特許第5775658号(P5775658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ リサーチ ファンデーション フォー ザ ステート ユニバーシティ オブ ニューヨークの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775658
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】セルライト処置用コラゲナーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20150820BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   A61K37/54ZMD
   A61P17/00
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2008-556445(P2008-556445)
(86)(22)【出願日】2007年2月22日
(65)【公表番号】特表2009-527570(P2009-527570A)
(43)【公表日】2009年7月30日
(86)【国際出願番号】US2007004752
(87)【国際公開番号】WO2007100675
(87)【国際公開日】20070907
【審査請求日】2008年10月3日
【審判番号】不服2012-21788(P2012-21788/J1)
【審判請求日】2012年11月2日
(31)【優先権主張番号】60/775,690
(32)【優先日】2006年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11/703,269
(32)【優先日】2007年2月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508251977
【氏名又は名称】ザ リサーチ ファンデーション フォー ザ ステート ユニバーシティ オブ ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】バダレメンテ,マリー,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ダグム,アレキサンダー,ビー.
【合議体】
【審判長】 内藤 伸一
【審判官】 大久保 元浩
【審判官】 田村 明照
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4524065(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61P 3/04,17/00
CAPLUS/EMBASE/BIOSIS/MEDLINE (STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580 (J−DreamII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要としている被験体においてセルライトを治療するための医薬の製造における、精製されたコラゲナーゼの使用であって、該医薬は、セルライトのコラーゲン性隔壁ネットワーク(collagenous septa network)に投与され、該コラゲナーゼは、他の酵素を含まず、精製されたコラゲナーゼが、単回処置当たり少なくとも10,000ABC単位を含む用量で、一回以上の注射で投与される、使用。
【請求項2】
コラゲナーゼ(クロストリジオペプチダーゼA)が、細菌クロストリジウム・ヒストリチカム(Clostridium histolyticum)に由来する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
精製されたコラゲナーゼが単独で投与される、請求項1記載の使用。
【請求項4】
精製されたコラゲナーゼが、トリアムシノロンまたは他のコルチコステロイドの非存在下で投与される、請求項1記載の使用。
【請求項5】
精製されたコラゲナーゼが、1.0mLの体積で注射される、請求項1記載の使用。
【請求項6】
精製されたコラゲナーゼが複数の部位に注射される、請求項1記載の使用。
【請求項7】
精製されたコラゲナーゼが、コラゲナーゼIおよびコラゲナーゼIIで構成される、請求項1記載の使用。
【請求項8】
注射が、皮膚の陥凹形成を特徴とするセルライトの領域に送達される、請求項5記載の使用。
【請求項9】
