特許第5776102号(P5776102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5776102白金原子の原子層を有する触媒を形成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776102
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】白金原子の原子層を有する触媒を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/44 20060101AFI20150820BHJP
   B01J 37/34 20060101ALI20150820BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   B01J23/44 M
   B01J37/34
   B01J37/02 301N
【請求項の数】13
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-555400(P2013-555400)
(86)(22)【出願日】2011年2月22日
(65)【公表番号】特表2014-508038(P2014-508038A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】US2011025693
(87)【国際公開番号】WO2012115624
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2013年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】504229022
【氏名又は名称】バラード パワー システムズ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ミンフア
(72)【発明者】
【氏名】金子 桂一
(72)【発明者】
【氏名】ハンバート,マイケル ポール
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−525638(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/005773(WO,A1)
【文献】 特表2008−545604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00〜38/74
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒材料を形成する方法であって、
白金クラスターの形成を制御するように置換反応の反応速度を抑制する、
ことを含み、白金の還元電位より低い還元電位を有する金属原子の原子層は、白金原子の原子層を備える触媒材料を製造するように、白金原子と置換され、前記の抑制することは、置換反応の反応速度を抑制するように、白金に配位する化合物を3.5mMまたはそれより高い濃度で含有する酸性溶液において、触媒材料を形成することを含むことを特徴とする、触媒材料を形成する方法。
【請求項2】
金属原子は、銅を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
白金に配位する化合物は、クエン酸であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
白金に配位する化合物は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記の抑制することは、白金に配位する化合物と、金原子の少なくとも1つとの配位化合物を形成することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
金属原子の原子層は、貴金属コア上にあることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
触媒材料を形成する方法であって、
白金原子の原子層を備える触媒材料を製造するように、白金に配位する化合物を3.5mMまたはそれより高く含有する酸性溶液において、金属原子の原子層を白金原子と置換する、
ことを含み、金属原子は、白金の還元電位より低い還元電位を有することを特徴とする、触媒材料を形成する方法。
【請求項8】
白金に配位する化合物は、クエン酸、EDTA、およびこれらの混合物から成る群より選択されることを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項9】
酸性溶液は、さらに白金塩を有するとを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項10】
触媒材料を形成する方法であって、
白金の還元電位より低い還元電位を有する金属原子の原子層で被覆された金属コアを備える粒子を提供し、
白金に配位する化合物および白金塩を含有する酸性溶液であって、白金に配位する化合物の濃度が3.5mMまたはそれより高い酸性溶液を提供し、
金属原子を溶液からの白金原子と置換して白金原子の原子層で被覆された金属コアを備える触媒材料を製造するように粒子を溶液で処理する、
