特許第5775842号(P5775842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775842
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】シールリング組付装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/02 20060101AFI20150820BHJP
   B25B 27/28 20060101ALI20150820BHJP
   F16J 15/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   B23P19/02 E
   B25B27/28
   F16J15/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-67792(P2012-67792)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-198946(P2013-198946A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】保科 昭宏
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−046588(JP,U)
【文献】 特開平09−323226(JP,A)
【文献】 特開2012−24892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00−21/00
H01L 21/68
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールリングを所望の位置に組み付けるシールリング組付装置であって、
シールリングを把持可能であり、複数に分割して形成された開閉自在なチャックと、
前記チャックを開閉駆動する駆動機構と、
前記チャックに形成された開口部を通じてシールリングを吸引する吸引装置と、
前記チャックの表面内周縁に形成され、底面に前記開口部が形成された環状溝と、を備え、
前記チャックにてシールリングを把持する際には、前記チャックを閉状態として前記開口部を通じて前記環状溝にシールリングを吸着させ、
前記環状溝に吸着されたシールリングを所望の位置に組み付ける際には、前記吸引装置による吸引を停止すると共に前記チャックを開状態にすることを特徴とするシールリング組付装置。
【請求項2】
シールリングを所望の位置に組み付けるシールリング組付装置であって、
シールリングを把持可能であり、複数に分割して形成された開閉自在なチャックと、
前記チャックを開閉駆動する駆動機構と、
前記チャックに形成された開口部を通じてシールリングを吸引する吸引装置と、
前記チャックの表面外周縁に形成され、底面に前記開口部が形成された環状溝と、を備え、
前記チャックにてシールリングを把持する際には、前記チャックを開状態として前記開口部を通じて前記環状溝にシールリングを吸着させ、
前記環状溝に吸着されたシールリングを所望の位置に組み付ける際には、前記吸引装置による吸引を停止すると共に前記チャックを閉状態にすることを特徴とするシールリング組付装置。
【請求項3】
前記チャックは、閉状態にて前記環状溝の内周面がシールリングの外周面に当接することを特徴とする請求項1に記載のシールリング組付装置。
【請求項4】
前記チャックは、開状態にて前記環状溝の外周面がシールリングの内周面に当接することを特徴とする請求項2に記載のシールリング組付装置。
【請求項5】
前記環状溝に吸着されたシールリングを所望の位置に組み付ける際には、圧縮空気供給源から前記開口部を通じてシールリングに向けて圧縮空気を吹き付けることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のシールリング組付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールリングを所望の位置に組み付けるシールリング組付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、Oリングを自動で組み付ける装置として、Oリングの外周を開閉自在なチャック部材で挾持し、Oリングを押圧部材で押圧して、チャック部材の先端開口部内面に形成された先すぼみの円錐状テーパガイド面に沿って先端側に滑らせ、ワークの穴の内周面に弾圧嵌合させるものが開示されている。
【0003】