被験体がヒト患者である、請求項1記載の使用。
【請求項10】
治療が4〜6週間後に繰り返される、請求項1記載の使用。
【請求項11】
コラゲナーゼの少なくとも一回の投与を受けた1ヵ月後に、被験体はセルライトの外見に目視による有意な減少を達成する、請求項1記載の使用。
【請求項12】
精製されたコラゲナーゼが、500SRC単位/mg〜15,000SRC単位/mgの比活性を有し、該コラゲナーゼは、一回以上の注射で投与される、請求項1記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本願は、2006年2月22日に米国特許商標庁に出願された出願番号60/775,690号に対して優先権を主張する。
【0002】
政府の支持
本発明は、国立衛生研究所からの助成金M01RR10710によって、一部支持された。米国政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
大腿部および臀部の皮膚の陥凹形成、すなわち「マットレス現象」は、一般的にセルライトといわれる。この状態は共通であり、そうでなければ健康な個体に現れ、男性よりはるかに高い頻度で女性が罹患する。セルライト除去のための、処方箋が不要な局所療法が多くある。これらの製品および処方箋が不要な局所への適用は、役に立たず、費用がかかり、実際に、適切なプラセボコントロールされた臨床試験を経たことがない。局所レチノールならびにカフェインおよびルスコゲニン(ruscogenine)を含むレチノールの、最近のランダム化されたプラセボコントロールされた試験(trail)はまた、セルライトの除去に関する価値を示せなかった。
【0004】
セルライトの処置が首尾よくあるべき場合、状態の基本的病理生理学は、明確な定義を必要とする。Rosenbaumらが、セルライトの形態学および生化学の調査に着手したのは、ほんの1999年であった(Rosenbaum, M. Prieto, V., Hellmer, J., Boschmann, M., Krueger, J., Leibel, R. L., Ship, A. G., An Exploratory Investigation of the Morphology and Biochemistry of Cellulite, Plastic & Reconst Surg 101 (7): 1934-9, 1998)。7人の健康な成人被験体、女性5人および男性2人、4人が罹患し、3人が罹患していない、が、大腿部の超音波検査、局所的インビボ皮下脂肪組織代謝の測定、および局所麻酔下での大腿部の全層くさび状生検を受けた。セルライトの存在は、大腿部の後外側の皮膚の陥凹形成の証拠として定義された。陥凹形成がはっきりわからない少なくとも直径3cmのあらゆる連続領域が、罹患していないとして定義された。全ての罹患した個体において、大腿部の罹患した領域および罹患していない領域両方を含むように、研究が実施された。くさび状生検の顕微鏡的試験および大腿部のインビボ超音波検査の両方は、罹患した被験体において、下層脂肪組織の突出および皮膚支帯への突出の拡散パターンを示したが、罹患していない被験体においては示さなかった。この研究はまた、女性が、真皮の直下に不規則かつ不連続な結合組織の拡散パターンを有したが、男性における結合組織の同じ層は、平坦かつ連続的であったことを示した。この結合組織層は、罹患していない個体に対して、罹患した個体においては、より不規則かつ不連続であった。個体の罹患部位と非罹患部位の間で、皮下脂肪組織形態、脂肪分解応答性、または局所血流に有意な違いは見られなかった。この研究は、セルライトの特徴である、真皮への脂肪組織の不規則な突出を女性が進行しやすくなる真皮結合組織の構造的特徴において性的二形性があることを示した。この研究は、セルライトの原因論において、脂肪組織生理学、血流、または脂肪組織生化学に何らの主たる役割の証拠もないが、女性の大腿部および臀部の結合組織が、真皮の下の小さな脂肪組織沈着の違いを倍化させるような構造をしていると結論付けた。
【0005】
