特許第5775791号(P5775791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775791
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】給水装置および給水装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20150820BHJP
   F04D 15/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   F04B49/06 321B
   F04D15/00 D
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-234301(P2011-234301)
(22)【出願日】2011年10月25日
(65)【公開番号】特開2013-92095(P2013-92095A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2014年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸一
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−161613(JP,A)
【文献】 特開平1−96493(JP,A)
【文献】 特開平11−62876(JP,A)
【文献】 特開昭60−19989(JP,A)
【文献】 特開昭55−34746(JP,A)
【文献】 特開平4−370392(JP,A)
【文献】 特開昭57−188789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロプロセッサー、操作パネル、各設定値を記憶する記憶部を有する可変速制御装置と、該可変速制御装置で駆動されるポンプと、該ポンプの吐出側に取付けられた圧力センサを備えたポンプ装置を複数台設置し、該圧力センサの検出したポンプ吐出側圧力が所定圧力となるように、各ポンプ装置がそれぞれ独立して運転がなされる給水装置において、
各ポンプ装置は、前記ポンプ吐出側圧力に基づき独立して運転することにより、始動してから運転を停止するまで揃速運転を行うことを特徴とする給水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給水装置おいて、
前記各ポンプ装置の可変速制御装置は通信端子を備え、前記可変速制御装置は当該通信端子へのケーブル接続状況を判定して、非接続時と接続時にそれぞれ当該記憶部に単独運転と複数運転の選択パラメータを記憶することを特徴とする給水装置。
【請求項3】
請求項2に記載の給水装置おいて、
前記操作パネルに自動、手動の運転モードスイッチを設け、前記可変速制御装置は前記操作パネルでの自動運転モードと前記記憶部の複数運転の選択パラメータに基いて、当該ポンプ装置を揃速運転(せんそく運転)するように制御することを特徴とする給水装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の給水装置において、
前記各ポンプ装置の吐き出し量をQ0(m3/min)、各ポンプ装置から給水される負荷の最大水量をQ(m3/min)としたとき、Q/Q0=n(小数点以下1桁を四捨五入)で求められるn台のポンプ装置が設置され、前記各可変速制御装置により当該ポンプが揃速運転がなされるように構成されたこと特徴とする給水装置。
【請求項5】
請求項2または3に記載の給水装置において、
記ケーブルで接続されたn台のポンプ装置は、それぞれ始動条件が成立した時、運転を開始して揃速運転するように構成されたことを特徴とする給水装置。
【請求項6】
請求項1に記載の給水装置において、
各ポンプ装置は、複数台の並列運転を行う場合の合成性能に基づいて、独立して運転がなされることを特徴とする給水装置。
【請求項7】
マイクロプロセッサー、操作パネル、各設定値を記憶する記憶部を有する可変速制御装置と、該可変速制御装置で駆動されるポンプと、該ポンプの吐出側に取付けられた圧力センサを備えたポンプ装置を複数台設置し、該圧力センサの検出したポンプ吐出側圧力が所定圧力となるように、各ポンプ装置がそれぞれ独立して運転がなされる給水装置の運転方法において、
