特許第5775832号(P5775832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775832
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】建物の補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/26 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   E04B1/26 F
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-29223(P2012-29223)
(22)【出願日】2012年2月14日
(65)【公開番号】特開2013-167055(P2013-167055A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】高木 良
(72)【発明者】
【氏名】梶川 久光
(72)【発明者】
【氏名】三津橋 歩
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−213801(JP,A)
【文献】 再公表特許第2005/056943(JP,A1)
【文献】 登録実用新案第3102245(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/26
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎とその上部に構築される建物とを補強する建物の補強構造であって、
前記基礎の立ち上がり外側面の上縁部分に該基礎の長手方向に沿って全周に渡って貼り付けることにより該基礎を補強する帯状の高強度繊維シートを備え、
この高強度繊維シートを建物側にも貼り付けることにより、前記基礎と建物とを一体的に補強するように構成してなり、
前記基礎及び前記建物における二方向から直交する外側面によるコーナ部において、一方の外側面に沿って貼り付けた第1の高強度繊維シートと他方の外側面に沿って貼り付けた第2の高強度繊維シートとを交差させて重ね合わせるとともに、それぞれの端部をコーナ部から斜め上方に延設させて、前記基礎の立ち上がり外側面から前記建物の構造材外側面にかけて貼り付けるように構成したことを特徴とすることを特徴とする建物の補強構造。
【請求項2】
請求項記載の建物の補強構造において、
前記基礎及び建物におけるコーナ部を構成する外側面に、前記基礎の立ち上がり外側面から建物の構造材外側面にかけて延設させて第3の高強度繊維シートを貼り付け、
第1の高強度繊維シートと第2の高強度繊維シートの斜め上方への延設させた端部近傍、第2の高強度繊維シートと第1の高強度繊維シートの斜め上方への延設させた端部近傍の重ね合わせ部に重ね合わせることにより、基礎と建物とを一体的に補強するように構成したことを特徴とすることを特徴とする建物の補強構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建物の補強構造において、
前記帯状の高強度繊維シートは、基礎、建物に沿って水平方向に貼り付けられる部分と、斜め上方に延設させて貼り付けられる部分とを備え、この斜めに貼り付けられる部分を、水平方向に貼り付けられる部分と別体に構成するとともに、水平方向に貼り付けられる部分に重ね合わせて貼り付けられていることを特徴とする建物の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパネル工法、軸組み工法等による建物を、基礎を含めて一体的に補強することが可能な建物の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アラミド繊維シート等といった帯状の高強度繊維シートを木造建造物、鉄筋コンクリート構造物等に用いることにより耐震補強工法が注目を集めている。
例えば特許文献1には、高強度繊維をシート状に形成した繊維補強材を、木造建築部材同士の接合部分に貼り付けることにより、建築物の躯体、特に建物の本体部分を補強すること等が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、住宅などの建物の基礎を補強するにあたって、布基礎等の基礎の外側面等にアラミド繊維等による帯状の高強度繊維シートを接着するようにした構造等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3588015号公報
【特許文献2】特開2008−121236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の補強構造では、建物である木造建築物の木造建築部材同士を接合させてなる躯体にシート状繊維補強材を巻き付けたりしたり、あるいは布基礎の側壁面に該布基礎の長手方向(水平方向)に沿って高強度繊維シート(シート状繊維補強材)を貼り付けたりすることにより、耐震補強を行っているだけであり、当該部位の補強はある程度行えるも、建物全体を効率良く補強し得るとは言えないものであった。
【0006】
特に、上述した従来構造では、建物の躯体部分、あるいは布基礎の側面部分のみを、高強度繊維シートを接着することで個々に補強しているだけのものであり、建物を基礎から本体部分を含めて全体を一体的に耐震補強し得る何らかの対策を講じることが望まれている。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、基礎とその上部に構築される建物とを一体的に補強し、建物全体の耐震強度を向上させることができる建物の補強構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る建物の補強構造は、基礎とその上部に構築される建物とを補強する建物の補強構造であって、前記基礎の立ち上がり外側面の上縁部分に該基礎の長手方向に沿って全周に渡って貼り付けることにより該基礎を補強する帯状の高強度繊維シートを備え、この高強度繊維シートを建物側にも貼り付けることにより、前記基礎と建物とを一体的に補強するように構成してなり、前記基礎及び前記建物における二方向から直交する外側面によるコーナ部において、基礎の立ち上がりの一方の外側面に沿って貼り付けた第1の高強度繊維シートと他方の外側面に沿って貼り付けた第2の高強度繊維シートとを交差させて重ね合わせるとともに、それぞれの端部をコーナ部から斜め上方に延設させて、前記基礎の立ち上がり外側面から前記建物の構造材外側面にかけて貼り付けるように構成したことを特徴とすることを特徴とする。
【0011】
本発明(請求項記載の発明)に係る建物の補強構造は、請求項において、前記基礎及び建物におけるコーナ部を構成する外側面に、前記基礎の立ち上がり外側面から建物の構造材外側面にかけて延設させて第3の高強度繊維シートを貼り付け、第1の高強度繊維シートと第2の高強度繊維シートの斜め上方への延設させた端部近傍、第2の高強度繊維シートと第1の高強度繊維シートの斜め上方への延設させた端部近傍の重ね合わせ部に重ね合わせることにより、基礎と建物とを一体的に補強するように構成したことを特徴とする。
