(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの口腔貼付剤を口腔粘膜に貼付すると、薬物を含有する層(薬物層)からの薬物の溶出が短時間で終了したり、短時間で薬物層が崩壊してしまう問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、薬物層からの薬物の溶出又は薬物層の崩壊が実用上充分なレベルまで遅延された口腔貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、薬物層と付着層とを備える口腔貼付剤であって、薬物層は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシアルキルセルロースナトリウム、エチルセルロース、硬化ヒマシ油及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つからなる薬物放出制御剤を含有する口腔貼付剤を提供する。本発明の口腔貼付剤は上記構成を備えることから、薬物層からの薬物の溶出又は薬物層の崩壊が実用上充分なレベルまで遅延されたものとなる。
【0007】
ここで、本発明の薬物放出制御剤とは、薬物を含有する層である薬物層からの薬物の溶出又は薬物層の崩壊を遅延させる成分を意味し、本発明の付着層とは、口腔粘膜に対する付着領域を有する層を意味する。
【0008】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、メトキシ基%が19〜30%且つヒドロキシプロポキシ基%が4〜12%であるものが採用できる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしてはまた、(1)メトキシ基%が27〜30%且つヒドロキシプロポキシ基%が4〜7.5%であるか、(2)メトキシ基%が19〜24%且つヒドロキシプロポキシ基%が4〜12%であるか、(3)メトキシ基%が28〜30%且つヒドロキシプロポキシ基%が7〜12%であるものが採用できる。この(1)〜(3)の中では(1)又は(2)が好ましい。上述したヒドロキシアルキルアルキルセルロースを採用することにより、薬物層からの薬物の溶出を大きく遅延させることが可能になる。なお、メトキシ基%及びヒドロキシプロポキシ基%は、第十六改正日本薬局方の「ヒプロメロース」の項に記載の定量法に従って得られる値を意味する。
【0009】
ヒドロキシプロピルセルロースとしては、2%水溶液の20℃における粘度が6.0〜10mPa・Sのものが好ましい。このような粘度のヒドロキシプロピルセルロースは、薬物層からの薬物の溶出を遅延させるのに好適である。なお、この粘度は、第十六改正日本薬局方の一般試験法「粘度測定法 第2法 回転粘度計法」に従い、ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液について得られる値を意味する。
【0010】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、脂肪酸残基がベヘニン酸残基でありHLB値が3のショ糖脂肪酸エステル、又は脂肪酸残基がステアリン酸残基でありHLB値が11であるショ糖脂肪酸エステルが、薬物層からの薬物の溶出をさらに遅延させるのに好適である。
【0011】
付着層に、付着剤として、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース塩、アルギン酸、アルギン酸塩、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、プルラン及びアルファー化デンプンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有させると、口腔粘膜への付着性が向上する。
【0012】
口腔貼付剤において、付着剤として、(1)カルボキシアルキルセルロース又はカルボキシアルキルセルロース塩を含有させる、(2)カルボキシアルキルセルロース又はカルボキシアルキルセルロース塩と、ポリ(N−ビニルラクタム)とを含有させる、(3)カルボキシアルキルセルロース又はカルボキシアルキルセルロース塩と、ポリビニルピロリドンとを含有させる、ことが可能である。付着剤として上記成分を使用することにより、薬物層からの薬物の溶出又は薬物層の崩壊を遅延させることができるだけでなく、口腔粘膜への付着性が特に優れるようになる。
【0013】
本発明の口腔貼付剤は、錠剤にすると取扱いが容易で、携帯性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0014】
