特許第5776026号(P5776026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776026
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】苗移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 21/00 20060101AFI20150820BHJP
   A01C 11/00 20060101ALI20150820BHJP
   A01B 79/02 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   A01C21/00 Z
   A01C11/00 302
   A01B79/02
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2010-200440(P2010-200440)
(22)【出願日】2010年9月8日
(65)【公開番号】特開2012-55212(P2012-55212A)
(43)【公開日】2012年3月22日
【審査請求日】2013年9月9日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、農林水産省、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】591040236
【氏名又は名称】石川県
(73)【特許権者】
【識別番号】393028357
【氏名又は名称】シブヤマシナリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077779
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078260
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 レイ子
(74)【代理人】
【識別番号】100086450
【弁理士】
【氏名又は名称】菊谷 公男
(72)【発明者】
【氏名】森本 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】平子 進一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 仁史
(72)【発明者】
【氏名】和泉 満孝
【審査官】 青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−000019(JP,A)
【文献】 特開昭62−158438(JP,A)
【文献】 実開平05−032273(JP,U)
【文献】 特開平07−101362(JP,A)
【文献】 特開平04−091714(JP,A)
【文献】 特開平11−304764(JP,A)
【文献】 特開平10−191780(JP,A)
【文献】 特開2004−322038(JP,A)
【文献】 特開平09−203721(JP,A)
【文献】 特開2001−013087(JP,A)
【文献】 特開平02−027910(JP,A)
【文献】 特開平10−159606(JP,A)
【文献】 特開昭63−254912(JP,A)
【文献】 特開2008−001241(JP,A)
【文献】 特開2005−271909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 51/00−79/02
A01C 3/00− 3/08
A01C 11/00−23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する走行車体(2)と、この走行車体(2)に昇降可能に設けられ土壌に苗を植付ける苗植付部(4)と、この苗植付部(4)の植付け位置よりも上記走行車体(2)
の前部に設けた施肥ガイド(63)から上記土壌に肥料を吐出する施肥装置(5)と、上
記施肥ガイド(63)よりも上記走行車体(2)の前部に配置した左右の走行車輪(10
)に設けられ上記土壌中に突入する左右一対の検出子(71a)と、これらの検出子(7
1a)間の通電抵抗または電気伝導度を検出して上記土壌の肥料濃度を検出する肥料濃度
センサ(71)と、上記肥料濃度センサ(71)の検出値に基づいて上記施肥装置(5)
の施肥量を変更する制御装置(72)と、を備えた苗移植機において、
前記苗植付部(4)の下部に設けられ土壌面で滑走して整地するセンサフロート(55)と、土壌中に位置するようにセンサフロート(55)に設けられて前記土壌の温度を検出する温度センサ(73)を備え、この温度センサ(73)の検出値に基づいて上記肥料濃度センサ(71)の検出値を補正することを特微とする苗移植機。
【請求項2】
前記施肥装置(5)の施肥ガイド(63)よりも走行車体(2)の前部に、圃場の耕盤深さを検出する耕盤深さセンサ(74)を設け、
前記制御装置(72)は、上記耕盤深さセンサ(74)の検出データに基づいて施肥装置(5)の施肥量を変更する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
前記走行車体(2)は、GPS信号を受信して自身の位置データを取得するGPS受信機(75)と、このGPS受信機(75)が取得した上記位置データ毎に圃場内各所における肥料濃度および施肥量のデータを記憶するデータボックス(76)とを備え、
制御装置(72)は、上記走行車体(2)を所望の走行経路で走行するよう制御するとともに、上記データボックス(76)に記憶されたデータに基づいて施肥装置(5)の施肥量を変更する構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の苗移植機。
