(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(1)において複数存在するQがそれぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基のいずれかから選ばれる(ただし、Qが全て水素原子である化合物のみからなる場合を除く)、請求項1記載の硬化剤組成物。
前記式(1)において複数存在するQがそれぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基のいずれかから選ばれる(ただし、Qが全て水素原子である化合物のみからなる場合を除く)、請求項4または5に記載の多価カルボン酸組成物。
ビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルと酸無水物との反応時のモル比が、ビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルの水酸基1モルに対し、カルボン酸無水物基が1.0〜10.0モルである、請求項7記載の多価カルボン酸組成物の製造方法。
請求項1〜2のいずれか一項に記載の硬化剤組成物もしくは請求項4〜6のいずれか一項に記載の多価カルボン酸組成物と、エポキシ樹脂と、を含有する硬化性樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
多価カルボン酸は、高熱安定性や良好な電気特性、耐薬品性などと共に、縮合体の形成や反応性の良さなど、架橋剤、縮合剤等として優れた性能を備えている。このため、近年では、高分子製造原材料として非常に着目され、広く使用されるようになってきている。
また多価カルボン酸はエポキシ樹脂の硬化剤としても使用できることが知られている。
【0003】
一方、エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物は、従来から、耐熱性に優れた樹脂として、建築、土木、自動車、航空機などの分野で利用されていたが、近年、オプトエレクトロニクス関連分野における利用が注目されている。従来の電気配線による信号伝送は、高度情報化に伴い、膨大な情報を円滑に伝送・処理するために、光信号による信号伝送に変わってきている。このため、光導波路、青色LED、および光半導体等の光学部品の分野においては、透明性に優れた硬化物を与える樹脂組成物の開発が望まれている。
【0004】
また、半導体関連材料の分野においては、カメラ付き携帯電話、超薄型の液晶やプラズマTV、軽量ノート型パソコンなど軽・薄・短・小がキーワードとなるような電子機器のパッケージ材料として利用されている。これら電子機器に使用されるエポキシ樹脂にはパッケージ材料として非常に高い特性が求められてきている。
【0005】
特に、光半導体等の封止の分野においては、近年のパッケージの複雑化、多様化が進む中で、固形樹脂によるトランスファーモールディングの様な成形方法よりも、特に先端分野のパッケージにおいては液状の硬化性樹脂組成物を用いた成形方法が好んで用いられる。
【0006】
このような液状組成物用のエポキシ樹脂硬化剤としては、多価アミン化合物などが挙げられるが、アミン化合物は着色が激しいため使用が難しい。さらに、エポキシ樹脂硬化剤としては、フェノール樹脂や、多価カルボン酸樹脂も信頼性の良い硬化物を与えることができることが知られているが、その形状が固形であるため、このような液状組成物として使用することは困難である。
このため、一般にこのような分野では、エポキシ樹脂の硬化剤として酸無水物系の化合物が用いられており、特に飽和炭化水素で形成された酸無水物は硬化物が耐光性に優れることから多く利用されている。これら酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の脂環式酸無水物が一般的であり、中でも常温で液状であるメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が取扱いの容易さから主に使用されている。
しかしながら上記脂環式酸無水物を硬化剤とした場合、これらの硬化剤は蒸気圧が高く、硬化時に一部が蒸発するため、これらをエポキシ樹脂の硬化剤として用いて開放系で熱硬化させる際には、このもの自体が大気中に揮発し、大気への有害物質の放出による環境汚染、人体への悪影響のみならず、生産ラインの汚染が生じる恐れがある。更には、硬化物中に所定量のカルボン酸無水物(硬化剤)が存在しないことに起因する硬化性樹脂組成物の硬化不良が起こるという問題や、硬化条件によってその特性が大幅に変わってしまい、安定して目的とした性能を有する硬化物を得ることが困難となる問題を抱えている。
【0007】
また、従来の硬化剤を用いた硬化物はLED、特にSMD(Surface Mount Device)を封止した際は顕著であり、使用する樹脂量が少ないため、先の揮発の問題により、へこみが発生、酷い場合には、ワイヤーが露出するという問題が生じる。さらには半田リフロー時のクラック、剥離等、さらに硬化が不十分になってしまうため長期点灯にも耐えることが困難であるという問題がある。
【0008】
さらに、近年、LEDの市場の拡大に伴い、量産性を向上させるLEDパッケージ製造プロセスが求められている。例えば、液状トランスファー成型や、コンプレッション成型である。これらは、液状の熱硬化性樹脂を高温の金型を用いて加熱硬化させる成型方法であり、成形時間が短く、生産性が高いため有用である。また本成型方法を用いれば。任意の形状を付与させることが可能となる。
しかしながら従来のLED用透明封止樹脂は、その成型性が非常に難しく、ボイドや未充填部分が発生したり、脱型の際に硬化物が変形あるは割れてしまう等、脱型性に問題がある場合が多かった(特許文献3)。
【0009】
また、LEDの材料としてはエポキシ樹脂の耐久性の問題から、シリコーン樹脂やシリコーン変性エポキシ樹脂などに代表されるようなシロキサン骨格(具体的にはSi−O結合を有した骨格)を導入した樹脂を封止材として使用する検討が行われている(特許文献4)。
一般に該シロキサン骨格を導入した樹脂はエポキシ樹脂よりも熱と光に対して安定であることが知られている。そのため、LED製品の封止材に適用した場合、LEDチップ上の着色という観点では、エポキシ樹脂よりも耐久性に優れると言われていた。しかし、該シロキサン骨格を導入した樹脂類はエポキシ樹脂に比べ、硫黄等の腐食ガス耐性に劣る。そのため、LED封止材としてシリコーン樹脂やシリコーン変性エポキシ樹脂を使用した場合には、LEDチップ上での着色は問題にならないものの、LEDパッケージ内の構成部材である金属リードフレーム上にメッキされた銀成分(反射率を高めるために銀メッキが施されている)を腐食ガスにより変色または黒化させてしまい、最終的にLED製品としての性能を低下させるという課題を抱えている。
市場では、前記耐腐食ガス性で問題のない構造を有する硬化性樹脂組成物であって、且つ、LED製品として光、熱に対する耐久性の高い封止材が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の多価カルボン酸組成物または硬化剤組成物は、ビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルと特定の酸無水物との反応により得られる多価カルボン酸樹脂(以下、本発明の多価カルボン酸樹脂と表記する。)を必須成分として含有する。
【0015】
ビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルとしては分子内にエーテル結合を有するテトラオール化合物であれば特に限定はされないが、具体的には下記式(2)
【0017】
(式中、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、水素原子、もしくは炭素数1〜15のアルキル基、カルボキシル基を表す)に挙げられるような構造が好ましく、特に本発明においては、置換基Rが、炭素数1〜15のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。
【0018】
このような構造の化合物としてはアルデヒド化合物とホルムアルデヒドの交差のアルドール−カニッツアロ反応を利用することで合成されるトリオール化合物の二量化により製造できる。
