からの距離が短い方向を指針部の先端方向として定義する。
図3(c)では、a−bの座標側が指針部の先端方向となる。
【0053】
(手順1−6)指針部の先端方向と定義した中心点(a−b/2)を方向基準点とし、
図3(b)のMの向きから、指針部の先端方向と定義した中心点(a−b/2)までの角度が、指針部の指し示す角度”θ”として求められる。
【0054】
(手順1−7)手順1−5及び1−6の結果と、あらかじめ定義しておいた各計測器毎の目盛の範囲、一目盛の重みと角度を纏めたテーブルから指針が指し示す目盛の読み値を割り出すことが可能となる。
【0055】
図4は、複数の円を用いて指示針の向きを検出する場合を説明するための図である。
【0056】
図3(a)に示すように、
メータ面には、指示針以外にも、文字や目盛があり、さらに、シミなどの汚れがある。そのため、撮影して得られた画像データには、指示針以外のものが含まれている。このように全体画像より、指針のみを画像解析で表現しようとした場合、文字や目盛・汚れなどを指針部以外の情報の解析まで行わななければならず処理速度が遅くなる、データ通信量が膨大になるなどの問題点がある。この問題の解決手段として、
図3(a)にあるように、撮影した画像の一部のみを解析することで、文字や目盛などの不要な情報を排除するとともに、解析時間の短縮、処理データ量の最小化を行うことが可能となる。
【0057】
図4は、複数の円を用いることにより画像内の文字や目盛・汚れなどの指針部以外の情報を排除するための技術についての説明図である。
【0058】
(手順2−1)手順1−1の処理を異なる円周上でn回繰り返す。
図4(a)は、各円周に対する2値化処理後の結果を示す。
図3と異なり、「METER」の部分についても二値化処理が行われている。このときの円周の描き方は、
図3の円周から半径をX−Y軸を均等に増加して解析対象の画像幅となるまでのものと、均等に減少して指示針内に入るまでのものとする。
【0059】
(手順2−2)
図4(b)取得したn回分の二値化結果に対して手順1−2による補正を行ったものを示す。
図4(b)のX(8)、Y(−7)軸上のデータのように、円周の対角上に文字などの情報が入っていない画像であれば、補正後の値は“2”又は“3”となる。そのため、指針部としては取り扱われないこととなり、文字情報などの排除が行われることとなる。
【0060】
(手順2−3)これに対し、指針部と重ならない対角線上にそれぞれ存在する文字については、直線上の座標に連続して補正後の値“1”が存在しないことが分かる。このように、連続性の無い補正値“1”がある場合は、指針部として認識しないことで対角線上に存在する文字を排除することが可能となる。
図4(c)は、補正結果“1”のみを表示したもので、画像基準点から相対的な結果になっている。
【0061】
図5は、画像基準点が指示針を通らない場合の処理の一例を説明するための図である。
図3及び
図4を用いて説明した手法では、指示針部が画像の中心を通らない場合、指示針部として認識できない現象となる場合がある。この問題についての解消法を、
図5を参照して説明する。
【0062】
(手順3−1)
図5(a)は、指示針部が画像の中心部を通らない場合に、手順1−1の二値化処理後の結果を示す。この場合、
図5(b)に示すように、手順1−2による補正結果は全て“2”の指針部以外の結果となる。そのため、指示針部を抽出することができない。補正処理の結果で指針部が存在しない場合、
図5(c)で示すように円周上を横切る指針部イ−ロ、ニ−ハのそれぞれの中心を結ぶ直線を描き、中心点cを求める。
【0063】
(手順3−2)求めた中心点cを
図5(d)のようにX−Y軸上を画像の中心へ位置をずらした後、改めて手順1−1以降の処理を実施することで、指針部の角度θを求めることができる。
【0064】
図6は、本願発明の具体的な構成の例を示す図である。従来の画像解析技術と構成装置では、計測器全体を一定距離以上離れた場所からカメラで撮影した画像より、指針の角度や目盛の読み値を算出するものがほとんどである。そのため、施工するにあたって、スペースを確保する必要があったり、設備の配置状況においてはカメラの設置位置が取れないなどの問題が発生したりする。
【0065】
本発明では、指示針式メータの指示針部の一部の画像解析より、指針の角度や目盛の値を算出することができる。そのため、撮影用カメラ本体の小型化が可能であり、上記の様な問題点を解決することができる。
【0066】
本願発明によれば、指示針の角度を解析するために必要な画像は計測器メータの一部で行うことができるため、小型の接写用レンズで対応することができる。そのため、
図6(a)のような構成にすることができる。このように、撮影用カメラが小型で良いため、従来の撮影用カメラに比べはるかに小型化することができる。これにより、撮影用カメラを計測器メータのレンズ面に直接取り付け可能となり、施工が非常に便利である。
【0067】
また、装置本体に照明装置を組み込んでおり、夜間や暗部での撮影に必要な外部照明が不要なことから、設置するに当たり照明器具やスペースを確保する必要がなくなり、設置工事が容易に行うことができる。
【0068】
さらに、撮影用カメラを直接レンズ面に取り付け可能なため、レンズの反射光による画像の採光調整が不要になるほか、照明の光を分散させる手法として、光ファイバを介して光を
メータ面に照射するため、光源が分散されメータ面の反射光が軽減される。
【0069】
さらに、反射光をカットする拡散板により採光調整を必要としない画像取得が可能となり、照明による、カメラの設置条件など問題が解消される。
【0070】
さらに、カメラや照明などの装置が小型であるために、駆動電源の容量が少なく済むことにより、乾電池などの小型バッテリーで長時間の駆動が可能であり、外部電源工事も不要となり、便利性がある。
【0071】
本装置の通信方式は、無線・有線共に対応可能なほか、無線機一台で複数の撮影用カメラを接続することが可能なため、不要な通信ケーブルの敷設は省略できるなどの便利性もある。
【0072】
本願発明によれば、従来の画像監視で用いられるカメラ部が小型であり、指示針式メータのガラス面に取り付け可能である。そのため、既設設備の改良などが不要となり、容易かつ安価に設置することができる。