特許第5775780号(P5775780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5775780土質試験装置、土質試験方法および締固め密度管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775780
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】土質試験装置、土質試験方法および締固め密度管理方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/08 20060101AFI20150820BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20150820BHJP
   G01N 3/40 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   E02D1/08
   G01N3/00 D
   G01N3/40 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-215242(P2011-215242)
(22)【出願日】2011年9月29日
(65)【公開番号】特開2013-76220(P2013-76220A)
(43)【公開日】2013年4月25日
【審査請求日】2014年6月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)社団法人日本原子力学会が平成23年8月4日に発行した「第27回バックエンド夏期セミナー 資料集」にて発表 (2)社団法人日本原子力学会が平成23年8月5日に開催した「第27回バックエンド夏期セミナー」のポスターセッションにて発表 (3)公益社団法人土木学会が平成23年8月5日に発行した「土木学会平成23年度全国大会第66回年次学術講演会講演概要集」にて発表 (4)公益社団法人土木学会が平成23年9月8日に開催した「土木学会平成23年度全国大会」にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000151520
【氏名又は名称】株式会社東京測器研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】森川 義人
(72)【発明者】
【氏名】根木 政広
(72)【発明者】
【氏名】白瀬 光泰
(72)【発明者】
【氏名】岡野 剛
(72)【発明者】
【氏名】大石 浩晶
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−005305(JP,A)
【文献】 特開2008−174958(JP,A)
【文献】 特開2008−139140(JP,A)
【文献】 特開2005−127100(JP,A)
【文献】 特開2009−249858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00−3/115
G01N 3/00
G01N 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤面を走行する自走式のベースマシンと、
前記ベースマシンに設置された支持部材と、
前記支持部材に取り付けられた載荷面処理機と、
前記支持部材に取り付けられた載荷試験機と、を備える土質試験装置であって、
前記載荷面処理機および前記載荷試験機は、前記支持部材に沿って移動可能であることを特徴とする、土質試験装置。
【請求項2】
前記支持部材が、前記ベースマシンの前側に横設されたフロントレールと、
前記ベースマシンの後側に横設されたリアレールと、
前記フロントレールと前記リアレールとをつなぐサイドレールと、を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の土質試験装置。
【請求項3】
前記支持部材が、平面視矩形枠状であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の土質試験装置。
【請求項4】
自走式のベースマシンと、
前記ベースマシンに設置された直線状の支持部材と、
前記支持部材に取り付けられた載荷面処理機と、
前記支持部材に取り付けられた載荷試験機と、を備える土質試験装置であって、
前記支持部材は、前記ベースマシンに立設された縦軸を中心に回転可能に設置されていることを特徴とする、土質試験装置。
【請求項5】
前記ベースマシンにカメラおよび測位センサが搭載されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の土質試験装置。
【請求項6】
地盤面を走行する自走式のベースマシンと、前記ベースマシンに設置された支持部材と、前記支持部材に取り付けられた載荷面処理機と、前記支持部材に取り付けられた載荷試験機とを備える土質試験装置を利用する土質試験方法であって、
