(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材と中間層と酸化物超電導層と導電性の保護層をこの順に積層してなる酸化物超電導積層体が、保護層から基材まで達する溝加工部を介し前記保護層を内側にして二つ折りに折り曲げられ、2つの酸化物超電導積層体がそれらの折り曲げ部分を帯状の導体の幅方向端部側に位置させてこれら2つの酸化物超電導積層体により前記導体の全周がはんだ層を介し囲まれてなることを特徴とする酸化物超電導線材。
基材と中間層と酸化物超電導層と導電性の保護層をこの順に積層してなる酸化物超電導積層体が、保護層から基材まで達する2本の平行な溝加工部を介し前記保護層を内側にして折り曲げられ、折り曲げ部分の内側に帯状の導体をはんだ層を介し内包することで前記酸化物超電導積層体により前記導体の全周が囲まれてなることを特徴とする酸化物超電導線材。
基材と中間層と酸化物超電導層と導電性の保護層をこの順に積層してなる酸化物超電導積層体が、保護層から基材まで達する複数本の平行な溝加工部を介し前記保護層を内側にして折り曲げられ、折り曲げ部分の内側に断面多角形状の帯状の導体が該導体の外周角部と前記折り曲げ部分を位置合わせしてはんだ層を介し内包され、前記酸化物超電導積層体により前記導体の全周が囲まれてなることを特徴とする酸化物超電導線材。
前記酸化物超電導積層体の端縁どうしが突き合わされ、この突き合わせ部分が溶接されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の酸化物超電導線材。
基材と中間層と酸化物超電導層と導電性の保護層をこの順に積層してなる酸化物超電導積層体を2つ用意し、これら酸化物超電導積層体に保護層から基材まで達する直線状の溝加工部を形成し、該溝加工部を介し2つの酸化物超電導積層体を個々に前記保護層を内側にして二つ折りとしてこれら酸化物超電導積層体の間に前記酸化物超電導積層体に形成されたはんだ層で帯状の導体を挟み込み前記導体の全周を前記はんだ層と前記酸化物超電導積層体で覆うとともに、前記はんだ層を溶融後凝固させて前記導体と前記酸化物超電導積層体を接合することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
基材と中間層と酸化物超電導層と導電性の保護層をこの順に積層してなる酸化物超電導積層体を用意し、この酸化物超電導積層体に保護層から基材まで達する直線状の溝加工部を平行に2本形成し、これら2本の溝加工部を介し酸化物超電導積層体を前記保護層を内側にして折り曲げてこれら折り曲げ部分の間に前記酸化物超電導積層体に形成されたはんだ層で帯状の導体を挟み込み、該導体の全周を前記はんだ層と前記酸化物超電導積層体で覆うとともに、前記はんだ層を溶融後凝固させて前記導体と前記酸化物超電導積層体を接合することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
基材と中間層と酸化物超電導層と導電性の保護層をこの順に積層してなる酸化物超電導積層体を用意し、この酸化物超電導積層体に保護層から基材まで達する直線状の溝加工部を平行に3本以上形成し、これら3本以上の溝加工部を介し酸化物超電導積層体を前記保護層を内側にして折り曲げ、この酸化物超電導積層体の内側に前記酸化物超電導積層体に形成されたはんだ層で帯状の導体を挟み込み、前記導体の全周を前記はんだ層と前記酸化物超電導積層体で覆うとともに、はんだ層を溶融後凝固させて前記導体と前記酸化物超電導積層体を接合することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
前記導電性接合材としてはんだ層を用い、加熱処理と冷却処理に伴うはんだ層の溶融と凝固により前記酸化物超電導積層体を金属導体に電気的に接合することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【背景技術】
【0002】
Re−123系酸化物超電導体(ReBa
2Cu
3O
7−X:ReはYを含む希土類元素)は、液体窒素温度で超電導性を示し、電流損失が低いため、これを線材に加工して電力供給用の超電導導体あるいは超電導コイルを製造することがなされている。この酸化物超電導体を線材に加工した構造の一例として、金属テープの基材上に中間層を介し酸化物超電導層を形成した酸化物超電導線材が提供されている。
【0003】
前記金属テープの基材は現状ではハステロイ(登録商標)と称されるNi合金製のテープ状基材が適用されており、高強度かつ柔軟性に優れた基材が提供されている。
前記中間層は金属製の基材と酸化物超電導層との間に介在されるバッファー層として機能する結晶性セラミックス薄膜が用いられており、IBAD法(イオンビームアシスト蒸着法)と称される結晶配向技術を用いた成膜法により金属製の基材上に2軸配向させた結晶配向性の良好な中間層が形成されている。この中間層の上には、キャップ層と称される中間薄膜が形成され、結晶配向性に優れるとともに、中間層や基材側からの不純物拡散を防止する目的で積層されている。
前記酸化物超電導層はReBa
2Cu
3O
7−xに代表される酸化物超電導体からなるセラミックス薄膜として積層され、酸化物超電導層の上には主にAgからなる保護層が酸化物超電導層を水分から保護するなどの目的で設けられている。また、保護層上に、Cuからなる安定化金属層が積層され、酸化物超電導層が外乱を受けて常電導状態に転移した場合に電流のバイパスとなるように構成され、安定化金属層の上に絶縁層が設けられ、酸化物超電導線材が構成されている。
