(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776086
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】損なわれた神経伝達に関係する障害を治療するための新規作用薬
(51)【国際特許分類】
A61K 36/53 20060101AFI20150820BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20150820BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20150820BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20150820BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20150820BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20150820BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20150820BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20150820BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20150820BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20150820BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20150820BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20150820BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20150820BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20150820BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20150820BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
A61K36/53
A61K31/05
A61P1/00
A61P1/08
A61P3/00
A61P3/04
A61P17/04
A61P25/00
A61P25/02 101
A61P25/06
A61P25/14
A61P25/20
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/28
A61P29/00
【請求項の数】8
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2009-523201(P2009-523201)
(86)(22)【出願日】2007年8月9日
(65)【公表番号】特表2010-500306(P2010-500306A)
(43)【公表日】2010年1月7日
(86)【国際出願番号】EP2007007053
(87)【国際公開番号】WO2008017484
(87)【国際公開日】20080214
【審査請求日】2010年4月22日
【審判番号】不服2013-22965(P2013-22965/J1)
【審判請求日】2013年11月25日
(31)【優先権主張番号】06016659.2
(32)【優先日】2006年8月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 行一
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(74)【代理人】
【識別番号】100152191
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 正人
(72)【発明者】
【氏名】フォウラー, アン
(72)【発明者】
【氏名】ゴラルチク, レギーナ
(72)【発明者】
【氏名】キルパート, クラウス
(72)【発明者】
【氏名】シュエラー, ゴエデ
【合議体】
【審判長】
蔵野 雅昭
【審判官】
辰己 雅夫
【審判官】
渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第01/45780(WO,A1)
【文献】
特開2000−302658(JP,A)
【文献】
特開平09−227399(JP,A)
【文献】
特開2002−241784(JP,A)
【文献】
特開2002−360200(JP,A)
【文献】
特開平10−070965(JP,A)
【文献】
Phytochemistry, 44[5] (1997) p.883−886
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K36/00-36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバクロールまたはチモキノールを含む、オリガヌム(Origanum)属の植物から得られるオレガノ抽出物の、経口投与用医薬組成物の製造における使用であって、
前記医薬組成物は、
注意および集中力、記憶、想起能力、学習能力、言語処理、問題解決、知的機能の維持または改善のために、
短期記憶改善のために、
精神的敏捷性増大のために、
集中能力および精神的鋭敏さ増大のために、
精神的覚醒増強のために、
精神疲労低減のために、
良好な認知性のサポートのために、
安定した認知機能の維持のために、
空腹感および満腹の制御ならびに運動能の制御のために、または、
概日リズムの乱れを予防または正常化するために使用され、
抗うつ薬、気分/活力改善剤、ストレス緩和剤、病状改善剤、不安低下剤、緊張低下剤、悲哀低下剤、不幸/不満低下剤、過敏低下剤、不快低下剤、強迫行動低下剤、弛緩薬、睡眠改善剤および/または不眠症軽減薬として使用される、使用。
【請求項2】
獣医学用途である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記オレガノ抽出物の1日量は、ヒトでは毎日体重1kgあたり0.001mgから体重1kgあたり100mgの範囲内であり、ヒトを除く動物では、毎日体重1kgあたり0.001mgから体重1kgあたり100mgの範囲内である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記オレガノ抽出物がハナハッカ(Origanum vulgare)から得られる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
カルバクロールまたはチモキノールを含む、オリガヌム(Origanum)属の植物から得られるオレガノ抽出物を含む経口投与用医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、
注意および集中力、記憶、想起能力、学習能力、言語処理、問題解決、知的機能の維持または改善のために、
短期記憶改善のために、
精神的敏捷性増大のために、
集中能力および精神的鋭敏さ増大のために、
精神的覚醒増強のために、
精神疲労低減のために、
良好な認知性のサポートのために、
安定した認知機能の維持のために、
空腹感および満腹の制御ならびに運動能の制御のために、または、
概日リズムの乱れを予防または正常化するために使用され、
抗うつ薬、気分/活力改善剤、ストレス緩和剤、病状改善剤、不安低下剤、緊張低下剤、悲哀低下剤、不幸/不満低下剤、過敏低下剤、不快低下剤、強迫行動低下剤、弛緩薬、睡眠改善剤および/または不眠症軽減薬として使用される、医薬組成物。
【請求項6】
獣医学用途である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記オレガノ抽出物の1日量は、ヒトでは毎日体重1kgあたり0.001mgから体重1kgあたり100mgの範囲内であり、ヒトを除く動物では、毎日体重1kgあたり0.001mgから体重1kgあたり100mgの範囲内である、請求項5または6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記オレガノ抽出物がハナハッカ(Origanum vulgare)から得られる、請求項5〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、損なわれた、すなわち低下した神経伝達に関係する障害を治療するための作用薬としてのオレガノ抽出物および/またはオレガノ抽出物の揮発性成分の使用に関する。さらに本発明は、このようなオレガノ抽出物および/またはそれらの揮発性成分を含有する、食品および医薬組成物にも関する。
【0002】
本発明に従って、このような抽出物は、セロトニン再取り込み阻害剤、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、およびドーパミン再取り込み阻害剤であることが分かった。したがってそれらは、二重取り込み阻害剤および三重取り込み阻害剤である医薬品の作用を模倣できる。したがってこれらの抽出物およびそれらの揮発物は、うつ病、および不安をはじめとする気分障害を治療するのに特に効果的であり、ヒトにおいてバイオリズムを調整するのに使用できる。それらはまた、多数の獣医学用途も有して、ストレスに起因する行動上のまたは生理学的な影響を予防または治療するのに使用できる。
【0003】
国際公開第95/05838号パンフレットは、(組織の形態(morrphology)、構造および量などの)末梢神経系における有害な変化と戦うためのクローブ、ナツメグ、コショウ、タイム、パプリカ、オレガノ、マヨナラ、バジル、およびフレンチタラゴンまたはその構成物(例えばタイム油からのリナロール、ツジョン、カンフェン、カルバクロール、およびチモール)から誘導できる植物揮発性油の使用を開示する。脳内の生化学的過程に影響を及ぼすためのこれらの物質の使用の教示はない。
【0004】
国際公開第01/45780号パンフレットは、場合により芳香療法と組み合わされた光療法の使用を開示し、オリガヌムは、神経過敏と合併する睡眠障害を治療することが可能な成分の1つである。したがってこの組成物は、嗅覚手段を通じて投与される。
【0005】
[本発明の分野]
本発明は、損なわれたまたは低下した神経伝達に関係する障害を治療および予防するための組成物を製造するためのオレガノ抽出物および/またはそれらの揮発性成分の使用に関する。したがって一態様では、本発明は、損なわれたまたは低下した神経伝達に関係する障害を治療するための、少なくとも1つのオレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分の1つを含んでなる、食品または医薬、または獣医学組成物に関する。
【0006】