前記ベースマシンを試験実施領域に移動させる移動工程と、
前記載荷面処理機により地盤面の表面処理を行い、載荷面を形成する面処理工程と、
前記載荷面処理機を前記支持部材に沿って移動させて前記載荷面上から退避させるとともに、前記載荷試験機を前記支持部材に沿って移動させて前記載荷面上に位置させる位置決め工程と、
前記載荷試験機により載荷試験を行う試験工程と、を備えることを特徴とする土質試験方法。
【請求項7】
請求項6に記載の土質試験方法により地盤反力係数KFWDを得るとともに、
前記地盤反力係数KFWDを用いて締固め乾燥密度γを管理することを特徴とする、締固め密度管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質試験装置、土質試験方法および締固め密度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
盛土、覆土、埋め戻し土等の締め固め作業は、密度管理を行いながら実施する必要がある。
特に放射性廃棄物等の処分場において、ベントナイト等により形成される止水壁は、密度管理を十分に行う必要がある。
【0003】
従来、地盤の密度管理には、RI法や砂置換法などが採用されている。
RI法は、先端にガンマ線源が設置された検診棒を地中の所定の深さまで挿入し、地表面に配置されたRI計(ラジオアイソトープを利用した水分・密度測定器)により計測されたガンマ線の強度により地盤の密度を検出する手法である。
【0004】
一方、砂置換法は、地盤に試験孔を削孔し、試験孔に削孔する際に発生した土の質量と、試験孔に砂を充填する際に必要な砂の質量から求めた体積に基づいて原位置の土の密度を算出する手法である。
【0005】
前記従来の密度管理手法は、いずれも地盤に孔等を形成(破壊)するものであるため、試験後の補修に手間を要していた。
【0006】
地盤の密度や剛性を非破壊的に検査する方法としては、所定の高さから重錘を落下させることで、地盤面に衝撃荷重を付与し、この衝撃荷重によるたわみを測定するFWD試験が知られている。
【0007】
例えば、特許文献1には、自動四輪車にけん引された走行台車に積載された試験装置であって、地盤面に接触する接触面を有した載荷部と、載荷部に立設した主軸と、載荷部に向って主軸に沿って落下する重錘とを備えるものが開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、地盤面に載置される載荷板と、載荷板上に設置された検出器付筐体と、筐体上に落下する重錘とを備える試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−278165号公報
【特許文献2】特開平5−87657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の試験装置は、装置が大規模であるため、狭隘な場所での計測には採用することができなかった。
また、載荷面の表面処理を行う機構を備えていないため、別途、装置を搬入して表面処理を行う作業に手間がかかる。
さらに、他の装置により表面処理を行った載荷面に、試験装置の載荷板を配置する位置決め作業に手間がかかる。
【0011】
特許文献2に記載の試験装置は、装置は小規模で狭隘な場所に搬入することが可能であるものの、測定作業や位置決め等は、人手により行う必要があるため、手間がかかっていた。
また、載荷面の表面処理も別途人手により行う必要がある。
【0012】
このような観点から、本発明は、盛土、覆土、埋戻し土、原子力廃棄物人工バリア(緩衝体)締固め層等において、簡易に載荷面処理および載荷試験を実施することを可能とした土質試験装置および土質試験方法と、締固め密度管理を非破壊的手法で行うことを可能とした締固め密度管理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明の土質試験装置は、地盤面を走行する自走式のベースマシンと、前記ベースマシンに設置された支持部材と、前記支持部材に取り付けられた載荷面処理機と、前記支持部材に取り付けられた載荷試験機とを備える土質試験装置であって、前記載荷面処理機および前記載荷試験機は、前記支持部材に沿って移動可能であることを特徴としている。
【0014】
かかる土質試験装置によれば、ベースマシンを移動させることで載荷面処理機および載荷試験機の両方を同時に移動させることができ、かつ、おおよその位置決めを行うことができる。また、載荷面処理機および載荷試験機を支持部材に沿って個別に移動させることができるので、より精度の高い位置決めを行うことができる。
また、載荷面処理機と載荷試験機とが、同一の支持部材に沿って移動するため、載荷面処理を行った位置に載荷試験機を位置させることが容易である。
さらに、遠隔操作システムを導入する場合において対応が容易となる。
【0015】
