(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体チップが、前記補強部材の外側に、第1の主面に形成された前記機能部と接続された電極パッドを前記第1の主面に有していることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
前記補強部材充填工程が、補強部材溶液を、50μm以下の前記隙間に毛管現象により充填する溶液充填工程と、前記補強部材溶液を固体化する硬化工程とを、有することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
前記半導体チップが、前記補強部材の外側に、前記機能部と接続された電極パッドを有していることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1から
図3に示すように、第1実施形態の半導体装置である撮像装置10は、半導体チップ20と、スペーサー30と、カバー部材である透明平板部40と、補強部材50と、を具備する。後述するように、撮像装置10では、半導体チップ20と透明平板部40とはスペーサー30を介して接合されている。補強部材50はスペーサー30を介した接合の接合強度を補強するだけでなく、信頼性向上、特に受光部21への水分の進入を防止するために配設されている。
【0012】
半導体チップ20は、中央付近に機能部である固体撮像部すなわち受光部21と、受光部21の上に配設された複数のマイクロレンズ22と、を有する固体撮像子チップである。額縁状のスペーサー30は、受光部21を取り囲むように半導体チップ20上に配置されている。透明平板部40は、スペーサー30を介して半導体チップ20上に配置されている。
【0013】
撮像装置10では、半導体チップ20はシリコンからなり、公知の半導体プロセスにより第1の主面24に、COMS撮像素子等からなる受光部21と、受光部21と配線(不図示)を介して電気的に接続された複数の電極パッド23と、が形成される。さらに受光部21上にマイクロレンズ22が形成される。
【0014】
スペーサー30には、所望の形状に加工でき、所望の機械的強度の材料を用いる。例えば、シリコン等の半導体、セラミック、金属、またはテフロン(登録商標)等のプラスチックを用いる。特に、感光性接着フィルムは、所望の形状への加工が容易であり、かつ、接着剤等を用いることなく透明平板部40および半導体チップ20と接合することができるため好ましい。
【0015】
透明平板部40の材料は、撮像する光の波長帯域において透明であればよく、例えば、ホウケイ酸ガラス等のガラス、石英、またはサファイヤ等を用いる。
【0016】
補強部材50の材料には、液体状態の補強部材溶液が加熱により固体化する熱硬化性樹脂または紫外線照射により固体化する紫外線硬化樹脂を用いる。また、撮像装置10の信頼性向上のためには、補強部材50には低透湿性が要求される。このため、補強部材50としては、アモルファスフッ素樹脂が好ましく、特に、酸素原子を有するパーフルオロシクロアモルファスポリマー、例えば、サイトップ(登録商標)が好ましい。
【0017】
そして、透明平板部40の平面視寸法は、スペーサー30の平面視寸法より大きく、半導体チップ20の平面視寸法より小さい。
【0018】
ここで、平面視寸法とは、撮像装置10を上面(
図3、Z方向)から観察したときの、外周部のX方向およびY方向の寸法である。すなわち、
図3に示すように、半導体チップ20の平面視寸法を、X20、Y20、スペーサー30の平面視寸法をX30、Y30、透明平板部40の平面視寸法をX40、Y40としたとき、X20>X40>X30、かつ、Y20>Y40>Y30である。撮像装置10では、例えば、X30=Y30、Δ40=(X40−X30)=100〜500μm、Δ20=(X20−X40)=300〜500μmである。
【0019】
補強部材50は、スペーサー30の外側の、半導体チップ20と透明平板部40との隙間を充填する。補強部材50の一部は半導体チップ20上にも広がっている。このため、補強部材50の平面視寸法X50、Y50は、透明平板部40の平面視寸法より大きく、半導体チップ20の平面視寸法より小さい。すなわち、X20>X50>X40、かつ、Y20>Y50>Y40、である。
【0020】