【0004】
Re−123系酸化物超電導体の中でもY系などの酸化物超電導体は多湿環境に曝されると水分の影響を受けて結晶構造が乱れ、超電導特性が劣化することが知られている。従って酸化物超電導層を水分から保護する必要があり、このためにAgの保護層などが形成されている。
しかし、Agは高価な金属でありその使用量は少ない方が望ましいので、Agの保護層は薄く形成されるが、薄いAgの保護層では満足な耐湿性を得られないおそれがあり、このため種々の構造が提供されている。
例えば、安定化金属層をCuめっきで形成し、Agの保護層と酸化物超電導層を含めて基材の裏面側まで全周を所定厚さのCuめっき層で覆った構造の酸化物超電導導体が知られている。(特許文献1参照)
また、Agの保護層を設けた構造ではなく、密閉構造とすることを目的として、酸化物超電導層と基材を銅箔で覆い、酸化物超電導積層体と基材を覆った銅箔の端縁同士をはんだで封止した構造の酸化物超電導導体が提供されている。(特許文献2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の如く酸化物超電導層の表面を薄いAgの保護層で覆った構造の酸化物超電導導体は、酸化物超電導層の側面側からの水分の浸入には対応できない構造である。また、薄いAgの保護層を成膜した場合に保護層にピンホールが存在すると、その上に形成するCuめっきにムラが生じて水分が浸入しやすい構造となり、多湿環境下では超電導特性が劣化するおそれがある。
また、銅箔で酸化物超電導層と基材を覆った構造の酸化物超電導導体は、基材等を覆った銅箔の端縁どうしを重ねてはんだで接合したはんだ接合部分にピンホールが存在すると、このピンホールを介し水分が酸化物超電導層側に浸入するので、多湿環境下では超電導特性が劣化するおそれがある。
【0007】
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みなされたものであり、酸化物超電導層を備えた基材を折り曲げて基材により酸化物超電導層を包み込む構造として、水分の影響による酸化物超電導層の劣化を無くした酸化物超電導導体とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の酸化物超電導線材は、基材と中間層と酸化物超電導層と導電性の保護層をこの順に積層してなる酸化物超電導積層体が、保護層から基材まで達する溝加工部を介し前記保護層を内側にして二つ折りに折り曲げられ、2つの酸化物超電導積層体がそれらの折り曲げ部分を帯状の導体の幅方向端部側に位置させてこれら2つの酸化物超電導積層体により前記導体の全周をはんだ層を介し囲んでなることを特徴とする。
【0009】
帯状の導体の全周を折り曲げ構造の2つの酸化物超電導積層体がはんだ層を介し取り囲むように覆っているので、酸化物超電導層の周囲を基材により取り囲んで密閉した構造の酸化物超電導線材を提供できる。即ち、基材の外側から酸化物超電導層側への水分の浸入を防止できる密閉構造の酸化物超電導線材を提供できる。
基材について溝加工部を介し溝加工部を基点として正確な位置で折り曲げられているので、導体を二つ折りの酸化物超電導積層体で取り囲む場合に導体の両端側に折り曲げ部分を正確に位置決めすることができ、二つ折り構造とした酸化物超電導積層体で導体の全周を確実に覆うことができ、酸化物超電導層を確実に密閉できる。
酸化物超電導層が溝加工部を介し区分され、溝加工部を境界として二つ折りに折り曲げられているので、溝加工部以外の部分の酸化物超電導層に対し折り曲げに伴う歪や応力の負荷を抑制でき、酸化物超電導層に対し歪や応力の負荷に起因する超電導特性の劣化を抑制できる。
【0010】
上記課題を解決するために本発明の酸化物超電導線材は、基材と中間層と酸化物超電導層と導電性の保護層をこの順に積層してなる酸化物超電導積層体が、保護層から基材まで達する2本の平行な溝加工部を介し前記保護層を内側にして折り曲げられ、折り曲げ部分の内側に帯状の導体をはんだ層を介し内包することで前記酸化物超電導積層体により前記導体の全周が囲まれてなることを特徴とする。
【0011】
導体の全周を折り曲げ構造の酸化物超電導積層体がはんだ層を介し囲むように覆っているので、酸化物超電導層の周囲をはんだ層と基材により囲んで密閉した構造の酸化物超電導線材を提供できる。即ち、基材の外側から酸化物超電導層側への水分の浸入を防止できる密閉構造の酸化物超電導線材を提供できる。
基材について溝加工部を介し溝加工部を基点として正確な位置で折り曲げられているので、折り曲げ加工した酸化物超電導積層体で導体を囲む場合に導体の周面側に酸化物超電導積層体を正確に沿わせて位置決めすることができ、折り曲げ構造の酸化物超電導積層体で導体の全周を確実に覆うことができ、水分浸入のおそれが少ない酸化物超電導層の密閉構造を実現できる。
酸化物超電導層が溝加工部を介し区分され、溝加工部を境界として折り曲げ加工されているので、溝加工部分以外の部分の酸化物超電導層に対し折り曲げに伴う歪や応力の負荷を抑制でき、酸化物超電導層に対し歪や応力の負荷に起因する超電導特性の劣化を抑制できる。
【0012】
