特許第5775880号(P5775880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5775880-電界放出白色光発光装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775880
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】電界放出白色光発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 63/06 20060101AFI20150820BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20150820BHJP
   C09K 11/79 20060101ALN20150820BHJP
【FI】
   H01J63/06
   C09K11/00 D
   !C09K11/79CPR
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-546303(P2012-546303)
(86)(22)【出願日】2009年12月29日
(65)【公表番号】特表2013-516040(P2013-516040A)
(43)【公表日】2013年5月9日
(86)【国際出願番号】CN2009076191
(87)【国際公開番号】WO2011079434
(87)【国際公開日】20110707
【審査請求日】2012年6月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511215230
【氏名又は名称】オーシャンズ キング ライティング サイエンスアンドテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ミンジェ
(72)【発明者】
【氏名】マ ウェンボ
【審査官】 井上 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−016268(JP,A)
【文献】 特開昭57−119452(JP,A)
【文献】 特開2007−031196(JP,A)
【文献】 特開2009−032683(JP,A)
【文献】 特開2008−111080(JP,A)
【文献】 特開昭63−154786(JP,A)
【文献】 特開2003−258308(JP,A)
【文献】 特表2012−519943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 29/20、29/26、61/00 − 65/08
C09K 11/00 − 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極板モジュールと、前記陰極板モジュールに対向し且つ互いに離間して設置される陽極板モジュールと、両者を密封して接続する支持体と、を備えてなる電界放出白色光発光装置であって、
前記陽極板モジュールは、青色光に励起されて黄色光を発射する透明基板を備え、前記陰極板モジュールに対向する前記透明基板の表面には、陽極及び青色陰極射線発光材料層が設置され、
前記青色陰極射線発光材料層は、青色陰極射線発光材料を含み、前記青色陰極射線発光材料は、L(1−x)Ga(1−y)Al:xTm(ただし、0<x≦0.1、0≦y≦1である。)であることを特徴とする電界放出白色光発光装置。
【請求項2】
前記陰極板モジュールに対向する前記透明基板の表面には、順次に透明陽極及び青色陰極射線発光材料層が設置されていることを特徴とする請求項1に記載の電界放出白色光発光装置。
【請求項3】
前記陰極板モジュールに対向する前記透明基板の表面には、順次に青色陰極射線発光材料層及び金属陽極が設置されていることを特徴とする請求項1に記載の電界放出白色光発光装置。
【請求項4】
前記透明基板は、420nm〜490nmの青色光を吸収し且つ発光スペクトルのピークが520nm〜590nm範囲にある黄色光を発射するガラスセラミックスであることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の電界放出白色光発光装置。
【請求項5】
前記透明基板は、セリウムイオンドーピングYAGガラスセラミックスであることを特徴とする請求項4に記載の電界放出白色光発光装置。
【請求項6】
前記青色陰極射線発光材料は、陰極射線に励起されて、発光スペクトルのピークが420nm〜490nm範囲にある青色光を発射する発光材料であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の電界放出白色光発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロニクス技術領域に関するものであり、白色光を発する装置に関するものであり、特に電界放出装置に基づく電界放出白色光発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明技術の急速な発展に伴って、従来の光源の代替品を研究して開発し、即ち省エネルギー環境に優しいグリーン照明光源は、現在各国が争って開発する重要な課題になり、真空マイクロエレクトロニクス技術領域の電界放出型光源装置は、グリーンエコロジー照明を獲得する1つの新しい道を表示した。電界放出型光源装置の基本原理は、真空環境で電界放出陰極アレイ(field emisive arrays,FEAs)に対して陽極に正向電圧を印加することにより加速電界を形成し、陰極が放出する電子が陽極板の発光材料を加速してぶつけることにより発光する。電界放出型光源装置は、作動温度範囲が広く(−40℃〜80℃)、応答時間が短く(<1ms)、構造が簡単であり、省電力であり、グリーン環境保護の要求を満足する。従来の蛍光ランプに比べて、電界放出型光源装置は、蛍光ランプの高効率及び省エネルギーの美点を保持するとともに、蛍光ランプの環境汚染及びパルス光フラッシュによる人々の視覚疲れなどの欠点を免れ、省エネ環境保護のグリーン照明光源である。LEDに比べて、電界放出陰極は大面積に製造することができるので、電界放出型光源装置は、ハイパワー及び大面積照明の分野でさらに優位を有し、ハイパワー光源の分野で、LEDの強力な競争相手になるかも知れない。
