(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
輸液容器が搬送されるときや使用されるときに、容器本体が外側から押され、内圧が過大となる場合がある。特許文献1に記載されたものでは、樹脂の融着が十分であるか否かを確認し難く、融着が十分でない場合には、過大な内圧がかかった際に、ゴム栓と口部との間を伝ってきた輸液が漏れ出すおそれがある。特許文献2や特許文献3に記載されたものでは、容器本体の口部にゴム栓が設けられているに過ぎず、過大な内圧がかかった際に、輸液がゴム栓と口部との間を伝って漏れ出すおそれがある。さらに、これら各特許文献に記載された輸液容器の栓構造を構成するためには、成形した一部を切除する工程(特許文献1)、ゴム栓を加圧挿入し、押型を用いて樹脂部を湾曲させる工程(特許文献2)、金属製の蓋を折り曲げる工程(特許文献3)が必要とされるため、生産効率が低く、コストが嵩んでしまうという問題もある。
【0006】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、輸液を確実に密封し、かつ生産効率を向上させてコストを抑えることができる輸液容器の栓構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、次の技術的手段を講じた。
即ち、本発明の輸液容器の栓構造は、輸液容器の一方端で筒状に形成された口部と、この口部に設けられて前記輸液容器を密封する密封手段とを備えた輸液容器の栓構造において、前記密封手段は、前記口部の上端口を覆うように設けられた弾性変形可能な内栓部材と、前記口部に装着されて前記内栓部材を当該口部の上端口に押し当て弾性変形させるキャップ状の外栓体と、前記口部及び前記外栓体に設けられ当該外栓体を閉栓状態でロックするロック機構と、を備えており、前記ロック機構によって前記外栓体がロックされて、前記内栓部材を前記口部の上端口に押し当てた弾性変形状態が保持され、当該上端口と当該内栓部材との間がシールされ
、前記内栓部材は、前記口部の内側へ圧入可能な円柱部を有しており、この円柱部が当該口部の内側に圧入されて弾性変形され、当該口部の内周面と当該円柱部との間がシールされ、前記輸液容器の口部の外周に雄ねじ部が設けられていると共に、前記外栓体の内周に当該雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部が設けられて、当該口部と当該外栓体とが互いに螺合可能に構成されており、前記ロック機構は、前記外栓体の雌ねじ部の一部を切り欠いて形成された切欠部と、前記口部の雄ねじ部の近傍に設けられ、前記雌ねじ部を乗り越えさせることで前記外栓体の閉栓方向への回転を許容し、かつ前記切欠部を係止させることで前記外栓体の開栓方向への回転を規制する係止部と、を備え、前記外栓体の内側上角に、前記内栓部材の外周上側部分に径方向及び軸方向の両方向で接するように内方へ突出する断面方形のリング状に形成され、前記内栓部材に内斜め方向の圧縮力を生じさせ前記口部の上端口及び当該口部の内周面における上部分を当該内栓部材で押圧する大きさのコーナ突部が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
上記本発明の輸液容器の栓構造によれば、内栓部材を口部の上端口に押し当てた弾性変形状態が保持されて、当該上端口と当該内栓部材との間がシールされているため、高いシール性が得られ、過大な内圧がかかっても輸液を漏れないようにすることができる。さらに、本発明の輸液容器の栓構造の密封手段は、内栓部材と、外栓体と、口部及び当該外栓体に設けられたロック機構とで構成されているため、輸液容器の口部に、内栓部材と外栓体を設けるだけで製造することができ、生産効率を向上させることができる。
【0009】
本発明の輸液容器の栓構造の前記内栓部材は、前記口部の内側へ圧入可能な円柱部を有しており、この円柱部が当該口部の内側に圧入されて弾性変形され、当該口部の内周面と当該円柱部との間がシールされてい
る。そのため、口部の上端口と内栓部材との間での上記のシールに加え、口部の内周面と当該内栓部材の円柱部との間でもシールされるので、シール性を向上させることができる。
【0010】
本発明の輸液容器の栓構造における前記輸液容器の口部と前記外栓体と
は互いに螺合可能に構成されてい
