【実施例】
【0046】
実施例1〜5(ドーパントとしてPtを使用)
30gCo/100g担体(1.5gSi/100gPuralox SCCa 2/150)を含み、Ptによって促進化(promoted)されたいくつかのフィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、粒状物の変性された1.5gSi/100gPuralox SCCa 2/150(商標)の予備成形された担体上に、水性スラリー相含浸および乾燥、及びそれに続く空気中での直接流動床焼成および水素中での還元によって調製した。
【0047】
実施例1〜5の触媒は、種々の濃度のPt還元プロモータを含んでいた。
実施例1(本発明):0gPt/gCo
実施例2(本発明):0.00083gPt/gCo
実施例2A(本発明):0.0010gPt/gCo
実施例3(比較例):0.0025gPt/gCo
実施例4(比較例):0.0050gPt/gCo
実施例5(比較例):0.0167gPt/gCo
【0048】
特に、実施例3の粒状物の担持されたFTS触媒は、以下のようにして調製した。43.70gのCo(NO
3)
2・6H
2Oを40mlの蒸留水に溶解させ、この溶液に、(10mlの蒸留水に溶解させた)0.024gのPt(NH
3)
4・(NO
3)
2を添加し、その後、その溶液に50gの1.5gSi/100gPuralox SCCa 2/150変性および予備成形した担体を添加した。温度を60℃から85℃へ上昇させながら、水性スラリー相含浸および真空乾燥を行った。この真空乾燥した中間体を、温度を25℃から250℃へ1℃/分で上昇させながら、1.7dm
3n/分の連続的空気流を使用する流動床焼成工程に直接的に付し、250℃に6時間保持した。50gのこの中間的焼成材料を、以下の第2のコバルト/白金含浸および焼成工程に付した:23.51gのCo(NO
3)
2・6H
2Oを40mlの蒸留水に溶解させ、この溶液に0.039gの(10mlの蒸留水に溶解させた)Pt(NH
3)
4・(NO
3)
2を添加し、その後、前述の第1のコバルト/白金含浸および焼成中間体を添加した。温度を60℃から85℃へ上昇させながら、水性スラリー相含浸および真空乾燥を実施した。この真空乾燥した中間体を、温度を25℃から250℃へ1℃/分で上昇させながら、1.7dm
3n/分の連続的空気流を使用する以下の手順による流動床焼成工程に直接的に付し、250℃に6時間保持した。
【0049】
この焼成触媒中間体または前駆体を、温度を25℃から425℃へ1℃/分で上昇させながら、純粋なH
2(空間速度=2000ml
nH
2/g触媒/h)中で、1バール(100kPa)にて還元し、その後、温度をこの425℃に16時間保持した。これによって、コバルトの触媒的に活性な形態である1つ以上の1種もしくはそれ以上の酸化アルミニウムの形態のアルミナ、および触媒担体に担持されたコバルトの触媒的に活性な形態のCo金属を含む、粒状物に担持されたFTS触媒が提供される。この場合、ドーパントはPtである。
【0050】
実施例1、2、2A、3、4および5の触媒は、正しい組成が得られることを確保するために、白金前駆体の量を調整する以外は、同様に調製された。実施例1、2および2Aの触媒は本発明のものであり、一方、実施例3、4および5の触媒は比較例のものである。
【0051】
実施例6(クリーンな合成ガスを使用)
実施例1〜5の触媒を、約3.0バール(絶対圧)(300kPa(絶対圧))H
2O、6.3バール(絶対圧)(630kPa(絶対圧))H
2および4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、15バール(絶対圧)(1500kPa(絶対圧))の全圧を有し、及び約4.4バール(絶対圧)(440kPa(絶対圧))H
2O、4.6バール(絶対圧)(460kPa(絶対圧))H
2および3.9バール(絶対圧)(390kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、固定床の高スループット反応器システム中で試験し、約25%の合成ガス転化率を達成した。230℃および210℃の反応温度で試験した。合成ガスフィードは、クリーンで、いかなる窒素含有化合物も含まなかった。
【0052】
5日間の操作後の相対的活性及びCH
4選択性についての得られたデータは、表1及び2に報告した通りであった。CH
4選択性データは、全炭化水素化合物およびC
5+選択性についての良好なインジケータであり、それは、それらが通常は直接的にリンクされている、即ち、CH
4選択性が低ければ低い程、C