また、従来の装置として、真空ポンプによりハンドにOリングを吸着させ、ハンドを前進させることによりOリングを溝に挿入した後、真空ポンプを停止させてハンドを後退させることによりOリングを溝に組み付けるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−323226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようにしてOリングを溝に組み付ける場合には、真空ポンプを停止してハンドを後退させても、Oリングがハンドに吸着してしまいハンドから外れないことがある。Oリングがハンドから外れない場合には、所望の位置にOリングが装着されないこととなり、Oリング組み付けの信頼性が損なわれる。
【0006】
ハンドに吸着されたOリングを外す方法として、ハンドを横移動させる方法もある。しかし、組み付けの度にハンドを横移動させる方法では効率が悪い。また、内径部へのOリングの組み付けなどハンドを横移動できない場合には、ハンドを横移動させてOリングを外す方法は適用できず、Oリング組み付けの信頼性が損なわれる。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、シールリングの組み付けの信頼性が向上すると共に、シールリングを効率良く組み付けることができるシールリング組付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シールリングを所望の位置に組み付けるシールリング組付装置であって、シールリングを把持可能であり、複数に分割して形成された開閉自在なチャックと、前記チャックを開閉駆動する駆動機構と、前記チャックに形成された開口部を通じてシールリングを吸引する吸引装置と、前記チャックの表面内周縁に形成され、底面に前記開口部が形成された環状溝と、を備え、前記チャックにてシールリングを把持する際には、前記チャックを閉状態として前記開口部を通じて前記環状溝にシールリングを吸着させ、前記環状溝に吸着されたシールリングを所望の位置に組み付ける際には、前記吸引装置による吸引を停止すると共に前記チャックを開状態にすることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、シールリングを所望の位置に組み付けるシールリング組付装置であって、シールリングを把持可能であり、複数に分割して形成された開閉自在なチャックと、前記チャックを開閉駆動する駆動機構と、前記チャックに形成された開口部を通じてシールリングを吸引する吸引装置と、前記チャックの表面外周縁に形成され、底面に前記開口部が形成された環状溝と、を備え、前記チャックにてシールリングを把持する際には、前記チャックを開状態として前記開口部を通じて前記環状溝にシールリングを吸着させ、前記環状溝に吸着されたシールリングを所望の位置に組み付ける際には、前記吸引装置による吸引を停止すると共に前記チャックを閉状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シールリングが吸着されるチャックは開閉自在であるため、チャックに吸着されたシールリングを所望の位置に組み付ける際には、吸引装置による吸引を停止すると共にチャックを開閉させることによってシールリングをチャックから外すことができる。したがって、シールリングの組み付けの信頼性が向上すると共に、シールリングを効率良く組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】シールリングが組み付けられるベーンポンプの断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るシールリング組付装置の斜視図であり、チャックが閉じた状態を示す。
図3】本発明の第1実施形態に係るシールリング組付装置の斜視図であり、チャックが閉じた状態を示す。
図4】本発明の第1実施形態に係るシールリング組付装置の斜視図であり、チャックが開いた状態を示す。
図5】本発明の第1実施形態に係るシールリング組付装置の斜視図であり、チャックが開いた状態を示す。
図6】把持部の表面側の斜視図である。
図7】把持部の裏面側の斜視図である。
図8】中間胴の斜視図であり、把持部が結合する側から見た図である。
図9】中間胴の斜視図であり、基部が結合する側から見た図である。
図10】基部の斜視図であり、中間胴が結合する側から見た図である。
図11】基部の斜視図であり、エアシリンダの可動部材が結合する側から見た図である。
図12】チャックが閉じた状態であって、Oリングが環状溝に吸着された状態を示す把持部の平面図である。
図13】チャック21が開いた状態であって、Oリングが環状溝に吸着されていない状態を示す把持部の平面図である。
