【実施例】
【0031】
図1は、実施例において、ビル等に用いられている冷温水循環送水ポンプシステムの系統を示す構成図である。同図において、一次側システムでは、ヒートポンプチラーユニット(冷温水製造装置)6によって熱源を製造する。冷房の場合は冷水が、暖房の場合は温水が熱源となる。二次側システムでは、一次側システムで製造した熱源を汲み出して、負荷である空調機(後述)に送水して空調を行う。
【0032】
一次側システムにおいて、1は送水配管、1aは冷温水ポンプ4−1、4−2の返送側吸込管、同じく1bはポンプの吐出側給水管、2は返送側吸込管1aに取り付けた圧力検出手段(圧力センサ)であり、ここの検出圧力に応じて電気信号を発信する。同様に3はポンプの吐出側給水管1bに取り付けた圧力検出手段(圧力センサ)であり、2と同じ仕様のものである。7は一時的に熱源を貯留するサービスタンクであり、冷温水の体積膨張時のバッファとしての役割も持つ。
12−2は真空破壊弁、5−1、5−2はそれぞれ仕切弁である。
【0033】
この送水系では暖房時に、前述したヒートポンプチラーユニット(冷温水製造装置)6によって熱を製造して、冷温水ポンプ4−1(一号機),4−2(2号機)によりサービスタンク7に送水循環する。空調機から戻ってきてサービスタンク7に貯留されている水は熱を奪われており、冷温水ポンプ4−1、4−2によって、ヒートポンプチラーユニット6に送水循環させ、ここで熱を加えて、サービスタンクへ送水するものである。
【0034】
二次側システムにおいて、11は送水配管、11aは冷温水ポンプ14−1、14−2の返送側吸込管、同じく11bは冷温水ポンプの吐出側給水管、12は前記返送側吸込管11aに取り付けた圧力検出手段、13はポンプの吐出側給水管
11bに取り付けた圧力検出手段である。冷温水ポンプ及びこれの周囲の配管、バルブ類は一次側と同じ部品であり同じ機能であるから説明は省く。5−3〜5−10はそれぞれ仕切り弁、9−1、9−2は空調機である例えばエアーハンドリングユニット(AH)、10−1、10−2は空調機である例えばファンコイルユニット(FC)、11−1〜11−4は前述の空調機に冷温水を送水循環するのを制止するための開閉弁、12−1は真空破壊弁である。
【0035】
この送水系では、ヒートポンプチラーユニット6の熱源によりサービスタンク7に貯留された冷温水が、空調負荷の発生時に、空調機9−1、9−2、又は10−1、10−2へ冷温水ポンプ14−1、14−2によって送水循環される。ここで、一次側と二次側の両システムにおいて、Q0は最大水量、H0は全揚程、Haは実揚程、Hfは管路抵抗で、Q0、H0は仕様点と呼ばれる。
【0036】
図2は、2台のポンプを並列運転する冷温水循環送水ポンプシステムの運転特性図であり、縦軸にポンプ吐出側圧力P2と、吸込側圧力P1との圧力差P2−P1(m)を示し、横軸に使用水量Q(m
3/min)をとって示している。使用水量がQ3より小さい範囲では、ポンプ1台運転、これより多い使用水量範囲ではポンプ2台の並列運転の領域とする。曲線A,B、C、D、E、F、Gは、例えばそれぞれ、インバータ周波数がf10(1台運転時最低周波数)、f0、f1、f2、f3(1台運転時最高周波数)、f20(2台運転時最低周波数)、f3×2(2台が最高周波数Nmで並列運転)、のときのポンプQ−H性能曲線である。これらの周波数がこの間で変化すれば、ポンプQ−H性能曲線はこれらの周波数に対応して変化する。
【0037】
ΔPsは、インバータ周波数f3で運転した時、ポンプ性能を特定するポンプ締め切り圧力ヘッド差である。
【0038】
曲線Hは、送水配管の抵抗曲線であり、使用水量が0〜100%に変動した場合、ポンプ吐出側(圧力センサ取り付け位置)の圧力P2と、吸込側(圧力センサ取り付け位置)の圧力P1との差圧
P2−P1が、この線上にくるようにインバータ周波数を変化させ、ポンプの台数を増減させていく。これを、一般的に末端圧力差一定制御方式と呼んでおり、曲線Hは、左端のΔPL(使用水量0におけるポンプ性能曲線Aとの交点で生成)、中点のΔPM(使用水量
