特許第5775862号(P5775862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5775862微細藻類の培養方法及び微細藻類の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775862
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】微細藻類の培養方法及び微細藻類の使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/12 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   C12N1/12 A
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-271509(P2012-271509)
(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公開番号】特開2014-54240(P2014-54240A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2014年4月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-178762(P2012-178762)
(32)【優先日】2012年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】赤司 昭
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 潤
(72)【発明者】
【氏名】濱田 武志
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 圭
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 円
(72)【発明者】
【氏名】大開 健司
【審査官】 上條 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−276850(JP,A)
【文献】 特開平03−172171(JP,A)
【文献】 特開2002−281908(JP,A)
【文献】 J Inst Brew,2010年,Vol.116, No.3,p.285-292
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/12
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーグレナ(Euglena)属に属する微細藻類を培養する微細藻類の培養方法であって、
少なくともビールを含み且つpHが3.0〜5.5である液体中で前記微細藻類を培養し、
前記微細藻類に光を照射して光合成を行わせる期間と、前記光を照射せず前記微細藻類の光合成を抑える期間と、を繰り返し交互に設ける、微細藻類の培養方法。
【請求項2】
麦汁、清酒粕、焼酎粕、酵母、酵母自己消化物、及び廃糖蜜からなる群より選択された少なくとも1種と、前記ビールとを含む液体中で前記微細藻類を培養する請求項1記載の微細藻類の培養方法。
【請求項3】
前記酵母自己消化物と、前記ビールとを含む液体中で前記微細藻類を培養する、請求項2記載の微細藻類の培養方法。
【請求項4】
酸素及び二酸化炭素を前記液体中に供給しつつ前記微細藻類を培養する請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項5】
前記ビールを作る施設において前記微細藻類を培養し、且つ、該施設において生じる前記ビールを含む液体中で前記微細藻類を培養する請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項6】
前記ビールを作る施設において前記微細藻類を培養し、且つ、該施設において生じる前記ビールと、該施設において生じる前記麦汁、前記酵母、又は前記酵母自己消化物の少なくともいずれか1種とを含む液体中で前記微細藻類を培養する請求項1〜5のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項7】
前記ビールを2〜10倍に希釈した前記液体中で前記微細藻類を培養する、請求項1〜のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項8】
前記ビールに含まれていたエタノールが0.5容量%以上3.0容量%以下となるように前記液体が前記ビールを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法によって得られたユーグレナ(Euglena)属に属する微細藻類を、該培養方法を実施した施設にて少なくとも燃料として使用することを特徴とする微細藻類の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類の培養方法及び微細藻類の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細藻類の培養方法としては、様々なものが知られており、例えば、窒素分を含む液体中で微細藻類を培養する方法が知られている。
【0003】
この種の微細藻類の培養方法においては、微細藻類を増殖させ、微細藻類の細胞内に燃料、飼料や健康食品などの原料となる脂質、又は、タンパク質やビタミン等の有価物を貯蔵させることができる。そして、貯蔵した有価物を利用して燃料や食品等に利用することができる。
【0004】
この種の微細藻類の培養方法としては、例えば、家庭排水等を下水処理した下水処理水を含む液体中で微細藻類を培養する方法が知られている(特許文献1)。
斯かる微細藻類の培養方法によれば、下水処理水が窒素分を含むため、微細藻類を増殖させることができる。さらに、微細藻類が貯蔵した炭化水素などの有価物を利用することができる。しかも、培養のために用いた下水処理水の水質を改良することができる。
【0005】
しかしながら、斯かる微細藻類の培養方法においては、微細藻類を必ずしも効率的に増殖させることができないという問題がある。微細藻類が効率的に増殖しないと、細胞内における有価物の貯蔵量が必ずしも十分なものとならず、利用できる有価物の量が比較的少なくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−301097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点等に鑑み、微細藻類を効率的に増殖させることができる微細藻類の培養方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明に係る微細藻類の培養方法は、ユーグレナ(Euglena)属に属する微細藻類を培養する微細藻類の培養方法であって、
少なくともビールを含み且つpHが3.0〜5.5である液体中で前記微細藻類を培養し、
前記微細藻類に光を照射して光合成を行わせる期間と、前記光を照射せず前記微細藻類の光合成を抑える期間と、を繰り返し交互に設けることを特徴とする。
【0009】
上記構成からなる微細藻類の培養方法においては、少なくともビールを含み且つpHが3.0〜5.5である液体中でユーグレナ(Euglena)属に属する微細藻類を培養し、該微細藻類に光を照射して光合成を行わせる期間と、前記光を照射せず前記微細藻類の光合成を抑える期間と、を繰り返し交互に設けるため、ユーグレナ(Euglena)属に属する微細藻類を効率的に増殖させることができる。
【0010】
本発明に係る微細藻類の培養方法においては、麦汁、清酒粕、焼酎粕、酵母、酵母自己消化物、及び廃糖蜜からなる群より選択された少なくとも1種と、前記ビールとを含む液体中でユーグレナ(Euglena)属に属する微細藻類を培養することが好ましい。
【0011】
