特許第5775931号(P5775931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775931
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】体液用の使い捨て採取装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20150820BHJP
   A61B 5/15 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   A61M5/32 510H
   A61B5/14 300H
【請求項の数】21
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-521825(P2013-521825)
(86)(22)【出願日】2011年7月20日
(65)【公表番号】特表2013-532550(P2013-532550A)
(43)【公表日】2013年8月19日
(86)【国際出願番号】US2011044668
(87)【国際公開番号】WO2012015644
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年5月21日
(31)【優先権主張番号】12/846,402
(32)【優先日】2010年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501383727
【氏名又は名称】リトラクタブル テクノロジーズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RETRACTABLE TECHNOLOGIES,INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】508328486
【氏名又は名称】ショー,トーマス ジェイ.
【氏名又は名称原語表記】SHAW,Thomas J.
(74)【代理人】
【識別番号】100066728
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 敏之
(74)【代理人】
【識別番号】100141841
【弁理士】
【氏名又は名称】久徳 高寛
(74)【代理人】
【識別番号】100119596
【弁理士】
【氏名又は名称】長塚 俊也
(74)【代理人】
【識別番号】100100099
【弁理士】
【氏名又は名称】宮野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100114
【弁理士】
【氏名又は名称】西岡 伸泰
(72)【発明者】
【氏名】ショー,トーマス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スモール,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,ニ
【審査官】 藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−005518(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0306601(US,A1)
【文献】 特表平02−502076(JP,A)
【文献】 特開平03−015481(JP,A)
【文献】 特表2001−522626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00 − 5/52
A61B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から体液を採取するのに有用な装置において、
前方に突出し、後方に付勢され、解放可能に拘束され、選択的に引き込み可能な針を有しており、流体採取管を受け入れて、前記引き込み可能な針の後端と選択的に解放可能な流体連通をするように構成された本体と、
引き込みキャビティと、前記本体にヒンジで接続された後部と、前記引き込みキャビティにアクセス可能とする開放した前部と、前記本体内に回転可能に装着されたラグリングと選択的に係合可能なラグ接触面と、を備えている細長のトリガと、
を備えており、
前記流体採取管を前記本体から外した後に、前記本体に対して前記トリガを回動させると、前記ラグリングが回転して、後方に付勢された前記引き込み可能な針が解放されて、前記引き込みキャビティへと引っ込む装置。
【請求項2】