本発明のオレガノ抽出物およびそれらの揮発性成分は、セロトニン再取り込み阻害剤として作用し、したがって神経伝達にセロトニンが利用できる時間を延長することが意外にも分かった。これは気分調和およびストレス解消効果をもたらす。さらに本発明のオレガノ抽出物およびそれらの揮発性成分はまた、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、ドーパミン再取り込み阻害剤、および/またはセロトニン、ノルアドレナリンおよび/またはドーパミンの二重再取り込み阻害剤、またはノルアドレナリン、セロトニン、およびドーパミンの三重再取り込み阻害剤としても効果的である。したがってそれらは、セロトニンまたはノルアドレナリン神経伝達またはその組み合わせによって媒介されるうつ病、不安、またはその組み合わせを治療するのに特に有用である。それらはまた、従来から取り込み阻害剤である医薬品によって治療されている、うつ病、またはその他の病状と関連付けられている泌尿生殖器疾患(緊張性および急迫性尿失禁の治療のための)、および神経疼痛などのその他の疾患の治療においても有用かもしれない。
【0007】
主要神経伝達物質は、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、グルタメート、γ−アミノ−酪酸である。気分関連障害に特に関連性がある神経伝達物質は、セロトニン、ノルアドレナリン、およびドーパミンである。神経伝達の増大は、シナプス前神経末端内への再取り込み阻害を通じて、またはモノアミンオキシダーゼAおよびBなどの分解酵素の阻害によって神経伝達物質異化作用を妨げることで、シナプス間隙中の神経伝達物質濃度が増大し、それが増大されまたは延長された神経伝達のために利用できるようになることで達成される。
【0008】
[定義]
「損なわれた神経伝達」および「低下した神経伝達」という用語は、本明細書全体を通じて同義的に使用される。それらは、当業者によく知られているそれらの意味に従って本明細書で使用され、神経伝達物質の生合成、プロセシング、保存、放出、再取り込み、および受容体結合のレベルで起きるかもしれない、神経伝達の調節解除状態に関連する。損なわれた神経伝達、特に神経伝達低下は、ヒトをはじめとする動物で、例えば様々なタイプのうつ病の1つなどの、行動、情動、気分、および思考過程の撹乱として、それ自体が発現するかもしれない。
【0009】
「オレガノ抽出物および/またはその揮発性成分」という用語は、抽出可能化合物の完全な混合物だけでなく、単独で採取された植物の揮発性成分のみ、または互いのあらゆる組み合わせもまた含んでなることを意味する。本発明に従ったオレガノ抽出物の最も重要な揮発性成分は、カルバクロール、チモール、チモキノン、およびチモキノールである。オレガノ抽出物のさらなる揮発性成分の例は、4−tert−ブチルフェノール、2,3−ジイソプロピル−5−メチルフェノール、2,4−ジイソプロピル−3−メチルフェノール、2,4−ジイソプロピル(diisoprpyl)−5−メチルフェノール、2,5−ジイソプロピル−3−メチルフェノール、2,5−ジイソプロピル−4−メチルフェノール、2,6−ジイソプロピル−3−メチルフェノール、およびp−メント−3−エン−1−オールである。
【0010】
茶は痕跡量の揮発物しか含有しないので、本発明の「オレガノ抽出物」という表現は、オレガノ種の生のまたは乾燥させた葉またはあらゆるその他の部分からできた茶または熱水抽出物を包含しない。
【0011】
しかし水蒸気蒸留によって得られた抽出物は、本発明の範囲内である。このような抽出物は、一般に容易に分解されない揮発性化合物を含有する。チモキノンおよびその他の揮発物は水蒸気蒸留中により迅速に分解するので、蒸留された油はそれらをほとんど含有しない。しかしそれらは多量のカルバクロールを含有できる。それらの安定性のために、SFCO2抽出物が特に好ましい(未開封容器内で5年まで)。
【0012】
「動物」は、ヒトを含み、哺乳類、魚、および鳥を包含する。好ましいのはヒト、ペットまたはコンパニオンアニマル、家畜、および毛皮産業で使用される動物である。
【0013】
「家畜」は、サケおよびマスなどの魚、エビなどの水産養殖動物、ブタ、ウマ、反芻動物(畜牛、ヒツジ、ヤギ)、および家禽(ガチョウ、ニワトリ、ブロイラー、産卵鶏、ウズラ、アヒル、およびシチメンチョウなど)を含む。好ましいのは、家禽、畜牛、ヒツジ、ヤギ、およびブタである。
【0014】
「ペット」または「コンパニオンアニマル」は、イヌ、ネコ、鳥、観賞魚、モルモット、(ジャック)ウサギ、ノウサギ、およびフェレットを含む。イヌおよびネコが好ましい。
【0015】
「毛皮産業で使用される動物」は、ミンク、キツネ、およびノウサギを含む。
【0016】
「食品組成物」としては、(強化)食品/飼料および飲料などのあらゆるタイプの栄養製品が挙げられ、臨床栄養製品および栄養補助食品もまた挙げられる。
【0017】
「強化」とは、少なくともオレガノ抽出物またはその1つ以上の揮発性成分が、食品/飼料または飲料の製造中に添加されることを意味する。
【0018】
ヒトでは、損なわれたまたは低下した神経伝達に関係する障害、したがって本発明の薬剤で治療または予防される障害として、うつ病、不安、過敏、不幸/不満、悲哀、不快、強迫性行動、不眠症、およびバイオリズム異常(乱れた概日リズム)が挙げられる。
【0019】
したがって本発明の薬剤は、気分調和作用薬、気分/活力改善剤、ストレス緩和剤、不安低下剤、緊張低下剤、弛緩薬、睡眠改善剤、およびバイオリズム正常化剤として特徴づけることができる。
【0020】
神経伝達物質調節因子である多数の医薬組成物は、様々な気分関連障害において有効であることが判明している。本発明の抽出物は、同一または同様の生化学的経路を使用して効き目があると分かっているので、次にそれらは取り込み阻害剤として、同様の病状のために有用であると結論できる。
【0021】
したがって脳内で神経伝達物質レベルを増大させ、ひいてはそれらの伝達を増強させる化合物は、抗うつ特性ならびに多様なその他の精神障害に対する有益な効果を示すことができる(「神経伝達物質、薬物、および脳機能(Neurotransmitters,Drugs and Brain function)」R.A.ウェブスター(Webster)(編)、John Wiley&Sons、New York、2001年、187〜211頁、289〜452頁、477〜498頁)。
【0022】
損なわれた神経伝達に関係する障害を治療するための薬剤は、抗うつ薬、気分改善剤、ストレス緩和剤、病状改善剤、不安低下剤、および強迫行動低下剤を包含する。それらは全て、特に中枢神経系において生理学的神経伝達を改善、増強、サポートし、したがって精神機能障害を軽減する。
【0023】
イミプラミン、アミトリプチリン、およびクロミプラミンなどの三環系抗うつ薬化合物(TCA)は、セロトニン、ノルアドレナリンおよび/またはドーパミンの再取り込みを阻害する。それらは利用できる最も効果的な抗うつ薬と広く見なされるが、それらは例えばコリン作動性受容体などのいくつかの脳受容体とさらに反応するので、いくつかの不都合を有する。最も重要なことには、TCAを過量に摂取すると急性心臓毒性を示すことが多いために危険である。
【0024】
別のクラスの抗うつ薬は、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、およびフルボキサミンをはじめとするいわゆるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)であり、それらはセロトニン再取り込みによってセロトニン作動性神経伝達を終結する高親和性塩化ナトリウム依存神経伝達物質輸送体であるセロトニン輸送体(SERT)をブロックする。それらはうつ病および不安症の治療において効果的であることが判明しており、通常、TCAよりも耐容性がより高い。これらの治療薬は典型的に低投薬量で開始され、それらが治療的なレベルに達するまで増大させてもよい。一般的な副作用は悪心である。その他のあり得る副作用としては、食欲減退、口渇、発汗、感染症、便秘症、あくび、振戦、眠気、および性的機能不全が挙げられる。
【0025】
また系統的レビューおよびプラセボ対照無作為化臨床試験(RCT)は、いくつかのSSRI(エスシタロプラム、パロキセチン、およびセルトラリン)、SNRIベンラファキシン、いくつかのベンゾジアゼピン(アルプラゾラムおよびジアゼパム)、三環系抗うつ薬イミプラミン、および5−HT
1A部分作動薬ブスピロンが、全て急性期治療において有効であることを示唆する。一般に治療効果は中等度であることが多く、症状は治療期間が中断すると再出現する。したがってSSRIよりも副作用が低く、長期間にわたって服用できる化合物による連続した長期治療または予防は、薬物療法よりも好ましいかもしれない。これはそれを必要とする人々に、栄養補助食品の形態のオレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分を補給することで達成できる。
【0026】
したがって依然として、損なわれた神経伝達に関係する障害を治療するために、既知の抗うつ薬のマイナスの副作用を示さない化合物に対する必要性がある。多くの患者は既知の薬物の服用と関連付けられている副作用が少ない、または皆無である代替的な治療法に関心を持っている。重度のうつ病は持続性の再発性疾患であり、それは通常、診断されにくい。さらに多くの患者は、軽度または中等度のうつ病を患っている。したがってうつ病などの精神疾患/障害の発症を治療または予防するために、リスクがある人々において使用でき、および気分を安定させる化合物ならびに医薬品および/または食品組成物の開発に対する関心が高まっている。
【0027】
さらにモノアミンオキシダーゼ(MAO)AおよびBを阻害することで、神経伝達物質の異化作用をより広く阻害する化合物、いわゆるMAO阻害剤(MAOI)が、抗うつ効果を示す。MAOは、セロトニン、ノルアドレナリン、およびドーパミンなどのアミン基含有神経伝達物質の酸化を触媒する。
【0028】
さらに神経伝達の調節因子は、精神および認知機能に対して多面発現効果を発揮する。うつ病に加えて、その他のヒト病状の例を下に列挙する。
【0029】
[全般性不安障害(GAD)およびその他の不安障害]
うつ病および全般性不安障害(GAD)などの様々な精神疾患および病状は、例えば低い神経伝達物質レベルなどの損なわれた神経伝達に関係することがよく知られている。患者は、うつ病の併存疾患としてまたは単独で、全般性不安症候群または全般性不安障害を患うことが多い。GADは一次医療において高度に蔓延している不安病状および慢性病である(患者の約10%)(ウィッチェン(Wittchen)ら、2005年、Eur.Neuropsychopharm.15:357〜376頁)。患者らは一次医療医に多数の身体症状を呈する。GADは、慢性緊張、および不安懸念および緊張(>6ヶ月)によって特徴づけられ、それらは日常生活に支障を来すほどで抑制できず、特徴的な過覚醒状態症候群(情動不安、筋肉緊張、および睡眠問題をはじめとする)を伴う。未治療の場合、GADは慢性の変動する経過をとって、加齢に伴ってよりひどくなる傾向がある。GAD患者は亜症候群性うつを患う。GAD患者は、全ての不安および抑うつ性障害中、総体的な直接的および間接的医療関連の経済負担が最も高い高利用者に分類される。高いGAD発生率にもかかわらず、わずかな患者だけが診断され、投薬を処方され、または精神科医への紹介を受ける。患者の認識およびモニタリングを助ける単純な診断用ツールが必要である。特定の診断に関係なく、医師は効果的なGAD症状の治療を必要とする。パロキセチンなどのSSRIは、GAD治療のために効果的である[ストッキ(Stocchi)ら、2003年、J Clin Psychiatry 63(3):250頁]。