具体的に2,2´−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテル、2,2´−ビス(ジメチロール)ジエチルエーテル、2,2´−ビス(ジメチロール)ジブチルエーテル、2,2´−ビス(ジメチロール)ジペンチルエーテル、2,2´−ビス(ジメチロール)ジヘキシルエーテル、などが挙げられる。
【0019】
本発明の多価カルボン酸樹脂は、酸無水物とビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルの付加反応により製造される。酸無水物としては、飽和炭化水素構造を有する酸無水物を使用する。具体的にはヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物などが挙げられ、これらを併用しても構わないが、ヘキサヒドロフタル酸を単独で用いるのは好ましくない。
本発明においては特にアルキル置換および/またはカルボキシル基を置換基に有するシクロヘキサン構造の酸無水物が好ましく、具体的には1,3,4−シクロヘキサントリカルボン酸−3,4−無水物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が挙げられる。ここで、へキサヒドロ無水フタル酸を併用しても構わない。さらに、1,3,4−シクロヘキサントリカルボン酸−3,4−無水物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を単独で又は併用して用いるのが特に好ましい。
【0020】
酸無水物とビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルの反応としては一般に酸や塩基を触媒とする付加反応であるが、本発明においては特に無触媒での反応が好ましい。
触媒を用いる場合、使用しうる触媒としては、例えば塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等の酸性化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等の複素環式化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルプロピルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルセチルアンモニウムヒドロキシド、トリオクチルメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムアセテート、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの触媒は1種又は2種以上を混合して用いても良い。これらの中で、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0021】
触媒の使用量には、特に制限はないが、原料の総重量100重量部に対して、通常0.001〜5重量部必要により使用するのが好ましい。
【0022】
本反応においては無溶剤での反応が好ましいが、有機溶剤を使用しても構わない。有機溶剤の使用量としては、反応基質である酸無水物とビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルの総量1に対し、重量比で0.005〜1であり、好ましくは0.005〜0.7、より好ましくは0.005〜0.5(すなわち50重量%以下)である。重量比で1を超える場合、反応の進行が極度に遅くなることから好ましくない。使用できる有機溶剤の具体的な例としてはヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、アノン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、蟻酸メチルなどのエステル化合物などが使用できる。
また本発明においては溶剤の代わりとして酸無水物や液状のカルボン酸樹脂(もしくは化合物)を用いることが可能である。
【0023】
ここで、本発明の多価カルボン酸組成物を得る方法について説明する。
前記の通り溶剤の代わりとして、液状の多価カルボン酸樹脂を使用することができ、液状カルボン酸樹脂としては、硬化性と粘度調整の観点から、2官能以上のカルボン酸樹脂であって、25℃で10000Pa・s以下の粘度を有する多価カルボン酸樹脂が好ましい。具体的には前述のような酸無水物とカルビノール変性シリコーン化合物との反応物が好ましい。カルビノール変性シリコーン化合物としては、例えば日本国特開2007−508424号公報等に記載の手法を用いて合成できる。市場から入手可能な化合物としてはDow Corning5562(東レ・ダウコーニング製)、X22−160−AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003(いずれも信越化学製)、XF42−B0970(モメンティブ製)、サイラプレーンFM−4411、FM−4421、FM−4425などが挙げられる。
本発明においては特に重量平均分子量500−10000の化合物が好ましく、より好ましくは600−6000、特に好ましくは600−2000である。また最も好ましい範囲としては600−1500である。
具体的には下記式(3)
【0025】
で表される構造の化合物が好ましく、特に繰り返し単位のnは2〜130が好ましく、さらに好ましくは3.5〜8.0が、特に好ましくは3.5〜25である。また最も好ましい範囲としては3.5〜17.0である。
【0026】
反応温度は40〜200℃が好ましく、特に好ましくは40〜150℃である。特に本反応を無溶剤で行う場合は、酸無水物の揮発があるため、100℃以下での反応が好ましく、40〜100℃での反応が特に好ましい。
反応温度が低すぎると反応までに時間がかかるという問題が生じ、反応温度が高すぎると目的以外の反応が進行し、着色の原因となる可能性がある。
またその反応方法としては、酸無水物中に加温しながら、あるいは一定温度に保ちながら徐々にもしくは分割でビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルを添加して行く手法と、一括で仕込んだ後、温度を上げ、反応を行うこともできる。特に無溶剤で反応を行う際は、安全性の面から、上記の手法で行うことが好ましい。
こうして、後述する条件で反応を行い、本発明の多価カルボン酸組成物を得ることができるが、本発明の多価カルボン酸樹脂を得た後に液状の多価カルボン酸と混合させて本発明の多価カルボン酸組成物としても構わない。
酸無水物とビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルの水酸基との反応比率は理論的には官能基当量を合わせた等モル、もしくはその付近での反応が好ましいが、必要に応じて変更可能である。たとえば、酸無水物を1とした場合、ビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルの水酸基は0.9〜1.1、好ましくは0.9〜1.05当量である。
一方、ビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルの水酸基を1とした場合、ビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルの水酸基1モルに対してカルボン酸無水物基が1.0〜10.0モルとなるように反応時のモル比を調整することが望ましい。
本発明の多価カルボン酸組成物において、本発明の多価カルボン酸樹脂の占める割合は多価カルボン酸樹脂と前記他の2官能以上のカルボン酸化合物との合計重量に対し、1〜40重量%、好ましくは1〜20重量%である。
【0027】
ここで、本発明の硬化剤組成物を得る方法について説明すると、すなわち、本発明の硬化剤組成物において、使用する酸無水物と、ここで使用する酸無水物が同じである場合は、製造時に過剰の酸無水物中で反応を行い、酸無水物とビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルの反応が終了した時点で酸無水物と本発明の多価カルボン酸の混合物(硬化剤組成物)とすることもできる。この場合、過剰の酸無水物が反応の溶剤代わりにもなるため、好ましい。
