(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<成形装置の全体構成>
本発明の成形装置は、熱成形機である真空圧空成形機、若しくは圧空成形機、を構成するものである。真空賦形機能を持たない圧空成形機の場合は、少なくとも冷却工程で、賦形体を成形型へ吸引固定する機構を付加して構成させることが望ましい。圧空成形機には通常、加熱板または圧空ボックス、及び成形型を上下可動させる機構を有しており、これを利用して構成することができる。
本発明では、成形材料シートの周辺以外は成形材料に終始無接触で圧空空間を形成する機構を圧空ボックス機構と総称する。単純には圧空ボックスを使用すればよいが、後述するようにこれに限るものではない。なお、圧空ボックス機構は、加熱気体を送出して圧空賦形できることが好ましい。
本発明では、材料シートの直接予熱と圧空成形を同じ加熱板を用いて行う構成は採用できない。この構成とした場合加熱板温度は、予熱適正温度に限られ、これとはかけ離れた任意の温度の気体送出に支障をきたすからである。
本発明では、樹脂シートの予熱は、赤外線オーブン、熱風オーブン等を利用する間接加熱は公知のどのような方法も採用できる。しかし直接加熱の場合は圧空ボックス機構以外の加熱体との接触である必要がある。なお、本発明では特別な態様として予熱オーブン等の予熱手段を利用せず、特定の圧空ボックス機構を用いて、予熱と圧空賦形をほぼ同時に行うこともできる。
本発明ではプレス機の底板に特定構成の成形型を固定し、その直上の天板に上記の圧空ボックス機構又はその主体を固定し、両方又はそのどちらかが可動すなわち両者の接触と離反が可能なようにして、更に上記成形型の周辺に、圧空ボックスの離反移動後に成形型の上部に対して進退して賦形体を冷却する冷却手段を配置する。本発明の装置構成において、成形型は特に重要であり、後述する特定の構造と成形型表面をなんらかの方法で加熱する手段を有するものを用いることが特徴である。
このような、本発明の装置構成では、成形用の樹脂シートは、通常は先ず予熱オーブン等で予熱されて成形型の上に導かれる。そして予熱されたシートが成形型上に到着すると、直ちに成形型と上記圧空ボックス機構主体が接近して閉じた圧空空間を形成する。この空間には、直ちに圧縮気体が送られ圧空賦形とそれに続く熱処理がなされる。その後、圧空ボックスの離反移動した空間に後述の冷却手段が進入して賦形体を冷却して離型させる。
図1及び
図2は上記本発明の装置構成の例を示すものである。
図1の構成では外部で加熱された、高温高圧の気体を導入して圧空成形がなされるが、
図2の構成では常温の圧縮気体を用いて圧空成形がなされる。各図に基づく説明は後に譲る。
なお、圧空ボックス機構あるいは成形型の移動は、必ずしも垂直な上下動でなくてもよく、それぞれ任意に斜め方から接近して圧接し離反してもよく、また特定の軌道で接近し圧接して離反してもよい。
なお、圧空ボックスと成形型の位置関係は相対的なものであり、圧空ボックスの上昇は成形型の降下と同義であって成形型を降下させてもよく、また両者を関係を倒置して圧空ボックスを下に成形型上に配置させてもよい。また、特別な態様として、プレス機を横転させてもよく、重量の大きい成形型等を、軽快に開閉でき好ましい方式として利用できる。何れも本発明に含まれる。
なお、特別な態様として、上記のように冷却手段を成形型上部に移動する代わりに、賦形体を保持した成形型を冷却手段の下部に移動させてもよい。
なお、本発明を構成する熱成形機は、短尺の材料シートを一枚ずつ成形する枚葉成形機であってもよく、また長尺の材料シートを一方の端から順次に成形する連続成形機でもよい。
本発明の発明者(以下本発明者と称する)は同発明者の先行出願である特願2010−118555に示されている成形型を用いた具体的な装置構成を特願2011−41294として出願している。
本発明は、上記出願に示されている成形型、及び新たに手続き中の出願に開示している新規の成形型を用いた上記とは別の装置構成を考案したものである。なお、本発明とは別に本発明者は、ほぼ同様の成形型を用いた別の装置構成も考案し出願手続き中である。
【0016】
<圧空ボックス機構について>
