(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5776045
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】有機性廃棄物処理における発火発煙防止方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/00 20060101AFI20150820BHJP
C02F 11/12 20060101ALI20150820BHJP
C02F 11/02 20060101ALI20150820BHJP
F26B 21/04 20060101ALI20150820BHJP
F26B 23/02 20060101ALI20150820BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
B09B3/00 303Z
B09B3/00 DZAB
C02F11/12 A
C02F11/02
F26B21/04 A
F26B23/02 C
F26B25/00 C
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-185144(P2014-185144)
(22)【出願日】2014年9月11日
【審査請求日】2014年10月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511007912
【氏名又は名称】環清技研エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】西田 茂雄
【審査官】
金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−075722(JP,A)
【文献】
特開2005−147532(JP,A)
【文献】
特開平10−001382(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0076839(KR,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1030305(KR,B1)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0117691(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
C02F 11/02
C02F 11/12
F26B 21/04
F26B 23/02
F26B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を用いた発酵方法によって行われる有機性廃棄物の処理において、
200℃以下の加熱空気を上方に設けた給気口から槽内の空間部分へ供給することで有機性廃棄物を上方から加熱し、他の上方に設けた排出口から排出させて、撹拌状態にある有機性廃棄物の加熱乾燥を行う工程と、
槽内の加熱空気温度が60〜80℃のとき、該加熱空気の絶対湿度を80g/kgDA以上に保持する工程と、
を有することを特徴とする、微生物を用いた発酵方法によって行われる有機性廃棄物の発火並びに発煙の防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品製造残渣(焼酎粕、ビール粕、おから等)、生ごみ、汚泥、家畜糞尿その他の有機性廃棄物を処理する際の発火発煙防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品製造残渣(焼酎粕、ビール粕、おから等)、生ごみ、汚泥、家畜糞尿などの高含水性の有機性廃棄物は、埋め立てや焼却処分されていたが、近年では、熱風等による物理的な方法や微生物による発酵法などによって乾燥等の処理がなされ、燃料、飼料や肥料などに再利用されている。
【0003】
しかしながら、有機性廃棄物を処理する際に、局所的な過熱があると有機性廃棄物の品温が上昇して有機性廃棄物が発煙や発火するといった問題がある。多くの有機物の発火温度は200℃以上であり、乾燥や発酵での品温は水分蒸発と撹拌によりそれより低い温度で推移するため発火しない。しかし周囲の温度が発火点よりはるかに低いにも関わらず、酸化発熱等による部分的な温度上昇で発煙や発火に至る低温発火の現象が知られている。そのことにより撹拌の効果が及ばないデッドスペースや槽壁等に付着した有機性廃棄物は、温度上昇が継続することがあり発煙や発火に至ることがある。特に、生ごみでは、肉、魚や揚げ物などに酸化しやすい不飽和脂肪酸が多く含まれているためにその危険性がより高く、実際に生ごみ処理機で処理中の生ごみが発火するといった事故が発生している。
【0004】