【請求項4】
制御装置(72)は、肥料濃度センサ(71)の検出データと温度センサ(73)の検出データと耕盤深さセンサ(74)の検出データとを統合し、前記施肥装置(5)の施肥量を変更することを特徴とする請求項1または2に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記温度センサ(73)は、前記センサフロート(55)の回動支点(55p)の近傍に設け、該温度センサ(73)を取り付ける温度センサ取付部(73a)の温度センサベース後端(73b)を下方に屈曲させ、
前記耕盤深さセンサ(74)は、前記走行車体(2)のフロアステップ(35)よりも上方で、且つフロアステップ(35)よりも機体外側位置に配置し、
前記走行車体(2)の操作パネル(39)にGPS受信機(75)を設け、該GPS受信機(75)の作動ランプ(75m)を、前記走行車体(2)の運転席(31)から目視可能な位置に配置したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項6】
圃場を走行する走行車体(2)と、この走行車体(2)に昇降可能に設けられ土壌に苗を植付ける苗植付部(4)と、この苗植付部(4)の植付け位置よりも上記走行車体(2)
の前部に設けた施肥ガイド(63)から上記土壌に肥料を吐出する施肥装置(5)と、上
記施肥ガイド(63)よりも上記走行車体(2)の前部に配置した左右の走行車輪(10
)に設けられ上記土壌中に突入する左右一対の検出子(71a)と、これらの検出子(7
1a)間の通電抵抗または電気伝導度を検出して上記土壌の肥料濃度を検出する肥料濃度
センサ(71)と、上記肥料濃度センサ(71)の検出データに基づいて上記施肥装置(
5)の施肥量を変更する制御装置(72)とを備えた苗移植機において、
上記左右一対の検出子(71a)は、その外周が上記走行車輪(10)の外形よりも小径の円形状に構成されて上記走行車輪(10)の左右幅内にそれぞれ配置され、
上記走行車輪(10)の車軸(80)と一体回転し上記検出子(71a)に接続する回転側電極(81)と、上記走行車輪(10)の車軸(80)を支持するカバー(82)内に設けられ上記回転側電極(81)に接触する固定側電極(83)とを備え、上記回転側電極(81)および上記固定側電極(83)の一方をリング状に構成するとともに、他方を接触子とし、
さらに、下側ほど左右方向外側に偏位する上下方向のキングピン軸(84)と、このキングピン軸(84)から走行車輪(10)の車軸(80)へ伝動する一対のべベルギヤ(85)とを備え、べベルギヤ(85)は車軸(80)を設けた中心部分を凹状に構成し、該凹状の中心部分に上記カバー(82)を配置させるとともに、
固定側電極(83)へ導電する電線(86)を、機体正面視で上記キングピン軸(84)
に沿って下側ほど左右方向外側に偏位させて配置することを特徴とする苗移植機。
【請求項7】
走行車輪(10)の車軸(80)には、回転側電極(81)へ導電する電線(88)を通すための孔(89)または溝を形成したことを特徴とする請求項6に記載の苗移植機。
【請求項8】
走行車輪(10)のスポーク部(90)に検出子(71a)を固定する固定具(95)を備え、
この固定具(95)は、上記検出子(71a)を上記スポーク部(90)に固定した際に機体正面視で上記走行車輪(10)の車軸(80)側に突出する尖った断面形状に形成されることを特徴とする請求項6または7に記載の苗移植機。
【請求項9】
前記カバー(82)を構成する内側フロントアクスルカバー(82i)と外側フロントアクスルカバー(82o)間の空間部分に回転側電極(81)を設け、
前記べベルギヤ(85)の凹状の中心部分に前記内側フロントアクスルカバー(82i)を配置させたことを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場を走行し、土壌に肥料を施しながら苗を植付ける苗移植機の分野に係る
ものである。
【背景技術】
【0002】
このような苗移植機は例えば特許文献1に開示されており、圃場の肥料濃度、泥部の硬軟
および深度を各種センサで検出し、これらの検出データに基づいて施肥量を変更している
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−000019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の施肥方法では、圃場の残留濃度に応じた施肥制御で一様な施肥を行っても、部分的
な生育不足による収量低下や、過剰生育に伴う徒長倒伏による収穫能率の低下を招き、一
様な最適生育の実現のために種々の施肥制御が試行されていた。
【0005】
この発明の目的は、簡易な測定方法で精度良く一様施肥を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る苗移植機は、
圃場を走行する走行車体(2)と、この走行車体(2)に昇降可能に設けられ土壌に苗を植付ける苗植付部(4)と、この苗植付部(4)の植付け位置よりも上記走行車体(2)
の前部に設けた施肥ガイド(63)から上記土壌に肥料を吐出する施肥装置(5)と、上
記施肥ガイド(63)よりも上記走行車体(2)の前部に配置した左右の走行車輪(10
)に設けられ上記土壌中に突入する左右一対の検出子(71a)と、これらの検出子(7
1a)間の通電抵抗または電気伝導度を検出して上記土壌の肥料濃度を検出する肥料濃度
センサ(71)と、上記肥料濃度センサ(71)の検出値に基づいて上記施肥装置(5)
の施肥量を変更する制御装置(72)と、を備えた苗移植機において、
前記苗植付部(4)の下部に設けたセンサフロート(55)を土壌面で滑走して整地す
ると共に、センサフロート(55)に設けた温度センサ(73)を土壌中に位置させて土