本発明における、上記圧空ボックス機構は、その周辺部と成形型(あるいは成形型収納ボックス周辺部)で樹脂シートを挟みながら、圧空ボックスはその周辺部以外は樹脂シートと一度も接触することなく、成形型の全面を覆って閉鎖空間(圧空空間)をつくり、その空間に圧縮空気を送り出すための機構であり、その機能を果たすものはどのような形態ものであってもよい。単純には圧空ボックスを使用すればよいが、これに限るものではなく、またその形も方形限らず、円筒形、多角形、ドーム形など、どのような形でよい。
具体的な形態例は
図1及び
図2に示した。しかし、これらの例のように初めから空間を形成していなくてもよく、特殊な態様として、公知の圧空ボックスではなく、公知の加熱板状体様の形態のものであっても、後述する
図3のような構成にすれば、樹脂シートと接触させずに圧空空間を形成させることができ、これも本発明の圧空ボックス機構とすることができる。
圧縮気体は、空気、窒素、二酸化炭素などを圧縮したものが用いられ、高温の圧縮気体は、これらの圧縮気体を別の加熱装置で加熱したものが利用される。なお高温の圧縮気体には、これらに水分を含んだ乾燥過熱蒸気も好適に利用できる。
なお、高温圧空を行う圧空ボックス機構には、外部から加熱圧縮気体を導入してもよいが、常温圧縮気体を導入して圧空ボックスの中で加熱するようにしてもよい。
導入される圧縮気体の温度は250〜600℃であることが望ましい。また
噴射孔からの噴射気体温度は250〜500℃であることが望ましい。気体の熱容量は小さいので、その熱量は賦形体を通じ成形型に散逸しやすく、この温度以下では十分に迅速な昇温ができない。
なお、高温圧空を行う圧空ボックス機構の、成形型に対面する面は赤外線の放射ができることも望ましく、具体的には放射効率の高い表面特性を持ち、そして高温に保持されていることが望ましい。またこの場合、常温気体により圧空賦形を行うように構成してもよく、加熱気体による圧空賦形を行うように構成してもよい。
【0017】
本発明者は、本発明とは別に、圧空ボックスを用いず加熱板を用いて樹脂シートの予熱と圧空成形を行う装置について出願手続き中である。本発明の装置では、別出願の加熱板を用いる方式とは異なり、圧空ボックス機構と樹脂シートの接触がないので、任意の温度で予熱でき、予熱温度に影響されず任意の温度で圧空賦形と熱処理行うことができ種々の利点がある。そして特に高温気体を用いる場合に利点が大きい。これらの利点として、a)高温の加熱板による直接加熱と違って、噴射孔跡、火傷様外観、透明度低下などが発生しにくい、b)加熱板に影響させることなく非常な高温気体を用いることができ、高速で熱処理昇温ができる。c)同様に非常な高温気体を用いることがでるので、利用できる成形型の選択自由度が大きくなる事などを挙げることができる。
【0018】
上記の圧空ボックスを含む本発明の成形装置の構成例を
図1に示す。ここに示す圧空ボックス30は加熱圧縮気体を利用するものであり、31の本体、32の加熱ヒーター、33の加熱圧縮気体の導入路、34の分岐空間、35の噴射孔、36の赤外線放射面より構成される。31の本体炭素鋼、ステンレス鋼などで作られる。36の赤外線放射面は、赤外線放射用の塗料塗布など放射効率を高め、又32の加熱ヒーターから伝熱により十分に高温になるようにつくられている。40は冷却媒体を噴出する冷却手段、100は成形素材の樹脂シートである。60は本発明に用いる特別な成形型構成の1つであり、本明細書の「問題解決の手段」の欄の(2)に述べたものである。成形型の構成60は、61の表面層、62の背後層からなるものを固定板66に固定し、収納ボックス67に収納したものである。本図では導入される高温圧縮気体の生成手段は省略されている。本図は、予熱された樹脂シートが導入されたところで、賦形前の状態を示したものである。成形型の詳細は<成形型について>の欄で説明する。
【0019】
上記の別の圧空ボックスを含む成形装置の構成例を
図2に示す。30の圧空ボックスは、本体31の本体、33の常温圧縮気体の導入路、34の分岐空間、35の噴射孔より形成されている。40は冷却手段の1例で、41は冷却媒体導入路、42は空洞、43は噴出孔、44は本体ボディを示す。冷却手段は<冷却手段について>の欄で説明する。成形型の構成は