本発明に係る微細藻類の培養方法においては、前記酵母自己消化物と、前記ビールとを含む液体中で前記微細藻類を培養することが好ましい。
【0012】
本発明に係る微細藻類の培養方法においては、酸素及び二酸化炭素を前記液体中に供給しつつ前記微細藻類を培養することが好ましい。
【0013】
本発明に係る微細藻類の培養方法においては、前ビールを作る施設において前記微細藻類を培養し、且つ、該施設において生じるビールを含む液体中で前記微細藻類を培養することが好ましい。
【0014】
本発明に係る微細藻類の培養方法においては、前ビールを作る施設において前記微細藻類を培養し、且つ、該施設において生じるビールと、該施設において生じる麦汁、酵母、又は酵母自己消化物の少なくともいずれか1種とを含む液体中で前記微細藻類を培養することが好ましい。
【0015】
本発明に係る微細藻類の培養方法においては、前記ビールを2〜10倍に希釈した前記液体中で前記微細藻類を培養することが好ましい。
【0016】
本発明に係る微細藻類の培養方法においては、前記ビールに含まれていたエタノールが0.5容量%以上3.0容量%以下となるように前記液体が前記ビールを含むことが好ましい。
【0017】
本発明に係る微細藻類の使用方法は、前記微細藻類の培養方法によって得られたユーグレナ(Euglena)属に属する微細藻類を、該培養方法を実施した施設にて少なくとも燃料として使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の微細藻類の培養方法は、微細藻類を効率的に増殖させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】微細藻類の培養方法において用いる装置類の概要を表した概略図。
図2】微細藻類の培養方法において用いる装置類の概要、及び、他の装置類の概要を表した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る微細藻類の培養方法の一実施形態について詳しく説明する。
【0021】
本実施形態の微細藻類の培養方法は、少なくとも醸造酒を含む液体中で微細藻類を培養するものである。
即ち、前記微細藻類の培養方法は、微細藻類の増殖を促進する栄養素が含有された醸造酒を少なくとも含む液体中で微細藻類を培養するものである。
【0022】
本実施形態の微細藻類の培養方法においては、麦汁、清酒粕、焼酎粕、酵母、酵母自己消化物、及び廃糖蜜からなる群より選択された少なくとも1種と、醸造酒と水とを含む液体中で微細藻類を培養することが好ましい。
即ち、前記微細藻類の培養方法においては、微細藻類の増殖を促進する栄養素を含むものとして、麦汁、清酒粕、焼酎粕、酵母、酵母自己消化物、及び廃糖蜜からなる群より選択された少なくとも1種と、醸造酒とを採用し、これらと水とを含む液体中で微細藻類を培養することが好ましい。
【0023】
前記栄養素としては、無機栄養素、又は有機栄養素などが挙げられる。
【0024】
前記無機栄養素としては、例えば、窒素含有無機化合物、リン含有無機化合物などが挙げられる。また、前記無機栄養素としては、例えば、カリウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、亜鉛イオン、銅イオン、モリブテンイオン、ニッケルイオンなどが挙げられる。
一方、前記有機栄養素としては、例えば、ブドウ糖(グルコース)などの単糖類、エタノール、又はビタミン類などが挙げられる。
【0025】
前記微細藻類は、水中を浮遊しつつ生息する生物である。また、前記微細藻類は、昆布やワカメと異なり、通常、単細胞性であり、大きさが概ね数マイクロメートルから数十マイクロメートルの微小な藻類である。
前記微細藻類としては、光合成によって増殖する光独立栄養微細藻類、ブドウ糖などの有機性栄養素を栄養源として利用して増殖する従属栄養微細藻類等が挙げられる。
前記光独立栄養微細藻類としては、後述するユーグレナ属に属する生物のように光合成することができ且つ有機性栄養素を栄養源として利用できる生物もある。
【0026】
前記微細藻類としては、ユーグレナ(Euglena)属に属する生物、クロレラ(Chlorella)属に属する生物、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属に属する生物、オーキセノクロレラ(Auxenochlorella)属に属する生物、ボツリオコッカス(Botryococcus)属に属する生物、ナンノクロリス(Nannochloris)属に属する生物、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する生物、ネオクロリス(Neochloris)属に属する生物、シュードコリシスチス(Pseudochoricystis)属に属する生物、セネデスムス(Scenedesmus)属に属する生物、シゾキトリウム(Schizochytorium)属に属する生物からなる群より選択された少なくとも1種が好ましい。
【0027】
前記光独立栄養微細藻類としては、ユーグレナ(Euglena)属に属する生物、クロレラ(Chlorella)属に属する生物、オーキセノクロレラ(Auxenochlorella)属に属する生物、ボツリオコッカス(Botryococcus)属に属する生物、ナンノクロリス(Nannochloris)属に属する生物、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する生物、ネオクロリス(Neochloris)属に属する生物、シュードコリシスチス(Pseudochoricystis)属に属する生物、セネデスムス(Scenedesmus)属に属する生物からなる群より選択された少なくとも1種が好ましい。
【0028】
前記従属栄養微細藻類としては、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属に属する生物、又は、シゾキトリウム(Schizochytorium)属に属する生物が好ましい。
【0029】
前記ユーグレナ(Euglena)属に属する生物としては、例えば、Euglena gracilisEuglena longaEuglena caudataEuglena oxyurisEuglena tripterisEuglena proximaEuglena viridisEuglena sociabilisEuglena ehrenbergiiEuglena desesEuglena pisciformisEuglena spirogyraEuglena acusEuglena geniculataEuglena intermediaEuglena mutabilisEuglena sanguineaEuglena stellataEuglena terricolaEuglena klebsiEuglena rubra、又は、Euglena cyclopicolaなどが挙げられる。
前記Euglena gracilisとしては、例えば、Euglena gracilis NIES-48(後述する独立行政法人国立環境研究所微生物系統保存施設における保管株)などが挙げられる。
【0030】
前記クロレラ(Chlorella)属に属する生物としては、例えば、Chlorella vulgarisChlorella pyrenoidosa、又は、Chlorella sorocinianaなどが挙げられる。
前記Chlorella sorocinianaとしては、例えば、Chlorella sorociniana NIES-2169(後述する独立行政法人国立環境研究所微生物系統保存施設における保管株)などが挙げられる。
【0031】
前記オーキセノクロレラ(Auxenochlorella)属に属する生物としては、例えば、Auxenochlorella protothecoidesなどが挙げられる。
【0032】
前記ボツリオコッカス(Botryococcus)属に属する生物としては、例えば、Botryococcus brauniiなどが挙げられる。
