(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775806
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】地盤掘削用ケーシングの先端キャップおよびこの先端キャップを備えた地盤掘削用ケーシング
(51)【国際特許分類】
E21B 10/62 20060101AFI20150820BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20150820BHJP
E21B 7/20 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
E21B10/62
E02D3/12 101
E21B7/20
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-272066(P2011-272066)
(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公開番号】特開2013-124446(P2013-124446A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大野 康年
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝次
(72)【発明者】
【氏名】泉 信也
(72)【発明者】
【氏名】永島 洋輔
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−236813(JP,A)
【文献】
特開平04−261996(JP,A)
【文献】
特開平08−028171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 10/62
E02D 3/12
E21B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と外管を用いて地盤に地盤改良薬液を注入する際に地盤を掘削し、前記外管が挿入された後に地盤中から地上に引き抜かれることにより前記外管を地盤中に設置するケーシングの先端部内側に着脱自在に取り付けられる地盤掘削用ケーシングの先端キャップであって、ケーシングの先端部開口を密閉する本体部と、前記本体部の外周面よりも外側に突出移動し、外周面よりも内側に収容可能な係合部と、前記本体部の後端部に設けられて本体部の前端部側に押圧されることにより、前記係合部を本体部の外周面よりも内側に収容させる押圧部とを有することを特徴とする地盤掘削用ケーシングの先端キャップ。
【請求項2】
前記係合部が本体部の外周面よりも外側に突出移動した際に、この係合部がケーシングの内周面に形成されている係合穴に係合する請求項1に記載の地盤掘削用ケーシングの先端キャップ。
【請求項3】
前記押圧部を本体部の先端部側から後端部側に向かって付勢する付勢部材を設けた請求項1または2に記載の地盤掘削用ケーシングの先端キャップ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の地盤掘削用ケーシングの先端キャップを備えたことを特徴とする地盤掘削用ケーシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤掘削用ケーシングの先端キャップおよびこの先端キャップを備えた地盤掘削用ケーシングに関し、さらに詳しくは、ケーシングに対する着脱を確実かつ容易に行なえる地盤掘削用ケーシングの先端キャップおよびこの先端キャップを備えた地盤掘削用ケーシングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤を強化するために、二重管を用いて対象地盤に地盤改良薬液を注入する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。地盤改良薬液を地盤に注入する際には、まず、筒状の地盤掘削用ケーシングを用いて、その先端部から水を噴射しつつ圧入して地盤を掘削する。次いで、地盤を掘削して形成した挿入孔に埋設されたままのケーシングに外管を挿入する。次いで、ケーシングを地上に引き抜くことにより外管を地盤の中に設置する。そして、この外管に挿入した内管を管軸方向に移動させることにより、内管の周壁に設けられた吐出口を、外管の周壁に設けられた注入口に位置合わせして、吐出口から吐出した薬液を注入口を通じて地盤に注入する。
【0003】
上記のように地盤掘削用ケーシングは、地盤掘削後に外管が内挿された状態で地上に引き抜かれるので、その際には先端部が開口していなければならない。一方で、地盤掘削時に先端部が開口したままであると、ケーシングの内部に地盤の土砂が入り込んでくるので塞いでおく必要がある。
【0004】
そのため、ケーシングの先端部には、先端部の開口を塞ぐ先端キャップが設けられている。従来、ケーシングの先端部開口を塞いで取り付けた先端キャップが容易に脱落しないように、ケーシングの先端部周壁の対向する位置に貫通穴を設けて、これら貫通穴に針金を貫通させて設置していた。この針金が、先端キャップの先端面を横切って設置されるため、地盤掘削時には先端キャップの脱落が防止される。地盤に挿入孔を形成した後は、ケーシングに外管や専用治具を挿入して、その先端部で先端キャップを先端側に突くことにより、針金を貫通穴から取り外して、先端キャップおよび針金を地盤中に押し出すようにしていた。
【0005】
