特許第5775906号(P5775906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775906
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/496 20060101AFI20150820BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20150820BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   A41B13/02 U
   A41B13/02 T
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-135964(P2013-135964)
(22)【出願日】2013年6月28日
(62)【分割の表示】特願2009-138704(P2009-138704)の分割
【原出願日】2009年6月9日
(65)【公開番号】特開2013-176708(P2013-176708A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2013年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100112818
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 昭久
(72)【発明者】
【氏名】松井 学
(72)【発明者】
【氏名】石黒 健司
【審査官】 北村 龍平
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性本体と外装体とを備え、腹側部、股部及び背側部を有し、該腹側部と該背側部とが接合されてウエスト開口部が形成されているか又は該腹側部と該背側部とが接することによりウエスト開口部を構成し得る吸収性物品であって、
展開状態の吸収性物品において腹側部から股部を通って背側部に向かう方向である長手方向と、展開状態の吸収性物品において該長手方向と直交する方向である幅方向とを有し、
前記外装体は、吸収性物品の外面を形成する外層シートと、該外層シートの肌当接面側に積層された内層シートを備えており、
前記腹側部及び前記背側部のそれぞれにおける、前記ウエスト開口部近傍よりも股部寄りの部分では、前記内層シート側の表面に、前記長手方向に沿って延びる第1の凸条部が前記幅方向に複数本存在すると共に前記外層シート側の表面に、前記長手方向に沿って延びる第2の凸条部が前記幅方向に複数本存在し、第2の凸条部よりも第1の凸条部の高さの方が高く、
前記第1の凸条部と前記第2の凸条部とが、前記外装体を平面視したときに交互に配置されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記第1の凸条部が中実である、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記外層シートは伸縮性のシートであり、前記内層シートは非伸縮性のシートであり、両シート間には、伸長可能な状態で弾性伸縮部材が固定されている、請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記外層シートが前記内層シートのウエスト開口部端を跨ぐように折り返され、前記内層シートに貼り合わされている、請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第1の凸条部における繊維密度が前記第2の凸条部の繊維密度よりも小さい、請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
ウエスト開口部近傍における前記外装体は、自然状態において、前記内層シート表面及び前記外層シート表面に、それぞれウエスト開口部周方向に間隔を置いた複数の襞を有しており、
前記内層シート表面の襞間のピッチが前記外層シート表面の襞間のピッチよりも小さい、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在市販されている使い捨ておむつ等、着用者のウエスト部に開口部を有する形状の吸収性物品は、ズレ落ちを抑制するためにウエスト開口部付近に伸縮性を有するものが多い。特に、伸長状態の弾性伸縮部材を吸収性物品の外装体を構成するシートに接合することによって伸縮性を具備するものが一般的である。そのような一般的なおむつとは別に、伸縮シートと非伸縮シートとが間欠的に接合され、該伸縮シートの収縮により、非接合部における非伸縮シートに皺を形成させたシートを外装体に備えたおむつが知られている(特許文献1,2参照)。特許文献1には、外装体の外側面及び内側面に皺が縦方向に延びてウエスト開口部まで存在する吸収性物品が開示されており、当該皺により形成された弾性体シートと不織布の間のチャネルによって良好な肌触りと通気性を達成することが記載されている。特許文献2には、外装体の外側面のみに不規則な皺が形成され、ウエスト開口部に弾性部材が配された吸収性物品が開示されている。
また、本出願人は、おむつの腹側と背側相当部分に伸縮性シートを配し、股相当部分に
非伸縮性シートを配した部分伸縮性のシートを、非伸縮性のシートと対向させ、部分接着
することで柔らかかつ風合いの良いおむつを開示している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−90979号公報
【特許文献2】特開平10−99373号公報