【0033】
前記ナンノクロリス(Nannochloris)属に属する生物としては、例えば、Nannochloris bacillarisNannochloris normandinaeなどが挙げられる。
【0034】
前記ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する生物としては、例えば、Nannochloropsis oculataなどが挙げられる。
【0035】
前記ネオクロリス(Neochloris)属に属する生物としては、例えば、Neochloris aquaticaNeochloris cohaerensNeochloris conjunctaNeochloris gelatinosaNeochloris pseudostigmataNeochloris pseudostigmaticaNeochloris pyrenoidosaNeochloris terrestrisNeochloris texensisNeochloris vigensisNeochloris wimmeriNeochloris oleoabundansなどが挙げられる。
【0036】
前記シュードコリシスチス(Pseudochoricystis)属に属する生物としては、例えば、Pseudochoricystis ellipsoideaなどが挙げられる。
【0037】
前記セネデスムス(Scenedesmus)属に属する生物としては、例えば、Scenedesmus ovaltermusScenedesmus disciformisScenedesmus acumunatusScenedesmus dimorphusなどが挙げられる。
【0038】
前記オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属に属する生物としては、例えば、Aurantiochytrium limacinum、又は、Aurantiochytrium mangroveiなどが挙げられる。
【0039】
前記シゾキトリウム(Schizochytorium)属に属する生物としては、例えば、Schizochytrium aggregatumなどが挙げられる。
【0040】
上記の微細藻類は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(郵便番号292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)、独立行政法人国立環境研究所微生物系統保存施設(郵便番号305-8506 茨城県つくば市小野川16-2)、又は、The Culture Collection of Algae at the University of Texas at Austin, USA(http://web.biosci.utexas.edu/utex/default.aspx)などから容易に入手される。
【0041】
前記微細藻類としては、バイオディーゼルの原料となるワックスエステルを大量に産生できるという点、ビタミン、カロテノイド、栄養価の高いタンパク質、パラミロンなどの有価物を多く含んでいるという点、大量に培養しやすいという点で、前記ユーグレナ(Euglena)属に属する生物を用いる
【0042】
前記醸造酒は、糖分を含む原料を酵母によってアルコール発酵させて作られたものであり、蒸留処理が施されていないものである。即ち、糖分を含む原料を酵母によってアルコール発酵させたものから固形分を除いた蒸留処理が施されていない液状のものである。
なお、前記糖分とは、単糖類又は二糖類を意味する。
【0043】
前記醸造酒は、蒸留処理を行わず、酵母によるアルコール発酵代謝物を含んでいるため、エタノール、水以外に、酵母が産生した様々な成分も含んでいる。
具体的には、前記醸造酒は、例えば、ブドウ糖(グルコース)などの糖類、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、リン、カリウムなどを含んでいる。前記醸造酒におけるこれらの成分は、培養における微細藻類の増殖を促進し得る。
【0044】
前記醸造酒としては、清酒、ワイン、ビール、穀物を原料とした醸造酒、マメを原料とした醸造酒、イモを原料とした醸造酒、又は、糖を原料とした醸造酒等が挙げられる。
前記醸造酒としては、ビール、清酒、及びワインからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0045】
前記ビールは、少なくとも麦芽に含まれるデンプンを麦芽内の酵素によって糖化させて糖分を産生させ、さらにこの糖分をビール酵母によってアルコール発酵させて作られたものである。即ち、原料として少なくとも麦芽を用いて上記のごとく作られたものであれば、他の原料をさらに用いたものであっても、本明細書におけるビールに含まれる。酵母としては、通常、ビール酵母が用いられる。
前記麦芽としては、通常、大麦の麦芽が用いられる。
【0046】
なお、前記ビールとしては、例えば、酒税法によって分類されるいわゆるビール、発泡酒、その他の発泡性酒類(その他の醸造酒、リキュールといったいわゆる第3のビール)と称されるものが挙げられる。これらの前記ビールは、アルコール発酵され得る原料を発酵させたものを用いて作られている。
なお、酒税法による分類において、いわゆるビールは、麦芽、ホップ、及び水を原料として発酵させたもの、又は、麦芽、ホップ、及び水と、麦、米、トウモロコシ、コウリャン、バレイショ、デンプン、又は糖類等とを原料として発酵させたものであって、アルコール分が20度未満であり、麦芽の使用率が66.7%(3分の2)以上のものを指す。酒税法による分類において、発泡酒は、麦芽や麦を原料の一部とし発泡性を有するものであって、アルコール分が20度未満であり麦芽の使用率が66.7%未満のものを指す。また、いわゆる第3のビール(新ジャンル)は、酒税法分類におけるいわゆるビール及び発泡酒以外のものであって、発泡性を有しアルコール分が10度未満のものである。いわゆる第3のビールは、酒税法分類において、その他の発泡性酒類に分類され、該第3のビールとしては、糖類、ホップ、水等を原料として用いたもの、又は、前記発泡酒にスピリッツを加えたもの等が挙げられる。これらのいわゆるビール、発泡酒、その他の発泡性酒類は、醸造酒として前記微細藻類の培養方法において用いることができる。
【0047】
前記清酒(日本酒)は、米に含まれるデンプンを麹によって糖化させて糖分を産生させ、さらにこの糖分を酵母によってアルコール発酵させて作られたものである。酵母としては、通常、清酒酵母が用いられる。
前記麹としては、通常、米麹が用いられる。
【0048】
前記ワインは、少なくともブドウ果汁を酵母によってアルコール発酵させて作られたものである。酵母としては、通常、ワイン酵母が用いられる。
ブドウ果汁には、ブドウ糖などの糖分が含まれており、ブドウ果汁における糖分は、酵母によるアルコール発酵によってエタノールへと変化する。
前記ワインとしては、例えば、赤ワイン、白ワイン等が挙げられる。
【0049】
前記穀物を原料とした醸造酒としては、例えば、トウモロコシ、コウリャンなどの穀物を原料として、該原料に含まれる多糖類を糖化した糖分を酵母によってアルコール発酵させて作られたものが挙げられる。
【0050】
前記マメを原料とした醸造酒としては、例えば、ダイズ、アズキ、リョクトウ、インゲンマメ、ラッカセイ、エンドウ、又はソラマメなどを原料として、該原料に含まれる多糖類が糖化された糖分を酵母によってアルコール発酵させて作られたものが挙げられる。
【0051】
前記イモを原料とした醸造酒としては、例えば、ジャガイモ、サツマイモなどを原料として、該原料に含まれる多糖類が糖化された糖分を酵母によってアルコール発酵させて作られたものが挙げられる。
【0052】
前記糖を原料とした醸造酒としては、例えば、サトウキビやテンサイの絞汁を原料として、該原料に含まれるショ糖を酵母によってアルコール発酵させて作られたものが挙げられる。
【0053】