ことを含むことを特徴とする、触媒材料を形成する方法。
【請求項11】
電位下堆積(UPD)を用いて金属コア上に金属原子の原子層を堆積させることをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
白金に配位する化合物は、クエン酸、EDTA、およびこれらの混合物から成る群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
粒子を溶液で処理することは、粒子を溶液と混合することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、白金原子のより均一な原子層を有する触媒材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白金は、電流を生成する燃料電池内の電気化学反応などの電気化学反応における触媒材料として知られており、使用されている。白金は、炭素粒子上に支持された、貴金属の金属コア上に堆積させることができる。白金の質量活性を増加させるために、白金は、貴金属コア上の薄い層として提供される。
【0003】
そのような触媒材料を製造する従来の製造方法の1つには、貴金属コア粒子上に白金より還元電位の低い金属原子の薄い層を最初に堆積させることが含まれる。製造業者の中には、電位下堆積法を用いて還元電位のより低い金属として銅原子を堆積させる者がいる。次いでコア粒子を白金塩を含有する溶液と混合する。溶液中の白金原子は、貴金属コア上の銅原子と自発的に置換して貴金属コア上に白金原子の薄い層を生成する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
触媒材料を形成する方法であって、置換反応の反応速度を抑制することを含み、金属原子の原子層は、白金原子の原子層を備える触媒材料を製造するように、白金原子と置換される、触媒材料を形成する方法が開示される。
【0005】
別の態様では、触媒材料を形成する方法は、白金原子の原子層を備える触媒材料を製造するように、界面活性剤の存在下で金属原子の原子層を白金原子と置換することを含む。
【0006】
また、触媒材料を形成する方法であって、金属原子の原子層で被覆された金属コアを備える粒子を提供し、界面活性剤および白金塩を含有する溶液を提供し、金属原子を溶液からの白金原子と置換して白金原子の原子層で被覆された金属コアを備える触媒材料を製造するように粒子を溶液で処理することを含む、触媒材料を形成する方法が開示される。
【0007】
開示の実施例のさまざまな特徴および利点は、以下の詳細な説明から当業者には明らかとなるであろう。詳細な説明に付随する図面は、以下のように簡単に説明され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の触媒材料を説明する図。
図2】電位下堆積によって金属の原子層を堆積させる実施例を示す図。
図3】反応速度を抑制するように界面活性剤を用いる置換反応の実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、高度に活性であって、燃料電池または他の触媒環境において使用可能な実施例の触媒材料20の選択された部分を概略示す。この実施例では、触媒材料20は、炭素支持体22と、炭素支持体の表面に付着された金属コア24とを備える。金属コア24は、シェル26で被覆されている。シェル26は、白金原子の原子層である。金属コア24は、貴金属、またはパラジウム、金または他の貴金属などの金属の混合物とすることができる。
【0010】
実施例では、シェル26は、原子単層(すなわち一原子厚み)である。しかしながら、シェル26は一般に均一な厚みであるとはいえ、シェル26のいくつかの部分は、より薄い(単層未満(submonolayer))ものであったり、より厚い(数原子厚み)ものであったりすることがあり得ることを理解されたい。
【0011】
以下にさらに詳細に説明するように、金属コア24上にシェル26を形成するのに使用される方法によって、白金原子のより均一な厚みの原子層が形成され、それによって、白金の質量活性が向上する。
【0012】
シェル26を形成するのに使用される方法は、置換反応を含み、この置換反応では、白金原子は、金属コア24上の還元電位のより低い金属原子と置換する。いくつかの実施例では、還元電位のより低い金属原子は、銅である。銅は、電位下堆積法(underpotential deposition process)(UPD)を用いて金属コア24上に堆積させることができる。UPDは、原子層厚みで銅原子の一時的シェル28を堆積させる技術である。金属コア24および銅の一時的シェル28は次いで、白金を含有する溶液で処理する。
【0013】
従来の方法では、溶液内の白金原子は、還元電位のより低い銅原子と自発的に置換して白金原子の原子層を生成する。自発的置換の反応速度は、速く、結果として白金原子のシェルの厚みはさまざまなものになる。すなわち、白金原子は、1対1の関係で銅原子と置換しない。その代わりに、白金原子は、クラスターとなったり、被覆されない金属コア部分を残したりする傾向がある。
【0014】