図14】本発明の第1実施形態に係るシールリング組付装置の構成図である。
図15図1におけるボディの内部を簡略化して示した斜視図である。
図16図15の断面図である。
図17】本発明の第2実施形態に係るシールリング組付装置の斜視図であり、チャックが閉じた状態を示す。
図18】本発明の第2実施形態に係るシールリング組付装置の斜視図であり、チャックが閉じた状態を示す。
図19】本発明の第2実施形態に係るシールリング組付装置の斜視図であり、チャックが開いた状態を示す。
図20】本発明の第2実施形態に係るシールリング組付装置の斜視図であり、チャックが開いた状態を示す。
図21】把持部の表面側の斜視図である。
図22】把持部の裏面側の斜視図である。
図23】胴部の斜視図であり、把持部が結合する側から見た図である。
図24】胴部の斜視図であり、エアシリンダの可動部材が結合する側から見た図である。
図25】チャックが開いた状態であって、Oリングが環状溝に吸着された状態を示す把持部の平面図である。
図26】チャックが閉じた状態であって、Oリングが環状溝に吸着されていない状態を示す把持部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1〜16を参照して、本発明の第1実施形態に係るシールリング組付装置100について説明する。シールリング組付装置100は、シールリングとしてのOリングを所望の位置に組み付ける装置である。
【0014】
まず、図1を参照して、シールリング組付装置100によって組み付けられるOリングについて説明する。図1はベーンポンプ101の断面図である。ベーンポンプ101は、車両に搭載される油圧機器、例えば、パワーステアリング装置や変速機等の油圧供給源として用いられるものである。
【0015】
ベーンポンプ101のボディ1に形成されたポンプ収容凹部1aには、ロータ2、カムリング3、及びサイドプレート4が収容される。ロータ2には駆動軸7が連結され、駆動軸7はボディ1に回転自在に支持される。ポンプ収容凹部1aの底面には、駆動軸7を支持するボス部8が形成される。
【0016】
ロータ2とカムリング3の間に区画されたポンプ室から吐出された作動油は、サイドプレート4に形成された吐出ポート6を通じて高圧室5へ導かれる。高圧室5は、ポンプ収容凹部1aの内周面、ボス部8の外周面、及びサイドプレート4によって区画される。
【0017】
ボス部8の外周面及びポンプ収容凹部1aの内周面には、サイドプレート4の内周縁及び外周縁をそれぞれ支持する段部9,10が形成される。段部9とサイドプレート4の内周縁との間にはOリング11が圧縮して配置され、段部10とサイドプレート4の外周縁との間にはOリング11と比較して大径のOリング12が圧縮して配置される。このように、高圧室5は、小径のOリング11と大径のOリング12とによってシールされている。
【0018】
シールリング組付装置100は、シールリングとしてのOリング11をボス部8の外周面の段部9に組み付ける装置である。次に、図2〜16を参照して、シールリング組付装置100について説明する。
【0019】
図2〜5に示すように、シールリング組付装置100は、Oリング11を把持可能であり複数に分割して形成された開閉自在なチャック21と、チャック21を開閉駆動する駆動機構としてのエアシリンダ22と、チャック21に形成された開口部23を通じてOリング11を吸引する吸引装置としての真空ポンプ24(図14参照)と、を備える。
【0020】
チャック21は、扇形状の3つの爪片21A,21B,21Cからなり、3つの爪片21A,21B,21Cは同一形状である。各爪片21A,21B,21Cの中心角は120度である。チャック21は、各爪片21A,21B,21Cの互いに対向する端面が当接した閉じた状態(図2及び3の状態)では円柱形状となる。
【0021】
エアシリンダ22は、圧縮空気の給排によるピストンの移動に伴って径方向に駆動する3つの可動部材27を備える。各可動部材27はそれぞれ爪片21A,21B,21Cに結合され、爪片21A,21B,21Cは可動部材27の駆動に伴って径方向に移動する。したがって、エアシリンダ22に対して圧縮空気を給排することによって、チャック21が開閉する。図2及び3は、爪片21A,21B,21Cの互いに対向する端面が当接してチャック21が閉じた状態であり、図4及び5は、爪片21A,21B,21Cの互いに対向する端面が離間してチャック21が開いた状態である。
【0022】
各爪片21A,21B,21Cは、Oリング11を把持する把持部31と、エアシリンダ22の可動部材27に結合される基部32と、把持部31と基部32との間に結合され真空ポンプ24に連通する空気通路34が形成された中間胴33と、からなる。
