(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
p型オーミック電極が、少なくともチタン、アルミニウムを含む二元系の合金層であり、合金層のチタンとアルミニウムの割合が、アルミニウムが40〜70質量%、チタンが20〜50質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した実施形態の炭化珪素半導体装置及びその製造方法について、図を用いてその構成を説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0023】
〔炭化珪素半導体装置(第1実施形態)〕
図1は、本発明の炭化珪素半導体装置の一例を示した断面模式図である。
図1に示す炭化珪素半導体装置10は、炭化珪素基板1と、炭化珪素基板1上に形成されたn型炭化珪素層2と、n型炭化珪素層2の表面近傍に形成されたp型不純物領域3と、p型不純物領域上に形成されたp型オーミック電極4と、p型オーミック電極4を覆うようにn型炭化珪素層2上に形成されたショットキー電極5と、を備え、p型オーミック電極4はp型不純物領域3の表面に設けられた凹部3a内に形成されており、p型オーミック電極の上面はn型炭化珪素層の表面2aよりも低い位置にある。また、ショットキー電極5上には表面パッド電極6が備えられ、炭化珪素基板1の裏面には裏面オーミック電極7が備えられている。
なお、図示しないボンディングワイヤは表面パッド電極6上に形成される。
【0024】
炭化珪素基板1は例えば、4H−SiC単結晶基板である。また、面方位はSi面を用いても、C面を用いてもよく、オフ角が設けられていてもよい。この炭化珪素基板1は、高濃度にn型不純物がドープされたn型半導体基板が望ましい。
【0025】
炭化珪素基板1上にはn型エピタキシャル層(n型炭化珪素層)2が形成されており、n型エピタキシャル層2には複数のp型不純物領域3が形成されている。これにより、p型不純物領域3とn型エピタキシャル層2との界面にはpn接合領域が形成され、ショットキーバリアダイオードの整流性が向上される。また、pn接合領域の間隔を狭くすることにより、リーク電流を小さくすることができる。
なお、後述する炭化珪素半導体装置の製造方法において説明するように、p型不純物領域3は、p型不純物濃度の違いにより、高濃度p型不純物領域と、その高濃度p型不純物領域を囲繞する低濃度p型不純物領域からなるものとしてもよい。また、p型不純物領域3は、エピタキシャル成長で形成されたものであってもよい。
【0026】
図2は、p型オーミック電極4の周辺の拡大図であって、後述する合金化前のものである。
図2に示すように、p型オーミック電極4は、p型不純物領域3側に設けられた第1合金層4aと、第1合金層4aを挟んでp型不純物領域3と反対側に設けられた第2合金層4bとの二層構造を有している。なお、電極の断面観察において二層構造が観察されるp型オーミック電極4は、オーミック特性が良好で且つ表面状態が良好な電極となっている。これは、後述する炭化珪素半導体装置の製造方法において説明するように、p型オーミック電極4の形成において、チタンを蒸着した後にアルミニウムを積層するという順序になっていることと関連している。したがって、上記積層順序と異なる場合には、明確な層として観察されない。
なお、第1合金層4aと第2合金層4bとの境界は、電子顕微鏡を用いて断面を観察した際にコントラストが異なる境界から定めることができる。
【0027】
p型オーミック電極4は、少なくともチタン、アルミニウムを含む二元系の合金層である。そして、この合金層のチタンとアルミニウムの割合は、アルミニウム(Al)が40〜70質量%、チタン(Ti)が20〜50質量%であることが好ましい。アルミニウムが40質量%未満であると、オーミック性を示さないために好ましくなく、アルミニウムが70質量%を越えると、余剰のアルミニウムが液相を形成して周囲に飛散し、SiO
2等の保護膜と反応してしまうために好ましくない。また、Tiが20%未満であると、余剰のアルミが周囲に飛散し、SiO
2保護膜と反応してしまうために好ましくなく、50質量%を超えるとオーミック性を示さないために好ましくない。
【0028】
図1に示すように、p型不純物領域3及びn型エピタキシャル層2とショットキー金属部5との界面には、金属と半導体との接合によって生じるショットキー障壁が形成され、ショットキー接合領域が形成される。これにより、炭化珪素半導体装置(ショットキーバリアダイオード)10の順方向の電圧降下を低くするとともに、スイッチング速度を速くすることができる。
なお、電極全体で前記ショットキー接合領域が占める面積の割合を大きくすることにより、順方向に電流を流したときの電圧降下を小さくして、電力損失を小さくすることができる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の炭化珪素半導体装置10によれば、p型オーミック電極4がp型不純物領域3の表面に設けられた凹部3a内に形成されており、p型オーミック電極4の上面4cがn型炭化珪素層2の表面2aよりも低い位置にあるので、この炭化珪素半導体装置10の表面パッド電極6に超音波振動を利用したワイヤボンディングを行っても、超音波振動によりp型オーミック電極4がp型不純物領域3の表面上を揺すられることがなく、p型オーミック電極4が破壊されることがない。
【0030】
〔炭化珪素半導体装置の製造方法(第1実施形態)〕
次に、本発明の実施形態である炭化珪素半導体装置10の製造方法について説明する。
