【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成すべく、本発明によるトンネルの施工方法は、2つのトンネルを立坑もしくは地上から地盤内に併設施工し、その際に、双方のトンネルともに他方のトンネルに対向する側の上下2箇所に切欠きが設けてあり、かつこの切欠きが防護材にて完全に閉塞されている第1のステップ、それぞれのトンネルの間の少なくとも上方領域と下方領域に地盤改良をおこなって地山の自立を図り、2つのトンネルと上下の地盤改良部にて囲まれた被包囲領域を掘削し、この掘削の過程で双方のトンネルの上下2箇所の防護材を撤去する第2のステップ、双方の上下の切欠きのそれぞれに対し、掘削された被包囲領域から土留め材を取り付けて双方のトンネル間の上下に架け渡して固定し、被包囲領域に対応するトンネルの一部を撤去して双方のトンネルを連通させて大断面のトンネルを施工する第3のステップからなるものである。
【0014】
本発明のトンネルの施工方法は、2つのトンネルを地盤内でたとえば水平面内にくるように併設施工し、双方のトンネルの少なくとも上方領域と下方領域に適宜の地盤改良をおこなって地山の自立を図るとともに止水対策を講じた後、この上下の地盤改良部と双方のトンネルで囲まれた被包囲領域を掘削して双方のトンネル間に土留め材からなる上下のルーフを架け渡し、双方のトンネル間を連通させて大断面のトンネルを施工する方法に関し、双方のトンネルにおいて土留め材が固定される箇所に予め切欠きを設けておくとともに、シールド掘進機が掘進してトンネルを施工する際には切欠きを防護材にて完全に閉塞しておくものである。
【0015】
ここで、対象となるトンネルはシールド工法にて施工されるシールドトンネルのほか、推進工法にて施工される推進管からなるトンネルも含まれる。
【0016】
また、「2つのトンネル」としているが、3つ以上のトンネルを併設し、隣接するトンネル同士を相互に繋いでなる大断面トンネルも本発明の方法発明の施工対象に包含されるものである。なぜなら、第1のトンネルと第2のトンネルに対して本発明の施工方法をおこなうと同時に、第2のトンネルにおいて第1のトンネルと反対側に第3のトンネルが存在する場合に、第2のトンネルと第3のトンネルの間では「2つのトンネル」の関係が成立するからであり、第1のトンネルにおいても同様に、第2のトンネルと反対側に第4のトンネルが存在する場合に、第1のトンネルと第4のトンネルの間では「2つのトンネル」の関係が成立するからである。
【0017】
また、トンネルは断面矩形のトンネルであってもよいし、断面円形もしくは楕円形のトンネルであってもよい。
【0018】
さらに、2つのトンネルは、双方の断面寸法が異なる形態であってもよいし、双方の断面形状が異なる形態であってもよく、たとえば、相対的に大寸法の矩形断面トンネルと相対的に小寸法の矩形断面トンネルの組み合わせや、矩形断面の一方が正方形断面、他方が長方形断面のトンネルの組み合わせ、円形断面トンネルと矩形断面トンネルの組み合わせなどがある。
【0019】
また、トンネルは、鋼製セグメントや鉄筋コンクリート製セグメント、鋳鉄製セグメント、鋼製もしくは鉄筋コンクリート製の推進管など、その仕様は特に限定されるものではない。
【0020】
また、本明細書において「大断面トンネル」とは、具体的に寸法が一定の大きさ以上のトンネルという意味だけでなく、第1のステップにて施工される単体のトンネルに比して寸法が大きなトンネルを含むものである。
【0021】
さらに、「土留め材」としては、鋼矢板や鋼矢板を形鋼(C形鋼、L形鋼)等で適宜補強したもの、床型枠用の鋼製デッキプレート(たとえば製品名SFデッキ(日鐵住金建材株式会社製))、鉄筋コンクリート製の板材、コンクリートと鋼の合成板材などを挙げることができ、平板状のもの、湾曲したもの、中央が湾曲状で切欠きに固定される端部が平板状の複合形状のものなどを挙げることができる。
【0022】
また、トンネルに設けられた切欠きを閉塞する防護材は、鋼製プレートや鉄筋コンクリート製プレートなど、シールドトンネル用のセグメントの仕様に対応した仕様のものが適用できる。
【0023】
たとえば断面矩形の2つのシールドトンネル同士の上下に2つの土留め材を架け渡す実施の形態を例に説明すると、双方のシールドトンネルともに他方のシールドトンネルに対向する側の2つの上下の隅角部に切欠きを設けておく。