【特許文献3】特開2008−264525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の吸収性物品では、おむつの内側と外側に同じ大きさの皺が模式的に記載されているが、柔軟性や風合いを考慮すると内側の皺を大きくすることが考えられ、外観がモコモコした印象となり、下着感が損なわれかねない。また、外装体の皺が不規則に形成されがちであり、実際には通気性や透湿性が十分に発揮されえない可能性がある。また、特許文献2記載の吸収性物品では図示されている通り、外側に不規則な形状の皺が形成され、ウエストに弾性材を配していわゆるギャザーを形成した場合、不規則な皺による見栄えの低下や通気性が損なわれかねない。いずれの刊行物でも、外装体の内面側と外面側の皺の形状について詳細な検討がされておらず、通気性や透湿性の点に加えて、肌触りの点についても改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、吸収性本体と外装体とを備え、腹側部、股部及び背側部を有し、該腹側部と該背側部とが接合されてウエスト開口部が形成されているか又は該腹側部と該背側部とが接することによりウエスト開口部を構成し得る吸収性物品であって、展開状態の吸収性物品において腹側部から股部を通って背側部に向かう方向である長手方向と、展開状態の吸収性物品において該長手方向と直交する方向である幅方向とを有し、前記外装体は、吸収性物品の外面を形成する外層シートと、該外層シートの肌当接面側に積層された内層シートを備えており、前記腹側部及び前記背側部のそれぞれにおける、前記ウエスト開口部近傍よりも股部寄りの部分では、前記内層シート側の表面に、前記長手方向に沿って延びる第1の凸条部が前記幅方向に複数本存在すると共に前記外層シート側の表面に、前記長手方向に沿って延びる第2の凸条部が前記幅方向に複数本存在し、第2の凸条部よりも第1の凸条部の高さの方が高く、前記第1の凸条部と前記第2の凸条部とが、前記外装体を平面視したときに交互に配置されている、吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の吸収性物品によれば、物品の内面側においては、第1の凸条部間の谷部と着用者の肌との間に空間が形成され、通気性が良好であり、また、第1の凸条部が肌にあたることによって、感触が良好で、しめった感触も与えにくい。一方、物品の外面側においては、第2の凸条部が外装体外面側に形成されていることによって、柔らかな印象を与える。そして、高い凸条部をおむつ内面側に向けることによって効果的におむつ内の湿気を凸条部に取り込むことが容易となり、相対的に低い第2の凸条部表面を通して湿気をおむつ外に放出することが可能となる。また、第1の凸条部よりも高さが低い第2の凸条部をおむつ外面側に配したので、下着様の外観を奏することが可能となる。
本発明の吸収性物品によれば、着用時の通気性に優れ、吸収性物品内の蒸気を効果的に外部へ放出することが可能である。また、着用者の肌に接する面側は内層シートの襞によって良好なクッション性が得られるとともに、ピッチの小さい襞によって汗を吸い易い。また、吸収性物品の外側面に大きなピッチの襞が配されるので、見た目のモコモコ感が減じられ、下着ライクな外観を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつの概略を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すおむつの展開且つ伸長状態を示す展開平面図である。
図3図3は、図1に示すおむつのウエスト開口部近傍のおむつ縦方向に沿う断面を示す拡大模式断面図である。
図4図4は、図1に示すおむつの外装体における伸縮性複合部の自然状態を示す斜視図である。
図5図5は、図4に示す伸縮性複合部の、弾性フィラメントが延びる方向に沿う自然状態での縦断面図である。
図6図6は、図1に示すおむつのウエスト部の自然状態を示すウエスト部の周方向に沿う断面を示す断面図である。
図7図7は、本発明の別の実施形態のおむつのウエスト開口部近傍のおむつ縦方向に沿う断面を示す拡大模式断面図(図3相当図)である。
図8図8は、図7に示すおむつのウエスト部の自然状態を示すウエスト部の周方向に沿う断面を示す断面図(図6相当図)である。
図9図9は、図4に示す伸縮性複合部の一部を構成する伸縮シートを伸長状態で示す一部破断斜視図である。
図10図10は、図4に示す伸縮性複合部の、弾性フィラメントが延びる方向に沿う伸長状態での縦断面図である。
図11図11は、図9に示す伸縮シートの弾性フィラメントが延びる方向に沿う収縮状態での縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1図3は、本発明のパンツ型使い捨ておむつの一例を示す図である。
図1図3に示すパンツ型使い捨ておむつ1(以下、おむつ1ともいう)は、吸収性コア2を含む吸収性本体3と該吸収性本体3の非肌当接面側に位置して該吸収性本体3を固定している外装体4とを備えている。
図1及び図2に示すように、おむつ1は、腹側部A、股部C及び背側部Bを有しており、腹側部Aにおける両側縁部A1,A2と背側部Bにおける両側縁部B1,B2とが互いに接合されて、一対のサイド接合部11,11、ウエスト開口部12及び一対のレッグ開口部13,13が形成されている。腹側部Aは、着用時に着用者の腹側に位置し、背側部Bは、着用時に着用者の背側に位置する。
【0009】
吸収性本体3は、液透過性の表面シート5、液不透過性又は撥水性の防漏シート51及びこれら両シート間に配された液保持性の吸収性コア2を有している。表面シート、防漏シート及び吸収性コアとしては、それぞれ、従来からこの種のおむつに用いられているものと同様のものを用いることができる。吸収性本体3の長手方向両側部には、自由端に弾性部材61を有する防漏カフス形成シート6が配されて、側部防漏カフス60が形成されている。ウエスト開口部12及び一対のレッグ開口部13,13それぞれの開口周縁部においてはウエスト部弾性部材21及びレッグ部弾性部材22が外装体4に固定されている。弾性部材61,21,22の素材としては、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができ、弾性部材61,21,22の形態としては、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状(糸ゴム等)若しくは紐状(平ゴム等)のもの、又はマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。
【0010】
本実施形態の外装体4は、その全体又は一部に、特定の構造を有する伸縮性複合部Iを有している。伸縮性複合部Iは、非伸縮シート36と伸縮シート38とが、伸縮シート38の伸長状態下に貼り合わされた構成を有している。
