(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ボデー内の内周の一部に形成した球面部を有する弁体収納部に流出入口と排気口とを形成し、前記弁体収納部より開口させた開口部より球状面部を有する弁体を回転自在に挿入し、前記弁体には、前記流出入口又は排気口と連通する複数の貫通口と、これら貫通口との交差方向に前記流出入口と対向する装着溝とを形成し、この装着溝に前記流出入口又は排気口を閉止するシール部材を装着し、前記開口部を蓋部材で被蓋したときに、前記シール部材で何れか1つの前記流出入口又は排気口を密封閉止し、前記流出入口と排気口、或は前記流出入口同士を前記貫通口を介して連通可能に設けると共に、排気口面積を適宜に調整して緊急時又は保安時などの車両用圧力配管から排気する排気時間を一定に設定可能としたことを特徴とする鉄道車両用急速排気弁。
前記蓋部材と前記弁体との間にばね部材を装着し、このばね部材を介して前記開口部を被蓋した前記蓋部材で前記シール部材を増締可能に設けた請求項1乃至4の何れか1項に記載の鉄道車両用急速排気弁。
前記ボデーにバルブ内部への異物の侵入を防止する防塵キャップを連結し、この防塵キャップは、連結状態で排気時に吐出空気圧力により前記排気口を開口させ、非排気時に前記排気口を閉塞状態に復帰可能なキャップである請求項1乃至5の何れか1項に記載の鉄道車両用急速排気弁。
前記排気口に排気方向に開口可能なチャッキ弁を装着し、このチャッキ弁で外部からの前記排気口への異物や水の侵入を防止した請求項1乃至5の何れか1項に記載の鉄道車両用急速排気弁。
少なくとも3方以上の流出入口を有するボデー内の内周の一部に球面部を有する弁体収納部を形成し、この弁体収納部より開口させた開口部より球状面部を有する弁体を回転自在に挿入し、前記弁体には、前記流出入口と連通する3方以上の貫通口と、これら貫通口との交差方向に前記流出入口と対向する装着溝とを形成し、この装着溝に前記流出入口を閉止するシール部材を装着し、前記開口部を蓋部材で増締可能に被蓋し、前記蓋部材と前記弁体との間に装着したばね部材の弾発力で何れか一つの貫通口を前記シール部材で密封閉止したことを特徴とする鉄道車両用急速排気弁。
前記弁体に設けた上ステムを前記ボデーに設けた装着穴にシール部材を介して軸装し、前記弁体の上ステムとの対向側に設けた下ステムを前記蓋部材に設けた装着穴部にシール部材を介して軸装して、前記弁体を前記ボデーと蓋部材との間に軸支してトルク性能を向上させた請求項10に記載の鉄道車両用急速排気弁。
前記流出入口を90°間隔で前記ボデーに形成して2つの直列する流出入口の間の流出入口を排気口とし、前記2つの流出入口の向きを入れ替えて排気口の向きを180°反転可能に設けると共に、前記上ステムに回転規制用のストッパ部を有する操作用ハンドルを略十字形状の嵌合穴を介して90°間隔で任意の向きに装着可能に設け、かつ、前記ボデーの前記ストッパ部が係止する位置に90°間隔で取付穴を設け、この取付穴の何れか一つに前記ストッパ部が係止可能な係止用ピンを取付けて前記ハンドルを任意の開閉操作方向に装着可能に設けた請求項11又は12に記載の鉄道車両用急速排気弁。
前記蓋部材をOリングを介して前記開口部に螺着し、この蓋部材の螺合で前記ばね部材による前記弁体のシール部材の押圧力を調節可能に設けた請求項10乃至13の何れか1項に記載の鉄道車両用急速排気弁。
請求項1乃至14の何れか1項に記載の鉄道車両用急速排気弁を鉄道車両の自動扉開閉装置を駆動する空気配管の主管、枝管の管路途中、又は管路分岐部に複数配設し、前記各急速排気弁の排気時間の変動を防いで一定に保持するようにしたことを特徴とする鉄道車両の配管システム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下に、本発明における鉄道車両用急速排気弁及び鉄道車両の配管システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明における鉄道車両用急速排気弁の第1実施形態における斜視図、
図2においては、
図1の急速排気弁の縦拡大断面図を示している。本発明の鉄道車両用急速排気弁(以下、バルブ本体1という)は、ボデー2、弁体3、蓋部材4、シール部材5、皿ばねからなるばね部材6、手動操作用ハンドル7、排気用のオリフィス8を有している。
【0055】
図2において、バルブ本体1のボデー2は、例えば、青銅や黄銅、ステンレスなどの材料によりワンピース構造に形成され、流出入口10、11と、これら流出入口10、11に交差する排気口12とを有し、本例では、
図3に示すように、2方の直列する流出入口10、11の間に90°間隔で排気口12が形成される。バルブ本体1は、このようなボデー2の全体形状により、2つの流出入口10、11の向きを入れ替えて排気口12の向きを180°反転可能な状態で配管可能となる。
【0056】
ボデー2内の内周の一部には、球面部15を有する弁体収納部16が形成され、この弁体収納部16の上部側に軸装部17が設けられ、この軸装部17内に挿着穴18が設けられる。軸装部17の上部にはフランジ部19が形成され、このフランジ部19には90°間隔で4か所に取付穴20が形成され、この取付穴20の何れか1つに係止用ピン21が、例えば圧入又はねじ込みにより取付けられる。弁体収納部16の下部側には開口部22が開口するように形成され、この開口部22内には雌ねじ23が設けられている。球面部15は、略半球形の座ぐり加工によって略半球凹状に設けられている。
【0057】
上記の排気口12は、流出入口10、11と略同口径であり、これら流出入口10、11とともに弁体収納部16に連通状態で形成される。排気口12は、例えば直径φ12mmとして貫通形成され、この排気口12の周囲には、例えばφ15mmの座ぐり部24が加工形成される。一方、流出入口10、11の内周側には雌ねじ部である螺合部25が形成され、この螺合部25を介して流出入口10、11にパイプ26を接続可能に設けられている。
【0058】
弁体3は、ボデー2の開口部22より弁体収納部16に挿入され、上下方向に位置決めされた状態で回転自在に取付けられる。弁体3は球状面部28が一部に設けられ、本実施形態では、この弁体3の外周面は半球状の球状面部28からなっている。
【0059】
図3において、球状面部28の外周面には、流出入口10、11、又は排気口12と連通可能な複数の貫通口30、31、32が3方に形成され、これら貫通口30、31、32と交差する横方向には、流出入口10、11、又は排気口12と対向可能な装着溝33が形成されている。装着溝33には、流出入口10、11又は排気口12を閉止可能な弾性を有するシール部材5が着脱可能に装着されている。本実施形態では、装着溝33は円形凹溝であり、シール部材5はこの円形凹溝33に嵌合可能な円板状に形成されている。図示しないが、貫通口と、流出入口及び排気口とはそれぞれ4方以上であってもよく、この場合には、貫通口と、流出入口、排気口との間隔はそれぞれ90°未満となる。
