特許第5775802号(P5775802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775802
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/541 20120101AFI20150820BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20150820BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20150820BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20150820BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   D04H1/541
   A41B13/02 E
   A41B13/02 F
   A61F13/18 310
   A61F13/18 320
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-264531(P2011-264531)
(22)【出願日】2011年12月2日
(65)【公開番号】特開2013-117074(P2013-117074A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(72)【発明者】
【氏名】長島 啓介
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−350836(JP,A)
【文献】 特開2007−182662(JP,A)
【文献】 特開2005−187950(JP,A)
【文献】 特開2010−018928(JP,A)
【文献】 特開2008−144321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
D01F 8/00− 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱によりその長さが伸びる熱伸長性繊維を含み、該熱伸長性繊維の交点がそれぞれ熱融着している不織布であって、
前記熱伸長性繊維は、鞘を構成する樹脂の融点が、前記熱伸長性繊維の最大熱伸長発現温度より高い芯鞘複合繊維である不織布。
【請求項2】
前記熱伸長性繊維は、鞘を構成する樹脂の融点が、芯を構成する樹脂の融点より高いものである請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記熱伸長性繊維は、鞘を構成する樹脂が、芯を構成する樹脂よりも、10〜60質量%多くなっている請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
前記熱伸長性繊維は、鞘を構成する樹脂がポリプロピレンであり、芯を構成する樹脂がポリエチレンである請求項1ないし3のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項5】
前記熱伸長性繊維が、その端部の少なくとも一方に窪み部を有する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項6】
表面シート、裏面シート及び両シート間に位置する吸収体を具備する吸収性物品であって、前記表面シートが請求項1ないし5のいずれか一項に記載の不織布である、吸収性物品。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の不織布の製造方法であって、
熱伸長性繊維として、鞘を構成する樹脂の融点が該熱伸長性繊維の最大熱伸長発現温度より高い芯鞘複合繊維を用い、
前記熱伸長性繊維を含むウエブをエンボス加工して圧接着部を形成し、次いで熱風によるエアスルー加工を行い該熱伸長性繊維を伸長させるとともに該熱伸長性繊維の交点を熱融着によって接合する工程を有し、
前記エアスルー加工を行う工程における熱処理温度を、前記熱伸長性繊維の最大熱伸長発現温度±10℃の範囲とする不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱によってその長さが伸びる熱伸長性繊維を含む不織布に関する。本発明の不織布は、例えば生理用ナプキンや使い捨ておむつを始めとする各種の吸収性物品の構成材料として特に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
加熱によってその長さが延びる繊維である熱伸長性繊維を原料とする不織布に関し、本出願人は先に、構成繊維が圧着又は接着されている多数の圧接着部を有するとともに、圧接着部以外の部分において構成繊維どうしの交点が圧接着以外の手段によって接合しており、圧接着部が凹部となっているとともに該凹部間が凸部となっている凹凸形状を少なくとも一方の面に有する立体賦形不織布を提案した(特許文献1参照)。この不織布は、熱伸長性繊維を原料とすることで、特殊な製造方法を用いなくても、三次元的な凹凸形状を有し、また柔軟であり、低坪量でもあるという利点を有する。