前記培養方法においては、醸造酒に含まれていたエタノールが0.5容量%以上となるように前記液体が前記醸造酒を含んでいることが好ましく、エタノールが1.0容量%を超えるように前記液体が前記醸造酒を含んでいることが好ましい。
醸造酒に含まれていたエタノールが0.5容量%以上となるように前記液体が前記醸造酒を含んでいることにより、微細藻類の増殖がより優れたものになるという利点がある。
特に、醸造酒として清酒を用いるときには、清酒に含まれていたエタノールが1.0容量%を超えるように前記液体が前記清酒を含んでいることが好ましい。清酒由来のエタノールが1.0容量%を超えるように前記液体が前記清酒を含んでいることにより、微細藻類が利用できる有機栄養素をより確実に液体中に存在させることができるという利点がある。
【0054】
一方、前記培養方法においては、醸造酒に含まれていたエタノールが3.0容量%以下となるように前記液体が前記醸造酒を含んでいることが好ましい。醸造酒に含まれていたエタノールが3.0容量%以下となるように前記液体が前記醸造酒を含んでいることにより、エタノールによって微細藻類の増殖が阻害されることがより抑制されるという利点がある。
【0055】
上記のように、本実施形態の微細藻類の培養方法においては、少なくとも醸造酒を含む液体中で微細藻類を培養するため、醸造酒に含まれるエタノール、タンパク質、アミノ酸、ブドウ糖(グルコース)などの糖類、ビタミンといった有機栄養素、又は、リン、カリウムなどの無機栄養素によって、微細藻類を効率的に増殖させることができる。
【0056】
本実施形態の培養方法において用い得る前記麦汁は、麦芽を水に浸し麦芽に含まれるデンプンを麦芽内の酵素によって糖化させることにより生じた液状物である。麦汁に含まれる糖分をビール酵母によってアルコール発酵させると、前記ビールを作ることができる。
【0057】
前記清酒粕は、前記清酒を作る過程で生じたもろみ中の固形分である。即ち、このもろみから固形分を除いたものが前記清酒となる。
前記清酒粕には、ブドウ糖(グルコース)などの糖類、タンパク質、アミノ酸、リン、カリウム、鉄、マグネシウムなどの成分が含まれている。
【0058】
前記焼酎粕は、穀物、芋、又は黒糖を酵母によってアルコール発酵することによって生じたもろみを蒸留処理した後の残留物である。
前記焼酎粕の原料となる穀物としては、例えば、コメ、オオムギやコムギなどのムギ、ソバ等が挙げられる。
前記焼酎粕には、タンパク質、アミノ酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、リン、カリウム、ビタミンなどの成分が含まれている。
【0059】
前記酵母は、真核生物の1種であって単細胞性であり運動性がなく細胞壁を有し光合成能がない従属栄養生物である。
【0060】
前記酵母は、通常、アルコール発酵を行うことができる。
前記酵母としては、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属に属するものが挙げられ、具体的には、Saccaromyces cerebisiae等が挙げられる。
また、前記酵母としては、用途に応じて、いわゆる清酒酵母、いわゆるワイン酵母、又は、いわゆるビール酵母などが挙げられる。
【0061】
前記酵母としては、例えば、熱水と接触させて細胞壁を破壊したもの、又は、酵素処理によって細胞壁を破壊したもの等も用いることができる。
【0062】
前記酵母自己消化物(以下、酵母エキスともいう)は、前記酵母が自己消化することにより生じたものである。即ち、酵母が有する酵素を利用して、酵母を構成する成分を分解することにより生じたものである。
前記酵母の自己消化は、例えば、糖類などの有機栄養素がない条件下に酵母をおくことにより起こすことができる。
前記酵母自己消化物には、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、リン、カリウムなどの成分が含まれている。
前記酵母自己消化物を液体に配合する場合、液体における酵母自己消化物の量は、より高い濃度でなくとも十分に微細藻類の増殖を促進できるという点で、0.2容量%以下であることが好ましく、0.1容量%以下であることがより好ましい。
【0063】
前記廃糖蜜は、サトウキビ又はテンサイの搾汁にショ糖を取り出す処理を施した後の残分である。
前記廃糖蜜は、ショ糖、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、カリウム等を含んでいる。
【0064】
さらに、本実施形態の微細藻類の培養方法においては、微細藻類に光を照射することにより、光合成可能な光独立栄養微細藻類に光合成をさせることができる。即ち、前記培養方法においては、醸造酒に含まれていた栄養素を利用させて微細藻類を増殖させつつ、微細藻類に光合成を行わせることができる。
前記培養方法において微細藻類に光を照射すると、光合成可能な光独立栄養微細藻類は、光合成によって二酸化炭素を細胞内に取り込んで炭化水素や糖類などを合成しつつ増殖し得ると同時に、液体中の有機栄養素(例えば醸造酒に含まれていたタンパク質やアミノ酸等)を栄養源として利用しつつ増殖し得る。
【0065】
前記培養方法において微細藻類に照射される光は、微細藻類に光合成をさせるものであれば、特に限定されず、該光としては、例えば、太陽からの自然光、又は、照明からの光などの人工光等が採用される。
【0066】
前記培養方法においては、醸造酒を含んだ液体中で微細藻類を増殖させつつ、微細藻類に光を照射する期間と、光を照射しない期間とを交互に設ける
即ち、前記培養方法においては、微細藻類に光を照射して光合成を行わせつつ微細藻類を増殖させる期間と、暗条件下にて光合成を抑制しつつ微細藻類を増殖させる期間とを繰り返し交互に設ける
【0067】
前記培養方法において光を照射する期間は、特に限定されず、通常、日光が出ている昼の時間に相当する8時間〜15時間である。また、微細藻類の光合成を実質的に行わせない暗条件の期間は、通常、日光が出ていない夜の時間に相当する9時間〜16時間である。これらの期間は、状況や目的に応じて変化させることができる。
なお、前記培養方法においては、微細藻類に対して1日あたり24時間光を照射し続けてもよい。即ち、培養において微細藻類に光合成をさせ続けてもよい。
【0068】
前記培養方法において照射する光は、明るさが特に限定されるものではないが、特に微細藻類としてユーグレナ属に属する生物を培養する場合、50μmol/m2/s〜200μmol/m2/sの強度であることが好ましい。
光の強度が50μmol/m2/s以上であることにより、光合成をより促すことができるという利点がある。また、光の強度が200μmol/m2/s以下であることにより、光による増殖阻害をより確実に抑制できるという利点がある。
【0069】
一方、前記培養方法においては、微細藻類に光を照射しない状態で、光合成可能な光独立栄養微細藻類の光合成を抑制しつつ微細藻類を増殖させてもよい。即ち、暗い条件下で微細藻類を増殖させてもよい。
【0070】
前記培養方法においては、微細藻類として光合成可能な光独立栄養微細藻類を採用するときには、微細藻類の増殖をより促進できるという点で、微細藻類に光を照射することが好ましい。
【0071】
具体的には、微細藻類としてユーグレナ(Euglena)属に属する生物を採用したときには、前記培養方法においては、光が照射される条件下では、ユーグレナ(Euglena)属生物が増殖しつつ、光合成によって二酸化炭素から有機化合物(多糖類や脂質等)を合成し、該有機化合物を細胞内に貯める。一方、光が照射されない暗条件下では、ユーグレナ(Euglena)属生物が増殖しつつ、液体中の有機栄養素から有機化合物(多糖類や脂質等)を合成して該有機化合物を細胞内に貯蔵する。有機化合物を貯蔵したユーグレナ(Euglena)属生物は、例えば、回収されて、直接的に有価物として利用され得る。
【0072】
前記培養方法における培養温度は、微細藻類が増殖できる温度であれば、特に限定されない。該培養温度(液体の温度)としては、具体的には例えば、20℃〜35℃が採用される。