前記体液は血液である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記流体採取管は血液採取管である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記引き込み可能な針は、鋭い前側針先と鋭い後側針先とを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記引き込み可能な針は、前記前側針先にある上向きの斜面と、前記後側針先にある下向きの斜面とを有している、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記後側針先は、軟質の弾性鞘によって囲まれる、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記鞘は、前記本体内に位置する針ホルダに取り付けられる、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記引き込み可能な針は、前記本体内に位置する針ホルダに取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記針ホルダは横フランジを有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記針ホルダの一部は、前記本体の前方に突出している、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記針ホルダは、前記ラグリングによって拘束される、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記ラグリングは、前記針ホルダの横フランジと位置合わせ可能な、中央に配置されるアパーチャを備えている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記引き込み可能な針は、圧縮された引き込みバネによって後方に付勢される、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記引き込み可能な針は、前記ラグリングによって拘束される、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記本体は、開放した後端部を備えており、前記開放した後端部に前記流体採取管を取り出し自在に挿入できる、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記本体は、上向きのスロットを備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記トリガは、前記スロットの内側に押し下げられて前記ラグリングを回転させる、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記本体は、少なくとも1つの横方向に突出するフランジ部材を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの横方向に突出するフランジ部材は、ほぼ平らな底部を有する、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記トリガの前記ラグ接触面は、前記ラグリングから突出するラグと係合可能な面である、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記本体、前記トリガ及び前記ラグリングは、成形されたプラスチックでできている、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、係属中である2010年7月29日出願の米国特許出願第12/846,402号の一部継続出願である。当該米国特許出願は、係属中である2008年6月10日出願の米国特許出願第12/136,462号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、患者から体液を採取するのに有用な医療装置に関しており、より詳細には、例えば、使い捨てされ(non-reusable)、不慮の針刺し(needle sticks)に対する保護をもたらす血管の血液用の採取装置に関する。
【背景技術】
【0003】
患者から血管の血液又は他の体液を採るのに用いられる従来の装置は、患者から引き抜かれる際に、針先が露出したままである。このために、装置の使用者は、針刺しに合うと、流体中に存在する病原体と接触することで汚染されてしまう。使用者と患者の双方をよりよく保護する装置であって、他の患者に再使用される余地がなく、使用が便利であり、例えば、従来の血液採取管と共に使用できて、比較的低いコストで確実に且つ大量に製造できる装置が必要とされている。このような装置を本出願で開示する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書中で開示する本発明は医療装置であり、弾性(通常はゴムである)栓を一端に有する従来の採取管を使用して、患者又は動物から血液又は他の体液を採るのに用いることができる。前方に延びる装置の端部は、例えば、患者の静脈に挿入可能な鋭い針先を有することが望ましい。針の後端部もまた、血液採取管の開放端部を封じる弾性体の栓(通常はゴム栓である)を通って挿入できる鋭い針先を有することが望ましい。針の後端部は最初、軟質の弾性鞘で覆われており、当該弾性鞘は、後方に延びる針先によって貫通され、その後、針先が栓を貫通して、患者の静脈と血液採取管の内部との間に針を介した流体連通が確立されると、前が押されて潰れる。後方に向く針先を覆う収縮可能な弾性鞘により、流体は、針が血液採取管に挿入される時点よりも前に、針の後側から漏れ出ることが防止される。一旦所望量の流体が採取され、そして採取管が針先との接点から引き抜かれると同時に、収縮していた弾性鞘は針先を覆う元の位置にまで広がる。これにより、針の中に残っている如何なる血液も、引き込み前に針又は装置の後側から流出することが防止される。