しかし、このような先端キャップでは、針金の設置具合によって、先端キャップの着脱性が大きく変化する。そのため、ケーシングに対して先端キャップの着脱を確実に行なうことが難しいという問題があった。また、先端キャップの着脱作業も面倒であり、例えば、先端キャップをケーシングから取り外す際に、外管等の先端部で何度も先端キャップを突かなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−2154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ケーシングに対する着脱を確実かつ容易に行なえる地盤掘削用ケーシングの先端キャップおよびこの先端キャップを備えた地盤掘削用ケーシングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の地盤掘削用ケーシングの先端キャップは、
内管と外管を用いて地盤に地盤改良薬液を注入する際に地盤を掘削
し、前記外管が挿入された後に地盤中から地上に引き抜かれることにより前記外管を地盤中に設置するケーシングの先端部内側に着脱自在に取り付けられる地盤掘削用ケーシングの先端キャップであって、ケーシングの先端部開口を密閉する本体部と、前記本体部の外周面よりも外側に突出移動し、外周面よりも内側に収容可能な係合部と、前記本体部の後端部に設けられて本体部の前端部側に押圧されることにより、前記係合部を本体部の外周面よりも内側に収容させる押圧部とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の地盤掘削用ケーシングは、上記に記載の先端キャップを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、先端キャップが、ケーシングの先端部開口を密閉する本体部を備えているので、先端キャップをケーシングの先端部内側に装着することにより、地盤掘削時にケーシングの内部に地盤の土砂が入り込むことを防止できる。そして、押圧部を本体部の前端部側に押圧して、係合部を本体部の外周面よりも外側に突出移動させることで、係合部をケーシングの内周面に係合または圧着させて、先端キャップをケーシングの先端部内側に固定できる。また、ケーシングに挿入した外管等で押圧部を押圧するだけで係合部を本体部の外周面よりも内側に移動させて収容することができ、これにより、ケーシングの先端部内側に固定されている先端キャップの固定を解除することができる。したがって、ケーシングに対する先端キャップの着脱を確実かつ容易に行なうことが可能になる。
【0011】
本発明の先端キャップでは、前記係合部が本体部の外周面よりも外側に突出移動した際に、この係合部がケーシングの内周面に形成されている係合穴に係合する仕様にすることもできる。この仕様によれば、係合部が係合穴に係合するので、先端キャップを、より確実、強固にケーシングの先端部内側に固定できる。
【0012】
また、前記押圧部を本体部の前端部側から後端部側に向かって付勢する付勢部材を設けた仕様にすることもできる。この仕様によれば、想定以下の小さな押圧力が押圧部に作用しても、係合部を本体部の外周面よりも内側に収容させないようにできる。これにより、ケーシングの先端部内側に固定されている先端キャップが、不意に固定解除されるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の地盤掘削用ケーシングを用いて地盤を掘削している状態を例示する説明図である。
【
図2】本発明の先端キャップを装着したケーシングの先端部内側を例示する説明図である。
【
図5】先端キャップがケーシングの先端部内側に固定されている状態を例示する説明図である。
【
図6】
図5の先端キャップの固定が解除された状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の地盤掘削用ケーシングの先端キャップおよび地盤掘削用ケーシングを実施形態に基づいて説明する。
【0015】
図1に例示するように、本発明の地盤掘削用ケーシング2(以下、ケーシング2という)は、本発明の地盤掘削用ケーシングの先端キャップ7(以下、先端キャップ7という)を先端部内側に着脱自在に設けたものである。
【0016】
ケーシング2は、両端を開口した筒状体であり、
図2〜
図4に例示するように、その先端は斜めに傾斜して切断された形状になっている。この先端の傾斜面に環状の先端ブレード6が取り付けられている。ケーシング2の先端部の内周面には係合穴3が形成されている。この実施形態では、係合穴3はケーシングの周壁を貫通しているが、貫通せずに内周面を窪ませた仕様にすることもできる。
【0017】
また、ケーシング2の内周面に一端を開口して、ケーシング2の先端面に他端を開口する内部流路4が形成されている。内部流路4の他端開口が噴出口5になっている。
【0018】
先端キャップ7は、本体部8と、本体部8の外周面よりも外側に突出移動し、外周面よりも内側に移動して収容可能な係合部9と、本体部8の後端部に設けられる押圧部10とを有している。
【0019】
本体部8は、ケーシング2の内周面に沿った外周面を有している。この外周面にはOリング8aが外嵌されていて、Oリング8aがケーシング2の内周面に当接することにより、ケーシング2の先端部開口が密閉される。
【0020】
押圧部10は、本体部8の後端部側から前端部側に向かって押圧されることにより、係合部9を本体部8の外周面よりも内側に移動させる。この移動によって、係合部9は、本体部8の外周面よりも内側に収容される。
【0021】
