特許第5775716号(P5775716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775716
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】消防ホース用接手
(51)【国際特許分類】
   A62C 33/00 20060101AFI20150820BHJP
   F16L 33/24 20060101ALI20150820BHJP
   F16L 37/00 20060101ALN20150820BHJP
【FI】
   A62C33/00 C
   F16L33/24
   !F16L37/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-68263(P2011-68263)
(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公開番号】特開2012-200428(P2012-200428A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2013年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】桝谷 徹
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−142301(JP,A)
【文献】 特開2000−317007(JP,A)
【文献】 特開2010−053212(JP,A)
【文献】 特開平10−319884(JP,A)
【文献】 特開2000−044733(JP,A)
【文献】 特開2006−329426(JP,A)
【文献】 特開2008−127479(JP,A)
【文献】 特開平06−175587(JP,A)
【文献】 特開平07−247388(JP,A)
【文献】 特開平08−071172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00
F16L 29/00−39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の受け金具および差し金具からなる接手本体の外周に、蓄光材を2〜7重量%含有した半透明性ないしは透明性を有するEPDMゴムを含んでなる円環状成型体を、該円環状成型体が凸状に突出して該受け金具および差し金具の最大径部を形成するように嵌装してなることを特徴とする消防ホース用接手。
【請求項2】
前記EPDMゴムからなる円環状成型体の蓄光材の含有量が、3〜5重量%であることを特徴とする請求項1記載の消防ホース用接手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消防ホース用接手に関する。
【0002】
更に詳しくは、連結された消防ホースが消火作業に伴って路面や床面を引きずり回されたとしても、消防ホースのラインを視認しやすくするために設けられている蓄光性接手の蓄光発光の効果、及びその消防ホース用接手自体を物理的な損傷から保護する効果の2つの効果を、長期間にわたり発揮できる消防ホース用接手に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、消防ホースや消防ホースの接手などに光反射性の物質を含んだ樹脂や発光性あるいは蓄光発光性の樹脂を付与して、夜間の火災や停電と煙で暗い建物内などの火災現場であっても、ホースラインの存在位置を即座に視認できるようにした消防ホースやその接手が提案され使用されている。
【0004】
これは、夜間や建物内などの暗く煙が発生している火災現場から消防隊員が帰還をする際に、正しい帰還路に誘導する役目をホースラインに負わせていることによる。
【0005】
すなわち、ビル火災等の消火活動では、消防士は放水ノズルを抱え、その放水ノズルに連結された消防ホースを引きずって展張させながら、建物の内部にある火災現場まで進入し消火活動に当たる。そして、鎮火したときあるいは現場の状況によって撤退・退避すべきと判断をしたときなど、あるいは水を使い切ったときなどは、それまで展張してきた消防用ホースのラインを道案内にして火災建物の外へ帰還するようにしている。
【0006】
すなわち、一般に、火災を起こしているビルは、停電状態になっていて夜間はむろん、昼間でも光が射しにくく暗い中を、消防士は発生する煙の中で見知らぬ建屋内を展張した消防ホースラインだけを主たる頼りにして帰還しなければならない。
【0007】
したがって、そのような過酷な状況下でも、帰還すべき先までのルートを示して延びている消防ホースを、より瞬時にかつ確実に視認できる消防ホースやその接手等の実現が望まれ、さまざまな提案がなされている。
【0008】
なお、帰還ルートを示すという点では、連続したライン状で示すことができるということから消防ホースに関する発明が一つは重要であるが、本発明は、消防ホースの接手部分でその接手部分の大きな径を利用して、帰還ルートをより大きくより見やすく示すことができるということから、蓄光発光性を有する消防ホースの接手についての検討を行ったものである。