【0030】
いくつかのSSRIが、FDAによって不安障害の治療のために認可されている。
フルオキセチン − OCD、PD
セルトラリン − OCD、PD、PTSD、SAD
パロキセチン − OCD、PD、SAD、GAD、PTSD
エスシタロプラム − GAD
フルボキサミン − OCD
[OCD:強迫性障害、PD:パニック障害、PTSD:心的外傷後ストレス障害、SAD:社会不安障害、GAD:全般性不安障害]
【0031】
[攻撃性]
病的な衝動的攻撃性は、前帯状皮質において[
11C]McN 5652結合が顕著に低下していることを示したPETを使用して実証されるように、この脳領域におけるより低いセロトニン作動性神経支配と関連付けられるかもしれない[フランクル(Frankle)ら、2005年、Am.J.Psych、162:915〜923頁]。この点に関して、セロトニン機能障害は、衝動的および暴力的犯罪行為、アルコール濫用、および自殺企図と関連づけられており、ならびに攻撃的行動のために施設収容された児童で報告されていることにも留意すべきである。
【0032】
トリプトファンの食餌性欠乏は、実験室状況で攻撃的反応の増大をもたらす一方、トリプトファンの増強は攻撃的反応の減少をもたらすことが実証されている。したがっておそらくセロトニンの減少は、攻撃性の増大に関係している[マーシュ(Marsh)ら、2002年、Neuropsychopharm 26:660〜671頁]。
【0033】
[注意欠陥多動性障害(ADHD)]
1種以上のモノアミンの再取り込みに影響するいくつかの抗うつ薬はまた、ADHDの治療においても効果的であり、一般に使用される興奮性治療薬の良好な代替物である。(1)その作用機序がノルアドレナリンおよびセロトニン再取り込みの遮断、およびβ−アドレナリン作動性受容体の下方制御を伴う、イミプラミン、デシプラミン、およびアミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬(TCA)、(2)ブプロピオン(ドーパミン/ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)およびベンラファキシン(SNRI)などの二重(dual)再取り込み阻害剤、(3)アトモキセチンおよびトモキセチンなどの単一(single)再取り込み阻害剤(前前頭皮質シナプス前ノルアドレナリン輸送体の遮断)[グレイダナス(Greydanus)、2005年、Ind.J.Ped.72:953〜960頁;シュイナード(Chouinard)、2005年、J.Psych.&Neuro.31(3):168〜176頁]。
【0034】
[概日リズム撹乱]
気分障害および職業上のストレスは、概日リズム(いわゆるバイオリズム)の撹乱をもたらす場合がある。これらの病状は慢性および持続性であることが多い。また長距離飛行によって(時差ぼけ)、ならびに交代勤務によって誘発される概日リズムの調節解除は、同様の症状および苦痛を引き起こす場合がある。したがって(動物またはヒトが慣れている)正常な概日リズムを維持し、および/または認知機能および記憶の障害、および精神および身体の疲労などの乱された概日リズムと関連付けられている症状を軽減および予防する、食餌補給による治療は、全体的な生活の質を改善し、それを必要とする人々の活力のために有益であることが保証される。
【0035】
[睡眠障害、不眠症、および慢性疲労症候群]
睡眠とうつ病とは密接に関連している。睡眠EEG異常は、うつ病において普通であり、不眠症はうつ病をもたらす場合がある。睡眠変化は、うつ病に関与するその他の生物学的リズムに影響を与える(フォーゲル(Vogel)ら、1990年、Neurosci Biobehav Rev 14:49〜63頁;マッカーリー(McCarley)、1982年、Am J Psych.139:565〜570頁)。抗うつ薬は睡眠連続性を改善し、急速眼球運動(REM)睡眠を減少させて、徐波(SWS)睡眠を延長させることができる(S.R.パンディ・ペルマル(Pandi−Perumal)ら(編)「睡眠の臨床薬理学(Clinical Pharmacology of Sleep)」より、スラナー(Sraner)ら、2006年、Birkhaeuser、Basel、103〜124頁)。
【0036】
TCAは、一般に慢性疲労症候群の治療のために使用される。TCAは、第四段階、急速眼球運動睡眠を促進すると考えられている[クレイグ(Craig)ら、2002年 Am.Fam.Physician、65:1083〜1090頁]。
【0037】
[強迫性障害(OCD)]
5−HT
2受容体における増強された神経伝達が、OCDにおけるSSRIの治療作用と関係があるかもしれない。眼窩前頭皮質、尾状核頭、および視床間のニューロンループ中の活動亢進は、SSRIによって、眼窩前頭皮質中の阻害性5−HT
2受容体の活性化増大のために減衰するかもしれない[Blierら、2001年、J.Psych&Neuro.26(1):37〜43頁]。ジメルジン、フルオキセチン、およびセルトラリンなどのSSRIは、OCDの治療において効果的であることが実証されている[シュイナード(Chouinard)、2005年、J.Psych&Neuro.31(3):168〜176頁]。
【0038】
[疼痛]
様々な作用機序がある抗うつ薬はまたは、疼痛治療においても効果的であることができる。例えば強力な5−HT
2拮抗薬であるアミトリプチリンおよびミアンセリンは、慢性疼痛の抑制のために使用される[Blierら、2001年、J.Psych&Neuro、26(1):37〜43頁]。ノルアドレナリン/セロトニン/ドーパミン再取り込み阻害剤であるデュロキセチンは、糖尿病性末梢神経障害と関連付けられている神経障害性疼痛の治療において有効である[シュイナード(Chouinard)、2005年、J.Psych&Neuro.31(3):168〜176頁]。このタイプの疼痛は、炎症と関連付けられているものと異なる。本発明に従って、炎症を低下させるのとは異なる機序を使用して疼痛を低下させる。
【0039】
したがって本発明は、有効量のオレガノ抽出物または1つ以上のその揮発性成分をそれを必要とする動物(ヒトをはじめとする)に投与するステップを含んでなる、損なわれた神経伝達に関係する障害を治療する方法に関する。
【0040】
したがって抗うつ薬として、オレガノ抽出物およびそれらの揮発性成分、ならびにそれらを含有する組成物/薬剤は、例えば単極性うつ病、双極性うつ病、急性うつ病、慢性うつ病、亜慢性うつ病、気分変調、分娩後うつ病、月経前不快気分/症候群(PMS)、更年期うつ症状、攻撃性、注意欠陥障害(ADS)、社会不安障害、季節性気分障害、不安/全般性不安障害(GAD)、線維筋痛症候群、慢性疲労、睡眠障害(不眠症)、心的外傷後ストレス障害、パニック障害、強迫性障害、むずむず脚症候群、神経過敏、片頭痛/原発性頭痛および疼痛一般、嘔吐、過食症、神経性食欲不振症、無茶食い障害、胃腸障害、燃え尽き症候群、過敏および倦怠感などの精神的、行動および情動/感情的、神経症的、神経変性的、摂食およびストレス関連障害を治療するための薬剤である。
【0041】
抗うつ薬として、オレガノ抽出物およびそれらの揮発性成分、ならびにそれらを含有する組成物/薬剤はまた、神経認知障害を第一次および第二次予防および/または治療するための組成物を製造するのにも使用できる。さらにそれらはまた、例えば心臓血管疾患、脳卒中、癌、アルツハイマー病、およびパーキンソン病などの慢性疾患における併存疾患として生じる神経伝達障害に関連した、うつ症状またはその他の症状を治療するのに効果的でもある。本発明に従ってオレガノ抽出物およびそれらの揮発性成分、ならびにそれらを含有する組成物/薬剤は、心臓血管疾患、脳卒中、癌、アルツハイマー病、およびパーキンソン病それ自体を治療するためでなく、これらの疾患によって引き起こされるうつ病を治療するのに使用される。
【0042】
オレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分は、損なわれた神経伝達に関係する障害を治療するための薬剤を製造するのに使用できる。それらはまた、気分調和作用薬、気分/活力改善剤、ストレス緩和剤、病状改善剤、不安低下剤、緊張低下剤、悲哀低下剤、不幸/不満低下剤、過敏低下剤、不快低下剤、強迫行動低下剤、弛緩薬、睡眠改善剤および/または不眠症軽減薬として使用される組成物を製造するためにさらに使用できる。
【0043】
「気分改善剤」、「活力改善剤」または「情緒的健康増幅剤」とは、それで治療された個人の気分または活力が改善されて、自信が高まりおよび/またはマイナス思考および/またはマイナスの緊張、悲哀、不幸/不満および過敏、および不快が低下することを意味する。それはまた、情動が安定しおよび/または全般的な、特に精神的な幸福および活力が改善または維持されて、ならびに気分変動のリスクが減少し、前向きな気分が保たれて、活動的および意欲的に感じられることも意味する。
【0044】
「緊張低下剤、悲哀低下剤、不幸/不満低下剤、過敏低下剤、不快低下剤」とは、(慢性)緊張および心配が低下しまたは改善されることを意味する。情動不安および筋肉緊張をはじめとする過覚醒状態症候群もまた、低下しまたは軽減される。社会的およびその他の恐怖症もまた、少なくとも部分的に消散される。一般に社会環境は、より脅威の少ないものとして経験される。個人は感情的にくつろいで心地よさを経験し、他の人たちとの親交および接触を楽しむ。一般に、個人は毎日の仕事を行うにあたり、活動的および意欲的に感じる。
【0045】
「弛緩薬」は、時差ぼけまたは交代勤務が原因で乱された個人の概日リズム(バイオリズム)を修正することで、完全にまたは部分的に機能する。弛緩薬は、このような撹乱と関連付けられている症状、すなわち認知機能および記憶の障害、精神的および肉体的疲労を少なくとも部分的に予防しまたは消滅させ、総体的な生活の質および活力を改善するであろう。したがってオレガノ抽出物または1つ以上のそれらの揮発性成分はまた、認知機能および記憶の障害を予防しおよび/または消滅させ、精神的および肉体的疲労を予防しおよび/または消滅させ、全体的な生活の質および活力を改善するのに使用してもよい。
【0046】
本発明のさらなる実施態様は、「病状改善剤」としての、すなわち病気のまたは正常な健康な個人において、過敏および倦怠感を低下させ、身体的および精神的疲労を低下させ、予防し、または軽減し、平静な睡眠に有利に働き、すなわち不眠症および睡眠障害に抗して睡眠を改善し、より全般的なエネルギーを増大させ、特に脳エネルギー生成を増大させる手段としてのオレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分の使用、およびそれらを含有する組成物の使用に関する。さらにこのような「病状改善剤」は、一般的な認知力改善のために、特に注意および集中力、記憶、想起能力、学習能力、言語処理、問題解決、知的機能の維持または改善のために、短期記憶改善のために、精神的敏捷性増大のために、集中能力および精神的鋭敏さ増大のために、精神的覚醒増強のために、精神疲労低減のために、良好な認知性のサポートのために、安定した認知機能の維持のために、空腹感および満腹の制御のために、ならびに運動能の制御のために使用される。