【0023】
図6及び7に示すように、把持部31は中心角が120度の円弧形状である。図6は把持部31の表面側の斜視図であり、図7は把持部31の裏面側の斜視図である。
【0024】
把持部31の表面には、内周縁に沿って円弧状の溝35が形成される。溝35は、底面35aと内周面35bとによって区画され、内側が開放している。底面35aにはOリング11を吸引するための開口部23が周方向に複数形成される。本実施形態では5つの開口部23が形成される。把持部31の裏面には円弧状の円弧溝36が形成され、5つの開口部23は円弧溝36に連通している。
【0025】
また、把持部31には、把持部31と中間胴33の位置決めをする位置決めピンが挿入される2つの位置決め穴31aと、把持部31と中間胴33を結合するボルトが締結される2つの締結穴31bと、が表面と裏面を貫通して形成される。
【0026】
図12及び13に示すように、チャック21の表面の内周縁には、3つの把持部31の溝35によって、Oリング11が吸着される環状溝37が形成される。また、環状溝37の内側には円柱状の中空部38が形成される。
【0027】
図12は、チャック21が閉じた状態であって、Oリング11が環状溝37に吸着された状態を示す把持部31の平面図であり、図13は、チャック21が開いた状態であって、Oリング11が環状溝37に吸着されていない状態を示す把持部31の平面図である。
【0028】
環状溝37は、チャック21が閉じた状態で内周面35bの径がOリング11の外径と略同一に形成され、かつ、径方向の幅がOリング11の線径よりも僅かに小さく形成される。したがって、図12に示すように、チャック21の閉状態では、環状溝37の内周面35bはOリング11の形状を崩さないようにOリング11の外周面に当接すると共に、底面35aの開口部23がOリング11に対峙しOリング11は開口部23を通じて効率良く吸引される。このように、Oリング11は、チャック21の閉状態で、環状溝37の内周面35bに支持されると共に、環状溝37の底面35aに吸着されて把持される。また、環状溝37の高さはOリング11の線径よりも小さく形成される。
【0029】
また、図13に示すように、チャック21は、開く際には、環状溝37の底面35aの開口部23がOリング11から外れる位置まで開く。
【0030】
図8及び9に示すように、中間胴33は、中心角が120度の扇形状である。図8は中間胴33の斜視図であり、把持部31が結合する側から見た図である。図9は中間胴33の斜視図であり、基部32が結合する側から見た図である。
【0031】
中間胴33における把持部31が結合される面40には、把持部31の位置決め穴31aに対応して形成された2つの位置決め穴33aと、把持部31の締結穴31bに対応して形成された2つの締結穴33bとが形成される。把持部31と中間胴33は、位置決め穴31aと位置決め穴33aとに亘って挿入される位置決めピンによって位置決めされ、かつ締結穴31bと締結穴33bとに亘って締結されるボルトによって締結される。
【0032】
空気通路34は、面40に開口する連通口34aを通じて把持部31の円弧溝36に連通し、中間胴33の側面に開口する連通口34bを通じて真空ポンプ24に連通する。このように、空気通路34は、中間胴33の内部をL字型に貫通して円弧溝36に連通する。
【0033】
また、中間胴33における基部32が結合される面41には、中間胴33と基部32の位置決めをする位置決めピンが挿入される2つの位置決め穴33cと、中間胴33と基部32を結合するボルトが締結される2つの締結穴33dと、が形成される。
【0034】
図10及び11に示すように、基部32は、中心角が120度の扇形状である。図10は基部32の斜視図であり、中間胴33が結合する側から見た図である。図11は基部32の斜視図であり、エアシリンダ22の可動部材27が結合する側から見た図である。
【0035】
基部32には、中間胴33の位置決め穴33cに対応して形成された2つの位置決め穴32aと、中間胴33の締結穴33dに対応して形成された2つの締結穴32bとが、表面と裏面を貫通して形成される。基部32と中間胴33は、位置決め穴32aと位置決め穴33cとに亘って挿入される位置決めピンによって位置決めされ、かつ締結穴32bと締結穴33dとに亘って締結されるボルトによって締結される。
【0036】
また、基部32には、基部32とエアシリンダ22の可動部材27を結合するボルトが締結される2つの締結穴32cが表面と裏面を貫通して形成される。各爪片21A,21B,21Cは、基部32を介して可動部材27に結合され、エアシリンダ22に対する圧縮空気の給排による可動部材27の駆動に伴って移動する。