各ポンプ装置は、前記ポンプ吐出側圧力に基づき独立して運転することにより、始動してから運転を停止するまで揃速運転を行うことを特徴とする給水装置の運転方法。
【請求項8】
請求項に記載の給水装置の運転方法おいて、
前記各ポンプ装置の可変速制御装置は通信端子を備え、前記可変速制御装置はケーブル接続状況を判定し、非接続時と接続時にそれぞれ当該記憶部に単独運転と複数運転の選択パラメータを記憶することを特徴とする給水装置の運転方法。
【請求項9】
請求項に記載の給水装置の運転方法おいて、
前記操作パネルに自動、手動の運転モードスイッチを設け、前記操作パネルでの自動運転モードと前記記憶部の複数運転の選択パラメータに基いて、可変速制御装置により当該ポンプ装置が揃速運転されることを特徴とする給水装置の運転方法。
【請求項10】
請求項のいずれかに記載の給水装置の運転方法において、
前記各ポンプ装置の吐き出し量をQ0(m3/min)、各ポンプ装置から給水される負荷の最大水量をQ(m3/min)としたとき、Q/Q0=n(小数点以下1桁を四捨五入)で求められるn台のポンプ装置が設置され、前記各可変速制御装置により当該ポンプを独立して揃速運転すること特徴とする給水装置の運転方法。
【請求項11】
請求項8または9に記載の給水装置の運転方法おいて、
記ケーブルで接続されたn台のポンプ装置は、それぞれ始動条件が成立した時、運転を開始して揃速運転(せんそく運転)することを特徴とする給水装置の運転方法。
【請求項12】
請求項7に記載の給水装置の運転方法において、
各ポンプ装置は、複数台の並列運転を行う場合の合成性能に基づいて、独立して運転がなされることを特徴とする給水装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のポンプ装置を設置した給水装置および給水装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
給水装置は、可変速駆動手段によって駆動されるポンプ装置を、単独又は複数台設置して使用している。可変速駆動手段は、誘導電動機を駆動する場合はインバータが使用され、永久磁石電動機を駆動する場合はコントローラが使用される。このコントローラはインバータをベースにしたものである。
【0003】
これら給水装置の従来技術として、特許文献1と特許文献2が挙げられる。特許文献1は、それぞれにマイクロプロセッサーを搭載したインバータ本体と制御基板及びポンプ、モータでn重系を構成される。そしてこれらに共通なマイクロプロセッサーを搭載したインタフェース基板とで構成した自律分散給水制御システムにおいて、
(1)n重の制御基板はインタフェース基板から指令し、圧力制御はそれぞれの制御基板が行う。(2)電源投入時に通信異常が発生したらそれぞれの制御基板の初期化処理で手動運転とし、運転中に通信異常が発生した場合には、通信異常が発生する直前のインタフェース基板の運転モード信号(手動運転モード、切又は自動運転モード)を制御基板のEEPROMに記憶させておき、このモードが切のときは切の処理を、手動のときは手動の処理を、自動のときは自動の処理を実行する。(3)インタフェース基板とn重の制御基板間に通信異常が発生した場合には、それぞれの制御基板が手動運転か自動運転かを判定するパラメータに基づいて、手動運転又は自動運転を行い、通信異常が復帰したら自動運転を行なう。(4)インタフェース基板とn重の制御基板間に通信異常が発生した場合には、通信異常となった制御基板が、通常の始動圧力パラメータより−3mと設定し同時運転を回避する、などである。
【0004】
特許文献2は、それぞれにマイクロプロセッサーを搭載したインバータ本体と制御基板及びポンプ、モータでn重系とし、そしてこれらに共通なマイクロプロセッサーを搭載したインタフェース基板を備え、給水装置の運転を制御するn重系システムにおいて、(1)n重の制御基板は、マスター号機かスレーブ号機かを選択して設定手段を有しており、予めn重の制御基板のうち1台のみマスター号機に他はスレーブ号機にそれぞれ設定され、マスター号機は自己運転し、他のスレーブ号機全てに運転制御指令する。(2)マスター号機はインターフェース基板と信号の授受を行い、スレーブ号機はインターフェース基板と信号の授受は停止する。(3)マスター号機故障時はスレーブ号機のうちの1台がマスター号機にシフトして設定される、などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−228649号公報
