特許第5775838号(P5775838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775838
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】トンネルの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20150820BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20150820BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20150820BHJP
   E21D 13/02 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   E21D9/04 F
   E21D9/06 302C
   E21D11/00 Z
   E21D13/02
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-51651(P2012-51651)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-185367(P2013-185367A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰司
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−235983(JP,A)
【文献】 特開平06−264692(JP,A)
【文献】 特開平06−264693(JP,A)
【文献】 特開平10−082273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのトンネルを立坑もしくは地上から地盤内に併設施工し、その際に、双方のトンネルともに他方のトンネルに対向する側の上下2箇所に切欠きが設けてあり、かつこの切欠きが防護材にて完全に閉塞されている第1のステップ、
それぞれのトンネルの間の少なくとも上方領域と下方領域に地盤改良をおこなって地山の自立を図り、2つのトンネルと上下の地盤改良部にて囲まれた被包囲領域を掘削し、この掘削の過程で双方のトンネルの上下2箇所の防護材を撤去する第2のステップ、
双方の上下の切欠きのそれぞれに対し、掘削された被包囲領域から土留め材を取り付けて双方のトンネル間の上下に架け渡して固定し、被包囲領域に対応するトンネルの一部を撤去して双方のトンネルを連通させて大断面のトンネルを施工する第3のステップからなるトンネルの施工方法。
【請求項2】
第3のステップにおいて、土留め材の地山側に被包囲領域から裏込め材を注入する請求項1に記載のトンネルの施工方法。
【請求項3】
前記トンネルは矩形断面トンネルであり、該矩形断面トンネルの隅角部に切欠きが設けてある請求項1または2に記載のトンネルの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非開削工法にて地盤内に施工された複数のトンネル同士を連通させて大断面トンネルを施工するトンネルの施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部における踏切や幹線道路の交差点などにおける交通渋滞を緩和もしくは解消することを目的として、アンダーパスによる立体交差化が都市部の各所で進められている。また、都市部の地下では、複数の地下トンネルを繋いで分岐合流させたり、あるいは地下トンネルを拡幅してトンネルの大断面化を図り、大断面道路や地下鉄駅舎、地下駐車場などを施工する試みが頻繁におこなわれている。
【0003】
従来のアンダーパス施工やトンネル拡幅施工は開削工法によっておこなわれていたが、開削工法では、供用道路内に作業帯を設置したり車線規制を強いることによって交通渋滞を招くこと、多様な施工環境規制のために往々にして工期が長期化すること、工期が長期化することでおのずと工費が高騰すること、などの課題が顕著となっていた。
【0004】
これらの課題に対し、シールド工法や推進工法といった非開削工法を適用してなるトンネルの大断面化やアンダーパス施工が現在主流となっている。
【0005】
ところで、現在の大断面トンネルの施工(複数のトンネルを繋いで大断面化を図る施工)には多様な工法が存在しており、その一例として、いわゆるウィングプラス工法やカップルバード工法、MMST工法やMMB工法などを挙げることができる。