図1に示すものと同じ成形型を熱媒通路又は加熱ヒーター65を内蔵する固定板66に固定しものを収納ボックス67に収納している。
なお、本図は樹脂シートの圧空賦形と、高温設定の成形型との接触による熱処理後で、成形型上部に進行したし冷却手段40による冷却工程を示したものである。
【0020】
上記の圧空ボックス機構の別の幾つかの態様例と特別な作用機能について説明する。
1)上記圧空ボックス機構の上記とは別の態様として、常温気体あるいは加熱気体を噴射するように構成された加熱板と、成形型収納ボックスの壁面により上記の機能を有する圧空空間を形成させることができる。
図3でこれを説明する。ここでは、先ず予熱された樹脂シートが成形型を収納した収納ボックス67の上に導入し、次いで成形型側から少し真空引きして、樹脂シートを引き込み状態又は半賦形の状態にした後、圧空ボックスの構成主体(すなわち加熱板)10を降下させて樹脂シートの縁部を押圧する。このとき圧空空間18が形成される。この場合、加熱板10と成形型収納ボックス67の上端部で圧空ボックス機構を形成しているものみなすことができ、実質的にもその機能を果たすことができる。なお、この例では圧空ボックス機構主体は、11の本体、12の加熱ヒーター、13の加熱圧縮気体導入路、14の分岐空間、15の噴射孔、17の断熱材から構成されている。なお40は冷却手段、60成形型構成であり、これらについてはそれぞれ別の欄で詳述する。
2)上記圧空ボックス機構の上記とは別の態様を説明する。上記圧空ボックスと成形型に保持された樹脂シートで形成する圧空空間から、気体を外部へ逸散させながら上記圧空ボックスから圧空空間内へ気体を送出する手段を備えることは非常に好ましい。この手段により、気流が生まれ効率的に熱処理昇温ができるようになる。具体的には、例えばa)圧空ボックスに小さな排気口を設ける、b)成形型収納ボックスの壁面上部に小さな窪みを設ける、c)圧空ボックスと成形型を微細で精密に離反作動する制御機構を付加するなどの方法を挙げることができるがこれらに限るものではない。
このような手段で、一部の気体を排気しながら圧空賦形してもよく、圧空賦形直後に排気を作動させて気体送出を続けるようにしてもよい。前者の場合は、圧空賦形圧が低下することになるが、それを見込んで設計すれば問題はない。
3)上記圧空ボックス機構の上記とは別の態様として、赤外線照射の機能を付与した前記の圧空ボックスを用いた場合について説明する。すなわち、圧空賦形後、高温気体送出と併用せず赤外線のみによる熱処理昇温させるように装置構成してもよい。その場合、圧空賦形のためには常温気体を用いてもよく、又加熱気体を用いるようにしてもよい。
4)上記圧空ボックス機構の上記とは別の態様を説明する。すなわち、圧空ボックス機構により、樹脂シートの予熱と賦形を同位置で、そして場合によってはそれを殆ど同時に行うことのできる構成である。その1つは、予熱されていない樹脂シートを、赤外線照射の機能を有する前記圧空ボックス位置に導入して赤外線による予熱を行って、あるいは予熱を行いながら圧空賦形を行うように構成である。別の1つは、加熱気体を微速で噴出させて予熱を行いながら圧空賦形を行う構成である。なお、両者を共に行う構成であってもよい。
5)上記圧空ボックス機構の上記とは別の態様を説明する。すなわち、圧空ボックス機構に通常プラグと称される物体を取り付け、プラグアシスト賦形を行うことのできる構成にすることができる。この場合、プラグからは送出する低温気体により圧空賦形を行い、圧空ボックス本体からは送出する高温気体により賦形体の昇温を行ってもよい。なお、プラグは圧空ボックス本体に固定取り付けでも良く、またプラグのみが進退可能であるよう取り付けてもよい。
【0021】
<冷却手段について>
冷却手段は、成形型または成形型群の略全面を覆う寸法と形状を有し、成形型に向けて多数の開口を設けるか又はノズルを装着し、冷却用媒体を噴出させる構造のものであれば、どのような構造のものも用いることができる。冷却手段は、上記成形型の周辺に駐在し、加熱板の離反移動後に、成形型の上部に対して進退するように構成させる。