【0005】
本発明の別の望ましい特徴は、前方に延びる針先が装置の本体の内部に引き込まれて、不慮の針刺しが防止されることである。この引き込みは、最初に患者の体から針を取り外さずに、トリガを押し下げることで開始されることが望ましい。トリガは、装置の後側近くでヒンジ留めされている。トリガの前端部が装置の本体に対して押し下げられると、後方に延びる針先が、圧縮された引き込みバネによってトリガ内部の引き込みキャビティ内に押し進められる。引き込み中にて、引き込みバネが伸びた後は、針の先端部は装置の本体内に留まる。
【0006】
本発明の別の望ましい特徴は、針の引き込みを開始するのに用いられる解放機構である。引き込み前、針は、針ホルダに取り付けられており、当該針ホルダは、圧縮された引き込みバネによって後方に付勢され、装置の本体内に回転可能に装着されているラグリングによって、付勢されたその位置に保持されている。体液の採取後にトリガを押し下げて、針の引き込みを開始すると、トリガは、ラグリングから半径方向に突出するラグと接触し、ラグリングが装置の本体の内部で回転する。ラグリングが回転すると、リングのアパーチャが動いて、針ホルダ上の協働的な形状の横フランジと位置合わせされて、これによってそれ以前は拘束されていた針ホルダがアパーチャを通過できる。横フランジがラグリングのアパーチャを通過すると、圧縮されていた引き込みバネが解放されて、針ホルダが後方に追いやられ、トリガ内部の引き込みキャビティ内に入る。この回転解放機構は、引き込み可能な針を有する任意の先行技術の装置において引き込みバネを解放するために使用される機構とは異なると考えられ、確実に保持することに加えて、装置を使用する臨床医が比較的小さなトリガ力を加えることしか必要としないスムースな解放動作をもたらす。
【0007】
本発明の好ましい実施形態によれば、患者から血管の血液等の体液を採取する使い捨て装置が開示されており、当該装置は、例えば、血液採取管を受け入れるように構成され、後方に付勢される針ホルダに取り付けられる引き込み可能な針を有し、針ホルダは、針の引き込み前は、回転可能に装着されたラグリングによって拘束されており、引き込みする間に、装置の本体に回動可能に連結されたトリガの押し下げによりラグリングが回転することによって解放されて、針ホルダは、トリガの内部に配置された引き込みキャビティ内に追いやられ、針の先端が装置の本体内に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下の図面を参照して、本発明の装置をさらに記載及び説明する。
図1図1は、血液等の体液を採取するのに有用な装置の好ましい実施形態を単純化した斜視図であって、当該装置はほぼ鉛直に向けられており、装置の前方に延びる部分が略下向きの方向を指している。
図2図2は、図1の装置の分解組立図である。
図3図3は、図1の装置を水平に向けた場合の平面図である。
図4図4は、図1の装置を図2のように向けた場合の側面図である。
図5図5は、図1の装置を図4のように向けた場合の左端面図である。
図6図6は、図3に示す装置の線6-6に沿った断面図であり、流体採取管を装置内部へ挿入する前の使用前構成である装置が示されている。
図7図7は、図6の装置にて、流体採取管を装置内部へ挿入した後の断面立面図である。
図8図8は、図6の装置における使用後及び引き込み後の構成の断面立面図であって、引き込みバネが伸びており、針の先端が装置本体の内部に引き込まれている。
図9図9は、図4を簡略化及び縮小した図であって、断面線は、図10の断面立面図を描く位置及び方向を示している。
図10図10は、図9の線10−10に沿った、簡略化した断面立面図である。
図11図11は、図10の断面立面図の拡大詳細図であり、使用前及び引き込み前の位置におけるラグリングと、ラグと、トリガのラグ接触面とを示している。
図12図12は、図10に示す装置を示しているが、トリガが本体に対して押し下げられており、ラグリングとラグが引き込み位置にまで回転している。
図13図13は、図10の立断面図の拡大詳細図であって、ラグリングと、ラグと、トリガのラグ接触面とが引き込み位置にあることを示している。
図14図14は、図12に示す装置であるが、引き込み後のものである。
図15図15は、図7の拡大詳細図である。