このような背景から、有機性廃棄物を処理する際の有機性廃棄物の発火を防止する方法として、特開平9−138069号公報には、都市ごみ乾燥設備において定常運転時は低酸素濃度にすることで発火を防ぎ、運転停止時等の不安定時は乾燥機から排出される熱風を循環させることで乾燥機内の酸素濃度の急激な上昇を抑え、発火を防止できることが開示されている(特許文献1)。また、特開2010−69424号公報には、生ごみ処理機において加熱器表面温度を180℃以下とし、回流する熱風の温度との差を100℃以下として堆積した乾燥ごみの炭化や付着した油成分の発煙を防止できることが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−138069
【特許文献2】特開2010−69424
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発酵方式や乾燥方式の有機性廃棄物処理機において、撹拌状態であれば部分的な過熱や酸化等による温度上昇があっても周囲の温度にまで減温されるので発火には至らない。しかし、撹拌機のデッドスペースや、壁面等に付着した有機物は撹拌されないので温度上昇が継続して発煙や発火の恐れがある。
【0007】
有機性廃棄物を処理する際に有機性廃棄物処理槽の酸素濃度を低下させることで有機性廃棄物の発火を防止する方法では、好気性微生物を用いた発酵法による有機性廃棄物の処理を行う場合に、有機性廃棄物処理槽に十分な酸素が供給されないために好気性微生物による発酵を阻害してしまうという問題がある。
【0008】
また、加熱器表面温度を180℃以下として、回流する熱風との温度差を100℃以下にする方法では、酸化発熱等による発煙発火防止には不十分で付着物の発煙発火の危険性が完全には解消していない。
【0009】
そこで、本発明は、発酵方式や乾燥方式の有機性廃棄物の処理において、有機性廃棄物の発火および発火の前兆である発煙を防止することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、有機性廃棄物を処理する際の加温空気の流入方法と処理湿度に着目し、有機性廃棄物を加熱乾燥処理する際に、有機性廃棄物処理槽内の空気温度が60〜80℃のとき、該加熱空気の絶対湿度をある一定以上に保持することで、これまで発火しやすかった有機性廃棄物が発火し難くなるとの知見を得た。
【0011】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、発酵方式又は乾燥方式の有機性廃棄物の処理において、200℃以下の加熱空気を槽内物の上方から流入させ、他の上方に設けた排出口から排出させて、撹拌状態にある有機性廃棄物の加熱乾燥を行う工程と、槽内の加熱空気温度が60〜80℃のとき、該加熱空気の絶対湿度を80g/kgDA以上に保持する工程を有することを特徴とする、有機性廃棄物の発火並びに発煙の防止方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有機性廃棄物を加熱乾燥処理する際に有機性廃棄物の発火並びに発煙を防止することでき、それらによる事故を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態における有機性廃棄物処理槽の一例を示す概略図である。
【
図2】本実施形態における他の一例示す概略図である。
【
図3】従来公知の下部通気による有機性廃棄物処理における有機性廃棄物処理槽を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態における有機性廃棄物の発火並びに発煙の防止方法について説明する。本実施形態における有機性廃棄物処理槽の一例を
図1に示す。なお、
図1は、有機性廃棄物処理槽を正面から見た概略図である。
【0015】
まず初めに、本実施形態に使用する有機性廃棄物処理槽の構成について説明する。有機性廃棄物処理槽1は、給気口3及び排気口5が有機性廃棄物処理槽1の側壁上部の有機性廃棄物2に塞がれない箇所で相対する端部もしくはその近くに形成される。給気口3は、排気の一部を循環する循環経路24ならびに外部からの空気を有機性廃棄物処理槽1に供給するための給気経路20に接続される。排気口5は、有機性廃棄物処理槽1から排出された排気を外部に放出するための排気経路22が接続される。排気経路22には風量調節弁14と図示していない排気ファンを備える。
【0016】
有機性廃棄物処理槽1は、ほぼ密閉可能な構造になっており、給気口3と排気口5が設置される。給気口3及び排気口5は、有機性廃棄物処理槽1の側壁上部や天井部など、有機性廃棄物処理槽1に投入した有機性廃棄物2によって塞がれない箇所に設置され、給気経路20が接続された給気口3から有機性廃棄物処理槽1の空間部分に200℃以下に加熱された空気が給気され、撹拌機7によって撹拌状態にある有機性廃棄物2から蒸発した水蒸気を含む排気が該排気口5に接続された排気経路22から排出される。