薬物層からの薬物の溶出又は薬物層の崩壊が実用上充分なレベルまで遅延された口腔貼付剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態に係る口腔貼付剤は、薬物層と付着層とを備えるものである。先ず、薬物層が含有する成分について詳述する。
【0016】
薬物層は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシアルキルセルロースナトリウム、エチルセルロース、硬化ヒマシ油及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つからなる薬物放出制御剤を含有する。
【0017】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、セルロースの水酸基(OH基)の水素原子の一部をアルキル基及びヒドロキシアルキル基で置換したものである。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースにおけるヒドロキシアルキル部分のアルキル基は炭素数1〜6のものが好ましく、炭素数1〜3のものがより好ましい。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースにおけるアルキルセルロース部分を構成するアルキル基は炭素数1〜6のものが好ましく、炭素数1〜3のものがより好ましい。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが特に好適に用いられる。
【0018】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおけるメトキシ基%及びヒドロキシプロポキシ基%は、第十六改正日本薬局方の「ヒプロメロース」の項に記載の定量法に従って得ることができる。この定量法に従ったヒドロキシプロピルメチルセルロースの、メトキシ基%及びヒドロキシプロポキシ基%は、それぞれ19〜30%及び4〜12%であることが好ましい。メトキシ基%が27〜30%且つヒドロキシプロポキシ基%が4〜7.5%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び/又は、メトキシ基%が19〜24%且つヒドロキシプロポキシ基%が4〜12%のヒドロキシプロピルメチルセルロースも好適である。更には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの、メトキシ基%及びヒドロキシプロポキシ基%が、それぞれ28〜30%及び7〜12%であるヒドロキシプロピルメチルセルロースも好ましい。このようなヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることにより、薬物層からの薬物の溶出を大きく遅延させることができる。
【0019】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、2%水溶液の20℃における粘度が2〜150000mPaであるのものが使用できる。ここで、粘度の値は、第十六改正日本薬局方の「ヒプロメロース」の項に記載の粘度測定法に従って得ることができる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、2%水溶液の20℃における粘度が、(1)2.5〜3.5mPaであるのもの、(2)80〜120mPaであるのもの、(3)3000〜5600mPaであるのもの、(4)11250〜21000mPaであるのもの、(5)75000〜140000mPaであるのもの、の少なくとも一つを使用することが好ましい。このようなヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることにより、薬物層からの薬物の溶出を大きく遅延させることができる。
【0020】
ヒドロキシプロピルセルロースは、水溶液の粘度が小さいもの、例えば2%水溶液の20℃における粘度が100mPa・s以下のものが好ましく、6.0〜10mPa・sのものが特に好ましい。なお、この粘度は、上述のように、第十六改正日本薬局方の一般試験法「粘度測定法 第2法 回転粘度計法」に従って測定する。
【0021】
ヒドロキシプロピルセルロースとしては、超微粒子グレード(メジアン径D50が20μm又は330メッシュ通過のヒドロキシプロピルセルロース粒子)、微粒子グレード(メジアン径D50が80〜110μm又は100メッシュ通過のヒドロキシプロピルセルロース粒子)、通常グレード(メジアン径D50が85〜185μm又は40メッシュ通過のヒドロキシプロピルセルロース粒子)が挙げられる。口腔貼付剤を錠剤にする場合、錠剤の硬度が高くなることから、超微粒子グレード又は微粒子グレードを使用することが好ましい。錠剤の硬度が高くなると、割れが生じ難くなる。