【0037】
図14に示すように、真空ポンプ24は、爪片21A,21B,21C毎に設けられる。各真空ポンプ24は、通路26を通じて各爪片21A,21B,21Cの中間胴33の空気通路34に連通する。空気通路34は、把持部31の円弧溝36を通じて5つの開口部23に連通する。開口部23は、環状に配置されているため、Oリング11を効率良く吸引することができる。なお、爪片21A,21B,21C毎に真空ポンプ24を設けず、1台の真空ポンプ24によってOリング11を吸引するようにしてもよい。
【0038】
シールリング組付装置100には、チャック21からOリング11を外す際に使用される圧縮空気供給源としてのコンプレッサ25も備える。コンプレッサ25から供給される圧縮空気は、通路26、中間胴33の空気通路34、把持部31の円弧溝36、及び開口部23を通じて吐出される。
【0039】
次に、主に図12,13,15,及び16を参照して、シールリング組付装置100によるOリング11の組付方法について説明する。図15は、図1におけるボディ1の内部を簡略化して示した斜視図であり、図16図15の断面図である。なお、以下に示す工程は自動制御によって行われる。
【0040】
チャック21とエアシリンダ22からなる本体ユニット(図1〜4に示すユニット)は搬送装置によって移動自在に構成されている。
【0041】
まず、Oリング11をチャック21で把持する工程が行われる。具体的には、チャック21が閉じた状態で、本体ユニットを図示しないOリング供給装置に移動させ、Oリング供給装置にて供給されるOリング11を環状溝37の内側に位置させると共に、真空ポンプ24によって吸引する。これにより、図12に示すように、環状溝37の内周面35bがOリング11の外周面に当接すると共に、環状溝37の底面35aの開口部23を通じてOリング11が吸引される。このようにして、Oリング11は、チャック21の閉状態で、環状溝37の内周面35bに支持されると共に、環状溝37の底面35aに吸着されて把持される。
【0042】
なお、チャック21が開いた状態で、Oリング供給装置にて供給されるOリング11を環状溝37の内側に位置させた後、エアシリンダ22を駆動することによってチャック21を閉とすると共に、真空ポンプ24によって吸引してOリング11を把持するようにしてもよい。ただ、この場合には、チャック21を閉にする際に、Oリング11がチャック21によって挟み込まれるおそれがある。したがって、チャック21が閉じた状態でOリング11を把持するのが望ましい。
【0043】
なお、チャック21によるOリング11の把持を判定するために、通路26(図14参照)に圧力計を設けるようにしてもよい。Oリング11が環状溝37の底面35aに吸着された場合には、開口部23がOリング11によって閉塞されて通路26の真空度が上昇する。したがって、圧力計にて検出された真空度が所定値に達した場合には、チャック21によるOリング11が把持されたと判定して、次の工程へと移行する。
【0044】
次に、チャック21に把持されたOリング11をボス部8の外周面の段部9に組み付ける工程が行われる。具体的には、本体ユニットをベーンポンプ101のボディ1のポンプ収容凹部1a内に進入させ、チャック21の表面をボス部8に対向させる。そして、チャック21の中空部38内にボス部8が挿入されるように本体ユニットを前進させ、チャック21に把持されたOリング11を段部9上に押し当てる。この状態で、図13に示すように、真空ポンプ24による吸引を停止すると共に、エアシリンダ22を駆動することによってチャック21を開とする。これにより、チャック21からOリング11が外れ、図15及び16に示すように、ボス部8の外周面の段部9にOリング11が組み付けられる。
【0045】
以上のように、真空ポンプ24による吸引を停止すると共にチャック21を開とすることによって、Oリング11はチャック21から確実に外れて段部9へ組み付けられる。
【0046】
なお、Oリング11をチャック21からより確実に外すために、真空ポンプ24による吸引を停止すると共にコンプレッサ25から開口部23を通じてOリング11に向けて圧縮空気を吹き付けるようにしてもよい。
【0047】
以上の第1実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0048】
Oリング11が吸着されるチャック21は開閉自在であるため、チャック21の表面内周縁に形成された環状溝37に吸着されたOリング11を所望の位置に組み付ける際には、真空ポンプ24による吸引を停止すると共にチャック21を開くことによってOリング11をチャック21から外すことができる。したがって、Oリング11の組み付けの信頼性が向上すると共に、Oリング11を効率良く組み付けることができる。