る。外栓体を口部に螺合させて装着できれば、内栓部材を簡単かつ確実に口部の上端口に押し当てることができる。
【0011】
本発明の輸液容器の栓構造の前記ロック機構は、前記外栓体の雌ねじ部の一部を切り欠いて形成された切欠部と、前記口部の雄ねじ部の近傍に設けられ、前記雌ねじ部を乗り越えさせることで前記外栓体の閉栓方向への回転を許容し、かつ前記切欠部を係止させることで前記外栓体の開栓方向への回転を規制する係止部と、を備える。外栓体の雌ねじ部の一部を切り欠いて形成された切欠部と、口部の雄ねじ部の近傍に設けられた係止部とで構成されたロック機構を採用すれば、当該ロック機構の構成が簡易なものとなって、生産効率を向上させることができる。
【0012】
前記ロック機構を補助する補助ロックをさらに備えており、前記補助ロックは、前記内栓部材の外周縁を形成し、閉栓状態で前記外栓体の側壁部と前記口部との間に形成された隙間に圧入され当該側壁部が反力を受ける外縁部と、前記内栓部材の中央内側を形成し、閉栓状態で前記口部の内側へ圧入されて当該口部が反力を受ける円柱部と、からなる。この補助ロックを備えることで、ロック性能を向上させることができる。
【0013】
本発明の輸液容器の栓構造は、輸液容器の一方端で筒状に形成された口部と、この口部に設けられて前記輸液容器を密封する密封手段とを備えた輸液容器の栓構造において、前記密封手段は、前記口部の上端口を覆うように設けられた弾性変形可能な内栓部材と、前記口部に装着されて前記内栓部材を当該口部の上端口に押し当て弾性変形させるキャップ状の外栓体と、前記口部及び前記外栓体に設けられ当該外栓体を閉栓状態でロックするロック機構と、を備えており、前記ロック機構によって前記外栓体がロックされて、前記内栓部材を前記口部の上端口に押し当てた弾性変形状態が保持され、当該上端口と当該内栓部材との間がシールされ、前記内栓部材は、前記口部の内側へ圧入可能な円柱部を有しており、この円柱部が当該口部の内側に圧入されて弾性変形され、当該口部の内周面と当該円柱部との間がシールされ、前記輸液容器の口部と前記外栓体とが互いに螺合可能に構成され、前記ロック機構は、前記外栓体の内周に沿って環状に配置された複数の内突部と、前記口部の外周に設けられ、前記複数の内突部を乗り越えさせることで前記外栓体の閉栓方向への回転を許容し、かつ前記複数の内突部を係止させることで前記外栓体の開栓方向への回転を規制する係止部と、を備え、前記ロック機構を補助する補助ロックをさらに備えており、前記補助ロックは、前記内栓部材の外周縁を形成し、閉栓状態で前記外栓体の側壁部と前記口部との間に形成された隙間に圧入され当該側壁部が反力を受ける外縁部と、前記内栓部材の中央内側を形成し、閉栓状態で前記口部の内側へ圧入されて当該口部が反力を受ける円柱部と、からなり、前記外栓体の内側上角に、前記内栓部材の外周上側部分に径方向及び軸方向の両方向で接するように内方へ突出する断面方形のリング状に形成され、前記内栓部材に内斜め方向の圧縮力を生じさせ前記口部の上端口及び当該口部の内周面における上部分を当該内栓部材で押圧する大きさのコーナ突部が形成されていることを特徴とするものである。本発明の輸液容器の栓構造における前記ロック機構は、前記外栓体の内周に沿って環状に配置された複数の内突部と、前記口部の外周に設けられ、前記複数の内突部を乗り越えさせることで前記外栓体の閉栓方向への回転を許容し、かつ前記複数の内突部を係止させることで前記外栓体の開栓方向への回転を規制する係止部と、を備える。そのため、ロック機構の構成が簡易なものとなって、生産効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
上記の通り、本発明によれば、口部の上端口と内栓部材との間の高いシールが得られるため、過大な内圧がかかっても輸液が漏れず、輸液を確実に密封することができる。輸液容器の口部に、内栓部材と外栓を設けるだけで製造されるため、生産効率が向上され、コストを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る輸液容器の栓構造1を示す断面図と正面図である。なお、以下の説明において、