【0003】
熱伸長性繊維を原料とする不織布について、本発明者らは更に検討を重ね、配向指数が30〜70%の第1成分と、該第1成分の融点よりも低い融点を有しかつ配向指数が40%以上の第2成分とからなり、第2樹脂成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して存在している複合繊維からなる熱伸長性繊維を提案した(特許文献2)。この熱伸長性繊維は、従来の熱伸長性繊維に比較して高い自己伸長性を有するものである。
【0004】
しかしながら、更に高い熱伸長性を有し、更に嵩高でふんわり感のある不織布が要求されるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−350836号公報
【特許文献2】特開2007−182662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、熱伸長性繊維を含む不織布の改良にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、加熱によりその長さが伸びる熱伸長性繊維を含み、該熱伸長性繊維の交点がそれぞれ熱融着している不織布であって、
前記熱伸長性繊維は鞘を構成する樹脂の融点が前記熱伸長性繊維の最大熱伸長発現温度より高い芯鞘複合繊維である不織布を提供するものである。
【0008】
また本発明は、前記の不織布の好ましい製造方法として、
熱伸長性繊維として、鞘を構成する樹脂の融点が該熱伸長性繊維の最大熱伸長発現温度より高い芯鞘複合繊維を用い、
前記熱伸長性繊維を含むウエブをエンボス加工して圧接着部を形成し、次いで熱風によるエアスルー加工を行い該熱伸長性繊維を伸長させるとともに該熱伸長性繊維の交点を熱融着によって接合する工程を有し、
前記エアスルー加工を行う工程における熱処理温度を、前記熱伸長性繊維の最大熱伸長発現温度±10℃の範囲とする不織布の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の不織布によれば、従来の熱伸長性繊維を用いた場合と比較して、風合い及びふっくら感が一層良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の不織布の一実施形態を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す不織布の製造に好適に用いられる装置を示す模式図である。
図3図3(a)は、本発明の不織布の加熱処理前の一実施形態を示す断面図である。図3(b)は、加熱処理後の一実施形態を示す断面図である。
図4図4は、本発明の不織布に用いられる熱伸長性繊維の製造に好適に用いられる装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の不織布の第1実施形態の斜視図が示されている。第1実施形態の不織布10は、単層構造をしている。不織布10は、第1面10a及び第2面10bを有している。不織布10は、第2面10bがほぼ平坦となっており、第1面10aが多数の凸部11及び凹部12を有する凹凸形状となっている。凹部12は、不織布10の構成繊維がエンボス加工により圧接着されて形成された圧接着部15を含んでいる。凸部11は凹部12間に位置している。凸部11内は、不織布10の構成繊維で満たされている。繊維を圧着する手段としては、熱を伴うか又は伴わないエンボス加工、超音波エンボス加工などが挙げられる。
【0012】
一方、圧接着部15を除く、繊維と繊維が接する部分における繊維と繊維の固着は、後述する繊維の融着成分によってなされており、この融着によって実質的に不織布とされている。
【0013】
凸部11と凹部12とは、不織布の一方向(図1中X方向)に亘って交互に配置されている。更に当該一方向と直交する方向(図1中Y方向)に亘っても、交互に配置されている。凸部11と凹部12とがこのように配置されていることで、不織布10を例えば使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの使い捨て衛生物品の分野における表面シートと用いた場合に、着用者の肌との接触面積が低減して蒸れやかぶれが効果的に防止される。
【0014】
本実施形態の不織布10における圧接着部15は、例えばヒートエンボス加工によって形成された熱圧着部であり、図1に示すように、格子状に形成されている。より具体的には、圧接着部15として、互いに平行にかつ所定の間隔で形成された多数本の第1の線状エンボス15aと、互いに平行にかつ所定の間隔で形成された多数本の第2のエンボス15bとを有している。第1のエンボス15aと第2の線状エンボス15bとは、15〜90度程度の角度をなして互いに交差している。第1の線状エンボス15aどうし間の間隔及び第2の線状エンボス15bどうし間の間隔は、それぞれ独立に2〜20mm、特に3〜10mm程度とすることが好ましい。線状エンボスとしては、本実施形態のように連続線状のものに代えて、ドット間の距離が好ましくは5mm以下、更に好ましくは2mm以下の破線線状のもの等であっても良い。不織布10には、圧接着部15によって囲まれた区画領域が形成されており、各区画領域の中央部は、該区画領域を囲む圧接着部15ないし凹部12に対して相対的に隆起して凸部11となっている。個々の区画領域22の面積は、0.25〜5cm2、特に0.5〜3cm2あることが好ましい。
