(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775796
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
B25F5/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-244773(P2011-244773)
(22)【出願日】2011年11月8日
(65)【公開番号】特開2013-99820(P2013-99820A)
(43)【公開日】2013年5月23日
【審査請求日】2014年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】水谷 彰良
(72)【発明者】
【氏名】米山 建矢
【審査官】
須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−143492(JP,A)
【文献】
特開2002−178276(JP,A)
【文献】
特開2005−153055(JP,A)
【文献】
特開2001−322074(JP,A)
【文献】
実開平06−061473(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F5/00−5/02
B25B21/00−23/145
B24B23/00−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、レバーの傾動によってON/OFFするトグルスイッチと、前記レバーがその傾動方向の前後でそれぞれ係止する一対の係止部を有して前記傾動方向へスライド可能なスイッチレバーとを備え、前記ハウジングの外部からの前記スイッチレバーのスライド操作により、前記スイッチレバーをスライドさせて前記レバーをON位置又はOFF位置へ傾動させる電動工具であって、
前記スイッチレバーにおける前記レバーのON位置側の前記係止部に、前記レバーを前記一対の係止部間に挿入させながら前記トグルスイッチを前記ハウジング内へ組み付ける際、当接した前記ON位置の前記レバーを前記OFF位置へ傾動させる傾斜案内面を設けたことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記ON位置側の前記係止部に、前記トグルスイッチ側へ突出する突起を設けて、前記傾斜案内面を前記係止部から前記突起に跨って形成したことを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記ハウジングが前記トグルスイッチの収容部分で二分割され、一方の分割ハウジングに沿って前記スイッチレバーがスライド可能に収容されて、前記トグルスイッチは、2つの前記分割ハウジングの組み付け方向に沿って前記分割ハウジング間に保持されて前記組み付け方向で前記レバーを前記一対の係止部間に挿入させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記スイッチレバーにおける前記傾斜案内面よりも前記レバーの挿入方向前方側に、前記トグルスイッチの組み付け状態で前記レバーが当接する当接面を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電動工具。
【請求項5】
前記2つの分割ハウジング間に、前記トグルスイッチを位置決めするスイッチケースを前記分割ハウジングと別体で保持させたことを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に収容したトグルスイッチ(「スナップスイッチ」とも称される)をスイッチレバーのスライド操作でON/OFFさせる電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
サンダ等の電動工具においては、モータの駆動回路を開閉するスイッチとしてトグルスイッチを採用し、このトグルスイッチのレバーを、電動工具のハウジングに設けたスイッチレバーのスライド操作によって傾動させることで、トグルスイッチのON/OFFを切り替えるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−270066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このトグルスイッチをハウジングに組み付ける際、先にスイッチレバーをハウジングに組み付けた後、トグルスイッチのレバーを、スイッチレバーに設けられた一対の係止部間に挿入させてハウジングに組み付ける手順となる。
しかし、スイッチレバーがコイルバネ等によってOFF位置に付勢されている場合、トグルスイッチをレバーがON位置のまま組み付けようとすると、スイッチレバーのON位置側の係止部にレバーが干渉して組み付けができない。