この結論は、39個の剖検検体を顕微鏡的に試験したPierardらの仕事によって実証された(Pierard-Franchimont, C., Pierard G. E., Henry, F., Vroome, V. & Cauwenbergh, G. A Randomized, Placebo-Controlled Trial of Topical Retinol in the Treatment of Cellulite, Amer. J. Clin. Dermatology, 1(6): 369-74, 2000)。彼らのコントロール群は、セルライトの形跡を示さない4人の成人女性および11人の成人男性からなった。彼らは、真皮の皮下境界面の塊りだらけの(lumpy)外観が大腿部および臀部の性に関連する(女性の)特徴を示しているようであったと述べている。セルライトは、このマットレス現象によって顕微鏡的に同定され、皮下組織を区画化する焦点(focally)拡大された線維硬化型ストランド(strand)として示された。彼らは、これらの構造が脂肪蓄積によって引き起こされる持続的皮下圧に対する反応プロセスを示し得ると推測した。
【0006】
Querleuxらによるより最近の研究において、インビボ磁気共鳴画像化および分光学による皮下脂肪組織の剖検および生理学が、性およびセルライトの存在に関して研究された(Querleux, B., Cornillon, C., Jolivet, O., Bittoun, J., Anatomy and Physiology of Subcutaneous Adipose Tissue by in vivo Magnetic Resonance Imaging and Spectroscopy: Relationship with Sex and Presence of Cellulite, Skin Research And Tech 8(2): 118-124, May 2002)。これらの著者らは、線維状隔膜(septae)ネットワークの3D再構築によって、セルライトを有する女性では、皮膚表面に対して垂直方向のセプタエのパーセンテージがより高いことが示されたと結論付けた。
【0007】
現在までに、セルライトの有効な処置はない。セルライトの処置のためのかかる方法を提供することが、本発明の課題である。
【0008】
発明の要旨
本発明は、コラゲナーゼ注射が、ヒトのセルライトのコラーゲンセプタエネットワークを溶解し、セルライトを処置し、および平坦な皮膚の外観を回復するのに有効であるという発見に関する。本発明は、処置を必要とする被験体においてセルライトを処置する方法に関し、該方法は、セルライトを処置するための医薬の製造において有効量の精製されたコラゲナーゼを注入する工程を含む。コラゲナーゼは、好ましくは、精製されており、プロテアーゼおよび/またはヒアルロニダーゼ等の他の酵素を実質的に含まない。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、コラゲナーゼ注射が、ヒトのセルライトのコラーゲンセプタエネットワークを溶解し、セルライトを処置し、および平坦な皮膚の外観を回復するのに有効であるという発見に関する。本発明は、処置を必要とする被験体においてセルライトを処置する方法に関し、該方法は、大腿部および/または臀部に有効量のコラゲナーゼを注入する工程を含む。本発明はまた、セルライトを処置するための医薬の製造におけるコラゲナーゼの使用に関する。
【0010】
コラゲナーゼ注射は、デュピュイトラン病、癒着性関節包炎、およびペーロニー病等の疾患の処置に提案されてきた。これらの疾患は全て、コラーゲンコード(collagen cord)またはプラークと関連する。(Wegman, Thomas.L. U.S. Pat. No 5,589,171 Dec. 31, 1996, U.S. Pat No.6,086,872 July 11, 2000, U.S. Pat. No. 6,022,539, Feb. 8, 2000, Adhesive Capsulitis-Patent Pending、この全ては、その全体を参照によって本明細書中に援用される)。
【0011】
コラゲナーゼ注射はまた、哺乳動物の精巣から調製された可溶性酵素産物であるヒアルロニダーゼと合わせた場合、セルライトの処置に提案されてきた(Pinelle, Sheldon R. U.S. Pat. No. 4,645,668 Mar. 27, 1985を参照)。該特許は、女性患者のみに対してヒアルロニダーゼ(150単位)と併用して低用量のコラゲナーゼ(100単位)を用いた、セルライトに対するデータのある1つの実施例を開示した。注射された後のセルライトの改善のさらなる詳細はない。
【0012】
精製されたクロストリジウムのコラゲナーゼの病変内注入の使用は、デュピュイトラン病における手(片方または両方)の屈曲拘縮変形の矯正の臨床試験において、臨床的に安全かつ効果的であることが示された。さらに、精製されたクロストリジウムのコラゲナーゼの関節包外注入の使用は、癒着性関節包炎(有痛性肩拘縮症)の処置における回復注射の臨床試験において、臨床的に安全かつ効果的であることが示され、陰茎の拘縮変形であるペーロニー病の臨床試験において、他のヒトによっても使用されてきた。