【0009】
上記した理由から、消防ホースの結合接手についてもさまざまな提案がされている。
【0010】
例えば、暗所における発光輝度が高く発光時間が長いとともに、発光体の耐久性に優れた消防用ホース用の差込式結合金具として、筒状の差し金具を筒状の受け金具に差し込んで両金具を互いに結合する差込式結合金具であって、その受け金具の周囲に該金具よりも大きな外径を有する環状の保護バンドを外挿するとともに、該保護バンドを蓄光物質を混入させた合成樹脂で成形した消防ホースの差込式結合金具が提案されている(特許文献1)。
【0011】
しかし、特許文献1で提案されている保護バンドを形成する蓄光物質を混入させた合成樹脂については、特別な検討はなされておらず、単に各種の熱可塑性樹脂や合成ゴム等を使用するというものであった(特許文献1段落0016)。
【0012】
また、結合金具として、弾性を有する環状の透明樹脂からなる弾性バンドを接手の最外周部を形成するようにして使用し、その透明樹脂層と接手本体の間には光の反射剤層を設けた結合金具が提案され、その透明樹脂として、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂シリコーン樹脂などが提案されている(特許文献2)。
【0013】
これらの樹脂の中では、材料としての透明性、強度、耐摩耗性、耐久性などの点で、他よりも総合的に優れていると考えられるのはシリコーン樹脂であり、その検討がされた。しかし、シリコーン樹脂製の保護バンドでは、特に防災分野での過酷な使用に対しては、引張強度が要求されるレベルに満たないと言わざるを得ないものであり、特に、地面を引きずられることや、硬い障害物に引っかかることなどによっていったんキズが付くと、そこから亀裂が発生し、その亀裂が進行することにより比較的簡単に破断して接手から脱落してしまうことがあった。このため、長期間の繰り返し使用には実用上問題があり、環状の保護バンドのより高度な強度、耐摩耗性、耐久性の実現が要請されるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−317007号公報
【特許文献2】特開平8−71172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したような点に鑑み、本発明の目的は、優れた蓄光発光性能を有するとともに、強度、耐摩耗性、耐久性などの物理特性にも優れ、その結果、優れた視認性と帰還路への誘導効果を、より長期間にわたっての繰返し使用に耐えて発揮することができる環状の保護バンドを備えた消防ホース用接手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を達成する本発明の消防ホースは、以下の(1)の構成を有する。
(1)管状の受け金具および差し金具からなる接手本体の外周に、蓄光材を2〜7重量%含有した半透明性ないしは透明性を有するEPDMゴムを含んでなる円環状成型体を、該円環状成型体が凸状に突出して該受け金具および差し金具の最大径部を形成するように嵌装してなることを特徴とする消防ホース用接手。
【0017】
また、かかる本発明の消防ホース用接手において、以下の(2)の構成を有することが好ましい。
(2)前記EPDMゴムからなる円環状成型体の蓄光材の含有量が、3〜5重量%であることを特徴とする上記(1)記載の消防ホース用接手。
【発明の効果】
【0018】
請求項1にかかる本発明の消防ホース用接手によれば、優れた蓄光発光性能(蓄光発光の明るさ(輝度)、蓄光発光の持続性(輝度の減衰時間))とその優れた蓄光発光性能に基づいて、視認性、帰還路への誘導効果を長期間にわたっての繰り返し使用にも耐えて発揮できる、環状の保護バンドを備えた消防ホース用接手を提供することができる。
【0019】
特に、請求項2にかかる本発明によれば、上述した請求項1の効果をより明確に有する消防ホースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の消防ホース用接手が参照する実施態様例を示したものであり、差し具と受け具を離脱した状態で示している一部切り欠き断面図である。
図2】本発明の消防ホース用接手の実施態様例を示したものであり、差し具と受け具を係合させた状態で示している一部切り欠き断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、更に詳しく本発明の消防ホース用接手について、説明する。
【0022】
本発明の消防ホース用接手は、接手本体の外周に、蓄光材を2〜7重量%含有したEPDMゴムを含んでなる円環状成型体を、該円環状成型体が凸状に突出して該接手の最大径部を形成するように嵌装してなることを特徴とする。
【0023】
EPDMゴムとは、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムをいい、合成ゴムの一種であり、耐候性や耐水性に優れ、また耐摩耗性にも優れるものである。