【0060】
貫通口30、31、32は、流出入口10、11、又は排気口12と略同一径のフルボア形に形成され、これら流出入口10、11、又は排気口12に連通したときの圧力損失が抑えられている。貫通口30、31、32は、フルボア形以外にも、このフルボア形よりも流路径を一段落とした(縮径した)スタンダードボア形、或は二段落としたレデュースボア形と呼ばれる口径を絞ったタイプにすることもできる。フルボア形は、他のタイプに比較して圧力損失をより抑えることが可能であるため流量特性が向上する。
【0061】
図1、
図2において、弁体3の上部にはハンドル7を取付可能な上ステム35が一体又は別体に設けられ、この上ステム35のハンドル装着位置には嵌合突部36が形成されている。上ステム35との対向側には下ステム37が一体に設けられており、これらの上ステム35と下ステム37とは略同一軸径に設けられ、弁体3に配管内空気圧による均等圧力を付与するようになっている。
【0062】
弁体3は、球面部15に装入可能な形状であり、この場合、貫通口30、31、32とシール部材5とが流出入口10、11、又は排気口12に対向するように回転して流路を切換え可能であれば、球状面部28に相当する部位が半球面以外の形状であってもよい。特に、球状面部28と球面部15との間には隙間Gが設けられ、この隙間Gの量を蓋部材4の回転で調節することで弁体3を増し締めする際の増し締め量を規制できる。
【0063】
弁体3に装着されるシール部材5は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)又はカーボンファイバー入りのPTFEなどの高分子材料により形成される。シール部材5は、弁体3を回転したときにこの弁体3と一体に回動して流出入口10、11、又は排気口12をそれぞれシール可能であり、一方、流出入口10、11、又は排気口12からずれたときに流体を流すことができる。
【0064】
蓋部材4は、開口部22を被蓋可能な形状に設けられ、その上部外周には円柱部40が形成されている。円柱部40は、ボデー2の開口部22に嵌入可能な外径に設けられ、その外周にはOリング42が装着されている。円柱部40の下部外周にはボデー2の雌ねじ23に螺合可能な雄ねじ43が設けられ、この雄ねじ43と雌ねじ23とにより後述のばね部材6を介して弁体3を増締可能な状態で開口部22を被蓋できるようになっている。蓋部材4の弁体3側の中央位置には挿着穴部45が設けられ、この挿着穴部45と円柱部40との間が肉ぬすみされていることで蓋部材4全体の軽量化が図られている。蓋部材4は、
図2における高さが低く抑えられており、これによりバルブ本体1の全体高さも抑えられる。
【0065】
前述の弁体3は、上ステム35がボデー2の挿着穴18にOリングからなるシール材47を介して軸装され、下ステム37が蓋部材4の挿着穴部45にシール材47´を介して軸装されていることで、ボデー2と蓋部材4との間に軸支されたトラニオン構造になっている。上ステム35とボデー2との間には隙間寸法46が設けられる。
【0066】
弁体3は、上ステム35の上部に取付けられるハンドル7を介して開閉可能に設けられている。弁体3の下ステム37と蓋部材4の挿着穴部45との間には、上下面が皿ばねからなるばね部材6が装着され、このばね部材6の弾発力でシール部材5を押圧し、流出入口10、11、又は排気口12の何れか一つが密封閉止され、流出入口10、11と排気口12、或は流出入口10、11同士が貫通口30、31、32を介して連通可能に設けられている。
【0067】
図1〜
図3において、排気用のオリフィス8は、排気口12の座ぐり部24に収納可能な外径に設けられ、このオリフィス8の中央部には、例えば、
図2の穴径φdを、φ6mm、φ8mm、φ10mmの何れかとした連通孔60が穿孔される。オリフィス8は、座ぐり部24内に収納された状態で環状のカバー61で被蓋され、このカバー61がボデー2にネジ62で螺着されて固定される。この構成により、オリフィス8の取付け時には排気口12がφ6mm、φ8mm、φ10mmの何れかの口径に絞られ、オリフィス8を取り外したときには排気口12の口径であるφ12mmにより圧力空気が排気される。φ12mmの排気口12を設ける場合には、オリフィス8、カバー61は不要となる。図示しないが、カバー61の雌ネジは、例えばボデーの4箇所に90°間隔で形成される。
【0068】
上記の各オリフィス口径に設定する場合、バルブ本体1を
図10に示した鉄道車両70に配管した状態でそれぞれ設定可能となり、オリフィス8を装着又は取り外すことで、同一バルブで適宜の排気口径を選択することが可能になる。オリフィス8は、前記排気口径の選択により
図2の二点鎖線に示した排気口面積Sを適宜に調整可能な機構となり、この排気口面積Sの調整によって、緊急時又は保安時などの鉄道車両用圧力配管(空気配管)71から排気する排気時間を一定に設定することが可能になる。
この場合、排気口面積S=(π・φd
2)/4(φd:穴径)によって表され、上記のオリフィス8の穴径がφ6mm、φ8mm、φ10mm、或は排気口12の穴径がφ12mmの場合、排気口面積Sは、それぞれおよそ28.27mm
2、50.27mm
2、78.54mm
2、113.10mm
2になる。
【0069】
図2において、蓋部材4は、Oリング42を介して雄ねじ43と雌ねじ23とにより開口部22に螺着されてボデー2に進退自在に設けられ、この蓋部材4の螺合でばね部材6によるシール部材5の押圧力を調節可能になっている。蓋部材4をボデー2に対して締め付けたときには、ばね部材6が圧縮されてこのばね部材6のばね力により弁体3が挿入方向に押し込まれ、シール部材5と球面部15との密着力が上昇し、一次背圧(バイフロー)封止性も確保される。さらに、ばね部材6によりボデー2や弁体3の寸法誤差を吸収しつつ、弁体収納部16の所定位置に弁体3が装着される。ばね部材6は、弾性力を有していれば皿ばね以外の態様であってもよい。
【0070】
図4に示すハンドル7には、嵌合突部36に嵌合可能な略十字形状の嵌合穴51が設けられ、この嵌合穴51を介してハンドル7が上ステム35に90°間隔で任意の向きに装着可能に設けられる。この場合、ハンドル7を上ステム35に90°間隔で装着可能であれば、嵌合穴51、嵌合突部36は略十字形状以外の嵌合形状であってもよい。ハンドル7には切欠き状のストッパ部52が形成され、このストッパ部52が4つの取付穴20の何れか一つに取付けられた係止用ピン21に当接係止することで、ハンドル7の向きや操作方向を設定しつつ、このハンドル7を任意の操作方向に90°回転操作して流路を切換え可能になっている。
【0071】
上記のように構成されたバルブ本体1の排気口12には、
