(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも前記防滴室の一部を覆い、前記ケース外部から外すことのできる蓋に、前記開閉排水孔を塞ぐ閉止栓を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のケースの防滴構造。
前記ケースの使用時、又は前記ケースの保管時の少なくともどちらかの姿勢のときに、前記外部通気孔を、前記排水孔と前記開閉排水孔よりも高い位置に、且つ、前記第1連通孔と前記第2連通孔とを、前記排水孔と前記開閉排水孔よりも高い位置に配置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のケースの防滴構造。
前記第1仕切壁の壁面から前記貯留室内部に突出した位置に前記第1連通孔の前記貯留室側の開口部を設け、前記第2仕切壁の壁面から前記排出室内部に突出した位置に前記第2連通孔の前記排出室側の開口部を設け、
前記外部通気孔の開口の大きさを、前記排水孔と前記開閉排水孔の開口の大きさよりも小さく形成し、前記第1連通孔の貯留室側の開口部の開口の大きさと前記第2連通孔の排出室側の開口部の開口の大きさとを、前記排水孔と前記開閉排水孔の開口の大きさよりも小さく形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のケースの防滴構造。
【背景技術】
【0002】
通常、計測器等で使用するケースを、上下又は左右等の2つ以上の合成樹脂製や金属製の部品で構成し、凹凸の爪やネジ、蝶番等の結合構造、及び、接着や溶接等の接合構造により組み立てている。この2つ以上のケース部品で組み立てられたケース内に、電子部品等の水に弱い物を収納する場合は、ケースに防水機能や防滴機能が必要となる。
【0003】
しかしながら、従来技術の防水、又は防滴構造の一つであるゴムパッキンを使用する場合には、汎用品や注文生産品の区別によらず、部品点数の増加と工数の増加となり、コストアップの要因となる。また、合成樹脂系の充填剤によりシールする場合には、ケースの再開封の作業性が悪くなり、また、ケース全体を合成樹脂系材料で包み込んで完全密封してしまう場合には再開封が困難となる。
【0004】
また、ケースの材料の劣化や耐久性の問題からケースの一部が変形したり、携帯時や測定時に外力が加わって変形したりして、ケース部品の接合面に歪みが生じて、シール機能及び水密性が損なわれる場合も生じ、更には、水分が防水、又は防滴エリアに侵入する場合も生じる。
【0005】
そして、密封により防水、又は防滴機能を確保する場合には、一旦浸水を許すと、逆に侵入した水分の排出が困難になり、浸入した水分によるショートや材料特性の変化等が生じる等のケース内部の機器類のトラブルを発生する。
【0006】
一方、携帯用の計測器等の場合には、機器類を収納している格納室と外部との間に通気性を要求される場合もある。例えば、保管場所と使用場所によって温度変化が激しく、計測器を温かい室内から、寒い室外に持ち出して温度等の計測をするような時には、室外への移動に伴ってケースが冷却され内部の気圧が減少し負圧となる。また、使用時に内部で発熱するような場合には、内部空気の熱膨張により内部圧力が高まり、内部空気が外部に漏れ易く、漏れた場合には、温度低下時に外部に対して内部が負圧になる。
【0007】
そのため、外部の高湿の空気やケースに付着した水分が、ケースの変形などにより生じた僅かな隙間から内部に侵入し、この水分が内部の温度低下により内部で結露が生じる等の問題が生じる。しかし、水滴の混入後や結露が生じた後に、通気性を確保している場合には、暖機や乾燥作業により、ケース内の水分を蒸発させて通気により外部に排出させることが可能となる。そのため、外部との通気性が重要となる。
【0008】
上記の課題に対して、本発明者は、外部と防滴室との間に、水滴保持室を設けると共に、その水滴保持室と外部との外部仕切り壁に排水孔を、水滴保持室と防滴室との内部仕切り壁に通気孔をそれぞれ設けた装置(例えば、特許文献1参照)を提案した。
【0009】