【0073】
前記培養方法における液体のpHは、微細藻類が増殖できるpHであれば、特に限定されない。該pHとしては、ユーグレナ(Euglena)属生物を培養する場合には3.0〜5.5が採用される。
なお、液体のpHを調整するためには、塩酸のような無機酸を液体に添加しても良く、酢酸のような有機酸を液体に添加してもよい。また、無機酸と有機酸とを組み合わせて用いても良い。有機酸を液体に添加することにより、微細藻類が該有機酸を有機栄養素として利用し増殖することができる。
【0074】
前記培養方法においては、例えば図1に示すように、前記微細藻類と該微細藻類を培養するための液体Aとを収容する培養槽1を用いることができる。また、前記醸造酒と少なくとも水とを混合した混合液を調製する調製タンク2を用いることができる。
【0075】
前記培養槽1は、撹拌装置(図示せず)を備え、微細藻類と液体Aとを槽内にて撹拌するように構成されている。
前記培養槽1は、内部に収容する微細藻類の光合成を促進させるべく、上方から照射される光Bが液体Aを透過して底部にまで届くように、比較的深さが浅く形成されていてもよい。
一方で、前記培養槽1は、微細藻類の光合成を抑制し従属栄養培養のみによって微細藻類を培養するときには、微細藻類の酸素呼吸用の酸素を液体A中に溶け込みやすくするために、比較的深く形成されていてもよい。
【0076】
前記培養槽1は、酸素又は二酸化炭素の少なくとも一方を含むガスを、内部に収容した液体Aに供給するように構成されていてもよい。
【0077】
なお、前記液体Aは、通常、水を含む。また、前記培養槽1に収容される前記液体Aの大部分は、通常、水である。
【0078】
前記調製タンク2は、培養槽1に収容された液体Aが適当量の醸造酒と、麦汁、清酒粕、焼酎粕、酵母、酵母自己消化物、又は廃糖蜜とを含むように、醸造酒、麦汁、清酒粕、焼酎粕、酵母、酵母自己消化物、又は廃糖蜜と水とを混合したものを培養槽1内へ供給するように構成されている。
【0079】
即ち、前記培養方法においては、図1に示すように、調製タンク2から、醸造酒と、麦汁、清酒粕、焼酎粕、酵母、酵母自己消化物、又は廃糖蜜とを培養槽1へ供給し、培養槽1中の液体Aにおいて微細藻類を増殖させる。
【0080】
前記培養槽1は、図1に示すように、収容する液体A中の微細藻類に光Bが照射されるように構成されている。
照射する光Bは、微細藻類に光合成をさせるものであれば、特に限定されず、該光Bとしては、例えば、上述したように、太陽からの自然光、又は、照明からの光などの人工光等が採用される。
【0081】
本実施形態の培養方法においては、微細藻類の酸素呼吸を維持させるべく、液体Aに酸素を含むガスを供給することができる。また、前記培養方法においては、光合成可能な光独立栄養微細藻類の光合成を促すべく、液体Aに二酸化炭素を含むガスを供給することができる。
斯かるガスの供給は、前記培養槽1に収容された液体Aを曝気すること、又は、液体Aを撹拌することなどにより行うことができる。
【0082】
詳しくは、前記培養方法においては、微細藻類に呼吸用の酸素を供給すべく、例えば空気によって液体Aを曝気することができる。また、前記培養方法においては、微細藻類の光合成を促進させるべく、例えば、二酸化炭素を比較的多く含む排気ガスなどによって液体Aを曝気することができる。
【0083】
前記培養方法においては、培養槽1中の液体Aに常にガスを供給してもよく、暗条件下において微細藻類を培養するときのみ培養槽1中の液体Aにガスを供給してもよい。
なお、前記培養槽1中の液体Aへガスを供給する手段としては、例えば、曝気管を利用したもの、酸素や二酸化炭素を液体A中に溶解させるべく撹拌翼により液体Aを撹拌するもの、又は、酸素や二酸化炭素を加圧して溶け込ませた加圧水を液体Aに供給するものなどが採用され得る。
【0084】
前記培養方法においては、曝気等により液体A中に酸素及び二酸化炭素を供給しつつ、光従属栄養培養を行うことが好ましい。即ち、前記培養方法においては、光合成可能な微細藻類の酸素呼吸及び光合成を促進させるべく、酸素及び二酸化炭素の両方を含むガスを曝気等によって液体Aに供給しつつ、少なくとも醸造酒を含む液体A中で従属栄養培養を行いながら、光の照射によって微細藻類に光合成を行わせることが好ましい。
このようにして培養方法を実施することにより、光合成可能な微細藻類の増殖がより促進され、しかも、微細藻類による有機化合物の産生がより促進されるという利点がある。
【0085】
詳しくは、前記培養方法においては、例えば、醸造酒を含む液体A中にて酸素及び二酸化炭素を含む気体で液体Aを曝気しつつ、光合成可能な微細藻類に光合成をさせて、液体A中の有機栄養素を利用して従属栄養培養によって培養(光従属栄養培養)することができる。このような培養においては、光の照射時間が例えば8時間程度であっても、微細藻類の増殖速度が、後述する従属栄養培養のみにおけるよりも速い。この原因は、曝気を伴った従属栄養培養において、醸造酒に含まれる取り込みやすい成分を微細藻類が取り込みつつ、微細藻類が光合成を行うことによって、醸造酒中の取り込みにくい成分を酸素呼吸と異なる代謝系によって微細藻類が細胞内に取り込んで代謝していることによるものと考えられる。なお、前記培養方法においては、二酸化炭素を溶解させた液体を利用しても良い。
【0086】
一方で、前記培養方法においては、光Bを照射せず微細藻類を暗条件下に置き、酸素を含むガスを液体Aに供給することにより、液体A中の有機栄養素(例えば醸造酒に含まれていたエタノール、又はタンパク質等)を栄養源として微細藻類に利用させつつ、微細藻類を増殖させることができる。
詳しくは、前記培養方法においては、醸造酒に含まれていた有機栄養素を含む液体A中にて、酸素を含む気体で液体Aを曝気しつつ微細藻類を培養(従属栄養培養)することができる。
このような培養において、仮に微細藻類の栄養素として有機栄養素としてのブドウ糖のみを用いると、ブドウ糖が微細藻類の細胞内に取り込まれやすく利用しやすい栄養素であるため、微細藻類の増殖が比較的速くなり得る。一方、前記培養方法のように、微細藻類の栄養素を含むものとして醸造酒を用いることにより、醸造酒にブドウ糖よりも栄養素として利用しにくい様々な栄養素も入っているものの、様々な栄養素によって微細藻類の生理現象が促進され得る。利用しにくい栄養素による増殖効率の低下分は、例えば、光合成可能な微細藻類に光合成をさせることなどにより補うことができる。
【0087】
これに対して、前記培養方法においては、液体Aへのガスの供給を止めること等により、液体Aを嫌気条件下におくこともできる。
【0088】
例えば、前記培養方法においては、細胞内に多糖類や脂質等の有機化合物を貯蔵したユーグレナ(Euglena)属生物を嫌気条件下におくことにより、ユーグレナ(Euglena)属生物の細胞内にワックスエステル等を貯蔵させることができる。貯蔵されたワックスエステルは、ユーグレナ(Euglena)属生物の細胞内から取り出されることにより、燃料などの原料として利用され得る。
なお、ユーグレナ(Euglena)属生物にワックスエステルを貯蔵させるためには、通常、曝気を停止すること、又は、酸素を含まない不活性ガスなどを液体Aに供給することによって嫌気条件をつくると同時に、光Bが照射されない暗条件をつくる。
【0089】
本実施形態の培養方法においては、液体Aが、水と醸造酒とを少なくとも含み、さらに、麦汁、清酒粕、焼酎粕、酵母、酵母自己消化物、又は廃糖蜜を含み得る。これらの醸造酒などは、上述したような無機栄養素、又は有機栄養素を含んでいる。
本実施形態の培養方法においては、さらに、液体Aに無機栄養素、又は有機栄養素等の栄養素が添加され得る。
【0090】
前記無機栄養素(醸造酒が含有するもの、又は、さらに添加するもの)としては、例えば、Nを含む窒素含有無機化合物、Pを含むリン含有無機化合物などが用いられる。また、前記無機栄養素としては、例えば、カリウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、亜鉛イオン、銅イオン、モリブテンイオン、ニッケルイオンなどが用いられる。