図5に示したノズル80が取付け可能に設けられている。ノズル80の内部には排気口12と外部とを連通可能な排気溝81、ノズル外周縁の2箇所にはネジ62取付け用の2箇所の貫通孔82が形成され、これら貫通孔82を介してネジ62で排気口12に固着可能になっている。前述したように、ボデー2には4箇所の雌ネジが形成されていることから、排気溝81を所望の方向にしつつ貫通孔82を雌ネジに合わせてノズル80をネジ固定することで、排気口12からの圧力空気の方向を変更可能となる。さらに、雌ネジの数を増やすようにすれば、排気口12の向きをより細かく設定可能となる。
【0072】
図6においては、バルブ本体1の排気口12にエルボ管83を接続した状態を示している。この場合、排気口12の端部側には雌螺子部84が形成され、この雌螺子部84にエルボ管83に形成した雄螺子部85が螺着可能になっている。その際、
図6(a)や
図6(b)に示すように、螺子込み量を変えながらエルボ管83の排気方向を自在に変更してもよい。この場合にも、ノズル80を設ける場合と同様に、座ぐり部24に適宜の穴径φdの連通穴60を有するオリフィス8を収納しながら、排気の方向を設定してもよい。図示しないが、排気口12にエア用継手を接続して排気口面積Sを調整することも可能である。
【0073】
また、
図3(a)の二点鎖線に示すように防塵キャップ90を設け、この防塵キャップ90で排気口12からバルブ本体1内部への異物の浸入を防止してもよい。防塵キャップ90にはボデー2に連結可能な環状の連結部91が設けられ、この連結部91により連結部91に接続されたキャップ本体92のボデー2からの脱落が防がれる。
図3(b)において、排気口12からの圧力空気の排気時には、連結部91によりボデー2への連結状態を維持しつつ、排気口12から吐出される空気圧力でキャップ本体92が排気口12から外れることでこの排気口12が開口し、一方、非排気時には、
図3(a)の状態にキャップ本体92を排気口12に取付けることで、排気口12を閉塞状態まで復帰させることが可能となる。
【0074】
図7においては、バルブ本体1に消音器100を装着した状態を示している。消音器100には、雌螺子部84に螺合する雄ねじ部101が形成され、この雄ねじ部101の螺合により排気口12側に装着される。消音器100は、市販のエア用のものであればよく、その内部構造が限定されることはない。消音器100を装着したときには、圧力空気の排気時におけるバルブ本体1からの排気音が低減される。
【0075】
図8では、バルブ本体1にチャッキ弁110を装着した状態を示している。チャッキ弁110は、いわゆるリフトチャッキ弁と呼ばれる構造を有しており、ボデー部111、チャッキ弁体112、スプリング113を有している。ボデー部111は略筒状の形状をなし、排気口12と連通する連通穴114、チャッキ弁体112が着座する弁座部115、スプリング113の一端側を係止する環状の係止部116、雌螺子部85に螺合するおねじ117を有している。
チャッキ弁体112は、係止部116に係止したスプリング113により、弁座部115側に押圧された状態で装着されている。
【0076】
通常時(非排気時)には、
図8に示すようにシール部材5が排気口12を封止するため、チャッキ弁110の一次側は無圧状態であり、チャッキ弁体112がスプリング113の弾発力により弁座部115に着座した状態となる。
この状態からシール部材5が配管の一次側となるように弁体3を回転させて排気状態にすると、二次側の残留空気圧がスプリング113の弾発力に抗してチャッキ弁体112を押し開けることで圧力空気が外部に排気される。このように排気方向に開口するチャッキ弁110を排気口12に装着していることで、外部からの排気口12への異物や水の浸入が防止される。
【0077】
前述したバルブ本体1を組付ける場合、先ず、ボデー2の座ぐり部24にオリフィス8を収納し、この上からネジ62でカバー61を固定してオリフィス8をボデー2に装着する。一方、弁体3にシール部材5、シール材47、47´を装着し、この弁体3を、開口部22より球面部15の弁体収納部16内にボデー2下部から装入し、上ステム35を挿着穴18に挿入する。このとき、シール部材5は、押付け力が働くことのない状態でボデー2に接触している。
【0078】
次いで、蓋部材4の挿着穴部45に皿ばねからなるばね部材6を装着し、挿着穴部45に下ステム37を挿入させながら
雄ねじ43と雌ねじ23との螺着により蓋部材4をボデー2下部から一体化し、蓋部材4によりスラストワッシャ9’を介して弁体3を押圧する。このとき、蓋部材4を図示しないソケットレンチ等の汎用工具で締付け・分解し、蓋部材4の締付け量の調整によりばね部材6によるシール部材5の押圧力を適切な状態にしながら蓋部材4をボデー2に装着する。さらに、バルブ本体1を配管した状態で蓋部材4の締付け量を調整することで、シール部材5の劣化等によるシール漏れを補修可能となる。
この実施形態では、弁体3をボデー2の下方から挿着する、いわゆるボトムエントリ構造となっているため、蓋部材4によってボデー2に対する弁体3の位置を調整し、ボデー2や弁体3の寸法誤差を吸収しつつ弁体収納部16の所定位置に弁体3を簡単に装着できる。バルブ本体1は、ボデー2上方から弁体3を挿着するトップエントリ構造に設けられていてもよい。
【0079】
続いて、取付穴20の何れか一つに係止用ピン21を取付け、上ステム35の嵌合突部36に嵌合穴51を嵌合させ、ワッシャ部材55を介して固着ナット56で固定することにより、向きや開閉操作方向を任意に設定しながらハンドル7を上ステム35に装着するようにする。
【0080】
この場合、直列する2つの流出入口10、11の向きを入れ替えて排気口12の向きを180°反転可能であることと、嵌合穴51と嵌合突部36とを介してハンドル7の開状態における向きを流出入口10、11と平行又は交差する方向に変えることが可能であることと、ボデー2の何れかの取付穴20に係止用ピン21を取付けてハンドル7の開閉時の操作方向を変えることが可能であることとにより、これらの3つの要素を組み合わせることで各種の態様のバルブを構成できる。すなわち、閉位置で排気するための排気口12の管路が直列する流出入口10、11に対して右側又は左側の2通りあり、ハンドル7の開位置がいわゆる平行開通形又は直角開通形の2通りあり、ハンドル7の操作方向がいわゆる右勝手又は左勝手の2通りあることで、これらを組合わせることで、2×2×2=8通りの急速排気弁を設けることが可能となる。これにより、鉄道車両70の空気配管71へのバルブ本体1の取付位置や排気口12の向きに応じて所望の構成にでき、例えば、バルブ本体1の取付時の向きを変えることでハンドル7による操作性を向上したり、或は、排気口12の向きを変えて操作する者側への圧力空気の排出を回避することもできる。
【0081】