【0006】
ウィングプラス工法は、シールドの側方にアーチ型掘進機を張り出し、トンネルの構築と同時に分岐合流部の施工に必要な防護工である先受けアーチシェルを2本のトンネル間の拡幅部上下に設け、これで切り拡げ作業時の防護と止水を行いながら、掘進機を掘進させてトンネル分岐合流部を施工する工法である。また、カップルバード工法は、道路本線トンネルとランプトンネルの分合流部をシールド工法で施工するに当たり、分合流部区間では、いわゆるリトラクタブルシールドによって余掘りした空間に拡張セグメントを押出した後、本線トンネルとランプトンネルの間を山岳工法で掘削し、鋼殻梁にて双方のトンネル同士を繋ぐ工法である。
【0007】
また、MMST工法やMMB工法は、矩形断面トンネルの外周部分を複数の矩形の単体シールドマシンで分割して掘削し、これらを地中でつなぎあわせてトンネルの外殻とした後に内部の土を掘削して矩形トンネルを構築する工法である。
【0008】
上記するウィングプラス工法では、先受けアーチシェルを2本のトンネル間の拡幅部上下に設けるといった施工となることから工費が増大することは避けられない。また、カップルバード工法では、リトラクタブルシールドという出入り自在な別途のシールドを格納しておくといった特殊な掘進機を使用することからやはり工費が増大する。また、これらの工法にてトンネル同士を繋ぐルーフ部材(梁材など)は一般に大規模なものとなり、特にこのルーフ部材とトンネルの接続部の施工は困難を極めるものとなる。
【0009】
また、上記するMMST工法やMMB工法においても、相対的に小断面の矩形シールド同士を繋ぐ施工が必須となるが、一般には、一方の矩形シールド側から他方の矩形シールドに向かって鋼板をスライドさせて先行土留めを施工し、鋼板を双方の矩形シールドに固定した後に矩形シールド間の掘削がおこなわれる。ここで、特許文献1には、このMMB工法を対象として、矩形シールドの隅角部に位置するセグメントに鋼矢板がスライドする溝を設けておき、双方の矩形シールドの隅角部で鋼矢板をトンネル軸方向にスライドさせながら双方のトンネル間に鋼矢板を架け渡す施工方法の開示がある。
【0010】
しかし、このようにセグメントに溝を設けた構造では、この溝に土砂が浸入することは避けられず、土砂浸入によって溝が閉塞されることで鋼矢板のスライドが阻害されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−264692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、工費を高騰させることなく、併設されたトンネル間に土留め材をスムーズに架け渡して大断面のトンネルを施工することのできるトンネルの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成すべく、本発明によるトンネルの施工方法は、2つのトンネルを立坑もしくは地上から地盤内に併設施工し、その際に、双方のトンネルともに他方のトンネルに対向する側の上下2箇所に切欠きが設けてあり、かつこの切欠きが防護材にて完全に閉塞されている第1のステップ、それぞれのトンネルの間の少なくとも上方領域と下方領域に地盤改良をおこなって地山の自立を図り、2つのトンネルと上下の地盤改良部にて囲まれた被包囲領域を掘削し、この掘削の過程で双方のトンネルの上下2箇所の防護材を撤去する第2のステップ、双方の上下の切欠きのそれぞれに対し、掘削された被包囲領域から土留め材を取り付けて双方のトンネル間の上下に架け渡して固定し、被包囲領域に対応するトンネルの一部を撤去して双方のトンネルを連通させて大断面のトンネルを施工する第3のステップからなるものである。
【0014】
本発明のトンネルの施工方法は、2つのトンネルを地盤内でたとえば水平面内にくるように併設施工し、双方のトンネルの少なくとも上方領域と下方領域に適宜の地盤改良をおこなって地山の自立を図るとともに止水対策を講じた後、この上下の地盤改良部と双方のトンネルで囲まれた被包囲領域を掘削して双方のトンネル間に土留め材からなる上下のルーフを架け渡し、双方のトンネル間を連通させて大断面のトンネルを施工する方法に関し、双方のトンネルにおいて土留め材が固定される箇所に予め切欠きを設けておくとともに、シールド掘進機が掘進してトンネルを施工する際には切欠きを防護材にて完全に閉塞しておくものである。
【0015】
ここで、対象となるトンネルはシールド工法にて施工されるシールドトンネルのほか、推進工法にて施工される推進管からなるトンネルも含まれる。