本実施形態においては、図2に示すように、腹側部Aから股部Cの一部にかけての伸縮性複合部I、股部Cにおける伸縮シート非配置部II、及び股部Cの一部から背側部Bに亘る伸縮性複合部Iが、外装体4における、おむつの展開状態長手方向に沿ってこの順に存在している。より具体的に説明すると、外装体4は、腹側部Aから股部Cの一部に亘る領域及び背側部Bから股部Cの一部に亘る領域それぞれに配された伸縮シート38,38と、腹側部A、股部C及び背側部Bに亘って連続して配された非伸縮シート36と、股部Cのみに配され、非伸縮シート36と貼り合わされていると共に、両端が伸縮シート38と連接するように配された第2の非伸縮シート36Bから構成されている。したがって、外装体4は、その全体に存在する非伸縮シート36上における腹側部A及び背側部Bを含む所定の領域のみにおいて、非伸縮シート36の一面上に接着固定された伸縮シート38が存在する構成となっており、その非伸縮シート36上に伸縮シート38が存在する領域が、伸縮性複合部Iとなっている。
他方、外装体4は、股部Cに、非伸縮シート36及び第2の非伸縮シート36Bが配されているが、その非伸縮シート36、36B上には伸縮シート38が配されていない領域を有しており、該領域が、伸縮シート38が配されていない伸縮シート非配置部IIとなっている。なお、伸縮シート非配置部IIの非伸縮性シートは、非伸縮シート36Bを除いて1層とすることも可能である。
【0011】
外装体4が、股部Cに伸縮シート非配置部IIを有していると、股部Cにおける吸収性コア2や吸収性本体3が幅方向に縮んで吸収面を狭めることを防止でき、漏れ防止性能が低下することを防止することができる。
外装体4は、伸縮性複合部Iにおける非伸縮シート36側が、おむつの内面側(着用者の肌側に向けられる面側)に位置し、伸縮性複合部Iにおける伸縮シート38側が、おむつ外面側に位置するように配されている。
【0012】
外装体4を構成する上記の非伸縮シート36及び伸縮シート38は、図3に示すように、後述するウエスト開口部近傍の領域であるウエスト部12’にも存在しており、前述した弾性部材21が、ウエスト部12’における非伸縮シート36と伸縮シート38との間に接着剤37を介して固定されている。本実施形態においては、この伸縮シート38及び非伸縮シート36が、ウエスト開口部近傍における外装体4を構成する、外層シート4A及び内層シート4Bである。外層シート4Aとしての伸縮シート38は、おむつ(吸収性物品)の最外面を形成している。
【0013】
自然状態における外装体4の伸縮性複合部Iには、図4に示すように、非伸縮シート36側の表面に、おむつ展開状態における長手方向(腹側部から股下部を通って背側部に向かう方向)に沿って延びる第1の凸条部31が複数存在する。一方、伸縮性複合部Iにおける伸縮シート38側の表面にも、おむつ展開状態の長手方向に沿って第2の凸条部32が複数存在する。そして、図5に示すように、第1の凸条部31の高さT1よりも第2の凸条部32の高さT2が低くなっている。なお、この場合、各伸縮シート38,38の長手方向股部C側の端部における非伸縮シート36(又は36B)との接合部分においては、シート間接合強度を高める等の要求により、その接合状態によっては伸縮特性が他の部分と異なることがあり、場合によっては伸縮性がないこともある。そのような場合には、当該接合部分で凸条部31,32が形成されていなくても構わないし、また高さT1とT2が上述の関係を満たしていなくても構わない。
【0014】
本おむつ1の外装体4は、伸縮性複合部Iにおける非伸縮シート36側の面が、おむつ1の着用時に、着用者の肌側に向けられるため、着用状態のおむつ1においては、その内面側に第1の凸条部31が多数形成されており、その外面側に第2の凸条部32が多数形成されている。すなわち、第1の凸条部31が内シート4B表面に、第2の凸条部32が外層シート4A表面に、それぞれ形成されている。
そのため、おむつ1の内面側においては、第1の凸条部31間の谷部と着用者の肌との間に空間が形成され、通気性が良好であり、また、第1の凸条部31が肌にあたることによって、感触が良好で、しめった感触も与えにくい。一方、おむつ1の外面側においては、第2の凸条部32が外装体外面側に形成されていることによって、柔らかな印象を与える。そして、高い凸条部をおむつ内面側に向けることによって効果的におむつ内の湿気を凸条部に取り込むことが容易となり、相対的に低い第2の凸条部32表面を通して湿気をおむつ外に放出することが可能となる。また、第1の凸条部よりも高さが低い第2の凸条部をおむつ外面側に配したので、下着様の外観を奏することが可能となる。
【0015】
第1の凸条部31及びそれより高さの低い第2の凸条部32は、腹側部A及び/又は背側部Bそれぞれにおける、ウエスト開口部近傍(ウエスト部12’)よりも股部C寄りに形成されていることが好ましい。
また、第1の凸条部31は、着用者の肌側に向けられる面における、着用者の肌と当接する部分、即ち、外装体の吸収性本体側の面における吸収性本体に覆われていない部分に少なくとも形成されていることが好ましい。
【0016】
伸縮性複合部Iの第1の凸条部31,31・・及び第2の凸条部32,32・・それぞれは、おむつのウエスト開口部周方向に所定間隔(以下、ピッチとも言う)をおいて配列されている。本明細書においてピッチとは、隣あった凸条部(又は襞)の頂部間の距離を言う。第1の凸条部31のピッチP1、第2の凸条部32のピッチP2(図5参照)は0.5〜5mm、特に1〜3mmとすることが好ましい。また、第1の凸条部31の高さT1(図5参照)は、0.5〜5mm、特に1〜3mmとすることが、第2の凸条部32の高さT2は0.01〜3mm、特に0.05〜2mmとすることが好ましい。高さT1と高さT2との比(T1/T2)は、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.5〜3.0、更に好ましくは1.5〜2.0である。
【0017】
〔前記ピッチPや前記高さTの測定方法〕
ピッチP1,P2および高さT1、T2は、伸縮性複合部Iに外力を加えない状態(収縮状態、自然状態)で測定される。その状態下における、互いに隣り合う凸条部それぞれの頂部間の距離をピッチP1、P2とし、凸条部間に形成される谷部と凸条部の頂部との距離を高さT1、T2とする。測定はレーザー変位計を用いて行うか、シート断面を顕微鏡観察や写真撮影して測定することが出来る。
【0018】