【0017】
また、有機性廃棄物処理槽1は、有機性廃棄物処理槽1から排出される排気の一部を有機性廃棄物処理槽1へ循環することができる循環経路24を有する。循環経路24は排気経路22の途中に接続され、循環経路24に有機性廃棄物処理槽1から排出される排気の一部が循環空気として分配され、循環空気が循環経路24に接続された給気経路20に導入されることで循環空気と外部から通気される空気とが混合された後、通気口3から有機性廃棄物処理槽1内に通気循環される。
【0018】
また、循環経路24には、例えば、加熱機10、湿度センサー12、風量調整弁14や送風ファン等を設置することができる。
【0019】
次に、本実施形態の有機性廃棄物の発火並びに発煙の防止方法について説明する。本実施形態において、給気口3と排気口5が設置された有機性廃棄物処理槽1に有機性廃棄物2を投入し、給気口3から空気を通気するとともに排気口5から排出される排気の一部を、有機性廃棄物処理槽1内の空間部分に循環させる。
【0020】
このとき、加熱機10で槽内給気温度を200℃以下に加熱して有機性廃棄物処理槽1の槽内の空気(以下、循環空気と区別するため、「槽内空気」ということがある)の温度を60〜80℃に維持し、撹拌状態にある有機性廃棄物を加熱し、風量調整弁14を調整することで槽内空気の絶対湿度を80g/kgDA以上に保持しながら有機性廃棄物の発酵ないし乾燥処理を行う。これにより、有機性廃棄物処理槽1内で有機性廃棄物2が発火や発煙することなく有機性廃棄物2の加熱乾燥処理を行うことができる。
【0021】
有機性廃棄物2の上方からの加熱とすることで、撹拌の効果が及ばないデッドスペースでは表面部のみが加熱されるが、内部は熱伝導率が低い有機性廃棄物に遮断されるので温度上昇は少ない。
【0022】
図3に示すように、槽内物の下方から上方に加温空気を通気させる従来の有機性廃棄物処理槽50は、撹拌の効果が及ばないデッドスペースにおいて通気の圧力により加温空気が侵入して、局所的な流動による摩擦熱の発生や酸化等他の要因による熱の蓄積により徐々に異常な高温になることがある。
【0023】
本実施形態において、有機性廃棄物処理槽1内の空気温度は60〜80℃としている。絶対湿度80g/kgDAが容易に保持でき、好気性高温菌の活性が高い温度範囲である。これより高い槽内空気の温度では好気性高温菌の活性が低下したり、有機性廃棄物2の発火や発煙の危険性が増す。
【0024】
有機性廃棄物処理槽1内の絶対湿度を80g/kgDA以上に保持するには、槽内から加熱により蒸発した水蒸気を排出する排気経路22に設けた風量調整弁14を調節することで行う。すなわち、排気側の風量調節弁14を全閉にした場合、槽内の湿度は飽和になるが、これでは乾燥しないため、風量調節弁14を徐々に開けて排気空気量(=外部からの流入空気量)を増やすことにより、蒸発水分と空気量に応じた湿度を調整することができる。例えば、風量調節弁14が開度30%のとき、湿度は90g/kgDAに制御することができ、風量調節弁14が開度50%のとき、湿度は60g/kgDAとなる。このように排気側の風量調整弁14を調節することで、有機性廃棄物処理槽1内の絶対湿度を80g/kgDA以上に保持する。
【0025】
必要な熱量を供給し、かつ槽内へ流入する空気の温度を200℃以下にするには有機性廃棄物処理槽1から排出される水蒸気を含む排気の一部を循環経路24に分配する量(循環空気量)を調整することによって行う。
【0026】
本実施形態では循環経路24に加熱機10を設けており、加熱機10に流入する循環空気量が多いほど、また湿度が高いほど、加熱機前後での温度差を小さくできる。つまり必要な熱量を供給するのに加熱機出口の温度を低くできるので発火や発煙の危険性が低くなる。
【0027】
循環空気量が少ないとき加熱機10の出口温度を高くしなければならないが、循環空気量を増やすことで温度200℃以下で必要な熱量を有機性廃棄物処理槽に供給することができる。
【0028】
低温発火の原因は蓄熱により徐々に温度が上昇し発火温度に至るとされている。このとき発酵槽内有機性廃棄物の雰囲気湿度が高ければ乾燥空気より湿り空気の熱容量が大きいことから温度上昇速度が低下し、実際的に発煙や発火にまで至らないものと考えられる。
【0029】
循環空気を加熱するための加熱機10としては、例えば、電熱ヒータ、バーナヒータ、熱交換器による加熱、蒸気や温水ジャケットの併用方式などを用いることができる。
【0030】
本実施形態における有機性廃棄物処理槽の他の一例を