補強部材50の厚さとなるスペーサー30の厚さdは、受光部21上に設けられたマイクロレンズ22と透明平板部40とが接触しないように、マイクロレンズ22の高さを超える値に設定される。なお、透明平板部40とスペーサー30と半導体チップ20により囲まれる封止された封止空間への水分浸入を防止するためには、厚さdは薄いことが好ましい。
【0021】
撮像装置10では、補強部材50は、補強部材溶液が半導体チップ20と透明平板部40との隙間に、毛管現象により充填された後に固体化されている。すなわち、補強部材溶液は透明平板部40外周に滴下されると、毛管現象により隙間を充填する。このため、補強部材は気泡を残留することなく確実に隙間を充填する。補強部材溶液を毛管現象により隙間に充填するためには、隙間の厚さdは、50μm以下が好ましい。
【0022】
さらに、耐湿性を考慮すると、隙間は、厚さdが10〜50μm、奥行きΔ40が100〜500μmが好ましい。
【0023】
すなわち、厚さdが、上記範囲下限以上であれば、高さ10μm未満の通常のマイクロレンズ22を収納することができ、厚さdが、前記範囲上限以下かつ奥行きΔ40が前記範囲内であれば毛管現象により隙間を充填し、かつ、所望の信頼性が確保できる。
【0024】
補強部材溶液としては、毛管現象により透明平板部40と半導体チップ20との隙間に良好に充填されるように低粘度溶液が選択される。補強部材溶液の粘度は、10
1〜10
4mPa・sが好ましく、特に好ましくは、10
1〜10
2mPa・sである。
【0025】
なお、透明平板部40と半導体チップ20との平面視寸法が同じ、言い換えれば、端面が揃っている撮像装置では、充填する隙間が上面になるように配置し、かつ4つの側面に塗布するためには回転操作も必要となる。このため、低粘度溶液を側面に塗布することは容易ではない。
【0026】
これに対して、透明平板部40よりも半導体チップ20が平面視寸法が大きい撮像装置10では、透明平板部40の外周の半導体チップ20に塗布することにより容易に隙間に充填することが可能である。また、余分な溶液は半導体チップ20上に広がって保持されるために、低粘度溶液の塗布が容易である。
【0027】
撮像装置10は、半導体チップ20と透明平板部40との隙間を容易に、かつ確実に封止できるために、信頼性、特に耐湿信頼性が高い。
【0028】
また、半導体チップと透明平板部とが同じ平面視寸法の公知の撮像装置では、撮像装置を配線板に実装するために、半導体チップを貫通する貫通配線および第2の主面(裏面)25に裏面電極パッドを作製する必要があった。
【0029】
これに対して、撮像装置10は、透明平板部40の平面視寸法は、スペーサー30の平面視寸法より大きく、半導体チップ20の平面視寸法より小さい。また、補強部材50の平面視寸法は、透明平板部40の平面視寸法より大きく半導体チップ20の平面視寸法より小さい。
【0030】
このため、撮像装置10は、半導体チップ20が、第1の主面(おもて面)24に形成された受光部21と接続された電極パッド23を、第1の主面24の補強部材50の外側に有している。このため、撮像装置10を配線板に実装するときに、電極パッド23と配線板上の接続ランドとをワイヤボンディングまたはフリップチップボンディング等により接続することが可能である。
【0031】
すなわち、撮像装置10は、電極パッド23を第1の主面24に有するために、各種の実装方法を用いて配線板に実装できる。
【0032】
次に、
図4を用いて、撮像装置10の製造方法を説明する。
【0033】
<ステップS10>
最初に、複数の透明平板部40を作製するためのガラスウエハに、スペーサー30となる感光性樹脂フィルムが貼り付けられる。感光性樹脂フィルムはフォトリソグラフィにより複数のスペーサー30に加工される。次に、外形寸法がスペーサー30より大きく、半導体チップ20より小さくなるようにガラスウエハが切断される。すなわち、スペーサー30が接合された複数の透明平板部40が、1枚のガラスウエハから作製される。
【0034】
<ステップS11>
一方、半導体チップ20は、シリコンウエハを用い、公知のプロセスにより多数のチップが一括作製された後、個片化される。
【0035】
<ステップS12>
スペーサー30が接合された透明平板部40と半導体チップ20とが、スペーサー30が半導体チップ20の受光部21を取り囲むように貼り合わされ、さらに、加熱処理されることで接合される。