【特許文献2】特開2008−202556号公報
【特許文献3】特開2000−145651号公報
【特許文献4】特開平9−025874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの特許文献に示す従来技術には、上位に複数台設置のポンプ装置をどのように運転制御するかを制御する制御系が必要であり、また、多重系のシステムでは異常発生時のバックアップの構成とその制御が必要となり、いずれにおいても、構成・配線・制御が複雑になり、専門知識をもった熟練者でないと対応できず、コスト的に不利となる恐れがある。
【0007】
また、特許文献3や特許文献4では、コントローラの一つをマスターとし他のコントローラをスレーブとして用いるマスタースレーブ方式であり、やはり制御が複雑になって上流と同様な問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の問題点にかんがみ、システム構成およびポンプ運転の制御が簡単で、低価格の給水装置および給水装置の運転方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、マイクロプロセッサー、操作パネル、各設定値を記憶する記憶部を有する可変速制御装置と、該可変速制御装置で駆動されるポンプと、該ポンプの吐出側に取付けられた圧力センサを備えたポンプ装置を複数台設置し、該圧力センサの検出したポンプ吐出側圧力が所定圧力となるように、各ポンプ装置がそれぞれ独立して運転がなされる給水装置において、
各ポンプ装置は、前記ポンプ吐出側圧力に基づき独立して運転することにより、始動してから運転を停止するまで揃速運転を行うことを特徴とする。
【0010】
また、上記に記載の給水装置おいて、前記各ポンプ装置の可変速制御装置は通信端子を備え、前記可変速制御装置は当該通信端子へのケーブル接続状況を判定して、非接続時と接続時にそれぞれ当該記憶部に単独運転と複数運転の選択パラメータを記憶することを特徴とする。
【0011】
また、上記に記載の給水装置おいて、前記操作パネルに自動、手動の運転モードスイッチを設け、前記可変速制御装置は前記操作パネルでの自動運転モードと前記記憶部の複数運転の選択パラメータに基いて、当該ポンプ装置を揃速運転(せんそく運転)するように制御することを特徴とする。
【0012】
また、上記に記載の給水装置において、前記各ポンプ装置の吐き出し量をQ0(m3/min)、各ポンプ装置から給水される負荷の最大水量をQ(m3/min)としたとき、Q/Q0=n(小数点以下1桁を四捨五入)で求められるn台のポンプ装置が設置され、前記各可変速制御装置により当該ポンプが揃速運転がなされるように構成されたこと特徴とする。
【0013】
また、上記に記載の給水装置において、前記ケーブルで接続されたn台のポンプ装置は、それぞれ始動条件が成立した時、運転を開始して揃速運転するように構成されたことを特徴とする。
また、上記に記載の給水装置において、各ポンプ装置は、複数台の並列運転を行う場合の合成性能に基づいて、独立して運転がなされることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、マイクロプロセッサー、操作パネル、各設定値を記憶する記憶部を有する可変速制御装置と、該可変速制御装置で駆動されるポンプと、該ポンプの吐出側に取付けられた圧力センサを備えたポンプ装置を複数台設置し、該圧力センサの検出したポンプ吐出側圧力が所定圧力となるように、各ポンプ装置がそれぞれ独立して運転がなされる給水装置の運転方法において、
各ポンプ装置は、前記ポンプ吐出側圧力に基づき独立して運転することにより、始動してから運転を停止するまで揃速運転を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、独自に運転及び圧力制御するポンプ装置を給水負荷に対して複数台設置して給水系を構築するので、上位の制御系が不要となり、簡単なシステムが低価格の給水系を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明実施例のポンプ装置単体のポンプ運転特性図。
図2】本発明実施例のポンプ装置単体のシステム構成図。