前記支持部材が、前記ベースマシンの前側に横設されたフロントレールと、前記ベースマシンの後側に横設されたリアレールと、前記フロントレールと前記リアレールとをつなぐサイドレールとを備えていれば、ベースマシンの前後において、横方向に連続して複数の載荷試験を実施することが可能となる。
【0016】
前記フレームが、平面視矩形枠状であれば、載荷面処理機および載荷試験機の個々の移動および位置決めをより簡易に行うことができる。
【0017】
なお、土質試験装置は、自走式のベースマシンと、前記ベースマシンに設置された直線状の支持部材と、前記支持部材に取り付けられた載荷面処理機と、前記支持部材に取り付けられた載荷試験機とを備えていて、前記支持部材は、前記ベースマシンに立設された縦軸を中心に回転可能に設置されたものであってもよい。
【0018】
また、土質試験装置が前記ベースマシンにカメラおよび測位センサを搭載していれば、土質試験装置の位置および周囲の状況をより簡易に確認することができる。
【0019】
本発明の土質試験方法は、地盤面を走行する自走式のベースマシンと、前記ベースマシンに設置された支持部材と、前記支持部材に取り付けられた載荷面処理機と、前記支持部材に取り付けられた載荷試験機とを備える土質試験装置を利用するものであって、前記ベースマシンを試験実施領域に移動させる移動工程と、前記載荷面処理機により地盤面の表面処理を行い、載荷面を形成する面処理工程と、前記載荷面処理機を前記支持部材に沿って移動させて前記載荷面上から退避させるとともに、前記載荷試験機を前記支持部材に沿って移動させて前記載荷面上に位置させる位置決め工程と、前記載荷試験機により載荷試験を行う試験工程とを備えることを特徴としている。
【0020】
かかる土質試験方法によれば、実施個所の環境に関わらず、載荷試験を実施することが可能となる。
【0021】
本発明の締固め密度管理方法は、前記土質試験方法により地盤反力係数KFWDを得るとともに、前記地盤反力係数KFWDを用いて、締固め乾燥密度γを管理することを特徴としている。
【0022】
かかる締固め密度管理方法によれば、RI法、砂置換法を用いずに非破壊的手法により、盛土、覆土、埋戻し土、原子力廃棄物人工バリア(緩衝体)締固め層等における締固め密度管理を行うことができる。
締固め乾燥密度γdと小型FWD試験によるK値(KFWD)の関係は、良好な相関性を有しているため、衝撃載荷試験によるK値を乾燥密度管理の有効な指標値として用いることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の土質試験装置および土質試験方法によれば、簡易に載荷面処理および載荷試験を実施することが可能となる。また、本発明の締固め密度管理方法によれば、締固め密度管理を非破壊的手法で行うことを可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態に係る土質試験装置を示す正面図である。
図2図1に示す土質試験装置の平面図である。
図3】載荷面処理機を示す正面図である
図4】載荷試験機を示す正面図である。
図5】地盤反力係数と乾燥密度との関係の一例を示すグラフである。
図6】他の形態に係る土質試験装置を示す平面図である。
図7】他の形態に係る載荷試験機を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の土質試験装置1は、図1に示すように、ベースマシン10と、支持部材20と、載荷面処理機30と、載荷試験機40とを備えている。
【0026】
ベースマシン10は、本体部11と、本体部11を上載した走行部12とを備えている。
本実施形態のベースマシン10は、全幅が1m以下に形成されているが、ベースマシン10の形状寸法は限定されるものではない。
【0027】
本体部11には、走行部12に動力を付与する図示しないモータが搭載されている。
また、本体部11には、土質試験装置1を遠隔操作するのに必要な機器類(例えば、カメラ、測位センサ、無線通信システムなど)が搭載されている。
【0028】
走行部12は、モータの動力により回転する履帯13,13を左右に備えている。
ベースマシン10は、履帯13,13が回転することで、走行する。
なお、ベースマシン10は、必ずしも履帯式(クローラ式)である必要はなく、例えば車輪により走行するタイヤ式走行マシンであってもよい。また、ベースマシン10は有線で操作してもよい。
【0029】
本実施形態のベースマシン10には、本体部11の中央に支柱14が立設されている。
支柱14の上端部には、支持部材20が固定されている。
【0030】
支持部材20は、支柱14を介してベースマシン10に設置されていて、図2に示すように、ベースマシン10の前側に横設されたフロントレール21と、ベースマシン10の後側に横設されたリアレール22と、フロントレール21とリアレール22とをつなぐ左右のサイドレール23,23とを備えている。
【0031】
フロントレール21、リアレール22およびサイドレール23,23は、互いに連続しており、平面視矩形枠状を呈している。