なお、本発明の構成に使用する冷却手段では上記ノズルは個々に拡散噴射のできる構造であることが好ましく、また、大きい成形型あるいは複数個の成形型を用いる場合は複数の噴射ノズルをもった冷却手段が好ましい。なおまた、すくなくとも冷却工程では、賦形体を成形型へ吸引固定する機能が作動するように構成することが望ましい。
なお、上記態様に限らず本発明に用いられる冷却手段は、作動位置に進入後に下降しながらあるいは、下降して冷媒噴射をする手段が付加されたものであることは非常に望ましい。
なお、上記態様に限らず本発明に用いられる冷却媒体としては、水やアルコール等の揮発性液体、空気、窒素、二酸化炭素などの圧縮された気体を単独、あるいは併用して用いることができる。揮発性液体の場合は、単独で分割噴射してもよく、噴射前の気体中へ噴射するなどしてもよい。冷却用気体は通常温度のものでもよいが、冷却したものも好ましく利用でき、断熱膨張の冷却効果やドライアイスによる冷却を利用してもよく、あるいはドライアイスの粉粒の混合した気体噴射も利用できる。
【0022】
(1)上記の冷却手段の具体的な態様例の1つを
図2の一部として示す。これは特許4057487号公報に開示されているものと同じである。この例は、函体に、成形型に向けて多数の開口を設けるか又はノズルを装着し、この函体に導入した冷却用気体を噴出させるようにした構造のものである。この態様では、賦形体を加熱板等からの高温放射加熱から遮断し効率よくこれを冷却することができる。冷却手段40は、函体状の本体44、冷却媒体の導入路41、空間42、多数の噴射孔43より構成され、導入された圧縮気体が、43から噴射される。
【0023】
(2)上記の冷却手段の別の態様例を
図4に示す。冷却手段40は、枝別れした管材から成る本体44がフレーム46に固定してまとめられている。導入された冷却媒体は、ノズル43から噴射され、賦形体110の面で反射され、管材間の空間45を通過した放散される。この態様では、排気の逸散が容易であり賦形体の全面を均一に能率的に冷却することができて好ましい。
【0024】
(3)上記の冷却手段の別の態様として、 上記のような気体噴射手段にとして、賦形後の樹脂シートに向けて揮発性液体を噴射する手段を備えた構成のものを示すことができる。なお、この噴射手段の先端部は圧空ボックスの内部にあってもよく、又その外部にあってもよい。また、この噴射先端部は、独立したノズルであってもよく、また前記冷却用気体の噴射ノズルと兼用または複合する機構のものでもよい。液体噴射は前記気体噴射と同時におこなってもよく、また交互に行ってもよい。あるいは又、噴射前の冷却気体中にこの液体を噴射混入させながら噴射するようにしてもよい。なお、この噴射先端は進退動する上記冷却手段に必ずしも搭載されていなくてもよく、どこかに固定されていて必要な時点に賦形体向けて噴射できるものでもよい。これら何れの方式好ましく用いられる。揮発性液体の噴射により、液体の比熱と蒸発潜熱により効果的に冷却を行うことが可能となる。
この態様の例の1つを
図5に示す。冷却手段40は、函状体からなる本体44、冷却用圧縮気体の導入路41、空間42、気体噴射ノズル43、揮発性液体導入路48、揮発性液体の噴射ノズル49から構成される。気体噴射と液体噴射は同時に行ってもよく、また任意に時間を分けておこなってもよい。この態様は強力な冷却ができ好ましい。
【0025】
<成形型について>
本発明の構成には、成形型して熱浸透率(kJ/
m2s1/2K)が0.01〜15である材料により成る表面層と、この表面層の背後に接してこの層の全展開面を定常的に均一な温度に調整する手段を含む構成のものを用いる。このような成形型の一部については、本発明者を発明者とする先行出願の特願2010−118555に開示しているものでる。また成形型の他の一部については、本発明者を発明者として別途出願手続き中のものである。
熱浸透率(kJ/
m2s1/2K)が0.01〜15である材料は、プラスチックス、セラミックス、選ばれた少数の種類の金属材料等を挙げることができ、これらは熱成形の金型として通常使われるアルミニウム材、亜鉛合金材等よりも小さな値のものである。参考のために、幾つかの材料の熱浸透率を表1に示す。この表の記載は、採否を限定するものではなく、強度等他の物性から採用し難い材料も含まれる。また表に記載のないものも任意に利用してよい。