図3〜
図8は、本実施形態の炭化珪素半導体装置10の製造方法の一例を説明する工程断面図である。なお、
図1及び
図2で示した部材と同一の部材については同一の符号を付している。
【0031】
(n型炭化珪素層形成工程)
まず、炭化珪素基板1上にn型エピタキシャル層(n型炭化珪素層)2を形成する。
【0032】
(p型不純物領域形成工程)
<マスク形成工程>
次に、
図3に示すように、p型ドーパントを注入するためのマスクを形成する。
まず、CVD法により、N型エピタキシャル層2上に酸化膜を形成する。
次に、その酸化膜上にレジストを塗布した後、ステッパーによるフォトレジストパターンを形成する。ステッパーを用いることにより微細パターンからなるフォトレジストパターンを形成することができる。その後、酸化膜をドライエッチングして窓部11aを形成する。
レジストマスクをp型不純物のイオン注入用マスクとして用いてもよい。
高温でイオン注入を行う場合、レジストマスクを使用できないため、SiO
2等の酸化膜マスクや、SiN等の窒化膜マスクその他のイオン注入用のマスクを用いることができる。
【0033】
<ドーパント注入工程>
次に、
図4に示すように、窓部11aが形成された酸化膜11をマスクとして用いて、p型不純物となるアルミニウムまたはボロンをn型エピタキシャル層2にイオン注入してp型不純物領域3を形成する。
イオン注入は、室温〜高温(600℃程度)で行うことができる。Alのイオン注入量は、10
18〜10
20/cm
2程度がよい。多すぎると結晶のダメージが大きく、少なすぎるとN
dが少なくなるからである。
マスクはレジストの場合、有機洗浄や灰化処理により除去する。SiO
2等の場合、HF等の酸によりエッチング除去する。
イオンの活性化は1700〜1850℃程度の温度で行う。雰囲気はAr、処理時間は数分〜数10分程度が好ましい。表面保護膜によって面あれを防止してもよい。活性化後、保護マスクを付けた場合は、保護マスクを除去する。保護マスクが炭化膜の場合は酸化するとよい。
【0034】
(凹部形成工程)
次に、
図5及び
図6に示すように、p型不純物領域3に、p型オーミック電極を形成するための凹部3aを形成する。
<マスク形成工程>
まず、
図5に示すように、全面にレジストを塗布した後、p型不純物領域3に形成する凹部に対応した窓部12aを有するフォトレジストパターンを形成する。
【0035】
<ドライエッチング工程>
次に、
図6に示すように、窓部12aを有するレジストマスク12を用いて、ドライエッチングにより、p型不純物領域3の表面に深さ100〜300nm程度の凹部3aを形成する。100nmよりも浅いと、上面がn型炭化珪素層2の表面よりも低い位置にあるp型オーミック電極4を形成するのが困難であり、300nmよりも深いと、エッチングに時間がかかり過ぎるからである。
レジストマスクは逆テーパー型にしておくとよい。
ドライエッチングの条件としては例えば、エッチングガスにSF
6、希釈ガスにAr、圧力は1Pa、RF出力は500W程度で行うことができる。
SiO
2等の酸化膜マスクや、SiN等の窒化膜マスクを用いてドライエッチングを行ってもよい。
【0036】
(p型オーミック電極形成工程)
次に、
図7に示すように、レジストマスク12を用いて、p型不純物領域3の凹部3a内に、p型オーミック電極4を形成する。この際、p型オーミック電極4の上面4cがn型炭化珪素層2の表面2aよりも低い位置になるようにp型オーミック電極4を形成する。
p型オーミック電極形成工程は、p型不純物領域3を形成したn型エピタキシャル層2上にチタン層を形成する工程(チタン層形成工程)と、チタン層上にアルミニウム層を形成する工程(アルミニウム層形成工程)と、熱処理により合金化する工程(熱処理工程)とから概略構成されている。
電子ビーム蒸着等の蒸着法やスパッタ法を用いて形成する。TiAlの厚さは、各々30nm、80nm程度が好ましい。上記マスクの上にTiAlを堆積し、リフトオフして電極を形成する。上記マスクを除去、TiAlを堆積後、フォトリソグラフィを行い、エッチングにより電極を形成してもよい。エッチングの場合は、残ったレジストを溶剤や灰化処理にて除去する。
合金化熱処理は、900℃前後、Ar雰囲気中で、数分〜数10分行うのが好ましい。
【0037】
<チタン層形成工程>
まず、前処理として例えば硫酸+過酸化水素、アンモニア+過酸化水素、フッ酸水溶液、塩酸+過酸化水素、フッ酸水溶液等を用いて基板をRCA洗浄する。
次に、スパッタ法または蒸着法を用いて、p型不純物領域3を形成したn型エピタキシャル層2上にチタン層を形成する。これにより、チタン層4aが形成される。
【0038】
<アルミニウム層形成工程>
次に、スパッタ法または蒸着法を用いて、チタン層4a上にアルミニウム層を形成する。これにより、アルミニウム層4bが形成される。
ここで、チタン層4a及びアルミニウム層4bの膜厚は、それぞれ1〜200nmであることが好ましく、10〜100nmが特に好ましい。チタン層4a及びアルミニウム層4bの膜厚が1nm未満であるとオーミック接合に充分な電極層が形成できないために好ましくなく、200nmを超えると周囲の絶縁膜等に影響が出るおそれがあるために好ましくない。チタン層4a及びアルミニウム層4bを合わせた膜厚は凹部3aの深さを超えない膜厚とする。
【0039】
<熱処理工程>