Q3におけるポンプ性能曲線
E、
Fとの交点で生成)、右端のΔPH(
ポンプ性能曲線Gとの交点で生成)を通る線分である。
【0039】
Iは、目標圧力差をH0とする吐出圧力差一定制御時の直線であり、Jは、異常高圧設定値HHとする吐出圧力一定制御時の直線である。運転初期(運転開始)時は、直線I上を目標圧力H0による吐出圧力差一定制御で、通常運転時は、直線H上を末端圧力差一定制御で、送水配管の異常高圧時は、直線J上を目標圧力HHによる吐出圧力差一定制御で運転するようにする。
【0040】
ところで、前述した圧力差P2−P1は、
図1に示す閉ループ配管では全揚程(相当)として扱う。即ち、システム系統図(
図1)において、P1点が座標の0点であり、停止時はP2−P1が大よそ0m(仕事をしていない締め切り圧力差を意味する)、運転してポンプで押し上げる全エネルギー(全揚程)がP2−P1であることを意味する。又、図中に
図1と照合して仕様点Q0、H0を表示している。
【0041】
次に、この閉ループ配管による冷温水送水循環系へ末端圧力一定制御方式を適用し、この制御方式のパラメータ決定のしかた、演算式の生成のしかた、及び運転に必要なパラメータの決定のしかたを、
図2を用いて説明する。
【0042】
即ち、曲線Iの関数を水量0〜Q3区間では、目標圧力(抵抗曲線上)H00を、以下の演算式で表わすことができる。なお、式(1)は直線近似した場合で、式(2)は2次曲線近似の場合である。
H00=((ΔPM−ΔPL)/(f3−f10))×(fx−f10)+ΔPL------(1)
H00=((ΔPM−ΔPL)/(f3−f10)2)×(fx−f10)2+ΔPL--(2)
又、曲線Iの関数を水量Q3〜区間では、目標圧力ヘッド(抵抗曲線上)H00を、以下の演算式で表わすことができる。式(3)は直線近似した場合で、式(4)は2次曲線近似の場合である。
H00=((ΔPH−ΔPM)/(f3−f20))×(fx−f20)+ΔPM------(3)
H00=((ΔPH−ΔPM)/(f3−f20)2)×(fx−f20)2+ΔPM--(4)
ここで、以下のパラメータは、既知(定数)で、上記演算式の生成又はポンプ運転制御の判定値として使用される。ΔPLは、ポンプ全停止の状態からはじめに運転するポンプの始動圧力差であり、水量0時の下限目標圧力差(第2の差圧設定値)(下限側)である。例えば、従来技術で述べた水理計算によって、
ΔPL=実揚程(Ha)+所要末端圧力ヘッド(Hp)として求める。
Δ
Hoffは、ポンプの最後に停止する停止圧力差(周波数を
fstまで高めて停止)であ
る。ΔPHは、区間水量Q3〜時の上限目標圧力差である(第1の差圧設定値)(上限側)。
ΔPMは、水量Q3の時の中間目標圧力差(m)である。
ΔPSは、ポンプ締切圧力差(周波数f3時)(m)(第3の差圧設定値)である。
ΔHtonは、2台目並列導入圧力差である。
ΔHtoffは、2台目並列解除圧力ヘッドである。
f3は、1台運転時ポンプ最高周波数である(第1の周波数設定値)。
f10は、1台運転時ポンプ最低周波数である。f10=f3√(ΔPL/ΔPS)にて求める(第2の周波数設定値)。
f3×2は、2台並列運転時ポンプ最高周波数である(第1の周波数設定値)。
f20は、使用水量Q3時2台目運転時ポンプ最低周波数であり、f20=f3√(ΔPM/ΔPS)にて求める。
fstは、1台目ポンプ停止時周波数であり、
図2において、使用水量が少なくポンプを停止しても良い状態(使用水量がQ1)になったらインバータ周波数をf10からfstまで高めて停止させる。fst=f3√(Δ
Hoff/ΔPS)にて求める。
また、fxは現在周波数であり、変数である。この値を演算式(1)、(3)または(2)、(4)に代入すると、現在周波数における目標圧力差が求められる。
【0043】
以上により、目標圧力差の変更を行う際には、ΔPL、ΔPM、ΔPH、ΔPS、f3を変更する必要がある。さらに、これに関連してポンプ運転制御に必要なパラメータ(変数)f10、f20、fstを変更する必要がある。