なお、表面層材料の上記の熱浸透率は、10以下であることが好ましく、5以下であることが更に好ましい。またこの表面層の厚みは0.04mm以上であることが好ましく、また0.06mm以上であることが更に好ましく、0.1mm以上であることがまた更に好ましい。又同厚みは30mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが更に好ましく、5mm以下であることがまた更に好ましい。
なお、成形型は、熱成形型の通常の方法として賦形時の排気を行う微細孔が設けられ、真空吸引できるように装備される。
なお、上記熱浸透率の意味と各種材料のデータについては後に「本発明の内容についての補足説明」の欄と表1で詳述する。そして、また上記の数値限定の意義にいても同欄で説明する。
【0026】
(1)このような成形型の代表的な態様として、上記所定の熱浸透率を有する材料により表面層を形成させ、更に、表面層の背後をなす背後層を表面層より大きな熱浸透率を有する材料で形成させた構成のものである。本発明の装置で気体噴射等による加熱あるいは冷却を繰り返した場合、表面層が部分的に熱が蓄積し、過熱あるいは、過冷となりやすい。この態様では、表面層の全展開面を定常的に均一な温度に調整する手段は背後層が担い、この層の大きな熱浸透率により面方向の熱移動が促進される。しかしこの態様で成形型自体に加熱手段を付加しない場合は、赤外線を照射するか、加熱気体を噴射して賦形体を加熱昇温する手段を備えることが必要であり、これにより賦形体を経由して表面層が加熱される。
なお、背後層の熱浸透率は、表面層のそれより大きくかつ、3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることか更に更に好ましい。また表面層のそれより2倍以上であることが好ましく、10倍
以上であることが特に好ましい。なお、背後層の厚みは限定するものではなく、また一定の厚みあるいは形状に限定するものではない。またこれを単一材料の層に限定するものではなく任意の多層にしてもよい。
【0027】
上記(1)の態様の具体例は
図1の成形型構成60に示されるものである。それは、61の表面層、62の背後層(背後体)、63の真空排気孔、64の排気通路からなる成形型を、加熱温調手段を有しない固定板66に固定し、成形型収納ボックス67に収納した構成である。この成形型は
図6に示されている成形型のから温調手段を除去したものである。より具体的には、例えば鉄、アルミニウム等の熱浸透率の比較的に大きい材料による背後層の上に、ポリイミド(b値0.36)、PEEK、エポキシ樹脂など高耐熱樹脂、あるいはジルコニヤなどの熱浸透率の比較的に小さな材料により表面層を形成させればよい。それぞれの熱浸透率は表1に示すように、本発明に該当するものである。
【0028】
上記(1)の態様の別の具体例を図 6に示す。 成形型50は、51の表面層、52の蓄熱均一化層、53の真空排気孔、54の真空排気通路、55の保持体(背後体)から構成されている。より具体的には、上記と同じ表面層の背後に、銅(b値33.9)、アルミニウム(b値23.3)などの熱浸透率の非常に大きな材料により比較的に薄い背後層すなわち蓄熱均一化層形成させ、その背後を保持体(背後体)で保持する。この保持体(背後体)は、出来うるかぎり熱浸透率が小さい材料であることが好ましく、例えばエンジニヤリングプラスチック、選ばれたセラミックス材料を用いるとよい。そして、場合によってはその背後体はないことが好ましい。こうした構成で蓄熱均一化層は前の成形サイクルの加熱気体噴射で得た熱を蓄積して、次のサイクルで全面に温度均一化しながら表面層を昇温する働きする。この態様は、定義の上では、上記(1)の中の特殊な態様であるということができる。
【0029】
(2)成形型のその代表的な別の態様として、上記所定の熱浸透率を有する
材料により表面層を形成させ、表面層の背後をなす背後層を表面層より大きな熱浸透率を有する材料で形成させ、この背後層の内部または外部に温調手段を付加させた構成を示すことができる。