この装置は、防滴室の通気性を確保すると共に、外部から進入した水を水滴保持室に溜めて、又は排水孔から排出することにより、防滴室への水の進入を防ぐことができる。しかし、水滴保持室に溜まった水が、防滴室へ進入し、防滴室の内部に保持した電子部品などの水に弱い物が故障する可能性があるため、より高い防滴性が必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、形状の工夫により、部品点数の増加を伴わずに外部との通気性を確保して内部における結露を防止でき、従来よりも防滴性を向上することができるケースの防滴構造と携帯可能な温度計測器用ケースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を解決するための本発明のケースの防滴構造は、防滴室とケース外部への通気路に設けた排出室に、前記通気路の前記ケース外部への開口部である外部通気孔とは異なる排水孔を備えたケースの防滴構造において、前記防滴室と前記排出室との間に、前記防滴室と連通する第1連通孔を有した第1仕切り壁と、前記排出室に連通する第2連通孔を有した第2仕切り壁とに仕切られた貯留室を備え、前記貯留室に、水を排出するときに開口する開閉排水孔を設けて構成される。
【0013】
この構成によれば、防滴室とケース外部とは通気路によって、通気性を確保することで、ケース内部の結露を防止し、一方で外部からの水の進入を排出室で一旦防ぎ、仮に排出室で水の進入を防ぐことができなくても、貯留室で水の進入を防ぐことができる。これにより、外部との通気性を確保して内部における結露を防止するケースの防滴構造の通気性を損なわずに、外部からの防水性を向上することができる。
【0014】
また、ここでいう開閉排水孔とは、水の排出路を蓋、栓、又は弁などにより開閉可能に構成した排水孔のことであり、その開閉排水孔が、貯留室に溜まった水を排出するときに開口するので、通常の状態では外部から開閉排水孔を介して水が進入せず、そして、貯留室に水が溜まった場合は、その溜まった水を外部へ排出することができる。
【0015】
また、上記のケースの防滴構造において、前記貯留室を介して前記通気路が屈曲するように、前記防滴室、前記貯留室、及び前記排出室を配置すると、水の進入路になり得る通気路が貯留室内で屈曲することで、貯留室から防滴室への水の進入を妨げることができ、より防滴室の防水性を向上することができる。
【0016】
加えて、上記のケースの防滴構造において、少なくとも前記防滴室の一部を覆い、前記ケース外部から外すことのできる蓋に、前記開閉排水孔を塞ぐ閉止栓を備えると、開閉排水孔の栓を外部から外すことのできる蓋に設けているため、ケースを分解しなくとも、貯留室に溜まった水を容易に排出することができる。
【0017】
その上、上記のケースの防滴構造において、前記ケースの使用時、又は前記ケースの保管時の少なくともどちらかの姿勢のときに、前記外部通気孔を、前記排水孔と前記開閉排水孔よりも高い位置に、且つ、前記第1連通孔と前記第2連通孔とを、前記排水孔と前記開閉排水孔よりも高い位置に配置する。
【0018】
この構成によれば、ケースの使用時や保管時の姿勢では、外部通気孔より進入した水滴を、外部通気孔よりも低い位置にある排水孔から外部へ排出することができ、且つ、貯留室と排出室とに溜めることができる水量を多くすることができる。これによれば、ケースの使用時や保管時の姿勢での防滴室の防滴性を向上することができる。
【0019】
さらに、上記のケースの防滴構造において、前記第1仕切壁の壁面から前記貯留室内部に突出した位置に前記第1連通孔の前記貯留室側の開口部を設け、前記第2仕切壁の壁面から前記排水室内部に突出した位置に前記第2連通孔の前記排水室側の開口部を設け、前記外部通気孔の開口の大きさを、前記排水孔と前記開閉排水孔の開口の大きさよりも小さく形成し、前記第1連通孔の貯留室側の開口部の開口の大きさと前記第2連通孔の排水室側の開口部の開口の大きさとを、前記排水孔と前記開閉排水孔の開口の大きさよりも小さく形成する。
【0020】
この構成によれば、各連通孔の開口部を各仕切り壁よりも突出した位置に設けることで、ケースの姿勢が変化しても、各連通孔の開口部が溜まった水面よりも高くなるので、各連通孔を介して防滴室へ水が進入することを防ぐことができる。
【0021】
また、水が外部通気孔から排出室に進入した場合は、排水孔の開口のよりも外部通気孔の開口の大きさが小さいため、進入する水量よりも排出される水量の方が多くなるので、貯留室への水の進入がなく、防滴室への水の進入を防ぐことができる。一方で、万が一、水が排水孔から排出室に進入した場合は、進入する水量が排出される水量よりも多くなり、貯留室へ水が進入するが、外部通気孔から水を排出すると同時に、貯留室に水を溜めることができるので、防滴室への水の進入を防ぐことができ、さらに貯留室に溜まった水は後から開閉排水孔より外部へ排出することができる。
【0022】
上記の目的を解決するための本発明の携帯可能な温度計測器用ケースは、上記に記載のケースの防滴構造を備えて構成される。