【0036】
すなわち、機能部を有する半導体チップと半導体チップの平面視寸法より小さいカバー部材とを、機能部を取り囲むように半導体チップ上に配置された、カバー部の平面視寸法より小さい額縁状のスペーサーを介して、接合する接合工程が行われる。
【0037】
<ステップS13>
次に、補強部材溶液であるアモルファスフッ素樹脂溶液が、透明平板部の外周に塗布されると、毛管現象により透明平板部と固体撮像素子との隙間に充填される。
塗布方法としては、例えば、ディスペンサの先端ノズルから溶液を押し出して塗布するディスペンス法を用いる。
【0038】
そして、透明平板部40の平面視寸法はスペーサー30よりも大きく、半導体チップ20よりも小さく設定されているため、補強部材50を充填するときには、半導体チップ20上の透明平板部40の周辺部に補強部材溶液を滴下するだけで、毛管現象によって容易に隙間に充填することができる。
【0039】
以上の説明のように、補強部材溶液を隙間に毛管現象により充填する溶液充填工程が行われる。
【0040】
<ステップS14>
加熱処理または紫外線照射処理により、アモルファスフッ素樹脂溶液を硬化処理することで、固体のアモルファスフッ素樹脂からなる補強部材50とする。すなわち、補強部材溶液を固体化する硬化工程が行われる。
【0041】
以上の説明のように、スペーサーの外側の、半導体チップとカバー部材との隙間を、補強部材で充填する補強部材充填工程として、補強部材溶液を隙間に毛管現象により充填する溶液充填工程と、補強部材溶液を固体化する硬化工程と、が行われる。
【0042】
また、以上の説明では、スペーサー30を接合した透明平板部40を、半導体チップ20に接合する例を示したが、スペーサー30を接合した半導体チップ20を、透明平板部40に接合してもよい。
【0043】
本実施形態の半導体装置の製造法は、信頼性の高い撮像装置10が製造可能である。
【0044】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態の半導体装置である撮像装置10Aについて説明する。撮像装置10Aは撮像装置10と類似しているため同じ構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0045】
図5および
図6に示すように、撮像装置10Aの構造は撮像装置10の構造と類似しているが、撮像装置10Aでは、スペーサー35が単結晶シリコンからなる。このため、スペーサー35は、透明平板部40とは陽極接合法により接合されており、半導体チップ20とは接着剤36によって接合されている。
【0046】
ここで、スペーサー35は、接着剤36によって半導体チップ20と接合されているために、接合のときに接着剤36が受光部21の領域にはみ出すことによって撮像装置の画像不良が生じるおそれがある。
【0047】
このため、スペーサー35の、半導体チップ20と接する端部のミラー指数(100)の端面35Aには、ミラー指数(111)のテーパー面35Bが形成されている
撮像装置10Aは、スペーサー端部の端面35Aにテーパー面35Bが設けられているため、接合のときに、接着剤36がはみ出しても、テーパー面35Bにより形成された空間に収納される。このため、接着剤36が受光部21の領域にはみ出すことがない。
【0048】
シリコンからなるスペーサー35は、樹脂材料からなるスペーサーに比べて透湿性が極めて低い。
【0049】
このため、撮像装置10Aは、撮像装置10が有する効果を有し、さらに信頼性が高く、かつ、撮像装置の画像不良が生じるおそれがない。
【0050】
次に、
図6および
図7(A)〜
図7(F)を用いて、撮像装置10Aの製造方法について説明する。なお、
図7(A)〜
図7(F)は、スペーサー35が接合された2つの透明平板部40を含む領域の断面模式図である。また
図6は、透明平板部40とスペーサー35と半導体チップ20との接合部の部分断面図である。
【0051】
図7(A)に示すように、単結晶シリコン(100)からなるウエハ31の第1の主面33に、フォトレジスト32が、スペーサー35の形状、すなわち額縁形状にパターニングされる。
【0052】