上記課題を解決するために本発明の酸化物超電導線材は、基材と中間層と酸化物超電導層と導電性の保護層をこの順に積層してなる酸化物超電導積層体が、保護層から基材まで達する複数本の平行な溝加工部を介し前記保護層を内側にして折り曲げられ、折り曲げ部分の内側に断面多角形状の導体が該導体の外周角部と前記折り曲げ部分を位置合わせしてはんだ層を介し内包され、該はんだ層と前記酸化物超電導積層体により前記導体の全周が囲まれてなることを特徴とする。
【0013】
導体の全周を折り曲げ構造の酸化物超電導積層体がはんだ層を介し囲むように覆っているので、酸化物超電導層の周囲をはんだ層と基材により囲んで密閉した構造の酸化物超電導線材を提供できる。即ち、基材の外側から酸化物超電導層側への水分の浸入を防止できる密閉構造の酸化物超電導線材を提供できる。
折り曲げ構造の酸化物超電導積層体の内部に設けられている導体の外周角部に溝加工部が位置合わせされているので、折り曲げ構造の酸化物超電導積層体は導体の外周に沿って正確に折り曲げられ、折り曲げ構造の酸化物超電導積層体が多角形状の導体の外周に沿って正確に密着できるので、酸化物超電導層を確実に覆った密閉構造の酸化物超電導線材を提供できる。
【0014】
上記課題を解決するために本発明の酸化物超電導線材は、前記導体の全周を囲むように設けられている前記酸化物超電導積層体の端縁どうしの突き合わせ部分が溶接されてなることを特徴とする。
導体の全周を覆った酸化物超電導積層体の端縁どうしが溶接されることで、酸化物超電導層をはんだ層が覆って密閉する上に、端縁どうしを溶接した酸化物超電導積層体が酸化物超電導層を覆うことで更に密閉性が向上し、酸化物超電導層側に水分が浸入し難い構造を提供できる。
【0015】
上記課題を解決するために本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、基材と中間層と酸化物超電導層と導電性の保護層をこの順に積層してなる酸化物超電導積層体を2つ用意し、これら酸化物超電導積層体に保護層から基材まで達する直線状の溝加工部を形成し、該溝加工部を介し2つの酸化物超電導積層体を個々に前記保護層を内側にして二つ折りとしてこれら酸化物超電導積層体の間にはんだ層と帯状の導体を挟み込み前記導体の全周を前記はんだ層と前記酸化物超電導積層体で覆うとともに、前記はんだ層を溶融後凝固させて前記導体と前記酸化物超電導積層体を接合することを特徴とする。
【0016】
導体の全周を折り曲げ構造の2つの酸化物超電導積層体がはんだ層を介し囲むように覆うので、酸化物超電導層の周囲をはんだ層と基材により取り囲んで密閉した構造の酸化物超電導線材を提供できる。即ち、基材の外側から酸化物超電導層側への水分の浸入を防止できる密閉構造の酸化物超電導線材を提供できる。
【0017】
上記課題を解決するために本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、基材と中間層と酸化物超電導層と導電性の保護層をこの順に積層してなる酸化物超電導積層体を用意し、この酸化物超電導積層体に保護層から基材まで達する直線状の溝加工部を平行に2本形成し、これら2本の溝加工部を介し酸化物超電導積層体を前記保護層を内側にして折り曲げてこれら折り曲げ部分の間にはんだ層と帯状の導体を挟み込み、該導体の全周を前記はんだ層と前記酸化物超電導積層体で覆うとともに、前記はんだ層を溶融後凝固させて前記導体と前記酸化物超電導積層体を接合することを特徴とする。
【0018】
導体の全周を折り曲げ構造の酸化物超電導積層体がはんだ層を介し囲むように覆うので、酸化物超電導層の周囲をはんだ層と基材により取り囲んで密閉した構造の酸化物超電導線材を提供できる。即ち、基材の外側から酸化物超電導層側への水分の浸入を防止できる密閉構造の酸化物超電導線材を提供できる。
【0019】
上記課題を解決するために本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、基材と中間層と酸化物超電導層と導電性の保護層をこの順に積層してなる酸化物超電導積層体を用意し、この酸化物超電導積層体に保護層から基材まで達する直線状の溝加工部を平行に3本以上形成し、これら3本以上の溝加工部を介し酸化物超電導積層体を前記保護層を内側にして折り曲げ、この酸化物超電導積層体の内側に帯状の導体とはんだ層を挟み込み、前記導体の全周を前記はんだ層と前記酸化物超電導積層体で覆うとともに、はんだ層を溶融後凝固させて前記導体と前記酸化物超電導積層体を接合することを特徴とする。
導体の全周を折り曲げ構造の酸化物超電導積層体がはんだ層を介し囲むように覆うので、酸化物超電導層の周囲をはんだ層と基材により取り囲んで密閉した構造の酸化物超電導線材を提供できる。即ち、基材の外側から酸化物超電導層側への水分の浸入を防止できる密閉構造の酸化物超電導線材を提供できる。
【0020】
上記課題を解決するために本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、前記導体の全周を囲むように設けられている前記酸化物超電導積層体の端縁どうしの突き合わせ部分を溶接することを特徴とする。