【0047】
したがって本発明の好ましい態様は、気分調和作用薬および/またはストレス緩和剤としてのオレガノ抽出物およびそれらの揮発性成分の使用に関する。
【0048】
本発明のさらなる好ましい実施態様では、ヒトにおいて概日リズムを維持するために、ヒトにおいて乱された概日リズムと関連付けられている症状を軽減および/または予防するために、オレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分が使用される。したがって気分が安定し、感情的な落ち着きが達成されて、日常生活のストレスが処理され、肉体的および心理学的機能が維持される。さらに全体的な生活の質が改善されるように、認知機能および記憶の障害、および精神的および肉体的疲労などの乱された概日リズムと関連付けられている症状が、軽減および/または予防される。これらの人々はまた、活力の維持からも恩恵を受ける。また、長距離飛行(時差ぼけ)によって、ならびに交代勤務によって誘発される概日リズムの調節解除、およびそれと関連付けられている症状が、軽減および/または予防される。
【0049】
本発明の別の好ましい態様は、抗うつ薬として使用するための組成物を製造するためのオレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分の使用に関する。
【0050】
本発明の文脈で「治療」とは、併用治療ならびに予防もまた包含する。「予防」は、最初の発生の予防(一次予防)、または再発予防(二次予防)であることができる。予防はまた、損なわれた神経伝達に、または不安定な気分またはストレスに悩まされるリスクが低下することも意味する。「予防」という用語は、特に乱された概日リズムと関連付けられている特定の症状を発症するリスクまたは発症率の低下を特に包含する。
【0051】
別の実施態様では、オレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分の効果的な用量を特に精神的幸福を維持するため、安定した認知機能を維持するため、前向きな気分、リラクセーションの維持を助けるため、および良好な認知性をサポートするために使用してもよい。
【0052】
本発明の抽出物またはそれらの揮発性成分は、特に中枢神経系における生理学的神経伝達を改善、増強、サポートし、したがって精神機能障害を軽減するかもしれない。
【0053】
本発明のさらに別の態様は、ヒトにおいてカルバクロールの血漿レベルを少なくとも10ng/mlに増大させることで、好ましくはヒトにおいてカルバクロールの血漿レベルを10ng/ml〜51000ng/mlの範囲内で増大させることで、ヒトにおいて損なわれた神経伝達に関係する障害を予防または治療する方法である。血漿レベルは、実施例で述べられているようにして測定されてもよい。
【0054】
[獣医学用途]
本発明の別の態様は、オレガノ抽出物および/またはその揮発分(volitiles)の獣医学用途である。動物は、ストレスの多い状況に対して、有害な行動上のおよび/または生理学的反応を示すかもしれない。例えば量産環境で育てられる、または輸送される動物は、肉またはミルクの量または質が低下する可能性がある。ストレスを受けた家禽は、毛引き、産卵低下、および共食いに訴える可能性がある。多くの動物は、攻撃的になりまたは強迫性行動を示す可能性がある。本発明の抽出物および揮発分(volitiles)は、神経伝達物質に作用することで、動物におけるこれらの望ましくない行動および生理機能を軽減できる。
【0055】
本発明の好ましい実施態様では、オレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分は、量産家畜飼育において、屠殺場への輸送中に、家畜のストレスを予防するために投与され、および/または屠殺場への輸送中に前記家畜の肉質低下を予防するために、投与される。
【0056】
本発明の別の好ましい実施態様では、オレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分は、飼い主との離別、飼い主の交代、または飼い主の喪失、休暇中の離別、およびいわゆる「ペットホテル」での飼育、ペットシェルターまたは避難所での飼育などのストレスの多い条件下で示される、ストレス、緊張および攻撃性および/または強迫行動を低下させるために、ペットまたはコンパニオンアニマルに投与される。
【0057】
特にペット動物および家畜は、強化されまたは改善された神経伝達を必要とする条件にあることができる。このような条件は、例えば捕獲または輸送後に、または収容中に生じ、動物は類似性障害を発症し、苦痛を感じまたは攻撃的になり、または常同行為、または不安、緊張、悲哀、不幸/不満および過敏、不快、および強迫行動を示す。
【0058】
したがってオレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分、および上述の選択物は、一般にヒトをはじめとする動物のための、好ましくはヒトおよびその他の哺乳類、特にペット動物および家畜のための抗うつ薬として使用できる。
【0059】
本発明の別の実施態様は、効果的な用量のオレガノ抽出物または1つ以上のその揮発性成分をそれを必要とする家畜に投与するステップを含んでなる、量産家畜飼育中に、屠殺場への輸送中に、家畜のストレスを予防し、および/または屠殺場への輸送中に前記家畜の肉質低下を予防する方法である。家畜は、好ましくは家禽、畜牛、ヒツジ、ヤギ、およびブタである。
【0060】
本発明の別の好ましい実施態様では、例えば肉質および産卵数の損失をもたらす毛引きおよび共食いを予防するために、オレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分が家禽に投与される。したがって本発明の別の態様は、効果的な用量のオレガノ抽出物または1つ以上のその揮発性成分をそれを必要とする家禽に投与するステップを含んでなる、輸送ストレスに際しての産卵数損失、毛引きおよび共食い、および肉質の損失を予防する方法に関する。
【0061】
本発明の別の態様は、効果的な用量のオレガノ抽出物または1つ以上のその揮発性成分をそれを必要とする動物に投与するステップを含んでなる、水産養殖においてストレスを予防および/または軽減する方法であり、動物は魚またはエビである。
【0062】
本発明のさらに別の態様は、効果的な用量のオレガノ抽出物または1つ以上のその揮発性成分をそれを必要とするペット動物、特にそれを必要とするネコおよびイヌに投与するステップを含んでなる、飼い主との離別、飼い主の交代、または飼い主の喪失、休暇中の離別、およびいわゆる「ペットホテル」での飼育、ペットシェルターステーションおよびその他の密集飼育および繁殖条件での飼育などのストレスの多い条件下のペット動物において、ストレス、緊張、攻撃性および/または強迫行動を低下させる方法である。
【0063】
本発明のなおも別の態様は、毛皮産業で使用される動物において、好ましくはミンク、キツネおよび/またはノウサギのために、ストレスの多い条件と関連付けられている症状を予防および/または低下させる方法である。
【0064】
動物のためには、オレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分は好ましくは強化飼料または強化飲料として(例えば飲用水への添加物として)投与される。
【0065】
[オレガノ抽出物およびそれらの揮発性成分]
オレガノ抽出物は、ハナハッカ(Origanum vulgare)などのオリガヌム(Origanum)属、およびタチジャコウソウ(Thymus vulgaris)などのティムス(Thymus)属に属する植物(全植物体またはその部分)のいずれかに由来する抽出可能化合物、特に揮発性化合物の濃縮物形態であってもよい。「オレガノ」という用語によってカバーされるオリガヌム(Origanum)属からの植物のさらなる例は、O.マヨナラ(majorana)、O.ディクタムヌス(dictamus)、O.クレティクム(creticum)、ポットマジョラム(O.x majoricum)、ゴールデンオレガノ(O.aureum)、O.コンパクタ(compacta)(compactus)、O.シリアカ(syriaca)、ターキッシュオレガノ(O.tytthantum)、O.ヘラクレオティクム(heracleoticum)、O.スミルナオイム(smyrnaeum)、およびグリーンオレガノ(O.virens)である。「オレガノ」という用語によってカバーされるティムス(Thymus)属からの植物のさらなる例は、キャラウエイタイム(T.herbus−barona)、レモンタイム(T.citriodorus)、T.マストキナ(mastichiana)、ブロードリーフタイム(T.pulegioides)、ヨウシュイブキジャコウソウ(T.serpyllum)、ティムス・オドラティッシムス(T.pallasianus)、およびヘアリー・タイム(T.praecox)である。濃縮物は抽出のために使用された溶剤をなおも含有しても、含有しなくても、または特定キャリア材料に転移されてもよい。抽出物は、(a)例えばメタノール、エタノール、酢酸エチル、ジエチルエーテル、n−ヘキサン、塩化メチレンのような溶剤、または二酸化炭素(純粋なまたはアルコールなどのその他の溶剤との混合物中の)または酸化二窒素のような超臨界流体での抽出、(b)精油を得るための水蒸気蒸留、または(c)窒素のような熱ガスでの抽出/蒸留などの当該技術分野でよく知られている方法に従って得られてもよい。
【0066】
好ましくは超臨界二酸化炭素の使用での抽出によって得られたオレガノ抽出物が使用される。このような抽出物は、有機溶剤、タンパク質、および重金属を含有しないという利点を有する。所望ならば、超臨界二酸化炭素での抽出に第2の超臨界流体CO2抽出ステップを続けて、ワックスを除去し、選択的に揮発物を濃縮する。
【0067】
オレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分は、天然または合成または混合(すなわち部分的天然、部分的合成)起源であることができ、すなわちそれらは、植物の抽出および分画によって得られるほかに化学的に合成して、所望ならばあらゆる所望の量で共に混合できる。それらは、例えばそれらを例えば10%(w/w)以下程度の低濃度、またはほぼ100%(w/w)までの濃度で含有する溶液として、あらゆる所望の純度および濃度で調製および使用できる。
【0068】
好ましいのは、オレガノ抽出物の揮発性成分の少なくとも1つを高比率で含有するオレガノ抽出物である。より好ましいのは、抽出物総重量を基準にして、少なくとも合計70重量%の上述の揮発性成分を含有するオレガノ抽出物である。完全に天然のオレガノ抽出物をその少なくとも1つの特定の揮発性成分で強化してもよい。
【0069】
本発明の文脈で好ましいオレガノ抽出物は、オレガノ抽出物の重量を基準として、少なくとも30重量%のカルバクロールを含んでなるオレガノ抽出物、少なくとも50重量%のカルバクロールを含んでなるオレガノ抽出物、より好ましくは少なくとも60重量%のカルバクロールを含んでなるオレガノ抽出物、最も好ましくは少なくとも65重量%のカルバクロールを含んでなるオレガノ抽出物である。