【0023】
この構成によれば、温度計測器用ケースに通気性を確保することができるので、携帯可能で使用状況が変化して、ケースの内部と外部の温度に変化がある場合、及びケース内部の計測機器が発熱する場合にケース内部が負圧となって、外部から水が進入し、結露しても、その結露により発生した水滴を外部へ排出することができる。
【0024】
また、温度計測器用ケースの防滴性を向上させても、ゴムパッキンやケースの嵌合部にシールを用いていないので、部品点数と工数が減少して、製造コストを低減することができる。加えて、温度計測器用ケースを容易に分解することができ、メンテナンス性も向上することができる。
【0025】
また、上記の携帯可能な温度計測器用ケースは、前記蓋を、前記防滴室に設けた温度計測器の電源装置を保持する電源装置用カバーで形成すると、外部から容易に取り外すことができる電源装置用カバーに閉止栓を設けているので、仮に貯留室に水が溜まった場合に、いちいち温度計測器用ケースを分解せずに、その電源装置用カバーを外すことで、直ぐに貯留室に溜まった水を排出することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、形状の工夫により、部品点数の増加を伴わずに外部との通気性を確保して内部における結露を防止でき、従来よりも防滴性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施の形態のケースの防滴構造と、携帯可能な温度計測器用ケースについて、図面を参照しながら説明する。ここで、図面の左右方向をx方向、上下方向をy方向、及び紙面に垂直な方向をz方向とする。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さなどの比率も必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。
【0029】
図1に示すように、本発明の実施の形態のケースの防滴構造10は、ケース1と防滴室用カバー(蓋)2とからなり、外部仕切壁3、4、5、6、第1仕切壁7、及び第2仕切壁8によりケース1を、防滴室11、貯留室12、及び排出室13とに区画する。なお、
図1はケース1の使用時、又は保管時の姿勢の状態を示しており、外部仕切壁3を上面、及び外部仕切壁5を下面とする。
【0030】
防滴室11は、防滴室用カバー2により、外部仕切壁5に設けた開口部11aを密閉され、内部に、電子部品を用いた主基板や電源装置などの水に弱い部品を収納する。その防滴室用カバー2を、防滴室11の内部のものを容易に交換することが可能なように、ケース1へ脱着可能に形成する。この防滴室用カバー2を防滴室11に装着したときは、ケース1との嵌合部分より防滴室11へ水が進入しないように、全周リブ2aを設けるとよい。
【0031】
貯留室12は外部から侵入した水滴、又は内部の結露により発生した水滴を防滴室11へ侵入させないように貯留し、排水室12は外部から侵入した水滴、又は内部の結露により発生した水滴を排出するように構成する。
【0032】
その構成として、第1仕切壁7に第1連通孔14を設けて、防滴室11と貯留室12とを連通し、第2仕切壁8に第2連通孔15を設けて、貯留室12と排出室13とを連通する。また、外部仕切壁4に外部通気孔16を設けて、排出室13の内部とケース1の外部とを連通する。これにより、防滴室11からケース1の外部への通気性を確保するように
、第1連通孔14と第2連通孔15と外部通気孔16とからなる通気路17を形成することができる。
【0033】
加えて、排出室13の外部仕切壁5に排水孔18を設け、貯留室12の外部仕切壁5に開閉排水孔19を設ける。さらに、防滴室用カバー2に開閉排水孔19の栓となる閉止栓20を設ける。
【0034】
図2に示すように、第1連通孔14の貯留室12側の開口部14aを、貯留室12から防滴室11へ容易に水が進入しないように、第1仕切壁7より貯留室12側へ突出する位置x1に設ける。この構成によれば、開口部14aが貯留室12の内壁面から離れて位置するので、ケース1の姿勢が変化しても、貯留室12に溜まった水が防滴室11へ進入しにくくすることができる。
【0035】
また、防滴室11側の開口部14bを、防滴室11から貯留室12へ、防滴室11の空気が外部へ流通し易くなるように、又、結露などで生じた水滴を流出し易くなるように、面取り加工して形成する。加えて、この第1連通孔14の開口部14aの大きさは、例えば、貯留室12に水が溜まっても貯留室12から防滴室11へ水が進入し難い大きさ、つまり、水の表面張力が十分に働き防滴室11内部の圧力によって水が防滴室11へ進入し難い大きさr1が好ましい。