壌の温度を検出し、この検出値に基づいて上記肥料濃度センサ(71)の検出値を補正す
ることを特微とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明に係る苗移植機は、請求項1の記載に加えて、
前記施肥装置(5)の施肥ガイド(63)よりも走行車体(2)の前部に、圃場の耕盤深さを検出する耕盤深さセンサ(74)を設け、
前記制御装置(72)は、上記耕盤深さセンサ(74)の検出データに基づいて施肥装置(5)の施肥量を変更する構成としたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の発明に係る苗移植機は、請求項1または請求項2の記載に加えて、
前記走行車体(2)は、GPS信号を受信して自身の位置データを取得するGPS受信機(75)と、このGPS受信機(75)が取得した上記位置データ毎に圃場内各所における肥料濃度および施肥量のデータを記憶するデータボックス(76)とを備え、
制御装置(72)は、上記走行車体(2)を所望の走行経路で走行するよう制御するとともに、上記データボックス(76)に記憶されたデータに基づいて施肥装置(5)の施肥量を変更する構成としたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項4記載の発明に係る苗移植機は、請求項1または2の記載に加えて、
制御装置(72)は、肥料濃度センサ(71)の検出データと温度センサ(73)の検出データと耕盤深さセンサ(74)の検出データとを統合し、前記施肥装置(5)の施肥量を変更することを特徴とするものである。
【0010】
請求項5記載の発明に係る苗移植機は、請求項1からのいずれか1項の記載に加えて、
前記温度センサ(73)は、前記センサフロート(55)の回動支点(55p)の近傍に設け、該温度センサ(73)を取り付ける温度センサ取付部(73a)の温度センサベース後端(73b)を下方に屈曲させ、
前記耕盤深さセンサ(74)は、前記走行車体(2)のフロアステップ(35)よりも上方で、且つフロアステップ(35)よりも機体外側位置に配置し、
前記走行車体(2)の操作パネル(39)にGPS受信機(75)を設け、該GPS受信機(75)の作動ランプ(75m)を、前記走行車体(2)の運転席(31)から目視可能な位置に配置したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項6記載の発明に係る苗移植機は、
圃場を走行する走行車体(2)と、この走行車体(2)に昇降可能に設けられ土壌に苗を植付ける苗植付部(4)と、この苗植付部(4)の植付け位置よりも上記走行車体(2)
の前部に設けた施肥ガイド(63)から上記土壌に肥料を吐出する施肥装置(5)と、上
記施肥ガイド(63)よりも上記走行車体(2)の前部に配置した左右の走行車輪(10
)に設けられ上記土壌中に突入する左右一対の検出子(71a)と、これらの検出子(7
1a)間の通電抵抗または電気伝導度を検出して上記土壌の肥料濃度を検出する肥料濃度
センサ(71)と、上記肥料濃度センサ(71)の検出データに基づいて上記施肥装置(
5)の施肥量を変更する制御装置(72)とを備えた苗移植機において、
上記左右一対の検出子(71a)は、その外周が上記走行車輪(10)の外形よりも小径の円形状に構成されて上記走行車輪(10)の左右幅内にそれぞれ配置され、
上記走行車輪(10)の車軸(80)と一体回転し上記検出子(71a)に接続する回転側電極(81)と、上記走行車輪(10)の車軸(80)を支持するカバー(82)内に設けられ上記回転側電極(81)に接触する固定側電極(83)とを備え、上記回転側電極(81)および上記固定側電極(83)の一方をリング状に構成するとともに、他方を接触子とし、
さらに、下側ほど左右方向外側に偏位する上下方向のキングピン軸(84)と、このキングピン軸(84)から走行車輪(10)の車軸(80)へ伝動する一対のべベルギヤ(85)とを備え、べベルギヤ(85)は車軸(80)を設けた中心部分を凹状に構成し、該凹状の中心部分に上記カバー(82)を配置させるとともに、
固定側電極(83)へ導電する電線(86)を、機体正面視で上記キングピン軸(84)
に沿って下側ほど左右方向外側に偏位させて配置することを特徴とするものである。
【0012】
請求項7記載の発明に係る苗移植機は、請求項6の記載に加えて、走行車輪(10)の
車軸(80)には、回転側電極(81)へ導電する電線(88)を通すための孔
(89)または溝を形成したことを特徴とするものである。
【0013】
請求項8記載の発明に係る苗移植機は、請求項6または請求項7の記載に加えて、
走行車輪(10)のスポーク部(90)に検出子(71a)を固定する固定具(95)を備え、
この固定具(95)は、上記検出子(71a)を上記スポーク部(90)に固定した際に機体正面視で上記走行車輪(10)の車軸(80)側に突出する尖った断面形状に形成されることを特徴とするものである。
【0014】
請求項9記載の発明に係る苗移植機は、請求項6から8のいずれか1項の記載に加えて、
前記カバー(82)を構成する内側フロントアクスルカバー(82i)と外側フロントアクスルカバー(82o)間の空間部分に回転側電極(81)を設け、
前記べベルギヤ(85)の凹状の中心部分に前記内側フロントアクスルカバー(82i)を配置させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、圃場を走行する走行車体(2)と、この走行車体(2)に
昇降可能に設けられ土壌に苗を植付ける苗植付部(4)と、この苗植付部(4)の植付け
位置よりも走行車体(2)の前部に設けた施肥ガイド(63)から土壌に肥料を吐出する
施肥装置(5)と、施肥ガイド(63)よりも走行車体(2)の前部に配置した左右の走