前記有機栄養素(醸造酒が含有するもの、又は、さらに添加するもの)としては、例えば、ブドウ糖などの糖類、アミノ酸、エタノールやビタミン類などが用いられる。
前記培養方法においては、液体Aに配合される醸造酒、麦汁、清酒粕、焼酎粕、酵母、酵母自己消化物、又は廃糖蜜等が上記の無機栄養素や有機栄養素を含有し、さらに、必要に応じてさらなる無機栄養素や有機栄養素を液体Aに配合することにより、これらの栄養素を微細藻類の培養に有用に活用し、微細藻類の増殖を促進することができる。
【0091】
前記培養方法においては、例えば、図1及び図2に示すように、調製タンク2中において、さらに添加する無機栄養素又は有機栄養素を水に溶解させ、無機栄養素又は有機栄養素を溶解させた水溶液を培養槽1中の液体Aに送ることにより、液体Aに、無機栄養素又は有機栄養素をさらに含ませることができる。
【0092】
また、前記培養方法においては、例えば図2に示すように、前記調製タンク2に供給するものを除菌する除菌槽3を用いることができる。
前記除菌槽3は、槽内の水、前記麦汁、又は前記酵母などを除菌処理するように構成されている。除菌処理は、例えば、水蒸気などの熱を利用した加熱、濾過膜を利用した菌の濾過除去などにより行うことができる。
【0093】
前記培養方法においては、例えば、培養において必要とされる微細藻類以外のものを除菌槽3に添加して除菌処理し、除菌処理したものを調製タンク2を経由させて培養槽1に供給してもよい。
又は、前記培養方法においては、液体Aにさらに添加する栄養素、酵母、麦汁、及び水のうち少なくとも1種又は全てを除菌槽3に添加する一方で、ビールや清酒などの醸造酒を除菌槽3に供給せずに調製タンク2に供給し、調製タンク2において、除菌槽3から供給されたものと、醸造酒とを混合し、該混合したものを培養槽1に供給してもよい。
醸造酒を除菌槽3に供給せず除菌処理しないことにより、微細藻類の培養において醸造酒に含まれるビタミン類が失活しないという利点があり、また、醸造酒を除菌槽3に供給しない分、除菌槽3内に収容されるものの容量が少なくなり、除菌槽3における除菌処理に必要なエネルギーを削減できるという利点がある。
【0094】
また、前記培養方法においては、前処理として酵母を自己消化させるための自己消化槽(図示せず)を用いることができる。
前記自己消化槽は、酵母を内部に収容し酵母を自己消化させる環境に暴露するように構成されている。また、自己消化させることにより生じた酵母自己消化物を調製タンク2又は除菌槽3に供給するように構成されている。
前記自己消化槽は、例えば、室温にて糖類などの栄養源がない条件下に酵母をおくこと、又は、40〜60℃で加温した後に栄養源がない条件に酵母を置くこと等により酵母を自己消化させるように構成されている。前記自己消化槽は、嫌気条件において酵母を自己消化させるように構成されていることが好ましい。
前記培養方法においては、前記自己消化槽を用いることにより、酵母自己消化物を含む水溶液を、調製タンク2又は除菌槽3を介して培養槽1中の液体Aに送ることができる。
【0095】
本実施形態の微細藻類の培養方法は、醸造酒としてのビールを作る施設において微細藻類を培養し、且つ、該施設において生じるビールを含む液体中で前記微細藻類を培養することが好ましい。
本実施形態の微細藻類の培養方法は、醸造酒としてのビールを作る施設において微細藻類を培養し、且つ、該施設において生じるビールと、該施設において生じる麦汁、酵母、又は酵母自己消化物の少なくともいずれか1種とを含む液体中で前記微細藻類を培養することがより好ましい。
【0096】
なお、ビールを作る施設は、ビールを作る設備及び該設備の敷地を含む。ビールを作る施設には、例えば、ビール工場及び該ビール工場に隣接した場所が含まれる。ビールを作る施設には、ビールを作るための場所であれば、建屋だけでなく、屋外も含まれる。
なお、後述する清酒を作る施設、焼酎を作る施設、ワインを作る施設、ショ糖を作る施設についても同様である。
【0097】
本実施形態の微細藻類の培養方法は、以下に記載のごとく、例えば、ビール工場内又は該ビール工場に隣接した場所において実施することができる。
即ち、本実施形態の微細藻類の培養方法においては、ビール工場内又は該ビール工場に隣接した場所に前記培養槽1を設置し、該ビール工場にて排出されるビールを前記醸造酒として用いることにより、培養槽1内の液体Aにて微細藻類を培養することができる。
【0098】
前記培養方法においては、ビール工場内又は該ビール工場に隣接した場所において微細藻類を培養し、例えば、ビール工場において排出されるビールを含む排水を用いて、該廃水を含む液体A中で微細藻類を培養することができる。
また、前記培養方法においては、例えば、ビール工場において製品規格外となった廃棄用ビール又は、賞味期限切れとなりビール工場に返品されたビールが、微細藻類の増殖を促すものとして用いられる。
また、前記培養方法においては、例えば、ビールを作る過程で生じた麦汁、ビールを作るため又は作った後の酵母(ビール酵母)、又は、該酵母を自己消化させた酵母自己消化物が、微細藻類の増殖を促すものとして用いられる。
また、前記培養方法においては、例えば、ビール工場において加熱のためのボイラ等から排出される二酸化炭素を比較的多く含む排ガスが、上述した微細藻類の光合成を伴う培養(明条件下における培養)にて、二酸化炭素の供給源として採用され得る。
【0099】
上記のように、ビール工場内又は該ビール工場に隣接した場所において前記微細藻類の培養方法を実施することにより、該工場から排出されるもの(排水、ビール酵母、排熱等)のみを用いて微細藻類を培養することができる。また、培養によって得られる微細藻類からエネルギーを取り出し、該エネルギーをビール工場の運転に利用することができる。
微細藻類からエネルギーを取り出す方法としては、例えば、培養した微細藻類を乾燥させ、乾燥した微細藻類自体を燃料として利用することによりエネルギーを直接的に取り出す方法、また、培養した微細藻類からオイル等の有機化合物を抽出し該有機化合物を燃料等として利用することによりエネルギーを間接的に取り出す方法などが採用される。
【0100】
上記のごとくビールを用いる培養方法においては、好ましくは、ビール濃度が2〜10倍、より好ましくは2〜5倍に希釈された液体A中において微細藻類を培養する。ビール(廃棄用ビール又は返品されたビールなど)濃度が2〜10倍に希釈された液体A中において微細藻類を培養することにより、栄養素の不足による微細藻類の増殖効率の低下を防ぎつつ、アルコールによる増殖阻害をも抑制できる。
ビールを希釈する希釈水としては、上述した、ビール工場において排出されるビールを含む排水を利用することができる。また、ビールを希釈する希釈水としては、ビール工場において用いる水道水、工業用水、ビール瓶等の洗浄水、廃水処理設備によって水処理された処理水等の水を利用することができる。
該希釈水としては、次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌成分を含まない水、殺菌成分が失活した水、又は、殺菌成分が有効濃度以下になるように希釈された水が好ましい。
【0101】
また、上記のごとくビールを用いる培養方法においては、ビールに溶存している二酸化炭素を利用することができる。即ち、微細藻類として光合成可能な微細藻類を採用し、炭酸ガスが溶解しているビールを醸造酒として用いることにより、光合成する微細藻類の増殖を促進することができる。なお、二酸化炭素を含む液体Aを曝気すると、液体Aが過剰に発泡し得ることから、ビールに溶存している二酸化炭素を含む液体Aを曝気しつつ微細藻類を増殖させる場合には、二酸化炭素による液体Aの過剰な発泡を抑制するために、前処理としてビールに対して脱泡処理を施すことができる。該脱泡処理は、撹拌、加熱、濾過などによって行うことができる。