【0044】
水利計算の仕方を次のように補足しておく。
図2において、ΔPLは実揚程(Ha)+所要末端圧力ヘッド(Hp)であり、全揚程(H0)=実揚程(Ha)+末端水栓(Hp)+配管抵抗(Hf)であるから、ΔPL(実揚程+末端水栓)=全揚程(H0)−配管抵抗(Hf)として求めることができる。閉ループ配管では、所要末端圧力ヘッド(Hp)を0m、配管抵抗(Hf)は一般的に実揚程(Ha)の20%と見て計算している。この中には当然、安全率を含んでいる。
【0045】
以上のようにして、ΔPLの(1)点が求まるから、ここから(5)点に対して直線を引き、2台目ポンプ性能曲線の交点ΔPH点によって作図してΔPHを求める。
【0046】
次に、以上で説明した末端圧力一定制御のパラメータ設定方法、これの演算式の生成方法及び運転に必要なパラメータの設定方法のアルゴリズムについて説明する。
【0047】
ステップ1:
設定手段(後述のコンソールCONS3)によりパラメータPM、PH(仕様点圧力差H0(全揚程に相当))、PS、f3を設定する。
前述したように、PL(実揚程+末端水栓=0)=仕様点圧力差(H0)−配管抵抗(Hf)として求めることができる。
即ち、H0=Ha+0.2Ha=1.2Ha
Ha=H0/1.2
ΔPL=Ha=H0/1.2
ここで、前述で説明したように、配管抵抗(Hf)=0.2Haとしている。
【0048】
ステップ2:
ステップ1で求めたΔPLからこの時の周波数目標値f10を次のようにして求める。
f10=f3√(ΔPL/ΔPS)
ステップ3:
又、中間目標圧力差PMにおける2台目運転時ポンプ最低周波数(使用水量Q3時)f20を次のようにして求める。f20=f3√(ΔPM/ΔPS)にて求める。
これで、演算式を生成するのに必要なパラメータは全て求められた。
【0049】
次に、運転に必要なパラメータを決定する。
ステップ4:
ポンプ1台目運転圧力差ΔHon、停止圧力差ΔHoff、停止時周波数fstを求める。
ΔHon=ΔPL+α(0〜5m)本実施例では0mとしている。
ΔHoff=
ΔPL(又はPM)+β(0〜5m)本実施例ではPHとしている。
fst=f3 (Hoff=
ΔPSの場合)
fst=f3√(ΔPM/ΔPS)(Hoff=ΔPMの場合)
ステップ5:
ポンプ2台目並列導入圧力差パラメータΔHton、並列解除圧力差パラメータΔHtoffを求める
ΔHton=ΔPM−a
ΔHtoff=ΔPM+b
ここで、a,bは、例えば2mである。
【0050】
更に、HH及びH0は設定手段にて設定記憶しているものをそのまま使用する。
以上で求めたパラメータ及び演算式は自動設定、自動生成し、後で述べる記憶部Mに記憶する。
【0051】
図3は、
図2の運転特性図の配管抵抗曲線上のポイント(1)〜(5)を送水量、圧力差目標値、周波数目標値の各データ(パラメータ)を整理してテーブルとして示したものである。このテーブルは後述のメモリMに記憶される。
【0052】
図4は、本発明実施例の冷温水循環送水ポンプシステムの制御回路図であり、
図1の一次側システムを例に示したものである。
【0053】
PWは電源、ELB1、ELB2は、それぞれ1号機系、2号機系の漏電遮断器であり、これ以降の系統の漏電保護を行う。INV1、INV2は、それぞれモータ3−1、3−2を変速駆動するインバータ(可変速駆動手段)であり、後述の制御装置CUからの速度指令信号N1,N2によって所定の周波数、電圧を各モータに与える。又、これらの指定周波数に対し、インバータの現在周波数のN10、N20(変数値)を制御装置CUに返す。更に、電流、周波数、運転及び故障状態を表示、および各種データを入力・設定するキー入力スイッチ等を備えるコンソールCONS1、CONS2を備えている。INV1、INV2は、制御装置CUの運転指令信号Run1、Run2がONすると始動し、OFFすると停止する。
【0054】