導体の全周を覆った酸化物超電導積層体の端縁どうしを溶接することで、酸化物超電導層をはんだ層が覆って密閉する上に、溶接した密閉構造の酸化物超電導積層体が酸化物超電導層を覆うことで密閉性を高め、外部から酸化物超電導層側に水分が浸入し難い構造を提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、酸化物超電導層の全周を折り曲げ構造の酸化物超電導積層体がはんだ層を介し取り囲むように覆っているので、酸化物超電導層を酸化物超電導積層体で密閉した構造の酸化物超電導線材を提供できる。即ち、基材の外側から酸化物超電導層側への水分の浸入を防止できる密閉構造の酸化物超電導線材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る酸化物超電導線材について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る第1実施形態の酸化物超電導線材の一部を断面とした斜視図であり、この実施形態の酸化物超電導線材Aは、溝加工部1を介し二つ折りに折り曲げ加工された酸化物超電導積層体2、2の内側に酸化物超電導層3を内包した構造とされている。
図2は、
図1に示す酸化物超電導線材Aに組み込まれている二つ折り形状の酸化物超電導積層体2の基となる酸化物超電導積層体本体5を示す一部断面斜視図である。
図2に示す酸化物超電導積層体本体5は、テープ状の基材4の上に中間層6と酸化物超電導層3と保護層7が順次積層されている。この構造の酸化物超電導積層体本体5を用いて溝加工部1を介し横断面U字状に二つ折りに折り曲げ加工して
図1に示す酸化物超電導積層体2が形成され、2つの酸化物超電導積層体2、2の間に安定化材とするための帯状の導体(安定化導体)8をはんだ層9で囲んだ状態で内包することで酸化物超電導線材Aが構成されている。
【0024】
前記横断面U字状に二つ折り形状とされた酸化物超電導積層体2、2は互いの幅方向端縁4aを突き合わせて一体化され、導体8の全周をはんだ層9を介し囲むように配置されている。酸化物超電導積層体2、2の端縁4aの突き合わせ部分が溶接されて一体化されていることが好ましく、酸化物超電導積層体2、2の内側に設けられている酸化物超電導層3はその全周(外周)を、中間層6と基材4に取り囲まれて密閉されている。
【0025】
図2に示す酸化物超電導積層体本体5に適用される基材4は、長尺の線材とするためにテープ状やシート状あるいは薄板状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。各種耐熱性金属の中でも、ニッケル合金からなることが好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適である。基材4の厚さは、通常は、10〜500μmである。また、基材4として、ニッケル合金に集合組織を導入した配向Ni−W合金テープ基材等を適用することもできる。
【0026】
中間層6は、基材4と酸化物超電導層3の間において結晶構造を整え、基材構成元素の元素拡散を防止するなどの目的で設けられ、一例として下地層と配向層とキャップ層とから構成される。
下地層は、以下に説明する拡散防止層とベッド層の複層構造あるいは、これらのうちどちらか1層からなる構造とすることができる。
下地層として拡散防止層を設ける場合、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化アルミニウム(Al
2O
3、「アルミナ」とも呼ぶ)、あるいは、GZO(Gd
2Zr
2O
7)等から構成される単層構造あるいは複層構造の層が望ましく、厚さは例えば10〜400nmである。
下地層としてベッド層を設ける場合、ベッド層は、耐熱性が高く、界面反応性を低減し、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層は、例えば、イットリア(Y
2O
3)などの希土類酸化物であり、より具体的には、Er
2O
3、CeO
2、Dy
2O
3、Er
2O
3、Eu
2O
3、Ho
2O
3、La
2O
3等を例示することができ、これらの材料からなる単層構造あるいは複層構造を採用できる。ベッド層の厚さは例えば10〜100nmである。また、拡散防止層とベッド層の結晶性は特に問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すれば良い。
【0027】
配向層は、酸化物超電導層3の結晶配向性を制御するバッファー層として機能し、酸化物超電導層と格子整合性の良い金属酸化物からなり、IBAD法(イオンビームアシスト蒸着法)により形成された配向性の良好な膜であることが好ましい。配向層の好ましい材質として具体的には、Gd
2Zr
2O
7、MgO、ZrO
2−Y
2O
3(YSZ)、SrTiO
3、CeO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、Gd
2O
3、Zr
2O
3、Ho
2O
3、Nd
2O
3等の金属酸化物を例示できる。配向層は、単層でも良いし、複層構造でも良い。
【0028】
キャップ層は、前記配向層の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ層は、前記配向層よりも高い面内配向度が得られる可能性がある。
キャップ層の材質は、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、Gd
2O
3、Zr
2O
3、Ho