バルブ本体1の組付け後には、弁体収納部16と球状面部28との間に隙間Gを設けつつハンドル7を回転操作し、誤操作による事故を防止しながら弁体3を90°ごとに回転可能となる。これにより、貫通口30、31、32、シール部材5を介して流出口10、11、12の何れか一組又は全てを連通させて流路を切り替え可能となる。弁体3の閉止位置では、シール部材5が流出入口10、11、12の何れかが密封シールした状態となる。
【0082】
図3(a)においては、左右の流出入口10、11を連通させて圧力空気を供給可能にし、シール部材5で直接排気口12を封止した状態を示している。
図3(b)においては、一次側の流出入口10をシール部材5で封止して二次側の流出入口11と排気口12とを連通させた状態を示しており、この場合、流出入口11から排気口12を通して圧力空気が排出される。
図3(c)においては、一次側の流出入口11をシール部材5で封止して二次側の流出入口10と排気口12とを連通させた状態を示しており、流出入口10から排気口12を通して圧力空気が排出される。
これら以外にも2つの流出入口10、11と排気口12との全てを連通可能に設けた状態があるが、これは鉄道車両用の排気弁として使用する場合に適していないため、その説明を省略する。
【0083】
なお、図示しないが、バルブ本体のボデーに3つ以上の流出入口を設け、これら流出入口の間に1つの排気口を設け、流出入口のうちの少なくとも何れか1つと排気口とを連通させるようにしてもよい。
また、排気口面積Sを調整する機構として、オリフィスを装着することなく、ボデーの排気口に所望の排気口面積Sを有する連通孔を直接孔開け加工により形成してもよい。
【0084】
本発明の上記実施形態におけるバルブ本体1は、球面部15を有する弁体収納部16に流入口10、11、排気口12を略同口径に形成し、開口部22より貫通口30、31、32、シール部材5を有する球状面部28を備えた弁体3を回転自在に挿入してボデー2をワンピース構造に形成し、流出入口10、11、排気口12と、貫通口30、31、32とのフルボア口径による連通状態を確保し、シール部材5で何れか1つの流出入口10、11又は排気口12を密封閉止し、流出入口10、11と排気口12、或は流出入口10、11同士を貫通口30、31、32を介して連通可能に設けると共に、排気口面積Sを適宜に調整して緊急時又は保安時などの車両用圧力配管71から排気する排気時間を一定に設定可能に設けていることで、排気口面積Sをオリフィス8の連通孔60でフルボア口径から所定の穴径φdに絞ることが可能になる。
【0085】
これにより、
図3(a)の流出入口10、11の連通状態では運転時における圧力空気の供給量を大きく確保し、一方、
図3(b)や
図3(c)に示すように鉄道車両70の修理・保守・非常時などに排気口12と流出入口10、11とを連通させたときには、オリフィス8で圧力空気の排出時の流量を調整しながら、2次側の残留空気を所望時間で排気可能になる。そのため、排気時間を短縮しながら一定時間以内に設定でき、後述する自動扉開閉装置120を停止したときに迅速に手動で自動扉121を開閉できる。
【0086】
この場合、バルブ本体1は、上ステム35をボデー2の挿着穴18、下ステム37を蓋部材4の挿着穴部45にそれぞれ軸装したトラニオン構造になっていることで、弁体3が圧力により二次側に移動することがなく、弁体3側に流出入口10、11又は排気口12を閉止するシール部材5を配設していることで、一般的なボールバルブのように複数のシール部材を必要とすることなく、1つのシール部材5で流路を切換えできる。このため、ボデー2の球面部15や弁体3の球状面部28、シール部材5が高い加工精度を必要とすることなく、部品点数を少なくして全体を簡略化して小型化・軽量化できる。弁体収納部16の球面部15、より具体的には流出入口10、11の開口部位(ボデーの弁座面)の加工精度を確保すれば、ボデー2に弁体3を挿入し、蓋部材4で被蓋することでシール性を確保しつつ所定の状態に簡単に組立てできる。この組立時には、シール部材5を所定の位置に設けることで、多彩な流路の切換えが可能になる。また、シール部材5の配設が1個なので、フローティングボールのような密封空間が形成されず、異常昇圧が発生することがない。
【0087】
弁閉時には、シール部材5が流出入口10、11又は排出口12の開口部位に押圧されて封止面が弾性又は塑性変形し、高いシール性を発揮して異物の混入や流体の漏れを確実に防止する。例えば、高温空気の供給によりシール部材5が膨張しようとした場合にも、ばね部材6による与圧構造でシール封止力が加わり噛み込みやクリープ、応力緩和などに起因する漏れを防ぎ、低温時にシール部材5が収縮しようとした場合にも、ばね部材6により流体の必要封止押圧力が得られるためにシール性を確保できる。
上記のことから、コンパクト性を維持しながら高圧の圧力空気に対しても高い封止性を発揮する。
【0088】
図9においては、本発明の鉄道車両用急速排気弁の他例を示している。なお、本例において、前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
この実施形態におけるバルブ本体130は、ボデー131に90°間隔で3方の流出入口132、133、134が形成され、これら流出入口132、133、134の間に1つの排気口135が設けられ、弁体3を圧力空気の供給状態から回転したときに流出入口132、133、134の少なくとも何れか1つと排気口135とが連通可能になるように設けられている。
【0089】
この場合、例えば、流出入口132を一次側、流出入口133、134を二次側とした場合、
図9(a)の圧力空気の供給状態では、矢印に示すように流出入口132からの圧力空気が流出入口133、134に分岐供給される。
一方、
図9(a)の状態からハンドル7を180°回転させ、
図9(b)の弁体の状態にしたときには、矢印に示すように、それまで二次側であった流出入口133、134から排気口135を介して圧力空気が一括排気される。
【0090】
仮に、分岐流路に2方弁を使用した場合、この2方弁と、分岐用のT型継手と、これらを接続するためのニップル継手等の継手が必要になるが、上記の3方弁であるバルブ本体130を使用することでこれらが不要になり、鉄道車両70内の極小スペースに設けられた空気配管71に利用することで、配管作業やコスト、軽量化などの点で有利となる。さらには、図示しないバルブ本体のボデーに4方以上の流出入口と1つの排気口とを設け、このボデー内に適宜の貫通口を有する弁体を設けるようにしてもよい。
【0091】
また、バルブ本体130の排気口135に前述したノズル80やエルボ管83を接続して排気方向を四方向、或は360°の任意の方向に変更できるようにすれば、バルブ本体130の設置場所に応じた無理のない排気方向に設定できる。
【0092】
次に、鉄道車両用急速排気弁を用いた鉄道車両の配管システムについて説明する。