図1紙面上下を単に上下という。本実施形態の輸液容器の栓構造1は、薬剤等が含まれた輸液を収容する輸液ボトル(輸液容器)2を密封するために用いられるものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなる輸液ボトル2の一方端で筒状に形成された口部3と、この口部3に設けられて輸液ボトル2を密封する密封手段15とを備えている。このうち、密封手段15は、口部3の上部に設けられた内栓部材16と、この内栓部材16を覆うように口部3に装着されたキャップ状の外栓体17と、外栓体17を口部3に装着した状態でロックするロック機構18とで構成されている。
【0017】
口部3は、上端から下端まで略同径に形成された円筒状の本体4と、この本体4の外周面4aに形成された雄ねじ部5と、この雄ねじ部5の下側で拡径された環状のビード部6と、このビード部6の下側で当該ビード部6よりも大きく拡径されたサポートリング7と、さらに口部3の外周でビード部6の直下に設けられ、ロック機構18の一部を構成する6つの係止部8とを備えている(
図2参照)。6つの係止部8は、3つの第1係止群8Aと、この第1係止群8Aと対称の位置に設けられた3つの第2係止群8Bで構成されている。
【0018】
第1、第2係止群8A、8Bを構成する各係止部8は、30°の角度θ
1をおいて配置されている。各係止部8は、本体4の外周面4aから突状に形成されたものであり、径方向に沿う係止面9と、この係止面9の最外部から外周面4aに向けて傾斜する案内面10とを有している。係止面9の径方向寸法d1は0.5mmであり、係止面9の最外部から案内面10に繋がる角部8aはR状に形成されており、そのR寸法は、0.2mmである。案内面10の傾斜角度θ
2は、20°である。
【0019】
外栓体17は、コンプレッション成形又はインジェクション成形によってポリプロピレン、高密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂で一体的に成形されたものであり、上部に位置する天板19と、この天板19の外周縁19aから下方へ向かって延びる側壁部20と、当該外栓体17の内側上角で内方へ突出するリング状のコーナ突部21とを備えている。天板19は、所要寸法を有する円盤状に形成されており、その中央部には、当該天板19の表裏を貫通する貫通孔23が設けられている。側壁部20は、所要寸法を有する円筒状に形成されたものであり、その内周面20aには、雌ねじ部24が形成されて、外栓体17が輸液バッグ2の口部3に螺合されている。側壁部20の外周面20bには、上下方向に延びるローレット溝25が形成されている。
【0020】
側壁部20の内側には周方向に連続する係止材27が設けられている。この係止材27は、外栓体17の内周に沿って環状に配置され、内方へ向けて断面くの字状に折り込まれた複数の内突部28を備えている。これら複数の内突部28を備える係止材27は、全体として周方向に連続した蛇腹状で、内方、外方及び下方へ弾性変形可能となっている。
【0021】
複数の内突部28は、外栓体17が口部3に装着された状態で、ビード部6の略下側へ位置されている。また、本体4の外周面4aに形成された複数の係止部8と、複数の内突部28との上下方向における位置は、互いに対応しており、当該複数の内突部28は、輸液バッグ2の口部3に形成された第1、第2係止群8A、8Bと共に、ロック機構18を構成している。外栓体17が口部3に装着された状態では、複数の内突部28のうちの少なくとも1つの内突部28は、第1、第2係止群8A、8Bのうちの当該内突部28の近傍に位置する係止部8に係止されている。
【0022】
外栓体17が輸液ボトル2の口部3に装着される際、各内突部28は、第1、第2係止群8A、8Bの各係止部8に周方向から当接する。当接する各内突部28は、各係止部8の案内面10に沿って閉栓方向へ案内され、当該各係止部8を乗り越える。これにより、外栓体17の閉栓方向への回転が許容され、当該外栓体17の装着をスムーズに行うことができる。各係止部8を乗り越えた各内突部28は、当該各係止部8の係止面9で係止されるため、外栓体17の開栓方向への回転が規制される。これにより、外栓体17は、口部3に装着された状態では当該口部3に対してロックされるため、そこからは外栓体17を開栓方向へ回すことができないようになっている。このようなロック機構18を採用すれば、当該ロック機構18の構成がより簡易なものとなって、生産効率を向上させることができる。
【0023】