次に、積層されたチタン層4aとアルミニウム層4bとを熱処理により合金化する。熱処理には、赤外線ランプ加熱装置(RTA装置)等を用いることができる。熱処理温度は、880〜930℃が好ましく、890〜910℃がより好ましい。熱処理温度が880℃未満であると合金化反応が充分に促進しないため好ましくなく、930℃を超えると拡散の制御が困難となって所望の合金組成を得られないために好ましくない。また、熱処理時間は、1〜5分が好ましく、1〜3分がより好ましい。熱処理時間が1分未満であると合金化反応が充分に促進しないため好ましくなく、5分を超えると基板との反応が進行しすぎてしまい電極の表面が荒れてしまうために好ましくない。なお、熱処理は、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましく、アルゴン雰囲気で行うことがより好ましい。このようにして、チタン−アルミニウムからなる二元系の合金膜を形成する。
【0040】
次に、レジストマスク12を除去する。
【0041】
(ショットキー電極形成工程)
次に、
図8に示すように、p型オーミック電極4を覆うようにn型炭化珪素層2上にショットキー電極5を形成する。ショットキー電極5の膜厚は100〜数100nm程度が好ましい。その後、ショットキー障壁高さを適切に制御するため、ショットキー熱処理を行う。ショットキー熱処理はショットキー電極金属により異なるが、Tiの場合、500℃前後で行う。
<マスク形成工程>
まず、p型オーミック電極4を形成したn型エピタキシャル層2上にレジストを塗布した後、フォトレジストパターンを形成する。
【0042】
<金属膜形成工程>
次に、スパッタ法または蒸着法で、窓部を形成したレジスト上に、例えば、チタンまたはモリブデンなどからなる金属膜を形成する。
次に、そのレジストを除去(リフトオフ)することにより、窓部に形成された金属膜のみをp型オーミック電極4を覆うように残すことができる。
【0043】
<熱処理工程>
次に、ショットキー障壁制御のための熱処理(例えば、600℃での熱処理)を不活性ガス雰囲気で行い、ショットキー電極5を形成する。ショットキー電極5は、炭化珪素基板1に接続され、ショットキーコンタクトを形成している。
【0044】
(表面パッド電極形成工程)
次に、
図8に示すように、ショットキー電極5上に表面パッド電極6を形成する。パッド電極にはAl等を用い、その厚さは必要によるが、通常、数〜10μm程度とする。
<マスク形成工程>
まず、ショットキー金属部8を形成したn型エピタキシャル層2上にレジストを塗布した後、露光・現像により、フォトレジストパターンを形成する。
【0045】
<金属膜形成工程>
次に、スパッタ法で、窓部を形成したレジスト上に、例えば、アルミニウムからなる金属膜を形成する。
次に、前記レジストを除去(リフトオフ)することにより、窓部に形成された金属膜のみをショットキー電極5を覆うように残すことができる。
これにより、ショットキー電極5に電気的に接続された表面パッド電極6を形成する。
【0046】
(裏面オーミック電極形成工程)
次に、
図8に示すように、炭化珪素基板1の裏面に、裏面オーミック電極を形成する。裏面オーミック電極は例えば、Ni等を用い、1000℃程度、数分〜数10分、Ar雰囲気で熱処理する。この熱処理は、上記ショットキー熱処理温度よりも高いため、ショットキー電極形成前に行うか、又は、表面側に影響を与えない条件でレーザーアニールを用いて、ショットキー電極形成後に行うのが好ましい。
<保護膜形成工程>
まず、CVD法により、表面パッド電極6上に、たとえば、シリコン酸化膜(SiO
2)からなる保護膜(図示せず)を形成する。
この後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により、保護膜の平坦化を行ってもよい。
【0047】
<裏面オーミック電極形成工程>
スパッタ法または蒸着法で、p型不純物領域3を形成した炭化珪素基板1の裏面に、例えば、Niからなる金属膜を形成する。
次に、熱処理(例えば、950℃の熱処理)を不活性ガス雰囲気または真空中で行って、裏面オーミック電極7とする。これにより、裏面オーミック電極7は、炭化珪素基板1の裏面と良好なオーミックコンタクトを形成する。
次に、保護膜を除去する。
【0048】
以上の工程により、本実施形態の炭化珪素半導体装置10を製造することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の炭化珪素半導体装置10の製造方法によれば、p型不純物領域3の表面に凹部3aを形成する工程と、凹部3a内に、n型炭化珪素層2の表面2aよりも低く配置するようにp型オーミック電極4を形成する工程と、を有するので、表面パッド電極に超音波振動を利用したワイヤボンディングを行っても、超音波振動によりp型オーミック電極がp型不純物領域の表面上を揺すられることがなく、p型オーミック電極が破壊されることがない炭化珪素半導体装置を製造することができる。
【0050】
〔炭化珪素半導体装置(第2実施形態)〕
図9は、本発明の炭化珪素半導体装置の一例を示した断面模式図である。
第1実施形態で示した部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図9に示す炭化珪素半導体装置20は、炭化珪素基板1と、炭化珪素基板1上に形成されたn型炭化珪素層2と、前記n型炭化珪素層2の表面2aに設けられた窪み部2bの下方に形成されると共に、表面2aよりも低い位置に配置するp型不純物領域23と、p型不純物領域23上に形成されたp型オーミック電極24と、p型オーミック電極24を覆うようにn型炭化珪素層2上に形成されたショットキー電極5と、を備え、p型オーミック電極24はp型不純物領域23の表面に設けられた凹部23a内に形成されており、p型オーミック電極24の上面24aはn型炭化珪素層2の表面2aよりも低い位置にある。また、ショットキー電極5上には表面パッド電極6を備え、炭化珪素基板1の裏面には裏面オーミック電極7が備えられている。