ここで、一般的な鉄道車両の場合においては、扉開閉時間のうち、開時間が標準で2〜4秒、閉時間が標準で3〜5秒程度になっている。これらの時間は、自動扉開閉装置内に設けられる扉駆動用シリンダーピストンを開または閉方向に動作するための空気圧力値と、扉駆動用シリンダーのシリンダー容積と、シリンダー室へ圧力空気を供給すると同時に閉または開方向のシリンダー室の残留圧力空気を排気する前述の排気口面積の大きさに多大に影響される。
個々の扉を手動で開操作するまでの時間は上記の標準時間となるが、全扉を一斉に手動で開操作するなどの場合には、残留圧力空気の容量・残留空気圧力値の影響により、手動操作可能になるまでの時間として、標準時間以上の時間が必要になる。
【0093】
しかも、同一鉄道車両において扉を開操作する場合、例えば、鉄道車両内部からの緊急開扉(各々の扉の緊急開扉、左右それぞれの片側扉の一斉開扉、左右両側扉の一斉開扉)、鉄道車両外部からの緊急開扉(左右それぞれの片側扉の一斉開扉、左右両側扉の一斉開扉)などのエリアの異なる開扉をおこなうことがある。これらの開扉の際には、各バルブを閉止して供給空気を止めてシリンダー内の圧力空気を排気する工程において、扉シリンダーを含む空気配管の容量が上記の扉開閉パターンにより異なる場合には、手動で扉を開扉できるまでの圧力空気の排気時間が異なり、配管の容量が大きくなるにつれて手動開操作までの時間が長くなって避難やメンテナンスまでに時間がかかるという欠点がある。
【0094】
従来の排気孔付コックやバルブを排気部分に用いた場合、その排気孔が小さく、しかも排気孔の大きさを調節できないために、排気容量の異なる各排気パターンごとに扉開操作までに要する排気時間が変わることにつながっていた。具体的には、例えば、シリンダー近くでは、数秒間の短い排気時間で扉開操作が可能になるが、左右それぞれの片側扉を一斉開扉するときには、配管容量が大きくなって排気時間が例えば数十秒間の長い時間になり、扉開操作可能になるまでに時間がかかる。このように、従来の排気孔付コックやバルブでは、排気時間が扉開閉の各パターンの配管容量によって変動して操作可能までの時間が大きく変化するため、緊急時の避難・保守の場合にも多くの待ち時間を要していた。
【0095】
従来の構造の排気孔付2方・3方コック弁、2方・3方ボールコック弁では、このような問題を解決することが難しく、空気配管の内径相当の流過面積を有するバルブでは全体が大型化し、車両の狭小空間での配管が困難となるとともに弁重量が重くなり車両の軽量化のニーズへの対応が難しくなる。また、バルブの開閉操作に大きなトルクが必要になり、老人などの力の弱い乗客にとってはハンドル操作が難しくなる。ボールコック弁においては、その構造上ボデー本体を分割してネジで固定する構造となるため、配管ネジ込み時の弁の破損や接合ネジ部の緩み、車両振動による接合ネジ部の緩みによる圧力空気の外部漏れなどのリスクが大きくなる。
【0096】
これに比較して、本発明の鉄道車両量急速排気弁を用いた鉄道車両の配管システム(以下、システム本体140という)では、
図10〜
図14に示すように、前述したバルブ本体1を、二点鎖線で示した鉄道車両70の自動扉開閉装置120を駆動する空気配管71の主管141、枝管142の管路途中に配設し、又は管路分岐部143に複数配設可能に設け、各バルブ本体1の排気時間の変動を防いで一定に保持するようにしたものである。
【0097】
これによって、バルブ本体1の鉄道車両70への配設位置に応じて、空気配管71全体の小型化と軽量化を図りつつ、オリフィス8による排気口面積Sを適宜設定して排気時間を調整でき、扉開閉時の各パターンにより配管容量が変わる場合にも一定の短い所定時間内での排気が可能になる。この場合、バルブ本体1を軽い力で操作でき、一体構造のボデー2を介して空気配管71に接続できるため圧力空気の外部漏れも防がれる。
【0098】
さらには、バルブ本体1を鉄道車両70の車両内部又は車両外部の開扉用の圧力配管71の途中に設けるようにすれば、鉄道車両70の内部及び外部から自動扉121を手動操作で開状態にできるため、緊急時や保安時に空気配管71の所望のエリアを迅速に排気することができる。
【0099】
この実施形態におけるシステム本体140には、一次側にコンプレッサからなる圧縮装置150、チャンバー、アキュムレータからなる空気溜め部151が設けられ、これらに自動扉開閉装置120を駆動するための圧力空気の供給・排気路である空気配管71が接続されている。空気配管71には、内部に図示しない電磁弁の開閉により駆動するシリンダーを有する自動扉開閉装置120、バルブ本体1が配設される。このシステム本体140において、圧縮装置150により生成された圧力空気は、空気溜め部151を介して空気配管71に供給される。
【0100】
図10において、実線で示した空気配管71は、途中で管路分岐部143となるT字継手により、枝管142である左右の第1分岐路153、第2分岐路154に分岐され、これらの第1・第2分岐路153、154に複数の自動扉開閉装置120がそれぞれ設けられている。空気配管71の主管141、枝管142の管路途中には、前述した2方形のバルブ本体1がそれぞれ配設される。又、T字継手143の代わりとして、管路分岐部にバルブ本体130を設けてもよい。これらのうち、T字継手143よりも一次側に設けられるバルブ本体1は、配管路の流出入口10、11と排気口12とを貫通口30、31、32を介して連通して全ての自動扉開閉装置120への圧力空気を排出するか、或は流出入口10、11同士を、貫通口30、31、32を介して連通して全ての自動扉開閉装置120に圧力空気を供給可能に設けられる。
【0101】
第1分岐路153、第2分岐路154において、T字継手(管路分岐部)143と自動扉開閉装置120との間に設けられるバルブ本体1は、T字継手143側の配管路の流出入口10、11と排気口12とを連通して左右それぞれの側における全ての自動扉開閉装置120への圧力空気を排出するか、或は流出入口10、11同士を連通して左右それぞれの側における全ての自動扉開閉装置120に圧力空気を供給可能に設けられる。
【0102】
各自動扉開閉装置120の一次側に設けられるバルブ本体1は、この自動扉開閉装置120への流出入口10、11を排気口12とを連通して当該自動扉開閉装置120への圧力空気を排出するか、或は流出入口10、11同士を連通して当該自動扉開閉装置120に圧力空気を供給可能に設けられる。
【0103】
この実施形態では、バルブ本体1が鉄道車両70内部、鉄道車両70外部にそれぞれ設けられ、各バルブ本体1を開閉操作することで鉄道車両70の内外から自動扉開閉装置120への圧力空気を排出又は供給可能になっている。より詳しくは、第1分岐路153、第2分岐路154よりも一次側のバルブ本体1は、図示しないが、通常時は鉄道車両70内部の適宜位置に蝶番で開閉可能に設けられたガラス板に隠された状態で設けられ、緊急時や保安時などにはこのガラス板を開けることで鉄道車両70内からハンドル7で手動操作可能になっている。鉄道車両70外部の左右側、及び前後側に露出した状態で設けられるバルブ本体1は、鉄道車両70外の各方向から手動操作可能に設けられる。各自動扉121の上方に設けられるバルブ本体1は、蝶番で開閉可能に設けられた鋼板に隠された状態で設けられ、鋼板を開けることで鉄道車両70内から手動操作可能に設けられている。