おむつ内の湿度をより有効におむつ外に放出する観点からは、第1の凸条部31における繊維密度が第2の凸条部32の繊維密度よりも小さいことが好ましい。
【0019】
本実施形態においては、股部Cに伸縮シート38が存在しない伸縮シート非配置部IIを配し、外装シート4における当該部上に吸収性本体3を配置している。このために、吸収性本体が第1の凸条部のない非伸縮部材上に存在するので、着用者股部に固定し易くなり、好ましい。伸縮性複合材存在部Iを配する範囲については、股部Cにおける着用者股下部に相当する部位を除くようにすることが好ましいが、パンツ型の吸収性物品においては、サイド接合部11,11の全長に相当する領域に亘って設けられていることが好ましい。
【0020】
本発明の吸収性物品は、ウエスト開口部12近傍の領域(以下、ウエスト部12’ともいう)において、外層シート4A表面及び内層シート4B表面それぞれに複数の襞(ひだ)が、ウエスト開口部12の周方向に所定間隔(ピッチ)t1、t2を置いて配置されている。そして、外層シート4A表面の襞41,41間の間隔(ピッチ)t1が、内層シート4B表面の襞42,42間の間隔(ピッチ)t2よりも大きくなっている。
このようにすることによって、内層シート4B表面に存在する間隔の小さい襞が吸汗し易く、そして吸われた汗が間隔の大きい襞を有する外層シート4Aへと移動し易くなるので、ウエスト部での蒸れを有効に抑制することが可能となる。また、外層シート4A表面にはピッチの大きい襞41が存在するのでピッチの小さい襞42が存在する場合と比較して皺感が減じられるので下着ライクの外観を実現することが容易となる。
【0021】
なお、襞間の間隔(ピッチ)t1、t2は以下のように定義される。
[襞間の間隔t1、t2]
襞間の間隔は、ウエスト部の領域に外力を加えない状態(収縮状態、自然状態)で測定される。その状態下における、互いに隣り合う凸条部それぞれの頂点間の距離をt1、t2とする。ウエスト部のシート断面を顕微鏡観察や写真撮影して測定することができる。図8のように凸条部がなだらかではっきりしない場合は、隣り合う溝−溝(凹−凹)間の山の中心を頂点とし頂点間の距離をそれぞれ襞間の間隔とする。なお、間隔t1、t2の大小を比較する際には、測定は、襞が11本存在する箇所を任意に選択し、その箇所における10つの襞間の間隔について行い、10つの間隔の平均値を算出して、ウエスト部における襞間の間隔t1、t2とする。
【0022】
本実施形態のおむつ1においては、図3に示すように、ウエスト部12’において外層シート4Aと内層シート4Bの間に複数本のウエスト部弾性伸縮部材21,21・・が伸長状態で配されて、両シートに接着固定されている。そして、弾性伸縮部材21,21・・の収縮によって、図6に示すように、外層シート4A表面及び内層シート4B表面それぞれに襞が形成されている。上述したように、外層シート4Aは伸縮性のシートであって、その表面に第1の凸条部31が設けられており、内層シート4Bは非伸縮性のシートであって、その表面には第2の凸条部が設けられている。このために、本実施形態では、ウエスト部12’において、外層シート4Aには第1の凸条部によって規定された襞が表面に形成され、内層シート4Bには第2の凸条部によって規定された襞が形成される。
【0023】
また、伸縮性の外層シート4Aを伸長状態で非伸長性の内層シート4Bに貼り合せる際に両シート間に伸長状態のウエスト部弾性伸縮部材を貼り合わせるが、このときに外層シート4Aの伸長倍率よりも高い伸長倍率として各弾性伸縮部材を貼り合せる。非伸縮性の内層シート4Bには弾性伸縮部材の収縮による襞が形成され、一方、伸縮性の外層シート4Aには、内層シート4Bよりも縮みが抑制されるので、内層シート4Bよりも襞の間隔が大きくなると考えられる。これによって、内層シート4B側には外層シート4Aと比較して間隔の小さな皺が形成されていると考えられる。
【0024】
外層シート4A表面の襞41のピッチt1と内層シート4B表面の襞42のピッチt2との比(t1/t2)は、クッション性、汗の吸いやすさと下着らしい外観の両立の観点から、1.3〜7.0であることが好ましく、より好ましくは1.5〜5.0、更に好ましくは1.5〜3.0である。
また、外層シート4A表面の襞41のピッチt1は、下着らしい柔らかさと外観の観点から、好ましくは1.0〜5.0mm、更に好ましくは1.0〜3.0mmである。他方、内層シート4B表面の襞42のピッチt2は、汗の吸いやすさとクッション性の観点から、好ましくは0.3〜2.0mm、更に好ましくは0.5〜1.0mmである。
【0025】
別の実施形態のおむつでは、図7に示すように、外層シート4Aが内層シート4Bのウエスト開口部端43を跨ぐように折り返され、外層シート4Aの折り返された部分4A’が、内層シート4Bに貼り合わされている。より具体的には、ウエスト開口部12の開口周縁端で、外層シート4Aが内層シート4B側に折り返されて、内層シート4Bが2層の外層シート4Aに挟持される構成となっている。このため、図8に示すように、内層シート4Bに形成された間隔の小さい襞42,42・・の上に間隔の大きい襞44が重なり合う構造になっており、ウエスト部12’においては嵩高感のある凸条部構造が実現されている。このため、ウエスト部12’のおむつ内面側は、風合いが良く、また、ウエスト部12’における吸汗が効果的になされ易くなっている。しかも、本実施形態では、予めシート上に形成された凸条部に規定された襞が重なりあっているので、弾性伸縮部材を伸長状態で非伸縮シートに固定して形成する従来のウエストギャザータイプに比べて外観上、規則正しい襞形状をウエスト開口部近傍に構成することが容易となっている。このために、ウエスト開口部の風合いが優れると共に、ウエスト部近傍での吸湿性に優れるし、見栄えも良い。しかも、内層シートの上に折返しの外層シートの襞が存在するために、ウエスト部より股部寄りで発生した湿気が、内層シートを伝わってウエスト部に移動する場合であっても、湿気は直接着用者肌には触れにくく、外側シートを伝わって外部へ放出されやすい構成となっているので、ウエスト開口部近傍における蒸れも抑制し易くなる。
【0026】