第1実施形態とは、p型不純物領域23の最上面23aがn型炭化珪素層2の表面2aよりも低い位置に形成されている点で相違する。
図9に示した例では、p型オーミック電極24の表面24aはp型不純物領域23の最上面23aよりも高い位置にあるが、最上面23aよりも低い位置にあってもよい。
なお、図示しないボンディングワイヤは表面パッド電極6上に形成される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の炭化珪素半導体装置20によれば、n型炭化珪素層2の表面2aに設けられた窪み部2bの下方に形成されると共に、表面2aよりも低い位置に配置するp型不純物領域23を備え、p型オーミック電極24がp型不純物領域23の表面に設けられた凹部23a内に形成されており、p型オーミック電極24の上面24cがn型炭化珪素層2の表面2aよりも低い位置にあるので、この炭化珪素半導体装置20の表面パッド電極6に超音波振動を利用したワイヤボンディングを行っても、超音波振動によりp型オーミック電極24がp型不純物領域23の表面上を揺すられることがなく、p型オーミック電極24が破壊されることがない。
【0052】
〔炭化珪素半導体装置の製造方法(第2実施形態)〕
次に、本発明の実施形態である炭化珪素半導体装置20の製造方法について説明する。
図10〜
図15は、本実施形態の炭化珪素半導体装置20の製造方法の一例を説明する工程断面図である。
【0053】
(n型炭化珪素層形成工程)
まず、炭化珪素基板1上にn型エピタキシャル層(n型炭化珪素層)2を形成する。
【0054】
(窪み部形成工程)
<マスク形成工程>
次に、n型エピタキシャル層2の表面に窪み部2bを形成すると共に、p型ドーパントを注入してp型不純物領域23を形成するためのマスクを形成する。
このマスクは
図3を用いて説明したのと同様に、CVD法により、n型エピタキシャル層2上に酸化膜を形成する。
次に、その酸化膜上にレジストを塗布した後、ステッパーによるフォトレジストパターンを形成する。ステッパーを用いることにより微細パターンからなるフォトレジストパターンを形成することができる。その後、酸化膜をドライエッチングして窓部21aを形成する。
レジストからなるマスクを用いてもよい。
【0055】
<ドライエッチング工程>
次に、
図10に示すように、窓部21aが形成された酸化膜21をマスクとして用いて、ドライエッチングにより、n型エピタキシャル層2の表面に深さ50〜100nm程度の窪み部2bを形成する。50nmよりも浅いと、上面がn型炭化珪素層2の表面よりも低い位置にあるp型オーミック電極24を形成するのが困難であり、100nmよりも深いと、エッチングに時間がかかり過ぎるからである。
ドライエッチングの条件としては例えば、エッチングガスにSF
6、希釈ガスにAr、圧力は1Pa、RF出力は500W程度で行うことができる。
SiO
2等の酸化膜マスクや、SiN等の窒化膜マスクを用いてドライエッチングを行ってもよい。
【0056】
(p型不純物領域形成工程)
次に、
図11に示すように、窓部21aが形成された酸化膜21をマスクとして用いて、p型不純物となるアルミニウムまたはボロンをn型エピタキシャル層2の窪み部2bの下方部分にイオン注入してp型不純物領域23を形成する。酸化膜21を除去した後、注入したイオンの活性化を行うために熱処理を行う。
【0057】
(凹部形成工程)
次に、
図12及び
図13に示すように、p型不純物領域23に、p型オーミック電極24を形成するための凹部23aを形成する。
<マスク形成工程>
まず、
図12に示すように、全面にレジストを塗布した後、p型不純物領域23に形成する凹部23aに対応した窓部を有するフォトレジストパターンを形成する。
【0058】
<ドライエッチング工程>
次に、
図13に示すように、窓部22aを有するレジストマスク22を用いて、ドライエッチングにより、p型不純物領域23の表面に深さ50〜100nm程度の凹部23aを形成する。50nmよりも浅いと、上面がn型炭化珪素層2の表面よりも低い位置にあるp型オーミック電極24を形成するのが困難であり、100nmよりも深いと、エッチングに時間がかかり過ぎるからである。
ドライエッチングの条件としては例えば、エッチングガスにSF
6、希釈ガスにAr、圧力は1Pa、RF出力は500W程度で行うことができる。
SiO
2等の酸化膜マスクや、SiN等の窒化膜マスクを用いてドライエッチングを行ってもよい。
【0059】
(p型オーミック電極形成工程)
次に、
図14に示すように、p型不純物領域23の凹部23a内に、p型オーミック電極24を形成する。この際、p型オーミック電極24の上面24aがn型炭化珪素層2の表面2aよりも低い位置になるようにp型オーミック電極24を形成する。
p型オーミック電極形成工程は、第1実施形態と同様に、p型不純物領域23を形成したn型エピタキシャル層2上にチタン層を形成する工程(チタン層形成工程)と、チタン層上にアルミニウム層を形成する工程(アルミニウム層形成工程)と、熱処理により合金化する工程(熱処理工程)とから概略構成されている。