【0104】
図10において、常時運転時には、全てのバルブ本体1の流出入口10、11同士が連通され、圧力空気を自動扉開閉装置120まで供給可能な状態になっている。この場合、電磁弁の開閉によりシリンダーが駆動されて自動扉開閉装置120が自動で開閉操作されることにより、鉄道車両70への乗降等が可能になっている。
【0105】
次いで、バルブ本体1の手動操作により、システム本体140の空気配管71から排気する場合の各種の例を説明する。
図11においては、非常時に個別の自動扉開閉装置120のみを手動開操作可能にする場合の排気状態を示している。以降の図において、一点鎖線は空気配管71への圧力空気の供給状態、破線は空気配管71からの圧力空気の排気状態を示している。
各自動扉開閉装置120のうちの1つのバルブ本体1を手動操作して排気状態にしたときには、このバルブ本体1に接続されている自動扉開閉装置120のみが手動操作可能になってこの自動扉開閉装置120を開操作できるようになる。これ以外の自動扉開閉装置120には圧力空気が供給され、閉扉状態が維持される。
【0106】
図12においては、非常時に鉄道車両70の片側扉を一斉に手動開操作可能にする場合の排気状態を示している。この場合、鉄道車両70外側面部のバルブ本体1を手動操作して二次側の空気配管を排気状態にすることで、この片側扉のうちの任意の扉を手動開操作することが可能になる。
図13においては、
図12の場合と同様に非常時に鉄道車両70の片側扉を一斉に手動開操作可能にする場合の排気状態を示している。この場合、鉄道車両70前後面部のバルブ本体1を手動操作して二次側の空気配管を排気状態にすることで、片側扉のうちの任意の扉を手動開操作可能になる。
【0107】
図14においては、非常時に鉄道車両70全体の自動扉開閉装置120を手動開操作可能にする場合の排気状態を示している。この場合、鉄道車両70内のバルブ本体1を手動操作して二次側の空気配管71を排気状態にすることで、鉄道車両70全体の自動扉のうちの任意の扉を手動開操作することが可能になる。
【0108】
これらの場合、鉄道車両70の各バルブ本体1の排気口12に排気口面積Sの異なるオリフィス8を装着し、何れの排気状態でも排気時間を一定に設定可能にしながら、この排気時間を短縮可能に設けている。これにより、鉄道車両70によって異なる扉開閉用空気配管71の容量(長さ)や、バルブ本体1の配設位置に影響を受けることなく、バルブ本体1の配管状態でオリフィス8の穴径φdを外部から設定して手動扉開操作までの時間を調整し、空気配管71内の圧力を、本実施形態では、例えば、5秒以内に排出して扉開操作可能にできる。
【0109】
しかも、バルブ本体1を鉄道車両70内の自動扉開閉装置120の空気配管71の主管141、枝管142の管路の途中、又は管路分岐部143に配設できるため、鉄道車両70ごとに異なる空気配管71に対しても所望の位置に配置でき、流路を切り換えて所望の位置から急速排気して鉄道車両70内の一定領域内を所定時間以内に排気できる。さらには、配管が複雑化した場合にも、その配管の所定位置にバルブ本体1を設けて圧力空気の排気時間を所定以内に短縮できる。
【0110】
図15においては、鉄道車両の配管システムの他例を示している。このシステム本体160では、前記と同様に圧縮装置150、空気溜め部151が一次側に設けられ、これらに自動扉開閉装置120を駆動するための空気配管71が接続され、この空気配管71に車内設置用の
図3に示した2方形のバルブ本体1が車内設置用、車外設置用としてそれぞれ配設されている。さらに、このシステム本体160では、
図9に示した3方形のバルブ本体130が空気配管71の途中に設けられている。このバルブ本体130は、第1分岐路153と第2分岐路154との管路分岐部143に、流出入口132を一次側、流出入口133、134を二次側として設けられる。
【0111】
常時運転時には、
図9(a)に示すように、流出入口132と、流出入口133、134とが連通され、圧力空気を全ての自動扉開閉装置120まで供給可能な状態となる。
一方、
図9(b)に示すように、流出入口133、134と、排気口135とを連通させた場合には、鉄道車両70の両側扉を一斉に手動操作することが可能な状態となる。
3方形のバルブ本体130を管路分岐部143としてT字継手の代わりに設けた場合には、このバルブ本体130よりも一次側のバルブが不要となり、省スペース化を図ることが可能となる。
【0112】
図15のシステム本体160の場合、例えば、管路分岐部143よりも一次側に設けられたバルブ本体1のオリフィス口径をφ10mm、管路分岐部143から左右扉側に続く各管路に設けられたバルブ本体1のオリフィス口径をφ7mm、自動扉開閉装置120の直前に設けられたバルブ本体1のオリフィス口径をφ5mmに設定したオリフィス8を装着することで、鉄道車両70の種類や製造メーカーによって異なる配管長さにより排気空気量が異なる場合でも、所定の開扉パターンにおける排気エリアや個々のバルブ本体1の排気時間を一定の短時間に設定できる。
【0113】
次に、上記に示した第1実施形態における鉄道車両用急速排気弁の実施の一例を示す。
図15に示す1両の鉄道車両70におけるシステム本体160において、シミュレーションにより排気時間をもとめた。このときの条件としては、空気配管71の管径3/8B、排気口135の口径φ10mm、オリフィス8の排気口径φ10mm、φ7mm、φ5mmにそれぞれ設定し、圧力空気の圧力を0.49MPaとしたときの自動扉開閉装置120の手動開操作可能までの排気時間を、それぞれの排気パターンにおいてJISB8373による計算式でシミュレートした。空気配管71の排気パターンとそのシミュレーション結果を表1に示す。また、比較用として一般的な構造の鉄道車両用三方コックを用い、このボールバルブの排気側の穴径φdをφ5mmに固定し、空気配管の管径、圧力空気の圧力を上記と同条件にしたときの各排気パターンにおけるシミュレーション結果を表2に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
表1と表2とを比較した場合、本発明の急速排気弁を用いた配管システムの場合には、排気時間を約5秒以内に短縮できた。一方、従来の一般的な構造の鉄道車両用三方コックを用いた場合には、排気時間が最大約20秒と長くなり、排気パターンによりこの排気時間にもバラツキが見られた。以上のことから、本発明の急速排気弁を用いた配管システムを用いた場合には、排気時間を一定時間以内に短く設定できることが確認された。
【0117】
次に、本発明における鉄道車両用急速排気弁の第2実施形態を説明する。