【0013】
発明者、Badalamente博士の公開されたデュピュイトラン病に関する仕事は、提案された発明に対して理論的解釈を構成する(Starkweather, K., Lattuga, S., Hurst, L.C., Badalamente, M.A., Guilak, F., Sampson, S.P., Dowd, A., Wisch, D. Collagenase in the Treatment of Dupuytren's Disease: An in vitro Study, J. Hand Surg. 21A:490-95, 1996; Badalamente, M.A., Hurst, L.C., Enzyme Injection as a Non-operative Treatment for Dupuytren's Disease, J. Drug-Delivery 3(l):35-40, 1996; Hurst, L.C., Badalamente, M.A. (invited authorship) Non-operative Treatment of Dupuytren's Disease. Hand Clinics, G.M. Rayan (ed). W.B. Saunders 15(1), 97-107, 1999; Hurst, L.C., Badalamente, M.A. (invited editors & authorship), Dupuytren's Disease, R. Tubinana, R. Tubiana, C. Leclercq, L.C. Hurst, M.A. Badalamente (eds), Martin Dunitz Publisher, London (2000); Badalamente, M.A., Hurst, L.C. Enzyme Injection as a Non-operative Treatment of Dupuytren's Disease, J. Hands Surg. 25A(4);629-36, 2000; Badalamente, M.A., Hurst, L.C, Hentz, V.R. Collagen as a Clinical Target: Non-operative Treatment of Dupuytren's Disease. J. Hand Surg. 27A(5):788-98, 2002)。デュピュイトラン病において、疾病特有症候の線維状コード(cord)は、しばしば脂肪組織の隔膜様配置を伴って散在される。これらは、種々の大きさのマットレス型の「塊(lump)」として臨床的に存在し、デュピュイトラン病において、硬結(nodule)といわれる。精製されたクロストリジウムのコラゲナーゼ注入の後、伸長圧(pressure in extension)を受けた際に、コラーゲンのコードが分解(dissolve)し、断裂するだけでなく、線維脂肪性硬結がまた分解(resolve)し、無害な再吸収をされることは、デュピュイトラン病についての第2相および第3相両方の試験における一貫した臨床的所見であった。従って、セルライトの領域に皮下注射されたコラゲナーゼは、大腿部および/または臀部の皮膚の平坦な外観を回復するための、この状態の安全かつ効果的な処置であるはずと仮定された。
【0014】
コラゲナーゼは、コラーゲンを消化する特異的な能力を有する酵素である。コラゲナーゼの好ましい形態は、クロストリジウム ヒストリチカム(Clostridium histoliticum)による発酵に由来し、参照によって本明細書中に援用される2006年1月20日に出願された米国出願番号60/763,470号(代理人登録番号4024.3001US)に開示される技術等のクロマトグラフィー技術によって精製される。クロストリジウム ヒストリチカムによって天然に産生されるコラゲナーゼは、一旦精製されると、電気泳動SDSゲル上で泳動されると、2つの(tow)明瞭なピークを示す。コラゲナーゼIおよびコラゲナーゼIIといわれるのは、これら2つの明瞭なピークである。
【0015】
1mgあたり50単位のミニマムアッセイ(minimum assay)を有する滅菌凍結乾燥されたコラゲナーゼ粉末は、市販されている。該アッセイは、バッチごとにかなり変化し得るが、処置のための所望の濃度を調製する際に、薬学的に許容され得る担体、例えば通常の生理食塩水、と使用する粉末の重量を決定する際に考慮される。