行車輪(10)に設けられ土壌中に突入する左右一対の検出子(71a)と、これらの検
出子(71a)間の通電抵抗または電気伝導度を検出して土壌の肥料濃度を検出する肥料
濃度センサ(71)と、肥料濃度センサ(71)の検出データに基づいて施肥装置(5)
の施肥量を変更する制御装置(72)とを備えた苗移植機において、土壌の温度を検出す
る温度センサ(73)を備え、この温度センサ(73)の検出値に基づいて肥料濃度セン
サ(71)の検出値を補正するようにしたので、土壌の温度の違いによる通電抵抗または
電気伝導度の変化に合わせて施肥量を適量に変更できるようになり、簡易な測定方法で施
肥精度が向上するという効果が得られる。
また請求項1記載の発明によれば、苗植付部(4)を所望の対地高さに昇降制御するとともに土壌面を滑走して整地するセンサフロート(55)を走行車体(2)に備え、温度センサ(73)をこのセンサフロート(55)に設ける構成としたことにより、圃場の凹凸に追従して苗植付部(4)が上下動しても温度センサ(73)は土壌中に位置し続けるので、温度センサ(73)の検出が途切れることを防止でき、施肥精度がいっそう向上するという効果が得られる。
【0016】
(削除)
【0017】
請求項記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて、施肥装置(5)の施肥ガ
イド(63)よりも走行車体(2)の前部に、圃場の耕盤深さを検出する耕盤深さセンサ
(74)を備え、この耕盤深さセンサ(74)の検出データに基づいて施肥装置(5)の
施肥量を変更する制御を制御装置(72)で行なう構成としたので、耕盤深さの変化に合
わせて適量に施肥量を変更することができるようになり、施肥精度がいっそう向上すると
いう効果が得られる。
【0018】
請求項記載の発明によれば、請求項1または2のいずれか1項に記載の効果に加えて、走行車体(2)は、GPS信号を受信して自身の位置データを取得するGPS受信機(75)と、このGPS受信機(75)が取得した位置データ毎に圃場内各所における肥料濃度および施肥量のデータを記憶するデータボックス(76)とをさらに備え、制御装置(7
2)は、走行車体(2)を所望の走行経路で走行するよう制御するとともに、データボッ
クス(76)に記憶されたデータに基づいて施肥装置(5)の施肥量を変更するようにし
たので、同じ圃場や条件の似た圃場で施肥作業を行う際の基準となるデータを取得できる
ようになり、次回以降の施肥精度が向上するという効果が得られる。
また、取得したデータボックス(76)内のデータに基づき最適な施肥作業を行うことが
できるとともに、制御装置(72)が走行車体(2)を所望の走行経路で走行するよう制
御するようになり、作業の無人化を図ることができるという効果が得られる。
【0019】
請求項記載の発明によれば、請求項1または2のいずれか1項に記載の効果に加えて、制御装置(72)は、肥料濃度センサ(71)の検出データと温度センサ(73)の検出データと耕盤深さセンサ(74)の検出データとを統合して施肥装置(5)の施肥量を変更するようにしたので、作業条件の変化に追従して施肥量を適量に変更させることができるようになり、施肥精度がいっそう向上するとともに、様々な作業条件に適応できるという効果が得られる。
【0020】
請求項記載の発明によれば、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、温度センサ(73)を回動支点(55p)の近傍に設けたことにより、センサフロート(55)が回動する際の温度センサ(73)の深さの変動が小さくなるので、温度センサ(73)の検知精度が低下することが防止される。
また、温度センサ(73)が形成した土壌の溝を、温度センサベース後端(73b)の屈曲部で塞ぐことができる。
そして、圃場面から上方に大幅に離間した位置に耕盤深さセンサ(74)が配置されることにより、耕盤深さセンサ(74)の感知部分に泥が付着することを防止できるので、耕盤深さが常に適切に感知されて施肥量が適正な値に補正され、施肥精度が向上する。
さらに、操作パネル(39)にGPS受信機(75)を設けたことにより、GPS受信機(75)が周辺部材の影響を受けにくくなるので、GPS受信機(75)の高感度化が図られる。
そして、GPS受信機(75)の作動ランプ(75m)を運転席(31)から目視可能な位置に配置したことにより、運転席(31)に座ったままGPS受信機(75)の作動が確認できるので、作業能率が向上する。
【0021】
請求項記載の発明によれば、下側ほど左右方向外側に偏位する上下方向のキングピン軸(84)と、このキングピン軸(84)から走行車輪(10)の車軸(80)へ伝動する一対のべベルギヤ(85)とを備え、べベルギヤ(85)は車軸(80)を設けた中心部分を凹状に構成し、該凹状の中心部分に上記カバー(82)を配置させるとともに、
固定側電極(83)へ導電する電線(86)を、機体正面視でキングピン軸(84)に沿って下側ほど左右方向外側に偏位させて配置するようにしたので、電線(86)が走行車輪(10)に接触しない構成とすることができるとともに、旋回時に電線(86)が移動する距離を小さくすることができるようになり、電線(86)が切れて肥料濃度センサ(71)が機能停止することを防止できるという効果が得られる。
【0022】
請求項記載の発明によれば、請求項6に記載の効果に加えて、走行車輪(10)の車軸(80)は、回転側電極(81)へ導電する電線(88)を通すための孔(89)または溝が形成されるようにしたので、電線(88)を車軸(80)の周りに配置できるようになり、コンパクトにカバー(82)を構成できるという効果が得られる。
【0023】