【0070】
また好ましいオレガノ抽出物は、オレガノ抽出物の重量を基準として、0〜30重量%の範囲内の量でチモキノンを含んでなるオレガノ抽出物、好ましくは少なくとも1重量%のチモキノンを含んでなるオレガノ抽出物、より好ましくは少なくとも2重量%のチモキノンを含んでなるオレガノ抽出物、なおもより好ましくは少なくとも5重量%のチモキノンを含んでなるオレガノ抽出物、最も好ましくは5〜30重量%の範囲のチモキノンを含んでなるオレガノ抽出物である。
【0071】
その他の好ましいオレガノ抽出物は、オレガノ抽出物の重量を基準として、少なくとも50重量%のカルバクロールおよび0〜25重量%のチモキノンを含んでなるオレガノ抽出物、好ましくは少なくとも50重量%のカルバクロールおよび少なくとも1重量%のチモキノンを含んでなるオレガノ抽出物、より好ましくは少なくとも55重量%のカルバクロールおよび少なくとも2重量%のチモキノンを含んでなるオレガノ抽出物、なおもより好ましくは少なくとも60重量%のカルバクロールおよび少なくとも5重量%のチモキノンを含んでなるオレガノ抽出物、最も好ましくは少なくとも65重量%のカルバクロールおよび5〜25重量%の範囲のチモキノンを含んでなるオレガノ抽出物である。
【0072】
また好ましいのは、カルバクロール、チモキノン、p−シメン、チモキノール、リモネン、リナロール、ボルネオール、4−テルピネオール、チモール、およびカリオフィレンからなる群から選択される単一の揮発性成分、またはそれらの混合物が使用される方法である。好ましくは揮発性成分は、カルバクロール、チモキノン、およびp−シメンからなる群から選択され、より好ましくは揮発性成分はカルバクロールおよび/またはチモキノンであり、最も好ましくは揮発性成分はカルバクロールである。
【0073】
なおもより好ましいのは、親水性抽出物である、ロスマリン酸、オイゲノール、オイゲノール塩、オイゲノール異性体、酵母細胞壁、または1−ピペロイルピペリジンの構成物の本質的な量を含有しないオレガノ抽出物である。「本質的な量」とは、本明細書での用法では、仮に存在する場合、前記オレガノ抽出物またはオレガノ材料または揮発性成分の総重量を基準にして、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満、なおもより好ましくは0.1重量%未満であるこれらのいずれかの成分の総量である。
【0074】
さらにオレガノ抽出物と次の組み合わせなどの植物抽出物の特定の組み合わせは本発明で好ましくない。ヒメマツタケ(Agaricus blazei)、イラクサ、チョウセンアザミ、サンザシ(Crataegus)、ヤクモソウ(Leonurus)、セイヨウノコギリソウ、ヤドリギ、クラタエグ(Crataeg,)、サンシキスミレ(Herba viola tricolor)、コガネバナ(Scutellariae baicalensis)、ターメリック、ミツバオウレ、メギ。
【0075】
本発明の組成物は、好ましくは、強化食品、強化飼料、または強化飲料などの栄養組成物の形態、またはヒトをはじめとする動物のための強化液体食品/飼料の形態である。
【0076】
本発明に従った食品および医薬組成物は、例えば食品または飼料(のための添加剤/補給剤)、食品または飼料プレミックス、強化食品または飼料、錠剤、丸薬、顆粒、糖衣丸、カプセル、粉末や錠剤などの発泡性調合物などの固形形態、または例えば飲料、ペースト、および油性懸濁液などの溶液、エマルジョンまたは懸濁液などの液体形態などの人体をはじめとする動物体へ投与するのに適した形態のあらゆるガレヌス製剤、特に経口投与に慣例的なあらゆる形態であってもよい。ペーストは、カプセルが、例えば(魚、ブタ、家禽、ウシ)ゼラチン、植物タンパク質またはリグニンスルホネートのマトリックスを特色とする、硬質または軟質シェルカプセル内にカプセル化してもよい。適用形態のその他の例は、経皮、非経口または注射用投与形態である。食品および医薬組成物は、制御(遅延)放出製剤の形態であってもよい。本発明の組成物は経鼻投与されない。
【0077】
本発明に従った食品組成物は、(ガム、タンパク質、加工デンプンなどの)保護親水コロイド、バインダー、塗膜形成剤、封入作用薬/材料、壁/シェル材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着材、キャリア、充填材、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶剤)、流動化剤、味覚マスキング剤、増量剤、ゲル化剤、ゲル形成剤、抗酸化剤、および抗菌剤をさらに含有してもよい。
【0078】
食品の例は、シリアルバーと、ヨーグルトなどの乳製品と、ケーキおよびクッキーなどのベーカリー製品である。強化食品の例は、シリアルバーと、パン、ロールパン、ベーグル、ケーキ、およびクッキーなどのベーカリー製品である。栄養補助食品の例は、錠剤、丸薬、顆粒、糖衣丸、カプセル、および発泡性調合物であり、清涼飲料と、フルーツジュースと、レモネードと、ニアウォーター飲料と、茶と、スープおよび乳製品(ミューズリー飲料)などの液体食品の形態のミルクベースの飲料となどの非アルコール性飲料の形態である。
【0079】
飲料は、非アルコール性およびアルコール性飲料と、ならびに飲用水および液体食品に添加される液体調製品とを包含する。非アルコール性飲料は、例えば清涼飲料、スポーツドリンク、フルーツジュース、野菜ジュース(例えばトマトジュース)、レモネード、茶、およびミルクベースの飲料である。液体食品は、例えばスープおよび乳製品(例えばミューズリー飲料)である。
【0080】
少なくとも1つのオレガノ抽出物またはその揮発性成分の1つに加えて、本発明に従った医薬組成物は、限定されるものではないが、水、あらゆる起源のゼラチン、植物ガム、リグニンスルホネート、滑石、糖、デンプン、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール、着香剤、保存料、安定剤、乳化剤、緩衝液、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填材などをはじめとする従来の医薬添加剤およびアジュバント、賦形剤または希釈剤をさらに含有してもよい。キャリア材料は、経口/非経口/注射投与に適した有機または無機不活性キャリア材料であることができる。
【0081】
ヒトでは、本発明の目的のためのオレガノ抽出物またはそれらの揮発性成分の適切な1日量は1日あたり体重1kgあたり0.001mgから体重1kgあたり約100mgの範囲内であってもよい。より好ましいのは体重1kgあたり約0.01〜約10mgの1日量であり、特に好ましいのは体重1kgあたり約0.05〜5.0mgの1日量である。
【0082】
ヒトのための投薬単位の固体調合物中では、オレガノ抽出物またはその揮発性成分は、投薬単位あたり約0.1mg〜約1000mg、好ましくは約1mg〜約500mgの量で適切に存在する。ここで言及される条件と関連付けられている症状の緩和のために、オレガノ抽出物またはその揮発性成分のいずれかは、少なくとも1週間、最高6〜12ヶ月まで、食餌と共に毎日1回または2回服用される。ここで言及される条件と関連付けられている症状の発症を予防し、一般にリラックスした状態を維持するために、定期的摂取が適切である。
【0083】
食品組成物中で、特にヒトのための食品および飲料中で、オレガノ抽出物またはその揮発性成分は、食品または飲料の総重量を基準にして、約0.0001(1mg/kg)〜約5重量%(50g/kg)、好ましくは約0.001%(10mg/kg)〜約1重量%、(10g/kg)より好ましくは約0.01(100mg/kg)〜約0.5重量%(5g/kg)の量で適切に存在する。上で定義される条件と関連付けられている症状の軽減のために、食品は少なくとも1〜3週間にわたり毎日1回または2回、または定期的に、すなわち少なくとも毎日1回摂取される。
【0084】
本発明の好ましい実施態様の食品および飲料中では、オレガノ抽出物またはその揮発性成分の量は一食当たり10〜30mg、すなわち食品または飲料1kgあたり120mgである。食品は少なくとも1〜3週間にわたり毎日1回または2回、または好ましくは定期的に少なくとも毎日1回摂取される。
【0085】
ヒトを除く動物では、本発明の目的でオレガノ抽出物またはその揮発性成分の適切な1日量は、毎日体重1kgあたり0.001mgから体重1kgあたり約1000mgの範囲内であってもよい。より好ましいのは体重1kgあたり約0.1mg〜約500mgの1日量、特に好ましいのは体重1kgあたり約1mg〜100mgの1日量である。量産家畜飼育および毛皮産業飼育または水産養殖などのストレスの多い条件と関連付けられている症状を予防し、低下させるために、オレガノ抽出物またはその揮発性成分を含有する製品を屠殺までの動物の全生涯にわたって与える。特に家禽、畜牛、ヒツジ、ヤギ、およびブタなどの家畜、特に畜牛およびブタを屠殺場に輸送する場合、好ましくは輸送中に、より好ましくは輸送の少なくとも3日前および輸送中に約3〜800mg/kg体重の抽出物および/または揮発性物質(volitiles)の1日量をそれらに投与すべきである。
【0086】
ペットでは、動物シェルターファームまたはペットショップなどのストレスの多い条件下で、少なくとも1〜3週間、または飼育期間全体にわたって製品を投与すべきである。休暇中の離別、「ペットホテル」での飼育、動物病院での受診または入院などの短期ストレス条件下では、ストレスの多い出来事の少なくとも3日前、および好ましくは7日前に、製品を投与してもよい。
【0087】
本発明を以下の非限定的例によって例示する。
【0088】
[実施例]
[実施例1:2種のO.ウルガレ(vulgare)抽出物の調製]
下の実施例で「−se」はフェノールタイプオレガノ抽出物1を指し、「−to」はテルピネオールタイプオレガノ抽出物2を指し、どちらもドイツ国のフラベックス(Flavex)から得られる。
【0089】
O.ウルガレ(vulgare)の乾燥させた葉を粉砕して、超臨界二酸化炭素で抽出した。抽出パラメーターは、次のとおり。温度45℃、作動圧力300バール(−to)または100バール(−se)、1kgの植物材料あたり17kg(−to)および15kg(−se)の二酸化炭素が必要であり、抽出物は圧力を30℃で60バールに加圧して分離器内に得られた。
【0090】
25kg(−to)または50kg(−se)の植物材料は、それぞれ1kgの抽出物を生じた。
【0091】
抽出物1は次の組成物を有した(ガスクロマトグラフィーによる分析)
精油総含量は83%であった(残存部分は植物ワックス)。
揮発性成分:テルピネン0.2%、シメン2.6%、4−テルピネオール1.5%、チモキノン23%、チモール0.3%、カルバクロール62%、カリオフィレン1.5%。
【0092】
抽出物2(RV141−23)は、精油の総含量を基準にして、35〜50%のtransβテルピネオール、5〜10%のcisβテルピネオール、8〜12%の4−テルピネオールをはじめとしてテルピネオールの含量が高く、チモール5〜12%、カルバクロール<1%をはじめとしてフェノールが相対的に少ない、80〜90%の精油を含有した。
【0093】
[実施例2:オレガノ抽出物3の調製]
ハナハッカ(Origanum vulgare)の葉を容積比9:1のメチルtert−ブチルエーテルおよびメタノールの溶剤混合物で抽出した。