酸無水物との混合物で用いる硬化剤組成物を得る場合には具体的な反応比率としてはその官能基当量で比較し、酸無水物を1とした場合、そのモル比でビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルの水酸基が0.001〜0.9、より好ましくは0.01〜0.8、さらに好ましくは0.01〜0.7、特に0.01〜0.4の範囲で使用することが好ましい。
【0028】
ここで、後述する条件で本発明の多価カルボン酸樹脂を得た後に、酸無水物と混合させて本発明の硬化剤組成物を作成する方法でも構わない。
すなわち、本発明の多価カルボン酸樹脂をエポキシ樹脂用の硬化剤として使用、特に液状組成物として使用する場合、酸無水物と混合し本発明の硬化剤組成物とすることができる。
使用できる酸無水物としては、その構造に芳香環を有しない、飽和環構造を有する酸無水物を使用する。具体的にはヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物などが挙げられる。
本発明の硬化剤組成物において、本発明の多価カルボン酸樹脂の占める割合は前記酸無水物と多価カルボン酸樹脂の合計重量に対し、5〜80重量%、好ましくは5〜65重量%である。
【0029】
反応時間は反応温度、触媒量等にもよるが、工業生産という観点から、長時間の反応は多大なエネルギーを消費することになるため好ましくはない。また短すぎる反応時間はその反応が急激であることを意味し、安全性の面から好ましく無い。好ましい範囲としては1〜48時間、好ましくは1〜36時間、さらに好ましくは1〜24時間である。
【0030】
反応終了後、触媒を用いた場合は、それぞれ中和、水洗、吸着などによって触媒の除去を行い、溶剤を留去することで目的とする多価カルボン酸樹脂が得られる。また無触媒での反応においては必要に応じて溶剤を留去、さらに無溶剤、無触媒の場合は特に特別な精製無しにそのまま取り出すことで製品とすることができる。
【0031】
最も好適な製造方法としては、酸無水物、ジオールを無触媒、無溶剤の条件下、40〜100℃で反応させ、反応終了後、そのまま取り出すという手法である。
【0032】
このようにして得られる本発明の多価カルボン酸樹脂は通常、無色〜淡黄色の固形の樹脂状を示す(場合によっては結晶化する)。また、過剰の酸無水物中で反応させた場合、その形状は液状を示す場合が多い。
また、前記式(1)において、光学特性の観点から、複数存在するQの少なくとも一つがメチル基またはカルボキシル基からなる多価カルボン酸樹脂が好ましい。更に好ましくは、複数存在するQがそれぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基のいずれかから選ばれる(ただし、Qが全て水素原子である化合物のみからなる場合を除く)多価カルボン酸樹脂であり、特に好ましくは、メチル基および/またはカルボキシル基のみからなる多価カルボン酸樹脂である。
特に本発明においては、多価カルボン酸樹脂は液状で使用されることが好ましく、多価カルボン酸樹脂と酸無水物との混合物として構成される硬化剤組成物、もしくは多価カルボン酸樹脂と液状カルボン酸との混合物として構成される多価カルボン酸組成物の形態で用いられることが好ましい。固形で本発明の多価カルボン酸樹脂を得た場合は、150℃以下の温度で酸無水物または液状カルボン酸と混合し、相溶させて使用することが好ましい。
本発明の硬化剤組成物または多価カルボン酸組成物を硬化剤として硬化性樹脂組成物に含有させる場合、硬化性樹脂組成物における本発明の多価カルボン酸樹脂の含有量は、樹脂成分1に対して重量比で通常0.02〜0.5であり、好ましくは0.02〜0.4である。重量比で0.02未満だと、金型からの脱型が悪くなり、重量比で0.5を超えると室温にて流動性が低くなりすぎて取扱い上困難になるためである。
【0033】
本発明の多価カルボン酸組成物および硬化剤組成物は透明性に優れ、エポキシ樹脂の硬化剤、塗料、接着剤、成形品、半導体、光半導体の封止材用樹脂、光半導体のダイボンド材用樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などの原料や改質剤、可塑剤や潤滑油原料、医農薬中間体、塗料用樹脂の原料、トナー用樹脂として有用である。特にエポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合には、硬化能に優れまた得られる硬化物の透明度が優れるので、高輝度の白色LED他の光半導体封止に用いられるエポキシ樹脂用硬化剤として極めて有用である。
【0034】
以下、本発明の多価カルボン酸組成物又は硬化剤組成物を含む本発明の硬化性樹脂組成物について記載する。
本硬化剤組成物中には、以下に記載する硬化触媒、添加剤あるいは無機充填材等を含有しても構わない。
【0035】
以下、本発明の多価カルボン酸組成物または硬化剤組成物を含む本発明の硬化性樹脂組成物について記載する。
本発明の硬化性樹脂組成物はエポキシ樹脂を含有させることができる。
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物において使用できるエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基、および/またはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
特に本発明の硬化性樹脂組成物を光学用途に用いる場合、脂環式エポキシ樹脂やエポキシ基含有シリコーン樹脂、好ましくはシルセスキオキサン構造のエポキシ樹脂との併用が好ましい。特に脂環式エポキシ樹脂の場合、骨格にエポキシシクロヘキサン構造を有する化合物が好ましく、シクロヘキセン構造を有する化合物の酸化反応により得られるエポキシ樹脂が特に好ましい。
これら脂環式エポキシ樹脂としては、シクロヘキセンカルボン酸とアルコール類とのエステル化反応あるいはシクロヘキセンメタノールとカルボン酸類とのエステル化反応(Tetrahedron vol.36 p.2409 (1980)、Tetrahedron Letter p.4475 (1980)等に記載の手法)、あるいはシクロヘキセンアルデヒドのティシェンコ反応(日本国特開2003−170059号公報、日本国特開2004−262871号公報等に記載の手法)、さらにはシクロヘキセンカルボン酸エステルのエステル交換反応(日本国特開2006−052187号公報等に記載の手法)によって製造できる化合物を酸化した物などが挙げられる。
アルコール類としては、アルコール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されないがエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのジオール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2−ヒドロキシメチル−1,4−ブタンジオールなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどのテトラオール類などが挙げられる。またカルボン酸類としてはシュウ酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれに限らない。
【0038】
さらには、シクロヘキセンアルデヒド誘導体と、アルコール体とのアセタール反応によるアセタール化合物が挙げられる。反応手法としては一般のアセタール化反応を応用すれば製造でき、例えば、反応媒体にトルエン、キシレンなどの溶媒を用いて共沸脱水しながら反応を行う方法(米国特許第2945008号公報)、濃塩酸に多価アルコールを溶解した後アルデヒド類を徐々に添加しながら反応を行う方法(日本国特開昭48−96590号公報)、反応媒体に水を用いる方法(米国特許第3092640号公報)、反応媒体に有機溶媒を用いる方法(日本国特開平7−215979号公報)、固体酸触媒を用いる方法(日本国特開2007−230992号公報)等が開示されている。構造の安定性から環状アセタール構造が好ましい。
【0039】
また、ビニルシクロヘキセンやリモネン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ビシクロヘキセン、オクタジエン等の脂環式多価オレフィンを酸化した物などが挙げられる。
【0040】