請求項記載の発明によれば、請求項6または7のいずれか1項に記載の効果に加えて、走行車輪(10)のスポーク部(90)に検出子(71a)を固定する固定具(95)を備え、この固定具(95)は、検出子(71a)をスポーク部(90)に固定した際に機体正面視で走行車輪(10)の車軸(80)側へ尖った断面形状に形成されるようにしたので、走行時に泥が跳ねてかかることがあっても、泥は固定具(95)の傾斜面95sに沿って下方に落下案内されるようになり、泥詰まりがおきにくく、作業終了後に泥を除去する作業が容易になるという効果が得られる。
また、圃場周辺の路上に泥を落としにくくなるので、この泥を路上から除去する作業が容
易かつ短時間で行えるようになり、作業者の労力が軽減されるという効果が得られる。
また請求項9記載の発明によれば、請求項6から8のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、内側フロントアクスルカバー(82i)と外側フロントアクスルカバー(82o)間の空間部分に回転側電極(81)を設け、前記べベルギヤ(85)の凹状の中心部分に前記内側フロントアクスルカバー(82i)を配置させたことで、回転側電極(81)を構成するスペースを大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の苗移植機の構成を示す側面図である。
図2】この発明の苗移植機の構成を示す上面図である。
図3】温度センサとサイドフレームとフロート調節アームとの関係を示す要部上面図である。
図4】センサフロートの回動支点近傍に設けた温度センサの構成を示す要部側面図である。
図5】温度センサを取付けるための温度センサ取付部の構成を示す斜視図である。
図6】耕盤深さセンサをセンターマスコットに設けた苗移植機の構成を示す要部側面図である。
図7】データボックスを予備苗載台の最上段に設けた苗移植機の構成を示す要部正面図である。
図8】一方の走行車輪周辺の構成を示す側面図である。
図9】一方の走行車輪周辺の構成を示す断面図である。
図10】フロントアクスルカバー内の構成を示す要部側面図である。
図11】検出子をスポーク部に固定するための固定具の構成を示す断面図である。
図12】検出子に形成した泥除け壁の構成を示す要部断面図である。
図13】機体正面視でV字形の断面形状を持つ固定具を備えた一方の走行車輪周辺の構成を示す側面図および断面図である。
図14】絶縁体のフロントアクスルカバーを備えた走行車輪周辺の構成を示す断面図である。
図15】絶縁体のフロントアクスルカバーを備えた走行車輪周辺の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、各図面では、
同一の構成または相当する構成については同一の符号を付す。
本願発明の苗移植機の構成を示す側面図および上面図である図1図2において、1は本
願発明の苗移植機、2は圃場を走行する走行車体、3は平行リンク構成の昇降リンク装置
、4は土壌に苗を植付ける苗植付部、5は圃場に肥料を施す施肥装置である。走行車体2
の後部には昇降リンク装置3を介して複数条植の苗植付部4が昇降可能に装着されており
、走行車体2の後部上側には施肥装置5が設けられている。
【0026】
また図1図2において、10,11はそれぞれ走行車体2の前部および後部に設けられ
た左右一対の走行車輪、12は走行車体2の前部に配置されたミッションケース、31は
走行車体2の運転席、32は各種操作機構を内蔵したフロントカバー、33は直進走行の
指標となるセンターマスコット、34はフロントカバー32の上方に設けられ走行車輪1
0を操向操作する操舵ハンドル、35は走行車体2のフロアステップ、38は走行車体2
の前部左右両側でかつ機体よりも側方に張り出して設けられた補給用の苗を載せる予備苗
載台、39は苗移植機1を操作するための操作パネルである。
【0027】
さらに図1図2において、51は苗を載せる苗載台、52は苗載台51から供給された
苗を土壌に植付ける苗植付装置、55,56はそれぞれ苗植付部4下部の中央および左右
両側に設けられダンパー機能により苗植付部4を所望の対地高さに昇降制御するとともに
機体の走行により土壌面を滑走して整地するセンサフロートおよびサイドフロート、60
は肥料を貯留する肥料ホッパ、61は肥料ホッパ60の肥料繰出量を増減変更する繰出量
変更手段、62は繰出量変更手段61が繰り出した肥料を導く施肥ホース、63は苗植付
装置52の植付け位置よりも走行車体2の前部に設けられ肥料が入る溝を土壌面に掘りつ
つ施肥ホース62から導かれた肥料を土壌に吐出する施肥ガイドである。
【0028】
さらに図1図2において、71は土壌の肥料濃度を検出する肥料濃度センサ、71aは
左右の走行車輪10に設けられて土壌中に突入しその通電抵抗または電気伝導度を検出す
る左右一対の検出子、72はフロントカバー32に内蔵され肥料濃度センサ71の検出デ
ータに基づいて繰出量変更手段61を制御し施肥装置5の施肥量を変更する制御装置、7
3は土壌の温度を検出する温度センサ、74は圃場の耕盤深さを検出する耕盤深さセンサ
、75は上空の複数個の衛星からGPS(※1)信号を受信して自身の位置データを取得
するGPS受信機、75mはGPS受信機75の作動ランプ、76はGPS受信機75が
取得した位置データ毎に圃場内各所における肥料濃度および施肥量のデータを記憶するデ
ータボックスである。
【0029】
(※1)GPS……Global Positioning System[英]の略。
全地球測位システム。
【0030】
次に動作について説明する。
走行車体2が圃場を走行すると、肥料ホッパ60内の肥料が繰出量変更手段61および施
肥ホース62を介して施肥ガイド63からセンサフロート55,サイドフロート56の前
側の土壌に吐出され、センサフロート55,サイドフロート56が滑走して整地した土壌