5+選択性がより高いためである。
【0053】
相対的活性は、一般的なコバルトフィッシャー・トロプシュ速度式を用い、及び、試験した各触媒を内部参照触媒と比較して計算した。
【0054】
実施例7(合成ガス中のHCNを使用)
実施例1〜5の触媒を、約3.0バール(絶対圧)(300kPa(絶対圧))H
2O、6.3バール(絶対圧)(630kPa(絶対圧))H
2および4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、15バール(絶対圧)(1500kPa(絶対圧))の全圧を有し、及び約4.4バール(絶対圧)(440kPa(絶対圧))H
2O、4.6バール(絶対圧)(460kPa(絶対圧))H
2および3.9バール(絶対圧)(390kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、固定床の高スループット反応器システム中で試験した。230℃および210℃の反応温度で試験した。合成ガスフィードは、5000vppbのHCNを含んでいた。
【0055】
5日間の操作後の相対的活性及びCH
4選択性についての得られたデータは、表1に報告した通りであった。
【0056】
表1:(i)いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィード、及び(ii)5000vppbHCNを含む合成ガスフィードを使用した、実施例1〜5について230℃で5日間のFTSの後での相対的活性及びCH
4選択性。活性についての誤差は±0.1単位であり、CH
4選択性についての誤差は±0.1パーセントポイントである。
【0057】
【0058】
実施例8(合成ガス中、NH
3使用)
実施例1〜5の触媒を、約3.0バール(絶対圧)(300kPa(絶対圧))H
2O、6.3バール(絶対圧)(630kPa(絶対圧))H
2および4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、約4.4バール(絶対圧)(440kPa(絶対圧))H
2O、4.6バール(絶対圧)(460kPa(絶対圧))H
2および3.9バール(絶対圧)(390kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、固定床の高スループット反応器システム中で試験し、約25%の合成ガス転化率を達成した。230℃および210℃の反応温度で試験した。合成ガスフィードは、5000vppbのNH
3を含んでいた。
【0059】
5日間の操作後の相対的活性及びCH
4選択性についての得られたデータは、表2に報告した通りであった。
【0060】
表2:(i)いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィード(実施例6)、及び(ii)5000vppbNH
3を含む合成ガスフィードを使用した、実施例1〜5について230℃で5日間のFTSの後での相対的活性及びCH
4選択性。活性についての誤差は±0.1単位であり、CH
4選択性についての誤差は±0.1パーセントポイントである。
【0061】
【0062】
実施例9(合成ガス中、ジエタノールアミン(DEA)使用)
実施例2Aの触媒(本発明、0.001gPt/gCo)を、約3.0バール(絶対圧)(300kPa(絶対圧))H
2O、6.3バール(絶対圧)(630kPa(絶対圧))H
2および4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、15バール(絶対圧)(1500kPa(絶対圧))の全圧を有し、及び約4.4バール(絶対圧)(440kPa(絶対圧))H
2O、4.6バール(絶対圧)(460kPa(絶対圧))H
2および3.9バール(絶対圧)(390kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、固定床の高スループット反応器システム中で試験した。230℃および210℃の反応温度で試験した。合成ガスフィードは、(i)100vppbのDEA及び(ii)1000vppbのDEAを含んでいた。
【0063】
5日間の操作後、得られた相対的活性およびCH
4選択性のデータは、表3に報告した通りであった。
【0064】
表3:(i)いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィード、(ii)100vppbのDEAを含む合成ガスフィード;および(iii)1000vppbのDEAを含む合成ガスフィードを使用した、実施例2Aについて230℃で5日間のFTSの後での相対的活性及びCH