【0032】
支持部材20は、取付部材24,24,…を介して支柱14に固定されている。取付部材24は、フロントレール21とサイドレール23との角部、または、リアレール22とサイドレール23との角部から、支柱14に向って延出している。
【0033】
本実施形態では、複数の取付部材24,24,…が、平面視X字状を呈するように配置したが、取付部材24の構成はこれに限定されない。
【0034】
本実施形態のフロントレール21、リアレール22およびサイドレール23,23は、I形鋼により構成されているが、フロントレール21、リアレール22およびサイドレール23,23を構成する材料は限定されるものではない。
【0035】
また、取付部材24を構成する材料も限定されるものではなく、例えばL型鋼や溝型鋼等の各型鋼材や鋼板等を使用すればよい。
さらに、支持部材20は、必ずしも矩形枠状である必要はなく、例えばコ字状を呈していてもよい。
【0036】
載荷面処理機30は、図1に示すように、支持部材20に吊持されており、支持部材20に沿って移動することで、ベースマシン10の前後において載荷面Sの処理(整地)を行う。
【0037】
載荷面処理機30は、図3に示すように、車輪31,31と、モータ収容部32と、支持部33と、ブラケット34と、処理装置本体35とを備えている。
【0038】
車輪31は、支持部材20の下側のフランジの上面に配設されている。本実施形態では一対の車輪31,31が支持部材20のウェブを挟んで両側に配設されている。なお、車輪31の数や配置は限定されるものではない。
【0039】
車輪31は、モータ収容部32内の車輪用モータ(図示せず)の動力により回転することで、支持部材20を走行する。車輪31が支持部材20を走行することで、載荷面処理機30が支持部材20に沿って移動する。
【0040】
モータ収容部32は、支持部材20の直下に配設されている。車輪用モータの制御は、図示しない無線通信システムを介して、遠隔操作により行う。
モータ収容部32の下面には、支持部33が固定されている。
【0041】
支持部33は、伸縮自在に構成されている。支持部33を伸ばすと、処理装置本体35を下降し、載荷面Sへ接地され、支持部33を縮めると、処理装置本体35が上昇し、載荷面Sから離地される。支持部33の伸縮動作の制御は、無線通信システムを介して、遠隔操作により行う。
支持部33の下端には、ブラケット34を介して処理装置本体35が取り付けられている。
【0042】
処理装置本体35は、切削用モータ36と、回転切削部37と、カバー体38とを備えている。
【0043】
切削用モータ36は、回転軸(縦軸)を備えており、回転軸を回転させることにより、回転軸に固定された回転切削部37を回転させる。本実施形態の切削用モータ36の制御は、図示しない無線通信システムを介して、遠隔操作により行う。
【0044】
回転切削部37は、切削用モータ36の回転軸の下端に固定された円板であって、切削用モータ36の動力により回転することで、載荷面Sの表面を平滑に整形する。
【0045】
カバー体38は、底面が開口した有蓋円筒状の部材であって、内部の切削用モータ36および回転切削部37を保護するように、切削用モータ36および回転切削部37の上面および側面を覆っている。
なお、カバー体38の材質は限定されない。
【0046】
載荷試験機40は、図1に示すように、支持部材20に吊持されており、支持部材20に沿って移動することで、ベースマシン10の前後で載荷試験を行う。
【0047】
載荷試験機40は、図4に示すように、車輪41,41と、モータ収容部42と、巻き上げ手段43と、試験機本体44とを備えている。
【0048】
車輪41は、支持部材20の下側のフランジの上面に配設されている。本実施形態では一対の車輪41,41が支持部材20のウェブを挟んで両側に配設されている。なお、車輪41の数や配置は限定されるものではない。
【0049】
車輪41は、モータ収容部42の車輪用モータ(図示せず)の動力により回転することで、支持部材20を走行する。車輪41が支持部材20を走行することで、載荷試験機40が支持部材20に沿って移動する。
【0050】
モータ収容部42は、支持部材20の直下に配設されている。車輪用モータの制御は、図示しない無線通信システムを介して、遠隔操作により行う。
モータ収容部42の下方には、巻き上げ手段43が配設されている。
【0051】
巻き上げ手段43は、フック43aと、ワイヤー43bと、図示せぬウィンチとを備えている。フック43aは、試験機本体44の上面に固定された掛止部材45aに掛止されている。
【0052】
ウィンチを介してワイヤー43bを巻き出すと、フック43aが下降し、試験機本体44が載荷面Sに接地され、ウィンチを介してワイヤー43bを巻き上げると、フック43aが上昇して、試験機本体44が載荷面Sから離地される。
本実施形態の巻き上げ手段43の制御は、図示しない無線通信システムを介して、遠隔操作により行う。
【0053】