背後層の熱浸透率は、表面層のそれより大きくかつ、3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることか更に更に好ましい。また表面層のそれより2倍以上であることが好ましく、10倍
以上であることが特に好ましい。なお、背後層の厚みは限定するものではなく、また一定の厚みあるいは形状に限定するものではない。またこれを単一材料の層に限定するものではなく任意の多層にしてもよい。
【0030】
上記(2)の態様の具体例を
図7に示す。成形型60は、表面層61と背後層62から構成され、63は真空排気孔、64は排気通路、65は加熱温調用の熱媒通路を示している。より具体的には、アルミニウム材5052の背後層の上に、0.5mmのエポキシ樹脂層をつくり、背後層と表面層を通じ成形面に微細な熱電対先端を露出させて製作した成形型は高性能である。
なお、熱媒通路65などの加熱手段はこの位置に設けず、成形型を固定する固定板に任意の加熱手段を設けるようにしてもよい。
【0031】
(3)成形型の上記とは別の態様として、上記所定の熱浸透率を有する材料に
より表面層を形成させ、その背後の略全面に直接して加熱温調手段を展開した構成とする。この場合の表面層の構成は材料、寸法形状ともに上記態様と同じであり、望ましい構成も同じである。一方加熱手段の更なる背後については背後物体の有無、あるいは材質、形状ともに特に制約するものではない。
【0032】
上記(3)の態様の具体例を
図8に示す。成形型本体70は、71の表面層、75の発熱層、72の背後層からなり、73は真空排気孔、74は排気通路、76はリード電線を示す。より具体的なものの1つは、セラミックスの背後層とし、その上にステンレス薄膜とPEEK樹脂薄膜からなる面状発熱体を敷き詰めて貼り、更にその上に表面層として0.2mmのPEEK樹脂フイルムを圧空賦形し、そのままの状態で本体と共に380℃に加熱焼成して製作することができる。
【0033】
<成形方法について>
前記した本発明の装置を用いて、樹脂シートの予熱工程、賦形工程、この予熱工程よりも高温で熱処理する熱処理工程と、そして冷却工程を備える熱可塑性樹脂シートの成形方法を実施することができる。又これらの工程を高速で進めることができ、長尺の成形材料樹脂シートを用いて効率的な連続成形を行うことができる。
代表的な方法としては、先ず樹脂シートを赤外線オーブン、熱風オーブン中に送って予熱し、ここで予熱されたシートを成形型と圧空ボックス機構の間に送る。次いで成形型と圧空ボックス機構で、予熱されたシートを挟み込み圧空賦形と加熱処理が相次いで成される。ここで加熱された賦形体は、そのあとで接近してきた冷却手段の冷却媒体噴射により冷却され、離型されて成形品となる。
なお、予熱工程は特別な態様として予熱オーブン等の予熱手段を利用せず、圧空賦形位置で、加熱気体の送出あるいは赤外線放射により予熱と圧空賦形をほぼ同時に行うこともできる。上記の熱処理工程では、高温の成形型面で、そしてあるいは圧空空間に噴出される高温気体により賦形体の温度は賦形時の予熱温度以上に高められる。
なお、賦形体の変形を防ぐために、賦形体を成形型の真空引きによる賦形体の固定を、少なくとも冷却工程を通して行うことが必要であり、なお賦形以後の各工程を通じてこれを行う事が望ましい。
なお、本発明の装置では、真空賦形に続いて、前記の高温圧縮気体による昇温熱処理も行うこともできる。後者の方法は、樹脂シートが薄くて熱に敏感すぎる場合などに好適である。
通常の熱成形は、樹脂シートの予熱、賦形、冷却、離型の過程を経てなされる。これに対して本発明では賦形から冷却までの間に、樹脂シートの賦形時以上の高温の熱処理を行うことが特徴であり、また均一な製品を高速連続成形できることが特徴である。
本発明の方法に適する成形材料については後の「本発明の装置構成の利点と応用分野」の欄で述べる。
【0034】
なお、本発明の成形方法について、模式図を用いて更に詳述することとする。本発明の装置を用いて行う熱成形方法は、幾つかにパターン化して説明することができる。そのパターンは、連続成形に伴う成形型の表面温度軌跡を模式的に表したもので、
図9はその代表の1つのパターンAを示したものである。これは、