【0015】
不織布10は、その構成繊維として、加熱によってその長さが伸びる繊維である熱伸長性繊維を含んでいる。熱伸長性繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して伸びたりする繊維が挙げられる。熱伸長性繊維は、不織布10中において、加熱によって伸長可能な状態で存在している。したがって、不織布10を加熱することで、それに含まれている熱伸長性繊維が伸長し、不織布10は加熱前に比べて嵩高感が高まる。この嵩高感を一層顕著なものとする観点から、不織布10に含まれる熱伸長性繊維の熱伸長率は、0.1〜3.0%であることが好ましく、更に好ましくは0.2〜2.5%である。熱伸長率の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
【0016】
不織布10に含まれる熱伸長性繊維は、鞘を構成する樹脂の融点が該熱伸長性繊維の最大熱伸長発現温度より高い芯鞘複合繊維である。熱伸長性繊維のこれまでの検討は、低融点成分を鞘成分(熱融着成分)とし、その低融点成分の融点付近でいかに熱伸長性を発現させるかに着目してきた。しかし本発明においては、最大熱伸長発現温度が高融点成分の融点に影響されることに着目し、更に高い熱伸長性を発現させるべく、あえて最大熱伸長発現温度よりも融点の高い高融点成分を鞘(熱融着)成分に採用することによって、より嵩高で、ふんわり感のある不織布を得ることができたものである。最大熱伸長発現温度は以下の方法により測定される。
【0017】
〔最大熱伸長発現温度の測定〕
セイコーインスツルメンツ(株)製の熱機械的分析装置TMA/SS6000を用いる。試料としては、長さが10mm以上の繊維を、繊維長さ10mmあたりの合計質量が0.5mgとなるように複数本採取したものを用意し、その複数本の繊維を平行に並べた後、チャック間距離10mmで装置に装着する。測定開始温度を25℃とし、0.73mN/dtexの一定荷重を負荷した状態で5℃/minの昇温速度で昇温させる。その際、繊維の最大の伸び量を示す温度を読み取り、その温度を「最大熱伸長発現温度」とする。
【0018】
鞘樹脂成分及び芯樹脂成分の融点は、示差走査型熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC6200)を用いて測定する。細かく裁断した繊維試料(サンプル重量2mg)の熱分析を、不活性雰囲気下に昇温速度10℃/minで行い、各樹脂の融解ピーク温度を測定する。融点は、その融解ピーク温度で定義される。鞘樹脂成分及び芯樹脂成分の融点がこの方法で明確に測定できない場合、この樹脂を「融点を持たない樹脂」と定義する。この場合、樹脂成分の分子の流動が始まる温度として、樹脂成分が融着する温度を軟化点とする。本発明においては、融点を持たない樹脂の場合には、軟化点を融点として取り扱う。
【0019】
不織布10の原料となる繊維としては、熱伸長性繊維を用いる。以下の説明においては、不織布10に含まれる熱伸長性繊維と、不織布10の原料となる熱伸長性繊維とを区別することを目的として、不織布10の原料となる熱伸長性繊維のことを「熱伸長性原料繊維」と呼ぶ。単に「熱伸長性繊維」と言うときには、不織布10に含まれる熱伸長性繊維を指す。熱伸長性原料繊維を用いた不織布10の好ましい製造方法については後述する。
【0020】
不織布10において特に好ましく用いられる熱伸長性原料繊維は、鞘を構成する樹脂の融点が、該熱伸長性繊維の最大熱伸長発現温度よりも高い芯鞘複合繊維である。鞘の融点及び最大熱伸長発現温度の測定方法は、先に述べた方法と同様である。
【0021】
本発明における熱伸長性原料繊維は、鞘を構成する樹脂の融点よりも低い温度において熱によって伸長可能になっている。そして熱伸長性原料繊維は、鞘を構成する樹脂の融点よりも10℃低い温度での熱伸長率が0.5〜20%、特に3〜20%、とりわけ5〜20%であることが好ましい。このような熱伸長率の繊維を原料として製造された不織布10は、不織布10の製造過程における該繊維の熱伸長によって嵩高くなり、あるいは立体的な外観を呈する。例えば不織布10の表面の凹凸形状が顕著なものになる。
【0022】
熱伸長性原料繊維の熱伸長率は次の方法で測定される。セイコーインスツルメンツ(株)製の熱機械的分析装置TMA/SS6000を用いる。試料としては、長さが10mm以上の繊維を、繊維長さ10mmあたりの合計質量が0.5mgとなるように複数本採取したものを用意し、その複数本の繊維を平行に並べた後、チャック間距離10mmで装置に装着する。測定開始温度を25℃とし、0.73mN/dtexの一定荷重を負荷した状態で5℃/minの昇温速度で昇温させる。その際の繊維の伸び量を測定し、鞘を構成する樹脂の融点よりも10℃高い温度、融点を持たない樹脂の場合は軟化点よりも10℃高い温度での伸び量Xmmを読み取る。