【0094】
[実施例3:オレガノ抽出物4フラベックス(Flavex)の調製および組成物]
実施例1抽出物1に従ってオレガノ葉を調製した。異なる採取ロットのために、組成物は抽出物1とわずかに異なる。
【0095】
精油の総含量は89.5%(残存部分は植物ワックス)であった。
揮発性成分:シメン7.8%、4−テルピネオール1.2%、チモキノン、12.1%、チモール0.22%、カルバクロール68.5%、カリオフィレン1.6%、リモネン0.1%、リナロール0.77%、ボルネオール2.6%。
【0096】
[実施例4:オレガノ抽出物の詳細な組成]
オレガノ葉の水蒸気蒸留によって抽出物を調製した。
組成は次のとおり。
分析法GC/MS
【0098】
[実施例5:オレガノ抽出物によるセロトニン取り込み阻害]
ヒトセロトニン再取り込み輸送体(hSERT)を安定して発現するHEK−293細胞を米国のバンダービルト大学(Vanderbilt University)のR.ブレークリー(R.Blakely)から得た。スイス国アルシュヴィル(Allschwil)のバイオコンセプト(Bioconcept)から購入した、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、L−グルタミン、および抗生物質G418を含有するダルベッコの修正イーグル培地中で細胞を通常どおり生育させ、トリプシン処理によって継代培養した。アッセイの1日前に、細胞を前述の培地中に播種した。アッセイの直前に、35μMパージリン、2.2mM CaCl
2、1mMアスコルビン酸、および5mM N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(「Hepes」緩衝液)を添加した、シグマケミカル(Sigma Chemicals Ltd.)から購入したクレブス−リンゲル炭酸水素塩緩衝液で培地を置換した。英国スラウ(Slough)のアマーシャム・バイオサイエンシズGEヘルスケア(Amersham Biosciences GE Healthcare)からの濃度20nMの放射標識(
3H)セロトニンの添加、および室温で30分間のインキュベーションによって、細胞中へのセロトニン取り込みを判定した。組み込まれなかった標識の除去に続いて、上記緩衝液で穏やかに3回洗浄し、液体シンチレーション計数によって組み込まれたセロトニンを定量化した。
【0099】
輸送体によるセロトニン取り込みは、オレガノ抽出物によって用量依存様式で阻害された。3種のオレガノ抽出物によるセロトニン取り込み阻害について測定したIC
50値を表1に示す。
【0101】
[実施例6:オレガノ抽出物1によるモノアミンオキシダーゼ阻害]
有機アミンp−チラミンまたはベンジルアミンをそれぞれモノアミンオキシダーゼA(MAO−A)およびB(MAO−B)酵素のための基質として使用した。この反応により生成される過酸化水素(H
2O
2)を西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で触媒されるバニリン酸との反応によって定量化した。
【0102】
反応は、ポリスチレンマイクロタイタープレート内で実施した。MAO酵素(最終濃度2U/ml)を必要に応じてシグマからのp−チラミン(最終濃度0.5mM)、またはシグマからのベンジルアミン(最終濃度0.5mM)のどちらか、およびpH7.6の0.2Mカリウムリン酸緩衝液中の色素産生溶液(フルカ(Fluka)からのバニリン酸、フルカからの4−アミノアンチピリン、およびシグマからの西洋ワサビペルオキシダーゼをそれぞれ最終濃度0.25mM、0.125mM、および1U/mlで含有する)と混合した。反応を例えばモレキュラー・デバイス・コーポレーション(Molecular Devices Corporation)からのスペクトラマックス(Spectramax)M5などのマイクロタイタープレート吸光度読み取り装置内で追跡した。495nmでの吸光度を15秒毎に40分間にわたり読み取って、モレキュラー・デバイス・コーポレーションからのSOFTmaxProを使用した直線回帰によって初期反応速度を計算した。
【0103】
モノアミンオキシダーゼ酵素に対するオレガノ抽出物1の効果は、基質とのインキュベーションの10分前およびその最中における、0.03〜100μMの一連の濃度でのアッセイ中へのその包含によって判定された。HRPが触媒する反応部分に対する化合物の効果を判定するために、MAO酵素をモレキュラープローブズ(Molecular Probes)からのH
2O
2(最終濃度0.2mM)によって置換した。MAO−Aおよび−Bを含有する反応がどちらもオレガノ抽出物1によって用量依存様式で阻害されたのに対し、対照反応は影響を受けなかった。オレガノ抽出物1によるモノアミンオキシダーゼ活性の阻害について測定されたIC
50値を表2に示す。
【0105】
[実施例7:マウスにおける初期観察(アーウィン(Irwin))試験におけるオレガノ抽出物1の影響]
最初の毒性用量、活性用量範囲、および行動および生理学的機能に対する試験物質の主要効果を検出する方法は、アーウィンによって述べられた方法に従う(アーウィン S.1968年、Psychopharma.13:222〜257頁)。
【0106】
マウスに試験物質を投与し、ビヒクルを投与した対照群との同時比較で観察した(非盲検法)。どの時点においても3つの処置群を同一対照群と比較した。処置群内の全動物は同時に観察した。
【0107】
アーウィンに由来する標準化観察格子に従って、行動修飾、生理学的および神経毒性症状、瞳孔径、および直腸温度を記録した。格子は次の項目を含有する:致死性
*、痙攣
*、振戦
*、挙尾反応
*、鎮静、励起、異常歩行
*(千鳥足、つま先歩行)、跳躍
*、運動失調
*、身もだえ
*、立毛
*、常同性
*(匂い嗅ぎ、噛みくだき、頭の動き)、瞬間的首振り動作
*、ひっかき行動
*、呼吸
*、攻撃性
*、恐れ、接触反応性、筋緊張、立ち直り反射喪失、眼瞼下垂、眼球突出、握力喪失、無動症、強直症、牽引力喪失、角膜反射喪失、痛覚消失、脱糞、流涎、流涙、瞳孔直径(単位=1/45mm)、および直腸温度。
【0108】
観察は、試験物質投与の15、30、60、120、および180分後に、また24時間後にも実施した。(
*)で印を付けた症状は、投与の0〜15分後に連続的に観察した。群毎に5匹のマウスを調べた。
【0109】
オレガノ4抽出物は、食塩水(0.9%w/v NaCl)中の3%(v/v)DMSO、3%(v/v)ツイーン(Tween)80に可溶化して、マウスに腹腔内(i.p.)注射した。
【0110】
[結果]
− 3mg/kgのオレガノ抽出物1は、ビヒクルと比較して、追加的な行動変化を誘発しなかった。
− 10mg/kgではオレガノ抽出物1は3匹のマウスで軽度の鎮静を誘発し、5匹のマウス全てで恐れを15〜30分間低下させた。
− 30mg/kgでは、オレガノ抽出物1は、4または5匹のマウスで軽度の鎮静を15〜60分間誘発し、3または4匹のマウスで恐れを15〜60分間低下させ、1〜5匹のマウスで筋緊張を30〜60分間低下させた。
− 100mg/kgでは、オレガノ抽出物1は鎮静を誘発し、それは4または5匹のマウスで15〜180分間にわたり軽度から顕著であり、1匹のマウスで24時間めに軽度であった。それは4または5匹のマウスで15〜180分間恐れを低下させ、4匹のマウスで接触反応性を60〜180分間低下させ、3または4匹のマウスで筋緊張を30分間〜24時間低下させた。
【0111】
したがってオレガノ抽出物1は用量依存性の中程度の鎮静および弛緩効果を示し、恐れを低下させた。
【0112】
[実施例8:ポーソルト(Porsolt)の水泳試験]
「絶望行動試験」または「ポーソルトの強制水泳試験」は、うつ病のための検証された動物モデルである(ナガツ(Nagatsu)、2004年、Neuro Tox.25:11〜20頁;およびポーソルトら、1977年、Arch.Int.Pharmacodyn 229:327〜336頁を参照されたい)。それはセロトニン、ドーパミン、およびノルアドレナリンをはじめとするいくつかの神経伝達物質の伝達の増強に反応する。
【0113】
抗うつ薬活性を検出する試験は、ポーソルトら、前出によって述べられているようにして実施した。迅速に逃げられない状況で泳ぐことを強制されたマウスは、不動となる。抗うつ薬は不動持続時間を減少させる。
【0114】
マウスをそれから逃げられない10cmの水(22℃)を含有するシリンダー(高さ=24cm、直径=13cm)に個別に入れた。マウスを水に6分間入れて、最後の4分間の不動持続時間を測定した。
【0115】
4群毎に15匹のマウスについて調べた。試験は盲検法で実施し、すなわち実験を行う者は、マウスに注射した者と異なり、したがって各マウスが4群のいずれに属するかを知らなかった。
【0116】
オレガノ抽出物1を3種の用量(10、30、および60mg/kg)で評価し、試験30分前にi.p.投与して、ビヒクルを同一様式で投与される対照群と比較した。このように投与されたオレガノ抽出物4は、ビヒクル(3%(v/v)DMSOおよび3%(v/v)ツイーン(登録商標)80を含有する食塩溶液)に溶解した。比較物質としてベンラファキシン(16mg/kg、i.p.)、および基準化合物としてイミプラミン(32mg/kg、i.p.)を同一実験条件下で投与した。
【0117】
独立スチューデントのt検定を使用して処置群と対照群とを比較し、データを分析して表3に提示する。
【0119】
したがってオレガノ抽出物1は、対照群と比較して、中用量および最高用量群でそれぞれ17%および24%不動時間を顕著に減少させた。全体的にオレガノ抽出物1の顕著な用量依存性効果があった。同一実験条件下で投与されたイミプラミン(32mg/kg、i.p.)およびベンラファキシン(16mg/kg、i.p.)は、ビヒクル対照と比較して不動行動を顕著に減少させた(それぞれ−70%および−51%、p<0.001)。
【0120】
これらの結果はオレガノ抽出物1(60mg/kg、i.p.)が、うつ病関連行動を顕著に低下させるその能力において、三環系抗うつ薬イミプラミン、およびSNRIベンラファキシンと同様の有効性を有することを示す。
【0121】
[実施例9:不安様または強迫行動試験としてのガラス玉覆い隠し試験]
「防御的覆い隠し」行為は、元は不快な味の液体で充填された給水口(ウィルキー(Wilkie)ら、J.Exp.Anal.Behavior 1979年、31:299〜306頁)または電気ショック棒(Pinelら、1978年、J.Comp.Physiol.Psych.92:708〜712頁)などの侵害性の対象物を埋めるラットによって示された。ガラス玉覆い隠し試験は、このような試験の修正法として考案された。ポーリング(Poling)ら、1981年、J.Exp.Anal.Behavior 1981年、35:31〜44頁)では、10または21日間連続して、ラットを毎日それぞれ25個のガラス玉を入れた個々のケージにさらした。10日間にわたり毎日、または21日間さらした24時間後に埋められたガラス玉の数を数えた。著者らは、ガラス玉の覆い隠しが、目新しさによって、またはあらゆる侵害性の刺激に起因して決まるのではないことを報告した。
【0122】