図7で示される成形型を用いて表面層直下の背後層温度測定したときに示される一定の定常温度(S線)を、表面温度の最高点と最下点との間となるように任意に設定制御し、加熱気体又は加熱気体ブロウ、および冷却ブロウを行う方法である。このパターンが可能であるのは、S線温度を超えた高温への昇温を、十分な高温の圧縮気体に依存できる場合であり、それは
図1の装置構成で可能性であるが、
図2の構成では実現できない。
図9の太線部分は賦形体が成形型表面と接触した状態を、細線部分は賦形体が除去されている状態を示す。ここでは、シートの予熱温度は示されていないが、当然上記最高点より下回り、延伸PET材料の例を挙げるなら、予熱適温は80〜100℃程度であり、熱処理適温は上記表面温度(賦形体との界面温度)で160−190℃程度であり大きな差がある。
なお、
図6に示すaゾーンで賦形体の高温気体による加熱ブロウが行われ、bゾーンでは冷却ブロウがおこなわれ、cゾーンでは賦形体の離型排出と新成形材料の配置が同時に行われる。なお、賦形工程は、実際的には高温気体による圧空賦形を行うかあるいは真空賦形を行いながら高温気体ブロウを行えばよい。賦形は瞬時なされ、実質的に賦形と殆ど同時にaゾーンが始まる。
また、
図9では、aからcまでの1サイクルの更なる詳細を1〜5のように区分して示しているが、1では、背後層の高温により表面温度の自然回復がなされ、2では背後層温度と高温気体の両者により、3では高温気体のみにより表面温度の上昇がなされる、4背後層温度と冷却ブロウの両者により、5では冷却ブロウによってのみ表面温度が冷却されて離型可能な状態になる。
【0035】
上記とは別の代表的パターンCを
図10に示す。 背後層の定常化温度(S線)を表面温度の最高点 ほぼ同温又はそれ以上になるように設定し、圧空賦形、熱処理に次いで冷却ブロウを行う方法である。熱処理温度への昇温は、背後層からの伝熱依存するところが大きく、加熱ブロウの気体温度が比較的に低い場合でも実現できる。しかし加熱ブロウの温度が高ければ高速で昇温できる。一方このパターンでは、冷却は冷却ブロウに専ら異存することになるのでより強力な冷却ブロウが望ましく、冷却による降下温度が小さくてもよい用途に適する。このパターンは
図1の装置構成で実施でき、又
図2の構成でも実施できる。
なお、
図10に示すaゾーンでは成形型からの伝熱により賦形体の昇温加熱が行われ、bゾーンでは冷却ブロウがおこなわれ、cゾーンでは賦形体の離型排出と新成形材料の配置が同時に行われる。なお、賦形工程は圧空賦形又は真空賦形の方法で瞬時に行われ、工程の終了と殆ど同時にaゾーンが始まる。aゾーンでは、圧空賦形後の空気ブロウは停止される。パターン場合と同じに、賦形工程に続けて加熱ブロウを行うことも可能であるが、その場合は加熱ブロウ温度が十分高いことが望ましい。それが十分に高くない場合は昇温を阻害し好ましくなく、
図1の装置構成では十分に高い空気温度が得られない。
【0036】
上記とは別のBパターン(図示省略)として、背後層の定常化温度(S線)を表面温度の最下点ないしはそれ以下になるように設定し、加熱気体圧空又は加熱気体ブロウを行う方法がある。この場合、冷却ブロウは行わなくてもかなりの冷却が進むがやはり冷却ブロウを行って短時間に冷却離型を行うことができる。この場合は、熱処理温度への昇温は加熱気体に専ら異存することになるので、熱処理温度が比較的に低くてよく、冷却を強くしなければならないような成形に向く。具体的には、例えば成形品の耐熱性向上をそれほど必要としない場合などである。成形型としては表面層材料のb値の小さいもので製作したものが適する。
【0037】
なお、これらのパターンは代表例として区分したもので、方法を限定するものでなく種々の変形が可能であり、例えば(1)賦形あるいは離型を温度軌跡の最高点や最底点に限るものではなく、最低点より高いところで賦形を始めてもよく、また最高点到達以前に離型を行ってもよく、また最高点を過ぎてから賦形を始めてもよく、又最低点以前に離型してもよい、また(2)加熱気体や冷却気体を賦形体の不在時に直接型表面にブロウして温度回帰を促進することもできる。 あるいはまた、(3)賦形後に加熱手段適用または冷却ブロウ適用を任意の時点で一時的に停止し、成形型からの伝熱を利用してもよく、これらの変形がどのようなものであれ、上記最高点、最下点を一定に定常化が可能であればよい。