2O
3、Nd
2O
3等が例示できる。キャップ層の材質がCeO
2である場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
キャップ層は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができる。CeO
2のキャップ層の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、50〜5000nmの範囲とすることができる。
【0029】
酸化物超電導層3は通常知られている組成の酸化物超電導体からなるものを広く適用することができ、ReBa
2Cu
3O
7−x(ReはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のもの、具体的には、Y123(YBa
2Cu
3O
7−x)又はGd123(GdBa
2Cu
3O
7−x)を例示することができる。また、その他の酸化物超電導体、例えば、Bi
2Sr
2Ca
n−1Cu
nO
4+2n+δなる組成等に代表される臨界温度の高い他の酸化物超電導体からなるものを用いても良いのは勿論である。酸化物超電導層3の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
酸化物超電導層3の上面を覆うように形成されている保護層7は、Agからなり、DCスパッタ装置やRFスパッタ装置などの通常のスパッタ装置により成膜されており、その厚さが1〜30μm程度とされている。
【0030】
二つ折りに加工された酸化物超電導積層体2、2に内包されている帯状の導体8は、良導電性の金属材料からなり、酸化物超電導層3が超電導状態から常電導状態に転移した時に、保護層7とともに、電流を転流するバイパスとして機能する。導体8を構成する金属材料としては、良導電性を有するものであればよく、特に限定されないが、銅、黄銅(Cu−Zn合金)、Cu−Ni合金等の銅合金、Al、Cu−Al合金等の比較的安価な材質からなるものを用いることが好ましく、中でも高い導電性を有し、安価であることがら銅からなることが好ましい。なお、酸化物超電導線材を超電導限流器用途に使用する場合、導体8は高抵抗金属材料より構成され、例えば、Ni−Cr等のNi系合金などからなる。導体8の厚さは特に限定されず、適宜調整可能であるが、50〜300μmとすることが好ましい。
この例の酸化物超電導線材Aはその外周に絶縁テープを巻回するなどの手段により絶縁被覆された状態で超電導コイルの巻線用途などに使用される。
【0031】
図1に示す構造の酸化物超電導線材Aを製造するには、
図2に示す積層構造のテープ状の酸化物超電導積層体本体5を作製する。
酸化物超電導積層体本体5を製造する方法の一例として、基材4上にスパッタ法で拡散防止層とベッド層を形成した後、このベッド層の上にIBAD法で配向層を形成し、さらにPLD法でキャップ層を形成して中間層6を形成し、更にその上に酸化物超電導層3をPLD法で形成し、次に、酸化物超電導層3の上面にスパッタ法によりAgの保護層7を形成して
図2に示す構造の酸化物超電導積層体本体5を作製することができる。Agの保護層7として厚さは1〜30μm程度の範囲に形成される。Agの保護層7を形成後、酸化物超電導積層体本体5については酸素雰囲気中において500℃程度に加熱するアニール処理を施しておき、酸化物超電導層3の結晶に酸素を供給してその結晶構造を整えておく。
【0032】
次に、酸化物超電導積層体本体5の保護層7を上にして、酸化物超電導積層体本体5の幅方向の中間部から長手方向に沿って保護層7から基材4に達するように溝加工して直線状の溝加工部11を形成する。溝加工部11の形成方法は特に限定されず従来公知の方法を適用できるが、レーザー照射又は回転刃による溝加工などの方法で形成できる。
図3に示すように、レーザー加工機(レーザー照射装置)13を用いる場合には、加工時に酸化物超電導積層体本体5が応力や圧力により変形するおそれがない。レーザーの出力や回転刃の厚さを調整することで容易に溝加工部11の幅及び深さを調整できる。
溝加工部11の幅は、20〜100μm程度とされ、溝加工部11の深さは、基材4の厚さの1/3〜1/2程度の深さに形成される。
【0033】
次に、溝加工部11を形成した酸化物超電導積層体本体5を
図3(b)に示すように2つ隣接させて水平に配置し、2つ隣接配置した酸化物超電導積層体本体5の保護層7側の上面全部にはんだテープなどを沿わせてはんだ層12を形成する。はんだ層12の厚さは、20〜30μm程度とされる。はんだ層は、はんだテープを被着させたもの、はんだ層を塗布したものなどのいずれであっても良い。また、はんだ層12の材料として錫、錫−銀系合金や錫−ビスマス系合金等を適宜用いることができる。
【0034】
次に、2つ隣接配置した酸化物超電導積層体本体5に対し、
図3(c)に示すように1つの酸化物超電導積層体本体5の幅と同等幅の帯状の金属テープからなる導体8を2つの酸化物超電導積層体本体5、5に均等に跨るように設置する。
図3(c)に示すように導体8を設置すると、導体8の幅方向両端縁の下方に溝加工部11、11が位置合わせされる。
次いで、両方の酸化物超電導積層体本体5について溝加工部11を介し2つ折りとする折り曲げ加工を各酸化物超電導積層体本体5の長さ方向全長に