4選択性。活性についての誤差は±0.1単位であり、CH
4選択性についての誤差は±0.1パーセントポイントである。
【0065】
【0066】
表3から、100vppbのDEAが存在する場合には顕著な活性の損失は認められないが、1000vppbのDEAが存在する場合には実際に多少の活性の損失が認められると結論付けることができる。100vppbのDEAが存在する場合に生成したより少ないメタンにおける選択性ゲインは小さいが、1000vppbのDEAが存在する場合に生成したメタンにおいてはより顕著なゲインがある。
【0067】
実施例10(合成ガス中、メチルジエタノールアミン(mDEA)使用)
実施例2Aの触媒(本発明、0.001gPt/gCo)を、約3.0バール(絶対圧)(300kPa(絶対圧))H
2O、6.3バール(絶対圧)(630kPa(絶対圧))H
2および4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、15バール(絶対圧)(1500kPa(絶対圧))の全圧を有し、及び約4.4バール(絶対圧)(440kPa(絶対圧))H
2O、4.6バール(絶対圧)(460kPa(絶対圧))H
2および3.9バール(絶対圧)(390kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、固定床の高スループット反応器システム中で試験した。230℃および210℃の反応温度で試験した。合成ガスフィードは、(i)100vppbのmDEA及び(ii)1000vppbのmDEAを含んでいた。
【0068】
5日間の操作後、得られた相対的活性およびCH
4選択性のデータは、表4に報告した通りであった。
【0069】
表4:(i)いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィード、(ii)100vppbのmDEAを含む合成ガスフィード;および(iii)1000vppbのmDEAを含む合成ガスフィードを使用した、実施例2Aについて230℃で5日間のFTSの後での相対的活性及びCH
4選択性。活性についての誤差は±0.1単位であり、CH
4選択性についての誤差は±0.1パーセントポイントである。
【0070】
【0071】
表4から、100vppbのmDEAが存在する場合にはわずかな活性の損失があるが、1000vppbのmDEAが存在する場合には実際により大きな活性の損失が認められると結論付けることができる。100vppbのmDEAが存在する場合に生成したより少ないメタンにおける選択性ゲインは小さいが、1000vppbのmDEAが存在する場合に生成したメタンにおいてはより顕著なゲインがある。
【0072】
実施例11(合成ガス中、CH
3CN使用)
実施例2Aおよび3の触媒を、約3.0バール(絶対圧)(300kPa(絶対圧))H
2O、6.3バール(絶対圧)(630kPa(絶対圧))H
2および4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、15バール(絶対圧)(1500kPa(絶対圧))の全圧を有し、及び約4.4バール(絶対圧)(440kPa(絶対圧))H
2O、4.6バール(絶対圧)(460kPa(絶対圧))H
2および3.9バール(絶対圧)(390kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、固定床の高スループット反応器システム中で試験した。230℃および210℃の反応温度で試験した。合成ガスフィードは、(i)500vppbのCH
3CN;(ii)1000vppbのCH
3CNおよび(iii)5000vppbのCH
3CNを含んでいた。
【0073】
5日間の操作後、得られた相対的活性およびCH
4選択性のデータは、表5に報告した通りであった。
【0074】
表5:(i)いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィード、(ii)500vppbのCH
3CNを含む合成ガスフィード、(iii)1000vppbのCH
3CNを含む合成ガスフィード、および(iv)5000vppbのCH
3CNを含む合成ガスフィードを使用した、実施例2Aおよび3について230℃で5日間のFTSの後での相対的活性及びCH
4選択性。活性についての誤差は±0.1単位であり、CH
4選択性についての誤差は±0.1パーセントポイントである。
【0075】
【0076】
表5から、500vppbのCH
3CNが存在する場合には実質的な活性の損失があるが、CH