R,Sは制御電源、TRはトランスであり、その二次側は制御装置CUの電源端子に接続している。制御装置CUは、運転及び故障状態を表示、および各種データ,パラメータを入力・設定するキー入力スイッチ等を備えるコンソールCONS3(設定手段)を備える。制御装置CUは、マイコンCPUと、記憶部Mを備え、記憶部MはEEPROMとRAMからなり、コンソールCONS3で入力設定されたポンプ性能データ、限界電流データ、要求仕様等のパラメータを記憶する。マイコンCPUは、前述の式(1)〜式(4)により、メモリーMに格納しているパラメータを使用して演算式を自動生成する。
【0055】
制御装置CUには、インバータの現在周波数N10,N20、吸込側圧力センサ2(SW)の信号S0,S2、及び吐出側圧力センサの信号3(SW)の信号
S3,S1が入力される。また、外部運転指令スイッチAUTO(熱源機又は空調機器からの運転要求信号)、インバータINV1、INV2の周波数到達信号N10,N20、フロースイッチ19−1、19−2それぞれの入力端子
IO4、IO3、IO2を備え、インバータへの速度指令信号N1,N2を出力し、同じく運転信号RUN1,RUN2をリレーへ出力する出力端子
IO1、IO5も備える。SSは運転若しくは停止スイッチでありこれを閉じると制御装置CUを運転、開くと停止できる。尚、簡単にするためにインバータの現在周波数N10,N20を指令周波数N1,N2に代えても良いし、圧力センサ2、3に代えて、吸込側圧力と吐出側圧力の差圧を検出する圧力差検出手段を用いても良い。
【0056】
次に、以上で述べたアルゴリズムを制御装置CUでどのように処理するかについて、
図5〜
図10のフローチャートと、メモリマップにより詳細に説明する。
【0057】
図5において、500ステップで、例えば次の501ステップのイニシャル処理に備えて割り込み禁止処理D1を実行する。イニシャル処理ではレジスタ、割り込みベクタ、メモリー、スタックポインタなど各種の処理を実行し起動準備を行う。
【0058】
502ステップではパラメータの設定処理を行う。
図7に示すように、基本パラメータH0、ΔPM、ΔPH、ΔPS、f3、HHを、EEPROMのメモリーM0〜M5に格納する。又、演算して得られるパラメータΔPL、ΔHon、ΔHoff、fst、ΔHton、ΔHtoff、f10、f20をRAMのメモリM100〜M107に格納し、同様に変数fxをM108に格納し、同様にデータN1、N2、N10、N20、AN0(吸込側圧力)、AN1(吐出側圧力)、ΔH(圧力差AN1−AN0)をメモリM110〜M115に格納する。
【0059】
次の503ステップで、演算式及び運転パラメータの初期化を行うが、次のように実行する。
ΔPL=ΔPM(又はH0)/1.2、
下限周波数設定値f10(f10=f3√(ΔPL/ΔPS))、
ΔHon=ΔPL(αを0とした)、
ΔHoff=ΔPM(βを0とした)、
fst(fst=f3√(ΔPM/ΔPS))
初期化したパラメータは、
図7の所定のメモリアドレスに格納される。ここで、メモリーEEPROMにデータを書き込む処理は、予め別の処理により書き込んでおくこともできる。
【0060】
次の504ステップでは、イニシャル処理、パラメータ設定処理、演算式制御用パラメータ初期化の処理が終了したので、割り込み許可処理EIを実行する。続いて505ステップでタイマ処理Δtを実行し、割り込みを待つ。割り込みが発生すると、
図7の700ステップ以降の処理が実行される。
【0061】
図7の700ステップ以降のINT0割り込み処理において、
図7(A)に示すように、701ステップで、
図4のキースイッチ10が押されたか判定する。判定の結果、押されていなければ702ステップへ進み、例えば初期値で決定している圧力、周波数等の表示をCONS3で行い、709ステップで割り込み処理から割り込み前の処理RET0に戻る。701ステップの判定結果でキースイッチ10が押されていたら、703ステップへ進み、押されたキースイッチ10がパラメータ変更キーであるか判定する。パラメータ変更キーであった場合、705ステップへ進み、これ以降の処理で502ステップでの説明と同様にパラメータ設定(変更が可能なことを示す)処理、及び706、707ステップでメモリーへ格納処理を実行する。このようにすれば、運転中でもパラメータの設定変更が可能となる。