よって、作業者はレバーを一旦OFF位置に傾動させてから組み付けをやり直す必要があり、組立効率が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、トグルスイッチの組み付けの際のレバー位置の修正作業を不要として、高い組立効率が得られる電動工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、スイッチレバーにおけるレバーのON位置側の係止部に、レバーを一対の係止部間に挿入させながらトグルスイッチをハウジング内へ組み付ける際、当接したON位置のレバーをOFF位置へ傾動させる傾斜案内面を設けたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、ON位置側の係止部に、トグルスイッチ側へ突出する突起を設けて、傾斜案内面を係止部から突起に跨って形成したことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、ハウジングがトグルスイッチの収容部分で二分割され、一方の分割ハウジングに沿ってスイッチレバーがスライド可能に収容されて、トグルスイッチは、2つの分割ハウジングの組み付け方向に沿って分割ハウジング間に保持されて組み付け方向でレバーを一対の係止部間に挿入させることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、スイッチレバーにおける傾斜案内面よりもレバーの挿入方向前方側に、トグルスイッチの組み付け状態でレバーが当接する当接面を設けたことを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項3の構成において、2つの分割ハウジング間に、トグルスイッチを位置決めするスイッチケースを分割ハウジングと別体で保持させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、トグルスイッチの組み付けの際には、レバーの位置にかかわらず常にレバーを係止部間に挿入することができる。よって、レバーの位置を修正する作業が不要となり、高い組立効率が得られる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、傾斜案内面を広く形成できてレバーの案内がより確実に行える。また、突起を利用したスイッチレバーのスライド操作も容易に行えるため、操作ノブ等のスイッチレバーに関連する他の部品の組み付けに係る作業性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】トグルスイッチの組み付け構造を下方から示す分解斜視図である。
【
図4】トグルスイッチの組み付け状態を示す説明図である。
【
図5】トグルスイッチの組み付け状態を示す説明図である。
【
図6】トグルスイッチの組み付け状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、電動工具の一例である往復動式工具の縦断面図である。この往復動式工具1は、前方(
図1の左側を前方とする。)の前ハウジング2から下向きに突出させたスピンドル10を、所定角度で左右に往復回転させるものである。前ハウジング2の後方に連結される筒状のモータハウジング3内には、モータ4が収容されて、モータ4の出力軸5は、前ハウジング2内で同軸で軸支される中間軸6に、カップリング7を介して連結されている。中間軸6の中間部には、ベアリング9を外装した偏心軸部8が形成される一方、前ハウジング2内で上下方向に軸支されたスピンドル10には、左右の後端をベアリング9の左右外側にそれぞれ伸長させた揺動部材11が連結されている。
【0010】
よって、出力軸5が回転して中間軸6が回転すると、偏心軸部8及びベアリング9が偏心運動して揺動部材11の後端を左右に揺動させる。これにより、スピンドル10が揺動部材11を介して左右へ所定角度往復回転することになる。スピンドル10の下端に設けたフランジ12には、切断用工具や研磨用工具等のように形状や用途が異なる各種の先端工具Tがボルト13によって着脱可能となっている。14は、モータハウジング2の後端に装着される電源としてのバッテリーパック、15は、前ハウジング2の上端前方で下向きに設けられたLEDである。
【0011】
一方、モータハウジング3は、モータ4の後部を保持する保持板16よりも後方部分が上下に二分割されて、モータ4を収容する前側の筒状部分と一体の上ハウジング17と、保持板16よりも後方部分で上ハウジング17に組み付けられる下ハウジング18とから形成されている。モータ4の後方で上下ハウジング17,18間には、モータの駆動回路を開閉するトグルスイッチ19が設けられている。このトグルスイッチ19は、四角ブロック状のケース20の上部に、レバー22を保持する円柱状のブッシング21が設けられる周知の構造で、上ハウジング17と下ハウジング18との間には、トグルスイッチ19を保持するスイッチケース23が設けられている。
【0012】
このスイッチケース23は、
図2にも示すように、ブッシング21が挿入可能な透孔24を有すると共に、下面に、トグルスイッチ19のケース20が嵌合可能な左右一対の壁体25,25と、壁体25,25へのケース20の嵌合状態でケース20の下面に係止する係止片26とを備えている。すなわち、スイッチケース23の透孔24にブッシング21を挿入してケース20を壁体25,25に嵌合させ、係止片26をケース20に係止させることで、トグルスイッチ19がスイッチケース23に保持されて上下ハウジング17,18間で位置決めされるものである。
【0013】
そして、モータ4の上方で上ハウジング17内には、前後に長い板状のスイッチレバー27が、前後方向へスライド可能に収容されている。このスイッチレバー27は、上ハウジング17の上部外面で前後方向へスライド可能に設けられた操作ノブ28に連結されるもので、操作ノブ28の下面に設けた連結片29が、上ハウジング17に設けた透孔30を貫通して上ハウジング17内に突出し、スイッチレバー27の前端に設けた連結孔31に挿入係止することで、前後方向に一体となる。
また、スイッチレバー27は、保持板16に形成された切欠部32を介してモータ4の後方へ突出しており、その後端には、
図2,3にも示すように、前後の枠部分が係止部34,35となる四角形状の係止枠33が形成されている。この係止枠33内に、トグルスイッチ19のレバー22が挿入係止されるようになっている。