図3】本発明実施例の操作パネルの説明図。
図4】本発明実施例のポンプ装置の運転機能説明図。
図5】本発明実施例の運転制御手順を示すフローチャート。
図6】本発明実施例の運転制御の割込処理のフローチャート。
図7】本発明実施例の記憶部のメモリマップの説明図。
図8】本発明実施例の2台設置のポンプ装置のポンプ運転特性図。
図9】本発明実施例の2台設置のポンプ装置のシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図1図9により説明する。
【0018】
図1は本発明のポンプ装置単体のポンプ運転特性図であり、横軸に水量、縦軸に全揚程を取って示している。ここで、曲線Aはポンプ1台を100%の回転数(インバータのf1周波数に対応、表示はf1)で運転した際のQ−H性能曲線を示す。曲線Eはf4回転数(周波数表示はf4)運転時のQ−H性能曲線を示す。同様に、曲線Bは仕様点(需要が所望な水量、全全揚程である。)水量Q0、全揚程H0を満足するQ−H性能曲線であり、f0回転数(周波数表示はf0)で運転した際に得られる。曲線C、Dはそれぞれ回転数f2(周波数表示はf2)、f3(周波数表示はf3)で運転した時のQ−H性能曲線である。
【0019】
曲線Fはポンプで揚水した場合に弁類、配管等で生ずる配管抵抗曲線であり、ポンプの吐出側圧力を制御する際の目標値となる。H4は水量0の点での目標圧力であり、前述した配管抵抗曲線Fとポンプのf4回転数運転時のQ−H性能曲線Eとの交点で示される。同様にH1はポンプのf1回転数運転時の目標圧力であり、曲線Aと曲線Fの交点で示される。この時の水量はQ1である。そして、ポンプ装置は需要側使用水量の変動に伴い、圧力センサの検出した給水圧力が、目標圧力即ち、前記抵抗曲線F上にくるようにインバータ周波数を制御する。これを末端圧力一定制御と呼んでいる。当然、H1、H4はパラメータとして前述したように予め設定され記憶部に記憶されている。尚、図示では、Q−H性能曲線を代表の曲線A(周波数f1)〜曲線E(周波数f4)で示しているが、配管抵抗曲線F上で周波数を制御すれば、この周波数に対応したポンプ性能曲線が生ずるが明らかなので省略している。
【0020】
又、H4は停止状態からポンプが始動する際の始動圧力としても使用される。即ち、自動運転において、圧力センサで検出した給水圧力が始動圧力H4以下であればポンプは運転を開始し、使用水量の変動に伴って配管抵抗曲線F上の圧力を保つように給水がなされる。そして、使用水量が極少なく、流量スイッチが少水量使用状態を検出したときポンプは停止する。
【0021】
図2は、本発明実施例のポンプ装置単体のシステム構成図を示している。2−1、2−2は仕切弁、3はモータ4で駆動されるポンプであり、このポンプ3の吸込み側は吸込み管1を介して水源側と接続される。水源側は、直結方式では水道本管(図示せず)からの水の供給を受け、受水槽方式では受水槽(図示せず)から水の供給を受ける。5は逆止め弁、6は給水管、7は圧力タンクであり給水管6のポンプに近い部位に設けられる。8はこの給水管6に備わり、ここの圧力に応じて電気信号を発する圧力センサである。このセンサ8によりポンプ3の吐出し圧力を制御(例えば吐出し圧一定、推定末端圧力一定)する。
【0022】
更に、需要側はこの給水管6の端末の先が直送式の場合には、需要側給水管と接続して、例えば集合住宅等の水栓に給水する。高置水槽式の場合には、この需要側給水管と接続して高置水槽へ給水する。9は流量スイッチであり、逆止め弁5よりポンプ3側に配置され、少水量使用状態(例えば5〜10L/min)を検出してポンプを停止する信号を発信する。
【0023】
INVは前述のモータ4を駆動するマイクロプロセッサーを搭載した可変速制御装置(インバータ)の本体であり、漏電遮断器ELBを介して電源側PWより電源の供給を受ける。
【0024】
C0NSは前記可変速制御装置INVに設けられた操作パネルである。表示部、操作部(後述)を備えると共に、運転モード(手動、自動)判定機能、単独運転(自己機の運転)、複数台運転(ケーブル接続しているn台の運転)選択機能、起動停止・圧力制御のためのパラメータ等の設定入力、これらの設定値と圧力センサの検出した圧力信号等を記憶する記憶部M(例えば、EEPROM、RAM)を備えている。
【0025】