図16(a)は、ハンドル701の斜視図であり、
図16(b)(c)は、本発明の鉄道車両用急速排気弁の第2実施形態における斜視図であり、
図17は
図16(b)(c)に示す鉄道車両用急速排気弁の弁体の回転状態を示す断面図である。なお、第1実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
【0118】
図16(a)は、バルブ本体1に設けられる別の形態のハンドル701の斜視図であり、(b)は本例のバルブ本体1に、このハンドル701を設けた斜視図である。同図(a)に示すようにハンドル701は、ハンドル7と同様に連結部702に略十字形状の嵌合穴51が設けられ、この嵌合穴51を介してハンドル701が上ステム35に90°間隔で任意の向きに装着可能に設けられる。ハンドル701を上ステム35に90°間隔で装着可能であれば、嵌合穴51は略十字形状以外の嵌合形状であってもよい。連結部702は、ワッシャ部材55を介して固着ナット56で上ステム35に固定される。
【0119】
ハンドル701のストッパ部520は、凹状に切り欠いて形成されている。同図(b)に示すように、ハンドル701をバルブ本体1に取付けた場合には、このストッパ部520が4つの取付穴20の何れか一つに取付けられた係止用ピン21に当接係止することで、ハンドル701の向きや操作方向を設定しつつ、このハンドル701を任意の操作方向に180°回転操作して流路を切換え可能になる。
【0120】
図16(b)では、流出入口10、11が直角に交差し且つ排気口12を有する三方弁であって、流出入口10を1次側とし、流出入口11を2次側とした場合は、ハンドル701を180°開閉操作して流出入口10、11を連通させて運転時の圧力空気を供給したり、流出入口10を閉止し流出入口11と排気口12を連通して排気作業を行うことができる。
【0121】
図16(c)では、流出入口11を1次側とし、流出入口10を2次側とした場合は、ハンドル7を90°開閉操作して流出入口10、11を連通させて運転時の圧力空気を供給したり、流出入口11を閉止し流出入口10と排気口12を連通して排気作業を行うことができる。
【0122】
この時、上ステムにハンドル7を嵌合穴51を介して90°間隔で任意の向きに装着可能に設け、ボデー2に90°間隔に設けた取付穴20の何れか一つにストッパ部52が係止可能な係止用ピン21を取付けて、ハンドル7を任意の開閉操作方向に装着可能に設けていることにより、流出入口に対して排気口の位置が異なるボデーを設けたり、ハンドルのストッパ部位の位置を変えたり、このストッパ部位が係止するボデーの突出部位の位置を変えたりする必要がなく、1種類のボデー2、ハンドル7を用いて、鉄道車両内の配管場所や向きに対応して取り付け可能になり、鉄道車両の左右側の狭い設置スペースにも操作性を確保しながら併設できる。この場合、ハンドル7の回転操作時には、ストッパ部52が90°間隔で係止用ピン21に係止することで、誤作動を防ぎながら所定角度まで確実に操作することができ、しかもバルブ本体1が狭い場所や暗い場所等に設置されている場合でも、規制位置までハンドルを回転することで容易に弁体を所定の開閉状態まで操作できる。
【0123】
図17(a)においては、圧力空気を供給可能に流出入口10、11を連通させた状態を示しており、
図17(b)においては、
図17(a)からハンドル7、701を180度開閉操作して流出入口10を閉止して流出入口11と排気口12とを連通させた状態を示しており、
図17(c)においては、
図17(a)からハンドル7を90度開閉操作して流出入口11を閉止して左側の流出入口10と排気口12とを連通させた状態を示している。これら以外にも2つの流出入口10、11と排気口12との全てを連通可能に設けた状態があるが、これは鉄道車両用のDコックとしての機能を発揮する際の3つの流出入口を切換えた状態ではないためその説明を省略する。
【0124】
これらの何れの流路切換え状態においても、ボデー2をワンピース構造に設けながら流出入口10、11、排気口12と貫通口30、31、32とをフルボア口径で連通させて最大流路面積を確保して大流量を供給可能になっており、
図17(a)の流出入口10、11の連通状態では、運転時における圧力空気の供給量が大きくなり、
図17(b)や
図17(c)の排気口12の連通時には、車両の修理・保守・非常時などに2次側の残留空気圧を貫通口30、31、32を介して短時間で排気可能になる。
【0125】
ここで、一般的なボールバルブでは、流出入口側にそれぞれシール部材が配置され、このシール部材に封止に必要な接触面圧が加わる位置にボール弁体が配置され、このボール弁体を回動操作して流体を閉止する構造になっている。ボールバルブでは、各流出入口を閉止するためにシール部材を流出入口の流路径よりも外周縁側に拡径した位置に配置する必要があり、ボール弁体球面の流路径外周縁の封止面にシール部材を干渉・圧接させる必要がある。
【0126】
さらに、2つ以上の流出入口を閉止するためにシール部材やこのシール部材を保持するための部材がそれぞれ必要になる。そのため、流出入口の増加に伴ってバルブ構造が複雑化、大型化し重量の増加につながることに加え、各部品の高い寸法精度も要求される。
【0127】
前記したようにシール部材はボール弁体と干渉する位置に配置され圧接する必要があるため、ボールバルブ内部の構造が複雑になる。例えば、ワンピース構造のフローティングボールバルブにおいては、ボデーと別体のインサートを設け、このインサートをボデーの配管接続部からねじ込んでシール部材を保護しながらシール部材とボール弁体とを流路方向に沿って伴締めする構造になる。2〜4ピース構造のフローティングボールバルブにおいては、ボデーと別体のキャップを設け、このキャップをボデーの流路側からねじ込んでシール部材を保持しつつボール弁体とシール部材を流路方向に沿って伴締めする構造になる。トラニオンボールバルブにおいては、ボデーの配管接続部から各シール部材を流路方向に沿ってボール弁体に接触するように締め付ける構造になる。
【0128】
従来のボールバルブでは、この様に部品点数が増加するため組立工数も増加し、摩耗や消耗等によりシール部材や消耗部品等を交換する場合には、配管からバルブ全体を取外し、このバルブを分解して部品交換等を実施する必要が生じるなどの手間もかかる。
また、ボール弁体とシール部材との位置により封止性能及び摺動性能が大きく影響される。さらに、シール部材を所定位置に位置決めし、かつインサートやキャップとボデーとの接合部からの流体の外部漏れを封止するために高い加工精度が要求される。
【0129】
