特許第5776090号(P5776090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5776090-成膜プロセス 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776090
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】成膜プロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
【請求項の数】3
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2010-164080(P2010-164080)
(22)【出願日】2010年7月21日
(65)【公開番号】特開2012-28455(P2012-28455A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2013年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】510052285
【氏名又は名称】株式会社 天谷製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088096
【弁理士】
【氏名又は名称】福森 久夫
(72)【発明者】
【氏名】楠原 昌樹
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−517409(JP,A)
【文献】 特開2009−283904(JP,A)
【文献】 特開平07−238380(JP,A)
【文献】 特開2009−038294(JP,A)
【文献】 特開2008−112751(JP,A)
【文献】 特開2007−158074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67−21/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板載置トレイの上に基板を載置した状態で基板を搬送する成膜プロセスであって、当該基板載置トレイの基板を載置する側の面に、1個あたりの体積が0.6mL以上である複数の細孔を形成し、当該細孔内の温度が変化したときに細孔から移動する気体流により当該基板と当該基板載置トレイとの間に負圧が発生するようにしたことを特徴とする成膜プロセス。
【請求項2】
前記基板の厚さは200μm以下である請求項1記載の成膜プロセス。
【請求項3】
前記温度の変化が400℃から450℃への変化であり、その際の基板の反り量は、細孔が形成されていない場合の十分の一以下である請求項1又は2記載の成膜プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板載置トレイに係る。より詳細には、本発明は、ウェハなどの基板を載置する基板載置トレイ構造に関し、特に、CVDなどの成膜プロセスに用いて好適な基板載置トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、液晶装置などの製造には、ウェハやガラス等の基板に薄膜を形成する成膜プロセスが使用される。例えば、化学気相成長(CVD)法やプラズマスパッタ法、蒸着法などが用いられる。
例えばCVD法は、所定温度に保持した基板上に化学反応生成物を堆積して薄膜を形成する。基板は載置トレイに載せられてCVD装置に搬送され、載置トレイを介して所定温度に加熱され、保持される。
ところが、基板をトレイに載置し、成膜処理時に急激な温度変化が生じると、基板には反りが生じてしまう。特に、近時は、基板の厚さは薄くなっており、例えば太陽電池用基板は、200μm以下、さらには150μm以下の厚さとなっており、かかる基板においては特に反りの発生は顕著に生じるこ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、基板の反りの発生を防止することが可能な成膜プロセスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る発明は、基板載置トレイの上に基板を載置した状態で基板を搬送する成膜プロセスであって、当該基板載置トレイの基板を載置する側の面に、1個あたりの体積が0.6mL以上である複数の細孔を形成し、当該細孔内の温度が変化したときに細孔から移動する気体流により当該基板と当該基板載置トレイとの間に負圧が発生するようにしたことを特徴とする成膜プロセスである。
請求項2に係る発明は、前記基板の厚さは200μm以下である請求項1記載の成膜プロセスである。
請求項3に係る発明は、前記温度の変化が400℃から450℃への変化であり、その際の基板の反り量は、細孔が形成されていない場合の十分の一以下である請求項1又は2記載の成膜プロセスである。
【0005】
以下に、移動する気体の体積について述べる。
気体を理想気体とする
V=πd/4
V0:細孔の体積
d:細孔の直径
【0006】
温度T1における気体のモル数n1
P1V0=nRT

∴ n=P1V0/RT1

温度Tにおける気体のモル数n
PV0=nRT

∴ n=PV0/RT

但しT1>T
∴n>n
【0007】
温度変化による気体のモル数変化Δnを求めると,

Δn=n−n=n(T/T−1)

Δn=(P・V/R)・[(T−T)/T・T

ここで,圧力P1を[atm]、容積の最小単位VOを[L]
R =
0.082057 [L atm/K mol]とする。


ΔN=Ψ・Δn=(Ψ・V[L]) [mol]
Ψ:細孔の個数

V=(πd・h)/4

ΔN=Ψ・Δn=1.25174×10−3[Ψ・(πd・h)/4] [mol]
【0008】
1 molの気体は,0℃,1 atmで,22.414 [L]の容積を占める。
これを温度400℃に変換すると,
移動する気体の体積Vは

V[L]=ΔN×22.414[L]×[(273.15+400)/273.15)

上記式Vによって移動する気体の体積が求められる。
【0009】
温度変化が急激に生じた場合、トレイに掘られた細孔の一個当りの体積が大きく、しかも細孔が沢山存在すれば,基板とトレイ間に速い気体の流れが発生し,これによりその部分に負圧が発生し基板を吸い寄せる。また,その気流は基板より温度が低いため,基板下面の温度を低下させ,基板の反りを戻す方向に働く。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、薄い基板であっても反りの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】移動する気体の体積を示すグラフである。
【実施例】
【0012】
(実施例1)
一個あたりの細孔の体積が0.6mLである細孔を20000個トレイの基板載置側の面に形成した。細孔は有底の細孔とした。
200μm厚、径200mmの太陽電池用のシリコンウエハを上記トレイに載置し、温度を400℃から450℃に変化させ反りの発生を観察した。反りは、平面からの最大の変位の量として観察した。
その結果、細孔が形成されていない場合に比べて、反りの量は十分の一以下に低減した。
図1