3CNレベルが上昇すると安定化するようであると結論付けることができる。500vppbのCH
3CNが存在する場合に、より低いメタンの実質的な選択性のゲインもあり、より高いレベルで存在する場合には安定化するようである。選択性のゲインは、Pt含量がより少ない実施例2Aについては、Pt含量がより多い実施例3よりも大きい。
【0077】
実施例12(クリーンな合成ガスを使用)
実施例2Aおよび3の触媒を、約0バール(絶対圧)(0kPa(絶対圧))H
2O、9.4バール(絶対圧)(940kPa(絶対圧))H
2および5.7バール(絶対圧)(570kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、18バール(絶対圧)(1800kPa(絶対圧))の全圧を有し、及び約4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))H
2O、4.3バール(絶対圧)(430kPa(絶対圧))H
2および3.8バール(絶対圧)(380kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、スラリー相マイクロ反応器システム中で試験し、約63%の合成ガス転化率を達成した。230℃の反応温度を使用した。合成ガスフィードは、クリーンで、いかなる窒素含有化合物も含まなかった。
【0078】
30日間の操作後、得られた相対的活性およびCH
4選択性のデータは、表6に報告した通りであった。上述したように、CH
4選択性データは、全炭化水素化合物およびC
5+選択性についての良好なインジケータであり、それは、それらが通常は直接的にリンクされている、即ち、CH
4選択性が低ければ低い程、C
5+選択性がより高いためである。
【0079】
相対的活性は、一般的なコバルトフィッシャー・トロプシュ速度式を用い、及び、試験した各触媒を内部参照触媒と比較して計算した。
【0080】
実施例13(合成ガス中、HCN使用)
実施例2Aおよび3の触媒を、約0バール(絶対圧)(0kPa(絶対圧))H
2O、9.4バール(絶対圧)(940kPa(絶対圧))H
2および5.7バール(絶対圧)(570kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、18バール(絶対圧)(1500kPa(絶対圧))の全圧を有し、及び約4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))H
2O、4.3バール(絶対圧)(430kPa(絶対圧))H
2および3.8バール(絶対圧)(380kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、スラリー相マイクロ反応器システム中で試験し、約63%の合成ガス転化率を達成した。230℃の反応温度を使用した。合成ガスフィードは、2000vppbのHCNを含んでいた。
【0081】
30日間の操作後、得られた相対的活性およびCH
4選択性のデータは、表6に報告した通りであった。
【0082】
表6:(i)いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィード、および(ii)2000vppbのHCNを含む合成ガスフィードを使用した、実施例2Aおよび3について230℃で30日間のFTSの後での相対的活性及びCH
4選択性。活性についての誤差は±0.1単位であり、CH
4選択性についての誤差は±0.1パーセントポイントである。
【0083】
【0084】
実施例14(合成ガス中、NOを使用)
実施例3の触媒(比較例、0.0025gPt/gCo)を、約0バール(絶対圧)(0kPa(絶対圧))H
2O、9.4バール(絶対圧)(940kPa(絶対圧))H
2および5.7バール(絶対圧)(570kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、18バール(絶対圧)(1800kPa(絶対圧))の全圧を有し、及び約4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))H
2O、4.3バール(絶対圧)(430kPa(絶対圧))H
2および3.8バール(絶対圧)(380kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、スラリー相マイクロ反応器システム中で試験し、約63%の合成ガス転化率を達成した。230℃の反応温度を使用した。合成ガスフィードは、2000vppbのNOを含んでいた。
【0085】