また、上記のようなビールを用いる培養方法において、液体Aに配合される栄養素を含むものとして、ビール工場から排出されるもののみを利用して微細藻類を培養することにより、微細藻類の増殖を阻害する物質が外部から入り込みにくいことから、微細藻類の増殖が阻害されにくい。また、増殖した微細藻類に外部から汚染物質が混入しにくいことから、微細藻類を有価物(例えば健康食品や化成品)として利用する際に、汚染物質による有価物の汚染を抑制することができる。
【0102】
本実施形態の微細藻類の培養方法においては、醸造酒としての清酒を作る施設において微細藻類を培養し、且つ、該施設において生じる清酒を含む液体中で前記微細藻類を培養することが好ましい。
本実施形態の微細藻類の培養方法においては、醸造酒としての清酒を作る施設において微細藻類を培養し、且つ、該施設において生じる清酒と、該施設において生じる清酒粕、酵母、又は酵母自己消化物の少なくともいずれか1種とを含む液体中で前記微細藻類を培養することがより好ましい。
【0103】
本実施形態の微細藻類の培養方法は、上述したビールを作る施設における培養方法と同様に、例えば、清酒工場内又は該清酒工場に隣接した場所において行うことができる。斯かる培養方法においては、例えば、清酒、清酒を作る過程で生じた清酒粕、酵母、及び酵母を自己消化させた酵母自己消化物が、微細藻類の増殖を促す栄養素を含むものとして利用される。
【0104】
上記のごとく清酒等を用いる培養方法においては、好ましくは、清酒濃度が5〜30倍、より好ましくは、5〜15倍に希釈された液体A中において微細藻類を培養する。
清酒工場においては、季節による排水中の成分の変動が大きく、工場の規模が比較的小さい割には、季節によって工場内の排水処理設備に大きな負荷がかかる。従って、清酒工場内又は該清酒工場に隣接した場所において、廃棄され排水処理設備に送られる予定であった清酒を用いて前記培養方法を実施することによって、排水処理設備への負荷変動を抑えることができ、しかも、微細藻類を増殖させることができる。また、増殖した微細藻類を有価物として利用することができる。
【0105】
本実施形態の微細藻類の培養方法においては、例えば、焼酎を作る施設において微細藻類を培養することができる。斯かる培養方法においては、例えば、醸造酒と、前記施設において生じる焼酎粕、酵母、又は酵母自己消化物の少なくともいずれか1種とを含む液体中で前記微細藻類を培養することができる。
斯かる培養方法は、上述したビールを作る施設における培養方法と同様に、例えば、焼酎工場内又は該焼酎工場に隣接した場所において実施することができる。
斯かる培養方法においては、例えば、焼酎を作る過程で生じた焼酎粕、酵母、及び、該酵母を自己消化させた酵母自己消化物が、微細藻類の増殖を促すものとして利用される。
【0106】
本実施形態の微細藻類の培養方法においては、醸造酒としてのワインを作る施設において微細藻類を培養し、且つ、該施設において生じるワインを含む液体中で前記微細藻類を培養することが好ましい。
本実施形態の微細藻類の培養方法においては、醸造酒としてのワインを作る施設において微細藻類を培養し、且つ、該施設において生じるワインと、該施設において生じる酵母、又は酵母自己消化物の少なくともいずれか1種とを含む液体中で前記微細藻類を培養することがより好ましい。
本実施形態の微細藻類の培養方法は、ワインを作る施設において実施することができる。斯かる培養方法は、上述したビールを作る施設における培養方法と同様に、例えば、ワイン工場内又は該ワイン工場に隣接した場所において実施することができる。
斯かる培養方法においては、例えば、ワイン、ワインを作る過程で生じた酵母、及び酵母を自己消化させた酵母自己消化物が、微細藻類の増殖を促すものとして利用される。
【0107】
本実施形態の微細藻類の培養方法は、ショ糖を作る施設において実施することができる。斯かる培養方法は、上述したビールを作る施設における培養方法と同様に、例えば、精糖工場内又は該精糖工場に隣接した場所において実施することができる。斯かる培養方法においては、例えば、醸造酒と、ショ糖を作る過程(精糖する過程)で生じた廃糖蜜とを含む液体中で微細藻類を培養することができる。
【0108】
本実施形態の微細藻類の培養方法においては、上記のようにして微細藻類を培養することにより、微細藻類を増殖させ、微細藻類の細胞内に炭化水素類、油脂類、又は多糖類などの有機化合物を貯蔵させることができる。
そして、これらの有機化合物を細胞内に貯蔵した微細藻類は、食品、医薬品、飼料、化成品、又は燃料など様々な用途にて使用され得るバイオマスとして利用することができる。
具体的には、微細藻類としてユーグレナ(Euglena)属に属する生物を採用した場合には、好気条件下における培養や光を照射する条件下で光合成させる培養を行うことにより、細胞内にパラミロンを生成させ、これを抽出、精製して利用することができる。
【0109】
前記培養槽1において培養によって増殖した微細藻類と液体Aとの混合物は、例えば図2に示すように、微細藻類に濃縮処理を施す濃縮装置4、及び/又は、微細藻類に脱水処理を施す脱水装置5を用いて、微細藻類の濃度が高められる。微細藻類と液体Aとの混合物は、図2に示すように、濃縮装置4のみを経てもよく、脱水装置5のみを経てもよく、また、濃縮装置4及び脱水装置5の両方を経てもよい。濃縮装置4、及び/又は脱水装置5を経た微細藻類は、上述したように、バイオマスとして利用され得る。
【0110】
なお、前記濃縮装置4としては、例えば、浮上濃縮、重力濃縮、膜濃縮、ベルト濃縮等によって微細藻類を濃縮するものが挙げられる。
また、前記脱水装置5としては、例えば、真空脱水機、加圧脱水機(フィルタープレス)、ベルトプレス、スクリュープレス、遠心濃縮脱水機(スクリューデカンタ)、又は、多重円盤脱水機などが挙げられる。
【0111】
続いて、本発明に係る微細藻類の使用方法の一実施形態について説明する。
【0112】
本実施形態の微細藻類の使用方法は、上述した微細藻類の培養方法によって得られた微細藻類を、該培養方法を実施した施設にて少なくとも燃料として使用するものである。
本実施形態の微細藻類の使用方法を実施することにより、前記培養方法によって微細藻類が細胞内に貯蔵した有機化合物を効率的に利用することができる。
【0113】
前記微細藻類の使用方法において、微細藻類を燃料として前記施設にて使用する具体例については、上述した通りである。
また、培養された微細藻類は、前記施設にて、燃料の他にも、化成品などの用途に利用され得る。
【0114】
上記の実施形態の微細藻類の培養方法及び微細藻類の使用方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の微細藻類の培養方法及び微細藻類の使用方法に限定されるものではない。
また、一般の微細藻類の培養方法及び微細藻類の使用方法において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
【0115】
例えば、本発明の微細藻類の培養方法においては、上記の培養槽1を用いて、培養ごとに培養した微細藻類の全てを培養槽1から取り出すバッチ式培養方法を採用してもよい。また、培養した微細藻類の一部を培養槽1から取り出す半回分式培養方法を採用してもよい。また、微細藻類の増殖速度に合わせて微細藻類の一部を培養槽1から連続的に取り出しつつ、栄養素を培養槽中の液体Aに連続的に添加する連続式培養方法を採用しても良い。
【0116】
また、本発明の微細藻類の培養方法においては、培養槽1の容量が非常に大きい場合、培養槽1における微細藻類が所定濃度以上になるように、予め別の培養槽(前処理培養槽)で培養した微細藻類を、上述した培養槽1に供給し該培養槽内にて微細藻類をさらに培養するようにしても良い。予め微細藻類を所定濃度以上に高めてから培養槽1内に微細藻類を入れて培養することにより、培養槽1における培養時間を短縮することができる。特に、上述した廃棄用ビールを用いて培養する場合には、廃棄用ビールの量が比較的少ないことから、上記のごとく予め別の培養槽(前処理培養槽)において微細藻類を培養することは、培養槽1における培養効率の向上に有効である。
