(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6872645号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Leopoldes, A.DuPuis, D.G.Bcknall, and J.M.Yeomans, "Jetting Micron-Scale Droplets onto Chemically Heterogeneous Surfaces", 2003 American Chemical Society, September 2, 2003, Pages 9818-9822
【非特許文献2】R.Deegan, O.Bakajin, T.DuPont, G.Huber, S.Nagel and T.Witten, "Capillary Flow as the Cause of Ring Stains from Dried Liquid Drops", Nature, October 23, 1997, Vol.389, Pages 827-829
【非特許文献3】B.DeGans and U.Schubert, "Inkjet Printing of Well-Defined Polymer Dots and Arrays", American Chemical Society, June 9, 2004, Pages A-E
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】印刷時にプリントヘッドから吐出される長尺ナノストラクチャ入り液滴を示す図である。
【
図2】その後パターニング済基板に付着し細長く変形した液滴を示す図である。
【
図3】液滴内のキャリア液の蒸発に伴い元の液滴中心近傍に長尺ナノストラクチャが整列する効果を示す図である。
【
図4】パターニング済基板に付着し細長く変形した液滴内で長尺ナノストラクチャが液滴輪郭沿いに蝟集する効果を示す図である。
【
図5】
図4の状態から液滴内のキャリア液を蒸発させることにより元の液滴輪郭沿いに長尺ナノストラクチャを堆積させる手法を示す図である。
【
図6】半導体ナノワイヤ含有液印刷によるトランジスタ製造法、特にその上にゲートライン及び誘電体層が形成された基板を示す上面図である。
【
図8】
図6及び
図7に示した誘電体層の上に印刷により半導体ナノワイヤ入り液滴を付着させる付着工程を説明するための上面図である。
【
図10】付着工程で付着させた液滴内の半導体ナノワイヤを
図4に示した効果を利用しゲートライン上方に堆積させるナノワイヤ堆積工程を説明するための上面図である。
【
図12】ナノワイヤ堆積工程で堆積させた半導体ナノワイヤを活性領域としてトランジスタが形成されるように誘電体層上にソース及びドレイン電極を形成する電極形成工程を説明するための上面図である。
【
図13】
図6〜
図12に示した製造法の変形例、特に付着した液滴がトランジスタの中心近傍に縮退する例を説明するための側面図である。
【
図15】半導体ナノワイヤ含有液印刷によるトランジスタアレイ製造法、特に印刷により半導体ナノワイヤ入り液滴を液滴捕捉領域(例えば親水性領域)上に付着させる付着工程を説明するための上面図である。
【
図16】付着工程で付着させた液滴内の半導体ナノワイヤを
図4に示した効果を利用しゲートライン上方に堆積させるナノワイヤ堆積工程を説明するための上面図である。
【
図17】ナノワイヤ堆積工程で堆積させた半導体ナノワイヤを活性領域とするトランジスタがアレイをなして形成されるように誘電体層上にソース及びドレインラインを形成する電極形成工程を説明するための上面図である。
【
図18】液滴が拡がりつつあるときの接触角即ち拡張時接触角の例を示す図である。
【
図19】液滴が縮まりつつあるときの接触角即ち縮退時接触角の例を示す図である。
【
図20】
図3に示した効果が生じる液滴蒸発過程を説明するため基板付着当初の液滴及びその中に浮遊しているナノパーティクルを示す図である。
【
図21】拡張時接触角と縮退時接触角にあまり差がないため形状をほぼ保ちながら蒸発していく液滴を示す図である。
【
図22】過程終了時に元の液滴中心の近傍に堆積しているナノパーティクルを示す図である。
【
図23】
図4に示した効果が生じる液滴蒸発過程を説明するため基板付着当初の液滴及びその中に浮遊しているナノパーティクルを示す図である。
【
図24】縮退時接触角が小さいため接触線がほとんど動かないで蒸発していく液滴を示す図である。