【0024】
この切欠きは、たとえば平板状の鋼矢板を架け渡すに当たり、その端部を載せることができ、さらにここで鋼矢板を固定した際に所定の強度が期待できる接続構造を形成できる程度の寸法に設定されている。シールド掘進機にてトンネルを施工する第1のステップにおいては、トンネルが主桁とその周りにあるスキンプレートから構成される鋼製セグメントから形成される場合に、エントランス対応のために所定の曲率をもったスキンプレート(他の隅角部のスキンプレートと同じ素材で同じ曲率を有している)からなる防護材を使用するのが好ましく、この防護材で切欠きが閉塞されていることでトンネル施工の際に土砂が切欠き内部に浸入しないようになっている。なお、切欠きを設けることでトンネルを構成する隅角部は断面欠損するため、必要に応じて適宜の補強をおこなって隅角部の強度保証を図っておくのが望ましい。
【0025】
なお、「切欠きが防護材にて完全に閉塞されている」とは、たとえば湾曲状のスキンプレートからなる防護材によって切欠きの外周が地山から遮断されている形態(切欠き空間が存在しており、防護材によってこの切欠き空間が外部から遮断されている形態)や、切欠きの形状と同じ形状および寸法の防護材を切欠きに収容して切欠き空間を完全に防護材にて閉塞する形態などを含む意味である。
【0026】
第1のステップにおいては、2つのシールドトンネルを2基のシールド掘進機を並行させて同時に施工することもできるし、1基のシールド掘進機にて先行シールドトンネルを施工後、後行シールドトンネルを施工することもできる。このトンネルの施工においては、双方に固有の立坑からシールド掘進機を掘進させてトンネルを施工する方法のほか、共通の立坑から間隔をおいて2つのトンネルを施工する方法、さらには、地上からシールド掘進機を地盤内に掘進させてトンネルを施工する方法などがある。
【0027】
次に、立坑や地上から2つのトンネル間を掘削するに当たり、これら2つのトンネルの間で少なくとも上方領域と下方領域に地盤改良をおこない、地山の自立を図り、必要に応じて止水処理を講じる。ここで、「少なくとも上方領域と下方領域」とは、2つのトンネルの上方に設置される土留め材よりも上方の領域とトンネルの下方に設置される土留め材よりも下方の領域のほか、これらに加えてその間の領域をも含む意味である。
【0028】
2つのトンネル間の上方領域と下方領域が地盤改良にて自立した段階で、立坑もしくは地表よりトンネルと上下の地盤改良部で囲まれた被包囲領域を掘削していく。そして、この掘削と並行して、もしくは掘削を完全に完了した後に、2つのトンネルの上下の防護材を撤去して切欠きを被包囲領域に露出させる(第2のステップ)。
【0029】
作業員は、掘削された被包囲領域に土留め材を搬送し、2つのトンネルの上下にそれぞれ土留め材を架け渡し、切欠きにて土留め材の端部を溶接、ボルト留め等で強固に固定する。
【0030】
このように、2つのトンネル間での土留め材の架け渡しに際しては、土留め材の端部をトンネルの切欠きに載置するだけの極めて簡易なものであり、所望の固定強度を確保するために、溶接等がおこなわれる。
【0031】
トンネル間に土留め材を架け渡して固定した際に、土留め材とその背面の地山の間には隙間が形成され易い。そこで、被包囲領域から土留め材の背面の地山側へグラウトや薬液を注入して隙間の閉塞処理をおこなってもよい。
【0032】
2つのトンネルの間の上下に土留め材が掛け渡されたら、双方のトンネルにおける被包囲領域に対応する箇所を撤去し、トンネル間の連通を図って大断面トンネルが施工される(第3のステップ)。
【0033】
このように、本発明のトンネルの施工方法によれば、2つのトンネル同士を連通させて大断面トンネルを施工するに当たり、ウィングプラス工法やカップルバード工法などの場合のように大掛かりな土留め材の架け渡しや特殊なシールド掘進機の使用は一切不要であり、簡易かつ安価な方法で大断面トンネルを施工することができる。
【0034】
また、土留め材を載置して固定するトンネルに設けられた切欠きをトンネル施工中は防護材にて完全に閉塞しておくことで、トンネル施工中に切欠きに土砂が浸入してしまい、土留め材の設置に際して土砂を取り除くことが余儀なくされるといった問題は生じ得ない。