ウエスト部12’においては、外層シート4Aの折返し部分4A’と内層シート4Bとが、外層シート折返し部分の端部45を除いて全面が接着されていることが好ましい。おむつ内側において外層シート4Aの折返し面と内層シート4Bが直接接触している部分が広いので、ウエスト部における吸汗効果を高めることが可能である。また、端部における非接着によって、排尿時に吸収体から液がもれ出てしまった場合に防漏効果を得ることが可能である。外層シート4Aの折返し部分端部と内層シート4B非接着部分は腹側部又は背側部の一方だけに設けても良いし、両方に設けても良い。また、設けないことも可能である。
【0027】
外層シート4A及び内層シート4Bは撥水性の材料、撥水性材料を親水化処理したもの、親水性の材料各々を含んで構成することができ、具体的には不織布から構成されることが、防漏性能と吸汗性能を両立させる観点から好ましい。特に、内層シート4Bは表面の一部が、好ましくは全体に亘って、外層シート4Aよりも親水性であることが好ましい。内層シートを親水性とすることで折り返された外層シートと内層シートに親水勾配でき折り返された外層シートからウエスト部に溜まった汗を吸い易くなる。また、外層シート4は、おむつ外側表面と折返し部分共に撥水性であることが着用時のさらっとした感触を与えるので好ましい。不職布の具体的な材料については後述する。
【0028】
以下、本発明における外装体の伸縮性複合部並びに伸縮シート及び非伸縮シートの好ましい構成等を、その好ましい例に基づき図面を参照しながら説明する。
【0029】
外装体4の伸縮性複合部Iは、図4及び図5に示すように、伸縮シート38と該伸縮シート38に積層された非伸縮シート36を有する。
伸縮シート38は、図9に示すように、弾性伸縮性を有する第1領域34と、第1領域34より伸長性に劣る第2領域35とを有している。第1及び第2領域34,35は、それぞれ、図9中のX方向に延びるように形成されている。また、第1及び第2領域34,35は、図9中のY方向に交互に形成されている。図中のX方向は、外装体4ないしその伸縮性複合部Iの表裏面と平行な方向のうち、伸縮シート38の第1及び第2領域34,35が延びている方向であり、Y方向はそれに直交する方向である。上述したおむつ1においては、X方向が、展開状態におけるおむつ1の長手方向に一致し、Y方向が、展開状態におけるおむつ1の幅方向に一致している。
尚、図示例の伸縮性複合部Iにおいては、第1の凸条部31の頂部間のピッチP1及び第2の凸条部32の頂間のピッチP2は、いずれも第1領域34又は第2領域35のピッチの約2倍になっている。
伸縮シート38は、複数本の第1領域34それぞれが弾性伸縮性を有することに起因して、Y方向に伸縮性を有している。伸縮シート38の第2領域35は、殆ど伸縮性を有していない。
【0030】
非伸縮シート36は、実質的に、又は全く伸縮性を有しない。ここでいう伸縮性は、シート自体の伸縮性である。
非伸縮シート36は、少なくとも第1及び第2領域が延びる方向(X方向)に直交する方向(Y方向)において伸縮性を有しないことが好ましく、X方向及びY方向の何れにも伸縮性を有しないことが好ましい。
好ましい実施形態における非伸縮シート36は、X方向及びY方向の何れにおいても実質的に伸縮性を有していない。非伸縮シート36は、その表裏面と平行な方向の総ての方向において伸縮性を有しないものであっても良い。
【0031】
シートが、ある方向に実質的に伸縮性を有しないとは、該シートに対して当該ある方向に引っ張る力を加えても、該シートが、殆ど伸びないことを意味する。例えば、長さ15×幅5cmのサンプルに対して、該サンプルをテンシロン等の材料引っ張り試験機で長手方向に引張って、該サンプルが破断するときの破断伸度が10%以下である場合、そのサンプルは、長手方向に実質的に伸縮性を有しない。
なお、破断伸度とは(破断時の該サンプル長さ−該サンプルの元の長さ)/(該サンプルの元の長さ)×100で算出することができる。なお、サンプルの長手方向は前述の「ある方向」と同じ方向である。
【0032】
伸縮シート38と非伸縮シート36は、図9に示すように、接着剤(例えばホットメルト型の接着剤)37を介して、両者の相対向面の実質的に全域において接合されている。実質的に全域において接合されている場合としては、伸縮シート38及び/又は非伸縮シート36に、コーターガン等によりベタ塗り塗工した接着剤で両者が接着されている場合の他、スプレーガンやスパイラルガン、ロール形式のコーター等により、第1領域34と非伸縮シート36との間及び第2領域35と非伸縮シート36との間が、同様のパターンで万遍なく接着されている場合も含まれる。
【0033】
伸縮シート38と非伸縮シート36との接着剤37を介しての接合は、両シートが相対向する領域の全てにおいてする必要はなく、第1の凸条部を形成させたい領域のみでもよい。第1の凸条部を形成させない個所においては、部分的に接合したり、非接合としたりすることもできる。第1の凸条部を形成させたい領域では、その全域で接合を行う。
【0034】
外装体4に、非伸縮シート36と伸縮シート38とが接着剤37を介して積層一体化された構成の伸縮性複合部を設ける場合、外装体4に良好な通気性を与える観点から、非伸縮シート36と伸縮シート38との間に存する接着剤の坪量は、20g/m2 以下であることが好ましく、10g/m2 以下がより好ましく、5g/m2 以下が更に好ましい。ここでいう接着剤の坪量は、非伸縮シート36と伸縮シート38との間に存在する接着剤の、自然状態(収縮状態)の伸縮性複合部Iの1m2 当たりの量(g)である。
なお、外装体4は、ある部分と他の部分とで、非伸縮シート36と伸縮シート38とを接着する接着剤の塗工坪量を異ならせても良い。例えば、外装体4のうち、腹側部A、背側部Bの塗工坪量は通気性向上の観点から低くし、股間部Cの塗工坪量はレッグ部弾性部材22の接着を確実に行う観点から、腹側部A、背側部Bの塗工坪量と比較して大きくしてもよい。
【0035】
好ましい実施形態における伸縮性複合部Iは、図5に示すように、外力を加えない状態(自然状態)においては収縮しており、少なくとも収縮状態においては、伸縮性複合部Iにおける、非伸縮シート36側の面に、X方向に沿って延びる第1の凸条部31,31・・が多数形成されている。一方、伸縮性複合部Iにおける伸縮シート38側の面には、X方向に沿って延びる第2の凸条部32,32・・が多数形成されている。第1の凸条部31,31・・及び第2の凸条部32,32・・は、それぞれ、第1及び第2領域34,35が延びる方向(X方向)と略平行に延びて形成されている。そして、第1の凸条部31と第2の凸条部32はそれぞれ、伸縮複合部Iを平面視したときに、交互に配列するようになっている。又、本実施形態で用いた伸縮シート38は、第1及び第2領域34,35がそれぞれY方向に等間隔に形成されていることに起因して、多数の第1の凸条部31,31・・は、高さ及び幅が概ね同じである。同様に、第2の凸条部32,32・・についても、各々の高さ及び幅が概ね同じとなっている。