【0003】
現在、青色光電界放出装置を利用して黄色蛍光粉を励起して白色光を発する照明光源装置があり、前記照明光源装置は、青色光発光部分と黄色光発光部分を完全に分離させて、且つ両部分の発光原理は全然異なり、このような装置において、ただ一種の青色光材料が電子ビームに直接に照射され、優れた安定性を有する青色光材料を選択することにより、色座標に偏りが発生し且つ光源効率が下がるなどの光源装置の老化問題を効果的に解決することができる。しかし、このような装置において、透明なエポキシ樹脂の中に黄色光発光材料を分散させてからガラス基板の表面に塗布することを必要として、光源装置の製造工程の難度を増加させ、且つ長時間使用すると光源外層の樹脂が老化し易い問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来の発光装置において、透明なエポキシ樹脂の中に黄色光発光材料を分散させてからガラス基板の表面に塗布することを必要として、光源装置の製造工程の難度を増加させ、且つ長時間使用すると光源外層の樹脂が老化し易い問題を解決し、電界放出光源装置の製造工程を大きく簡略化し、且つ光源装置全体の安定性を大きく高めることができる電界放出白色光発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電界放出白色光発光装置は、陰極板モジュールと、前記陰極板モジュールに対向し且つ互いに離間して設置される陽極板モジュールと、両者を密封して接続する支持体と、を備え、前記陽極板モジュールは、青色光に励起されて黄色光を発射する透明基板を備え、前記陰極板モジュールに対向する前記透明基板の表面には、陽極及び青色陰極射線発光材料層が設置され、前記青色陰極射線発光材料層は、青色陰極射線発光材料を含む。
【0006】
前記陰極板モジュールに対向する前記透明基板の表面には、順次に透明陽極及び青色陰極射線発光材料層が設置される。
【0007】
前記陰極板モジュールに対向する前記透明基板の表面には、順次に青色陰極射線発光材料層及び金属陽極が設置される。
【0008】
前記透明基板は、420nm〜490nmの青色光を吸収し且つ発光スペクトルのピークが52nm0〜590nm範囲にある黄色光を発射するガラスセラミックスである。
【0009】
前記透明基板は、セリウムイオンドーピングYAGガラスセラミックスである。
【0010】
前記青色陰極射線発光材料は、陰極射線に励起されて、発光スペクトルのピークが420nm〜490nm範囲にある青色光を発射する発光材料である。
【0011】
前記青色陰極射線発光材料は、YSiO:Ce、SrGa:Ce、ZnS:Ag、ZnS:Tm、SrCeO、ZnS:Zn又はAlN:Euであるか、又はLa(1−x)Ga(1−y)Al:xTmであるか、又はY、Gd、Lu、ScでLaを部分的に又は完全に置換するLa(1−x)Ga(1−y)Al:xTmであり、0<x≦0.1、0≦y≦1である。
【0012】
前記セリウムイオンドーピングYAGガラスセラミックスの製造方法は、酸化セリウム、二酸化珪素、酸化アルミニウム、又は酸化イットリウムを主要な原材料として、原材料を均一に混合してからプラチナるつぼに入れて、1500℃〜1650℃で5時間保温処理し、それから鋳造成型し、最後に還元雰囲気において1200℃〜1500℃の温度で成型されたガラスに対して晶析処理して、セリウムイオンドーピングYAGガラスセラミックスを獲得する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電界放出白色光発光装置は、現有の陰極板モジュールの他に異なる陽極板モジュールを設置して、前記陽極板モジュールにおいて、陰極板に対向する透明基板の表面には、陽極及び発光層が設置され、陽極は二種に分かれ、一種は透明陽極であり、他の一種は金属陽極であり、透明陽極を選択する場合、透明基板の表面に透明陽極を貼り合わせてから、青色陰極射線発光材料層を塗布し、金属陽極を選択する場合、透明基板の表面に青色陰極射線発光材料層を塗布してから、金属陽極を設置する。本発明の透明基板は、青色光に励起されて黄色光を発射する透明基板であり、青色陰極射線発光材料は、陰極射線に励起されて青色光を発射し、青色光は透明基板を励起して黄色光を発射し、黄色光と剰余の青色光が複合して白色光を形成する。本発明の電界放出白色光発光装置は、従来の電界放出光源装置の陽極板モジュールの発光層の構造及び組成を改変することにより、透明基板を直接に青色光に励起されて黄色光を発射するように製造して、電界放出光源装置の製造工程を大きく簡略化し、且つ光源装置全体の安定性を大きく高めることができる。
【0014】
本発明の青色陰極射線発光材料層は、電子ビームに励起されて、発光スペクトルのピークが420nm〜490nm範囲にある青色光を発射し、透明基板は、420nm〜490nmの青色光を効果的に吸収することができ且つ発光スペクトルのピークが520nm〜590nm範囲にある黄色光を発射することができるガラスセラミックスであり、剰余の青色光と発射する黄色光が複合して白色光を形成する。
【0015】
本発明が採用する透明基板は、420nm〜490nmの青色光を部分的に吸収することができ且つ発光スペクトルのピークが520nm〜590nm範囲にある黄色光を発射することができるガラスセラミックスである。具体的にこのようなガラスセラミックスはセリウムイオンドーピングYAGガラスセラミックスである。透明なエポキシ樹脂の中に黄色光発光材料を分散させてからガラス基板の表面に塗布することを必要とせず、工程を節約する。