30日間の操作後、得られた相対的活性およびCH
4選択性のデータは、表7aに報告した通りであった。
【0086】
実施例15(合成ガス中、CH
3CNを使用)
実施例3の触媒(比較例、0.0025gPt/gCo)を、約0バール(絶対圧)(0kPa(絶対圧))H
2O、9.4バール(絶対圧)(940kPa(絶対圧))H
2および5.7バール(絶対圧)(570kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、18バール(絶対圧)(1800kPa(絶対圧))の全圧を有し、及び約4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))H
2O、4.3バール(絶対圧)(430kPa(絶対圧))H
2および3.8バール(絶対圧)(380kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、スラリー相マイクロ反応器システム中で試験し、約63%の合成ガス転化率を達成した。230℃の反応温度を使用した。合成ガスフィードは、2000vppbのCH
3CNを含んでいた。
【0087】
30日間の操作後、得られた相対的活性およびCH
4選択性のデータは、表7aに報告した通りであった。
【0088】
2000vppb、10000vppbおよび100000vppbのCH
3CNレベルにて、CH
3CNを用いて同様の試験を行った。10日間の操作後、得られた相対的活性およびCH
4選択性のデータは、表7bに報告した通りであった。
【0089】
表7a:(i)いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィード、(ii)2000vppbのHCNを含む合成ガスフィード(実施例13)、(iii)2000vppbのNOを含む合成ガスフィード(実施例14)、および(iv)2000vppbのCH
3CNを含む合成ガスフィード(実施例15)を使用した、実施例3(即ち、比較例)について230℃で30日間のFTSの後での相対的活性及びCH
4選択性。活性についての誤差は±0.1単位であり、CH
4選択性についての誤差は±0.1パーセントポイントである。
【0090】
【0091】
表7b:(i)いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィード、(ii)2000vppb、10000vppbおよび100000vppbのCH
3CNを含む合成ガスフィード(実施例15)を使用した、実施例3(即ち、比較例)について230℃で10日間のFTSの後での相対的活性及びCH
4選択性。活性についての誤差は±0.1単位であり、CH
4選択性についての誤差は±0.1パーセントポイントである。
【0092】
【0093】
実施例16(合成ガス中、種々のレベルのHCNを使用)
実施例3の触媒(比較例、0.0025gPt/gCo)を、約0バール(絶対圧)(0kPa(絶対圧))H
2O、9.4バール(絶対圧)(940kPa(絶対圧))H
2および5.7バール(絶対圧)(570kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、18バール(絶対圧)(1800kPa(絶対圧))の全圧を有し、及び約4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))H
2O、4.3バール(絶対圧)(430kPa(絶対圧))H
2および3.8バール(絶対圧)(380kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、スラリー相マイクロ反応器システム中で試験し、約63%の合成ガス転化率を達成した。230℃の反応温度を使用した。合成ガスフィードは、(i)100vppbのHCN;(ii)200vppbのHCN;(iii)250vppbのHCN;(iv)500vppbのHCN;(v)2000vppbのHCN;(vi)3000vppbのHCN;および(vii)6000vppbのHCNを含んでいた。
【0094】
30日間の操作後、得られた相対的活性およびCH
4選択性のデータは、表8に報告した通りであった。
【0095】
表8:(i)いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィード、(ii)100vppbのHCNを含む合成ガスフィード、(iii)200vppbのHCNを含む合成ガスフィード、(iv)250vppbのHCNを含む合成ガスフィード、(v)500vppbのHCNを含む合成ガスフィード、(vi)2000vppbのHCNを含む合成ガスフィード、(vii)3000vppbのHCNを含む合成ガスフィード、および(viii)6000vppbのHCNを含む合成ガスフィードを使用した、実施例3について230℃で30日間のFTSの後での相対的活性及びCH