これらエポキシ樹脂の具体例としては、ERL−4221、ERL−4299(全て商品名、いずれもダウ・ケミカル製)、エポリードGT401、EHPE3150、EHPE3150CE(全て商品名、いずれもダイセル化学工業製)及びジシクロペンタジエンジエポキシドなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない(参考文献:総説エポキシ樹脂 基礎編I p76−85)。
これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0041】
シルセスキオキサン構造のエポキシ樹脂としてはエポキシシクロヘキサン構造を有するオルガノポリシロキサンであれば特に指定はないが、本発明においては特にエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシランを原料に用いるゾル−ゲル反応により得られる化合物が挙げられる。
具体的には日本国特開2004−256609号公報、日本国特開2004−346144号公報、国際公開第2004/072150号、日本国特開2006−8747号公報、国際公開第2006/003990号、日本国特開2006−104248号公報、国際公開第2007/135909号、日本国特開2004−10849号公報、日本国特開2004−359933号公報、国際公開第2005/100445号、日本国特開2008−174640号公報などに記載の三次元に広がる網の目状の構造を有したシルセスキオキサンタイプのオルガノポリシロキサンが挙げられる。
シルセスキオキサン構造については特に限定されないが、単純な三次元網目構造のシロキサン化合物では硬すぎるため、硬さを緩和する構造が望まれる。
本発明においては特にシリコーンセグメントとゾル−ゲル反応により得られる前述のシルセスキオキサン構造とを1分子中に有するブロック構造体が好ましい。このような化合物の製造法としては国際公開第2010/026714号に記載されているような製造方法および構造が挙げられる。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物において、本発明の多価カルボン酸組成物もしくは硬化剤組成物は他の硬化剤と併用しても構わない。併用する場合、本発明の多価カルボン酸樹脂の全硬化剤中に占める割合は20重量%以上が好ましく、特に30重量%以上が好ましい。本発明の多価カルボン酸樹脂に併用しうる硬化剤としては、例えばアミン系化合物、不飽和環構造を有する酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体、テルペンとフェノール類の縮合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物において硬化剤とエポキシ樹脂の比率は、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜1.5当量(カルボン酸を1官能、酸無水物を1官能と考える)が好ましく、特に好ましくは0.5〜1.2当量である。エポキシ基1当量に対して、0.5当量に満たない場合、あるいは1.5当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、硬化剤とともに硬化促進剤を併用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2'−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−ウンデシルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−エチル,4−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類、ジシアンジアミド等のアミド類、1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及びそれらのテトラフェニルボレート、フェノールノボラック等の塩類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、テトラブチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリ(トルイル)ホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類やホスホニウム化合物、2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、アミンアダクト、オクチル酸スズ等の金属化合物等、及びこれら硬化促進剤をマイクロカプセルにしたマイクロカプセル型硬化促進剤等が挙げられる。これら硬化促進剤のどれを用いるかは、例えば透明性、硬化速度、作業条件といった得られる透明樹脂組成物に要求される特性によって適宜選択される。硬化促進剤は、エポキシ樹脂100重量部に対し通常0.001〜15重量部の範囲で使用される。
【0045】
本発明の硬化性樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量はリン含有化合物/全エポキシ樹脂=0.1〜0.6(重量比)が好ましい。0.1未満では難燃性が不十分であり、0.6を超えると硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0046】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤を添加しても構わない。使用できる酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物中の樹脂成分に対して100重量部に対して、通常0.008〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0047】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。フェノール系酸化防止剤の具体例として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、等のモノフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が例示される。
【0048】
イオウ系酸化防止剤の具体例として、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が例示される。
【0049】
リン系酸化防止剤の具体例として、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類などが例示される。
【0050】
これらの酸化防止剤はそれぞれ単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて併用しても構わない。特に本発明においてはリン系の酸化防止剤が好ましい。
【0051】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて光安定剤を添加しても構わない。光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’―ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、等が挙げられる。HALSは1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0052】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100重量部に対して通常0.05〜50重量部、好ましくは0.05〜20重量部が必要に応じて用いられる。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中において0〜95重量%を占める量が用いられる。更に本発明の硬化性樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、界面活性剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物を光半導体封止剤に使用する場合、必要に応じて、蛍光体を添加することができる。蛍光体は、例えば、青色LED素子から発せられた青色光の一部を吸収し、波長変換された黄色光を発することにより、白色光を形成する作用を有するものである。蛍光体を、硬化性樹脂組成物に予め分散させておいてから、光半導体を封止する。蛍光体としては特に制限がなく、従来公知の蛍光体を使用することができ、例えば、希土類元素のアルミン酸塩、チオ没食子酸塩、オルトケイ酸塩等が例示される。より具体的には、YAG蛍光体、TAG蛍光体、オルトシリケート蛍光体、チオガレート蛍光体、硫化物蛍光体等の蛍光体が挙げられ、YAlO