図16図16は、血液等の体液を採取するのに有用な装置の別の好ましい実施形態を後方上面から見た単純化された斜視図であって、針とトリガ(又は回動可能なアクチュエータ)が引き込み前の突出位置に配置されており、装置の本体には横バーが備えられており、当該横バーは、針の引き込み後に、トリガの後部が本体の後部に対して上方向に回動移動することを制限している。
図17図17は、図16の詳細図である。
図18図18は、図17の線18−18に沿う正面断面図である。
図19図19は、図16の装置の別の好ましい実施形態を後方上側から見た単純化された斜視図であって、針は引き込まれて、トリガは引き込み後位置に配置され、装置の本体には横バーが備えられており、当該横バーは、針の引き込み後に、トリガの後部が本体の後部に対して上方向に回動移動することを制限している。
図20図20は、図19の詳細図である。
図21図21は、図20の線21−21に沿う正面断面図である。 図面の全ての図において、同じ参照符号を用いて同様の部品が説明されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面の種々の図において全体的又は部分的に示すように、装置(20)は、患者の体から体液、より好ましくは血管の流体を容易に採取するように構成されることが望ましい。装置(20)は通常、例えば図7及び図8に示すように、そして、これらの図を参照してさらに後述するように、血液採取管と共に使用される。装置(20)は望ましくは、2つの尖端部を有する針を備えており、これら尖端部は、共通のボアで繋がれて、例えば、前側の端部に流れ込む流体は、何とかして妨げられない限りは、後側の端部から流れ出る。針は、針ホルダによって装置(20)の内部に支持されることが望ましい。後向きの針の尖端部は望ましくは、軟質ゴム鞘で覆われ、当該ゴム鞘は、摩擦、接着剤等によって針ホルダの後端部に固定される。
【0010】
血管の血液等の体液のサンプルを患者から採ることを目的とした臨床処置中に、前方へ突出する針の端部が患者の静脈又は動脈内に挿入される。装置(20)は、この試みを容易にするために、テクスチャ加工された把持面(gripping surface)を備えている。装置(20)の下側は望ましくはほぼ平らになっており、患者の体に対してほぼ水平な角度で針を挿入できるようにされている。ゴム栓を有する流体採取管が、後側の開口を通って装置(20)内に挿入されることが好ましく、流体採取管は、装置(20)の内部にて前方に向け、針の後端部がゴム栓の抵抗を受けるまで移動する。これが起こると、ゴム鞘は通常、ゴム栓よりもかなり柔らかいので、針先は鞘に孔を開け、鞘は針の周囲で収縮し、針先は栓を通って進む。後向きの針先が流体採取管の栓を貫通すると、前端部にて患者から針内に流入する体液が、針を通って流体採取管内に流入できるようになる。流体採取管は通常、真空にされており(evacuated)、ベンティング(venting)せずとも流体がチューブ内部に流入できる。所望量の流体が採取されると、チューブが装置(20)から引き抜かれる。そして、後向きの針先が栓を抜け出ると、ゴム鞘は再度、今は露出している針先に向かって全体を覆うように広がる。ゴム鞘を製造するのに用いられるゴムは、針が引き抜かれると、針で開けられた孔が閉じる程度の十分な弾性を有することが望ましく、これによって、針の先端がまだ患者に挿入されている間に、針の後側から流体が意図せずに流れ出ることを防止できる。
【0011】
従来の装置を用いて臨床的に血管の流体を採った段階では、針の先端が患者の静脈又は動脈から引き抜かれると、裸の針先は、血液由来の病原体で汚染されている虞があり、承認された針用容器(sharps container)等内に処分されるまで、臨床医に危険を及ぼすことになる。多くの場合、この時に不慮の針刺しや感染が起こる。この理由から、針の先端が患者から引き抜かれて、装置(20)の本体内に入るように、装置(20)を特別に適合させて構成することで、不慮の針刺し、又は、針先や針先上にある体液との直接的な接触による汚染のあらゆる機会を大幅に減らすようにしている。
【0012】
図1及び図2を参照すると、装置(20)は望ましくは、本体(22)と、細長のトリガ(24)と、針ホルダ(50)と、引き込み可能な針(28)とを備えている。さらに、本体(22)は望ましくは、ノーズ(40)の前端部の前側開口と、後側開口(34)と、外向きに突出するフランジ部材(38)と、両側面に配置されている指グリップ(30)とを備えている。また、指グリップ(32)は望ましくは、トリガ(24)の上向きの端部にも存在しており、この端部は、本体(22)のヒンジ支持部(36)と反対側にあり、このヒンジ支持部(36)にトリガ(24)が回動可能に結合されている。針ホルダ(50)の先端(26)には引き込み可能な針(28)が取り付けられており、針ホルダ(50)の先端(26)は、図1及び図2では見えていないノーズ(40)の前側開口を通って、本体(22)のノーズ(40)を僅かに超えて延びることが望ましい。
【0013】