4選択性。活性についての誤差は±0.1単位であり、CH
4選択性についての誤差は±0.1パーセントポイントである。
【0096】
【0097】
表8から、100および200vppbのHCNの低いレベルでは顕著な活性の損失はなく、250vppbのHCNでは多少の活性の損失があり、500vppbのHCNではさらに活性の損失があり、2000vppbのHCNではさらに活性の損失があり、それ以上では安定化するようであると結論付けることができる。
【0098】
選択性(より低いメタン生成)のゲインは、これらのHCNレベルの全てについて3〜20%の範囲であり、そして500vppb以上では安定化するようである。
【0099】
表1〜8から、窒素含有化合物、例えばHCN、NH
3、NO、CH
3CN、DEA、およびmDEAを含む合成ガスフィードを使用する場合に、Pt含有コバルト触媒の触媒活性が低下すると結論付けることができる。
【0100】
驚くべきことに、表1〜8から、Pt含有触媒について、以下の事項を結論付けることができる。
−窒素含有化合物、例えばHCN、NH
3、NO、CH
3CN、DEA、およびmDEAの存在下でFTSを実施すると、より少ないPtを含有する触媒について、活性損失がより小さくなること;
−窒素含有化合物が存在すると、活性の順序が逆転すること、即ち、(合成ガス中に窒素含有化合物が存在する場合)Ptレベルが低い程、その活性はより高いこと;
−窒素含有化合物が存在すると、Ptレベルが最低のものについて、選択性ゲインが最高になること。
【0101】
また、驚くべきことに、表1から、促進化されていないコバルト触媒については、
−窒素含有化合物、例えばHCNまたはNH
3が存在すると、活性および選択性の両方が向上する
ということを結論付けることができる。
【0102】
CH
4選択性については、実施例1〜5の触媒を使用し、230℃に代えて210℃で実施したFTS試験について同様のパターンが観察されたが、その効果は210℃ではあまり顕著ではなかった。
【0103】
実施例17および18(ドーパントとして、Pdを使用)
30gCo/100g担体(1.5gSi/100gPuralox SCCa 2/150)を含み、Pdによって促進化された2つのフィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、粒状物の変性された1.5gSi/100gPuralox SCCa 2/150(商標)の予備成形された担体上に、水性スラリー相含浸および乾燥、及びそれに続く空気中での直接流動床焼成および水素中での還元によって調製した。
【0104】
2つの触媒は、種々のレベルのPd還元プロモータを含んでいた。
実施例17(本発明):0.0025gPd/gCo;
実施例18(比較例):0.0050gPd/gCo。
【0105】
実施例17および18の触媒は、(白金前駆体の代わりに)パラジウム前駆体として硝酸パラジウムを使用したこと、および正確な組成が得られるように、パラジウム前駆体の量を調節したこと以外は、実施例3と同様の方法で調製した。実施例17の触媒は本発明の触媒であり、一方、実施例18の触媒は比較例の触媒である。
【0106】
実施例19
実施例17および18の触媒を、約3.0バール(絶対圧)(300kPa(絶対圧))H
2O、6.3バール(絶対圧)(630kPa(絶対圧))H
2および4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、及び約4.4バール(絶対圧)(440kPa(絶対圧))H
2O、4.6バール(絶対圧)(460kPa(絶対圧))H
2および3.9バール(絶対圧)(390kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、固定床の高スループット反応器システム中で試験し、約25%の合成ガス転化率を達成した。反応温度は230℃であった。いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィードおよび5000vppbのNH
3を含む汚染した合成ガスフィードを使用して、比較試験を行った。
【0107】
5日間の操作後、得られた相対的活性およびCH
4選択性のデータは、表9に報告した通りであった。
【0108】