各工程は第1実施形態と同様である。p型オーミック電極24の膜厚(チタン層及びアルミニウム層を合わせた膜厚)は窪み部2bの深さと凹部23aの深さを合わせた深さを超えない膜厚とする。
【0060】
(ショットキー電極形成工程)
次に、
図15に示すように、p型オーミック電極24を覆うようにn型炭化珪素層2上にショットキー電極5を形成する。この工程は第1実施形態と同様である。
【0061】
(表面パッド電極形成工程)
次に、
図15に示すように、ショットキー電極5上に表面パッド電極6を形成する。この工程は第1実施形態と同様である。
【0062】
(裏面オーミック電極形成工程)
次に、
図15に示すように、炭化珪素基板1の裏面に、裏面オーミック電極7を形成する。この工程は第1実施形態と同様である。
【0063】
以上の工程により、本実施形態の炭化珪素半導体装置20を製造することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の炭化珪素半導体装置20の製造方法によれば、n型炭化珪素層2の表面に窪み部2bを形成する工程と、p型不純物領域23の表面に凹部23aを形成する工程と、凹部23a内に、n型炭化珪素層2の表面2aよりも低く配置するようにp型オーミック電極24を形成する工程と、を有するので、表面パッド電極に超音波振動を利用したワイヤボンディングを行っても、超音波振動によりp型オーミック電極がp型不純物領域の表面上を揺すられることがなく、p型オーミック電極が破壊されることがない炭化珪素半導体装置を製造することができる。
【0065】
〔炭化珪素半導体装置(第3実施形態)〕
図16は、本発明の炭化珪素半導体装置の一例を示した断面模式図である。
第1実施形態で示した部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図16に示す炭化珪素半導体装置30は、炭化珪素基板1と、炭化珪素基板1上に形成されたn型炭化珪素層2と、前記n型炭化珪素層2の表面2aに設けられた窪み部2cの下方に形成されると共に、表面2aよりも低い位置に配置するp型不純物領域33と、p型不純物領域33上に形成されたp型オーミック電極34と、p型オーミック電極34を覆うようにn型炭化珪素層2上に形成されたショットキー電極5と、を備え、p型オーミック電極34の上面34aはn型炭化珪素層2の表面2aよりも低い位置にある。また、ショットキー電極5上には表面パッド電極6が備えられ、炭化珪素基板1の裏面には裏面オーミック電極7が備えられている。
第1実施形態とは、p型不純物領域33の最上面33aがn型炭化珪素層2の表面2aよりも低い位置に形成されている点で相違し、第2実施形態とは、p型不純物領域33にp型オーミック電極34を形成するための凹部を有しない点で相違する。
p型オーミック電極34の膜厚(チタン層及びアルミニウム層を合わせた膜厚)は窪み部2cの深さを超えない膜厚とする。
なお、図示しないボンディングワイヤは表面パッド電極6上に形成される。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の炭化珪素半導体装置30によれば、n型炭化珪素層2の表面2aに設けられた窪み部2cに形成されると共に、表面2aよりも低い位置に配置するp型不純物領域33を備え、p型オーミック電極34の上面34aがn型炭化珪素層2の表面2aよりも低い位置にあるので、この炭化珪素半導体装置30の表面パッド電極6に超音波振動を利用したワイヤボンディングを行っても、超音波振動によりp型オーミック電極34がp型不純物領域33の表面上を揺すられることがなく、p型オーミック電極34が破壊されることがない。
【0067】
〔炭化珪素半導体装置の製造方法(第3実施形態)〕
次に、本発明の実施形態である炭化珪素半導体装置30の製造方法について説明する。
図17〜
図21は、本実施形態の炭化珪素半導体装置30の製造方法の一例を説明する工程断面図である。
【0068】
(n型炭化珪素層形成工程)
まず、炭化珪素基板1上にn型エピタキシャル層(n型炭化珪素層)2を形成する。
【0069】
(窪み部形成工程)
<マスク形成工程>
次に、n型エピタキシャル層2の表面に窪み部2cを形成すると共に、p型ドーパントを注入してp型不純物領域33を形成するためのマスクを形成する。
このマスクは
図3を用いて説明したのと同様に、CVD法により、N型エピタキシャル層2上に酸化膜を形成する。
次に、その酸化膜上にレジストを塗布した後、ステッパーによるフォトレジストパターンを形成する。ステッパーを用いることにより微細パターンからなるフォトレジストパターンを形成することができる。その後、酸化膜をドライエッチングして窓部31aを形成する。
【0070】
<ドライエッチング工程>
次に、
図17に示すように、窓部31aが形成された酸化膜31をマスクとして用いて、ドライエッチングにより、n型エピタキシャル層2の表面に深さ100〜1000nm程度の窪み部2cを形成する。100nmよりも浅いと、上面がn型炭化珪素層2の表面よりも低い位置にあるp型オーミック電極34を形成するのが困難であり、1000nmよりも深いと、エッチングに時間がかかり過ぎるからである。
ドライエッチングの条件としては例えば、エッチングガスにSF
6、希釈ガスにAr、圧力は1Pa、RF出力は500W程度で行うことができる。
SiO
2等の酸化膜マスクや、SiN等の窒化膜マスクを用いてドライエッチングを行ってもよい。
【0071】
(p型不純物領域形成工程)
次に、