【
図25】過程終了時に接触線近傍に堆積しているナノパーティクルを示す図である。
【
図26】二種類のキャリア液を併用しMarangoni効果を発生させる手法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る長尺ナノストラクチャ配置、配向及び堆積方法について説明する。本願中、「ナノストラクチャ」とはその短軸長が100nm以下の構造物を指しており、「長尺」とは長さが幅に比べ十分に大きく例えば幅の5倍以上あることを指している。長尺ナノストラクチャにはナノワイヤ、ナノチューブ、ナノクリスタル、ナノパーティクル等様々な種類がある。また、本願中、「液」とは流体、「液滴」とは「液」の滴のことであり、以下説明する方法では長尺ナノストラクチャ入り液滴を印刷その他の手法で誘電体に付着させる。特に、液滴の付着位置や付着後形状を制御することで堆積後における長尺ナノストラクチャの配置及び配向を制御する。
【0012】
図1に、プリントヘッド104から基板116上に向け吐出された長尺ナノストラクチャ112入りの液滴108を示す。液滴108は、懸濁媒体たるキャリア液と、そのキャリア液中に安定な懸濁物として浮遊する一群のナノストラクチャ112と、を含む印刷可能液滴である。「印刷可能」とはその粘度が十分低くプリントヘッド104が目詰まりしにくいということであり、その条件を満たしキャリア液として使用できる液には水、有機溶媒、ホットメルトワックス等をはじめとして様々な種類がある。また、化学的処理によってキャリア液内長尺ナノストラクチャ蝟集を妨げるようにしてもよい。それには、例えばナノストラクチャ112と化学結合しうる有機チオールや有機トリクロロシラン等の反応性化学物質によってナノストラクチャ112の表面を誘導体化してもよいし、ナノストラクチャ112の表面に非共有結合的に付着する有機ポリマや界面活性剤等の化学物質を添加してもよい。
【0013】
液滴内ナノストラクチャ濃度は、目標とするナノストラクチャ分布密度即ち基板116上の単位面積に堆積させるナノストラクチャ112の量に応じて定める。例えば、液滴108のサイズが約100pl(pl:ピコリットル)、目標とするシリコンナノワイヤ分布密度が100個/単位面積であるとしたら、その液滴1個でその目標を達成するには、液滴内シリコンナノワイヤ濃度をキャリア液100pl当たり100個にすればよい。直径が10nmで長さが2μmのナノワイヤなら液の質量濃度は約1〜10ppm程になろう。
【0014】
液滴108をプリントヘッド104から吐出させる方式としては、インクジェット方式、音響ノズルレス方式等、様々な方式を使用できる。例えばインクジェット方式では、ヘッド104に設けた圧電デバイスによって液滴108の吐出を制御する。更に、音響ノズルレス方式ならばノズルがないため目詰まりの心配もなく、従って例えば2μm超の長尺ナノストラクチャ112でも好適に堆積させることができる。これら、ジェット印刷による方式には、液滴108を基板116上に形成済の物体に対し精密に配置できるという利点がある。但し、他の印刷法例えばフレキソ印刷、グラビア印刷等も使用できる点をご理解頂きたい。
【0015】
こうして付着させた液滴108におけるナノストラクチャ112の配置及び配向は、付着後液滴形状の制御により制御する。
図2は基板116上に付着させた液滴108を上から見た図である。図示例では、基板116に対する前処理によって、付着した液滴108がそれに沿って細長く変形するよう液滴捕捉領域が形成されている。液滴捕捉領域を形成する手法としては、第1に表面エネルギ(電気陰性度)パターンを基板116に付与する手法があり、第2に凹凸パターンを基板116上に設ける手法がある。何れの手法でも、付着した液滴108が細長くなるように液滴捕捉領域を形成することができる。例えば第1の手法では、基板116に対する前処理によって、図中の領域204,208を疎水性領域とし、その間にある領域212を親水性領域(領域204,208より疎水性が弱い領域のこと;以下同様)とする。水等をキャリア液とする液滴108は親水性領域212に吸い寄せられ、疎水性領域204,208との接触長が最小になるよう細長く変形する。従って液滴捕捉領域になるのは領域212である。また、第2の手法では、領域212よりも領域204,208の方が僅かに高くなるよう基板116を製造乃至加工してその表面の高さに変化をつける。この場合領域212は溝になるので、付着した液滴108は、溝の壁と壁の間で作用する毛細管力によって溝沿いに細長く伸びていく。従ってこの場合も領域212が液滴捕捉領域になる。