装置(20)の構造と組立てを、図1乃至図7を参照してさらに記載及び説明する。トリガ(24)は好ましくは、細長の部材であって、略逆U字形にされており、前向きの開放端部(96)(図7)と、その反対側に配置された閉端部とを有しており、閉端部は、側方に突出した2つの対向するボス(44)(図2図4及び図5)を備えている。本発明の本実施形態では、ボス(44)は、装置(20)の組立て中に本体(22)上のヒンジ支持部(36)とスナップ係合して、ヒンジピンとして機能するが、同じように機能する他の構造を同様に使用して、トリガ(24)の後部を本体(22)に回動可能に連結することもできる。ボス(44)とヒンジ支持体(36)の摩擦係合によって、装置(20)の使用中にトリガ(24)が本体(22)から偶発的に外れることは防止されるが、組立て後、協働するヒンジ支持体(36)の凹部にて、ボス(44)の回転に大きな抵抗を付与する程ではないことが望ましい。後方に突出するストップ部材(46)が設けられて、装置(20)の使用中に、本体(22)に対するトリガ(24)の上向きの回転が制限されることが好ましい。トリガ(24)の下側(図7のように置いた場合)は好ましくは、その長さの大部分で開放しており、その後部付近に底壁部(47)が配置されている。以下に詳述するように、トリガ(24)の内部空間が引き込みキャビティ(90)として機能して、この中に、引き込み可能な針(28)の大部分と針引き込みアセンブリの他の部分とが、体液採取後の引き込み中に受け入れられる。テクスチャ加工された指把持面は、例えば、間隔を空けて横方向に配置された複数のリッジ(ridge)(32)を備えており、開放した自由端部(96)に隣接したトリガ(24)の上面に設けられることが好ましい。図7を参照すると、本体(22)に対してほぼ下方に向いており、アンダーカットされたラグ(lug)接触面(94)が、開放端部(96)の近くに設けられていることが望ましい。ラグ接触面(94)の機能は以下でさらに記載する。
【0014】
本体(22)は、内部キャビティ(92)を規定する略管状の側壁を有しており、当該側壁は、好ましい実施形態において、血液採取管(76)等の従来の流体容器を受け入れられる大きさの直径を有している。この流体容器は、装置の使用中、図6及び図7に示すように、後側開口(34)を通して摺動自在に挿入される。本体(22)の側壁は望ましくは、装置(20)の使用中、本体(22)と針(28)について血液採取管(76)をほぼ同軸に維持するガイドとして機能する。本体(22)の長さは望ましくは、チューブ(76)の一部を臨床医が容易に掴めるようにしてあり、これにより体液採取後のチューブ(76)の取外しが容易になる。図1乃至図5を参照して、指グリップ(30)は、例えば、複数のリッジを密接に配置してテクスチャ加工した表面部を備えており、望ましくは本体(22)の各側面に設けられて、装置(20)の使用中に、臨床医が本体(22)を掴むのに役立つようにしている。
【0015】
特に図2乃至図4図6及び図7を参照すると、本体(22)は好ましくは、長手方向に延びており、細長で上向きのスロット(72)をさらに備えている。トリガ(24)の開放端部(96)が、ヒンジ支持部(36)から本体(22)に対して下方向に回動すると、トリガ(24)の一部をスロット内に受け入れるように、スロット(72)は寸法決め及び構成されている。スロット(72)の両側の前部にある前側凹み部(42)によって、トリガ(24)の前部が下方に向けてスロット(72)内に移動することが容易となる。本体(22)の前端部は望ましくはテーパー状のノーズ(40)を備えており、ノーズ(40)の内径は、内向きにステップ状になっており、ノーズ(40)は、針ホルダ(50)の先端(26)の外径よりも僅かに大きな内径を有する前側開口とを有する。図1及び図7を参照すると、ノーズ(40)の長さは、針ホルダ(50)の先端(26)がノーズを僅かに超えて延びるようにしていることが望ましく、これにより、必要に応じて、本体(22)の内部に針ホルダ(50)を取り付けた後に、針(28)を針ホルダ(50)へ取り付けることが容易となる。
【0016】
特に図2及び図7を参照すると、針引き込みアセンブリは、好ましくはラグリング(62)と、針ホルダ(50)と、圧縮可能な引き込みバネ(70)とを備えており、望ましくは本体(22)の前部の内部に位置している。同じように機能する他の構造を同様に使用して、針引き込みアセンブリを本体(22)の前部の内部に配置できることは理解できるであろうが、適切な構造の1つは、周方向に離間した複数のフック又は弧状セグメント(104)(106)を備えるものである。これらフック又はセグメント(104)(106)は、取付中にラグリング(62)が前方へ通過できるように、且つそうできる程度に柔軟性があるように構成されているが、引き込み前には、圧縮されたバネ(70)の付勢力に抗じて、針引き込みアセンブリを図7に示す軸方向の位置に保持するように構成され、且つそうできる程度に固い。このようにして本体(22)の内部に配置及び支持されている場合、ラグリング(62)は装置(20)の長手方向の軸回りに回転可能であるが、このような回転運動は、図10乃至図14を参照して以下に説明する他の構造によって、制限される。針ホルダ(50)は好ましくは、長手方向に沿った孔が中央に配置されており、当該孔は針(28)が通過できるように寸法決め及び構成されている。横フランジ(52)が針ホルダ(50)の外側に設けられることが望ましい。横フランジ(52)は望ましくは、ノーズ(40)中の針ホルダ(50)の周りに配置された引き込みバネ(70)の圧縮を維持するように寸法決め及び構成されている。バネ(70)の前端部は望ましくは、ノーズ(40)の前側開口のすぐ後側にある環状ショルダと当接している。