3:Ce、Y
3Al
5O
12:Ce、Y
4Al
2O
9:Ce、Y
2O
2S:Eu、Sr
5(PO
4)
3Cl:Eu、(SrEu)O・Al
2O
3などが例示される。係る蛍光体の粒径としては、この分野で公知の粒径のものが使用されるが、平均粒径としては、1〜250μm、特に2〜50μmが好ましい。これらの蛍光体を使用する場合、その添加量は、その樹脂成分に対して100重量部に対して、1〜80重量部、好ましくは、5〜60重量部が好ましい。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の硬化性樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば本発明のエポキシ樹脂と硬化剤並びに必要により硬化促進剤、リン含有化合物、バインダー樹脂、無機充填材及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して硬化性樹脂組成物を得、その硬化性樹脂組成物を液状である場合はポッティングやキャスティング、基材に含浸、金型に硬化性樹脂組成物を流し込み注型し、加熱により硬化、また固形の場合、溶融後注型、あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに加熱により硬化するという手法が挙げられる。硬化温度、時間としては80〜200℃で2〜10時間である。硬化方法としては高温で一気に固めることもできるが、ステップワイズに昇温し硬化反応を進めることが好ましい。具体的には80〜150℃の間で初期硬化を行い、100℃〜200℃の間で後硬化を行う。硬化の段階としては2〜8段階に分けて昇温するのが好ましく、より好ましくは2〜4段階である。
【0056】
また本発明の硬化性樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、硬化性樹脂組成物ワニスとし、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。また液状組成物のままRTM方式でカーボン繊維を含有するエポキシ樹脂硬化物を得ることもできる。
【0057】
また本発明の硬化性樹脂組成物をフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはBステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物を前記硬化性樹脂組成物ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
【0058】
次に本発明の硬化性樹脂組成物を光半導体の封止材又はダイボンド材として用いる場合について詳細に説明する。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物が高輝度白色LED等の光半導体の封止材、またはダイボンド材として用いる場合には、本発明の多価カルボン酸樹脂を含有する硬化剤組成物または多価カルボン酸組成物と、エポキシ樹脂の他、硬化促進剤、カップリング材、酸化防止剤あるいは光安定剤等の添加物とを充分に混合することにより硬化性樹脂組成物を調製し、封止材として、またはダイボンド材と封止材の両方に使用される。混合方法としては、ニーダ、三本ロール、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ホモディスパー、ビーズミル等を用いて常温または加温して混合する。
【0060】
高輝度白色LED等の光半導体素子は、一般的にサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO等の基板上に積層させたGaAs、GaP、GaAlAs,GaAsP、AlGa、InP、GaN、InN、AlN、InGaN等の半導体チップを、接着剤(ダイボンド材)を用いてリードフレームや放熱板、パッケージに接着させてなる。電流を流すために金ワイヤー等のワイヤーが接続されているタイプもある。その半導体チップを、熱や湿気から守り、かつレンズ機能の役割を果たすためにエポキシ樹脂等の封止材で封止されている。本発明の硬化性樹脂組成物はこの封止材やダイボンド材として用いる事ができる。工程上からは本発明の硬化性樹脂組成物をダイボンド材と封止材の両方に使用するのが好都合である。
【0061】
半導体チップを、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて、基板に接着する方法としては、本発明の硬化性樹脂組成物をディスペンサー、ポッティング、スクリーン印刷により塗布した後、半導体チップをのせて加熱硬化を行い、半導体チップを接着させることができる。
加熱は、熱風循環式、赤外線、高周波等の方法が使用できる。加熱条件は例えば80〜230℃で1分〜24時間程度が好ましい。加熱硬化の際に発生する内部応力を低減する目的で、例えば80〜120℃、30分〜5時間予備硬化させた後に、120〜180℃、30分〜10時間の条件で後硬化させることができる。
【0062】
封止材の成形方式としては上記のように半導体チップが固定された基板を挿入した型枠内に封止材を注入した後に加熱硬化を行い成形する注入方式、金型上に封止材をあらかじめ注入し、そこに基板上に固定された半導体チップを浸漬させて加熱硬化をした後に金型から離形する圧縮成形方式等が用いられている。
注入方法としては、ディスペンサー、トランスファー成形、射出成形等が挙げられる。加熱は、熱風循環式、赤外線、高周波等の方法が使用できる。
加熱条件は例えば80〜230℃で1分〜24時間程度が好ましい。加熱硬化の際に発生する内部応力を低減する目的で、例えば80〜120℃、30分〜5時間予備硬化させた後に、120〜180℃、30分〜10時間の条件で後硬化させることができる。
【0063】
更に、本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される一般の用途に用いることができ、具体的には、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止材の他、封止材、基板用のシアネート樹脂組成物や、レジスト用硬化剤としてアクリル酸エステル系樹脂等、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
【0064】
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
【0065】
封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなどに用いられるポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、ICやLSI類のCOB、COF、TABなどに用いられるポッティング封止、フリップチップなどに用いられるアンダーフィル、QFP、BGAおよびCSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)などを挙げることができる。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる本発明の硬化物は光学部品材料をはじめ各種用途に使用できる。光学用材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。より具体的には、ランプタイプ、SMDタイプ等のLED用封止材の他、以下のようなものが挙げられる。液晶ディスプレイ分野における基板材料、導光板、プリズムシート、偏光板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料である。また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止材、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またLED表示装置に使用されるLEDのモールド材、LEDの封止材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤である。光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止材、接着剤などである。