尚、好ましい実施形態における伸縮複合部Iは、非伸縮シート36が概ね平らになるまでY方向に伸長させることができ、その状態においては第1の凸条部31は消失している。そして、伸長させていた力から解放すると、伸縮複合部Iが収縮して、多数の第1の凸条部31が形成された元の状態に戻る。本発明の伸縮複合部Iにおける多数の第1の凸条部31は、少なくとも自然状態において形成されていれば良い。
【0036】
第1及び第2領域34,35が延びる方向(X方向)と略平行に延びる綺麗な第1の凸条部31を形成させる観点から、伸縮シート36は、同方向と直交する方向(Y方向)に伸長させたときに、その伸長方向と直交する方向(X方向)のシート幅が狭くなる現象、即ち幅縮みを生じにくいものであることが好ましい。
例えば、伸縮シート36は、第1及び第2領域34,35が延びる方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に2.0倍に伸長させたときのX方向の幅縮みの割合は、伸長前の幅の70〜100%であることが好ましく、80〜100%であることがより好ましく、90〜100%であることがさらに好ましい。
幅縮みの割合(%)は、伸長後の幅を伸長前の幅で割った値〔(伸長時の幅/伸長前の幅)×100〕として求めることができる。測定はY方向の長さが200mm、X方向の長さが100mmのサンプルを切り出し、伸長させる方向(Y方向)の両端における幅(X方向の長さ)を100mmに保った状態で2.0倍に伸長させて行う。伸長後の幅の測定位置は中央部とする。
【0037】
本実施形態においては、幅縮みが生じにくい伸縮性シートとして、図9に示す伸縮シート38を用いている。
図9に示す伸縮シート38は、互いに交差せずに一方向(図9中Y方向)に延びるように配列した多数の弾性フィラメント38bが、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、伸長可能な不織布38a,38cに接合されている。
【0038】
伸縮シート38においては、各弾性フィラメント38bは、伸縮シート38の全長にわたって実質的に連続している。弾性フィラメント38bは弾性樹脂を含んでいる。各弾性フィラメント38bは、互いに交差せずに一方向に延びるように配列している。このようなシートは、弾性繊維が交絡した状態で配置された伸縮シートと比較して、第1及び第2域34,35が延びる方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に伸長させたときに、幅縮みが生じにくいという特徴がある。但し、伸縮シート38の製造条件の不可避的な変動に起因して、意図せず弾性フィラメント38bが交差することは許容される。各弾性フィラメント38bは、互いに交差しない限り、直線状に延びていてもよく、或いは蛇行しながら延びていてもよい。
【0039】
また、弾性フィラメント38bは、実質的に非伸長状態で不織布38a,38cに接合されている。弾性フィラメント38bは、糸状の合成ゴム糸や天然ゴムであり得る。或いは乾式紡糸(溶融紡糸)や、湿式紡糸によって得られたものであり得る。弾性フィラメント38bは、これを一旦巻き取ることなしに直接溶融紡糸によって得られたものであることが好ましい。また、弾性フィラメント38bは、未延伸糸を延伸して得られたものであることが好ましい。
また、弾性フィラメント38bは、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されて形成されたものであることが好ましい。弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されることで、弾性フィラメント38bを非伸長状態で不織布38a,38cに接合させることが可能になる。本実施形態における延伸の具体的な操作としては、(a)弾性フィラメント38bの原料となる樹脂を溶融紡糸して一旦未延伸糸を得、その未延伸糸の弾性フィラメントを再度加熱して軟化温度(ハードセグメントのガラス転移点温度Tg)以上の状態で延伸する操作や、(b)弾性フィラメント38bの原料となる樹脂を溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸する操作が挙げられる。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート38を製造すると、弾性フィラメント38bは、溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸することで得られる。
【0040】
延伸により得られた弾性フィラメント38bは、その直径が10〜200μm、特に20〜130μmであることが好ましい。弾性フィラメント38bは、その断面が円形であり得るが、場合によっては楕円形の断面のこともある。隣り合う弾性フィラメント38bのピッチは、該弾性フィラメント38bの直径が上述した範囲であることを条件として、0.1〜5mm、特に0.4〜1mmであることが好ましい。
【0041】
弾性フィラメント38bは、その全長にわたって各不織布38a,38cに接合している。ここで、「その全長にわたって接合している」とは、弾性フィラメント38bと接触しているすべての繊維(不織布38a,38cの構成繊維)が、該弾性フィラメント38bと接合していることを要せず、弾性フィラメント38bに、意図的に形成された非接合部が存在しないような態様で、弾性フィラメント38bと不織布38a,38cの構成繊維とが接合されていることを言う。弾性フィラメント38bが各不織布38a,38cにその全長にわたって接合していることで、弾性ストランド38bと各不織布38a,38cとの接合力を十分に高めることができる。
【0042】