【0016】
また、「2つのトンネル」としているが、3つ以上のトンネルを併設し、隣接するトンネル同士を相互に繋いでなる大断面トンネルも本発明の方法発明の施工対象に包含されるものである。なぜなら、第1のトンネルと第2のトンネルに対して本発明の施工方法をおこなうと同時に、第2のトンネルにおいて第1のトンネルと反対側に第3のトンネルが存在する場合に、第2のトンネルと第3のトンネルの間では「2つのトンネル」の関係が成立するからであり、第1のトンネルにおいても同様に、第2のトンネルと反対側に第4のトンネルが存在する場合に、第1のトンネルと第4のトンネルの間では「2つのトンネル」の関係が成立するからである。
【0017】
また、トンネルは断面矩形のトンネルであってもよいし、断面円形もしくは楕円形のトンネルであってもよい。
【0018】
さらに、2つのトンネルは、双方の断面寸法が異なる形態であってもよいし、双方の断面形状が異なる形態であってもよく、たとえば、相対的に大寸法の矩形断面トンネルと相対的に小寸法の矩形断面トンネルの組み合わせや、矩形断面の一方が正方形断面、他方が長方形断面のトンネルの組み合わせ、円形断面トンネルと矩形断面トンネルの組み合わせなどがある。
【0019】
また、トンネルは、鋼製セグメントや鉄筋コンクリート製セグメント、鋳鉄製セグメント、鋼製もしくは鉄筋コンクリート製の推進管など、その仕様は特に限定されるものではない。
【0020】
また、本明細書において「大断面トンネル」とは、具体的に寸法が一定の大きさ以上のトンネルという意味だけでなく、第1のステップにて施工される単体のトンネルに比して寸法が大きなトンネルを含むものである。
【0021】
さらに、「土留め材」としては、鋼矢板や鋼矢板を形鋼(C形鋼、L形鋼)等で適宜補強したもの、床型枠用の鋼製デッキプレート(たとえば製品名SFデッキ(日鐵住金建材株式会社製))、鉄筋コンクリート製の板材、コンクリートと鋼の合成板材などを挙げることができ、平板状のもの、湾曲したもの、中央が湾曲状で切欠きに固定される端部が平板状の複合形状のものなどを挙げることができる。
【0022】
また、トンネルに設けられた切欠きを閉塞する防護材は、鋼製プレートや鉄筋コンクリート製プレートなど、シールドトンネル用のセグメントの仕様に対応した仕様のものが適用できる。
【0023】
たとえば断面矩形の2つのシールドトンネル同士の上下に2つの土留め材を架け渡す実施の形態を例に説明すると、双方のシールドトンネルともに他方のシールドトンネルに対向する側の2つの上下の隅角部に切欠きを設けておく。
【0024】
この切欠きは、たとえば平板状の鋼矢板を架け渡すに当たり、その端部を載せることができ、さらにここで鋼矢板を固定した際に所定の強度が期待できる接続構造を形成できる程度の寸法に設定されている。シールド掘進機にてトンネルを施工する第1のステップにおいては、トンネルが主桁とその周りにあるスキンプレートから構成される鋼製セグメントから形成される場合に、エントランス対応のために所定の曲率をもったスキンプレート(他の隅角部のスキンプレートと同じ素材で同じ曲率を有している)からなる防護材を使用するのが好ましく、この防護材で切欠きが閉塞されていることでトンネル施工の際に土砂が切欠き内部に浸入しないようになっている。なお、切欠きを設けることでトンネルを構成する隅角部は断面欠損するため、必要に応じて適宜の補強をおこなって隅角部の強度保証を図っておくのが望ましい。
【0025】
なお、「切欠きが防護材にて完全に閉塞されている」とは、たとえば湾曲状のスキンプレートからなる防護材によって切欠きの外周が地山から遮断されている形態(切欠き空間が存在しており、防護材によってこの切欠き空間が外部から遮断されている形態)や、切欠きの形状と同じ形状および寸法の防護材を切欠きに収容して切欠き空間を完全に防護材にて閉塞する形態などを含む意味である。
【0026】
第1のステップにおいては、2つのシールドトンネルを2基のシールド掘進機を並行させて同時に施工することもできるし、1基のシールド掘進機にて先行シールドトンネルを施工後、後行シールドトンネルを施工することもできる。このトンネルの施工においては、双方に固有の立坑からシールド掘進機を掘進させてトンネルを施工する方法のほか、共通の立坑から間隔をおいて2つのトンネルを施工する方法、さらには、地上からシールド掘進機を地盤内に掘進させてトンネルを施工する方法などがある。
【0027】