【0016】
細長く変形した液滴108は、その後のキャリア液蒸発に伴い徐々に小さくなっていく。その際、表面張力があるので液滴108はナノストラクチャを内部に捕らえたままで小さくなる。従って、液滴108内ではナノストラクチャが徐々に蝟集し(中心蝟集効果)、液滴108の形状に倣い細長く整列していく。
図3に、縮退中の液滴108及びその中で徐々に整列しつつあるナノパーティクル304,308,312を示す。最終的にはキャリア液がなくなるので、これらのナノパーティクル304,308,312をはじめとする長尺ナノストラクチャはその姿を現す。そのときそれらは当初液滴中心位置であった場所の近傍に整列している。
【0017】
この手法即ち中心堆積法では、狙い通りの場所に長尺ナノストラクチャが表出するよう注意深く制御を行わねばならない。これに代わる手法としては、エッジ堆積効果(コーヒーステイン効果)と呼ばれる現象を利用するエッジ堆積法がある。
図4及び
図5にこの現象を示す。液滴内に存する低密度の長尺ナノストラクチャ404例えばナノワイヤは、キャリア液蒸発に伴い発生する液滴内物質流によって
図4に示す通り液滴長弧付近に移動していく。それにつれナノストラクチャ404の長軸が液滴長弧に沿って整列していき、ナノストラクチャ404と液滴輪郭408の接触面積が広くなっていく。このとき適当な高周波振動を加えれば、ナノストラクチャ404の整列の仕方を随意に調整することができる。
【0018】
キャリア液の蒸発が進行すると、
図5に示すように、ナノストラクチャ404が当初液滴輪郭408であった場所に取り残された構造になる。即ち、キャリア液の蒸発で縮んだ液滴504が残る。その液滴504には既にキャリア液しか残っていない。
【0019】
エッジ堆積効果が発生するのかそれとも中心蝟集効果が発生するのかは、
図18〜
図25に示す化学的な仕組みによって決まる。まず、
図20〜
図22に示すエッジ堆積効果は輪郭固定効果(ピニング効果)のある懸濁媒体を用いた場合に発生する。輪郭固定効果とは基板上における液滴輪郭位置が付着時の位置で実質的に固定される現象のことであり、これが発生するのは、典型的には、
図18及び
図19に示すように大きな接触角ヒステリシスがある単種類の(即ち混合等されていない)液を懸濁媒体即ちキャリア液として使用した場合である。
【0020】
図18には液滴1804が拡がりつつあるときの接触角即ち拡張時接触角1800が、また
図19には液滴1804が縮まりつつあるときの接触角即ち縮退時接触角1900が、それぞれ示されている。接触角ヒステリシスとは拡張時接触角1800に対する縮退時接触角1900の角度差のことである。接触角ヒステリシスが小さい場合、即ち拡張時接触角1800と縮退時接触角1900の角度差が例えば10°未満程度の僅かな角度差である場合には、基板に対する液滴1804の接触線が可動接触線になるのが普通である。可動接触線とはキャリア液蒸発につれさしたる拘束なしに動く接触線のことであり、この種の接触線が発生しているときには、液滴1804内の長尺ナノストラクチャ(図示せず)は接触線移動につれて液滴中心方向に移動していく。
【0021】
図20〜
図22に、その接触線2004が可動な液滴2000からキャリア液が蒸発するとき発生する中心蝟集効果の例を示す。可動接触線2004を有する液滴2000は、キャリア液蒸発の進行中、
図20に示した付着当初の全体形状をほぼ維持しながら縮んでいく。液滴2000の輪郭2008とその下の基板2012とが接する線即ち接触線2004も、
図21に示すようにキャリア液蒸発に伴い内側に移動していく。液滴2000には表面張力があるので、その中に浮遊している長尺ナノストラクチャ例えばナノパーティクル2016は液滴2000の中心方向に押し込められる。そのあげく
図22に示すようにキャリア液の量が減りナノパーティクル2016を浮遊させ得ない量になると、ナノパーティクル2016は液滴2000から表出する。
【0022】
図23〜
図25に、液滴2300の輪郭2308,2312が固定されているためナノパーティクル2304が輪郭2308,2312の近傍に堆積するエッジ堆積効果の発生例を示す。付着当初
図23に示す状態であった液滴2300は、蒸発の進行に伴い
図24に示す状態を経て
図25に示す状態になる。