図18に示すように、窓部31aが形成された酸化膜31をマスクとして用いて、p型不純物となるアルミニウムまたはボロンをn型エピタキシャル層2の窪み部2cの下方部分にイオン注入してp型不純物領域33を形成する。酸化膜31を除去した後、注入したイオンの活性化を行うために熱処理を行う。
【0072】
(p型オーミック電極形成工程)
次に、
図19に示すように、n型エピタキシャル層2の窪み部2c内のp型不純物領域33上に、p型オーミック電極34を形成する。この際、p型オーミック電極34の上面34aがn型炭化珪素層2の表面2aよりも低い位置になるようにp型オーミック電極34を形成する。
<マスク形成工程>
まず、
図19に示すように、全面にレジストを塗布した後、p型不純物領域33に形成するp型オーミック電極34の範囲に対応した窓部32aを有するフォトレジストパターンを形成する。
【0073】
<p型オーミック電極形成工程>
次に、窓部32aを有するレジストマスク32を用いて、n型エピタキシャル層2の窪み部2c内のp型不純物領域33上に、p型オーミック電極34を形成する(
図20)。
p型オーミック電極形成工程は、第1実施形態と同様に、p型不純物領域33を形成したn型エピタキシャル層2上にチタン層を形成する工程(チタン層形成工程)と、チタン層上にアルミニウム層を形成する工程(アルミニウム層形成工程)と、熱処理により合金化する工程(熱処理工程)とから概略構成されている。各工程は第1実施形態と同様である。
【0074】
(ショットキー電極形成工程)
次に、
図21に示すように、p型オーミック電極34を覆うようにn型炭化珪素層2上にショットキー電極5を形成する。この工程は第1実施形態と同様である。
【0075】
(表面パッド電極形成工程)
次に、
図21に示すように、ショットキー電極5上に表面パッド電極6を形成する。この工程は第1実施形態と同様である。
【0076】
(裏面オーミック電極形成工程)
次に、
図21に示すように、炭化珪素基板1の裏面に、裏面オーミック電極7を形成する。この工程は第1実施形態と同様である。
【0077】
以上の工程により、本実施形態の炭化珪素半導体装置30を製造することができる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態の炭化珪素半導体装置30の製造方法によれば、n型炭化珪素層2の表面に窪み部2cを形成する工程と、p型不純物領域33上に、n型炭化珪素層2の表面2aよりも低く配置するようにp型オーミック電極34を形成する工程と、を有するので、表面パッド電極に超音波振動を利用したワイヤボンディングを行っても、超音波振動によりp型オーミック電極34がp型不純物領域33の表面上を揺すられることがなく、p型オーミック電極34が破壊されることがない炭化珪素半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明の効果を、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
実施例1は第1実施形態に係る、MPS構造を有する炭化珪素半導体装置及び第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の実施例である。
まず、SiC単結晶基板(炭化珪素基板)上にCVD法を用いて、一般に採用されている通常の成膜条件によってn型エピタキシャル層を形成した。次に、CVD法により、n型エピタキシャル層上に酸化膜を形成した。次に、酸化膜上にレジストを塗布した後、フォトレジストパターンを形成した。その後、酸化膜をドライエッチングして形成するp型不純物領域パターン(複数の線幅10μmの縞状パターン)に対応した窓部を形成した。次に、窓部が形成された酸化膜をマスクとして用いて、p型不純物となるアルミニウムを2×10
19/cm
2のイオン注入量、300nmの深さでイオン注入してp型不純物領域を形成した。次に、酸化膜を除去した後、1800℃の熱処理を真空中で3分間行い、アルミニウムイオンを活性化した。
【0081】
次に、窓部を有するフォトレジストパターンのレジストマスクを用いて、エッチングガスにSF
6、希釈ガスにAr、圧力は1Pa、RF出力は500Wの条件で3分間のドライエッチングにより、p型不純物領域の表面に、p型オーミック電極を形成するための150nm程度の深さの凹部を形成した。
【0082】
次に、引き続きレジストマスクを用いて、スパッタ法により、p型不純物領域を形成したn型エピタキシャル層上に、Tiを30nmの膜厚で成膜した。続いて、Ti膜上にAlを80nmの膜厚で成膜した。その後、900℃で5分間熱処理を行ってp型オーミック電極を形成した。
【0083】
次に、窓部を有するレジストマスクを用いて、p型オーミック電極4を覆うようにn型炭化珪素層2全面にMoからなる金属膜を100nmの膜厚で蒸着法により成膜した。その後、ショットキー障壁高さ(φB)を制御するために、アルゴンガス雰囲気中600℃の温度で熱処理を行い、ショットキー電極とした。
【0084】
次に、ショットキー電極上に、Al膜をスパッタ法により形成し、レジストパターンからなるマスクを用いてエッチングを行って5μmの膜厚で表面パッド電極を形成した。
【0085】
次に、レジストマスクを除去して、裏面オーミック電極を形成した。具体的には、まず、CVD法により、p型オーミック電極を形成したn型エピタキシャル層2上に、シリコン酸化膜(SiO