この実施形態の押圧部10は、ケーシング2の軸方向に延びる押軸10aと、押軸10aにピン結合されているリンク機構10bとで構成されている。そして、リンク機構10bの一部に係合部9が突設されている。係合部9は少なくとも2つ設けられるのが好ましい。
【0022】
リンク機構10bは様々な構造を採用することができ、押軸10aを本体部8の後端部側から前端部側に向かって押圧することにより、本体部8の外周面よりも外側に突出している係合部9を、本体部8の外周面よりも内側に移動させることができればよい。
【0023】
本体部8には、押軸10aよりも先端部側に付勢部材11が設けられている。付勢部材11の先端は、本体部8に着脱自在に装着される蓋部材12に当接している。これにより、押軸10aは付勢部材11によって常に本体部8の前端部側から後端部側に向かって付勢されている。付勢部材11としては、コイルスプリング等のバネ材やゴム部品等の弾性材を用いることができる。
【0024】
係合部9が本体部8の外周面よりも外側に突出移動した際には、係合部9が係合穴3に係合することにより、先端キャップ7は、ケーシング2の先端部内側に固定される。
【0025】
本発明のケーシング2を用いて地盤を掘削し、地盤改良薬液を地盤中に注入する場合は、まず、
図5に例示するように、ケーシング2の先端側から先端キャップ7を挿入し、係合部9を係合穴3に係合させて先端キャップ7をケーシング2の先端部内側に固定する。
【0026】
例えば、付勢部材11を取り付けない状態で、先端キャップ7をケーシング2に挿入する。この状態では、押軸10aおよびリング機構10bはフリーに動いて係合部9は本体部8の外周面よりも内側に収容された状態になる。そして、先端キャップ7が所定の位置に配置した後、本体部8に付勢部材11を取り付けて蓋部材12を本体部8に装着する。これにより、押軸10aが本体部8の前端部側から後端部側に向かって付勢され、これに伴うリンク機構10bの動きによって係合部9が本体部8の外周面よりも外側に突出移動する。そして、突出移動した係合部9が係合穴3に係合することにより、先端キャップ7がケーシング2の先端部内側に簡単に固定される。
【0027】
次いで、
図1に例示するように、削孔機1からケーシング2を延ばして挿入孔Sを形成する。
図1では、挿入孔Sを途中で屈曲させて形成しているが、上下方向に挿入孔Sを形成する場合もある。ケーシング2を軸心中心に回転させて、先端ブレード6の向きを変えることによりケーシング2の進行方向を変えることができる。
【0028】
本発明では、本体部8(Oリング8a)によってケーシング2の先端部開口が密閉されているので、地盤掘削時にケーシング2の内部に地盤の土砂が入り込むことを防止できる。また、係合部9が係合穴3に係合しているので、先端キャップ7がケーシング2の先端部内側にしっかりと固定される。
【0029】
ケーシング2を地盤中に圧入させる際には、ケーシング2の内部に水を供給する。ケーシング2の先端部開口は先端キャップ7によって塞がれているので、供給された水は内部流路4を通じて噴出口5から噴射される。この噴射された水によって地盤の掘削が円滑になる。
【0030】
所定の位置まで挿入孔Sを形成した後は、
図6に例示するようにケーシング2に外管13を挿入する。挿入した外管13の先端部で、押圧部10(押軸10aの後端)を本体部8の後端部側から前端部側に向かって押圧する。これにより、係合部9が本体部8の外周面よりも内側に移動して収容される。外管13ではなく、専用の押圧治具をケーシング2に挿入して押圧部10を押圧することもできる。
【0031】
このようにケーシング2に挿入した外管13や押圧治具等で押圧部10を押圧するだけで係合部9を本体部8の外周面よりも内側に移動させて収容することができる。それ故、ケーシング2の先端部内側に固定されている先端キャップ7の固定を容易に解除できる。
【0032】
上記のとおり、本発明によれば、ケーシング2に対する先端キャップ7の着脱を確実かつ容易に行なうことができる。ケーシング2に対する固定が解除された先端キャップ7は、ケーシング2の先端部開口から地盤中に押し出される。
【0033】
尚、ケーシング2の内周面に係合穴3を設けずに、本体部8の外周面よりも外側に突出移動させた係合部9をケーシング2の内周面に圧着させることにより、先端キャップ7をケーシング2の先端部内側に固定することもできる。
【0034】
この実施形態では、押圧部10(押軸10a)を本体部8の前端部側から後端部側に向かって付勢する付勢部材11が設けられているので、本体部8の後端部側から前端部側に向かう想定以下の小さな押圧力が押圧部10に作用しても、係合部9を本体部8の外周面よりも内側に収容させることがない。そのため、ケーシング2の先端部内側に固定されている先端キャップ7が不意に固定解除されることを防止できる。付勢部材11の付勢力は、先端キャップ7の正規の固定解除操作に支障がなく、不意に固定解除されない範囲で適切に設定しておく。
【0035】
ケーシング2の所定位置まで外管13を挿入した後は、ケーシング2を地上に引き抜くことにより、外管13を地盤中に設置する。外管13の周壁には注入口が形成されている。その後の工程は公知のごとく、外管13に内管を挿入して、内管に形成された吐出口を注入口に位置あわせした後、内管に薬液を供給して吐出口および注入口を通じて薬液を地盤中に注入する。
【符号の説明】
【0036】
1 削孔機
2 ケーシング
3 係合穴
4 内部流路
5 噴出口
6 先端ブレード
7 先端キャップ
8 本体部
8a Oリング
9 係合部
10 押圧部
10a 押軸
10b リンク機構
11 付勢部材
12 蓋部材
13 外管
S 挿入孔