熱伸長性原料繊維の熱伸長率は、(X/10)×100[%]から算出する。
また、熱伸長性原料繊維の熱伸長を開始する温度は、上式で算出された熱伸長性原料繊維の熱伸長率が1%になった温度とする。
【0023】
鞘を構成する樹脂、及び芯を構成する樹脂の種類に特に制限はなく、繊維形成能のある樹脂であればよく、鞘を構成する樹脂の融点が、熱伸長性原料繊維の最大熱伸長発現温度より高くなっていればよい。更に、鞘を構成する樹脂の融点が、芯を構成する樹脂の融点よりも高くなっていることが好ましい。不織布の製造時に熱融着する際、繊維がより伸長した状態で融着されるので、嵩高な不織布が得られやすいからである。特にポリプロピレン(PP)又はポリエチレンテレフタレート(PET)を鞘とし、これらよりも融点の低い樹脂を芯とする芯鞘型の熱伸長性原料繊維を用いることが好ましい。鞘を構成する樹脂と、芯を構成する樹脂との好ましい組み合わせとしては、鞘をPPとした場合の芯を構成する樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン(PE)、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレンなどが挙げられる。また、鞘を構成する樹脂としてPET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂を用いた場合は、芯を構成する樹脂として、前述した芯を構成する樹脂の例に加え、PP、共重合ポリエステルなどが挙げられる。これらは適宜組み合わされる。
【0024】
特に鞘を構成する樹脂がPPであり、芯を構成する樹脂がPEである組み合わせが、より嵩高でふんわり感のある不織布が得られる点で好ましい。
【0025】
熱伸長性原料繊維における鞘を構成する樹脂と、芯を構成する樹脂との比率(質量比)は、前者:後者=55:45〜90:10であることが好ましい。また、鞘を構成する樹脂が、芯を構成する樹脂よりも10〜60質量%多いことが、首尾よく熱伸長性が発現される点で好ましく、20〜40質量%多いことが更に好ましい。
【0026】
また、熱伸長性原料繊維は、繊維の両端部分の端面の少なくとも一方、好ましくは双方に窪み部を有することが好ましい。熱伸長性原料繊維は、低融点成分を、芯を構成する樹脂として採用しているので、鞘を構成する成分である高融点成分が熱伸長し、その後熱融着するとき、芯を構成する成分である低融点成分は、溶融した状態になっている。低融点成分は、その後冷却されることによって再固化するので、固化された部分の結晶化度が高くなり、強度が向上する。これとともに、鞘を構成する成分が伸長しているときに低融点成分は融解し、その後に再固化するので、その長さが鞘の長さより短くなり、繊維の端面に窪み部を有することになる。このことに起因して、不織布の強度を維持しつつ、不織布に柔軟さをも付加させることができるのである。
【0027】
熱伸長性原料繊維の繊維長は、不織布10の製造方法に応じて適切な長さのものが用いられる。不織布10を例えば後述するようにカード法で製造する場合には、繊維長を30〜70mm程度とすることが好ましい。
【0028】
熱伸長性原料繊維は、熱伸長によってその繊維径が小さくなる。したがって、不織布10に含まれる熱伸長性繊維は、一般に、その原料である熱伸長性原料繊維の繊維径よりも小さい繊維径を有している。不織布10に含まれる熱伸長性繊維の繊維径は、不織布10の具体的な用途に応じ適切に選択される。不織布10を吸収性物品の表面シート等の吸収性物品の構成部材として用いる場合、不織布10に含まれる熱伸長性繊維の繊維径は、10〜35μm、特に15〜30μm、とりわけ15〜25μmであることが好ましい。熱伸長性繊維の繊維径は、不織布を電子顕微鏡観察して実測する。1枚の不織布の任意の20箇所を選択して、熱伸長性繊維の繊維径を実測し、その平均値を算出し、その値を繊維径とする。一方、熱伸長性原料繊維の繊維径は、不織布10に含まれる熱伸長性繊維の繊維径を考慮して決定される。
【0029】
熱伸長性原料繊維は、引き取り速度2000m/分未満の低速で溶融紡糸して芯鞘複合繊維を得た後に、該複合繊維に対して加熱処理及び/又は捲縮処理を行うことで得られる。これに加えて、延伸処理を行わないようにする。
【0030】
溶融紡糸法は、図4に示すように、押出機1A,2Aとギアポンプ1B,2B とからなる二系統の押出装置1,2及び紡糸口金3を備えた紡糸装置を用いて行われる。押出機1A,2A及びギアポンプ1B,2Bによって溶融されかつ計量された各樹脂成分は、紡糸口金3内で合流しノズルから吐出される。紡糸口金3の形状は、目的とする複合繊維の形態に応じて適切なものが選択される。紡糸口金3の直下には巻取装置4が設置されており、ノズルから吐出された溶融樹脂が所定速度下に引き取られる。本実施形態の溶融紡糸法における紡出糸の引き取り速度は、上述のとおり、好ましくは2000m/分未満であり、更に好ましくは500〜1800m/分であり、一層好ましくは1000〜1800m/分である。また口金の温度(紡糸温度)は、使用する樹脂の種類にもよるが、例えば鞘樹脂成分としてPPを用い、芯樹脂成分としてPEを用いる場合には、200〜300℃ 、特に220〜280℃とすることが好ましい。