表9:(i)いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィード、および(ii)5000vppbのNH
3を含む合成ガスフィードを使用した、実施例9及び10について230℃で5日間のFTSの後での相対的活性及びCH
4選択性。活性についての誤差は±0.1単位であり、CH
4選択性についての誤差は±0.1パーセントポイントである。
【0109】
【0110】
表9から、5000vppbのNH
3を含む合成ガスフィードを使用する場合、Pd含有コバルト触媒の触媒活性は7〜19%減少すると結論付けることができる。
【0111】
驚くべきことに、表9から、Pd含有触媒について、以下の事項を結論付けることができる。
−NH
3の存在下でFTSを実施すると、より少ないPdを含有する触媒についての活性の損失がより少ないこと;
−NH
3が存在すると、活性の順序が逆転すること、即ち、(合成ガス中にNH
3が存在する場合)触媒Pdレベルが低い程、その活性が高いこと。
【0112】
実施例20および21(ドーパントとして、Ruを使用)
30gCo/100g担体(1.5gSi/100gPuralox SCCa 2/150)を含み、ルテニウムによって促進化された2つのフィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、粒状物の変性された1.5gSi/100gPuralox SCCa 2/150(商標)の予備成形された担体上に、水性スラリー相含浸および乾燥、及びそれに続く空気中での直接流動床焼成および水素中での還元によって調製した。
【0113】
2つの触媒は、異なるレベルのRu還元プロモータを含んでいた。
実施例20(本発明):0.0050gのRu/gCo、
実施例21(比較例):0.024gのRu/gCo。
【0114】
実施例20および21の触媒は、(白金前駆体の代わりに)ルテニウム前駆体として硝酸ルテニウムを使用したこと、および正確な組成が得られるように、ルテニウム前駆体の量を調節したこと以外は、実施例3と同様の方法で調製した。実施例20の触媒は本発明の触媒であり、一方、実施例21の触媒は比較例の触媒である。
【0115】
実施例22
実施例20および21の触媒を、約3.0バール(絶対圧)(300kPa(絶対圧))H
2O、6.3バール(絶対圧)(630kPa(絶対圧))H
2および4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、約4.4バール(絶対圧)(440kPa(絶対圧))H
2O、4.6バール(絶対圧)(460kPa(絶対圧))H
2および3.9バール(絶対圧)(390kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、固定床の高スループット反応器システム中で試験し、約25%の合成ガス転化率を達成した。温度は230℃であった。いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィードおよび5000vppbのHCNを含む汚染した合成ガスフィードを使用して、比較試験を行った。
【0116】
5日間の操作後、得られた相対的活性およびCH
4選択性のデータは、表10に報告した通りであった。
【0117】
表10:(i)いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィード、および(ii)5000vppbのHCNを含む合成ガスフィードを使用した、実施例20及び21について230℃で5日間のFTSの後での相対的活性及びCH
4選択性。活性についての誤差は±0.1単位であり、CH
4選択性についての誤差は±0.1パーセントポイントである。
【0118】
【0119】
表10から、5000vppbのHCNを含む合成ガスフィードを使用する場合、Ru含有コバルト触媒の触媒活性は15〜35%減少すると結論付けることができる。
【0120】
驚くべきことに、表10から、Ru含有触媒について、以下の事項を結論付けることができる。
−HCNの存在下でFTSを実施すると、より少ないRuを含有する触媒についての活性の損失がより少ないこと;
−HCNが存在すると、活性の順序が逆転すること、即ち、(合成ガス中にHCNが存在する場合)触媒Ruレベルが低い程、その活性が高いこと;
−HCNが存在すると、最も低いRuレベルについて、CH
4選択性ゲインが最も高いこと。
【0121】
実施例23(ドーパントとしてReを使用)