マウスによるガラス玉覆い隠し行為は、鎮静を誘発しない用量において、SSRI(例えばフルボキサミン、フルオキセチン、シタロプラム)、三環系抗うつ薬(例えばイミプラミン、デシプラミン)、および選択的ノルアドレナリン取り込み阻害剤(例えばレボキセチン)に加えて、一連のマイナー(例えばジアゼパム)およびメジャー(例えばハロペリドール)トランキライザーに感応性であることが報告されている(Broekkampら、1986年、Eur J Pharmacol.126:223〜229頁)。モデルは、不安様または強迫性行動のどちらかを反映してもよい(De Boerら、2003年、Eur.J.Pharma 463:145〜161頁参照)。
【0123】
ここで適用される方法は、Broekkampら、1986年、前出によって述べられる方法に従う。床上に5cmのおがくず、およびケージ中央にまとめて25個のガラス玉(直径1cm)を入れた透明プラスチックケージ(33×21×18cm)に、マウス(処置群あたりn=15匹)を個別に入れた。第2のひっくり返したケージを蓋にした。30分の試験期間の終わりに、おがくずで(少なくとも3分の2)覆われたガラス玉の数を数えた。試験は、薬剤処置プロトコルに関して何も知らない研究者によって実施された。
【0124】
試験に先だって、10匹の未処置マウスを各ケージに15分間入れておくことで、全ての試験ケージおよびガラス玉を「含浸」した。
【0125】
オレガノ抽出物1を10、30、および60mg/kgで評価し、試験の30分前にi.p.投与して、ビヒクル対照群と比較した。オレガノ抽出物1を3%(v/v)DMSOおよび3%(v/v)ツイーン(登録商標)80「ビヒクル」を含有する食塩溶液に溶解した。対照群に同一様式でビヒクルを投与する一方、同一実験条件で投与されるフルオキセチン(32mg/kg)を参照物質として使用した。独立スチューデントのt検定を使用して処置群とビヒクル対照とを比較し、データを分析した。
【0128】
試験の30分前にi.p.投与されたオレガノ抽出物1(10、30、および60mg/kg)により、ビヒクル対照と比較して、覆われたガラス玉の数は用量依存的に減少した(それぞれ−40%、p<0.05;−73%、p<0.001;および−67%、p<0.001)。
【0129】
同一実験的条件下で投与されたフルオキセチン(32mg/kg、i.p.)およびベンラファキシン(16mg/kg、i.p.)により、ビヒクル対照と比較してガラス玉覆い隠し行動がほとんどなくなった(それぞれ−93%および−98%、p<0.001)。
【0130】
これらの結果は、オレガノ抽出物1が、不安/強迫行動を顕著に低下させるその能力において、SSRIフルオキセチン、およびSNRIベンラファキシンと同様の有効性を有することを示す。
【0131】
[実施例10:マウスの明暗箱試験におけるオレガノ抽出物1の効果]
抗不安活性を検出する本方法は、Crawley、1981年、Pharmacol.Biochem.Behav.15:695〜699頁で述べられた方法に従う。抗不安薬は明室で過ごす時間を増大させる。
【0132】
動物を半分(25×27×27cm)が明るく開放され、別の半分(20×27×27cm)が暗く閉鎖された2室の箱の明室に入れた。3分間の試験中に、各室内で過ごす時間ならびに動物が横断して別の側に行く回数を評点した。群あたり15匹のマウスを試験した。試験は盲検法で実施した。
【0133】
オレガノ抽出物1を3用量(10、30、および60mg/kg)で評価し、試験の30分前にi.p.投与してビヒクル対照群と比較した。オレガノ抽出物1を3%(v/v)DMSOおよび3%(v/v)ツイーン(登録商標)80(「ビヒクル」)を含有する食塩溶液に溶解した。対照群にはビヒクルを投与し、比較物質としてベンラファキシン(16mg/kg、i.p)、および参照物質としてクロバザム(16mg/kg、i.p)を使用し、全て試験の30分前に投与した。
【0135】
10および60mg/kgのオレガノ抽出物1は、ビヒクル対照と比較して、明室で過ごす時間を増大させた(それぞれ+28%、および+35%、p=0.0506、ほぼ有意)。それは10mg/kgで横断回数を増大させる傾向があったが(+51%、p=0.0888)、30および60mg/kgでは明らかな効果はなかった。したがってオレガノ抽出物1は、マウスの明暗箱試験で測定されるとき、中程度の抗不安効果を有すると考えられるかもしれない。
【0136】
[実施例11:亜慢性経口胃管栄養法後のマウスのポーソルト強制水泳試験におけるオレガノ抽出物4の効果]
抗うつ活性を検出するこの試験は、化合物投与経路および用量が異なったこと以外は、実施例7で述べられているのと同一様式で実施した。オレガノ抽出物4を3種の用量(75、150、および300mg/kg)で評価し、試験の24、5、および1時間前に経口的に(p.o.)投与し、ビヒクル対照群と比較した。このようにして投与されたオレガノ抽出物1は、トコフェロール除去コーンオイル「ビヒクル」)に溶解した。対照群にはビヒクル(p.o.)を投与する一方、別の群には基準化合物としてイミプラミン(32mg/kg、p.o.;水に溶解)を試験の24、5、および1時間前に投与した。
【0137】
マウスをそれから逃げられない13.5cmの水(22℃)を含有するシリンダー(高さ=24.5cm、直径=19.5cm)に個別に入れた。マウスを水に6分間入れてビデオカメラを通じて自動的に視察し、ドイツ国のTSEシステムズ・ゲーエムベーハー(TSE Systems社)から市販されるソフトウェアシステム(VideoMot2)によってモニターして、最後の4分間における不動持続時間を測定した。
【0138】
5群のそれぞれで10匹のマウスを試験した。分散分析(ANOVA)およびボンフェローニポストホック検定を使用して、処置群および陽性対照群とビヒクル群とを比較し、データを分析した。
【0140】
したがってオレガノ抽出物4は、低用量および中用量群で、対照群と比較して不動時間をそれぞれ41%および32%顕著に減少させた。全体的にオレガノ抽出物4の顕著な効果があった。同一実験条件下で投与されたイミプラミン(32mg/kg、i.p.)は、ビヒクル対照と比較して不動行動を顕著に減少させた(−50%、p<0.001)。
【0141】
これらの結果は、オレガノ抽出物4(75および150mg/kg、p.o.)が、うつ病関連行動を顕著に低下させるその能力において、三環系抗うつ薬イミプラミンと同様の有効性を有することを示す。
【0142】
[実施例12:生体内微小透析によって測定される海馬セロトニンレベルに対するオレガノ抽出物4の効果]
食物および水を自由摂取させる制御温度(21±2℃)および湿度(55±10%)(照明07.00〜19.00)条件下において、オスのスプラーグ・ドーリー(Sprague−Dawley)ラット(250〜320g)を4〜5匹で集団飼育した。ラットは抱水クロラール(400mg/kg、i.p.)を使用して麻酔し、次の座標(パキノス(Paxinos)およびワトソン(Watson)6に従ったブレグマおよび硬膜表面から、体軸方向に−4.5mm、内外方向に−2.5mm、背腹方向に−4.5mm)の定位固定枠を使用して、BASiからの1個の微小透析プローブ(MD2200型、2mm膜、30,000ダルトンカットオフ)を背側海馬中に移植し、歯科用セメントで適切な位置に固定した。加温パッドを使用して、体温を36℃に保ち、デジタル直腸温度計によってモニターした。微小透析プローブを1μl/分の人工脳脊髄液(aCSF)で灌流し、灌流液サンプルを15分毎に収集して、電気化学検出付き高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してアッセイし細胞外のモノアミンレベルを判定した。
【0143】
HPLC移動相(0.5mM EDTA、0.1Mモノクロロ酢酸 pH3.1、0.15g/L硫酸オクチルナトリウム、5%アセトニトリル、0.7%テトラヒドロフラン)をシステムを通じて70μl/分で汲み上げた。5μl注入ループ付き逆相1×100mm ODS 3mmマイクロボアカラムを使用してモノアミンを分離し、ガラス状炭素電極をAg/AgCl基準電極に対して+650mVに設定した、BASiからのイプシロン(Epsilon)電気化学検出器を使用して検出した。ピーク溶出時間を参照標準と比較して透析液ピークを同定し、直線回帰分析を使用してピーク面積測定に従って定量化した。5HTおよび5HIAAの検出限界は、単位時間あたりバックグラウンドノイズの2倍のピーク面積を生じるサンプル量と定義され、双方の例でおよそ0.1フェントモル/サンプルであった。
【0144】
予備研究は、透析プローブの移植に続いて、5HTレベルは、外科手術によって起きた血液凝固により活性化された血小板からの放出のために最初は高いが、外科手術終了の150分以内に基礎5HTレベルがほぼ一定になったことを実証した。したがって注射は、外科手術に続いて150、210、および270分後に通常どおり投与して、最後の注射の60分後まで灌流液サンプルを収集した。
【0145】
通常のアッセイでは2匹のラットを準備し、内1匹はオレガノ抽出物、もう1匹は対照(ビヒクル)サンプルを試験するために使用した。アッセイ間における5HTの基礎放出の変動性、および細胞外液中の5HTを検出する微小透析プローブ効率の変動性のために、1回目の注射(すなわち135分および150分の時点でのサンプル)直前に得られた2つの値に応じて、これらのデータを正規化した。したがって各化合物についての反復試験からのデータは、微小透析研究では通常の慣行のように基礎レベルの%で表現される。5HT総放出量に対する各用量の抽出物の効果を判定するために、各用量の投与に続く試料採取期間にわたって台形法を使用して曲線下面積(AUC)を推定し、(検定要素が処置および用量である)二元配置ANOVAと、それに続くボンフェローニt−検定を使用した個々の用量でのポストホック比較によって、試験化合物/抽出物の値を適切な対照と比較した。全ての統計学的分析は、グラフパッド・プリズム(Graphpad Prism)を使用して実施した。
【0146】
オレガノ抽出物4(10、30、および60mg/kg、i.p.)を0.2%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する食塩水に溶解する一方、基準化合物フルオキセチン(3、10および30mg/kg、i.p.)は食塩水に溶解した。0.2%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース含有食塩水または食塩水単独をそれぞれ投与した2つの対照群について、さらに調査した。
【0148】
二元配置ANOVAによって分析された、各用量処置の投与に続いて60分以内にAUCとして測定された累積5HT放出の推定(表7)はまた、オレガノ抽出物4による処置の顕著な全体的効果も示す(F(1,30)=5.61;p<0.05)。
【0149】
[実施例13:オレガノ抽出物1によるドーパミン取り込み阻害]
ドーパミンをはじめとするいくつかの神経伝達物質の作用は、細胞膜輸送タンパク質による、シナプス接合部でのそれらの迅速な取り込みおよびそれからのクリアランスを通じて制御される。中枢ドーパミン作動性ニューロン中のドーパミン輸送体は、90%までの放出神経伝達物質を回収する役割を担う。モノアミン輸送体は、コカイン、アンフェタミン、および抗うつ薬などのいくつかの精神活性薬剤の高親和性標的である。これらの作用薬は、輸送体をブロックして、その結果ニューロンへの取り込み妨げることで、中枢および末梢神経系の双方で細胞外神経伝達物質濃度のレベルを上昇させ、それらの行動的および自律神経系的効果に寄与する。