内栓部材16は、口部3と外栓体17に挟み込まれている。内栓部材16は、熱可塑性エラストマーで形成されており、当該熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。本実施形態では、輸液ボトルの高い密封性を得るため、形状の復元性が高く、永久圧縮歪みが小さいものを選択することが好ましい。また、熱可塑性エラストマーに添加される可塑剤や充填材は、輸液に対する溶解性の影響が少ないものを使用すべきである。なお、内栓部材を構成する素材は、このような熱可塑性エラストマーに限定されるものではなく、イソプレンゴムやブタジエンゴムに代表される公知のゴム素材等、他の樹脂を用いることもできる。
【0024】
図3は、輸液容器の栓構造1の分解構成図であり、
図4は、閉栓状態で内栓部材16を元の形状で表した断面図である。
図3に示すように、内栓部材16を口部3へあてがい、その上方から外栓体17を口部3へ螺合させることで、当該内栓部材16が当該外栓体17と当該口部3に挟まされた状態で、当該外栓体17が口部3に装着される。内栓部材16は、天板19の下面19bに沿う略円盤状の本体部29と、当該内栓部材16の中央内側に形成された断面円形の
円柱部30とで構成されている。本体部29は、口部3の上端口3aよりも少し大きめに形成されており、当該上端口3aを覆うように設けられている。
【0025】
円柱部30は、本体部29の中央で当該本体部29の下面29aから下方に長く突出されて、口部3の内径D1よりも大きい外径D2を有している。そのため、外栓体17が口部3へ装着された
図1の状態では、内栓部材16の
円柱部30が、口部3の内側へ圧入されて弾性変形されている。内栓部材16の本体部29における、口部3の上端口3aと外栓体17の天板19とに挟まれた挟持部分29kは、外栓体17が口部3へ装着された
図1の状態では、当該天板19に押圧されて弾性変形されている。内栓部材16の本体部29は、口部3よりも少し大きめに形成されているため、本体部29の外縁を形成する外縁部29bは、外栓体17が口部3へ装着された
図1の状態では、下方へ折れ曲がり、外栓体17の側壁部20と口部3との隙間31に圧入されて弾性変形されている。
【0026】
そして、上述のロック機構18によって外栓体17が口部3に対してロックされているため、内栓部材16の
円柱部30及び挟持部分29kの弾性変形状態が保持されている。また、本体部29の外縁部29bは、閉栓状体で外栓体17の側壁部20と口部3との間に形成された隙間31に圧入されて、元の状態から弾性変形しているため(
図4参照)、外栓体17の側壁部20が当該外縁部29bから反力を受けている。一方、内栓部材16の中央内側を形成する
円柱部30は、閉栓状体で口部3の内側へ圧入されて、元の状態から弾性変形しているため(
図4参照)、当該口部3が当該
円柱部30から反力を受けている。
【0027】
外栓体17の側壁部20が外縁部29bから反力を受けていることと、口部3が
円柱部30から反力を受けていることが、上述のロック機構18を補助する補助ロックとなっており、ロック性能を高めている。これにより、内栓部材16は口部3から容易には抜けることはなく、その内栓部材16の外縁部29bから反力を受けている外栓体17は、ロック機構18と相まって強固にロックされ、開栓方向へ旋回することはない。
【0028】
次に、密封手段15によって口部3をシールする仕組みに関して説明する。内栓部材16の本体部29における、口部3の上端口3aと外栓体17の天板19とに挟まれた挟持部分29kは、当該天板19に押圧されて弾性変形されている(
図4参照)。そのため、口部3の上端口3aが第1シール面SAとなって、口部3の上端口3aと本体部29との間がシールされている。内栓部材16の
円柱部30が、口部3の内側へ圧入されて弾性変形されていることで、当該口部3の内周面3bにおける上部分3cが、全周に渡って第2シール面SBとなっている。これにより、内周面3bの上部分3cと
円柱部30との間がシールされている。特に、
円柱部30が、口部3の内方へ長く伸びて第2シール面Bが大きくなっているため、当該第2シール面SBのシール性が向上されている。
【0029】
また、外栓体17の内側上角には、内方へ突出するコーナ突部21が設けられているため、閉栓状態において当該コーナ突部21に内栓部材16の本体部29の外周上側部分29cが圧縮される。それにより、本体部29に、斜め内方へ向けて圧縮力f1が加わる(