30gCo/100g担体(1.5gSi/100gPuralox SCCa 2/150)を含み、Reによって促進化されたフィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、粒状物の変性された1.5gSi/100gPuralox SCCa 2/150(商標)の予備成形された担体上に、水性スラリー相含浸および乾燥、及びそれに続く空気中での直接流動床焼成および水素中での還元によって調製した。このサンプルは(本発明による)0.0025gRe/gCoを含んでいた。
【0122】
実施例23の触媒は、(白金前駆体の代わりに)レニウム前駆体として過レニウム酸(HReO
4)を使用したこと、および正確な組成が得られるように、レニウム前駆体の量を調節したこと以外は、実施例3と同様の方法で調製した。
【0123】
実施例24(合成ガス中でNH
3を使用)
実施例23の触媒(本発明、0.0025gRe/gCo)を、約3.0バール(絶対圧)(300kPa(絶対圧))H
2O、6.3バール(絶対圧)(630kPa(絶対圧))H
2および4.5バール(絶対圧)(450kPa(絶対圧))COのFTS入口条件を用い、15バール(絶対圧)(1500kPa(絶対圧))の全圧を有し、及び約4.4バール(絶対圧)(440kPa(絶対圧))H
2O、4.6バール(絶対圧)(460kPa(絶対圧))H
2および3.9バール(絶対圧)(390kPa(絶対圧))COの出口条件を得る、固定床の高スループット反応器システム中で試験した。反応温度は230℃で試験した。合成ガスフィードは、5000vppbのNH
3を含んでいた。
【0124】
5日間の操作後、得られた相対的活性およびCH
4選択性のデータは、表11に報告した通りであった。
【0125】
表11:(i)いかなるN含有化合物も含まないクリーンな合成ガスフィード、および(ii)5000vppbのNH
3を含む合成ガスフィードを使用した、実施例23について230℃で5日間のFTSの後での相対的活性及びCH
4選択性。活性についての誤差は±0.1単位であり、CH
4選択性についての誤差は±0.1パーセントポイントである。
【0126】
【0127】
表11から、5000vppbのNH
3が存在する場合、顕著な活性の損失があると結論付けることができる。5000vppbのNH
3が存在する場合、顕著な選択性(より低いメタン生成)のゲインもある。
【0128】
要約すると、
−驚くべきことに、合成ガス中のN混入物質のレベルが100vppbを超える条件でFTSを行うと、触媒中のPd、Pt、Ru及びRe等のドーパントのレベルが低下し、より低いメタン選択性を生じる(表1〜11を参照のこと)ということが見出された。
−さらに、合成ガス中にN混入物質が存在しない条件でFTSを行う場合、触媒中にドーパントを使用しないと、同じ条件であって、触媒中にドーパントが存在する場合と比べて、活性は許容できない程低い結果となること(表1、HCNが0の場合のデータを参照のこと)が、従来技術において知られている。表1〜4(HCNまたはNH
3が5000ppbの場合のデータ)から、合成ガス中にN混入物質が存在する条件では、最も高い触媒ドーパントレベルによって、最も高い活性が得られる訳ではないことが明らかである。合成ガスがN混入物質を含まない場合に、触媒ドーパントレベルが高い程、触媒活性がより高いということが知られているので、これは驚くべきことである。
−その他の驚くべき結果は、N混入物質を含まない条件と対比して、N混入物質を含む場合には、ドーパントを含まない触媒についての活性が高まるということであった(表1〜4)。N混入物質の不存在からN混入物質の存在へスイッチした場合、活性は触媒ドーパントと共に低下することが表1から明らかであるので、
触媒ドーパントが存在する場合に気付かされる傾向の逆転である。
【0129】
以上の説明から、合成ガスN混入物質条件で動作する場合、(ドーパントが存在しないことを含めて)触媒ドーパントをより低レベルで使用することができ、それによって(N混入物質の存在下、触媒ドーパントがより高レベルである場合と対比して)許容し得る活性が得られ、そして(CH
4選択性が低下すると、そのことに関連して、CH
5+選択性がより高くなることが知られており)CH
4選択性の低下も達成され、より効果的なプロセスが得られるということが明らかである。触媒ドーパントは高価であるので、ドーパントレベルが低い程、より低コストの触媒である結果になる。さらにまた、合成ガス中のN混入物質の著しいレベルの許容度は(合成ガス中における著しいレベルのN混入物質への耐性は)、そのような混入物質を合成ガスから除くための高コストの合成ガス処理を回避するか、又は少なくとも低減することができるということを意味する。