ここに開示の方法は、シェル26の白金原子による金属コア24のより均一な被覆を提供するように、置換反応の反応速度を抑制し、既存の白金上への白金原子の堆積を制御しまたは低減することを含む。一実施例では、開示の方法の置換反応は、白金原子との銅原子の制御された置換を実現するように反応速度を抑制しまたは遅くさせる、クエン酸および/またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの界面活性剤の存在下で行う。界面活性剤は、白金塩との配位化合物を形成する。すなわち、白金塩は、還元するのがより困難となり、それによって、置換反応の反応速度が遅くなる。より遅い反応速度で、白金原子は、金属コア24の表面でクラスターとなったり、開いた部分を残したりする傾向がより低くなる。それによって、結果として得られたシェル26は、より均一な厚みと、対応するより高い質量活性とを有する。界面活性剤はまた、既存の白金原子上への白金原子の堆積を抑制することができる。界面活性剤は、既存の白金原子上に吸着することで新たに還元される白金原子と競合し、それによって、白金原子は、金属コア24上にのみ堆積することができる。それによって、白金クラスターの形成は低減する。
【0015】
図2は、実施例のUPD法を概略示す。最初に、反応前の、図の左側では、金属コア24(または複数のコア)が、炭素支持体(図示せず)上に提供される。金属コア24は次いで、UPD法で処理されて、金属コア24上に銅原子の一時的シェル28が堆積する。結果として得られた銅原子の薄い層は、一原子未満(subatomic)から数原子の厚みの範囲の原子厚みを有することができる。いくつかの実施例では、一時的シェル28は、実質的に原子単層である。
【0016】
図3に示すように、一時的シェル28の銅原子は次いで、置換反応で置換されて金属コア24上に白金原子のシェル26が生成される。この実施例では、置換反応は、上述のように、反応速度を遅くして既存の白金原子上への白金原子の堆積を制御しまたは低減し、それによって白金原子の均一な原子層を生成するように、界面活性剤の存在下で行う。
【0017】
いくつかの実施例では、界面活性剤は、金属コア24が混合される溶液内に提供する。例えば、溶液は、白金原子を提供するように、希酸、界面活性剤、および白金塩を含有することができる。希酸は、硫酸とすることができる。界面活性剤は、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、一酸化炭素、またはこれらの混合物から選択することができる。界面活性剤は、配位化合物を形成することで置換反応を抑制し、または、既存の白金原子上に吸着することで白金クラスター形成を低減する。以下は、開示の方法のさらなる実施例である。
【0018】
実施例1
白金単層触媒の調製
Pd/C粉末を、黒鉛シート上に直接、ゆるく配置するか、または、基体上に流し込み、加圧成形する。
【0019】
随意に、Pd/Cは、(a)希硫酸およびPd/C粉末の溶液を混合し、水素放出領域(例えば、−50mV対RHE)となる溶液の電位を確立すること、(b)Pd/C粉末に電位サイクルを施す(例えば、0.5〜1.1V、10mV/sの走査速度で、所定の数のサイクル)こと、または(c)Pd/C粉末を水素で30分間パージすることで清浄化する。
【0020】
Pd/C粉末の電位は、所定の時間(例えば2時間)、Cu2+(0.2MのCuSO4)および希酸(0.5MのH2SO4)の溶液中で予め決められている、銅UPD電位に保持する。代替として、溶液に銅UPD電位を決定するように電位サイクルを施す。随意に、サイクル後、溶液は、約30分間その電位に保持する。
【0021】
希酸(例えば0.05MのH2SO4)中の白金塩(例えばK2PtCl4)の溶液を調製する。白金塩の量は、Pd/C粉末上の全ての銅原子を置換するように計算された量の約1.1から3倍である。次いでクエン酸を3.5mMまたはそれより高い濃度で溶液に添加する。
【0022】
白金塩溶液は次いで、触媒を製造するようにPd/C粉末を含有する溶液と混合する。混合は、スポイトまたはピペットを用いてPd/C粉末を含有する溶液を白金塩溶液に添加することを含むことができる。溶液は、Pd/C粉末を分散させるように超音波を用いて振動させることができる。
【0023】
触媒は次いで、溶液からろ別して、熱湯で洗浄する。触媒は、水素でパージするか、希酸で洗浄することでさらに清浄化することができる。
【0024】
実施例1で製造された触媒は、比較的高い質量活性を示した。実施例1で製造された触媒は、0.6A/mgの白金質量活性を示した。これに比較して、界面活性剤なしで製造された触媒は、0.36/mgの白金質量活性を示した。
【0025】
特徴の組み合わせを例示的な実施例に示したとはいえ、それらの全てを組み合わせることが、本開示のさまざまな実施例の利点を実現するために必要なわけではない。すなわち、本開示の実施例によって設計される系は、図面のうちのいずれか1つに示される特徴の全て、または図面に概略示される部分の全てを必ずしも含まない。さらに、例示的な一実施例の選択された特徴は、他の例示的な実施例の選択された特徴と組み合わせることができる。
【0026】
上記の説明は、本質的に限定ではなく例示である。本発明の本質から必ずしも逸脱しない、開示の実施例に対する変更および修正が、当業者には明らかとなり得る。本開示に与えられる法的保護範囲は、添付の特許請求の範囲を検討することでのみ決定可能である。
図1
図2
図3