【0016】
コラゲナーゼは、コラゲナーゼに対して不活性である、薬学的に許容される液体担体に加えられる。例は、通常の生理食塩水、NaCl/CaCl水性バッファ、デキストラン水溶液、ヘタスターチ水溶液である。
【0017】
注入に使用される精製されたコラゲナーゼの1つの形態は、「コラゲナーゼABC I」および「コラゲナーゼABC II」といわれる2つの細菌性コラーゲナーゼからなる。両方のコラゲナーゼは、細菌クロストリジウム ヒストリチカムの発酵から単離および精製され、同じメタロプロテアーゼに属する。
【0018】
コラゲナーゼABC Iは、公知の配列の約1000アミノ酸からなる単一のポリペプチド鎖である。これは、実測分子量115キロダルトン(kD)、等電点(pI)5.63〜5.68、および吸光係数1.480を有する。その合成基質に対する活性挙動から、コラゲナーゼABC Iは、文献のクラスIクロストリジウム ヒストリチカムコラゲナーゼであると決定された。
【0019】
コラゲナーゼABC IIもまた、推定配列の約1000アミノ酸からなる単一のポリぺプチド鎖である。これは、実測分子量110kD、等電点5.46〜5.57、および吸光係数1.576を有する。コラゲナーゼABC IIは、機能的に、文献のクラスIIクロストリジウム ヒストリチカムコラゲナーゼに属する。
【0020】
薬物物質は、コラゲナーゼABC IおよびコラゲナーゼABC IIに対して1対1の質量比を有し、吸光係数1.528を有し得る。両方のコラゲナーゼは、それらの活性にとって、堅く結合した亜鉛および緩く結合したカルシウムを必要とする。コラゲナーゼABC IおよびコラゲナーゼABC IIは、免疫学的に交差反応せず、全ての型のコラーゲンに対して非常に広い加水分解反応性を有する。各コラゲナーゼは、異なる特異性を示すが、一緒になって、コラーゲンに対して相乗的活性を示す。
【0021】
注入のための凍結乾燥されたコラゲナーゼ(collagen)は、凍結乾燥製剤として調製された精製されたクロストリジウムのコラゲナーゼであり、コラゲナーゼ活性1000ABC単位あたり約0.1mgのラクトース一水和物USPを含み得る。
【0022】
好ましいコラゲナーゼ組成物は、約1対1の質量比でコラゲナーゼIとコラゲナーゼIIの混合物を含み、約500SRC単位/mg〜約15000SRC単位/mg、好ましくは少なくとも約700SRC単位/mg、より好ましくは少なくとも約1000SRC単位/mg、さらにより好ましくは少なくとも約1500SRC単位/mgの比活性を有する。1SRC単位は、ラットの尾のコラーゲンを、25℃、pH7.4で1分あたり1ナノモルのロイシンに等価なニンヒドリン反応性(reaction)物質に可溶化する。コラゲナーゼは、ABC単位でも記載されてきた。コラゲナーゼの有効性アッセイ(potency assay)は、pH7.2、37℃で20〜24時間の未変性コラーゲン(ウシの腱由来)の消化に基づく。
切断されるペプチド結合の数は、ニンヒドリンとの反応によって測定される。可溶化消化コントロールによって放出されるアミノ基は、減算される。正味の1ABC単位のコラゲナーゼは、1分あたり1.09ナノモルのロイシンに等価なニンヒドリン反応性物質を可溶化する。1SRC単位は、約6.3ABC単位と等しい。
【0023】
コラゲナーゼは、好ましくは、薬学的に許容され得る液体担体中の注射を介して投与される。好ましくは、担体は、コラゲナーゼと相互作用しないか、または不活性化しない。例は、通常の生理食塩水、NaCl/CaCl水性バッファ(0.9% NaClおよび2mM CaClを含む)である。例えば、凍結乾燥製剤は、1000ABC単位あたり0.1mgのラクトース一水和物を含み得る。以下に使用される各ガラスバイアルは、5150ABC単位のコラゲナーゼを含んでいた。
【0024】
本発明に従って、液体担体中のコラゲナーゼは、被験体の大腿部の後外側のセルライトの領域に注入される。使用されるコラゲナーゼの量および濃度は、セルライトのコラーゲンセプタネットワークを分解および溶解するのに有効である。
【0025】
注入は、滅菌したものであり、1.0mlを超えない。全投薬量は、大腿部のセルライト陥凹部が最も明らかな5つの異なる点で、大腿部の後外側に注入される。目的は、コラゲナーゼの良好な分布を確実にするためである。患者は、好ましくは、ベッドで約1時間、好ましくは2時間以上、反対側の大腿部の外側を下にして横になる。
【0026】