2)からなる保護膜を形成し、その後、電子ビーム(EB)蒸着法で、p型不純物領域を形成したSiC単結晶基板の裏面に、Niからなる金属膜を100nmの膜厚で形成した後、レーザーアニールを行って、裏面オーミック電極とした。この熱処理により、裏面オーミック電極はSiC単結晶基板の裏面と良好なオーミックコンタクトを形成された。
その後、保護膜を除去した。
以上のようにして、実施例1の炭化珪素半導体装置を得た。
【0086】
(特性評価)
このように作製した炭化珪素半導体装置について、直径250μmのアルミニウムのワイヤを用いて超音波を利用してワイヤボンディングを行った。次に、ワイヤをつけた炭化珪素半導体装置について、測定機を用いて順方向の電流(If)電圧(Vf)特性、及び、逆方向の電流(Ir)電圧(Vr)特性を調べた。
【0087】
超音波の出力1.9W及び印加時間220msec、出力4.7W及び印加時間110msec、出力6.5W及び印加時間110msec、出力7.4W及び印加時間110msec、出力10.5W及び印加時間110msecの5つの条件のいずれでワイヤボンディングを行った場合も、順方向に0.5Vの電圧(Vf)を印加した際の順方向電流(If)は10
−7A/cm
2であり、逆方向に200Vの電圧(Vr)を印加した際の逆方向電流(Ir)は10
−8A/cm
2であり、順方向の電流電圧特性及び逆方向の電流電圧特性のいずれも良好だった。
この結果により、超音波振動を利用したワイヤボンディングの際に素子が破壊されず、短絡がなかったことが確認できた。
なお、本実施形態は、ショットキーバリアダイオード(SBD)とPNダイオード(PND)とを併せたMPS構造を有するものであって、SBDとPNDとは電気的に並列に配置する。通常動作では、SBDのみ(例えば、If=20A@1.5Vの動作、Ir=10−8A@200V)が動作する。よって、この部分の構造に違いがない実施形態1〜3(本発明はPNDの部位の素子破壊を防止する構成に係るもの)では、IfとIrとは同じになる。
【0088】
(実施例2)
実施例2は第2実施形態に係る、MPS構造を有する炭化珪素半導体装置及び第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の実施例である。
まず、SiC単結晶基板(炭化珪素基板)上にCVD法を用いて、一般に採用されている通常の成膜条件によってn型エピタキシャル層を形成した。次に、CVD法により、n型エピタキシャル層上に酸化膜を形成した。次に、酸化膜上にレジストを塗布した後、フォトレジストパターンを形成した。その後、酸化膜をドライエッチングして形成するp型不純物領域パターン(複数の線幅10μmの縞状パターン)に対応した窓部を形成した。次に、窓部が形成された酸化膜をマスクとして用いて、エッチングガスにSF
6、希釈ガスにAr、圧力は1Pa、RF出力は500Wの条件でドライエッチングにより、n型エピタキシャル層の表面に100nm程度の深さの窪み部を形成した。次に、同じマスクを用いて、p型不純物となるアルミニウムを2×10
19cm
−2のイオン注入量、300nmの深さでイオン注入して窪み部にp型不純物領域を形成した。次に、酸化膜を除去した後、1800℃の熱処理を真空中で行い、アルミニウムイオンを活性化した。
【0089】
次に、窓部を有するフォトレジストパターンのレジストマスクを用いて、エッチングガスにSF
6、希釈ガスにAr、圧力は1Pa、RF出力は500Wの条件でドライエッチングにより、窪み部下方のp型不純物領域の表面に、p型オーミック電極を形成するための50nm程度の深さの凹部を形成した。
【0090】
次に、引き続きレジストマスクを用いて、スパッタ法により、凹部内のp型不純物領域上に、Tiを30nmの膜厚で成膜した。続いて、Ti膜上にAlを80nmの膜厚で成膜した。その後、900℃で5分間熱処理を行ってp型オーミック電極を形成した。
【0091】
次に、レジストマスクを除去して実施例1と同様の条件で、裏面オーミック電極を形成した。
【0092】
次に、窓部を有するレジストマスクを用いて実施例1と同様の条件で、ショットキー電極を形成した。
【0093】
次に、ショットキー電極上に実施例1と同様の条件で、表面パッド電極を形成した。
以上のようにして、実施例2の炭化珪素半導体装置を得た。
【0094】
(特性評価)
実施例1と同様の評価を行った。
超音波の出力1.9W及び印加時間220msec、出力4.7W及び印加時間110msec、出力6.5W及び印加時間110msec、出力7.4W及び印加時間110msec、出力10.5W及び印加時間110msecの5つの条件のいずれでワイヤボンディングを行った場合も、順方向に0.5Vの電圧(Vf)を印加した際の順方向電流(If)は10
−7A/cm
2であり、逆方向に200Vの電圧(Vr)を印加した際の逆方向電流(Ir)は10
−8A/cm
2であり、順方向の電流電圧特性及び逆方向の電流電圧特性のいずれも良好だった。この結果により、超音波振動を利用したワイヤボンディングの際に素子が破壊されず、短絡がなかったことが確認できた。
なお、If及びIrは、SBDの部分の構造に違いがない本実施形態においても第1の実施形態と同様になる。
【0095】
(実施例3)
実施例3は第3実施形態に係る、MPS構造を有する炭化珪素半導体装置及び第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の実施例である。