【0067】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部である。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーである。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止材、接着剤などである。光センシング機器のレンズ用材料、封止材、接着剤、フィルムなどである。光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止材、接着剤などである。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止材、接着剤などである。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LEDの封止材、CCDの封止材、接着剤などである。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤などである。光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーである。半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料である。自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーハーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品である。また、鉄道車輌用の複層ガラスである。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーハーネス、耐蝕コートである。建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料である。農業用では、ハウス被覆用フィルムである。次世代の光・電子機能有機材料としては、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤などである。
【実施例】
【0068】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
また実施例において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)の測定においては以下の通りである。カラムは、Shodex SYSTEM−21カラム(KF−803L、KF−802.5(×2本)、KF−802)、連結溶離液はテトラヒドロフラン、流速は1ml/min.カラム温度は40℃、また検出はRI(Reflective index)で行い、検量線はShodex製標準ポリスチレンを使用した。
また官能基当量はGPCより算出した比率より算出し、カルボン酸、酸無水物をそれぞれ1当量として値を求めた。
【0069】
実施例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら室温で2,2´−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテル(パーストープ製 Di−TMP)10部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(以下、酸無水物H1)95部、ヘキサヒドロ無水フタル酸(以下、酸無水物H2)5部を一括で仕込み、80℃で8時間加熱撹拌を行うことで、本発明の多価カルボン酸樹脂(A1)と酸無水物(H1、H2)を含有する硬化剤組成物(B1)が110部得られた。得られた無色の液状樹脂であった。25℃における粘度は120Pa・sであった。尚、原料となる2,2´−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテルと酸無水物との反応時のモル比は、2,2´−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテルの水酸基1モルに対し、カルボン酸無水物基は3.9モルである。
【0070】
実施例2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら酸無水物(H1)100部を仕込み、90℃に昇温後、2,2´−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテル(パーストープ製 Di−TMP)10部を4分割で2時間かけて添加した後、そのまま80℃で5時間加熱撹拌を行うことで、本発明の多価カルボン酸樹脂(A2)と酸無水物(H1)を含有する硬化剤組成物(B2)が110部得られた。得られた樹脂は無色の液状樹脂であった。25℃における粘度は118Pa・sであった。尚、原料となる2,2´−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテルと酸無水物との反応時のモル比は、2,2´−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテルの水酸基1モルに対し、カルボン酸無水物基は3.7モルである。
【0071】
実施例3
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら酸無水物(H1)168部、カルビノール変性シリコーン(信越化学製 X−22−160−AS、下記一般式(3))488部を仕込み、70℃で8時間反応することで液状カルボン酸(以下、C1)とした後(25℃における粘度1050mPa・s)、90℃昇温後、酸無水物(H1)16.8部を仕込み、30分撹拌後、さらに2,2´−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテル(パーストープ製 Di−TMP)6.26部を2分割で30分かけて添加し、そのまま90℃で5時間加熱撹拌を行うことで、本発明の多価カルボン酸樹脂(A2)と液状多価カルボン酸(C1)を含有する多価カルボン酸組成物(B3)が679部得られた。得られた樹脂は無色の液状樹脂であった。25℃における粘度は2960mPa・sであった。尚、原料となる2,2´−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテルと酸無水物との反応時のモル比は、2,2´−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテルの水酸基1モルに対し、カルボン酸無水物基は1.0モルである。
【0072】
【化4】
【0073】
上記式中、nは平均の繰り返し数を示し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定結果から算出されたnの値はおおよそ8.6である。
【0074】
実施例4
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら酸無水物(H1)201.6部、カルビノール変性シリコーン(信越化学製 X−22−160−AS)488部、2,2´−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテル(パーストープ製 Di−TMP)12.5部を仕込み、80℃で8時間反応することで本発明の多価カルボン酸樹脂(A2)と液状多価カルボン酸(C1)を含有する多価カルボン酸組成物(B4)が702.1部得られた。得られた樹脂は無色の液状樹脂であった。25℃における粘度は2880mPa・sであった。尚、原料となる2,2´−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテルと酸無水物との反応時のモル比は、2,2´−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテルの水酸基1モルに対し、カルボン酸無水物基は1.0モルである。