【0036】
第2連通孔15も同様に、防滴室13側の開口部15aを、第2仕切壁8より排出室13側へ突出する位置x2に設け、貯留室12側の開口部15bを、面取り加工して形成する。この第2連通孔15の開口部15aも前述の開口部14aと略同様の大きさr2に形成する。
【0037】
上記の第1連通孔14の開口位置y1と第2連通孔15の開口位置y2とは、yz平面で一致しない(同一平面内で一致しない)位置が、つまり第1連通孔14と第2連通孔15とが直列にならない位置がよく、例えば、防滴室11と貯留室12と排出室13との並びを、通気路17が屈曲するように配置するとよりよい。
【0038】
外部通気孔16を、外部仕切壁4に、また、第2連通孔15とyz平面で交わらない位置に設ける。この外部通気孔16の開口位置は、排水孔18と開閉排水孔19の位置よりも、ケース1の使用時、又は保管時の少なくともどちらかの姿勢で高くなる位置に、好ましくは、外部仕切壁3寄りの位置y3に設ける。この外部通気孔16の外部側の開口部16aと排出室側の開口部16bも前述と同様に形成する。
【0039】
排水孔18を外部通気孔16よりも低い位置y4で、ケース1の使用時、又は保管時の姿勢で下面となる外部仕切壁5に設ける。この排水孔18の外部側の開口部18aの大きさr4は、外部通気孔16の開口部16aの大きさr3よりも大きく形成する。排出室13側の開口部18bを面取り加工して形成する。
【0040】
上記のように、外部通気孔16と排水孔18を構成すると、ケース1の通気性を確保すると共に、ケース1の使用時、又は保管時の姿勢では、外部から侵入した水滴、又は内部の結露により発生した水滴を、常に排水孔18から外部へと排出することができる。
【0041】
開閉排水孔19も排水孔18と同様に、外部通気孔16よりも低い位置y4で、ケース1の使用時、又は保管時の姿勢で下面となる外部仕切壁5に設け、外部側の開口部19aの大きさr5を、外部通気孔16の開口部16aの大きさr3よりも大きく形成し、貯留室12側の開口部19bは面取り加工して形成する。
【0042】
防滴室用カバー2に設けた閉止栓20は、ケース1に防滴室用カバー2を装着したときに、開閉排水孔19を遮蔽することができればよく、その構成は限定しない。
【0043】
上記のように、開閉排水孔19と閉止栓20を構成すると、開閉排水孔19の開閉を閉止栓20で行うことができる。これにより、ケース1の使用時、又は保管時に、貯留室12を外部と直接連通させずに、外部から直接貯留室12へ水が進入することを防止し、また、貯留室12に溜まった水を防滴室11へ進入する前に排出することができる。結果、外部から侵入する水を排水室13で排出仕切れずに、従来であれば、防滴室11へ侵入する水を貯留し、排出することができので、防滴室11の防滴性を向上することができる。
【0044】
上記の防滴構造10によれば、防滴室11は通気路17を介してケース1の外部と連通しており、通気性を確保し、防滴室11内部の空気を外部へと流通させることができ、且つ、外部から進入した水滴、又は内部の結露で発生した水滴を外部へ排出することができるので、防滴室11内の水に弱いものを保護することができる。
【0045】
また、仮に、外部から侵入する水の量が多くても、防滴室11と排出室13との間に設けた貯留室12で、水を溜めることができるので、従来に比べて防滴室11の防滴性が向上する。加えて、貯留室12に溜まった水を防滴室用カバー2を外すだけで、外部へと排出することができ、ケース1を分解する必要がない。
【0046】
次に、上記の防滴構造10のケース1内部に進入した水の排出方法について説明する。
図3に示すように、ケース1の使用時、又は保管時の姿勢の状態(外部仕切壁3が上面、外部仕切壁5が下面)では、排水孔18がy方向の下方に開口するので、排出室13に外部から侵入した水滴、又は内部で結露した水滴である水w1を、重力の作用によって、排水孔18から外部へと排出することができる。
【0047】
また、水が外部通気孔16から排出室13に進入した場合は、排水孔13の開口のよりも外部通気孔16の開口の大きさが小さいため、進入する水量よりも排出される水量の方が多くなるので、貯留室12への水の進入がなく、防滴室11への水の進入を防ぐことができる。
【0048】