【0022】
カルボキシアルキルセルロースナトリウムとしては、カルボキシメチルセルロース(カルメロース)ナトリウムが好適に使用できる。特に、エーテル化度0.6〜1.5のものが好ましく、また、1%水溶液の25℃における粘度が10〜4500mPa・sのものが好ましい。この粘度は、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のカルボキシアルキルセルロースナトリウムを水に溶解後、液温25℃の条件下で、B型粘度計で測定することにより得られる値を意味する。
【0023】
エチルセルロース、硬化ヒマシ油及びショ糖脂肪酸エステルに制限はないが、ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸残基が炭素数12以上のものであり、HLBが1〜15のものが適当である。特に、脂肪酸残基がベヘニン酸残基でありHLB値が3であるショ糖脂肪酸エステル、又は脂肪酸残基がステアリン酸残基でありHLB値が11であるショ糖脂肪酸エステルが好ましい。
【0024】
薬物放出制御剤の配合量は、薬物層からの薬物の溶出又は薬物層の崩壊を遅延させることのできる量であればよいが、薬物放出制御剤の含有量は、薬物層の成分の総質量基準で、好ましくは10%質量以上、特に好ましくは15%質量以上である。
【0025】
薬物層に含有させる薬物としては、口内殺菌薬、口臭除去薬(消臭剤)、抗炎症薬、歯周病治療薬などが使用できる。また、薬物がニコチン又はその塩である場合は、口腔貼付剤を禁煙、ニコチン依存症の治療などに使用することもできる。
【0026】
口内殺菌薬としては、塩化セチルピリジニウム塩、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、ヨウ素、ヒノキチオール、塩化リゾチームなどが挙げられる。
【0027】
口臭除去薬(消臭剤)としては、銅クロロフィリンナトリウムなどのクロロフィリン、ポリフェノール、フラボノイドなどが挙げられる。
【0028】
抗炎症薬としては、グリチルリチン酸又はその塩、インドメタシン、アズレン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメサゾン、トリアムシノロンアセトニドなどが挙げられる。
【0029】
歯周病治療薬としては、アジスロマイシン、セファレキシン、レボフロキサシンなどが挙げられる。
【0030】
薬物層は上述した成分の他に、pH調節剤、l−メントールなどの清涼化剤、甘味剤、矯味剤、着色剤、吸着剤、安定化剤、着香剤(香料)などの成分を含有していてもよい。
【0031】
次に、口腔貼付剤の付着層が含有する成分について説明する。付着層は、通常、口腔粘膜に付着する成分として付着剤を含有する。付着剤としては、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース塩、アルギン酸、アルギン酸塩、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、プルラン及びアルファー化デンプンからなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0032】
付着剤としては、カルボキシアルキルセルロース又はカルボキシアルキルセルロース塩が好ましく、カルボキシアルキルセルロース塩としてはカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。付着剤としては、カルボキシアルキルセルロース又はカルボキシアルキルセルロース塩と、これら以外の上述した付着剤成分を併用してもよい。併用する付着剤成分としては、アルギン酸、アルギン酸塩、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、プルランなどがよく中でもポリ(N−ビニルラクタム)が好ましく、特にポリビニルピロリドン(ポビドン)が付着性の点で好ましい。
【0033】
付着剤の含有量は、付着層成分の総質量基準で、好ましくは25〜75質量%、特に好ましくは40〜60質量%である。
【0034】
このような薬物層と付着層とを備える口腔貼付剤は、薬物層からの薬物の溶出又は薬物層の崩壊を遅延させることができ、かつ付着層を口腔粘膜に付着させることができる限りにおいて、剤型、薬物層及び付着層の形状・大きさなどに制限はなく、さらに、薬物層及び付着層以外の要素を備えていてもよい。
【0035】