【0075】
合成例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら1,4−シクロヘキサンジメタノール(新日本理化製 SKY−CDM)10部、酸無水物(H1)100部を加え、60℃で4時間加熱撹拌を行うことで比較例用の硬化剤組成物(B5)が110部得られた。
【0076】
合成例2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら1,6−ヘキサンジオール10部、酸無水物(H1)100部を加え、60℃で4時間加熱撹拌を行うことで比較例用の硬化剤組成物(B6)が110部得られた。
【0077】
合成例3
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら水10部、シクロヘキセニルメチルシクロヘキセンカルボキシレートを110部、トルエン140部、12−タングストリン酸1部、タングステン酸ナトリウム1.5部、燐酸水素2ナトリウム1.5部、トリオクチルアンモニウムアセテート50%キシレン溶液1.5部を加え、この溶液を45℃に昇温し、35重量%過酸化水素水110部を20分で加え、その後、45±5℃に保持し、12時間攪拌した。
ついで1重量%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、20重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液25部を加え30分攪拌を行い、静置した。2層に分離した有機層を取り出し、ここに活性炭(味の素ファインテクノ製 CP1)5部、モンモリロナイト(クニミネ工業製 クニピアF)5部を加え、室温で3時間攪拌後、ろ過した。得られたろ液を水100部で3回水洗を行い、得られた有機層より、トルエンを留去することで、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(EP1)111部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は130g/eq.であった。25℃における粘度は211mPa・sであった。(E型粘度計)
【0078】
合成例4
β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン106部、重量平均分子量1700(GPC測定値)のシラノール末端メチルフェニルシリコーンオイル234部(シラノール当量850、GPCを用いて測定した重量平均分子量の1/2として算出した。)、0.5%水酸化カリウム(KOH)メタノール溶液18部を反応容器に仕込み、バス温度を75℃に設定し、昇温した。昇温後、還流下にて8時間反応させた。
ついで、メタノールを305部追加後、蒸留水のメタノール溶液(濃度50重量%)86.4部を60分かけて滴下し、還流下75℃にて8時間反応させた。反応終了後、5%リン酸2水素ナトリウム水溶液で中和後、80℃でメタノールの約90%を蒸留回収した。メチルイソブチルケトン380部を添加し、200部の水で水洗を3回繰り返した。次いで有機相をロータリーエバポレータを用い、減圧下、100℃で溶媒を除去することによりシロキサン構造を有するエポキシ樹脂(EP2)300部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は729g/eq、重量平均分子量は2200、外観は無色透明であった。
【0079】
合成例5
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置、ディーンスターク管を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(岩谷瓦斯製 DMCD−p)140部、シクロヘキセン−4−メタノール314部、テトラブトキシチタン0.07部を加え、120℃1時間、150℃1時間、170℃1時間、190℃12時間、反応により生成するメタノールを抜きながら反応させた後、50℃まで冷却した。冷却終了後、347部のトルエンを加え均一にした後、反応溶液を10重量%水酸化ナトリウム水溶液80部で3回洗浄し、さらに水100部/回で廃水が中性になるまで水洗を繰り返し、ロータリーエバポレータで加熱減圧下、トルエンと未反応のシクロヘキセン−4−メタノールを留去することによりビス(3−シクロヘキセニルメチル)=1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を主成分とする常温で液状の化合物(D−1)が240部得られた。
【0080】
合成例6
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら水15部、12−タングストリン酸0.95部、燐酸水素2ナトリウム0.78部、トリオクチルアンモニウムアセテート50%キシレン溶液2.7部、トルエン180部、合成例5で得られた化合物(D−1)を118部加え、この溶液を60℃に昇温し、激しく攪拌しながら、35重量%過酸化水素水70部を1時間で加え、そのまま60℃で13時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーにて反応の進行を確認したところ、原料ピークは消失していた。ついで1重量%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、20重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液25部を加え30分攪拌を行い、静置した。2層に分離した有機層を取り出し、ここに活性炭(味の素ファインテクノ製 CP1)20部、ベントナイト(ホージュン製 ベンゲルSH)20部を加え、室温で1時間攪拌後、ろ過した。得られたろ液を水100部で3回水洗を行い、得られた有機層より、トルエンを留去することで、常温で液状のエポキシ樹脂(EP3)119部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は207g/eq.であった。25℃における粘度は9200mPa・sであった。(E型粘度計)
【0081】
合成例7
硬化剤組成物(B2)50部にメチルエチルケトン20部を加え均一に溶解した後、ロータリーエバポレータを用い、100〜150℃で加えたメチルエチルケトンと共に過剰に存在するメチルヘキサヒドロフタル酸無水物(H1)を除去(メチルヘキサヒドロフタル酸無水物の流出が無くなった時点より、加熱減圧条件下のまま窒素ガスを40分流入し、十分に酸無水物を除去した)することで多価カルボン酸樹脂(A2)を16.2部取り出した。形状は無色の固形樹脂であった。得られた樹脂の軟化点(JIS K−7234に準拠)は90.1℃であり、150℃における溶融粘度は0.64Pa・sであった。本カルボン酸樹脂は90℃以上の高い温度でなければ流動性が非常に低く、取扱いが困難であった。
*溶融粘度
150℃におけるコーンプレート法における溶融粘度
測定機械:コーンプレート(ICI)高温粘度計
(RESEARCH EQUIPMENT(LONDON)LTD.製)
コーンNo.:4(測定範囲0〜4.00Pa・s)
【0082】
実施例5、6、比較例1
実施例1、2で得られた本発明の硬化剤組成物(B1、B2)、比較例として、酸無水物(H1)を硬化剤として用い、エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂(EP1)、硬化促進剤としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(東京化成工業(株)製 25%メタノール溶液、以下、K1と称す。)を使用し、下記表1に示す配合比(重量部)で配合し、20分間脱泡を行い、本発明または比較用の硬化性樹脂組成物を得た。
【0083】
得られた硬化性樹脂組成物を用い、以下に示す要領で、揮発試験をおこない、結果を表1に合わせて示す。なお、硬化条件は120℃×2時間の予備硬化の後150℃×5時間である。
【0084】
(揮発試験)