に対し苗植付装置52が苗載台51の苗を植付ける。この際に、肥料濃度センサ71が一
対の検出子71aにより左右の走行車輪10間の土壌の通電抵抗または電気伝導度を検出
して土壌の肥料濃度を検出する。
【0031】
ここで従来の苗移植機の場合は、土壌の温度を検出する手段を備えていないため、土壌の
温度による肥料濃度センサの検出データの補正を行うことができず、温度による土壌の通
電抵抗または電気伝導度の変化をそのまま認識してしまうため、同じ圃場であっても植付
作業を行う時の気象条件によって施肥量にバラつきが生じることがあり、適量の施肥がで
きないことがあった。
【0032】
これに対し苗移植機1は、温度センサ73により土壌の温度を検出し、制御装置72が、
温度センサ73の検出データに基づき肥料濃度センサ71の検出データを補正し、この補
正後の検出データに基づき繰出量変更手段61を制御して肥料繰出量を増減変更し施肥装
置5の施肥量を変更するようにしている。これにより、土壌の温度の違いによる通電抵抗
または電気伝導度の変化に合わせて施肥量を適量に変更できるようになり、簡易な測定方
法で施肥精度を向上させることができる。
【0033】
ここで検出データの補正は、通電抵抗または電気伝導度を補正しても良いし、通電抵抗ま
たは電気伝導度から求めた肥料濃度を補正しても良い。
【0034】
なお図1図2に示すように、温度センサ73をセンサフロート55に設ける構成とする
ことで、圃場の凹凸に追従して苗植付部4が上下動しても温度センサ73は土壌中に位置
し続けるようになり、一定の表土深さの温度検出が可能となって、温度センサ73の検出
が途切れることがなく、施肥精度がいっそう向上する。
【0035】
また図3の要部上面図に示すように、温度センサ73をサイドフレーム55fとフロート
調節アーム55a間に設ける構成とすることで、植付深さを変更しても温度センサ73は
サイドフレーム55fとフロート調節アーム55a間の空間部分をすり抜けて、コンパク
トに構成可能となる。
【0036】
さらに図4の要部側面図に示すように、温度センサ73をセンサフロート55の回動支点
55p近傍に設ける構成、つまり図4の温度センサ73と回動支点55p間の距離Lをで
きるだけ短くすることで、センサフロート55のピッチング変動によっても、温度センサ
73の深さ変動を抑制することが可能となり、温度センサ73の狂いが少なくなる。
【0037】
さらに図5の斜視図に示すように、温度センサ取付部73aの温度センサベース後端73
bを土壌側に曲げてL字形の折り返しを設ける構成とすることで、温度センサ73によっ
て付いた土壌の溝を温度センサベース後端73bで塞ぐことが可能となる。
【0038】
さらに図1に示すように、圃場の耕盤深さを検出する耕盤深さセンサ74を施肥ガイド6
3より走行車体2の前部に設け、制御装置72が耕盤深さセンサ74の検出データに基づ
き繰出量変更手段61を制御して施肥装置5の施肥量を変更するようにすることで、従来
の苗移植機では不可能だった耕盤深さの変化に合わせて適量に施肥量を変更することがで
きるので、施肥精度がいっそう向上させられるようになる。なお、本実施例では耕盤深さ
センサ74として超音波センサを使用することにより、泥などがセンサに付着しても計測
に影響のないようにしている。
【0039】
さらに図6の要部側面図に示すように、耕盤深さセンサ74をセンターマスコット33上
に上下方向にスライド可能に設ける構成としても良い。該構成により、圃場の深さや土質
などの作業条件に合わせて耕盤深さセンサ74をセンターマスコット33に沿って上下方
向に移動させ、取付位置を調節することができるので、耕盤深さセンサ74の感知部分に
泥が付着することが防止され、耕盤深さが常に適切に感知されて施肥量が適正な値に補正
されるため、施肥精度が向上する。
さらに、作業者が耕盤深さセンサ74の感知部分に付着した泥を除去する作業が必要なく
、作業能率が向上すると共に、メンテナンス性が向上する。
【0040】
さらに、図7の要部正面図に示すように、フロアステップ35より上方で、かつ、フロア
ステップ35より外側の位置となるように耕盤深さセンサ74を走行車体2に設ける構成
としても良い。このことにより、田植作業の邪魔になることなく、また、圃場面から上方
に大幅に離間した位置に耕盤深さセンサ74が配置されるため、耕盤深さセンサ74の感
知部分に泥が付着することが防止され、耕盤深さが常に適切に感知されて施肥量が適正な
値に補正されるため、施肥精度が向上する。
【0041】
さらに図1図2に示すように、GPS受信機75とデータボックス76とを走行車体2
に設け、GPS受信機75で取得した位置データ毎に圃場内各所における肥料濃度および
施肥量のデータをデータボックス76が記憶するとともに、制御装置72が、走行車体2
を所望の走行経路で走行するよう操舵ハンドル34などを制御しつつ、データボックス7
6に記憶されたデータに基づき繰出量変更手段61を制御して施肥装置5の施肥量を変更
するようにしても良い。
【0042】
このことにより、同じ圃場や環境の似た圃場で施肥作業を行う際の基準となるデータを取
得できるので、制御装置72に取得したデータを記憶させ、このデータに基づいて施肥装
置5の施肥量を自動的に変更させることにより、次回以降の施肥精度が向上する。
また、取得したデータボックス76内のデータに基づき最適な施肥作業を行うことができ
るとともに、制御装置72が走行車体2を所望の走行経路で走行するよう制御するように
なり、作業の無人化を図ることができる。
【0043】
さらに図1図2図7に示すように、予備苗載台38の最上部段にデータボックス76
を設ける構成としても良い。このことにより、畦からの苗補給性の向上を図れるようにな
り、加えて、この構成の際に図7に示すように、データボックス76のフタ部分76cは