好ましい剤型としては、錠剤、シート剤、フィルム剤などが挙げられるが、取扱いが容易で、携帯性に優れる錠剤が特に好ましい。
【0036】
口腔貼付剤が錠剤である場合、薬物層と付着層の二層からなる二層錠(積層錠)が好適である。錠剤の形状・大きさは、貼りやすさ、割れにくさなどを考慮して設計されるが、錠剤の直径は、例えば0.5〜1.5cm、好ましくは0.7〜1.0cmであり、錠剤の厚さは、例えば1.0〜2.5mm、好ましくは1.5〜2.0mmである。また、錠剤の重量については、例えば50〜200mg、好ましくは100〜150mgとするのがよく、そのうち薬物層の重量を、例えば30〜150mg、好ましくは50〜100mg、付着層の重量を、例えば10〜80mg、好ましくは30〜60mgとするのがよい。
【0037】
錠剤の薬剤層及び付着層は、乳糖水和物などの賦形剤、結晶セルロースなどの結合剤、ステアリン酸塩、タルクなどの滑沢剤といった錠剤で慣用される成分をさらに含有していてもよい。
【0038】
乳糖水和物としては、微粒子グレード(乳糖水和物微粒子)及び造粒グレード(乳糖水和物造粒物)が挙げられる。口腔貼付剤を錠剤にする場合、錠剤の硬度が高くなることから、乳糖水和物造粒物を使用することが好ましい。錠剤の硬度が高くなると、割れが生じ難くなる。なお、乳糖水和物造粒物としては、平均粒子径が100〜500μmのものが好ましい。
【0039】
口腔貼付剤を錠剤として提供する場合は、硬度を高くすることが好ましい。錠剤の硬度を高くすると、錠剤の割れを少なくすることができる。錠剤の硬度は、錠剤硬度計で測定でき、測定される硬度が、10N以上であることが好ましく、20N以上であることがさらに好ましい。
【0040】
口腔貼付剤を高硬度の錠剤として提供する場合、全体の厚さは1.5〜2mmであることが好ましい。錠剤の厚さをこのような範囲にすることで、錠剤を高硬度にしたときの上記効果が得られる。
【0041】
口腔貼付剤は以下に述べる方法で製造することができる。口腔貼付剤が錠剤である場合は、例えば薬物層の各成分を秤量・混合して打錠末とし、これを打錠した後、付着層の各成分を秤量・混合した打錠末を加えて打錠することにより製造される。打錠には、通常の圧縮成型機、二層打錠機などを使用することができる。また、シート剤、フィルム剤などの他の剤型の口腔貼付剤も、常法により薬物層と付着層を積層して製造することが可能である。
【0042】
口腔貼付剤はその付着層側を口腔粘膜に押し当てて付着させて使用する。付着すると薬物層からの薬物の放出が開始される。薬物層からの薬物の溶出が終了し又は薬物層が崩壊するまでの時間は、通常は20分以上180分以内、特に30分以上60分以内である。1日に使用する口腔貼付剤の個数は、口腔貼付剤の所期の効能が得られる個数であって一概にいえないが、該口腔貼付剤は通常1回に1個使用する。
【実施例】
【0043】
[試験例1〜11及び比較試験例1〜15]
容器にニコチンを秤量し、安定化剤及びl−メントールを加えて溶解した。これを含水二酸化ケイ素に加え、軽く混ぜたのち混合機に移して混合した。そして、乳糖水和物、結晶セルロース、pH調節剤、食用黄色5号及びスクラロースを加えて混合した。粉を袋に排出し、ステアリン酸マグネシウム及びタルクを加えて手で混合し、さらに表2に示す成分A(薬物放出制御剤)を加えて手で混合し、打錠末とした。打錠末を秤量して圧縮成型機で錠剤化し、付着層を持たない薬物層80mgの単層錠(直径10mm)を製造した。この単層錠の各成分の配合割合(質量%)を表1に示す。
【0044】
製造した単層錠を検体とし、溶出試験器を用いて10分後の溶出率(%)を試験した。この溶出試験は、第十六改正日本薬局方6.10溶出試験法(3.1.回転バスケット法及びパドル法)に準じて行い、溶出試験器としては、富山産業株式会社製の溶出試験器NTR−6100を用いた。試験法は具体的には以下の通りである。すなわち、ベッセルに薄めたMcIlvaine緩衝液(pH6.0)を300mL入れ、37℃±0.5℃に保った。パドルの所定の位置に検体を1個貼付し、試験液に沈め、試験を開始した。パドル回転数は50rpmとし、10分後に溶出液を3mL採取した。孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過した後、高速液体クロマトグラフィーにより溶出液の薬物濃度を測定し、溶出率を算出した。
10分後の溶出率(%)=C
T×300×(1/M)×100
M:1錠中のニコチンの表示量(mg)
C
T:試料溶液の濃度(mg/mL)=C
S×(A
T/A
S)
C
S:標準溶液の濃度(mg/mL)
A
T:試料溶液のニコチンのピーク面積
A
S:標準溶液のニコチンのピーク面積
【0045】