【0017】
装置(20)の組立中、開放端部(58)及び閉端部(74)を有する軟質の弾性鞘(56)が、摩擦係合等によって針ホルダ(50)のヘッド(54)及びネック(60)に取り付けられることが望ましい。ラグリング(62)は、鞘(56)と針ホルダ(50)のヘッド(54)とを覆って配置される。針ホルダ(50)の先端(26)がバネ(70)に挿入され、そのアセンブリが本体(22)に挿入される。ラグリング(62)は、ラグリング(62)の中央のアパーチャ(102)(例えば図10及び図14において見られる)が、針ホルダ(50)の横フランジ(52)(図12において見られる)を通過させないように位置合わせされる。ラグリング(62)がこのように配置されている場合、針を引き込みする前に、針ホルダ(50)は好ましくは、図6及び図7に示す位置に維持される。ラグリング(62)は、外方向に突出する少なくとも1つのラグ(64)をさらに備えることが好ましい(例えば図10乃至図14に示されており、以下にてより詳細に説明する)。針引き込みアセンブリを本体(22)内に配置した後、針(28)の後端(68)が、針ホルダ(50)の先端(26)内に挿入され、先端(26)を通って、柔軟な弾性鞘(56)の閉端部(74)に触れない程度に近づく(図2)まで、後方に進む。針ホルダ(50)に対して適切に配置されると、針(28)は、接着剤、レーザ溶接等の適切な従来の手段を用いて、針ホルダ(50)に接合されることが好ましい。例えば図2及び図7に示すように、針(28)は、針の先端(66)にて上向きの斜面(bevel)と、針の後端(68)にて反対方向に面する斜面とを有することが好ましい。
【0018】
図1乃至図5を参照すると、本体(22)、トリガ(24)、ラグリング(62)及び針ホルダ(50)は全て、同様の医療装置を製造するために一般的に使用されるタイプの射出成形可能なポリマー樹脂で製造されることが望ましいが、ポリマー材料が使用される必要はない。ポリマー材料が使用される場合、全てのパーツが同じポリマー材料を使用して製造される必要はない。
【0019】
図6を参照すると、本明細書中に記載される装置(20)の1つの好ましい実施形態が、その使用前の構成で示されているが、装置(20)が無菌パッケージ内に入れられて出荷及び保管されることが望ましいとしても、針カバー(図示せず)が使用前の針の先端(66)を保護するために与えられてもよいことは理解できるであろう。使用前の位置では、トリガ(24)の前部は、図示するように、本体(22)の上向きのスロットの内側の静止位置へと下方に回動できる。流体採取管(76)が矢印(84)で示すように後側開口(34)を通って本体(22)内へと前進すると、ゴム栓(80)の上部がトリガ(24)の下面と接触して、トリガ(24)の前端部を本体(22)に対して上方向に回転させて、図7に示す位置に至らせる。トリガ(24)が図7の位置にある場合、トリガ(24)の後方に向く突起(46)が、切欠き(48)(図2において見られる)の底に当たって接触して、本体(22)に対するトリガ(24)の上方向への運動を制限する。流体採取管(76)(図6)が進むと、針の後端(68)が弾性鞘(56)を貫通し、その後ゴム栓(80)を貫通して、チューブ部材(78)の内部(92)との流体連通を確立する。(図7から取り出した図15において最も良く示されているように)これが起こると、弾性鞘(56)は、ゴム栓(80)の前側の針(28)周囲の環状空間へと潰れる(crumple)。
【0020】
図10及び図11を参照すると、ラグ(64)は、好ましくはラグリング(62)から半径方向外向きに突出しており、望ましくは、ラグ(64)と対向し、本体(22)の一部から内向きに突出しており、滑らかに構成されたボス(100)の後方の回転止めに位置する。ボス(100)は、針を引き込みする前に、本体(22)と針ホルダ(50)の横フランジ(52)とに対してラグリング(62)が回転することを防止する。ラグリング(62)が図10及び図11に示すように配置されている場合、針ホルダの横フランジ(52)は、ラグリング(62)のアパーチャ(102)を通過できない。また、横フランジ(52)の前向きの面に対して加えられるバネ(70)(図7)の付勢力は、ラグリング(62)が本体(22)の内部にて回転して再配置されるまで、ラグリング(62)によって拘束される。横フランジ(52)とアパーチャ(102)は夫々、無数の相異なる形状を有してよいが、横フランジ(52)とアパーチャ(102)の相対的な大きさと形状は、ラグリング(62)が図10乃至図11に示す拘束位置から図12乃至図14に示す非拘束位置にまで回転した場合にのみ、横フランジ(52)がアパーチャ(102)を通過できることを条件とすることが、本明細書を読むことで理解されるべきである。