【0062】
710ステップ以降のINT1の割り込み処理においては、
図7(B)に示すように、711ステップで故障のチエック、監視を行う。712ステップでは、吸込側及び吐出側の圧力センサの信号を検出し、アナログレジスタAN0、AN1のデータをメモリーM113、M114に格納する。加えて、吐出側圧力センサーAN1のデータから、吸込側圧力センサーAN0のデータを減じて圧力差データΔHを求め、M115に格納しておく。713ステップでインバータの現在周波数N10(1号機系用)、N20(2号機系用)を検出してメモリーM112、113に格納しておく。714ステップでは、割り込み処理から割り込み前の処理に戻る。更に、インバータへ指令する周波数データN1,N2の格納メモリアドレスは、それぞれM109,M110である。
【0063】
さて、このようにして割込み処理を経て、
図5の506ステップでは、空調機若しくはヒートポンプチラーユニット6から運転要求信号AUTOが入力されているか確認する。入力されていれば507ステップのポンプ始動処理に進む。入力されてなければ530ステップへ進み、吐出側及び吸込側圧力センサの検出したデータAN1,AN0から求められる圧力差ΔHと、始動圧力差ΔPLとを比較し、この圧力差ΔHが始動圧力差ΔPL以下になったか判定する。圧力差ΔHがΔPL以下であれば、507ステップのポンプ始動処理に進み、ポンプ1台目を始動指令し531ステップへ進む。次に、531ステップで吐出側圧力センサーの検出した圧力データAN1を読み出し、532ステップでこの圧力データAN1と吐出側圧力高設定値HHを比較する。比較した結果、吐出側圧力データAN1が吐出側圧力高設定値HHより低い場合は、519ステップ(
図10の処理)へ進む。圧力データAN1がHH以上(HH<AN1)であれば、
図9に示す900ステップへ進む。
【0064】
900ステップでは、目標圧力をHHに設定し、次の901ステップでは、吐出側圧力センサの検出した圧力データAN1を読み出し、902ステップでこの目標圧力HHと圧力データAN1と比較する。比較でHH+2m<AN1となれば、次の903ステップで、HH+2m>=AN1>=HH−2mとなるまで減速処理を行い、
図5の508ステップに戻る。この減速処理は、後述する
図5の510ステップと同じである。なお、902ステップの判定結果、HH−2m>AN1であれば、
図5の508ステップへ戻る。このようにすると、暖房時の温水の体積膨張で送水圧力が増加しても、高設定値HH以内に送水圧力を抑えることができ、異常圧力上昇を防止することができる。
【0065】
次に、532ステップでの比較の結果、HH>AN1の場合、519ステップ(
図10の処理)の処理について説明する(初期時の運転)。
【0066】
519ステップにおいて、100ステップで目標圧力差をH0に設定し、次の101ステップで吐出側圧力センサの検出した圧力データAN1を読み出し、102ステップでこの目標圧力差H0と圧力データAN1差ΔHと比較する。比較した結果、H0+2m<ΔHであれば、次の103ステップで、次の103ステップで、H0+2m>=ΔH>=H0−2mとなるまで減速処理を行い、
図5の508ステップに戻る。この減速処理は、後述する
図5の510ステップと同じである。
【0067】
又、102ステップの判定結果、H0−2m>ΔHであれば、次の105ステップで、後述の516ステップと同じ増速処理を行い、H0+2m>=ΔH>=H0−2mとなるまで実行し、
図5の508ステップへ戻る。このようにすれば、初期時に吐き出し圧力差H0一定制御により、冷温水系の閉ループ配管で体積増加により送水圧力が増加しても、配管全体に冷温水を送水循環させることが出来る。次いで、508ステップへ進む。