操作パネルCONSの詳細を図3に、その機能を図4に示す。30は表示部、31はRUN(運転)キースイッチ、32はSTOP(停止)キースイッチ、33はPRG(設定パラメータがメモリに記憶)キースイッチ、34はアップのタクトキースイッチ、35はダウンのタクトキースイッチ、36はFUNC(機能)キースイッチ、37は手動と自動の切替キースイッチである。FUNC(機能)キースイッチ36は、例えば押される毎に表示機能とパラメータ設定機能とが切り替わる。PRGキースイッチは、押されると表示部とタクトスイッチ等によって設定されたパラメータがメモリMに記憶される。尚、操作パネルCONSは、可変速制御装置INV(インバータ)と分離してもこれに装着しても良い。
【0026】
図4に示すように手動運転時には、RUNキースイッチ31を押した時に運転を開始し、STOPキースイッチ32を押した時に運転を停止する。インバータ周波数はアップキースイッチ34とダウンキースイッチの操作で設定する。手動運転時には、周波数はパラメータとして初期値が予め記憶され、前記の操作によって初期値から所定の周波数に設定する。又、自動運転時には、RUN(運転)キースイッチ31を押した時に自動運転を開始し、STOP(停止)キースイッチ32を押した時に運転を停止する。尚、自動運転開始しても、給水圧力が始動圧力(予めパラメータで設定)以下となり始動条件が成立しないと運転動作を開始しない。手動運転、自動運転のモード設定は、切替キースイッチ(MAN/AUTOキースイッチ)37により、このスイッチを押すごとに状態が自動、手動と切り替わる。初期値は手動運転(MAN)モード時に(予めパラメータで設定)設定される。
【0027】
自動運転には、図4に示す通り単独運転と複数運転のモードが設けられている。即ち、図2の可変速制御装置INVに通信用端子S2が設けられており、可変速制御装置INVは、通信用端子S2がケーブルS5が非接続で開放されている時に単独運転、ケーブルS5が接続されているときに複数台運転のモードと判断する。尚、この通信は有線、無線を問わない。ケーブルを接続する代わりにパラメータとしても良い。
【0028】
更に、可変速制御装置(インバータ)INVは、端子I0、I1とI2、I3を備えており、ケーブルS0を介して前記吐出し側圧力センサ8に接続され、ケーブルS1介して流量スイッチ9に接続されている。
【0029】
ポンプ装置は、上記の構成からなり、単独で圧力センサ8と流量スイッチ9からの信号を受けながら、独立して圧力制御の運転がなされる。
【0030】
図5図6は、ポンプ装置の運転制御手順を示したフローチャートであり、これが運転制御プログラムとして、可変速制御装置INVのマイクロプロセッサーに搭載されている。図7は前記した各種パラメータ等を格納するための記憶部Mのメモリマップである。
【0031】
使用開始に当たっては、図2に示す電源側漏電遮断器ELBを投入すると、動作制御プログラムが作動する。先ず、501ステップでイニシャル処理、502ステップでパラメータ設定処理を実行する。イニシャル処理では、レジスタ、割り込みベクタ、メモリ、スタックポインタなど各種の処理を実行し、パラメータ設定処理では、前述した初期値を設定し運転準備を行う。503、504ステップでは割り込みを許可し、図6に示す割り込み処理に備える。当然、割り込みが発生し、600ステップ以降の割り込み処理が実行される。
【0032】
600ステップ(INT0)以降の割り込み処理においては、図6(A)に示すように、601ステップで、図2又は図3の操作パネルCONSでキースイッチが押されたか可変速制御装置INVにより判定する。判定した結果、押されていなければ602ステップへ進み、例えば初期値で決定している圧力等の表示を行い、609ステップで割り込み処理から割り込み前の処理(ステップ504)へ戻るRETI処理を実行する。
【0033】
601ステップの判定結果でキースイッチが押されていたら、603ステップへ進み、押されたキースイッチ(図3)がパラメータ変更キー(FUNCキースイッチ36)であるか判定する。パラメータ変更キーであった場合、605ステップへ進み、以降のステップでパラメータ設定(変更が可能なことを示す)処理、及びメモリーMへ格納処理を実行する。格納処理の結果、図7のように格納される。このようにすれば、運転中でもパラメータの設定変更が可能となる。
【0034】