図25に示した状態は最終段階に近い状態であり、この段階では、液滴2300中に浮遊していた長尺ナノストラクチャ例えばナノパーティクル2304が既に液滴輪郭2308,2312の近傍に集積している。キャリア液が更に蒸発すると、これらのナノパーティクル2304は液滴2300から表出する。
【0023】
エッジ堆積効果をもたらす輪郭固定は、通常、縮退時接触角2408が小さく0°にかなり近い場合に発生する。これは取り立てて珍しいことではなく、接触角ヒステリシスが例えば10°超と大きな液は割合に多くある。そうした液を液滴2300のキャリア液として使用した場合、基板に対する輪郭2308,2312の接触線2320がほぼ固定された状態で蒸発が進行するので、液滴2300は全体として平坦な状態で薄くなっていく。また、輪郭2308,2312の近傍には高曲率部位があり、高曲率部位では液滴2300の他の部位に比べてかなり高速に蒸発が進行するので、液滴2300内には輪郭2308,2312に向かうバルク液流が発生する。このバルク液流は液滴2300内のナノパーティクル2304例えばコロイド粒子を輪郭2308,2312方向に搬送するので、ナノパーティクル2304は輪郭2308,2312に蝟集する。蝟集したナノパーティクル2304はやがて液滴2300から表出する。なお、この現象については非特許文献2に言及がある。
【0024】
輪郭固定を防ぎ長尺ナノストラクチャ例えばナノパーティクルを液滴中心近傍に堆積させるには例えばMaragoni流を利用すればよい。即ち、蒸気圧及び表面張力が異なる二液の混合物を印刷すると、蒸発時に液滴内で発生する物質流が複雑になることを、利用すればよい。
図26に、二種類のキャリア液2604及び2608を混ぜてMaragoni流を発生させる方法を示す。第1のキャリア液2604の方が蒸気圧が高く(従って蒸発が速く)且つ表面エネルギが高い場合、液滴内では、その輪郭方向に向かう第2キャリア液2608の流れと、中心方向に向かう第1液2604の一部の流れとが発生する。浮遊しているナノストラクチャは液滴内で発生する物質流(液流)に乗って流れるので、こうした一群の物質流を発生させることで、乾燥の進行中にナノストラクチャが液滴の輪郭近傍に蝟集、堆積することを防ぐこと、即ち液滴内におけるナノストラクチャ分布を乾燥中も均一性が高い状態に保つことができる。なお、液2604及び2608としては、例えば水とエチレングリコールの組合せ、酢酸エチルとアセトフェノンの組合せ等を用いればよい。
【0025】
以上述べた長尺ナノストラクチャ配置、配向及び堆積方法は様々なデバイスの形成・製造に利用可能である。
図6〜
図12に、半導体ナノワイヤを印刷しエッジ堆積効果を利用してトランジスタの活性領域を形成するトランジスタ形成方法の例を示す。
図6に上面をまた
図7に側面を示すように、基板608上にはライン状ゲート電極即ちゲートライン604,606が堆積・形成されており、更にその上には誘電体層704が堆積・形成されている。通常、基板608としては絶縁体を用い、その上に金属等による導体層を堆積させてゲートライン604,606を形成する。また、ゲートライン604,606の上方を覆う誘電体層704にはパターニングが施されている。即ち、ゲートライン直上部位の疎水性をそれ以外の部位に比べ高める、ゲートライン直上部位をゲートライン間隙直上部位より僅かに高くする等の手法によって、その表面708に付着した液滴が変形してゲートライン間隙直上部位に細長く延びるよう処理されている。
【0026】
プリンタに設けた吐出機構例えば
図1に示したプリントヘッド104を用い、2本のゲートライン604,606の間隙の直上に位置する部位808に向けて半導体ナノワイヤ812入り液滴804を吐出すると、
図8及び
図9に示す中間生成物が得られる。
図8は上面、
図9は側面を示す図である。図示した液滴804の中心線はゲートライン間隙直上部位808の中心線とほぼ一致しており、またその輪郭が一方ではゲートライン604の中心線にまた他方ではゲートライン606の中心線にほぼ一致している。液滴804が細長くなっているのは誘電体層704の表面708が前掲の通り処理されているためである。また、付着当初は液滴804内におけるナノワイヤ812の分布に幾分無秩序さが見られることがあるが、その場合も、何らかの刺激、例えば振動等を加えると、それらのナノワイヤ812は液滴804の長弧816,820沿いに蝟集していく。
【0027】
エッジ堆積効果により堆積させたナノワイヤ812を
図10及び
図11に示す。
図10は上面図、