他の態様において、コラゲナーゼは、セルライトの領域に、局所的(locally)または局所的(topically)に、例えば経皮パッチまたは局所クリームまたは局所軟膏で投与され得るか、あるいはマイクロカプセルまたはマイクロスフィア(michrosphere)などの経時的にコラゲナーゼを放出するインプラントを介して投与され得る。
【0027】
1つの態様において、患者は、大腿部の後外側に少なくとも10×10cmのセルライトの領域を有することを特徴とする。本発明は、大腿部の後外側の10×10cmのセルライトの領域(are)において、正常かつ平坦な皮膚外観の回復の改善を達成し得る。
【0028】
本発明の別の態様において、コラゲナーゼは、セルライトの領域に、局所的(locally)または局所的(topically)に、例えば経皮パッチまたは局所クリームまたは局所軟膏で投与され得るか、あるいはマイクロカプセルまたはマイクロスフィア(michrosphere)などの経時的にコラゲナーゼを放出するインプラントを介して投与され得、トアムシロン(triamcinolone)または他のコルチコステロイドの非存在下で投与される。
【0029】
単回処置の結果が不十分と考えられる場合、同じ手順、コラゲナーゼの総量および濃度が、4〜6週間間隔で繰り返され得る。大腿部の後外側以外のセルライトの領域はまた、処置、すなわち4〜6週間間隔での繰り返し処置を必要とし得る。例えば、大腿部の前部および臀部は、セルライトの領域を含み得る。
【0030】
(実施例)
方法
十名の患者が研究プロトコールに参加した。全てが女性で、平均年齢は41歳=10歳。平均ボディマス指数(BMI)は28であった。
【0031】
封入に必要な大腿部の後外側のセルライトの最小限の領域(are)は10×10cmであった。全ての患者は、最小で10×10cmの領域を超える大腿部の後外側のセルライトの領域を有していた。処置領域のベースラインのデジタル写真を撮影した。無菌的な様式で、10,000ABC単位(0.58mg)を10×10cmの標的セルライトの領域における5箇所に注入した。注入の全流体体積は1.0mLであった。用いたバッファは無菌の0.9%のNaClおよび2mMのCaCl2であった。全ての患者を、注入後一日目、一週間目、一ヶ月目、三ヶ月目および六ヶ月目にフォローする(are flowed)。処置後の写真を連続して撮影する。
【0032】
最初のコラゲナーゼの注入後4〜6週間の時間間隔に到達した場合、患者は、美容上の対称性のために、反対側で類似のコラゲナーゼの注入を受けることを選択するという選択肢を有していた。大腿部の標的領域におけるセルライトの減少/消失の検証は、目視検査および写真による裏付けによってなされた。
【0033】
処置されたセルライトの標的領域を、10×10cmの標的処置領域の四つの等しい四半部に分割した。四半部に基づく目視検査によって、標的処置領域におけるセルライトの減少/消失を定量化した。例えば、4/4=処置に応答した四半部がない、3/4=3四半部が処置に応答した、2/4は2四半部が処置に応答した、1/4=1四半部が処置に応答した、0/4=全ての四半部が処置に応答した。セルライトの後外側の標的領域に残っている任意のセルライトの実際の領域(are)をcmでも測定した。裏付けのために、写真も用いた。
【0034】
結果
全ての患者が、コラゲナーゼの注入後に標的大腿部のセルライトの減少を体験した。表1は、処置された患者の大腿部の四半部におけるセルライトが減少するという結果を示す。注入された領域(are)のセルライトの出現の有意な減少があった。セルライト領域(are)は、1日目までにベースラインと比較して77%減少した。この結果はより長期間維持された。ベースラインと比較して、セルライトの領域は1週間で74%、1ヶ月で89%、3ヶ月で86%、そして6ヶ月で76%減少した。
【0035】
有害事象としては、注入領域における圧痛、斑状出血および軽度の浮腫が挙げられ、これらはそれぞれ平均で10日、18日および6日で消散した。
【表1】





【0036】
コラゲナーゼの(単回または複数回の)注入を受けた患者においては、大腿部の後外側のセルライトの減少の有意な改善が見られた。本研究によって、セルライトの領域へのコラゲナーゼの注入は安全かつ効果的な方法であることが示された。
【0037】
本発明をその好ましい態様に関して詳細に示し説明してきたが、当業者であれば、添付された特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱することなく、種々の形式および細部の改変がその中で成されてもよいことを理解する。