【0031】
このようにして得られた芯鞘複合繊維は低速で紡糸されたものなので、未延伸の状態である。この未延伸糸に対して、次に加熱処理及び/ 又は捲縮処理を施す。
【0032】
捲縮処理としては、機械捲縮を行うことが簡便である。機械捲縮には二次元状及び三次元状の態様がある。また、偏芯タイプの芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維に見られる三次元の顕在捲縮などがある。本発明においてはいずれの態様の捲縮を行ってもよい。捲縮処理には加熱を伴う場合がある。また、捲縮処理後の加熱処理を行ってもよい。更に、捲縮処理後の加熱処理に加え、捲縮処理前に別途加熱処理を行ってもよい。あるいは、捲縮処理を行わずに別途加熱処理を行ってもよい。
【0033】
捲縮処理に際しては繊維が多少引き伸ばされる場合があるが、そのような引き延ばしは本発明にいう延伸処理には含まれない。本発明にいう延伸処理とは、未延伸糸に対して通常行われる延伸倍率2〜6倍程度の延伸操作をいう。
【0034】
不織布10は、熱伸長性繊維のみから構成されていてもよく、あるいは熱伸長性繊維に加えて他の繊維、例えば融点の異なる2成分を含み、かつ延伸処理されてなる非熱伸長性の芯鞘型熱融着性複合繊維を含んで構成されていてもよい。また、本来的に熱融着性を有さない繊維(例えばコットンやパルプ等の天然繊維、レーヨンやアセテート繊維など)を付加的に含んでいてもよい。不織布10が熱伸長性繊維に加えて他の繊維も含んで構成されている場合、該不織布10における熱伸長性繊維の割合は30質量%以上、特に50質量%以上であることが好ましく、他の繊維の割合は70質量%以下、特に50質量%以下であることが好ましい。
【0035】
不織布10は、これを例えば吸収性物品の表面シートとして用いる場合には、その坪量が10〜80g/m2、特に15〜60g/m2、とりわけ20〜40g/m2であることが好ましい。同様の用途に用いる場合、不織布10の厚みは、熱風回復後の状態において0.5〜3mm、特に0.7〜3mmであることが好ましい。なお不織布の厚みは、後述する方法で測定した。
【0036】
不織布10を吸収性物品の表面シートとして用いる場合、該吸収性物品は、一般に該表面シートと、裏面シートと、両シート間に位置する吸収体を具備している。裏面シートとしては、液不透過性又は難透過性のシートが用いられる。吸収体としては、液保持性の繊維材料の積繊体又は該繊維材料と高吸収性ポリマーとの混合物からなる積繊体等を用いることができる。
【0037】
次に、不織布10の好適な製造方法について図2を参照しながら説明する。図2に示す装置20は、ウエブ製造部30、エンボス加工部40、熱風吹き付け部50を備えている。ウエブ製造部30においては、熱伸長性原料繊維を用いてウエブ10Aが製造される。熱伸長性原料繊維としては、上述した鞘樹脂成分及び芯樹脂成分を含む熱伸長性原料繊維が好ましく用いられる。
【0038】
ウエブ製造部30としては例えば、図示するようなカード機31を用いることができる。不織布10の具体的な用途に応じ、カード機に代えて、他のウエブ製造装置、例えばエアレイド装置を用いることもできる。カード機31には、熱伸長性原料繊維が供給される。カード機31によって形成されたウエブは積層されてウエブ10Aとなる。ウエブ10Aの第1の面101は、後述するエンボス加工部40において、パターンロール41と当接する面であり、かつ熱風吹き付け部50において、熱風が吹き付けられる面である。また、第1の面101は、最終的に得られる不織布10における第1の面10aとなる。ウエブ10Aの第2の面102は、エンボス加工部40において、フラットロール42と当接する面であり、かつ後述する熱風吹き付け部50において、通気性ネットからなるコンベアベルト52に対向する面である。また、第2の面102は、最終的に得られる不織布10における第2の面10bとなる。
【0039】
ウエブ製造部30において製造されたウエブ10Aは、エンボス加工部40に送られ、エンボスウエブ10Bとなる。エンボス加工部40は、一対のロール41,42を備えている。ロール41はその周面に多数の凹凸が形成された金属製のパターンロールからなる。このパターンロールにおける凹凸のパターンは、不織布10の具体的な用途に応じ適切に選択することができる。例えば図1に示す菱形格子状のエンボスパターンを形成する場合には、その菱形格子に対応した形状の凸部を、ロール41の周面に形成すればよい。また、ドット状のエンボスパターン(図示せず)を不織布10に形成したい場合には、そのドットに対応した形状の凸部を、ロール41の周面に形成すればよい。一方、ロール42はその周面が平滑なフラットロールからなる。ロール42は金属製、ゴム製、紙製等である。
【0040】