図1参照)。この圧縮力F1は、上記の第1シール面SAと上記の第2シール面SBに作用し、当該両シール面SA、SBのシール性を向上させている。以上の第1シール面SA、第2シール面SB、及びこれらに作用する圧縮力f1によって、輸液ボトル2の密封性が高く維持されている。また、外栓体17を口部3に螺合させて装着するだけで、簡単かつ確実に第1シール面SA及び第2シール面SBを形成することができるため、生産効率が格段に向上されている。
【0030】
外栓体17を輸液ボトル2の口部3に装着する際の各部の働きについて説明する。外栓体17を口部3に装着する際、外栓体17が閉栓方向に回されると、双方のねじ部5、24によって当該外栓体17が沈み込んでいき、それと共に係止材27の各内突部28が、その下側から上側へと弾性的に変形しながら口部3の雄ねじ部5及びビード部6を乗り越える。各内突部28は、ビード部6を乗り越えた段階で弾性的に元の形状に復帰する。各内突部28がビード部6の下側に嵌り込んでいくとき、当該各内突部28は、各係止部8の案内面10に沿って閉栓方向へ案内される。内栓部材16が外栓体17によって下方へ押さえ込まれて、口部3の上端口3aで弾性変形される程度まで、当該外栓体17を閉め込む。その際、外栓体17を閉め込んだ感覚で、内栓部材16が弾性変形していることを確認できる。外栓体17は、上述のように口部3に装着された状態でロックされるため、内栓部材16は弾性変形状態で保持される。このように、外栓体17を口部3に螺合させて装着するだけで、内栓部材16を簡単かつ確実に口部3の上端口3aに押し当てることができ、当該内栓部材16の弾性変形状態を保持できる。
【0031】
次に、輸液ボトル2を密封する工程を説明する。
図5(a)〜(d)は、輸液ボトル2を密封する工程を説明する説明図である。この工程は、無菌室内に輸液ボトル2を配置して、当該輸液ボトル2に輸液Yを充填する充填工程35(
図5(a)参照)と、同じく無菌室内で輸液ボトル2の口部3に、滅菌した内栓部材16を打栓して当該口部3を閉塞する打栓工程36(
図5(b)参照)と、輸液Yが充填され、打栓された輸液ボトル2を無菌室外に移動させ、外栓体17を輸液ボトル2の口部3に装着する装着工程37(
図5(c)及び(d)参照)と、を含むことを特徴としている。このような工程を採用することで、内栓部材16を輸液ボトル2の口部3に打栓して、輸液ボトル2を密封した後は、当該輸液ボトル2を無菌室外へ出すことができるため、工程作業を構築し易く、コストを抑えることができる。なお、ここで説明した工程は、主要部分に関するものであり、輸液ボトル2や輸液容器の栓構造1の態様に応じて上記の充填工程35、打栓工程36、及び装着工程37以外の工程を含むものとしてもよい。
【0032】
上記本実施形態の輸液容器の栓構造1によれば、内栓部材16の弾性変形状態が保持され、第1シール面SA、第2シール面SB、及びこれらに作用する圧縮力f1によって、高いシール性が得られているので、過大な内圧がかかっても輸液が漏れず、輸液を確実に密封することができる。本実施形態の輸液容器の栓構造1の密封手段15は、内栓部材16と、外栓体17と、上述のロック機構18とで構成されているため、輸液ボトル2の口部3に、内栓部材16と外栓体17を設けるだけで、当該外栓体17をロックして当該輸液ボトル2を密封できる。これにより、生産効率が向上され、コストを抑えることができる。
【0033】
一方、従来の輸液容器の栓構造では、外栓体を輸液容器の口部に装着する方法として、熱源によって樹脂を溶融させるヒーター式や、微細振動と加圧力で樹脂を溶融させる超音波式の方法が用いられていた。しかし、これらの方式では、溶融した樹脂を輸液容器の内部へ侵入させてしまうおそれがあるため、外栓体装着工程における厳密な調整作業と、その工程後における精密な検査が必要であった。この点に関し、上記本実施形態の輸液容器の栓構造1では、外栓体17が輸液バッグ2の口部3に螺合されることによって、当該外栓体17が当該口部3に装着されるため、溶融した樹脂を輸液容器の内部へ侵入させてしまうおそれがない。これにより、外栓体装着工程における調整作業、及びその工程後における検査が軽減されるという有利な効果を発揮することができる。
【0034】