外側に開く構成とすれば、機体上よりデータボックス76内の確認および調整を容易に行
うことが可能となる。
【0044】
さらに図1に示すように、GPS受信機75を機体中央部最上方の固定部分に、例えば操
作パネル39の上部などに設ける構成としても良い。このことにより、GPS受信機75
の周辺部材に邪魔されずGPS受信機75の高感度化が確保できるようになり、加えて、
この構成の際に図1に示すように、運転席31よりGPS受信機75の作動ランプ75m
が目視できる構成とすれば、運転席31に座ったままGPS受信機75の作動が確認でき
るようになる。
【0045】
さらに、肥料濃度センサ71の検出データと温度センサ73の検出データと耕盤深さセン
サ74の検出データとを統合し、この統合したデータに基づき、制御装置72が繰出量変
更手段61を制御して施肥装置5の施肥量を変更するようにしても良い。このことにより
、作業条件の変化に追従して施肥量を適量に変更させることができるようになり、施肥精
度がいっそう向上するとともに、様々な作業条件に適応可能となる。
【0046】
続いて、走行車輪10の周辺の構成について説明する。
図8図9はそれぞれ一方の走行車輪周辺の構成を示す側面図および断面図であり、図1
0はフロントアクスルカバー内の構成を示す要部側面図である。ただし図9の補助線Hよ
り下側の走行車輪およびフロントアクスルカバー部分では、それぞれ図8のS2−S2断
面図および図10のS3−S4−S5断面図を図示している。
【0047】
図8図10において、80は走行車輪10の車軸、81は車軸80と一体回転し検出子
71aに接続するスリップリングの回転側電極、82は車軸80を支持するフロントアク
スルカバー、82o,82iはそれぞれフロントアクスルカバー82の外側フロントアク
スルカバーおよび内側フロントアクスルカバー、83はフロントアクスルカバー82内に
設けられ回転側電極81と接触する接触子の固定側電極である。回転側電極81および固
定側電極83は、いずれか一方をリング状に構成し、他方を接触子とする。
【0048】
また図8図10において、84は下側ほど走行車体2の左右方向外側に偏位する上下方
向のキングピン軸、85はキングピン軸84から車軸80へ伝動する一対のベベルギヤ、
86は固定側電極83へ導電する電線、87は機体正面視でキングピン軸84に沿って下
側ほど走行車体2の左右方向外側に偏位させて配置された案内パイプ、88は回転側電極
81へ導電する電線、89は電線88を通すための孔、90は走行車輪10のスポーク部
、91はスポーク部90に検出子71aを固定する一対の固定具、92は走行車輪10の
ホイルキャップ、92wはホイルキャップ92に形成した泥除け壁、93はフロントアク
スルである。
【0049】
検出子71aは、その外周が走行車輪10の外形よりも小径の円形状に構成され、検出子
71aの円形の中心を車軸80とし、走行車輪10の左右幅内つまり走行車体2側にそれ
ぞれ配置されている。そして、車軸80と一体回転し検出子71aに接続する回転側電極
81と、車軸80を支持するフロントアクスルカバー82内に設けられ回転側電極81に
接触する固定側電極83とを設け、検出子71aで検出した通電抵抗または電気伝導度を
導電するようにしている。
【0050】
このことにより、圃場を走行する際に常に検出子71aの一部が土壌中に接触するように
なり、確実に土壌の肥料濃度を検出することができる。加えて、特許文献1の苗移植機で
は検出子の検出データを導電するための具体的構成が明らかにされていないという課題が
あるが、この発明の苗移植機1では、回転側電極81および固定側電極83から構成され
るスリップリングシステムを検出子71aに接続しており、走行車輪10とともに回転す
る検出子71aの検出データを確実に導電することができる。
【0051】
また、下側ほど走行車体2の左右方向外側に偏位する上下方向のキングピン軸84と、こ
のキングピン軸84から車軸80へ伝動する一対のべベルギヤ85とを備え、固定側電極
83へ導電する電線86を、機体正面視でキングピン軸84に沿って下側ほど走行車体2
の左右方向外側に偏位させて配置しているので、電線86が走行車輪10に接触しない構
成とすることができるとともに、旋回時に電線86が移動する距離を小さくすることがで
きるようになり、電線86が切れて肥料濃度センサ71が機能停止することを防止できる
【0052】
さらに、回転側電極81へ導電する電線88を通すための孔89を車軸80に形成してい
るので、電線88を車軸80の周りに配置できるようになり、コンパクトにフロントアク
スルカバー82を構成できる。孔89の代わりに、回転側電極81へ導電する電線88を
通すための溝を車軸80に形成しても良い。
【0053】
なお、検出子71aを走行車輪10に取付ける際にはスポーク部90を利用し、図9のS
1−S1断面図である図11に示すように、ボルト・ナット94などを用い一対の固定具
91にて検出子71aをスポーク部90に固定し、図8図9のように走行車輪10のリ
ム部を走行車輪10の全周にわたって覆う泥侵入防止用の泥除け壁92wをホイルキャッ
プ92の内側つまり中心C側に設ける構成とする。このことにより、走行車輪10のリム
部への泥詰まりが防止できる。同時に、一対の固定具91によりスポーク部90を利用し
て検出子71aを取付けられるので、標準機に対しても検出子71aの取付けが簡単にで
きる。
【0054】
泥除け壁92wの代わりに次のようにしても良い。つまり、走行車輪10のスポーク部9
0を利用して一対の固定具91にて検出子71aを固定し、検出子71aは、図12の要
部断面図に示すように、走行車輪10の中心C側に検出子71aの一部をL字形に折り曲
げ走行車輪10のリム部を全周にわたって覆う泥除け壁71wとする構成でも良い。この