図11は側面図である。図中、1004は付着当初の、また1008はその後液滴の大部分が蒸発してしまった時点での、液滴804の輪郭概略位置を示している。その輪郭が位置1004から位置1008まで後退、縮小した液滴804内には、もはや長尺ナノストラクチャは残っていない。
【0028】
本実施形態では、こうして堆積させた半導体ナノワイヤを活性領域とするトランジスタを形成するため、当該活性領域に接触するようソース電極及びドレイン電極を形成する。これらの電極は例えばワックスレジスト印刷による従来型処理手法を用いて形成できる。
図12に、半導体ナノワイヤ1212,1216等により形成された活性領域並びにこれに接するソース電極1204及びドレイン電極1208を示す。このトランジスタでは、ナノワイヤ1212,1216等の下方に位置するゲートラインに電圧を印加することによって、ソース電極1204とドレイン電極1208の間に流れる電流を制御することができる。
【0029】
こうした構造のトランジスタは、
図6〜
図12に示した方法即ちエッジ堆積効果を利用して形成する方法以外に、ナノワイヤを液滴のほぼ中心に堆積させる特性を持ったキャリア液を使用する方法でも、形成することができる。この方法を実施するためゲートライン1304,1308の中心線上方に液滴1302,1303を付着させた例を
図13及び
図14に示す。
図13は側面図、
図14は上面図である。
図14に示すように、誘電体層1312の表層のうちゲートライン間隙直上部位には疎水性領域1404が形成されている。この領域1404の疎水性によって、ナノワイヤ1408,1412入り液滴1302,1303はゲートライン1304,1308の上方で細長く延びることとなる。
【0030】
図15〜
図17に、上掲の方法を応用してトランジスタアレイを製造する方法の例を示す。この方法においては、まず
図15に示すようにナノワイヤ1504のアレイを印刷する。その際には、予め誘電体層の表面をパターニングしゲートライン1512にほぼ直交する方向に沿って液滴捕捉領域1508を形成しておく。領域1508としては、例えば親水性があり印刷液で濡れやすい領域又は周囲より窪んだ領域を形成しておく。領域1508に隣接する部位は領域1508に比べ印刷液に対する濡れ性が低く又は領域1508より盛り上がっているので、ナノワイヤ1504入り液滴を誘電体層表面のパターニング済部分に付着させると、
図16に示すように、その長弧乃至長辺がその周囲領域即ち疎水性領域の縁に概ね沿うようその液滴が変形していく。
【0031】
図示の通り、親水性領域乃至窪み領域たる液滴捕捉領域1608,1609はゲートライン1624に対しほぼ直交する方向に延びているので、その縁に対しほぼ横並びにナノワイヤ1604を堆積させることで、領域1608,1609の下方を走るゲートライン1624に対し直交する方向に沿ってナノワイヤ1604をほぼ整列させることができる。そこで、ストライプ状の液滴捕捉領域1608,1609の中心線とゲートライン1624の中心線の交点に中心位置をほぼ合わせて液滴1616を付着させる。こうして付着させた液滴1616は、液滴捕捉領域1609とその周辺領域1610との境界線にその輪郭が重なるように変形していく。そうなった液滴1616を乾燥させるとキャリア液によるエッジ堆積効果が進行して液滴1616内のナノワイヤ1604が当該境界線付近に蝟集、堆積する。従って、液滴が1個あればトランジスタを形成することができるが、例えば図中破線1612でくくられた領域では、互いに近い場所に付着した別々の液滴に由来する複数群のナノワイヤを併用して、1個のトランジスタを共同形成することもできる。
【0032】
半導体ナノワイヤを堆積させたら、
図17に示すように、トランジスタアレイが形成されるよう、ライン状ソース電極即ちソースライン1704とライン状ドレイン電極即ちドレインライン1708とを堆積させる。ソースラインドレインライン間距離はナノワイヤ長よりも短くすることができる。こうした方法でディスプレイやセンサといったデバイスを製造する場合、その画素ピッチはナノワイヤ入り液滴の印刷間隔によって決まり、例えば100〜500μmといったピッチになる。
【0033】
また、
図17から看取できるように、ナノワイヤを用いてトランジスタを形成する際には、そのトランジスタの例えばソースと、その隣のトランジスタの例えばドレインとが短絡しないように、ナノワイヤを配置する必要がある。即ち、ナノワイヤ入り液滴を注意深く位置決めし、隣り合うトランジスタ同士を隔てるゲートライン間隙直上部1620を避けて、液滴を配置する必要がある。