【0150】
ヒトドーパミン輸送体(hDAT)を発現するCHO−Ki/hDAT細胞をアッセイ前に播種した。10分間の50nM[
3H]ドーパミンの添加前に、細胞(2×10
5/ml)を修正トリス−HEPES緩衝液pH7.1中のオレガノ抽出物および/またはビヒクルと共に、25℃で20分インキュベートした。10μMノミフェンシンの存在下で特異的シグナルを判定した。次に細胞を1%SDS溶解緩衝液で可溶化した。ビヒクル対照と比較して、[
3H]ドーパミン取り込みの50%以上(≧50%)の減少は顕著な阻害活性を示唆する。純粋化合物(ノミフェンシンチモキノール)を0.00316、0.01、0.0316、0.1、0.316、1、3.16、10、31.6、および100μMの100μMまでの10種の濃度でスクリーニングした。オレガノ抽出物を0.00316、0.01、0.0316、0.1、0.316、1、3.16、10、31.6、および100μg/mlの100μg/mlまでの10種の濃度でスクリーニングした。これらの同一濃度を同時に別個の群の未処置細胞に適用し、顕著な取り込み阻害が観察された場合に限って、可能な化合物誘発性細胞毒性について評価した。
【0152】
[参考文献]
Girosら、1992年、Mol.Pharmacol.42:383〜390頁
Pristupaら、1994年、Mol.Pharmacol.45:125〜135頁
【0153】
[実施例14:オレガノ抽出物によるノルアドレナリン取り込み阻害]
ノルアドレナリンをはじめとするいくつかの神経伝達物質の作用は、細胞膜輸送タンパク質による、シナプス接合部でのそれらの迅速な取り込みおよびそれからのクリアランスを通じて制御される。中枢アドレナリン作動性ニューロン中のノルアドレナリン輸送体は、90%までの放出神経伝達物質を回収する役割を担う。モノアミン輸送体は、コカイン、アンフェタミン、および抗うつ薬などのいくつかの精神活性薬剤の高親和性標的である。これらの作用薬は、輸送体をブロックして、その結果ニューロンへの取り込み妨げることで、中枢および末梢神経系の双方で細胞外神経伝達物質濃度のレベルを上昇させ、それらの行動的および自律神経系的効果に寄与する。
【0154】
ヒト組み換えノルアドレナリン輸送体を安定して発現するイヌ腎臓MDCK細胞をアッセイ前日に播種した。細胞(2×10
5/ml)を修正Tri−HEPES緩衝液pH7.1中のオレガノ抽出物および/またはビヒクルと共に25℃で20分間プレインキュベートし、次に25nM[
3H]ノルアドレナリンを添加して10分間インキュベーションした。次にウェル内の細胞を2回すすぎ、1%SDS溶解緩衝液で可溶化して溶解産物をカウントし、[
3H]ノルアドレナリン取り込みを判定した。10μMデシプラミンの存在下で特異的シグナルを判定した。ビヒクル対照と比較して、[
3H]ノルアドレナリン取り込みの50%以上(≧50%)の減少は顕著な阻害活性を示唆する。純粋化合物(デシプラミン)を0.00316、0.01、0.0316、0.1、0.316、1、3.16、10、31.6、および100μMの100μMまでの10種の濃度でスクリーニングした。オレガノ抽出物1を0.00316、0.01、0.0316、0.1、0.316、1、3.16、10、31.6、および100μg/mlの100μg/mlまでの10種の濃度でスクリーニングした。これらの同一濃度を同時に別個の群の未処置細胞に適用し、顕著な取り込み阻害が観察された場合に限って、可能な化合物誘発性細胞毒性について評価した。
【0156】
[参考文献]
Galliら、1995年、J.Exp.Biol.198:2197〜2212頁
【0157】
[実施例15:カルバクロールの血漿レベルの測定]
「遊離」カルバクロール(アグリコン)および「総」カルバクロール(アグリコン+抱合形態)の濃度を64個のラット血漿サンプル中で判定した。4匹のオスおよび4匹のメスラットに、経口胃管栄養法によって、それぞれ体重1kgあたり800mgのオレガノ抽出物4の単回投与を行った。投与液は調合物1グラムあたり抽出物200mgの濃度でコーンオイル中で調製した。血漿サンプルを、胃管栄養法投与の0、0.5、1、2、3、4、6、8、24時間、および48時間後(終点)に、少なくとも3匹のオスおよび3匹のメスから収集した。
【0158】
サンプルの稼働中浄化および脱塩のためのカラム切り替えシステムを使用して、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC/MS/MS)システムによってサンプル分析を実施した。
【0159】
内部基準(D2−チモール)の添加およびタンパク質の沈殿後(「遊離」分析物の場合)またはβ−グルクロニダーゼによる予備消化とそれに続くタンパク質沈殿(「総」分析物の場合)の後、サンプルを精製カラムとして使用されたウォーターズ(Waters)XTerra(商標)MS C18ガードカラムに注入し、次にウォーターズXTerra(商標)C18カラム上に移した。検出はMRMモードのタンデム質量分析法を使用して実施した。
【0160】
較正および品質管理サンプルを5%アルブミンウシ血清溶液およびヒト血漿中で調製した。日毎の性能は、各分析バッチ内の品質管理(QC)サンプルの結果によって管理した。定量化の下限を「遊離」カルバクロールでは10.0ng/mL、「総」カルバクロールでは20.0ng/mLに設定した。
【0161】
オスおよびメスラットへのオレガノ抽出物4の経口投与後の動態研究を実施した。
【0162】
この分析研究の目的は、ラット血漿サンプル中の「遊離」および「総」カルバクロール濃度の判定であった。全部で64個のサンプルが成功裏に分析された。血漿サンプルを胃管栄養法実施後の異なる時点で収集した。投与された用量は、コーンオイル中の800mg/kgオレガノ抽出物4であった。
【0163】
測定された「遊離」カルバクロール濃度は検出不能から50100ng/mL、「総」カルバクロール濃度は検出不能から50000ng/mLの範囲であった。
【0168】
[実施例16:軟質ゼラチンカプセルの調製]
以下の成分を含んでなる軟質ゼラチンカプセルを調製してもよい。
【0170】
軽度の慢性気分変調治療のために、3ヶ月間にわたって毎日2個のカプセルをヒト成人に投与してもよい。
【0171】
[実施例17:軟質ゼラチンカプセルの調製]
以下の成分を含んでなる軟質ゼラチンカプセルを調製してもよい。
【0173】
月経前症候群および月経前不快気分障害の治療のために、毎日1個のカプセルを好ましくは月経サイクルの後半に14日間にわたり服用してもよい。
【0174】
[実施例18:即席フレーバー清涼飲料の調製]
【0176】
全成分を混合し、500μmの篩にかける。得られた粉末を適切な容器に入れて、管状ブレンダー内で少なくとも20分間混合する。飲料を調製するために、得られた混合粉末の125gを十分な水と混合して1リットルの飲料を作る。
【0177】
即席で飲める清涼飲料は、一食当たり(250ml)約30mgのオレガノ抽出物を含有する。強化剤として、および一般的健康のために、毎日2食(240ml)が推奨される。
【0178】
[実施例19:強化ノンベイクシリアルバーの調製]
【0180】
オレガノ抽出物を脱脂粉乳と予混合して、遊星形ボールミキサーに入れる。コーンフレークおよびライスクリスピーを穏やかに混合する。次に乾燥カットリンゴを添加する。第1の料理用深鍋内で、砂糖、水、および塩を上記の量で混合する(溶液1)。第2の料理用深鍋内でグルコース−、転化糖−およびソルビトール−シロップを上記の量で混合する(溶液2)。ベーキング油脂、パーム核油脂、レシチン、および乳化剤の混合物は脂肪相である。溶液1を110℃に加熱する。溶液2を113℃に加熱して、次に冷水浴中で冷却する。その後、溶液1および2を合わせる。脂肪相を75℃の水浴中で溶解する。脂肪相を、合わせた溶液1および2の混合物に添加する。リンゴ香料およびクエン酸を液体糖−脂肪混合物に添加する。液状の塊を乾燥成分に添加して、遊星形ボールミキサー内でよく混合する。塊を大理石プレート上にのせて所望の厚さに延ばす。塊を室温に冷却して小片に切断する。ノンベイクシリアルバーは、一食当たり(30g)約25mgのオレガノ抽出物を含有する。一般的健康および元気づけのために、1〜2個のシリアルバーを毎日食べてもよい。
【0181】
[実施例20:イヌのストレス解消および元気回復のためのオレガノ抽出物またはその揮発性成分を含んでなるドライドッグフード]
市販のイヌ用基礎食(例えばドイツ国D−47625 Kevelaer−Wetten Marienstrasse 80−84のMERA−Tiernahrung GmbHからのMera Dog「Brocken」)に、オレガノ抽出物またはその揮発性成分濃縮物の重量を基準として、体重1kgあたり50mgの1日量を対象に投与するのに十分な量のオレガノ抽出物溶液をスプレーする。食物組成物を乾燥すると、約90重量%の乾燥物質を含有する。毎日およそ200gのドライフードを摂取する体重10kgの平均的なイヌでは、ドッグフードは1kgあたりおよそ2500mgのオレガノ抽出物またはその揮発性成分を含有する。より体重の重いイヌでは、飼料混合物を適宜に調製する。
【0182】
[実施例21:オレガノ抽出物またはその揮発性成分を含んでなるウェットキャットフード]
市販のネコ用基礎食(例えばドイツ国D−86517 Wehringen Suedliche Hauptstrasse 38のTierfeinnahrungからのHappy Cat「Adult」)と、乾燥オレガノ抽出物またはその揮発性成分濃縮物の重量を基準として、体重1kgあたり100mgの1日量を対象に投与するのに十分な量のオレガノ抽出物またはその揮発性成分の溶液とを混合する。およそ400gのウェットフードを摂取する体重5kgの平均的ネコでは、キャットフードは1250mg/kgのオレガノ抽出物を含有する。食物組成物を乾燥すると、約90重量%の乾燥物質を含有する。
【0183】
[実施例22:オレガノ抽出物を含有するイヌ用おやつ]
市販のイヌ用おやつ(例えばドイツ国47625 Kevelaer−Wetten Marienstrasse 80−84のMERA−Tiernahrung GmbHから提供されるイヌ用Mera Dog「ビスケット(Biscuit)」)に、オレガノ抽出物またはその揮発性成分濃縮物の重量を基準として、おやつ1gあたり5〜50mgをおやつに投与するのに十分な量のオレガノ抽出物またはその揮発性成分の溶液をスプレーする。食物組成物を乾燥すると、約90重量%の乾燥物質を含有する。
【0184】
[実施例23:オレガノ抽出物を含有するネコ用おやつ]
市販のネコ用おやつ(例えばドイツ国27283 Verden/Aller Eitzer Str.215のウィスカス・マスターフーズ社(Whiskas,Masterfoods GmbH)から提供されるネコ用Whiskas Dentabits)に、乾燥オレガノ抽出物またはその揮発性成分濃縮物の重量を基準として、おやつ1gあたり5〜50mgをおやつに投与するのに十分な量のオレガノ抽出物またはその揮発性成分の溶液をスプレーする。食物組成物を乾燥すると、約90重量%の乾燥物質を含有する。