図3(d)に示すように順次行う。なお、この折り曲げ加工時の加工性を良好とするための観点から、前述の如く基材4の厚さの1/3〜1/2程度の深さに達するように溝加工部11を設けることが好ましい。
【0035】
各酸化物超電導積層体本体5の長さ方向全長に渡り基材4、4を折り曲げ加工すると、
図3(e)に示す構造とすることができるので、この後、はんだの融点温度まで全体を加熱すると、はんだ層12を溶融させることができ、次いで常温まで冷却して溶融はんだを凝固させることで導体8の周囲に二つ折り構造とした酸化物超電導積層体2をろう付けした構造の酸化物超電導線材Aが得られる。はんだは、錫はんだ、錫−銀系合金のはんだ、錫−ビスマス系合金のはんだを用いることができる。
この後、必要に応じて基材4、4の幅方向両端縁4aの突き合わせ部分を溶接して一体化することにより、密閉構造を更に強固にすることができる。
【0036】
なお、前記製造工程において、仮に溝加工部11を設けることなく基材4を二つ折りに加工すると、酸化物超電導層3の折り曲げ部分に応力が集中し、結果として酸化物超電導層3に不定形のクラックを多数発生させてしまうので、酸化物超電導線材Aの超電導特性が大幅に劣化するおそれが高い。一方、溝加工部11を設けることにより、酸化物超電導積層体本体5を二つ折りに加工する際、折り曲げ部分周囲の酸化物超電導層3に不要な応力を負荷するおそれがなく、酸化物超電導層3にクラックを別途生じさせるおそれも少ないので、クラックの発生や応力負荷に伴う超電導特性の劣化を生じていない優れた超電導特性の酸化物超電導線材Aを得ることができる。
前述の酸化物超電導層3は結晶性セラミックス薄膜であり、曲げ負荷や物理的衝撃には特に弱いので、溝加工部11を形成し、これを境界として折り曲げることが超電導特性の劣化防止に特に有効である。
【0037】
次に、本実施形態の酸化物超電導線材Aの製造方法について、
図4に示す構成の製造装置30を用いて行う場合について説明する。
図4に示すように、製造装置30は、酸化物超電導積層体本体5を溝加工するレーザー加工機(レーザー照射装置)13、13と、酸化物超電導積層体本体5にはんだテープ20を沿わせてはんだ層12を積層形成するはんだ沿わせ機構50と、前記はんだテープ20上に安定化材となるテープ状の導体21を沿わせる導体沿わせ機構52と、前記導体21を2本の酸化物超電導積層体本体5上に位置決めして仮固定する貼り合わせ機構53と、酸化物超電導積層体本体5を溝加工部を介し二つ折りに加工する折り曲げ機構40と、折り曲げられた酸化物超電導積層体本体5を固定する固定機構60とを備えている。
【0038】
製造装置30の導入側には、テープ状の酸化物超電導積層体本体5が巻き付けられていて、酸化物超電導積層体本体5を送り出し可能な2基の第1リール装置31と、はんだテープ20が巻き付けられていて、はんだテープ20を送り出し可能な第2リール装置32と、テープ状の導体21が巻き付けられていて、導体21を送り出し可能な第3リール装置33が設けられている。また、送り出された2本の超電導積層体本体5をはんだ沿わせ機構50に並列に案内する搬送ローラ51と、固定機構60により形成された酸化物超電導線材Aを巻き取る巻き取り装置34が設けられている。
【0039】
図4に示すように、固定機構60は、はんだ層が積層され、二つ折りにされた酸化物超電導積層体をはんだ層の融点以上の温度に加熱する本加熱機構(加熱部)61と、二つ折りにされた酸化物超電導積層体を固定するようにこれらを加圧しながら徐々に冷却する一対の加圧ロール62を有している。
二つ折りに折り曲げ加工された2本の酸化物超電導積層体は、本加熱機構61内を挿通することにより所定の温度に加熱される。加圧ロール62は、不図示のヒータ、および加圧ロール62の外周面上に取付けられた不図示のブラシを有している。
【0040】
以上構成の製造装置30において、第1リール装置31、31から酸化物超電導積層体本体5、5をはんだ沿わせ機構50と導体沿わせ機構52に供給し、はんだテープ20と導体21とを順次沿わせ、導体沿わせ機構52に供給し、貼り合わせ機構53において導体21を位置決めして仮固定した後、折り曲げ機構40により酸化物超電導積層体本体5、5を溝加工部11を介して折り曲げ、本加熱機構61と加圧ローラ62により加熱し加圧することで酸化物超電導線材Aを連続的に製造することができ、巻き取り装置34に巻き取ることができる。
【0041】
図5は、本発明に係る第2実施形態の酸化物超電導線材の一部を断面とした斜視図である。
図5に示すように、第2実施形態の酸化物超電導線材Bは、幅方向両側に配置した溝加工部1を介し両端を折り畳み加工した酸化物超電導積層体16の内側に酸化物超電導層3が内包された構造とされている。
図5に示す構造の酸化物超電導線材Bは、
図2に示す酸化物超電導積層体本体5と同等構造の積層体本体を用いるが、先に説明した第1実施形態の酸化物超電導積層体本体5よりも幅が2倍程度広い積層体本体を用いる。この積層体本体を横断面C字状になるように両端折り畳み加工して酸化物超電導積層体16が適用されている。
【0042】
第2実施形態の酸化物超電導線材Bを製造するには、
図6(a)に示すように幅の広い酸化物超電導積層体本体17を用い、この積層体本体17の上面にレーザー加工機13、13を用いて2本の平行な溝加工部11を形成する。2本の平行な溝加工部11の間隔は後に用いる導体8と同等幅とする。