前記のような一般的なボールバルブに比較して、本発明における上記実施形態の鉄道車両用排気弁は、上ステム35をボデー2の挿着穴18、下ステム37を蓋部材4の挿着穴部45にそれぞれ軸装したトラニオン構造になっていることで、弁体3が圧力により二次側に移動することがなく、弁体3側に流出入口10、11、12を閉止するシール部材5を配設していることで、一般的なボールバルブのように複数のシール部材を必要とすることなく、1つのシール部材5で流路を切換えできる。このため、ボデー2の球面部15や弁体3の球状面部28、シール部材5が高い加工精度を必要とすることなく、部品点数を少なくして全体を簡略化して小型化・軽量化できる。弁体収納部16の球面部15、より具体的には流出入口10、11の開口部位(ボデーの弁座面)の加工精度を確保すれば、ボデー2に弁体3を挿入し、蓋部材4で被蓋することでシール性を確保しつつ所定の状態に簡単に組立てできる。この組立時には、シール部材5を所定の位置に設けることで、異常昇圧を防止しながら多彩な流路の切換えが可能になる。
【0130】
しかも、上記のようにコンパクト化したボデー2の螺合部25にパイプ26を接続可能に設けているため、
図17に示すパイプ26をエルボ等の曲がり管とすることで、複雑な配管に対しても流路の接続が容易になり、排気作業時等には、排気口12から排気される圧力空気が作業者に降りかかることを防止できると共に、外部からの排気口12への異物の浸入も防ぐことができる。
【0131】
弁体3をボデー2と蓋部材4との間に軸支した構造とし、トルク性能を向上させていることで、ハンドル7操作時の負荷が軽くなって弁体3の開閉操作がスムーズになる。
このとき、上ステム35と下ステム37とを略同一径に設けて均等圧力を付与していることで、操作トルクを低く抑えて安定した操作性により弁体3を開閉操作できる。
これらにより、鉄道車両内の狭いスペースに設置されている場合にも、大きい力を加えることなく片手で容易に操作できる。
【0132】
組立時には、予めシール部材5を装着した弁体3をワンピース構造に設けたボデー2の開口部22から挿入し、
ばね部材6を装着しながら
蓋部材4を螺着するだけで簡単に組み込むことができ、ワンピース構造によって配管後のこのボデー2からの外部漏れを防止できる。シール部材5や消耗部品等の交換時には、
ボデー2を配管から外す必要がないため組付け作業や消耗部品等の交換時の工数を最小限に抑えることができる。ボトムエントリ構造により弁体3がばね部材6で
ボデー2内に押圧される構造であるため、この弁体3が外部に飛び出すおそれがなく安全である。
これらのことから、鉄道車両の配管への接続やメンテナンスも容易であり、漏れ等を防止して安全にこれらの作業を実施できる。
【0133】
さらに、組立時に、蓋部材4を開口部22に螺着し、かつ、雄ねじ43を雌ねじ23に螺合させたときに
球面部15と球状面部28との間に隙間Gを設け、弁体3の球状面部28とボデー内球面部15を無摺動で回転できるようにし、シール部材5に閉止時のみに流体圧力が加わるようにしているので、グリース等の潤滑剤を用いることなくシール部材5の摩耗を最小限に抑え、しかも、流体圧による変形や移動も防がれるため、シール部材5の高シール性、耐久性を維持できる。このようにシール部材5の摩耗が抑えられることから経済性にも優れ、鉄道車両内の一つの配管に対して多数設置される場合での、そのコストを削減できる。
【0134】
開口部22を蓋部材4で増締可能に被蓋し、この蓋部材4に装着されたばね部材6の弾発力でシール部材5が何れか一つの流出入口10、11、12を密封閉止していることで、シート部材5の摩耗に応じてばね部材6が適量伸びるように追随することでシール性を確保できる。さらに、経年劣化や弁体3の繰り返しの開閉動作によりシール部材5が摩耗してシール性の維持が難しくなった場合には、蓋部材4を増締することでシール部材5の押圧力を強くしてシール性を回復できる。このため、シール部材5を頻繁に交換する必要もない。
シール部材5には流体圧力からの偏った圧力が加わり難くなっており、シール部材5の変形を防いで耐久性を高めることができる。
【0135】
2つの流出入口10、11において圧力空気の供給口が入れ替わることで排気口12から排気する為のハンドル操作が異なる場合でも、
上ステム35にハンドル7、701を嵌合穴51を介して90°間隔で任意の向きに装着可能に設け、ボデー2に90°間隔に設けた取付穴20の何れか一つ又は二つにストッパ部52、520が係止可能な係止用ピン21を取付けてハンドル7、701を任意の開閉操作方向に装着可能に設けていることにより、一種類のボデー2、ハンドル7、701を用いて、鉄道車両内の配管場所や向きに対応して取付可能になり、鉄道車両の左右側の狭い設置スペースにも操作性を確保しながら並設できる。
【0136】
この場合、ハンドル7、701の回転操作時には、ストッパ部52、520が90°間隔で係止用ピン21に係止することで、誤作動を防ぎながら所定角度まで確実に操作でき、狭い場所や暗い場所などにバルブ本体1が設置されている場合でも、規制位置までハンドルを回転することで容易に弁体を所定の開閉状態まで操作できる。
【0137】
次に、本発明の鉄道車両用急速排気弁の第3実施形態を説明する。
図18は、本発明の鉄道車両用急速排気弁の第3実施形態の一例の斜視図を示し、
図19は、同図のA−A断面線の縦断面図を示している。
図20は、
図18の45°斜めB−B断面線の縦断面図を示し、
図21は本発明の鉄道車両用急速排気弁の第3実施形態にこの手動用ハンドルを取付けた斜視図を示している。
図22は、
図18に示す急速排気弁の第3実施形態の他例であって、この他例の排気弁の排気状態を示したA−A断面線の縦断面図を示している。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
【0138】
本例では、
図18、
図19、
図20に示すように、ボデー2の上部に略円形の外縁部をなす平面部191が形成され、この平面部191は、略円筒形状の側面192を介して、ボデー2と一体に設けられている。平面部191には、その中央部に弁体3の上ステム35を軸装する装着穴18が開口しており、90°間隔で4箇所に取付穴20が形成され、この取付穴20の何れか1つに係止用ピン21が、例えば圧入又はねじ込みにより取付けられる。なお、本例では流出入口10は2次側、流出入口11は1次側である。
【0139】
図22に示す他例においては、ボデー2の弁体収納部16の下部内周面に装着内周面9aを形成し、弁体3の下部外周面に装着段部9bを形成し、この装着段部9bにリン青銅製又はPOM(ポリオキシメチレン)樹脂などの材質で成形した保持リング9を嵌合する。同図に示すように、弁体収納部16の下部内周面と弁体3の下部外周面との間に、保持リング9を介在させると、保持リング9の内外径円筒部とボデーの内周面9aと弁体の段部9bで、ボデー2の
球面部15の球芯及び
装着穴18の軸芯と弁体3の回転軸の軸心を調芯しつつシール部材5の圧縮代分を一定に確保しながら圧縮することが可能となり、シール部材5の圧縮反力による偏芯作用を吸収しシール部材5のシール面圧の不均衡をなくすことにより、排気弁の開閉操作性能を向上することが可能となる。