<第2実施形態>
次に、図17〜26を参照して、本発明の第2実施形態に係るシールリング組付装置200について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
第2実施形態に係るシールリング組付装置200は、シールリングとしてのOリング12をポンプ収容凹部1aの内周面の段部10(図1,15,及び16参照)に組み付ける装置である。
【0050】
本第2実施形態に係るシールリング組付装置200は、Oリング12を把持するチャック21の形状が上記第1実施形態と異なる。
【0051】
図17〜20に示すように、Oリング12が吸着される環状溝37は、チャック21の表面の外周縁に形成される。図17及び18はチャック21が閉じた状態を示し、図19及び20はチャック21が開いた状態を示す。
【0052】
図21及び22に示すように、把持部31の表面には、外周縁に沿って円弧状の溝50が形成される。図21は把持部31の表面側の斜視図であり、図22は把持部31の裏面側の斜視図である。
【0053】
溝50は、底面50aと外周面50bとによって区画され、外側が開放している。底面50aにはOリング12を吸引するための開口部23が周方向に複数形成される。本実施形態では7つの開口部23が形成される。把持部31の裏面には円弧状の円弧溝36が形成され、7つの開口部23は円弧溝36に連通している。開口部23の数が上記第1実施形態と比較して多いのは、本実施形態のチャック21は、上記第1実施形態と比較して径が大きなOリング12を把持するためである。
【0054】
環状溝37は、3つの把持部31の溝50によって構成される。
【0055】
図25は、チャック21が開いた状態であって、Oリング12が環状溝37に吸着された状態を示す把持部31の平面図であり、図26は、チャック21が閉じた状態であって、Oリング12が環状溝37に吸着されていない状態を示す把持部31の平面図である。
【0056】
環状溝37は、チャック21が開いた状態で、外周面50bの径がOリング12の内径と略同一に形成され、かつ、径方向の幅がOリング12の線径よりも僅かに小さく形成される。したがって、図25に示すように、チャック21の開状態では、環状溝37の外周面50bはOリング12の形状を崩さないようにOリング12の内周面に当接すると共に、底面50aの開口部23がOリング12に対峙しOリング12は開口部23を通じて効率良く吸引される。このように、Oリング12は、チャック21の開状態で、環状溝37の外周面50bに支持されると共に、環状溝37の底面50aに吸着されて把持される。また、環状溝37の高さはOリング12の線径よりも小さく形成される。
【0057】
また、図26に示すように、チャック21は、閉じる際には、環状溝37の底面50aの開口部23がOリング12から外れる位置まで閉じる。
【0058】
図17〜20に示すように、各爪片21A,21B,21Cは、Oリング12を把持する把持部31と、エアシリンダ22の可動部材27に結合されると共に真空ポンプ24に連通する空気通路34が形成された胴部55と、からなる。
【0059】
胴部55は、上記第1実施形態における基部32と中間胴33の双方の機能を有する部材である。つまり、上記第1実施形態では、各爪片21A,21B,21Cは3つの部材で構成されていたが、本第2実施形態では、各爪片21A,21B,21Cは2つの部材で構成される。
【0060】
図23及び24に示すように、胴部55は、中心角が120度の扇形状である。図23は胴部55の斜視図であり、把持部31が結合する側から見た図である。図24は胴部55の斜視図であり、エアシリンダ22の可動部材27が結合する側から見た図である。
【0061】
胴部55における把持部31が結合される面56には、把持部31の位置決め穴31aに対応して形成された2つの位置決め穴55aと、把持部31の締結穴31bに対応して形成された2つの締結穴55bとが形成される。把持部31と胴部55は、位置決め穴31aと位置決め穴55aとに亘って挿入される位置決めピンによって位置決めされ、かつ締結穴31bと締結穴55bとに亘って締結されるボルトによって締結される。
【0062】
空気通路34は、面56に開口する連通口34aを通じて把持部31の円弧溝36に連通し、胴部55の側面に開口する連通口34bを通じて真空ポンプ24に連通する。このように、空気通路34は、胴部55の内部をL字型に貫通して円弧溝36に連通する。空気通路34は胴部55に2つ形成される。これは、本実施形態では、Oリング12を吸引するための開口部23が上記第1実施形態と比較して多いためである。