図2に示す。循環経路24は有機性廃棄物処理槽1から図示していない送風ファンを経由して通気経路20に接続している。加熱機10がバーナーヒータのときはこのような形態が望ましい。バーナーヒータ出口の高温空気を循環経路24からの循環空気で希釈し200℃以下にすることができる。
【0031】
さらに、有機性廃棄物処理槽1は、有機性廃棄物2を撹拌するための撹拌機7を有する。撹拌機7によって有機性廃棄物2を撹拌することによって有機性廃棄物2の表面が更新されるため、有機性廃棄物2中の水分の蒸発を促進することができる。撹拌機7としては、例えば、パドル式、スクリュー式、リボンスクリュー式、スクープ式、ロータリー式、キルン式などを採用することができる。
【0032】
本実施形態における有機性廃棄物2としては、例えば、食品残渣、焼酎粕、ビール粕、オカラ、ジュース搾りかす、醤油粕などの食品系廃棄物;廃棄農産物、廃糖蜜などの農産廃棄物;家畜の敷き藁、動物の糞尿、動物の屍体などの畜産廃棄物;魚の内蔵、頭部、骨、鰭、斃死魚、エビカニなど甲殻類の殻などの水産廃棄物、排水処理汚泥、し尿等を挙げることができる。
【0033】
本実施形態において有機性廃棄物2を乾燥処理する方法として、従来から知られている物理的な乾燥方法(乾燥方式)、微生物を用いた発酵方法(好気性発酵方式)やこれらを併せた発酵乾燥方式によって行うことができる。
【0034】
前記物理的な乾燥方法としては、例えば、バンド乾燥、キルン乾燥、などを挙げることができる。
【0035】
前記微生物を用いた発酵方法において使用される微生物としては、有機性廃棄物2を乾燥処理できれば、特に制限されないが、効率的な有機性廃棄物2の乾燥処理の観点から、好気性高温菌を用いることが好ましく、特に、バチルス(Bacillus)属細菌、ジオバチルス(Geobacillus)属細菌、サーマス(Thermus)属細菌、アクチノマイセテス(Actinomycetes)属放線菌からなる群から選択された少なくとも1種類を含むことがさらに好ましい。また、これらの好気性高温菌は、自然界、例えばコンポストや土壌に存在しているものを使用することができる。
【0036】
前記微生物は、有機性廃棄物2にスターターとして添加することができ、有機性廃棄物2を有機性廃棄物処理槽1に投入する前に添加しても、有機性廃棄物処理槽1に投入した後に添加してもよい。
【実施例】
【0037】
図1に示した有機性廃棄物処理槽1内に有機性廃棄物2を投入した後、おからを原料として廃食用油を3〜7%w/w添加した。これをリボンスクリュー式撹拌機7を用いて撹拌しながら有機性廃棄物処理槽1から排出される排気の一部を循環させ、加熱機10によって加温した後、有機性廃棄物処理槽1の空間部分へ100℃の温風を供給した。有機性廃棄物処理槽1内の温度を60℃、絶対湿度80g/kgDA(相対湿度約60%)として有機性廃棄物2の発酵乾燥処理を行ったところ、1年以上安定した処理が継続して発火や発煙はなかった。
【0038】
図1に示した有機性廃棄物処理槽1内に有機性廃棄物2を投入した後、おからを原料として廃食用油を5%w/w添加した。これをリボンスクリュー式撹拌機7を用いて撹拌しながら有機性廃棄物処理槽1から排出される排気の一部を循環させ、加熱機10によって加温した後、有機性廃棄物処理槽1の空間部分へ200℃の温風を供給した。有機性廃棄物処理槽1内の温度を80℃、絶対湿度80g/kgDA(相対湿度約25%)として該有機性廃棄物2の発酵乾燥処理を行ったところ、3日間以上安定した処理が継続して発火や発煙はなかった。
【0039】
一方、
図3に示した有機性廃棄物処理槽1内におからを原料として廃食用油を5%w/w添加した有機性廃棄物2を投入し、リボンスクリュー式撹拌機7を用いて撹拌しながら有機性廃棄物処理槽1の下部から加熱機10で100℃に加温した外気を通気し、有機性廃棄物処理槽1内の温度を60℃、絶対湿度50g/kgDA(相対湿度約40%)として有機性廃棄物2の発酵乾燥処理を行ったところ、原料投入後9時間後に撹拌のデッドスペース部で発火した。
【符号の説明】
【0040】
1…有機性廃棄物処理槽
2…有機性廃棄物
3…給気口
5…排気口
7…撹拌機
10…加熱機
12…湿度センサー
14…風量調節弁
20…給気経路
22…排気経路
24…循環経路
50…従来の有機性廃棄物処理槽
【要約】
【課題】発酵方式や乾燥方式の有機性廃棄物の処理において、有機性廃棄物の発火並びに発煙を防止することができる有機性廃棄物の処理技術を提供することを目的とする。
【解決手段】有機性廃棄物の乾燥処理において、200℃以下の加熱空気を槽内物の上方から流入させ、他の上方に設けた排出口から排出させて、撹拌状態にある有機性廃棄物の加熱を行い、槽内の空気温度が60〜80℃のとき、同空気の絶対湿度を80g/kgDA以上に保持することで解決する。
【選択図】
図1