610ステップ(INT1)以降の割り込み処理においては、図6(B)に示すように、611ステップで可変速制御装置INVにより故障のチエック、監視を行う。612ステップでは可変速制御装置INVにより通信端子S2がケーブルS5が接続されているか、開放されているかの判定を実行し、接続されている場合はケーブルS5を介して送受信処理を実行し、自動運転モードであれば記憶部であるRAMのメモリ103(M103)のTAN/FUKパラメータにデータをセット(記憶)する。可変速制御装置INVでの通信端子S2へのケーブルの接続状況の判断は、通信端子S2の電気的レベル(高レベル、低レベル)で行われる。
【0035】
例えば、通信端子S2にケーブルS5が接続されてなければ、データ00Hをセットする。これは、単独運転即ち自己機による運転を意味する。通信端子S2にケーブルS5が接続されていれば、データ0FFHをセットする。これは複数運転、即ち図4に示す複数n台による運転を意味する。613ステップでは、圧力センサ及び周波数の信号を検出し、アナログレジスタAN0(圧力)、現在周波数fANSのデータをメモリーM108、M111に格納する。そして,614ステップで割り込み処理から割り込み前の処理(ステップ504)に戻る。
【0036】
今、運転モードパラメータMAN/AUTOがMAN、即ち手動に設定されているものとする。
【0037】
図5の505ステップにおいてMANと判定し、506ステップへ進み、手動運転処理を実行して505ステップへ戻る。ここで手動運転処理とは、前述したRUNキースイッチ31が押された時運転開始し、STOPキースイッチ32が押された時に運転停止し、インバータ周波数はアップ、ダウンキースイッチ34、35で設定される処理のことである。
【0038】
次に、運転モードパラメータMAN/AUTOがAUTOに設定され、あるいは変更された場合について説明する。
【0039】
505ステップの判定がAUTOとなり、507ステップへ進む。507ステップでRUNキースイッチが押されたか判定する。YESであれば次の508ステップへ進み、自動運転を開始する。NOであればYESになるまでここの処理を実行する。508ステップにおいて、圧力センサの検出した給水圧力が始動圧力(H4)以下になったか判定する。H4以下であれば509ステップへ進みポンプを始動する。続いて、510ステップで目標圧力H0(初回は初期値のH4、次からは517ステップで更新された目標圧力となる。)をメモリMより読み出し、511ステップで給水圧力H(実際の給水圧力は圧力センサが検出した圧力データAN0であり、H0=AN0、フロー図では説明の便宜上記号Hを使用。)を読み出し、512ステップで両データを比較する。
【0040】
比較した結果、H0+α<Hならば、513ステップへ進み減速処理を実行する。
H0−α<=H<=H0+αならば、517ステップの目標圧力更新処理を実行する。
H0−α>Hならば、520ステップへ進み増速処理を実行する。ここで、変速処理の周波数fは、メモリMのM109のfxAUTOと同じものであり、フロー図では説明の便宜上、fを使用している。
【0041】
513ステップの減速処理が終わったら、514ステップへ進み、指令した周波数に到達したか到達するまで確認する。到達したら515ステップへ進み、ここで、前述したように流量スイッチがONしているか判定する。判定した結果、YESであれば停止処理を実行して510ステップへ戻る。NOであれば519ステップへ進む。517ステップでは、現在周波数から新たな目標圧力を求めて更新する。目標圧力を求める方法は、圧力パラメータと周波数パラメータによる演算式又はテーブルを用いる。これを実行したら、518ステップで周波数を変更指令を発信して、給水圧力が安定するのに必要なΔtの待ち時間を実行して519ステップへ進む。
【0042】
520ステップの増速処理を実行したら、521ステップで指令周波数に到達したか到達するまで確認する。到達したら519ステップへ進む。
【0043】
519ステップではSTOPキースイッチが押されたか判定する。YESと判定したら516ステップの停止処理を実行して505ステップへ戻りここから処理を続ける。NOと判定したら510ステップへ戻りここから処理を継続する。
【0044】
次に、前述のポンプ装置を複数のn台設置した場合の実施例について、説明する。説明の便宜上、複数のn台は2台を例にして説明する。
【0045】