【0063】
また、胴部55には、胴部55とエアシリンダ22の可動部材27を結合するボルトが締結される2つの締結穴55cが貫通して形成される。各爪片21A,21B,21Cは、胴部55を介して可動部材27に結合され、エアシリンダ22に対する圧縮空気の給排による可動部材27の駆動に伴って移動する。
【0064】
次に、主に図15,16,25,及び26を参照して、シールリング組付装置200によるOリング12の組付方法について説明する。
【0065】
まず、Oリング12をチャック21で把持する工程が行われる。具体的には、本体ユニット(図17〜20に示すユニット)を図示しないOリング供給装置に移動させ、図26に示すように、チャック21を閉状態とし、Oリング供給装置にて供給されるOリング12を環状溝37の外側に位置させる。
【0066】
次に、真空ポンプ24によって吸引すると共に、エアシリンダ22を駆動することによってチャック21を開とする。これにより、図25に示すように、環状溝37の外周面50bがOリング12の内周面に当接すると共に、環状溝37の底面50aの開口部23を通じてOリング12が吸引される。このようにして、Oリング12は、チャック21の開状態で、環状溝37の外周面50bに支持されると共に、環状溝37の底面50aに吸着されて把持される。
【0067】
次に、チャック21に把持されたOリング12をポンプ収容凹部1aの内周面の段部10に組み付ける工程が行われる。具体的には、本体ユニットをチャック21の表面からポンプ収容凹部1a内に進入させ、チャック21に把持されたOリング12を段部10上に押し当てる。この状態で、図26に示すように、真空ポンプ24による吸引を停止すると共に、エアシリンダ22を駆動することによってチャック21を閉とする。これにより、チャック21からOリング12が外れ、図15及び16に示すように、ポンプ収容凹部1aの内周面の段部10にOリング12が組み付けられる。
【0068】
以上のように、真空ポンプ24による吸引を停止すると共にチャック21を閉とすることによって、Oリング12はチャック21から確実に外れて段部10へ組み付けられる。
【0069】
なお、Oリング12をチャック21からより確実に外すために、真空ポンプ24による吸引を停止すると共にコンプレッサ25から開口部23を通じてOリング12に向けて圧縮空気を吹き付けるようにしてもよい。
【0070】
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0071】
Oリング12が吸着されるチャック21は開閉自在であるため、チャック21の表面外周縁に形成された環状溝37に吸着されたOリング12を所望の位置に組み付ける際には、真空ポンプ24による吸引を停止すると共にチャック21を閉じることによってOリング12をチャック21から外すことができる。したがって、Oリング12の組み付けの信頼性が向上すると共に、Oリング12を効率良く組み付けることができる。
【0072】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0073】
例えば、上記実施形態では、ベーンポンプ101の高圧室5をシールするOリング11,12を組み付ける場合について説明したが、シールリングが組み付けられる装置及び位置は上記実施形態に限定されるものではない。
【0074】
また、シールリングの形状は、図に示すような真円に限定されるものではない。シールリングの形状は楕円、オーバル形状などの異形リング状であってもよい。その場合、チャック21の形状をシールリングの形状に合わせるようにすればよい。
【0075】
また、上記実施形態では、チャック21が3つの爪片21A,21B,21Cからなると説明した。しかし、爪片の個数は3つに限定されるものではなく、チャック21を2つの爪片にて構成するようにしてもよい。その場合、1つ爪片の中心角は180度となる。
【符号の説明】
【0076】
100,200 シールリング組付装置
1a ポンプ収容凹部
8 ボス部
9,10 段部
11,12 Oリング(シールリング)
21 チャック
21A,21B,21C 爪片
22 エアシリンダ
23 開口部
24 真空ポンプ(吸引装置)
25 コンプレッサ(圧縮空気供給源)
31 把持部
34 空気通路
35 溝
35a 底面
35b 内周面
36 円弧溝
37 環状溝
38 中空部
50 溝
50a 底面
50b 外周面
図1
図2
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図5
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