エンボス加工部40においては、ウエブ10Aを両ロール41,42で挟圧してエンボス加工を行う。具体的には、熱を伴うか又は伴わない圧密化によって、ウエブ10Aの構成繊維である熱伸長性原料繊維を圧密化して、該ウエブ10Aに多数のエンボス部からなる接合部を形成し、エンボスウエブ10Bを製造する。本製造方法においてはロール41及びロール42は加熱可能な構造になっている。エンボス加工部40の動作時には、パターンロール41及び/又はフラットロール42が所定温度に加熱されていることが好ましい。
【0041】
エンボス加工部40において、パターンロール41及びフラットロール42の少なくともいずれか一方を加熱する場合、その加熱温度は、熱伸長性原料繊維の鞘樹脂成分の融点−20℃以上かつ鞘樹脂成分の融点+10℃以下の温度とすることが好ましい。
【0042】
図3(a)にはエンボスウエブ10Bの断面の状態が模式的に示されている。エンボス加工によって、エンボスウエブ10Bには多数の圧接着部25が形成されている。圧接着部25においては、熱及び圧力の作用によって熱伸長性原料繊維が圧着されているか、あるいは溶融固化して融着している。一方、圧接着部25以外の部分においては、熱伸長性原料繊維は圧着・融着等を起こしていないフリーな状態になっている。
【0043】
エンボス加工部40により処理されたエンボスウエブ10Bは、次いで熱風吹き付け部50に搬送される。熱風吹き付け部50は、フード51を備えている。エンボスウエブ10Bは、このフード51内を通過する。また、熱風吹き付け部50は、通気性ネットからなるコンベアベルト52を備えている。コンベアベルト52は、フード51内を周回している。エンボスウエブ10Bはコンベアベルト52上に載置されて熱風吹き付け部50内を搬送される。コンベアベルト52は、金属や、ポリアミド及びポリエステル等の樹脂から形成されている。
【0044】
熱風吹き付け部50においてはエンボスウエブ10Bに対して熱風がエアスルー方式で吹き付けられる。すなわち熱風吹き付け部50は、所定温度に加熱された熱風が、エンボスウエブ10Bを貫通するように構成されている。エアスルー加工は、エンボスウエブ10B中の熱伸長性原料繊維が加熱によって伸長する温度で行われる。かつ、エンボスウエブ10Bにおけるエンボス部以外の部分に存するフリーな状態の熱伸長性原料繊維どうしの交点が熱融着する温度で行われる。
【0045】
このようなエアスルー加工によって、図3(a)に示すエンボスウエブ10Bのうち、圧接着部25以外の部分に存する熱伸長性原料繊維が伸長する。熱伸長性原料繊維はその一部が圧接着部25によって固定されているので、伸長するのは圧接着部25間の部分である。そして、熱伸長性原料繊維はその一部が圧接着部25によって固定されていることによって、伸長した熱伸長性原料繊維の伸び分は、エンボスウエブ10Bの平面方向への行き場を失い、該ウエブ10Bの厚み方向へ移動する。これによって、圧接着部25間に凸部11が形成される。その結果、ウエブ10Bの第1の面101側が立体的な形状となる。この状態を図3(b)に示す。更にエアスルー加工によって圧接着部25間に存する熱伸長性原料繊維どうしの交点が熱融着によって接合する(図3(b)参照)。一方ウエブ10Bの第2の面102側はコンベアベルト52に当接しており、伸長した熱伸長性原料繊維の伸び分の移動が規制されるので、平坦な状態が維持されたままとなる。このようにして目的とする不織布10が得られる。
【0046】
熱風の温度は、使用する熱伸長性原料繊維の最大熱伸長発現温度の±10℃の範囲に設定されることが、熱伸長性原料繊維を最大限伸長させることができる点で好ましい。特に最大熱伸長発現温度の−5℃〜+10℃の範囲に設定されることが好ましい。例えば、鞘を構成する樹脂にポリプロピレン樹脂、芯を構成する樹脂にポリエチレン樹脂を用いた場合には、最大熱伸長発現温度は、156℃となり、好ましい熱風の温度は146℃〜166℃、更に好ましい熱風の範囲は151〜166℃となる。
【0047】
本製造方法における熱風の吹き付けは、熱伸長性原料繊維が完全に熱伸長しきらないうちに終了させる。これによって、以後の熱処理工程で伸長可能な熱伸長性繊維を含む不織布が得られる。この不織布が、本発明で目的とするところの不織布10である。したがって不織布10は、熱伸長性原料繊維を用いて製造されたものであり、かつ熱伸長性繊維を含むものである。
【0048】
このようにして得られた不織布10は、その凹凸形状、嵩高さ及び高強度を生かした種々の分野に適用できる。例えば使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの使い捨て衛生物品の分野における表面シート、セカンドシート(表面シートと吸収体との間に配されるシート)、裏面シート、防漏シート、あるいは対人用清拭シート、スキンケア用シート、更には対物用のワイパーなどとして好適に用いられる。不織布10を例えば生理用ナプキン等の吸収性物品に用いる場合には、該不織布10における凸部及び凹部を有する面が着用者の肌に臨むように吸収体の上に配することができる。
【0049】