排出室13では、上記のように、常に水w1は、排水孔18から外部へと排出することができるが、一方、排出室13から第2連通孔15を介して貯留室12へ侵入し、又は貯留室12の内部で結露した水滴である水w2は、開閉排水孔19が閉止栓20により閉止しているため、貯留室12の内部に溜まる。この貯留室12の内部に溜まった水w2を、
図4に示すように、閉止栓20を開閉排水孔19から抜くことで、開閉排水孔19から外部へと排出することができる。
【0049】
貯留室12では、排出室13のように、常時水w2を外部に排出することはできないが、第1連通孔14の貯留室12側の開口部14aまで、溜まらなければ防滴室11へと水w2は進入することがない。また、前述したように、第1連通孔14の開口部14aは、ある程度の水圧がかからなければ水が進入しないような大きさに形成されていることで、防滴室11への水の進入を防ぐことができる。
【0050】
次に、
図5に示すように、ケース1の使用中などで、外部通気孔16がy方向の上方に開口した場合について説明する。外部通気孔16から進入する水滴、又は排出室13の結露で発生した水滴である水w1は、第2仕切壁8を底とした排出室13に溜まる。排水孔18の高さまで溜まると、排水孔18から外部へと排出することができる。
【0051】
このとき、排水孔18の開口部18aと18bの大きさが外部通気孔16の開口部16
aと16bよりも大きいこと、また、第2連通孔15の開口部15aの位置が、排水孔18よりも高い位置にあることから、水w1は貯留室12へ進入する可能性が低い。仮に、貯留室12へ水w1が進入しても、第1連通孔14の開口部14aの位置が高い位置にあるため、直ぐに防滴室11へ流れ込むことがなく、水w2として、貯留室12に溜まる。貯留室12から防滴室11へ水w2が進入する前に、ケース1を通常の状態に戻して、閉止栓20を開閉排水孔19から抜けば、の水w2を外部へ排出することができる。
【0052】
次に、
図6に示すように、排水孔18がy方向の上方に開口した場合について説明する。排水孔18から進入した水は、外部仕切壁3を底にした排出室13に水w1として溜まるが、ある程度溜まると、外部通気孔16から外部へと排出することができる。しかし、排水孔18から進入する水量が外部通気孔16からは排出する水量よりも多いため、水は徐々に水嵩を増し、第2連通孔15から貯留室12へと進入する可能性がある。
【0053】
前述したように、貯留室12に溜まった水w2が防滴室11へ進入するにはある程度の時間がかかり、その間に貯留室12に溜まった水w2を外部へと排出すればよい。貯留室12に溜まった水w2は、閉止栓20を開閉排水孔19から抜くことで外部へと排出することができるが、
図7に示すように、外部通気孔16から排出してもよい。
【0054】
このように、ケース1の防滴構造10は、ケース1の姿勢が様々に変化しても、防滴室11へ水が進入することを防ぐことができるので、防滴室11内に収納した水に弱い電子部品などを、水から保護することができ、その故障を防ぐことができる。
【0055】
次に、上記の防滴構造10を備えた、携帯可能な温度計測器用ケース30について、
図8〜12を参照しながら説明する。
図8の側面図に示すように、温度計測器用ケース30は、
図9及び
図10に示すケース上側部1aと
図11に示すケース下側部1bとを凹凸により嵌合して、水密性を高めるように構成したケース1と、
図12に示す電源装置用カバー(防滴室用カバー)2を嵌合する構成である。
【0056】
ケース上側部1aは、
図8に示すように、外部仕切壁3に表示装置が収まる表示装置保持31と操作装置が収まる操作装置保持部32を備え、ケース下側部1bは、電源装置が収まる電源装置保持部33と計測端子が収まる計測端子保持部34を備える。また、ケース上側部1aとケース下側部1bとが勘合して、主基板が収まる主基板保持部35を形成する。
【0057】
また、ケース上側部1aとケース下側部1bとが勘合し、電源装置保持部33と主基板保持部35とからなる防滴室11、貯留室12、及び図示しない排出室13とを形成して、防滴構造10を形成する。
【0058】
ここで、温度計測器用ケース30の通常の姿勢について説明する。温度計測器用ケース30を使用するときに計測者は、表示装置を見ながら計測するので、外部仕切壁5が下面となる姿勢の状態である。また、計測しないときに温度計測器用ケース30を保管するときも、外部仕切壁5を下面とする姿勢の状態である。よって、
図8に示す姿勢の状態のときに、外部通気孔16が排水孔18(図示しない)と開閉排水孔19よりも上方に位置するように、且つ、排水孔18(図示しない)と開閉排水孔19とが、第1連通孔14と第2連通孔15(図示しない)よりも下方に位置するように構成する。