【0012】
本発明(請求項記載の発明)に係る建物の補強構造は、請求項1または2において、前記高強度繊維シートは、基礎、建物に沿って水平方向に貼り付けられる部分と、斜め上方に延設させて貼り付けられる部分とを備え、この斜めに貼り付けられる部分を、水平方向に貼り付けられる部分と別体に構成するとともに、水平方向に貼り付けられる部分に重ね合わせて貼り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明に係る建物の補強構造によれば、基礎とその上部に構築される建物(建物本体)とを、高強度繊維シートを一体的に貼り付けることにより一体的に補強するようにしているから、簡単な構成で、しかも簡単に施工できるにもかかわらず、基礎と建物とを一体的に補強することができる。
【0014】
特に、本発明によれば、コーナ部において、基礎の立ち上がり外側面と建物の構造材外側面とに高強度繊維シートを、斜めに、交差させるように跨がらせて一体的に貼り付けるにより、建物全体、特に基礎と建物との間での水平方向のずれも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る建物の補強構造の一実施例を示し、要部を拡大した概略斜視図である。
図2図1の建物の補強構造を示す要部側面図である。
図3図1図2の建物の補強構造を示す要部断面図である。
図4】本発明に係る建物の補強構造を適用して好適なパネル工法による建物を示す概略斜視図である。
図5】本発明に係る建物の補強構造を適用する建物として軸組み工法による建物を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
高強度繊維シートを、基礎の立ち上がり外側面に該基礎の長手方向に沿って貼り付けるとともに、該高強度繊維シートの端部を斜め上方に延設させることにより、基礎の立ち上がり外側面から建物の構造材外側面にかけて貼り付けるようにし、これにより基礎と建物とを一体的に耐震補強する。
【実施例1】
【0017】
図1ないし図4は本発明に係る建物の補強構造の一実施例を示す。
これらの図において、全体を符号1で示す建物は、布基礎2とその上部に台輪3を介して構築されるパネル工法による建物本体4とから構成されている。
【0018】
前記建物本体4は床パネル5と壁パネル6、さらに屋根パネル7等によって構成されている。なお、この建物本体4としては、従来から周知のパネル工法によるものとし、具体的な構成等は省略する。
【0019】
本発明によれば、上述した構成による建物1において、図1ないし図3に示すように、布基礎2における立ち上がりの外側面に該布基礎2の長手方向に沿ってほぼ水平状態で全周にわたって貼り付けることにより該布基礎2を補強する帯状の高強度繊維シート10,11を備え、この高強度繊維シート10,11を前記建物本体4側にも貼り付けることにより、前記布基礎2と建物本体4とを一体的に補強するように構成している。
【0020】
ここで、本実施例では、布基礎2の側壁面上縁部分に沿って貼り付けた高強度繊維シート10,11の一部、ここでは該シート10,11の端部10a,11aを、斜め上方に延設させ、図1図2に示すように、布基礎2の立ち上がり外側面とともに、建物本体4の構造材の外側面まで貼り付けている。
【0021】
特に、この実施例では、上述した斜め延設端部10a,11aを、建物1における二方向から直交する外側面によるコーナ部9において一方の外側面から他方の外側面に回り込ませる状態で設けている。すなわち、建物1の一方の外側面では、布基礎2の立ち上がり外側面の上縁部分に沿って水平方向に貼り付けた帯状の第1の高強度繊維シート10の端部10aを、建物1の他方の外側面においてコーナ部9から斜め上方に曲げて延在させている。また、帯状の第2の高強度繊維シート11は建物1の他方の外側面から一方の外側面にかけて回り込ませて設け、それぞれの高強度繊維シート10,11を交差させて重ね合わせて貼り付けている。
【0022】
そして、このような構成とすれば、建物1を構成する布基礎2と建物本体4とを一体的に補強することができる。特に、上述した帯状の高強度繊維シート10,11等を建物1の各所に貼り付けて設けることにより、建物1の水平方向でのずれも防止することができ、建物1全体での耐震補強を一体的にかつ強固に行うことができる。
【0023】
また、この実施例では、図1図2に示すように、布基礎2及び建物本体4におけるコーナ部9を構成する外側面に、布基礎2の立ち上がり外側面から建物本体4の構造材外側面にかけて延設させて帯状の第3の高強度繊維シート15,16を貼り付け、第1の高強度繊維シート10と第2の高強度繊維シート11の斜め上方への延設させた斜め貼り付け端部10a,11aの近傍で、第2の高強度繊維シート11と第1の高強度繊維シート10の斜め上方への延設させた端部10a近傍の重ね合わせ部17,18に重ね合わせることにより、布基礎2と建物本体4とを一体的に補強するように構成している。
【0024】
そして、このような構成を採ることにより、布基礎2と建物本体4とを、帯状の第3の高強度繊維シート15,16により一層強固に一体化して補強するとともに、水平方向のずれ等を防止することができる。
【0027】
また、上述した帯状の高強度繊維シート10,11における水平貼り付け部と斜め貼り付け部とを別体に構成し、斜め貼り付け部となる高強度繊維シート10a,11aを、水平貼り付け部となる部分に重ね合わせて貼り付けるように構成してもよい。
【0028】
さらに、本発明は上述した実施例で説明した構造には限定されず、建物、基礎を初めとする各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
たとえば上述した実施例では、建物1としてパネル工法による建物本体4を用い、これに耐震補強を施す場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図5に示すように、建物1として木造建築物の軸組み工法による建物本体4に適用してもよい。
【0029】
また、上述した実施例では、建物の基礎として布基礎2を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えばべた基礎等であっても適用し得ることは容易に理解される。
【符号の説明】
【0030】
1 建物
2 布基礎(基礎)
3 台輪
4 建物本体
5 床パネル
6 壁パネル
10 第1の高強度繊維シート
10a 斜め延設端部
11 第2の高強度繊維シート
11a 斜め延設端部
15 第3の高強度繊維シート
16 第3の高強度繊維シート
17 重ね合わせ部
18 重ね合わせ部
20 建物本体を構成する軸組み部
図1
図2
図3
図4
図5