これらの用途に使用される前の状態の不織布10は一般にロール状に巻回された状態で保存されている。このことに起因して不織布10は、その嵩高さが減じられている場合が多い、そこで不織布10の使用時には、該不織布10にエアスルー方式で熱風を吹き付けて、減じられた嵩を回復させることが好ましい。嵩の回復においては、不織布10に吹き付ける熱風として、熱伸長性原料繊維における芯樹脂成分の融点未満で、かつ該融点−50℃以上の温度の熱風を用いることが好ましい。このような不織布の嵩回復方法としては、例えば本出願人の先の出願に係る特開2004−137655号公報、特開2007−177364号公報及び特開2008−231609号公報等に記載の技術を用いることができる。
【0050】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態における不織布10の凹部は、菱形格子状をなす形状をしていたが、これに代えて散点状に分散配置されたドット状の凹部を採用してもよい。また正方形若しくは長方形の格子状や、亀甲模様をなす形状を採用してもよい。
【0051】
また前記実施形態においては、接合部(凹部18)の形成に熱エンボス加工を用いたが、これに代えて超音波エンボス加工によって接合部を形成することもできる。また、不織布10は単層の構造のものに限られず、多層構造であってもよい。更に、不織布10の裏面10b側に他の不織布を更に積層してもよい。
【0052】
また前記実施形態の不織布10は、その2つの面のうちの一方の面が、凹凸になっており、他方の面が平坦になっていたが、これに代えて、各面とも凹凸になっていてもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0054】
〔実施例1〜3及び比較例1〜4〕
表1に示す条件にて溶融紡糸を行い、同心型芯鞘複合繊維を得た(比較例4を除く)。実施例1〜3においては、鞘がポリプロピレンで、芯がポリエチレンからなるステープルファイバを用いた。比較例1〜2においては、鞘がポリエチレンで、芯がポリプロピレンからなるステープルファイバを用いた。比較例3においては、鞘がポリエチレンで、芯がポリエチレンテレフタレートからなるステープルファイバを用いた。比較例4においては、ポリプロピレンの単一繊維からなるステープルファイバを用いた。これらの繊維を用い、図2に示す装置によって、以下の表1に示す条件で製造を行い、図1に示す形態の不織布を得た。得られた不織布においては、繊維どうしの交点が融着していた。得られた不織布について、以下の方法で各種の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0055】
〔不織布の繊維の熱伸長率〕
不織布の繊維の熱伸長率は下記の1〜5の順番で測定・算出した。
1.不織布からの繊維の採取
不織布の凸部に位置する繊維を5本採取する。採取する繊維の長さは1mm以上5mm以下とする。
2.不織布から採取した繊維の全長測定
採取した繊維をプレパラートに挟み、挟んだ繊維の全長を測定する。測定には、KEYENCE製のマイクロスコープVHX−900、レンズVH−Z20Rを用いた。測定は50〜100倍の倍率で前記繊維を観察し、その観察像に対して装置に組み込まれた計測ツールを用いて行った。この測定で得られた長さを「不織布から採取した繊維の全長」とする。
3.不織布から採取した繊維の加熱処理
全長を測定した不織布から採取した繊維を、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製のDSC6200用の試料容器(品名:ロボット用容器52−023P、15μL、アルミ製)に入れる。雰囲気は23℃、50%RHである。前記繊維の入った容器を、予め145℃にセットされたDSC6200の加熱炉中の試料置き場に置く。DSC6200の試料置き場直下に設置された熱電対で測定された温度(計測ソフトウェア中の表示名:試料温度)が145℃±1℃の範囲になってから、60sec間加熱し、その後素早く取り出す。
4.加熱処理後の繊維の全長測定
加熱処理後の繊維をDSCの試料容器から取り出しプレパラートに挟み、挟んだ繊維の全長を測定する。測定には、KEYENCE製のマイクロスコープVHX−900、レンズVH−Z20Rを用いた。測定は50〜100倍の倍率で前記繊維を観察し、その観察像に対して装置に組み込まれた計測ツールを用いて行った。この測定で得られた長さを「加熱処理後の繊維の全長」とする。
5.熱伸長率(%)の算出
熱伸長率(%)は以下の式から算出する。
熱伸長率(%)={(加熱処理後の繊維の全長−不織布から採取した繊維の全長)÷(不織布から採取した繊維の全長)}×100 [%]
【0056】
〔不織布の厚み〕
測定台上に円形プレートを載置し、この状態でのプレートの上面の位置を測定の基準点Aとする。次にプレートを取り除き、測定台上に測定対象となる不織布を載置し、その上に前記プレートを載置する。この状態でのプレート上面の位置をBとする。AとBの差から測定対象となる不織布の厚みを求める。プレートの大きさと質量を測定目的により種々変更可能であるが、ここではプレートが不織布に及ぼす圧力が49Paになるように質量12.5g、直径56.4mmとした円形プレートを用いて測定した。したがって不織布に加わる圧力は0.5g/cm2となる。測定機器にはレーザー変位計((株)キーエンス製、CCDレーザー変位センサーKL−080)を用いた。これに代えてダイヤルゲージ式の厚み計を用いてもよい。