【0016】
青色陰極射線発光材料は、発光スペクトルのピークが420nm〜490nm範囲にある青色光を発射することができる青色発光材料を選択し、例えば、YSiO:Ce、SrGa:Ce、ZnS:Ag、ZnS:Tm、ZnS:Zn、AlN:Eu、La(1−x)Ga(1−y)Al:xTm(0<x≦0.1、0≦y≦1であり、且つY、Gd、Lu、ScでLaを部分的に又は完全に置換することができる)などであり、このような材料は陰極射線に励起されて優れる発光性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態に係わる電界放出白色光発光装置の構造を示す図である。
図2】本発明の第二実施形態に係わる電界放出白色光発光装置の構造を示す図である。
図3】波長が460nmである励起光でYAGガラスセラミックスを励起する時の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
実施形態の原料は、全て販売商品があるか又は公知技術によって製造され、ここでこれらの製造方法を詳しく説明しない。
【0020】
図1を参照すると、本発明の第一実施形態に係わる電界放出白色光発光装置は、陰極板モジュール1と、前記陰極板モジュール1に対向し且つ互いに離間して設置される陽極板モジュール2と、両者を密封して接続する支持体3と、を備える。前記陰極板モジュール1は、水平設置される陰極板101と、前記陰極板101の上表面に設置される導電陰極及びゲート電極導線102と、電子発射源103と、を備える。前記陽極板モジュール2は、透明基板203を備え、前記透明基板203は、420nm〜490nmの青色光を吸収することができ且つ発光スペクトルのピークが520nm〜590nm範囲にある黄色光を発射することができるセリウムイオンドーピングYAGガラスセラミックスであり、前記陰極板101に対向する前記透明基板203の表面に上から下に至って順次に透明陽極202及び青色陰極射線発光材料層201が設置される。前記透明陽極202は、マグネトロンスパッタリング又は真空蒸着方式によって、酸化インジウム錫ITO又は酸化インジウム亜鉛IZOを主とする原料を前記透明基板203に塗布して形成され、前記青色陰極射線発光材料層201は、電子ビームに励起されて、発光スペクトルのピークが420nm〜490nm範囲にある青色光を発射し、本実施形態において、ZnS:Ag材料(Agを活性剤とするZnS蛍光材料)の陰極射線発光材料層を選択し、前記青色陰極射線発光材料層201は、シルクスクリーン印刷方式を採用して前記透明陽極202の下表面に塗布される。前記支持体3は、前記陽極板モジュール2及び前記陰極板モジュール1を所定距離に離間してから両者を密封して接続して、内部真空の空間を形成し、前記陰極板101と前記透明陽極102との間の電位差は、1KV〜20KVであることができ、例えば、2、4、5、7、10、12、15、17、18、20KVなどであることができ、好ましくは4KV〜15KVである。
【0021】
図2を参照すると、本発明の第二実施形態に係わる電界放出白色光発光装置は、陰極板モジュール1と、前記陰極板モジュール1に対向し且つ互いに離間して設置される陽極板モジュール4と、両者を密封して接続する支持体3と、を備え、本実施形態に係わる電界放出白色光発光装置の陰極板モジュール1の構造は、前記第一実施形態に係わる電界放出白色光発光装置の陰極板モジュール1の構造と同じであるので、詳しく説明しない。
【0022】
前記陽極板モジュール4は、透明基板403を備え、前記透明基板403は、420nm〜490nmの青色光を部分的に吸収することができ且つ発光スペクトルのピークが520nm〜590nm範囲にある黄色光を発射することができるセリウムイオンドーピングYAGガラスセラミックスであり、前記透明基板403の下表面に青色陰極射線発光材料層402(青色陰極射線発光材料はLaGaO:Tmを選択する)が直接に塗布され、前記青色陰極射線発光材料層402に金属アルミニウム層を蒸着して金属陽極401とし、前記青色陰極射線発光材料層402の塗布方式は、前記実施形態1と同じである。
【0023】
青色陰極射線発光材料は、YSiO:Ce、SrGa:Ce、ZnS:Ag、ZnS:Tm、SrCeO、ZnS:Zn、AlN:Eu、La0.99Ga0.5Al0.5:0.01Tm、La0.9GaO:0.1Tm、La0.98AlO:0.02Tm、La0.92Ga0.6Al0.4:0.08Tm、La0.60.33Ga0.4Al0.6:0.07Tm、Gd0.96Ga0.35Al0.65:0.04Tm、La0.2Lu0.75Ga0.8Al0.2:0.05Tmなどを選択することもできる。
【0024】
図3は、波長が460nmである励起光でYAGガラスセラミックスを励起する時の発光スペクトルを示す図である。図3に示されたように、YAGガラスセラミックスは励起されてから波長が530nmである黄色光を発射し、この波長の黄色光と青色光が複合して白光発光を形成する。
【0025】
以上本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種種変更可能であることは勿論であって、本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲から決まる。
【符号の説明】
【0026】
1 陰極板モジュール
2 陽極板モジュール
3 支持体
4 陽極板モジュール
101 陰極板
102 ゲート電極導線
103 電子発射源
201 青色陰極射線発光材料層
202 透明陽極
203 透明基板
401 金属陽極
402 青色陰極射線発光材料層
403 透明基板
図1
図2
図3