実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を真空脱泡20分間実施後、30mm×20mm×高さ1mmになるように耐熱テープでダムを作成したガラス基板上に静かに注型した。注型された樹脂の重量を正確に測定後、その注型物を前述の条件で硬化させた。
このようにして得られた硬化物の重量を測定し、硬化時の重量減少を確認した。(実施例、比較例の硬化は同じオーブンで同様に硬化させた)
【0085】
【表1】
【0086】
実施例5、6と比較例1を比較すると、本発明の硬化性樹脂組成物は、揮発量が少ないことが明らかである
【0087】
実施例7、比較例2、3
エポキシ樹脂として合成例3,6で得られたエポキシ樹脂(EP1、EP3)、硬化剤として、実施例2で得られた硬化剤組成物(B2)、合成例1、2で得られた硬化剤組成物(B5、B6)、硬化促進剤として4級ホスホニウム塩(日本化学工業製 ヒシコーリンPX4MP 以下、K2と称す。)を使用し、下記表2に示す配合比(重量部)で配合し、20分間脱泡を行い、本発明または比較用の硬化性樹脂組成物を得た。
【0088】
得られた硬化性樹脂組成物を試験片用金型に静かに注型し、その注型物を、120℃×3時間の予備硬化の後150℃×1時間の条件で硬化させ各種試験用の硬化物を得た。得られた硬化物について以下の熱耐久性透過率試験を行った。結果を下記表2に併せて示す。
【0089】
(熱耐久性透過率試験)
耐熱試験条件:150℃オーブン中、96hr放置
試験片サイズ:厚さ0.8mmで測定、1.0mmの透過率に換算
評価条件:分光光度計により、400nmの透過率を測定。その変化率を算出。
【0090】
【表2】
【0091】
実施例8、比較例4、5
エポキシ樹脂として合成例4で得られたエポキシ樹脂(EP2)、硬化剤として、実施例2で得られた硬化剤組成物(B2)、合成例1、2で得られた硬化剤組成物(B5、B6)、硬化促進剤として4級ホスホニウム塩(日本化学工業製 ヒシコーリンPX4MP 以下、K2と称す。)、添加剤としてビス(2,2,6,6−テトラメチルー4−ピペリジル)セパケート(チバジャパン製 TINUVIN770DF 以下、ヒンダートアミンL1と称す。)およびリン系化合物として、4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)(ADEKA製 アデカスタブ260 以下 リン化合物L2)を使用し、を使用し、下記表3に示す配合比(重量部)で配合し、20分間脱泡を行い、本発明または比較用の硬化性樹脂組成物を得た。
【0092】
得られた硬化性樹脂組成物を試験片用金型に静かに注型し、その注型物を、120℃×3時間の予備硬化の後150℃×1時間の条件で硬化させ各種試験用の硬化物を得た。得られた硬化物について以下の熱耐久性透過率試験を行った。結果を下記表3に併せて示す。
【0093】
(熱耐久性透過率試験)
耐熱試験条件:150℃オーブン中、96hr放置
試験片サイズ:厚さ0.8mmで測定、1.0mmの透過率に換算
評価条件:分光光度計により、400nmの透過率を測定。その変化率を算出。
【0094】
【表3】
【0095】
以上の結果より、本発明の硬化剤組成物を使用した硬化性樹脂組成物は、耐熱性に優れた光学特性を有することが明らかである。
【0096】
実施例9、比較例6、7、8
エポキシ樹脂として合成例4で得られたエポキシ樹脂(EP2)、硬化剤として、実施例1で得られた硬化剤組成物(B1)、合成例1、2で得られた硬化剤組成物(B5、B6)、酸無水物(H1)、硬化促進剤として(K2)、添加剤として(L1)を使用し、下記表4に示す配合比(重量部)で配合し、20分間脱泡を行い、本発明または比較用の硬化性樹脂組成物を得た。
【0097】
得られた硬化性樹脂組成物を試験片用金型に静かに注型し、その注型物を、120℃×3時間の予備硬化の後150℃×1時間の条件で硬化させ各種試験用の硬化物を得た。得られた硬化物について以下の硬度、耐熱性(Tg)の評価を行った。結果を下記表4に併せて示す。(ただし、各々揮発による硬化物の硬化不良のパラメータを除くため、金型表面にイミドフィルムをのせ、揮発を十分に抑えて硬化を行った。)
【0098】
(硬度)
ショアA
JIS K 7215「プラスチックのデュロメーター硬さ試験方法」に準拠
ショアD
JIS K 7215「プラスチックのデュロメーター硬さ試験方法」に準拠
【0099】
(耐熱性(Tg))
実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物をテフロン(登録商標)製のφ5mmチューブにて注形し、その注型物を前述の条件で硬化させ試験片を得た。この試験片を用い、下記に示した条件で、耐熱性試験を実施した。
測定条件動的粘弾性測定器:TA−instruments製、DMA-2940
測定温度範囲:40℃〜250℃
昇温速度:2℃/分
試験片サイズ:φ2mm 15mmに切り出した物を使用した。
【0100】
【表4】
【0101】
以上の結果から、通常エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる酸無水物L1を使用した比較例6の硬化物に比べて、本発明の硬化剤組成物を含む硬化性樹脂組成物はTgや硬度を維持しつつ、さらに耐熱性を向上させる顕著な効果を奏することが明らかである。一方、比較例7および比較例8の硬化物は、通常エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる酸無水物L1を使用した比較例6の硬化物よりも硬度、耐熱性のいずれにおいてもその性能が大きく低下していることが分かる。
【0102】
(実施例10〜11、比較例9)
実施例3、4で得られた多価カルボン酸組成物B3,B4、実施例3におけるC1を別途合成して得られたC1、硬化促進剤として2-エチルヘキサン酸亜鉛(以下K3と称す)を用い、表5に記載の配合で硬化性樹脂組成物を作成し、その後、真空脱泡20分間実施した。
(A)LED点灯試験
シリンジに充填し精密吐出装置を使用して、発光波長465nmを持つ発光素子を搭載した外径5mm角表面実装型LEDパッケージ(内径4.4mm、外壁高さ1.25mm)に注型した。その後、120℃、1時間さらに150℃、3時間の硬化処理をして点灯試験用LEDを得る。点灯試験は、規定電流である20mAの11.5倍の電流での点灯試験を行った。詳細な条件は下記に示した。測定項目としては、40時間後、80時間後の点灯前後の照度を積分球を使用して測定し、試験用LEDの照度の保持率を算出した。結果を表5に示す。
点灯詳細条件
発光波長:中心発光波長、465nm
駆動方式:定電流方式、230mA(発光素子規定電流は20mA)直列で3ヶ同時に点灯(n=3の平均)
駆動環境:25℃、65%湿熱機内での点灯
評価:40時間後、80時間後の照度とその照度保持率
【0103】
(B)耐ガス透過性試験(腐食ガス透過性試験);
シリンジに充填し精密吐出装置を用いて、中心発光波465nmのチップを搭載した外径5mm角表面実装型LEDパッケージ(内径4.4mm、外壁高さ1.25mm)に注型した。その注型物を加熱炉に投入して、120℃、1時間さらに150℃、3時間の硬化処理をしてLEDパッケージを作成した。下記条件でLEDパッケージを腐食性ガス中に放置し、封止内部の銀メッキされたリードフレーム部の色の変化を観察した。
測定条件
腐食ガス:硫化アンモニウム20%水溶液(硫黄成分が銀と反応した場合に黒く変色する)
接触方法:広口ガラス瓶の中に、硫化アンモニウム水溶液の容器と前記LEDパッケージを混在させ、広口ガラス瓶の蓋をして密閉状況下、揮発した硫化アンモニウムガスとLEDパッケージを10時間接触させた。
腐食の判定:LEDパッケージ内部のリードフレームが黒く変色(黒化という)しているか否かで判断を行った。
【0104】
【表5】
【0105】
以上の結果から、本発明の多価カルボン酸樹脂組成物を含む硬化性樹脂組成物は、点灯試験照度保持率に優れるとともに、耐ガス透過性についてもリードフレームを変色させること無く優れた効果が得られることが明らかである。
【0106】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2010年6月30日付で出願された日本特許出願(特願2010−149411)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。