設備計画時に、給水設備給水負荷の使用最大水量に対して、ポンプ装置をn台設置し、n台のポンプ装置がそれぞれ独自に運転及び圧力制御するよう計画する。具体的には、この給水系において、ポンプ装置の吐き出し量をQ0(m3/min)、負荷の最大水量をQ(m3/min)とした時、Q/Q0=nの演算を行い、小数点以下1桁を四捨五入して、nを決定し、n台設置するようにする。このようにすれば、使用最大水量に合わせた給水設備専用の給水システムを設計製造する必要がなく、ポンプ装置の標準品をn倍化でシステムを構築することができるので、設計工数や専用給水システムの製造日数を短縮することが出来、標準品が使用できるので低価格にすることが出来る。
【0046】
図8は前述したポンプ装置を2台設置し同時に運転した場合のポンプ性能曲線を示す。一点鎖線で示している性能は、図1に示したポンプ装置の性能曲線である。この性能曲線の圧力を一定にして水量2倍にして表示したのが実線で示した性能曲線であり、2台を並列運転した場合の合成性能曲線である。図示していないが、n台設置の場合はn台並列運転合成性能曲線となるのは明らかである。
【0047】
図8において、抵抗曲線Jは、O3点の圧力H3を一定にして水量Q3を2倍にしたポイントO5点、同様にO2点の圧力H2を一定にして水量Q2を2倍にしたポイントO6点、O0点の圧力H0を一定にして水量Q0を2倍にしたポイントO0点、O1点の圧力H1を一定にして水量Q1を2倍にしたポイントO7点、をプロットしてこのポイント上に引いた線分である。
【0048】
又、ポンプ性能曲線Gは、ポンプ性能曲線C(周波数f2運転時)を2台並列運転した合成性能である。ポンプ性能曲線Hは、ポンプ性能曲線B(周波数f0運転時)を2台並列運転した合成性能である。ポンプ性能曲線Iは、ポンプ性能曲線A(周波数f1運転時)を2台並列運転した合成性能である。即ち、2台同時運転すると使用水量の変動に伴い、抵抗曲線J上を運転する。しかも、2台同じポンプ装置であるから、ほぼ同じ周波数で制御され給水圧力は抵抗曲線J上の圧力となる。給水圧力は抵抗曲線J上の圧力に制御され、2台の周波数はほぼ等しいので、ここでは揃速運転と呼ぶことにする。揃速運転すると、2台のポンプ装置がそれぞれ独自に運転及び圧力制御してほぼ等しい速度で運転されるので、使用水量変動時の圧力変動防止を図ることできる。ちなみに、従来は1台が変速で他は定速運転となっている。
【0049】
図9はポンプ装置を2台同じものを設置した場合のシステム構成図である。ポンプ装置のシステム構成図の図2を2台設置したものであり、同じ記号で示しているものは同じ性能、機能である。又添字、枝番の1は1号機、2は2号機を示している。吸込管1及び給水管6は1号機2号機共合流している。可変速制御装置INV1とINV2の通信端子S2をケーブルS5で接続している。これによって、前述したように自動運転選択時に、可変速制御装置INV1、INV2が複数台運転と判定して揃速運転機能が作用することになる。
【0050】
前述したように始動圧力、目標圧力等全てのパラメータ、ポンプの性能、圧力制御方式が2台共同一なので、水の使用時にほぼ同時に運転が開始し、抵抗曲線に沿った末端圧力一定制御の揃速運転を行い、水の使用がなくなるとほぼ同時に運転を停止する。なお、同時始動、同時停止が不都合な場合は、説明を省いたが、始動圧力確認タイマーパラメータ、停止タイマーパラメータを一方のポンプ装置を変更すればこの不都合を解消することができる。
【0051】
更に、自動運転中に保守を行う場合、適宜、STOPキーを押すことにより停止させることもできる。勿論、RUNキーを押すことにより再運転することも出来る。
【0052】
以上の説明は2台設置を例にしたが、2台以上の複数のn台設置でもn台の末端圧力一定制御の揃速運転が実現でき、n倍の水量を給水することができることは明らかである。
【符号の説明】
【0053】
1…吸込み管、2−1〜2−2…仕切弁、3、3−1、3−2…ポンプ、4、4−1、4−2…モータ、5…逆止め弁、6…給水管、7…圧力タンク、8、8−1、8−2…圧力センサ、9、9−1、0−2…流量スイッチ、37…自動、手動の運転モードスイッチ、INV、INV1、INV2…可変速制御装置(インバータ)、M、M1、M2…記憶部、S2…通信端子、S5…ケーブル、CONS…操作パネル、ELBは漏電遮断器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9