試験例1〜11及び比較試験例1〜15における成分Aと溶出率(%)を表2に示す。この試験により、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、硬化油ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステルが薬物放出制御剤として優れていることが明らかとなった。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
[実施例1〜6]
容器にニコチンを秤量し、安定化剤及びl−メントールを加えて溶解した。これを含水二酸化ケイ素に加え、軽く混ぜたのち混合機に移して混合した。そして、乳糖水和物、結晶セルロース、pH調節剤、食用黄色5号及びスクラロースを加えて混合した。粉を袋に排出し、ステアリン酸マグネシウム及びタルクを加えて手で混合し、さらに表3に示す成分B(薬物放出制御剤)を加えて手で混合し、薬物層打錠末とした。容器に乳糖水和物、結晶セルロース及びカルメロースナトリウムを加えて手で混合し、さらにステアリン酸マグネシウム及びタルクを加えて手で混合し、付着層打錠末とした。単発式二層打錠機を用いて、初め薬物層打錠末を軽く打錠し、次に付着層打錠末を加えて強く打錠して薬物層80mg+付着層40mgの二層錠(直径9mm)を製造した。薬物層の各成分の配合割合(質量%)を表4に示す。また、付着層の各成分の配合割合(%)を表5に示す。
【0049】
製造した二層錠を検体とし、上述した試験例1等と同様の方法で、溶出試験器を用いて10分後の溶出率(%)を試験した。実施例1〜6における成分Bと溶出率(%)を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
[実施例7〜9]
容器にニコチンを秤量し、安定化剤及びl−メントールを加えて溶解した。これを含水二酸化ケイ素に加え、軽く混ぜたのち混合機に移して混合した。そして、乳糖水和物、結晶セルロース、ヒプロメロース、pH調節剤、食用黄色5号及びスクラロースを加えて混合した。粉を袋に排出し、ステアリン酸マグネシウム及びタルクを加えて手で混合し、薬物層打錠末とした。容器に乳糖水和物、カルメロースナトリウム及びアルギン酸ナトリウムを秤量して手で混合し、付着層打錠末とした。圧縮成型機を用いて、初め薬物層打錠末を軽く圧縮し、次に付着層打錠末を加えて強く圧縮して錠剤化し、薬物層51.2mg+付着層51.2mgの二層錠(直径8mm)を製造した。この2層錠における薬物層及び付着層のそれぞれの配合割合(質量%)を表6に示す。
【0054】
製造した二層錠を検体とし、上述した試験例1等と同様の方法で、溶出試験器を用いて10分後の溶出率(%)を試験した。実施例7〜9における溶出率(%)を表6に示す。
【0055】
【表6】
【0056】
[実施例10〜16及び比較例1〜3]
混合機に乳糖水和物、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、l−メントール、サッカリンナトリウム水和物、銅クロロフィリンナトリウム、青色1号アルミニウムレーキ及び香料を投入し、混合した。次に粉を袋に排出し、ステアリン酸マグネシウム及びタルクを加えて手で混合し、薬物層打錠末とした。容器に付着層の成分を秤量して手で混合し、付着層打錠末とした。圧縮成型機を用いて、初め薬物層打錠末を軽く圧縮し、次に付着層打錠末を加えて強く圧縮して錠剤化し、薬物層80mg+付着層40mgの2層錠(直径9mm)を製造した。この二層錠における薬物層の配合割合(質量%)を表7に、付着層の配合割合(%)を表8に示す。
【0057】
製造した二層錠を検体とし、付着性の官能試験を行った。二層錠の付着層側を成人5名の上あごに押し当てて付着させ、舌で舐めたときの付着性を評価した。以下の評価基準に従いスコアを算出し、平均値(平均スコア)を求めた。平均スコアが大きいほど付着性に優れている。
スコア3:二層錠が動かなかった
スコア2:二層錠がやや動いた
スコア1:二層錠が動いた
スコア0:二層錠が脱落した
【0058】
実施例10〜16及び比較例1〜3における成分Cと平均スコアを表9に示す。
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】
【表9】
【0062】
[実施例17]
容器に付着層の成分を秤量して手で混合し、付着層打錠末とした。圧縮成型機を用いて、初め薬物層打錠末を軽く圧縮し、次に付着層打錠末を加えて強く圧縮して錠剤化し、薬物層80mg+付着層40mgの2層錠(直径9mm)を製造した。この二層錠における薬物層の成分の配合割合(質量%)を表10に示す。付着層の成分の配合割合(質量%)は実施例11のそれと同じである。
【0063】
【表10】