弾性フィラメント38bと、第1及び第2の不織布38a,38cとの接合の様式としては、例えば融着、接着剤による接着などが挙げられる。溶融紡糸により得られた弾性フィラメント38bの固化前に、該弾性フィラメント38bを不織布に融着させることも好ましい。この場合、各不織布38a,38cと弾性フィラメント38bとを接合させる前に、補助的な接合手段として接着剤を塗布することができる。或いは、各不織布38a,38cと弾性フィラメント38bとを接合させた後に、補助的な接合手段として、熱処理(スチームジェット、ヒートエンボス)や、機械交絡(ニードルパンチ、スパンレース)などを行うこともできる。
【0043】
伸縮シート38は、弾性フィラメント38bの延びる方向と同方向に伸縮可能になっている。伸縮シート38の伸縮性は、弾性フィラメント38bの弾性に起因して発現する。伸縮シート38を、弾性フィラメント38bの延びる方向と同方向に引き伸ばすと、弾性フィラメント38b並びに第1及び第2の不織布38a,38cが伸長する。そして伸縮シート38の引き伸ばしを解除すると、弾性フィラメント38bが収縮し、その収縮に連れて第1及び第2の不織布38a,38cが引き伸ばし前の状態に復帰する。
【0044】
伸縮シート38として、非伸縮性の不織布38a,38cに非伸長状態の弾性フィラメント38bを接合して非伸長性のシートを作製した後、このシートを、歯溝を有する一対のロール間に通過させることによって伸縮性を発現させたものを使用することができる。この際、歯溝部分に接した各部分によって第2領域が形成される。そのようなシートの製造方法としては、例えば特願2008−291470号に記載された方法を採用することができる。
【0045】
伸縮シート38は、伸長状態で搬送され、その伸長状態下に非伸縮シート36と合流されて、接合される。ここでいう伸長状態とは第1及び第2領域34,35が形成された後の伸縮シート38を、その自然状態(収縮状態)に比べて伸長させた状態・BR>ナある。
【0046】
伸縮シート38は、流れ方向に1.1〜4.0倍、より好ましくは1.2〜3.0倍、更に好ましくは1.5〜2.5倍に伸長させた状態下に、非伸縮シート36と接合することが、接合状態での伸縮性複合シートとしての伸びやすさ、縮みやすさの点から好ましい。伸縮シート38の伸長倍率は、伸長状態における長さを、伸長前の自然状態(収縮状態)の長さで除して求められる。
【0047】
接着剤の塗工坪量は、接合強度を確保する観点、及び伸縮性複合シートの伸びやすさや縮みやすさが阻害されないようにする観点から、0.2g/m2 以上であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20g/m2 であり、更に好ましくは0.5〜10g/m2 であり、一層好ましくは0.5〜5g/m2 である。
【0048】
外装体の好ましい製造方法においては、接着剤は、非伸縮シート36の流れ方向に連続的に塗布され、非伸縮シート36の、伸縮シート38に重ねられる部分の全域に塗布される。従って、非伸縮シート36における、第1領域34に接合される部分と第2領域35に接合される部分とに、接着剤の塗布量や塗布パターンの差は生じていない。
【0049】
伸縮シート38と非伸縮シート36は、合流時又は合流直後に、一対のニップロールによって挟圧する。このようにして、伸縮シート38と非伸縮シート36とが積層されて一体化された伸縮性複合部Iを有する外装体連続体が得られる。
この外装体連続体においては、非伸縮シート36と接合したときの伸縮シート38の伸長状態を仮に維持したままであれば、非伸縮シート36側の面に、上述した第1の凸条部31,31・・は生じていないが、その伸長状態を緩和ないし解除することによって、図5に示すような第1の凸条部31,31・・を生じる。これは、図10に示す状態から伸縮シート38が収縮したとき、非伸縮シート36自体は収縮しないため、収縮しきれない分を変形により吸収することにより、伸縮性複合部Iには、第1及び第2領域34,35のピッチに応じて規則的な凸条部31,31・・が形成される。一方、非伸縮シート36を貼り合わせていない伸縮シート38側の面では第1及び第2領域のピッチに応じた凸部が残り、高さの低い第2の凸条部32,32・・が存在することになる。
【0050】
非伸縮シート36と貼り合わせる前の伸縮シート38を単独で収縮させた場合、伸縮シート38は、図11に示すように変形する。伸縮シート38は表面、裏面ともに第1及び第2領域34,35のピッチに対応して規則的で、小さな凸部がY方向に沿って連続的に形成される。一方の面の第2領域15に凸部が形成されているとき、反対側の面の同一第2領域35では凹部が形成されている。逆に、一方の面の第2領域35に凹部が形成されているとき、反対側の面の同一第2領域35では凸部が形成されている。このように、表裏面で凸部の位置が交互に形成されている。したがって、第1凸条部31,31・・と第2凸条部31,31・・とは、外装体4や伸縮性複合部Iを平面視した際に、凸条部の位置が交互に配置することとなる。
【0051】
また、本実施形態の伸縮性複合部Iにおいては、伸縮シート38と非伸縮シート36との間が全面的に接合されているため、図5に示すように、形成される第1の凸条部31の内部に不織布38aに由来する繊維が、不織布38c側の凸条部の繊維よりも密度が低い状態で存在する。そのため、伸縮性複合部Iはクッション性や弾力性に優れるとともに、おむつ内湿気を有効に外部へ放出することに有利な構成になっている。
また、伸縮シート38と非伸縮シート36との間が接着剤により接合されているため、伸縮性複合シート30は、ヒートシールやエンボス等で接着する場合に比べて柔らかく、感触に優れる等の利点がある。
【0052】
更に、非伸縮シート36が伸びきったとき(図10参照)には、伸縮性複合部Iに、いわゆる伸び止まりが生じる。そのため、フィット性に優れ、襞により空気が通りやすく通気性が良くなる等の利点がある。
【0053】
伸縮シート38を構成する第1及び第2の不織布38a,38c並びに弾性フィラメント38bの構成材料について説明する。各不織布38a,38cを構成する繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。各不織布38a,38cを構成する繊維は、短繊維でも長繊維でもよく、親水性でも撥水性でもよい。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイドの複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。各不織布38a,38cは、連続フィラメント又は短繊維の不織布であり得る。特に、伸縮シート38を厚みのある嵩高なものとする観点からは、各不織布38a,38cは、短繊維の不織布であることが好ましい。伸縮シート38を、肌に接触する部材として用いる場合には、肌の接触する側に風合いの良い短繊維不織布を用い、その反対面に強度の高い連続フィラメントの不織布を用いてもよい。