【0014】
36は、スイッチレバー27に設けられたコイルバネで、このコイルバネ36は、係止枠33の前面に突設された後受け部37と、その前側で後受け部37に対向して突設された前受け部38とがそれぞれ両端に挿通されることで、スイッチレバー27の幅寸法内で略収まるように組み付けられている。スイッチレバー27を上ハウジング17に組み付けた状態では、コイルバネ36の前端が保持板16に当接して圧縮されるため、スイッチレバー27及び操作ノブ28は、常態では
図1の後退位置に付勢される。この後退位置での係止枠33は、トグルスイッチ19のレバー22のOFF位置に対応している。
【0015】
ここで、係止枠33の前側の係止部34には、下向きに突出する突起39が設けられて、この突起39の後面から係止部34の内面にかけて、レバー22の挿入側(
図1での下側)からレバー22の突出側(
図1での上側)へ行くに従って徐々に後退する傾斜案内面40が形成されている。この傾斜案内面40は、スイッチレバー27の後退位置で上ハウジング17にトグルスイッチ19を組み付ける際に、ON位置にあるレバー22の先端が当接する位置に設けられている。
【0016】
以上の如く構成された往復動式工具1においては、上ハウジング17にスイッチレバー27と操作ノブ28とを組み付ける際、まずスイッチレバー27をコイルバネ36と共に上ハウジング17内に組み付けた後、操作ノブ28を上ハウジング17の外側から組み付けることになる。このときコイルバネ36の付勢に抗してスイッチレバー27を前進させる必要があるが、これは係止枠33に設けた突起39を利用すれば指で簡単に前進位置へスライドさせることができる。
【0017】
そして、トグルスイッチ19を組み付ける際、
図4に示すように、スイッチレバー27を先に組み付けた上ハウジング17を下にしてスイッチケース23を組み付け、その後、トグルスイッチ19を、レバー22を下向きにした姿勢で、ブッシング21をスイッチケース23の透孔24に挿入させるようにして下方へ押し込む。このとき、レバー22がON位置にあるまま組み付けることがあっても、
図5に示すように、レバー22が係止枠33に設けた傾斜案内面40に当接し、これがトグルスイッチ19の押し込みに連れて傾斜案内面40によってOFF位置側(
図5での左側)へ案内される。そして、ケース20が壁体25に嵌合して係止片26がケース20に係止すると、
図6に示すように、レバー22はOFF位置で係止枠33に挿入係止することになる。
【0018】
なお、往復動式工具1によって作業を行う場合は、操作ノブ28をコイルバネ36の付勢に抗して前方へスライドさせると、スイッチレバー27も前方へスライドし、係止枠33の後側の係止部35がレバー22を前方のON位置へ傾動させる。よって、トグルスイッチ19がONしてモータ4が駆動し、前述のようにスピンドル10が往復回転することになる。操作ノブ28を後方へスライドさせれば、操作ノブ28と共にスイッチレバー27も後退し、係止枠33の前側の係止部34がレバー22を後方のOFF位置へ傾動させるため、モータ4が停止してスピンドル10の往復回転が停止する。
【0019】
このように、上記形態の往復動式工具1によれば、スイッチレバー27におけるレバー22のON位置側の係止部34に、レバー22を一対の係止部34,35間に挿入させながらトグルスイッチ19を上ハウジング17内へ組み付ける際、当接したON位置のレバー22をOFF位置へ傾動させる傾斜案内面40を設けたことで、トグルスイッチ19の組み付けの際には、レバー22の位置にかかわらず常にレバー22を係止部34,35間に挿入することができる。よって、レバー22の位置を修正する作業が不要となり、高い組立効率が得られる。
【0020】
特にここでは、ON位置側の係止部34に、トグルスイッチ19側へ突出する突起39を設けて、傾斜案内面40を係止部34から突起39に跨って形成したことで、傾斜案内面40を広く形成できてレバー22の案内がより確実に行える。また、突起39を利用したスイッチレバー27のスライド操作も容易に行えるため、操作ノブ28等のスイッチレバー27に関連する他の部品の組み付けに係る作業性も向上する。
【0021】
なお、傾斜案内面は、レバーの案内が可能であれば平面に限らず、湾曲面や膨出曲面であっても差し支えない。また、係止枠の突起を省略して係止部の内面にのみ傾斜案内面を設けることも可能である。
さらに、上記形態ではスイッチレバーの後退位置がOFF位置、前進位置がON位置となっているが、これと逆であってもよい。よって、その場合は傾斜案内面が設けられる係止部も上記形態と前後逆になる。
加えて、スイッチレバーの係止部は上記形態のような四角形の係止枠に設けられる構造に限らず、前後に係止部を有する平面視コ字状の係止枠を採用したり、下向きに係止部が突設される側面視倒コ字状の係止枠を採用したりすることもできる。
【0022】
その他、スイッチケースの構造やハウジングとの一体化等は可能であるし、適用する電動工具も、往復動式工具に限らず、トグルスイッチをスライド操作するスイッチレバーによってON/OFFさせる機構であれば、サンダやグラインダ等の他の種類の電動工具にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1・・往復動式工具、2・・前ハウジング、3・・モータハウジング、4・・モータ、5・・出力軸、10・・スピンドル、17・・上ハウジング、18・・下ハウジング、19・・トグルスイッチ、20・・ケース、21・・ブッシング、22・・レバー、23・・スイッチケース、27・・スイッチレバー、28・・操作ノブ、33・・係止枠、34,35・・係止部、36・・コイルバネ、39・・突起、40・・傾斜案内面。