【0024】
図1は、本発明の消防ホース用接手が参照する実施態様例を示したものであり、消防ホース用接手1は本体が互いに脱着自在な管状の受け金具2と差し金具3とから構成されている。図では、両金具2、3を離脱状態にして示しているが、その受け金具2に差し金具3を差し込むことにより連結できるようになっている。これら受け金具2と差し金具3には、それぞれホース装着部4、5が一体に形成され、そのホース装着部4、5にホース6、6が装着されるようになっている。
【0025】
差し金具3には、軸方向にスライド可能な押し輪7が装着されている。また、受け金具2側には外周に嵌合溝8が設けられ、この嵌合溝8に、蓄光材含有EPDMゴムからなる蓄光性能を有した円環状成型体9が嵌装されている。この円環状成型体9は、受け金具2の外周に凸状に突出し、この突出した蓄光材含有EPDMゴムからなる蓄光性能を有した該円環状成型体の存在により、接手金具1やホース端末が路面を引きずられたとき摩耗や損傷を受けないようにそれらを保護し、また落下や衝突時の衝撃を緩和するようにしている。
【0026】
EPDMゴムは、シリコーン樹脂からなるものよりも耐摩耗性や耐損傷性に優れ、結果的に、EPDMゴムからなる円環状成型体が嵌装された接手は、より長い期間にわたり、特に交換などされなくても、繰り返し使用されたとしても、上述した蓄光発光効果と帰還ルートへの誘導効果を発揮することができる。
【0027】
EPDMゴムは、従来から使用されている蓄光材を2〜7重量%含有していることが蓄光発光効果を発揮させる上で重要である。好ましくは、蓄光材の含有量は3〜5重量%である。EPDMゴムは、半透明性ないしは透明性を有しているものを使用することが好ましく透明性を有する樹脂を使用することにより、蓄光発光をより鮮明に見やすくできる。蓄光材の含有量が2重量%未満であると、蓄光発光の発光性能(残光輝度)が劣るので好ましくなく、7重量%を超えると、蓄光発光の性能はその含有量に対応して変わることは少なく、一方でEPDMゴムの強度などの物理特性が劣る方向であるので、好ましくない。
【0028】
円環状成型体の厚さ(外径と内径の差)は、6〜9mmの範囲内とするのが蓄光発光の効果や耐久性を長期間にわたり保持させる上で好ましい。より好ましくは、6〜8mmである。
【0029】
EPDMゴムからなる円環状成型体を形成するに際して、架橋剤としては、有機過酸化物系のものを用いるか、あるいは硫黄化合物などを用いて行うことができ、前者の場合は比較的透明性が高く蓄光輝度を高いものとするのに好適であり、例えば、2,4−ビクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等を架橋剤として用いることができる。後者の硫黄化合物を用いて架橋を行う場合は、透明性が多少劣ることがあり、蓄光発光性能に対しては多少低下させる方向であるが、物理特性は十分高いものを得ることができる。
【0030】
なお、本発明の消防ホース用接手において、接手の最大径部を形成する受け金具2の最大径部を、蓄光材含有EPDMゴムからなる蓄光性能を有した円環状成型体9で構成すると、消防ホースが連結されて、引きずり回されることにより接手部分付近が摩耗や損傷を受けることを良好に防止できる。
【0031】
本発明の消防ホース用接手は、 図2に示したように、差し金具3にも該差し金具3での最大径部を形成するように、蓄光材含有EPDMゴムからなる蓄光発光性能を有した円環状成型体10を嵌合溝13に嵌装する。すなわち、本発明において、消防ホース用接手というのは、受け金具2と差し金具3のそれぞれを指して呼ぶ総称である。
【0032】
この図2の態様では、本発明の消防ホース用接手の他の実施態様例を示し、差し金具3と受け金具2を係合させた状態を示している。11は締め輪、12は押し輪である。
【0033】
そのように構成すると、両金具2、3が連結されていない状態で差し金具3だけが移動による摩耗作用に晒されるときなどでも差し金具3に損傷を与えることを良好に防止できる。また、両金具2、3が連結されて消火作業に使用されているときでも、差し金具3の円環状成型体10は、受け金具2の環状体9が耐摩耗性、耐損傷効果を発揮するので、特に摩耗や損傷を受けることもなく接手の一部構造として存在し、所期の蓄光発光効果と帰還路への誘導効果を、受け金具2の蓄光性円環状成型体とともに、より良好に大きく発揮することができる。この態様では、概して、差し金具3側の円環状成型体10は、最大径が円環状成型体9よりも小さいので、摩耗や損傷を受けることがより少なく、長期にわたる繰り返し使用でも無傷に近く、蓄光発光性能を発揮することができるので好ましい。
【符号の説明】
【0034】
1:消防ホース用接手
2:受け金具
3:差し金具
4:ホース装着部
5:ホース装着部
6:ホース
7:押し輪
8:嵌合溝(受け金具)
9:蓄光材含有EPDMゴムからなる円環状成型体体(受け金具)
10:蓄光材含有EPDMゴムからなる円環状成型体(差し金具)
11:締め輪
12:押し輪
13:嵌合溝(差し金具)
図1
図2