【0068】
508ステップでは、目標圧力差を初期値としてH00=ΔPLとする。これは、503ステップで処理してレジスタに保存している値を持ってくる。次に、509ステップで目標圧力差H00(H00=ΔPL)と吐き出し側及び吸い込み側圧力センサの検出した圧力データAN1,AN0から得られら圧力差ΔHと比較する。この結果、H00+2m<ΔHならば、目標圧力差H00より給水圧差ΔHが高いこと示しており、510ステップ以降の減速処理を実行する。
【0069】
509ステップでH00−2m>ΔHならば、目標圧力差H00より給水圧差ΔHが低いこと示しており、516ステップ以降の増速処理を実行する。
【0070】
509ステップでH00+2m>=ΔH>=H00−2mならば、目標圧力差H00と給水圧差ΔHが等しいこと示しており、511ステップへ進み演算式による目標圧力差更新処理を実行する。こでは、前述のように式(1)または式(2)により、メモリーに格納しているデータを使用して演算式を自動生成する。そして、この演算式に現在のインバータ周波数N10、N20を代入(N10又はN20をfxに代入)して目標圧力差を更新し、508ステップへジャンプする。このときは、更新された目標圧力差と両圧力センサの検出した圧力差と比較することになる。以下、これ以降の処理を続けていく(通常運転)。
【0071】
このように初期時はH0(全揚程)による吐き出し圧力一定制御で給水し、通常時は管路抵抗による末端圧力一定制御で給水するので、実揚程の分だけの動力の無駄をなくすことができる。
【0072】
説明を戻すが、減速処理の512ステップを実行した後、513ステップで、
図4に示してあるフロースイッチ19−1又は19−2が動作しているか判定する。同フロースイッチは流量スイッチであり、これを流れる流量が例えば10l(リットル)/min以下でON、15l/min以上でOFFすることによって、使用水量が少なく10l/min以下であれば514ステップへ進み、ここでポンプ停止指令を発する。そして、515ステップで交互切替処理を実行して506ステップへジャンプする。交互切替処理とは、例えば今運転していたポンプが1号機であれば、次に運転するポンプが2号機となるようにポインタを切り替えておく処理のことである。513ステップの判定でフロースイッチが動作していないと判定した場合には、509ステップへ進み、これ以降の処理を実行する。
【0073】
増速処理の516、517ステップを実行した後、518ステップで現在周波数が最高周波数f3に達しているか判定する。最高周波数f3の状態になっているとこれ以上能力を出せないので、次の600ステップ(
図6)に進み、並列運転処理を実行する。601〜602ステップで給水圧力差ΔHが、並列導入圧力差ΔHton以下に所定時間以上低下したか確認する。YESと判定した場合、次の603ステップで並列運転処理及び可変速ポンプの圧力制御処理を実行する。(1台は変速運転、もう1台は最高周波数による固定速運転)NOと判定した場合は、
図5の509ステップへ戻りこれ以降の処理を実行する。
2台並列運転している状態から、使用水量が少なくなると可変速運転しているポンプの周波数が下がってくる。そして、604、605ステップで最低周波数f20以下の状態が所定時間以上か判定する、YESであれば606、607ステップで給水圧力差ΔHが、並列解除圧力差ΔHtoff以上に所定時間以上上昇したか確認する。YESと判定した場合、次の608ステップで並列解除処理(2台から1台に減ずる処理)を実行する。この後、
図5の509ステップへ戻りこれ以降の処理を実行する。NOと判定した場合は、603ステップへ戻りこれ以降の処理を実行する。
【0074】
以下、前述した処理を繰り返し実行して運転に必要なパラメータの自動設定、末端圧力一定制御の演算式を自動生成し、これに基づいてポンプの運転制御を適正に実行してゆく。
【0075】
以上の実施例において、ポンプ2台の例で説明しているが、1台でも、3台以上でも適用できる。