【0057】
〔不織布の風合いの評価〕
不織布を平らな台の上に凸部が上になるように置く。10人のモニターを対象として、以下の4段階の判定基準で、不織布を手の甲で軽くなでたときの柔らかさの程度を評価させた。結果は、10人の平均で示した。
<判定基準>
4:シートの表面が十分にやわらかい。
3:シートの表面がやわらかい。
2:シートの表面がやや硬い。
1:シートの表面が硬い。
<評価結果>
◎:判定平均3.5以上、4.0以下
○:判定平均2.5以上、3.5未満
×:判定平均1.0以上、2.5未満
【0058】
〔不織布のふっくら感の評価〕
ふっくら感は、嵩高性を表す指標であり、凸状部を圧縮したときの仕事量を尺度として表現することができる。この仕事量はKES(カワバタ・エバリュエーション・システム)に従い測定することができる。具体的には、カトーテック株式会社製の自動化圧縮試験装置KES−FB3−AUTO−Aを用いて測定される。測定手順は次のとおりである。
20cm×20cmの試験片を準備し、試験台に取り付ける。その試験片を面積2cm2の円形平面を持つ鋼板間で圧縮する。圧縮速度は100μm/sec、圧縮最大荷重は4.9kPaとする。回復過程も同一速度で測定を行う。圧縮仕事量WCは次式で表される。式中、Tm、To及びPは、それぞれ4.9kPa(50gf/cm2)荷重時の厚み、49Pa(0.5gf/cm2)荷重時の厚み、及び測定時の荷重(gf)を示す。
【0059】
【数1】
【0060】
上述の方法で測定されたWC値は、その値が大きいほど凸状部のふっくら感が高いことを意味する。本発明者らの検討の結果、WC値が1.7gf/cm2であれば、凸状部が十分な嵩高感を呈することが判明した。上限値に特に制限はないが、3.0gf/cm2程度に高い値であれば、十分に満足すべき結果を得ることができる。
◎:ふっくら感が十分にある→WC値1.7以上
○:ふっくら感がある→WC値1.0以上〜1.7未満
×:ふっくら感がない→WC値1.0未満
【0061】
〔液残り量〕
市販の生理用ナプキン(花王株式会社製、商品名「ロリエ(登録商標)さらさらクッション 肌キレイ吸収 羽つき」)から、表面シートを取り除いて、ナプキン吸収体を得る。また、測定対象の不織布をMD50mm×CD50mmに切断し、切断片を作製する。この切断片を、前記ナプキン吸収体における前記表面シートが存していた箇所(ナプキン吸収体の肌当接面上)に、第2面10b側(図1参照)を吸収体側に向けて配置し、測定対象の不織布を表面シートとして用いた生理用ナプキンを作製した。前記測定対象の不織布を用いた生理用ナプキンの表面上に、直径10mmの円筒状の透過孔を有するアクリル板を重ねて、該ナプキンに100Paの一定荷重をかける。かかる荷重下において、該アクリル板の透過孔から脱繊維馬血3.0gを流し込む。前記馬血を流し込んでから60秒後にアクリル板を取り除き、次いで該不織布の重量(W2)を測定し、予め測定しておいた、馬血を流し込む前の不織布の重量(W1)との差(W2−W1)を算出する。以上の操作を3回行い、3回の平均値を液残り量(mg)とした。液残り量が少ないほど高評価となる。
【0062】
〔不織布強度〕
不織布を、機械の流れ方向(MD方向)へ200mm、それと直角する方向(CD方向)へ50mmの大きさで切り出し、これを試験片とする。この試験片を株式会社島津製作所製:引張試験機AG−ISに、チャック間150mmで取り付け、引張速度300mm/分で引張試験を行う。その際の最大強度を不織布のMD強度とする。CD強度の測定では、不織布を、機械の流れ方向(MD方向)へ50mm、それと直角する方向(CD方向)へ200mmの大きさで切り出し、これを試験片とする。不織布強度は不織布の坪量に大きく依存するため、上述の不織布強度をその坪量で除して得られた値を、単位坪量当たりのMD強度、CD強度として、不織布の強度を表す指標としている。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例で得られた不織布(本発明品)は、風合いがよく、ふっくら感があり、また吸収性物品の表面材として場合には、液残り性に優れていることが判る。更に、十分な強度を有していることも判る。このように、本願実施例の不織布は比較例と同等の坪量でありながら「液残り量」、「強度」を同等レベルに維持しつつ厚さを増し、「風合い」、「ふっくら感」を更に良好にすることができた。なお、表には示していないが、各実施例で得られた不織布に含まれている熱伸長性繊維は、その端部の端面に窪み部を有するものであった。
【符号の説明】
【0065】
10 不織布
11 凸部
12 凹部
20 製造装置
30 ウエブ製造部
40 エンボス加工部
50 熱風吹き付け部
図1
図2
図3
図4