ことにより、標準機に検出子71aの取付けが簡単にできるとともに、走行車輪10のリ
ム部への泥詰まりを防止できる。さらに、泥除け壁71wの内周面71w−iおよび外周
面71w−oを絶縁被覆し、泥が深くなっていて泥面MHより下の泥内に泥除け壁71w
が存在する場合と、泥が浅くなっていて泥面MLより上の泥外に泥除け壁71wが存在す
る場合とで、泥に接する電極面積が急激に変わらないようにし、測定値の変動を抑制して
いる。
【0055】
また図1で既に示したように、施肥装置5よりも走行車体2の前方のフロントアクスル部
分にて土壌の通電抵抗または電気伝導度を検出する検出子71aを設ける構成とすること
で、タイムラグを防止できる。
【0056】
さらに図7で既に示したように、土壌の通電抵抗または電気伝導度を検出する検出子71
aを走行車輪10の左右幅内に設ける構成とすることで、検出子71aを向い合わせにす
ることにより通電抵抗または電気伝導度の検出効果が向上する。
【0057】
さらに図8図9に示すように、土壌の通電抵抗または電気伝導度を検出する円形状の検
出子71aを走行車輪10の左右幅内で全周に設ける構成とすることで、圃場深さに関係
なく通電抵抗または電気伝導度の検出が可能となっている。
【0058】
さらに図9に示すように、走行車輪10の左右幅内に円形状のリング電極の検出子71a
を設け、検出子71aは走行車輪10の幅Wより内側つまり機体正面視で幅Wよりも中心
C側に設ける構成とすることで、走行中の抵抗力が軽減できる。
【0059】
さらに図8図9に示すように、走行車輪10の左右幅内に円形状のリング電極の検出子
71aを設け、検出子71aはスポーク部90に絶縁体の固定具91にて固定する構成と
することで、リング電極の検出子71aの取付が簡単でメンテナンス性が向上できる。
【0060】
さらに図9に示すように、内側フロントアクスルカバー82iと外側フロントアクスルカ
バー82o間の空間部分に回転側電極81を設ける構成とすることで、小スペースの空間
部分に回転側電極81を設けることが可能となる。
【0061】
さらに図9に示すように、固定側電極83からの電線86を案内する案内パイプ87をフ
ロントアクスル93と平行に上側に導く構成とすることで、走行車輪10と案内パイプ8
7間に空間SPが確保でき、泥詰まりが防止できる。
【0062】
さらに図9に示すように、回転側電極81からの電線88を孔89または溝により車軸8
0を斜めに貫通させ外側に導く構成とすることで、回転側電極81からの電線88の取出
しがコンパクトに構成できる。
【0063】
さらに図9に示すように、ベベルギヤ85の中心部分を凹状に構成し、内側フロントアク
スルカバー82iを内側方向にずらした構成とすることで、回転側電極81を構成する空
間スペースが大きく確保できる。
【0064】
さらに図13に示すように、検出子71aをスポーク部90に固定する一対の固定具95
を備え、この一対の固定具95は、検出子71aをスポーク部90に固定した際に、図1
3(b)の正面図のように、合わせ部を内側に三角状に形成、つまり機体正面視で走行車
輪10の車軸80側へ尖ったV字形の断面形状を持つように形成しても良い。
【0065】
このことにより、走行時に泥が跳ねてかかることがあっても、泥は固定具95の傾斜面9
5sに沿って下方に落下案内されるようになり、泥詰まりがおきにくく、作業終了後に泥
を除去する作業が容易になる。また、圃場周辺の路上に泥を落としにくくなるので、この
泥を路上から除去する作業が容易かつ短時間で行えるようになり、作業者の労力が軽減さ
れる。
【0066】
さらに図14の断面図に示すように、フロントアクスル回動部96側に絶縁体のフロント
アクスルカバー97を設ける構成としても良い。このことにより、検出子71aからの電
流がフロントアクスルへ流れるのを防止でき、誤作動を防止できる。
【0067】
さらに図15の側面図に示すように、ミッションケース12下側より露出しているフロン
トアクスル部分に絶縁体のフロントアクスルカバー98で覆う構成としても良い。このこ
とにより、検出子71aからの電流がフロントアクスルへ流れるのを防止でき、誤作動を
防止できる。
【符号の説明】
【0068】
1 苗移植機、2 走行車体、3 昇降リンク装置、4 苗植付部、5 施肥装置、10
走行車輪、11 走行車輪、12 ミッションケース、31 運転席、32 フロント
カバー、33 センターマスコット、34 操舵ハンドル、35 フロアステップ、38
予備苗載台、39 操作パネル、51 苗載台、52 苗植付装置、55 センサフロ
ート、55a フロート調節アーム、55f サイドフレーム、55p 回動支点、56
サイドフロート、60 肥料ホッパ、61 繰出量変更手段、62 施肥ホース、63
施肥ガイド、71 肥料濃度センサ、71a 検出子、71w 泥除け壁、71w−i
内周面、71w−o 外周面、72 制御装置、73 温度センサ、73a 温度セン
サ取付部、73b 温度センサベース後端、74 耕盤深さセンサ、75 GPS受信機
、75m 作動ランプ、76 データボックス、76c フタ部分、80 車軸、81
回転側電極、82 フロントアクスルカバー、82o 外側フロントアクスルカバー、8
2i 内側フロントアクスルカバー、83 固定側電極、84 キングピン軸、85 ベ
ベルギヤ、86 電線、87 案内パイプ、88 電線、89 孔、90 スポーク部、
91 固定具、92 ホイルキャップ、92w 泥除け壁、93 フロントアクスル、9
4 ボルト・ナット、95 固定具、95s 傾斜面、96 フロントアクスル回動部、
97,98 フロントアクスルカバー。


















図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15