【0054】
各不織布38a,38cは、その構成繊維が低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなることが好ましい。その場合には、少なくとも低融点成分の熱融着により、その構成繊維同士が繊維交点で接合される。低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなる芯鞘型の複合繊維としては、芯が高融点PET、PPで、鞘が低融点PET、PP、PEのものが好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、弾性フィラメント38bとの融着が強くなり、両者間での剥離が起こりにくくなるので好ましい。
【0055】
弾性フィラメント38bは、例えば熱可塑性エラストマーやゴムなどを原料とするものである。特に熱可塑性エラストマーを原料として用いると、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸が可能であり、またそのようにして得られたフィラメントは熱融着させやすいので、本実施形態の伸縮シートに好適である。熱可塑性エラストマーとしては、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー(エチレン系のα−オレフィンエラストマー、エチレン・ブテン・オクテン等を共重合したプロピレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーを挙げることができる。これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらの樹脂からなる芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維を用いることもできる。特にスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、又はそれらを組み合わせて用いることが、弾性フィラメント38bの成形性、伸縮特性、コストの面で好ましい。
【0056】
弾性フィラメント38bと不織布38a,38cを構成する繊維との好適な組み合わせは、弾性フィラメント38bにSEBS樹脂又はSEPS樹脂を用い、不織布38a,38cの構成繊維にPP/PE芯鞘型複合繊維又はPET/PE芯鞘型複合繊維を用いる組み合わせである。この組み合わせを採用することで、融着をしっかりと行うことができる。また芯の融点が高いので、繊維が融着時に溶けきらず(芯が残る)、最大強度の高い伸縮シート38が得られる。
【0057】
非伸縮シート36を構成材料について説明する。
非伸縮シート36としては、各種製法による不織布が好ましく用いられ、例えば、スパンボンド不織布、エアースルー不織布、ニードルパンチ不織布等である。これらの中でも好ましいのは、スパンボンド不織布である。スパンボンド不織布は、繊維配向方向を、弾性フィラメントが延びる方向と同方向とすることが好ましい。
非伸縮シート36として用いる不織布の構成繊維としては、第1及び第2の不織布38a,38cとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。非伸縮シート36として用いる不織布を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でもよく、親水性でも撥水性でもよい。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイドの複合繊維、分割繊維、異形断面繊維等を用いることもできる。これらの繊維は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。不織布は、連続フィラメント又は短繊維の不織布であり得る。特に、連続フィラメントの不織布であることが好ましい。これらの繊維を親水化処理することによって、不織布表面に親水性を与えることができる。親水化処理としては、親水性の界面活性剤等で処理する方法など、公知の手段が用いられる。
【0058】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
たとえば、外装体4の外層シートとして伸縮シートを備えた伸縮性複合シートと、内層シートとしてこれに全面接着した非伸縮シートを用いて説明したが、これに代えて外層シート及び内層シートとして非伸縮性のシート表面に、エンボス加工等によって予め凹凸加工を施したものを用いてもよい。
【0059】
また、外装体は、腹側部及び背側部の何れか一方のみに、伸縮性複合部を有するものであっても良い。また、外装体は、全域が伸縮性複合部であるものであっても良い。
また、使い捨ておむつは、パンツ型に代えて、背側部の両側部に設けたファスニングテープを腹側部外面に止着して装着する、いわゆる展開型の使い捨ておむつであっても良い。この展開型の使い捨ておむつにおいては、腹側部と背側部とが接することによりウエスト開口部が構成される。
また、使い捨ておむつは、成人用及び幼児用の何れでも良い。また、吸収性物品は、使い捨ておむつに代えて、ショーツ型の生理用ナプキン等であっても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 使い捨ておむつ(吸収性物品)
2 吸収性コア
3 吸収性本体
4 外装体
5 表面シート
12 ウエスト開口部
12’ ウエスト部(ウエスト開口部近傍)
I 弾性伸縮部
31 第1の凸条部
32 第2の凸条部
36 非伸縮シート
38 伸縮シート
II 伸縮シート非配置部
41 外層シート表面の襞
42 内層シート表面の襞
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11