次に、立坑や地上から2つのトンネル間を掘削するに当たり、これら2つのトンネルの間で少なくとも上方領域と下方領域に地盤改良をおこない、地山の自立を図り、必要に応じて止水処理を講じる。ここで、「少なくとも上方領域と下方領域」とは、2つのトンネルの上方に設置される土留め材よりも上方の領域とトンネルの下方に設置される土留め材よりも下方の領域のほか、これらに加えてその間の領域をも含む意味である。
【0028】
2つのトンネル間の上方領域と下方領域が地盤改良にて自立した段階で、立坑もしくは地表よりトンネルと上下の地盤改良部で囲まれた被包囲領域を掘削していく。そして、この掘削と並行して、もしくは掘削を完全に完了した後に、2つのトンネルの上下の防護材を撤去して切欠きを被包囲領域に露出させる(第2のステップ)。
【0029】
作業員は、掘削された被包囲領域に土留め材を搬送し、2つのトンネルの上下にそれぞれ土留め材を架け渡し、切欠きにて土留め材の端部を溶接、ボルト留め等で強固に固定する。
【0030】
このように、2つのトンネル間での土留め材の架け渡しに際しては、土留め材の端部をトンネルの切欠きに載置するだけの極めて簡易なものであり、所望の固定強度を確保するために、溶接等がおこなわれる。
【0031】
トンネル間に土留め材を架け渡して固定した際に、土留め材とその背面の地山の間には隙間が形成され易い。そこで、被包囲領域から土留め材の背面の地山側へグラウトや薬液を注入して隙間の閉塞処理をおこなってもよい。
【0032】
2つのトンネルの間の上下に土留め材が掛け渡されたら、双方のトンネルにおける被包囲領域に対応する箇所を撤去し、トンネル間の連通を図って大断面トンネルが施工される(第3のステップ)。
【0033】
このように、本発明のトンネルの施工方法によれば、2つのトンネル同士を連通させて大断面トンネルを施工するに当たり、ウィングプラス工法やカップルバード工法などの場合のように大掛かりな土留め材の架け渡しや特殊なシールド掘進機の使用は一切不要であり、簡易かつ安価な方法で大断面トンネルを施工することができる。
【0034】
また、土留め材を載置して固定するトンネルに設けられた切欠きをトンネル施工中は防護材にて完全に閉塞しておくことで、トンネル施工中に切欠きに土砂が浸入してしまい、土留め材の設置に際して土砂を取り除くことが余儀なくされるといった問題は生じ得ない。
【発明の効果】
【0035】
以上の説明から理解できるように、本発明のトンネルの施工方法によれば、2つのトンネルを連通させて大断面トンネルを施工するに当たり、トンネルにおいて土留め材が固定される箇所に切欠きを設けておくとともにトンネル施工の際にはこれを防護材で完全に閉塞しておくことにより、トンネル施工後に防護材を撤去して土留め材をトンネル間に架け渡す際に切欠きに土砂が浸入して土留め材設置に支障が生じるといった問題はなく、しかも、切欠きに土留め材の端部を載置して固定するだけの簡易な方法により、効率的に2つのトンネルを連通させて大断面トンネルを施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明のトンネルの施工方法の第1のステップを説明した模式図である。
図2】トンネルの施工方法の第2のステップを説明した模式図である。
図3図2に続いて施工方法の第2のステップを説明した模式図である。
図4】トンネルの施工方法の第3のステップを説明した模式図である。
図5図4に続いて施工方法の第3のステップを説明した模式図である。
図6図5に続いて施工方法の第3のステップを説明した模式図であって、施工された大断面トンネルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明のトンネルの施工方法の実施の形態を説明する。なお、図示する施工方法は鋼製で同寸法の断面矩形の2つのシールドトンネルを併設施工し、連通させて大断面トンネルを施工する方法を示したものであるが、他の断面形状のシールドトンネル同士を連通させる形態や、断面寸法の異なるシールドトンネル同士を連通させる形態、さらには、推進工法による施工方法であってもよいことは勿論のことである。
【0038】
(トンネルの施工方法)
図1図6はその順で、本発明のトンネルの施工方法を説明したフロー図である。より具体的には、図1は施工方法の第1のステップを説明した模式図であり、図2,3は順に第2のステップを説明した模式図であり、図4,5,6は順に第3のステップを説明した模式図である。
【0039】
不図示の立坑から不図示のシールド掘進機を発進させ、図1で示すように、左右2つのトンネル10,10を所定の間隔を置いて地盤G内で併設施工する。