また、上記の外栓体装着工程後における検査に関し、次のような検査方法を使用することができる。内栓部材16が変形して外栓体17と口部3との間に入り込み過ぎてしまう事象や、外栓体17の雌ねじ部24と口部3の雄ねじ部5間に噛み込みが生じる事象等に対しては、外栓体17を口部3に螺合する際の回転トルクが規定通りであれば、上記の事象が生じておらず、その回転トルクが規定よりも高ければ、上記の事象が生じているということを判定する検査方法を使用することができる。外栓体17自体や内栓部材16自体の内部で何らかの異常が生じる事象等に対しては、X線を使用したX線画像による検査方法を使用することができる。さらに、外観の異常に対しては、カメラで外観を撮像して判定する検査方法を使用することができる。
【0035】
図6は、本発明の第2実施形態に係る輸液容器の栓構造40を示す断面図と正面図であり、
図7は、
図6の口部3のみのB−B線断面図である。本実施形態の輸液容器の栓構造40が、第1実施形態と異なる点は、ロック機構を他の態様によって構成した点である。なお、ロック機構以外の部分は、第1実施形態と共通するものとする。輸液ボトル2の口部3のビード部6には、ロック機構41の一部を構成する8つの係止部42が形成されている。8つの係止部42は、4つの第1係止群42Aと、この第1係止群と対称の位置に設けられた4つの第2係止群42Bで構成されている。第1、第2係止群42A、42Bを構成する各係止部42は、互いに隣接され、かつビード部6の外周部6bから内方へ切り欠かれるようにして形成されている。また、各係止部42は、径方向に沿う係止面43と、傾斜状に形成された案内面44とを有している。
【0036】
外栓体17の側壁部20の内周面20aには、当該内周面20aに沿って環状に配置された複数の内突部45が形成されている。複数の内突部45とビード部6に形成された係止部42との上下位置は、互いに対応しており、各内突部45の径方向寸法及び周方向寸法は、各係止部42に係止可能な寸法とされている。これら複数の係止部42と複数の内突部45によりロック機構41が構成されている。外栓体17が口部3に装着される際には、各係止部42は、各内突部45を乗り越えさせることで外栓体17の閉栓方向への回転を許容し、その一方で、各内突部45を当該各係止部42の係止面43に当てて、外栓体17の開栓方向への回転を規制する。これにより、外栓体17を輸液ボトル2の口部3へ装着した状態で、当該外栓体17をロックすることができる。
【0037】
上記で開示した各実施形態の輸液容器の栓構造は、本発明に係る輸液容器の栓構造を例示したものであり、各部の形状、寸法、構成する樹脂、成形方法等は適宜変更されるものである。例えば、外栓体や輸液容器を構成する樹脂には、上記のポリエチレン、ポリプロピレンの他、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の可撓性を有する公知のものを採用することができる。また、本発明の輸液容器の栓構造が適用される輸液容器は、上記で開示した輸液ボトルに限られるものではなく、輸液を収容するためのものであればどのような容器にでも適用することが可能である。
【0038】
図8は、上記の実施形態の輸液容器の栓構造1を適用した輸液バッグ50の正面図であり、
図9は、
図8の輸液バッグ50の上部の斜視図である。この輸液バッグ50は、薬剤等が含まれた輸液を収容するためのバッグ本体51と、このバッグ本体51の開口部分51aに設けられ内外を連通させるポート52とを備えている。
【0039】
バッグ本体51は、インフレーションチューブ製のものであり、ポリエチレンフィルム等の可撓性フィルムで袋状に形成されている。バック本体51の下端51bは閉塞されると共に、当該下端51bには、輸液バッグ50を吊り下げるための吊穴53を有する吊部54が設けられている。ポート52は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂で全体として略舟形状に形成されており、中央部から両端部に向かうに従って窄むように形成された接合部55と、この接合部55の上部に形成された中空の円筒部56とで構成されている。接合部55の上縁の直下には、段差57が設けられており、その段差57の下側がバッグ本体51の開口部51aを熱によって融着する融着部58となっている。そして、バッグ本体51の開口部51aが、その融着部58にあてがわれ融着されている。円筒部56の上部には、大径の鍔部59が形成されており、この鍔部59に、上方へ伸びる口部3が形成されており、この口部3に輸液容器の栓構造1が設けられている。