図7(B)に示すように、フォトレジスト32をエッチングマスクとして、ICP-RIE法により、ドライエッチングが行われる。すると、第1の主面33に、額縁状の凸部を残して、深さ60μm〜100μmの凹部が形成されたウエハ31Aが作製される。
すなわち、主面のミラー指数が(100)の単結晶シリコンからなるウエハ31の第1の主面33をパターンエッチングして、額縁状の凸部を形成する工程が行われる。
【0053】
図7(C)に示すように、ウエハ31Aの第1の主面33とガラスウエハ41とが陽極接合される。
すなわち、ウエハ31Aの第1の主面33を、透光性基板41と接合し接合基板を作製する工程が行われる。
【0054】
図7(D)に示すように、接合基板のバックグラインド処理、すなわち、ウエハ31Aの第2の主面(裏面)34の研削加工が行われる。バックグラインド処理は、凹部が開口しない厚さ、例えば、凹部の深さ+10μmの厚さのウエハ31Bになるまで行われる。
【0055】
図7(E)に示すように、接合基板のウエハ31Bの第2の主面34側から、KOHまたはTMAH等のアルカリ溶液により、ウエットエッチングが行われる。
【0056】
アルカリ溶液による、シリコン(100)ウエハのウエットエッチングでは、凹部が露出すると、端部のミラー指数(100)の端面35Aには、ミラー指数(111)のテーパー面35Bが形成される。これは、シリコンの(111)面のウエットエッチング速度が、(100)面のエッチング速度に比べて約1/100と極めて遅いためである。
【0057】
以上の説明のように、単結晶シリコン(100)からなるウエハの第2の主面側から接合基板をエッチングして、ミラー指数(111)のテーパー面が形成されたミラー指数(100)の端面のある端部を有する額縁状のスペーサー35を形成する工程が行われる。
【0058】
また、ウエットエッチング法では、研削のような機械的加工法と異なり、シリコンを徐々に溶解させながら除去していく。このため、機械的加工法のように、大きい破片がガラスウエハ41に衝突することがないために、ガラスウエハ41にキズが入ったり汚れが付着したりすることがない。
【0059】
図7(F)に示すように、複数のスペーサー35が接合されたガラスウエハ41を切断することにより、スペーサー35が接合された複数の透明平板部40が作製される。
【0060】
半導体チップ20の作製方法は、撮像装置10の作成方法と同じである。
【0061】
図6に示すように、スペーサー35が接合された透明平板部40は、スペーサー35が、半導体チップ20の受光部21を取り囲むように位置合わせし、接着剤36により接着される。接着剤36としては、例えば紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いる。接着剤36はディスペンス法、印刷法、または転写法により供給される。
【0062】
すなわち、機能部を有する、スペーサー35の平面視寸法より大きい半導体チップを、機能部がスペーサー35の内部に収納されるように接合基板と接着剤を用いて接合する接合工程が行われる。
【0063】
接着剤36を用いて圧着しながら接合すると、余剰の未硬化の接着剤36が受光部21に流れ出すおそれがある。しかし、撮像装置10Aでは、スペーサー端部の端面35Aにテーパー面35Bが設けられているため、接着剤36が受光部21の領域にはみ出すことによって生じる撮像装置の画像不良を防止ができる。
【0064】
なお、端面35Aとテーパー面35Bとがなす角度θは、30度〜70度であれば、上記効果が顕著である。
【0065】
特に、主面のミラー指数が(100)の単結晶シリコンをウエットエッチングしてミラー指数(100)の端面35Aのある端部を形成したスペーサー35は、常にθ=54.7度となるために、製造が容易である。
【0066】
さらに、撮像装置10の製造方法と同様に、補強部材溶液を前記隙間に毛管現象により充填する溶液充填工程と、補強部材溶液を固体化する硬化工程とを、有する、スペーサー
の外側の、半導体チップと透光性基板との隙間に補強部材を充填する補強部材充填工程が行われ、撮像装置10Aが完成する。
【0067】
本実施形態の撮像装置10A、および、その製造方法は、第1実施形態の撮像装置10等と同じ効果を有し、さらに信頼性の高い撮像装置10Aを高歩留まりで製造することができる。
【0068】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等ができる。