【0040】
ここで、トンネル10,10の施工は、1基のシールド掘進機を使用して左右順番に施工する方法であってもよいし、2基のシールド掘進機を使用して同時に施工する方法であってもよい。
【0041】
トンネル10は、断面矩形の鋼製セグメントの主桁1とその表面に固定されたスキンプレート2と、不図示の縦リブや補強板などから構成された鋼製セグメントが図示例のように無端状に組み付けられ、さらにこれがトンネル軸方向に接続されて形成されている。そして、主桁1やスキンプレート2の隅角部はシールド掘進機やエントランスに対応するために所望の曲率を有した湾曲状を呈している。
【0042】
一方のトンネル10のうち、他方のトンネル10側にある上下2つの隅角部には切欠き3,3が設けてあり、トンネル10を地盤G内で施工する際にはスキンプレート2と連続するようにやはりスキンプレートから構成される防護材4にて切欠き3が完全に閉塞されている(以上、第1のステップ)。
【0043】
次に、図2で示すように、それぞれのトンネル10,10の間の上方領域と下方領域に対し、たとえば立坑側から地盤改良をおこなって地盤改良部5,5を造成し、この領域における地山の自立を図るとともに、止水対策処理を講じる。
【0044】
この上下の地盤改良部5,5の造成により、左右のトンネル10,10と上下の地盤改良部5,5によって囲まれた被包囲領域Sが画成される。
【0045】
次に、たとえば立坑側から機械掘削や人力掘削を併用して被包囲領域Sの掘削をおこない、この掘削に並行するようにして被包囲領域Sに対応する箇所のスキンプレート2を撤去し、さらに防護材4を撤去することにより、図3で示すように、左右のトンネル10,10と上下の地盤改良部5,5で画成された被包囲領域空間S’が形成される。
【0046】
この段階で、トンネル10に形成されている切欠き3は被包囲領域空間S’に開放されるが、トンネル10の施工の際にはこれが防護材4にて閉塞されているために、切欠き3が被包囲領域空間S’に開放された際にこれが土砂で満たされていることはない(第2のステップ)。
【0047】
被包囲領域空間S’が形成されたら、立坑側から作業員が鋼矢板からなる土留め材6を被包囲領域空間S’を利用して搬送し、図4で示すように左右のトンネル10,10それぞれの上方の切欠き3,3間、および下方の切欠き3,3間に土留め材6を架け渡してその端部を切欠き3上に載置し、主桁1との間で止水溶接8にて固定する。なお、この他にも、ボルトによる固定や止水溶接とボルトの併用など、固定手段は多様である。
【0048】
なお、図示を省略するが、土留め材6にはハンドルが取り付けてあり、作業員がこのハンドルを把持してハンドリングできるようにしておくのが好ましい。
【0049】
図4で示す土留め材6が双方のトンネル10,10間に架け渡された状態では、土留め材6の背面において土留め材6と地盤改良部5の間に隙間Qがある。
【0050】
そこで、図5で示すように、土留め材6に形成されているグラウト注入部7を介して被包囲領域空間S’から隙間Qにグラウトを注入して裏込め部9を形成し、隙間Qを完全に閉塞する。
【0051】
次に、左右のトンネル10,10において包囲領域空間S’に対応する箇所を撤去し、図6で示すように双方のトンネル10,10同士を連通させることにより、大断面トンネル20が施工される。
【0052】
図示する本発明のトンネルの施工方法によれば、2つのトンネル10,10を連通させて大断面トンネル20を施工するに当たり、トンネル10において土留め材6が固定される箇所に切欠き3を設けておくとともにトンネル施工の際にはこれを防護材4で完全に閉塞しておくことにより、トンネル施工後に防護材4を撤去して土留め材6をトンネル10,10間に架け渡す際に切欠き3に土砂が浸入して土留め材設置に支障が生じるといった問題はなく、しかも、切欠き3に土留め材6の端部を載置して固定するだけの簡易な方法により、効率的に2つのトンネル10,10を連通させて大断面トンネル20を施工することができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1…鋼製セグメントの主桁、2…スキンプレート、3…切欠き、4…防護材(スキンプレート)、5…地盤改良部、6…土留め材(鋼矢板)、7…グラウト注入部、8…止水溶接、9…裏込め部、10…トンネル(シールドトンネル)、20…大断面トンネル、G…地盤、S…被包囲領域、S’…被包囲領域空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6