【0059】
そのため、
図9の(a)及び
図10の(a)に示すように、外部通気孔16を外部仕切壁4aに設け、且つ、
図11の(b)に示すように、排水孔18と開閉排水孔19とを、ケース下側部1bに設けることで、外部から外部通気孔16を介して水が温度計測器用ケース30の内部に進入しにくくすることができ、仮に内部へ進入しても、防滴室11への
水の進入を防ぐことができる。
【0060】
温度計測器用ケース30の防滴構造10を、
図9の(b)に示すように、防滴室11と貯留室12とをx方向に配置して、第1連通孔14で連通し、貯留室12と排出室13とをz方向に配置して、第2連通孔15で連通すると、第1連通孔14と第2連通孔15と外部通気孔16とからなる通気路17を、貯留室12を介して屈曲させることができる。これにより、通気路17が複雑化して、より防滴室11への水の進入を防ぐことができる。
【0061】
第2連通孔15の排出室13側の開口部15aを、
図10の(b)及び(d)に示すように、第2仕切壁8から突出した位置になるように形成すると共に、貯留室12側の開口部15bを面取り加工して形成する。また、開口部15aの大きさr2は、好ましくは水の表面張力が十分に働き防滴室11内部の圧力によって水が防滴室11へ進入しにくい大きさ、より好ましくはΦ0.5mm〜Φ1.5mmがよい。これにより、貯留室12から空気、及び貯留室12に溜まった水滴が通過しやすく、一方で、排出室13から貯留室12へ水滴が通過しにくい構造になり、結果として、防滴室11への水の進入を防ぐことができる。なお、第1連通孔14も第2連通孔15と同様の構成となる。
【0062】
排水孔18と開閉排水孔19を、
図11の(a)及び(b)に示すように、ケース下側部1bの下面である、外部仕切壁5に設けると、温度計測器用ケース30を使用しないときに、排水孔18と開閉排水孔19がy方向の下方に開口するため、貯留室12と排出室13の結露により発生する水滴を外部へ排出することができる。また、温度計測器用ケース30を使用するときも、通常の使用方法では、排水孔18は、第2連通孔15と外部連通孔16よりも、y方向の下方に位置することが多いため、外部より侵入した水滴や結露による水滴を排出することができる。
【0063】
図12の(a)に示すように、電源装置用カバー2をケース下側部1bに嵌合した際に、排水孔18が外部に開口するように排水孔用開口部21を開口して形成すると共に、開閉排水孔19を閉止するように閉止栓20を電源装置用カバー2から突出して形成する。これにより、排水孔18からは、常に水を排出することができる。また、開閉排水孔19に閉止栓20を差し込み、閉止することで、貯留室12への外部からの水の進入口を塞ぐことができる。
【0064】
この電源装置用カバー2は、温度計測器用ケース30の電源装置の蓋となっており、温度計測器用ケース30を分解せずとも、容易に脱着可能に形成され、ケース下側部1bに嵌合して、電源装置保持部33とともに、電源装置を保持している。これにより、貯留室12に水滴が溜まったときに、容易に防滴室用カバー2をケース下側部1bから外して、開閉排水孔19から閉止栓20を抜くことができる。そのため、貯留室12に溜まった水が防滴室11へ進入することを事前に防ぐことができる。
【0065】
上記の構成によれば、温度計測器用ケース30が防滴構造10を備えるので、前述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。これにより、携帯可能な温度計測器用ケース30は、温度差がある場所へ持ち運び、温度計測器用ケース30の内部に水分が進入しても、その水分を気体として外部へ排出し、又は結露による水滴を外部へ排出するので、主基板や電源装置などの故障を防ぐことができる。また、例えば、温度計測器用ケース30を水の中に落とすなどの不測の事態であっても、従来よりも内部への水の進入を防ぐことができる。
【0066】
さらに、ケース1の加工で上記の作用効果を得ることができるので、ゴムパッキンやケースの継ぎ目にシールを用いるケースと比べて、部品点数を減少させ、及び加工点数も減
少させることができ、製造コストを低減することができる。また、上記の理由から、温度計測器用ケース30を容易に分解することもでき、メンテナンス性を向上させることができる。
【0067】
上記の実施の携帯のケースの防滴構造10は、携帯可能な温度計測器用ケース30内に設けた場合で説明したが、このケースの防滴構造10を適用することができるケースは温度計測器用ケース30に限定しない。