別の培養槽(前処理培養槽)における微細藻類の培養においては、酸素を含む気体による曝気を行いつつ光Bを照射しない条件下にて、一般的な培養用栄養素を用いて微細藻類を増殖させることができる。これにより、別の培養槽(前処理培養槽)が比較的小さいサイズであっても、効率的に微細藻類を増殖させ、後段の培養槽1内において所定濃度以上に高められた微細藻類を培養することができる。
【実施例】
【0117】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0118】
微細藻類を培養するために、下記のものを用意し、下記の条件下にて培養した。
「微細藻類」:ユーグレナ属に属する生物(Euglena gracilis NIES-48株)
(独立行政法人国立環境研究所 微生物系統保存施設より入手)
「培養容器」:300mL三角フラスコ
「振とう培養条件」:120rpm(振とうにより液体中に空気を供給する)
「培養温度」:28℃
「液体のpH」:4(塩酸によって調整)
「液体の組成」:
培地名「AF−6」と同じ組成となるように表1に示す各成分を混合したもの(以下、[AF−6組成物]ともいう)を液体の配合成分として用いた。
なお、「AF−6」は、独立行政法人国立環境研究所 微生物系統保存施設によって組成が開示されており、表1に示す成分が水99.5mL中に配合されている。
また、液体に含まれる栄養素以外は、水である。詳しくは、液体における上記AF−6組成物由来の成分が、液体100mL中、下記表1の濃度となるように水を含む液体を調製した。即ち、培養における液体100mL中のAF−6組成物由来の配合成分がそれぞれ表1の数値となるように水を含む液体を調整した。具体的には、培養におけるいずれの液体であっても、例えば、NaNO3であれば100mL中に14mgの量となるように濃度を調整した。
【0119】
【表1】
【0120】
表1における微量金属含有溶液としては、下記表2の組成を有する微量金属含有溶液を用いた。斯かる微量金属含有溶液は、いずれの培養においても、上記表1に示す量となるように液体中に配合した。
また、表2に示す組成は、独立行政法人国立環境研究所 微生物系統保存施設によって開示されている、培地名「P IV metals」と同じものである。培養においては、「P IV metals」と同じ組成となるように各成分を混合したもの(以下、P IV metals組成物ともいう)を用いた。
以上のように、後述するいずれの試験例においても、液体中のAF−6組成物由来成分、及び、P IV metals組成物由来成分の濃度が上記表1に示す値になるように液体を調製した。
【0121】
【表2】
【0122】
以下、微細藻類を培養する条件をさらに示す。
「光照射条件」:12時間光照射の後、12時間暗所(以下、光条件1という)
24時間暗所(以下、光条件2という)
光照射時の光強度は、 100μmol/m2/s とした。
「微細藻類の初期重量」:0.78g/L(乾燥重量)
「醸造酒」:用いた醸造酒を下記に示す。
“ビール”
下記の4種は、麦芽の使用率が66.7%(3分の2)以上のものである(酒税法上のビールに該当)
・サッポロビール社製 製品名「黒ラベル」、エタノール5容量%、
・アサヒビール社製 製品名「スーパードライ」、
・キリンビール社製 製品名「一番搾り」、
・サントリー社製 製品名「モルツ」
下記の4種は、麦芽の使用率が66.7%未満の酒税法上の発泡酒にスピリッツを加えたものである(酒税法上のリキュールに該当)
・サッポロビール社製 製品名「麦とホップ」、エタノール5容量%
・アサヒビール社製 製品名「クリアアサヒ」、
・キリンビール社製 製品名「麦のごちそう」、
・サントリー社製 製品名「金麦」
“清酒”
・日本盛社製 製品名「晩酌」、エタノール13容量%
・大関社製 製品名「上撰 金冠」、
・月桂冠社製 製品名「上撰 月桂冠」
・白鶴酒造社製 製品名「上撰 白鶴」
「酵母自己消化物(酵母エキス)」:
(製品名「Dried Yeast Extract D-3」 日本製薬社製)
【0123】
上述した醸造酒としてのいずれのビールを用いて微細藻類を培養しても、微細藻類を培養することができた。また、上述した醸造酒としてのいずれの清酒を用いて微細藻類を培養しても、微細藻類を培養することができた。
以下には、サッポロビール社製の「黒ラベル」(以下、ビール1と称する)を用いたときの結果(試験例1)、サッポロビール社製の「麦とホップ」(以下、ビール2と称する)を用いたときの結果(試験例2)、及び、日本盛社製の「晩酌」を用いたときの結果(試験例3)を示す。
詳しくは、各試験例においては、各醸造酒を含む液体(水でビールを2倍又は5倍希釈したもの、若しくは、水で清酒を5倍又は15倍希釈したもの)において、光条件1又は光条件2により、酵母自己消化物の存在下又は非存在下にて、3、5、7日間微細藻類を培養し、培養後の微細藻類の乾燥重量を測定した。
醸造酒としてビール1、ビール2、清酒を用いた結果の一覧をそれぞれ表3〜表5に示す。なお、表3〜表5における数値は、培養後における液体中の微細藻類量(乾燥重量 g/L)を示す。
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
表3及び表4から把握できるように、ビール1又はビール2を5倍希釈した液体中での培養の方が、培養初期における微細藻類の増殖が速い。また、ビール1又はビール2を2倍希釈した液体中での培養においては、5〜7日目においても微細藻類が増殖できる。
また、液体が酵母自己消化物をさらに含むことにより、微細藻類の増殖がより優れたものになる。
また、光条件1の方が、光条件2よりも微細藻類の増殖において優れる。
【0127】
【表5】
【0128】
表5から把握できるように、液体が酵母自己消化物をさらに含むことにより、微細藻類の増殖がより優れたものになる。
また、光条件1の方が、光条件2よりも微細藻類の増殖において優れる。
【0129】
一方で、試験例1のビール1を含む液体に代えて、エタノールを2.5%含む液体(ビール1の2倍希釈相当のエタノールを含有する)、及び、エタノールを1%含む液体(ビール1の5倍希釈相当のエタノールを含有する)を用いて、同様にして、それぞれ光条件1及び光条件2で微細藻類の培養を行った(試験例4)。
なお、試験例4においては、液体A中のAF-6組成物由来の成分量が同じであるが、無機栄養素(リン源及び窒素源)として、硫酸アンモニウム及びリン酸二水素カリウム(KH2PO4)を液体中に配合した。なお、液体中における硫酸アンモニウム及びリン酸二水素カリウムの含有量は、全窒素濃度、及び、全リン濃度がビール1を用いた試験例1と同じとなるように調整した。具体的には、T-N(全窒素量)及びTP(全リン量)が試験例1と同じになるように、表6に示すとおり、液体A中の硫酸アンモニウム及びリン酸二水素カリウムの液体中の濃度を調整した。
【0130】
【表6】
【0131】
【表7】
【0132】
試験例1〜3と、試験例4とから把握されるように、醸造酒を含む液体中で微細藻類を培養することにより、効率的に微細藻類を増殖させることができる。
また、有機栄養素を含むものとして醸造酒を用い、曝気(振とうによる曝気)しつつ、さらに微細藻類に光合成させることにより、有機栄養素としてエタノールのみを用いるよりも、培養の効率が高まる。
また、醸造酒を利用することで、優れたバイオマス生産率を確保できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の微細藻類の培養方法は、細胞内に炭化水素や多糖類などの有機化合物を貯蔵した微細藻類を、健康食品、医薬品、飼料、化成品、又は燃料等の用途で利用するために、好適に使用できる。具体的には、本発明の微細藻類の培養方法は、例えば、微細藻類としてユーグレナ(Euglena)属に属する生物を採用して、該微細藻類を培養することにより、微細藻類の細胞内に油分を貯蔵させ、油分を取り出して燃料の原料として利用するために好適に使用できる。
【符号の説明】
【0134】
1:培養槽、
2:調製タンク、
3:除菌槽、 4:濃縮装置、 5:脱水装置、
A:液体、B:光。
図1
図2