溝加工後、
図6(b)に示すようにはんだ層12を先の
図3(b)を基に説明した場合と同様に形成し、次いで
図6(c)に示すように導体8を先の
図3(c)を基に説明した場合と同様に形成し、次いで酸化物超電導積層体本体17を先の
図3(d)を基に説明した場合と同様に
図6(d)に示すように折り曲げ、次いではんだ層12を溶融させ冷却することで
図6(e)に示す構造の酸化物超電導線材Bを得ることができる。
なお、酸化物超電導積層体16の端縁16aの突き合わせ部分を溶接しておくならば、接合構造としてより密閉性の良好な構造にすることができる。
【0043】
第2実施形態の酸化物超電導線材Bは先の第1実施形態の酸化物超電導線材Aと同等の作用効果を得ることができるが、1つの酸化物超電導積層体本体17から酸化物超電導線材Bを得ることができる利点を有する。
【0044】
図7は、本発明に係る第3実施形態の酸化物超電導線材の一部を断面とした斜視図である。
図7に示すように、第3実施形態の酸化物超電導線材Cは、溝加工部1Aを介し二つ折りに加工された酸化物超電導積層体22、22の内側に酸化物超電導層3が内包された構造とされている。
図7に示す構造の酸化物超電導線材Cは、
図2に示す酸化物超電導積層体本体5に対し保護層7の上に安定化材となるべきCuなどの金属からなる安定化層28を被覆した酸化物超電導積層体本体を用い、この積層体本体を横断面U字状になるように二つ折りに折り曲げ加工した酸化物超電導積層体22が適用されている。
そして、2つの酸化物超電導積層体22、22の間に金属からなる帯状の導体(安定化導体)8をはんだ層29で囲んだ状態で内包することで酸化物超電導線材Cが構成されている。なお、酸化物超電導積層体22の端縁22aの突き合わせ部分を溶接しておくならば、接合構造としてより密閉性の良好な構造にすることができる。
【0045】
図7に示す第3実施形態の酸化物超電導線材Cは、先に説明した第1実施形態の酸化物超電導線材Aの製造方法と同等の製造方法で製造することができる。第1実施形態の酸化物超電導線材Aは
図2に示す構造の酸化物超電導積層体本体5を用いて
図3に示す工程に従い製造したが、酸化物超電導積層体本体を上述した安定化層28付きの酸化物超電導積層体本体として
図3に示す工程に従い製造することにより、第3実施形態の酸化物超電導線材Cを得ることができる。
第3実施形態の酸化物超電導線材Cは先の第1実施形態の酸化物超電導線材Aと同等の作用効果を得ることができるが、この形態の酸化物超電導線材Cにおいては、導体8と安定化層28とからなる2層構造の安定化材を備えた構造を実現できる。
【0046】
図8は、本発明に係る第4実施形態の酸化物超電導線材の一部を断面とした斜視図である。
図8に示すように、第4実施形態の酸化物超電導線材Dは、溝加工部1Bを介し横断面J字状に二つ折りに加工した酸化物超電導積層体42、42の内側に酸化物超電導層3が内包された構造とされている。二つ折りされた酸化物超電導積層体42、42は、はんだ層9により一体化されている。また、酸化物超電導積層体42、2について、それらの幅方向両端縁42a、42aを突き合わせて溶接することで一体化されていることがより好ましく、これらにより酸化物超電導層3の全周が酸化物超電導積層体42、42で取り囲まれて密閉された構造が適用されている。
【0047】
図2に示す前述の積層構造の酸化物超電導積層体本体5を二つ折りに折り曲げ加工する場合、基材4の幅に対し横断面U字状になるように均等に二つ折りに折り曲げ加工する場合の他に、
図8に示すように基材4の幅に対し横断面J字状になるように均等ではない幅で折り曲げ加工しても良い。本実施形態において、要は、酸化物超電導積層体42、42の折り曲げ構造により酸化物超電導層3の全周を取り囲むことができる形状に折り曲げ加工されていれば良い。
【0048】
図9は、本発明に係る第5実施形態の酸化物超電導線材の一部を断面とした斜視図である。
図9に示すように、第5実施形態の酸化物超電導線材Eは、4つの溝加工部1Cを介し横断面C字状に加工した酸化物超電導積層体45の内側に酸化物超電導層3が内包され、中心部に横断面矩形状の厚い導体38が配置された構造とされている。酸化物超電導積層体45とその中心の導体38ははんだ層39により一体化されている。
また、C字状に加工された酸化物超電導積層体45はそれらの幅方向両端縁45a、45aを突き合わせ溶接することで一体化されていることがより好ましく、この構造により酸化物超電導層3の全周が基材4により更に強固に囲まれた密閉構造が提供される。
【0049】
本実施形態に適用されている酸化物超電導積層体45の積層構造は先に
図2を基に説明した酸化物超電導積層体本体5と同等構造であるが、本実施形態では溝加工部1Cが平行に所定の間隔をあけて4本形成されている点が異なる。
本実施形態では、酸化物超電導線材Cの中心部に先の
図1に示す第1実施形態の導体8よりも厚い帯状の導体38が設けられた場合の実施形態である。中心部に配置する導体38が厚く、酸化物超電導積層体本体に形成する溝加工部が2本のみでは対応できない場合に、断面長方形状の導体38の外周角部の外側に位置するように4本の溝加工部1Cを配置する構造を採用できる。
この構造により、酸化物超電導積層体45の酸化物超電導層3に歪み等の負荷をかけるおそれを少なくした状態で酸化物超電導積層体45を厚い導体38の外周部に密着させて配置することができる。