試験機本体44は、ケース45と、重錘46と、ロードセル47と載荷板48とを備えている。本実施形態の試験機本体44は、図示しない無線通信システムを介して、遠隔操作が可能に構成されている。
【0054】
ケース45は、有蓋円筒状の部材からなり、重錘46、ロードセル47および載荷板48を内装するとともに、重錘46のガイドとしても機能する。
【0055】
ケース45は、下部が拡径しているとともに、下端面が開口している。
載荷板48は、ケース45の拡径部分に配設されており、ロードセル47は、載荷板48の上面に設置されている。
【0056】
ケース45の上面には、フック43aを掛止するための掛止部材45aが取り付けられている。なお、掛止部材45aの構成は限定されるものではないが、本実施形態では、ワイヤーにより構成している。
【0057】
ケース45の高さは、重錘46の落下高さを確保できる大きさに設定されている。
【0058】
重錘46は、ロードセル47の上面に落下することで、載荷試験に必要な衝撃荷重を載荷面に付与する。
重錘46は、ケース45の内部において上下動可能に配設されている。
【0059】
本実施形態の重錘46は、中央部に貫通孔が形成されており、ロードセル47の上面に立設されたガイド軸49が当該貫通孔を挿通している。
【0060】
ガイド軸49は、下端がロードセル47の上面に固定されていて、上端がケース45の天井面に固定されている。
なお、ガイド軸49は必要に応じて配設すればよい。
【0061】
重錘46の側面には、スペーサー46aが設置されていて、ケース45と重錘46との隙間を一定に保持している。スペーサー46aは、重錘46の落下速度を低下させることがないよう、ケース45との間に大きな摩擦が生じないように構成されている。なお、スペーサー46aの構成は限定されるものではないが、本実施形態では、例えば球体を回転自在に配設することより構成する。
【0062】
ロードセル47は、載荷板48の上面に設置されていて、重錘46による衝撃荷重を計測する。載荷面Sのたわみ量は、ロードセル47に付設した図示せぬたわみセンサで計測する。
ロードセル47の上面には、バッファ47a,47aが配置されている。バッファ47aは、重錘46の落下による衝撃を吸収し、ロードセル47を保護している。
【0063】
載荷板48は、載荷面Sに接地された板材であって、底面が平坦に構成されている。
【0064】
次に、土質試験装置を利用した土質試験方法について説明する。
本実施形態の土質試験方法は、移動工程と、面処理工程と、位置決め工程と、試験工程とを備えている。
【0065】
移動工程は、ベースマシン10を走行させて、所定の試験実施領域に移動させる工程である。
本実施形態では、カメラおよび測位センサによりベースマシン10の位置を確認しつつ、遠隔操作によりベースマシン10を所定の位置に移動させる。
【0066】
ベースマシン10は、いわゆるクローラ式であるため、走行面に多少の不陸があったとしても、対応可能である。
【0067】
面処理工程は、載荷面処理機30により地盤面の表面処理を行い、載荷面Sを形成する工程である。
【0068】
ベースマシン10を配置したら、載荷面処理機30を支持部材20に沿って移動させて、載荷試験を行う位置(載荷面S)上に配置する。なお、ベースマシン10が配置された時点で、載荷面処理機30が所定の位置に配置されている場合には、載荷面処理機30を支持部材20に沿って移動させる必要はない。
【0069】
次に、支持部33を伸長させて、回転切削部37を接地させる。
続いて、切削用モータ36を駆動させ、回転切削部37を回転させることにより、地盤面の表面処理を行う。
【0070】
位置決め工程は、載荷面処理機30を支持部材20に沿って移動させて載荷面S上から退避させるとともに、載荷試験機40を支持部材20に沿って移動させて載荷面S上に位置させる工程である。
【0071】
載荷面処理機30による地盤面の表面処理(載荷面Sの整形)が完了したら、載荷面処理機30を移動させる。
載荷面処理機30の移動は、支持部33を収縮させて、回転切削部37を離地させて、支持部材20を走行させることにより行う。
【0072】
載荷面処理機30を退避させたら、載荷試験機40を、載荷面S上に配置する。
載荷試験機40は、載荷面処理機30の移動と同時に移動させてもよいし、載荷面処理機30を移動させた後に移動させてもよい。このとき、載荷面処理機30は、次に載荷試験を実施する箇所に配置させてもよい。
【0073】
載荷試験機40を載荷面S上に配置したら、巻き上げ手段43により試験機本体44を下降させて、載荷板48を接地させる。
【0074】
試験工程は、載荷試験機40により載荷試験を行う工程である。
載荷試験は、重錘46を所定の高さまで引き上げた後、ロードセル47に落下させることにより行う。このとき、重錘46の落下の衝撃により生じた載荷面Sのたわみを計測し、このたわみ量から地盤の密度や剛性および地盤反力係数KFWDを算出する。
【0075】
次に、地盤反力係数KFWDを用いて、締固め乾燥密度γを管理する。