【0021】
図8を参照すると、流体採取管を患者から抜いた体液で所望の範囲まで満たした後、装置(20)を使用する臨床医は、採取管(76)を掴み、採取管(76)を矢印(87)で示すようにキャビティ(86)から引き抜く。このとき、ゴム栓(80)が採取管(76)を封じ込めて採取管から流体が漏出することが防止される。そして、弾性鞘は、針の後端(68)を覆うように広がって戻って、針(28)になお含まれている体液が本体(22)の後側から外部へ漏出することが防止される。その後、本体(22)の上向きのスロットの内側にあるトリガ(24)の自由端部を、図6に示す静止点を過ぎて、針の引き込みが起こる点にまで押し下げることによって、針(28)を患者から直接的に引き込みできる。
【0022】
図12乃至図14を参照すると、トリガ(24)の前端部が本体(22)の内側へ押し下げられると、トリガ(24)の下向きの接触面(94)が、ラグリング(62)のラグ(64)の上向きの対向面と接触して、これによってラグ(64)が本体(22)の突起(100)を通り超える同時にラグリング(62)が矢印(65)(図13)によって示すように回転して、横フランジ(52)とアパーチャ(102)は、横フランジ(52)がラグリング(62)によって拘束されなくなるような位置に合わせられる。再び図8を参照すると、針ホルダ(50)が解放される位置にラグリング(62)が至ると、バネ(70)が素早く伸びて、針ホルダ(50)の横フランジ(52)の前面に作用して、弾性鞘(56)と針(28)とが取り付けられた状態の針ホルダ(50)が後方に追いやられて、トリガ(24)の引き込みキャビティ(90)に入る。これが起こると、ラグリング(62)とラグ(64)は図12に示す位置に留まり、針(28)は上向きに傾いて、針(28)の先端(66)は、本体(22)のノーズ(40)内に引き込まれて、患者、臨床医又は別の第三者の誰であろうと、不慮の針刺し怪我に、及び/又は、汚染された可能性のある針からの感染の虞にその後さらされることのない位置に至る。針(28)は装置(20)の内部に取り込まれているので、装置(20)が再利用される虞も無くなる。
【0023】
図16乃至図21を参照すると、本発明の別の実施形態(200)を開示しており、この実施形態(200)は、先に説明した実施形態とほぼ同じであるが、対向する直立したヒンジ支持部(213)(214)間に横バー(220)が設けられいる。横バー(220)は、針の引き込み中にてトリガ(212)の前方に延びる端部が本体(210)に対して押し下げられた後、後方に突出するストップ部材(222)について、本体(210)に対する上方への移動又は運動を制限している(図18及び図21において最も良く示されている)。図16乃至図18は、針引き込み前の本体(210)に対するトリガ(212)の静止位置を示しており、図19乃至図21は、針引き込み後の本体(210)に対するトリガ(212)の静止位置を示している。
【0024】
針の引き込み中にて、トリガ(212)の前部が本体(210)内に押し下げられると、後方に突出するストップ部材(222)が切欠き(224)から上昇し、横バー(220)の下面と係合する。横バー(220)は、その厚さ及び製造される材料にもよるが、トリガ(212)が本体(210)に対して押し下げられて引き込みが始まると、上方へ向けて屈曲するか弓形に曲がり得る。本体(210)に対して屈曲した、又は弓形に曲がった位置(図示せず)にある一方で、横バー(220)は、本体(210)の後部に対して下向きに、後方に突出するストップ部材の上面を実際に付勢することができる。
【0025】
使用者によって針が引き込みされた後、そして使用者がトリガ(212)の押下げを終えた後、横バー(220)を製造するのに用いた材料固有の復元力によって、トリガ(212)が、本体(210)に対して引き込み前の位置にほぼ戻るようにすることが望ましい。横バー(220)は、別個に製造されて、適切な任意の公知のファスナ、接着剤又は溶接技術を用いて、対向するヒンジ支持部(213)(214)に取り付けできるが、本体(210)の一部として、及び/又はヒンジ支持部(213)(214)として成形することが好ましい。
【0026】
本発明の他の変更及び改変は同様に、添付の図面に鑑みて本明細書を読むと、当該技術の通常の技能を有する当業者にとって明らかとなるであろう。本明細書中で開示される本発明の範囲は、発明者らが法的に権利化される添付の特許請求の範囲の最も幅広い解釈によってのみ制限されることが意図されている。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21