【0050】
この実施形態の如く中心に配置する導体38は横断面長方形状に限らず、断面3角形、5角形、6角形などの多角形状とすることも可能であり、それらいずれの形状である場合であっても、酸化物超電導積層体45に必要な数の溝加工部を形成して導体38の周囲に沿わせて密着してからはんだ層を溶融させ、その後に冷却して導体38に酸化物超電導積層体45を密閉構造として一体化することができる。
【0051】
図9に示すように1つの酸化物超電導積層体45でもって多角形状の導体に対応させて複数の溝加工部1Cを設けることで酸化物超電導層3を内包して密閉する構造とした酸化物超電導線材Eを提供することができる。
【0052】
図10は、
図1に示す構造の酸化物超電導線材Aを2本接合する場合に好適な構造を説明するための斜視図である。
酸化物超電導線材Aを2本接合する場合、一方の酸化物超電導線材Aの端末部において基材4、4を所定の長さ除去して導体8を所定の長さ基材4、4の端部から突出させておき、他方の酸化物超電導線材Aの端末において基材4、4を所定の長さ開いて導体8を露出させておく。この状態から、一方の酸化物超電導線材Aの導体8と他方の酸化物超電導線材Aの導体8を重ねた後、再度両酸化物超電導線材Aの基材4、4を折り曲げ加工して導体8、8を囲むように密閉し、はんだ付けすれば、酸化物超電導線材A、Aを電気的に接合することができる。
なお、酸化物超電導線材A、Aの酸化物超電導層3、3どうしを直に超電導接合している訳ではないので、接合部において導体8、8が介在する分の電気抵抗を生じるものの、
図10に示す接合を行うことで酸化物超電導線材A、Aの電気的な接合ができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
「実施例1」
ハステロイC−276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚さ0.1mm、長さ100mのテープ状の基材本体上に、Al
2O
3の拡散防止層(厚さ80nm)と、Y
2O
3のベッド層(厚さ30nm)と、イオンビームアシスト蒸着法によるMgOの中間層(厚さ10nm)と、PLD法(パルスレーザー蒸着法)によるCeO
2のキャップ層(厚さ300nm)とPLD法によるYBa
2Cu
3O
7−xで示される組成の酸化物超電導層(厚さ1μm)とスパッタ法によるAgの保護層(厚さ10μm)を成膜したテープ状の酸化物超電導積層体を用意した。
【0054】
前記酸化物超電導積層体に500℃で酸素アニール処理を行い、続いて
図3(a)に示すようにYAGレーザー加工機を用いて幅100μm、保護層から基材まで到達し、基材厚さの半分に達する溝加工部を酸化物超電導積層体の幅の中央部に全長に渡り形成した。この溝加工部形成済みの酸化物超電導積層体を2本平行に隣接し、これらの上面全域を覆う錫のはんだテープを被せた。このはんだテープの中央部に幅10mm、厚さ0.1mmのCuからなる安定化材形成用の導体を配置した。
左右に隣接した酸化物超電導積層体をそれぞれ先の溝加工部を介しU字状になるように折り曲げ加工し、酸化物超電導積層体で導体の全周を囲んだ後、はんだテープの溶融温度270℃まで加熱してはんだを溶融し、後に常温まで冷却してはんだ層で酸化物超電導積層を囲んだ酸化物超電導線材を得た。
【0055】
この酸化物超電導線材について、プレッシャークッカー試験(温度120℃、湿度100%の環境下に放置)を行ったところ、100時間経過後も酸化物超電導線材の臨界電流値が低下しなかった。
この酸化物超電導線材を2本用意し、液体窒素に浸漬して77Kにおける超電導特性を測定したところ、臨界電流値(Ic)はいずれも200Aであった。
この試験結果から、酸化物超電導積層を酸化物超電導積層体で取り囲むとともに、導体の全周を酸化物超電導積層体にはんだ付けにより接合した酸化物超電導線材は、優れた耐湿性を発揮することが明らかとなった。
【0056】
2本の酸化物超電導線材のうち、一方の超電導線材の端末処理を行って端部の基材を除去し、内部の導体を50mm突出させ、他方の超電導線材の端末の基材を開いてCuの導体どうしを50mm重ねて貼り合わせ、導体どうしを重ねた部分の基材を折り曲げ直してから再度はんだを溶融させて2本の酸化物超電導線材を接合した。
接合後、接合部分を含めて液体窒素に浸漬して77Kにおける超電導特性を測定したところ、臨界電流値(Ic)は180Aであった。
この値は酸化物超電導線材どうしの電気的接合部分として有効な接合がなされているとみなすことができる。
【0057】
前記プレッシャークッカー試験に供した試料と同等構造の酸化物超電導線材全長に対し、基材端縁の突き合わせ部分を全長に渡りレーザー溶接して密閉構造とした酸化物超電導線材試料を得た。
この酸化物超電導線材試料について、プレッシャークッカー試験(温度120℃、湿度100%)に供したところ、150時間経過後も超電導特性の劣化が見られなかった。
この試験結果から、この例の酸化物超電導線材は、酸化物超電導積層体により酸化物超電導積層を取り囲んで導体に酸化物超電導積層体をはんだ付けしている上に、突き合わせ端縁部分を溶接しているので、はんだ付け部分と溶接部分により2重に接合しているので密閉構造に優れ、先の例より優れた耐湿性を示していることが明らかとなった。