地盤反力係数KFWDは、JIS A 1215の道路平板載荷試験K30に相当するものであって、締固め乾燥密度γdとの関係において非常に良好な相関性を有しているため(図5参照)、乾燥密度管理の有効な指標値として用いることができる。
【0076】
なお、図5は、地盤反力係数KFWDと締固め乾燥密度γdとの関係を示す一例であって、管理値が乾燥密度γd=1.6±0.1Mg/mであるベントナイト系緩衝材について、小型FWD試験を実施した場合における、地盤反力係数KFWDと締固め乾燥密度γdとの関係を示している。
図5によれば、地盤反力係数KFWDが600〜1000MN/mの範囲内であれば、乾燥密度γd=1.6±0.1Mg/mにて管理可能であることが解る。
【0077】
載荷試験が終了したら、巻き上げ手段43により試験機本体44を上昇させる。
【0078】
以上、本実施形態の土質試験装置および土質試験方法によれば、ベースマシン10を移動させることで載荷面処理機30および載荷試験機40の両方を同時に移動させることができ、かつ、おおよその位置決めを行うことができるため、作業性に優れている。
【0079】
また、載荷面処理機30および載荷試験機40を支持部材20に沿って個別に移動させることができるので、より精度の高い位置決めを行うことができる。
また、載荷面処理機30と載荷試験機40とが、同一の支持部材20に沿って移動するため、載荷面処理を行った位置に載荷試験機40を位置させることが容易である。
【0080】
遠隔操作により土質試験装置1を操作することで、作業員が立ち入りできない位置での計測も可能である。例えば、放射線廃棄物処分場におけるベントナイト系緩衝材の非破壊的密度管理を実施する場合であっても、安全かつ効率的に実施できる。
【0081】
載荷面処理機30を備えているため、表面が比較的硬いベントナイト系緩衝材の載荷面処理(平滑な切削処理)を効率よく実施することができる。
【0082】
支持部材20が矩形状に形成されているため、ベースマシン10の前後において、横方向に連続して複数の載荷試験を実施することができる。そのため、平面全体に対して載荷試験を簡易に実施することができる。
【0083】
載荷面処理機30と載荷試験機40との両方を備えているため、載荷面Sの整形と、載荷試験とを一つの装置により実施することが可能となり、実施個所の環境に関わらず、載荷試験を実施することが可能となる。
また、載荷面処理機30による整形と、載荷試験機40による載荷試験とを、それぞれ別の位置において同時に実施することができるため、施工性に優れている。
【0084】
狭隘な試験環境下であっても、ベースマシン10として、環境に応じた大きさのものを採用することで、迅速かつ効率的に非破壊試験を実施することができる。
【0085】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0086】
本発明の土質試験装置および土質試験方法は、放射線廃棄物処分場におけるベントナイト系緩衝材の密度管理に関わらず、盛土、覆土、埋め戻し土等の密度管理にも採用可能である。
【0087】
前記実施形態では、平面視矩形枠状を呈した支持部材に沿って載荷面処理機と載荷試験機とが移動する構成としたが、支持部材の構成はこれに限定されるものではない。例えば、図6に示す土質試験装置のように、ベースマシン10に立設された縦軸14を中心に回転可能に設置された直線状の支持部材の端部に、載荷面処理機または載荷試験機が取り付けられたものであってもよい。この土質試験装置によれば、支持部材を回転させることで、載荷面処理機および載荷試験機を所定の位置に配置することができる。
【0088】
前記実施形態の載荷試験機40は、巻き上げ手段43により試験機本体44を上下動させるものとしたが、例えば、図7に示す載荷試験機40’のように、シリンダー状の支持部材43’により試験機本体44を上下動させる構成としてもよく、載荷試験機40の構成は、限定されるものではない。
【0089】
また、試験機本体44の構成は、前記実施形態で示したものに限定されるものではない。例えば、図7に示す載荷試験機40’のように、ケース45’が外筒45aと外筒45aに内装された内筒45bとを備えた2重構造であってもよい。載荷試験機40’は、重錘46が内筒45bの内部において、落下することで、載荷板48を介して載荷面Sに衝撃を加えるように構成されている。重錘46とロードセル47との間には、内筒45bの内壁が介設されていて、ロードセル47に直接衝撃が加わることが防止されている。なお、内壁には、バッファ45c,45cが固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 土質試験装置
10 ベースマシン
20 支持部材
21 フロントレール
22 リアレール
23 サイドレール
30 載荷面処理機
40 載荷試験機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7