【0040】
図10(a)は、上記の実施形態の輸液容器の栓構造1を適用した他の輸液バッグ60の正面図であり、同図(b)は、その平面図である。この輸液バッグ60は、薬剤等が含まれた輸液を収容するためのバッグ本体61と、このバッグ本体61の上部で内外を連通させる円筒状のポート62とを備えている。バッグ本体61は、インフレーションチューブ製のものであり、ポリエチレンフィルム等の可撓性フィルムで袋状に形成されている。バック本体61の下端61aは閉塞されると共に、当該下端61aには、輸液バッグ60を吊り下げるための吊穴63を有する吊部64が設けられている。バッグ本体61の上端61bは、熱で融着されることで閉塞されると共に、当該上端61bには筒状の小径口65が形成されて、この小径口65が、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑製樹脂からなるポート62に熱で融着されている。ポート62の一端は輸液バッグ60の口部3となっており、この口部3に輸液容器の栓構造1が設けられている。
【0041】
図11(a)は、上記の実施形態の輸液容器の栓構造1を適用した他の輸液ボトル70の正面図であり、同図(b)は、その平面図である。この輸液ボトル70はブロー成形法によって成形されたものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑製樹脂からなる。輸液ボトル70のボトル本体71は、中央の融着部72で第1収容部73と第2収容部74の2区分に仕切られている。これら各収容部73、74には、それぞれ異なる薬剤が収容されるようになっている。使用時に何れかの収容部73、74が押圧されることで、融着部72が剥離され、両収容部72、74に収容された薬剤同士が混合される。第1収容部73の口部3に、輸液容器の栓構造1が設けられていると共に、第2収容部74の口部3にも、同輸液容器の栓構造1が設けられている。
【0042】
上記の各実施形態において、外栓体に設けられた内突部や切欠部、口部に設けられた係止部の形状や寸法は、適宜変更することができる。例えば、第2実施形態において、ビード部を切り欠いて係止部を形成したが、ビード部に係止部として外方へ突出するリブを設けて、外栓体に当該リブに係止する内突部を形成してもよい。また、本実施形態では、外栓体を口部に螺合させて装着しているが、外栓体を口部に押し込んで装着できる装着機構を採用してもよい。
【0043】
また、ロック機構として他の態様のものを採用することもできる。
図12は、ロック機構を他の態様によって構成した輸液容器の栓構造80を示す口部81と、外栓体90の雌ねじ部91の一部の斜視図である。ロック機構以外の部分は、第1実施形態と共通する。口部81の雄ねじ部82の最下部82aの近傍に、係止部83が形成されている。この係止部83は、本体84の外周面84aから外方へ突出するように形成されたものであり、
図12手前側の係止面85と、
図12奥側の案内面86とを有している。
【0044】
外栓体90の雌ねじ部91の切り初め付近91aには、その一部を切り欠いた切欠部92が形成されている。切欠部92と上記の係止部83との上下位置は、互いに対応している。これら切欠部92と係止部83によりロック機構100が構成されている。内栓部材が弾性変形されるまで外栓体90が閉栓方向に回され、外栓体90の雌ねじ部91が係止部83に到達すると、係止部83の案内面86により、雌ねじ部91の最下部91aを乗り越えさせることで外栓体90の閉栓方向への回転を許容し、その一方で、切欠部92を係止部83の係止面85に当てて、外栓体90の開栓方向への回転を規制する。これにより、外栓体90を輸液ボトル82の口部81へ装着した状態で、当該外栓体90をロックすることができる。上記実施形態では、輸液を収容する輸液ボトル及び輸液バッグに本発明の輸液容器の栓構造を適用した例を示したが、透析用容器や医療用食器を密封するための栓構造に、本発明の輸液容器の栓構造を転用させることもできる。なお、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内の全ての変更が含まれる。