まず、SiC単結晶基板(炭化珪素基板)上にCVD法を用いて、一般に採用されている通常の成膜条件によってn型エピタキシャル層を形成した。次に、CVD法により、n型エピタキシャル層上に酸化膜を形成した。次に、酸化膜上にレジストを塗布した後、フォトレジストパターンを形成した。その後、酸化膜をドライエッチングして形成するp型不純物領域パターン(複数の線幅10μmの縞状パターン)に対応した窓部を形成した。次に、窓部が形成された酸化膜をマスクとして用いて、エッチングガスにSF6、希釈ガスにAr、圧力は1Pa、RF出力は500Wの条件でドライエッチングにより、n型エピタキシャル層の表面に150 nm程度の深さの窪み部を形成した。次に、同じマスクを用いて、p型不純物となるアルミニウムを2×10
19cm
−2のイオン注入量、300nmの深さでイオン注入して窪み部にp型不純物領域を形成した。次に、酸化膜を除去した後、1800℃の熱処理を真空中で行い、アルミニウムイオンを活性化した。
【0096】
次に、窓部を有するフォトレジストパターンのレジストマスクを用いて、スパッタ法により、p型不純物領域を形成したn型エピタキシャル層上に、Tiを30nmの膜厚で成膜した。続いて、Ti膜上にAlを80nmの膜厚で成膜した。その後、900℃で5分間熱処理を行ってp型オーミック電極を形成した。
【0097】
次に、レジストマスクを除去して実施例1と同様の条件で、裏面オーミック電極を形成した。
【0098】
次に、窓部を有するレジストマスクを用いて実施例1と同様の条件で、ショットキー電極を形成した。
【0099】
次に、ショットキー電極上に実施例1と同様の条件で、表面パッド電極を形成した。
以上のようにして、実施例3の炭化珪素半導体装置を得た。
【0100】
(特性評価)
実施例1と同様の評価を行った。
超音波の出力1.9W及び印加時間220msec、出力4.7W及び印加時間110msec、出力6.5W及び印加時間110msec、出力7.4W及び印加時間110msec、出力10.5W及び印加時間110msecの5つの条件のいずれでワイヤボンディングを行った場合も、順方向に0.5Vの電圧(Vf)を印加した際の順方向電流(If)は10
−7A/cm
2であり、逆方向に200Vの電圧(Vr)を印加した際の逆方向電流(Ir)は10
−8A/cm
2であり、順方向の電流電圧特性及び逆方向の電流電圧特性のいずれも良好だった。この結果により、超音波振動を利用したワイヤボンディングの際に素子が破壊されず、短絡がなかったことが確認できた。
なお、If及びIrは、SBDの部分の構造に違いがない本実施形態においても第1及び第2の実施形態と同様になる。
【0101】
(比較例)
比較例は、本発明に係る窪み部や凹部を有しない、MPS構造を有する従来の炭化珪素半導体装置及びその製造方法の例である。
まず、SiC単結晶基板(炭化珪素基板)上にCVD法を用いて、一般に採用されている通常の成膜条件によってn型エピタキシャル層を形成した。次に、CVD法により、n型エピタキシャル層上に酸化膜を形成した。次に、酸化膜上にレジストを塗布した後、フォトレジストパターンを形成した。その後、酸化膜をドライエッチングして形成するp型不純物領域パターン(複数の線幅10μmの縞状パターン)に対応した窓部を形成した。次に、窓部が形成された酸化膜をマスクとして用いて、p型不純物となるアルミニウムをイオン注入した。次に、酸化膜を除去した後、1800℃の熱処理を真空中で行い、p型不純物領域を形成した。
【0102】
次に、窓部を有するフォトレジストパターンのレジストマスクを用いて、実施例1と同様の条件で、p型オーミック電極を形成した。
【0103】
次に、レジストマスクを除去して、実施例1と同様の条件で、裏面オーミック電極を形成した。
【0104】
次に、窓部を有するレジストマスクを用いて、実施例1と同様の条件で、ショットキー電極を形成した。
【0105】
次に、ショットキー電極上に、実施例1と同様の条件で、表面パッド電極を形成した。
以上のようにして、比較例の炭化珪素半導体装置を得た。
【0106】
(特性評価)
実施例1と同様の評価を行った。
超音波の出力1.9W及び印加時間220msec、出力4.7W及び印加時間110msec、出力6.5W及び印加時間110msec、出力7.4W及び印加時間110msec、出力10.5W及び印加時間110msecの5つの条件のうち、出力7.4W及び印加時間110msecの場合に、順方向に0.5Vの電圧(Vf)を印加した際の順方向電流(If)は10
−3A/cm
2以上、逆方向に200Vの電圧(Vr)を印加した際の逆方向電流(Ir)は10
−3A/cm
2以上のサンプルが3個中1個あり、出力10.5W及び印加時間110msecで行った場合には全サンプル(5個すべて)が順方向に0.5Vの電圧(Vf)を印加した際の順方向電流(If)は10
−3A/cm
2以上、逆方向に200Vの電圧(Vr)を印加した際の逆方向電流(Ir)は10
−3A/cm
2以上であった。
このように、順方向電流(If)が実施例の場合に比べて4桁も大きく増加し、逆方向電流(Ir)が実施例の場合に比べて5桁も大きく増加する場合が発生したのは、素子が破壊され、短絡してしまったためである。すなわち、ボンディングで破壊されると、本来SBDの部位を電流が流れるところ、両端を短絡する部分が発生して、その部分を電流が流れてしまったためである。
比較例の場合、順方向の電流電圧特性及び逆方向の電流電圧特性に異常があり、PNDの部位のp型オーミック電極の劣化が確認された。
【0107】
尚、p型オーミック電極を有しない以外は比較例と同様な条件で炭化珪素半導体装置を作製し、その炭化珪素半導体装置について特性評価を行ったところ、p型オーミック電極の劣化は確認されなかった。