(本発明の装置構成の利点と応用分野)
【0038】
1)特許4057487号の開示する装置では、成形材料を加熱板に接触させて予熱し、この加熱板にあけた通気路を通じて外部から高温気体を導入して圧空成形を行う。これに対して、本発明の装置では、局部加熱になりやすく又通気開口のある加熱板に、成形材料が接触することがないので、接触マークなどがなく、均一な成形品を得ることができる。また予熱温度に制約されない任意の気体温度で圧空成形でき、そして未公知の新しい機能を有する成形型を利用することにより、広範囲の成形条件を設定することが可能にしたものである。特に、予熱温度を大幅に超える高温の熱処理でも問題になく容易に実行できる。その結果、高温の熱処理と冷却を伴う広範囲の成形品の高速成形が可能となっている。
2)本発明者を発明者とする特願2011−41294の装置では、圧空ボックスと冷却手段を重ねて一体とした構成となっていて、圧空手段と冷却手段の交代移動がなく、連続高速成形に好都合である。
これに対して本発明の装置では、圧空手段と冷却手段の交代移動を行うので、冷却手段が圧空賦形の障害にならず、冷却手段を自由に設計でき強力な冷却が可能となっている。また、プレススパンの比較的小さな既存熱成形機
でも装置構成することができる。
3)延伸材料の成形では、延伸ポリエステルの熱固定成形に特に好適に利用でき、その他にも、熱可塑性ポリエステル樹脂、PLA樹脂、ポリプロピレン、ポリアミド、PEEK等の結晶性樹脂の延伸シートの熱固定成形り利用できる。またその中でも延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂シートの熱固定を伴う熱成形に特に好適に利用することができ、予熱の適温の80〜100℃に加熱し、熱固定に適する160〜190℃に迅速に加熱しそして迅速冷却離型するというプロセスを担うことができる。そして安定で効率よくまた連続的に高透明、高耐熱で高剛性の好ましい成形品を得ることができる。
4)延伸処理を行っていない材料の成形では、例えば(1)通常の結晶性PET(CPET)の成形、あるいはまた(3)ポリプロピレンのSPPF成形(固相高圧成形)に応用し、この成形方法の欠点を解決(残留応力歪みを緩和して耐熱寸法安定性を向上)する新規の方法等を提案することができる。
(本発明の内容についての補足説明)
【0039】
(1)<熱浸透率について>
本発明の規定値として用いた熱浸透率(b値)は接触する物体と界面を通過して移動する熱量にかかわる物体の特性値であり、次の式で求められる。
b=
(λρC)1/2 ・・・・・(1)
λ; 熱伝導率(J
s−1m−1K−1)
ρ; 密度(kg
m−3)
C; 比熱(J
kg−1K−1)
このb値が小さい物体は界面に少ない熱量しか流さず相手物体に大きな温度変化を与えず、また界面間近では相手物体から大きな温度影響をうける。
従って、このb値が小さい材料を成形型表面材料として用いた場合は賦形体からの熱を拡散させないので、高温気体と冷却用気体により賦形体を容易に加熱冷却することができる。しかし背後層の熱を容易に表面層表面(賦形体体との界面)に伝えないので、表面温度の均一性が高く、高速で安定な条件設定のためには、表面層の厚みを小さくするか、あるいはこのb値をある程度大きくすることにより、成形材料に合わせて最適にすることができる。
なお、b値の参考例を示すと例えば、アルミニウム材は17〜23程度、鉄材は13〜16程度、銅34程度、不錆鋼(SUS306)は8.0で、多くの合成樹脂は0.2〜0.8程度、多くのセラミックスは1〜20の間に入る。
なお、表1にいくつかの材料のb値を例示する。なお、b値も測定温度により若干違った値を示すが、本願においては、厳密には20℃の測定値にて規定することする。 ただし、20℃から200℃の間の変化に直線性を有しない材料、例えば相変化を伴う蓄熱剤などとの複合材料の場合は、100℃、150℃の値の平均値を採用することとする。
なお、同じ材質でも、発泡体あるいは多孔体などに形状が変われば、この値が大きく変わることは留意を要する。
【表1】
【0040】
(2)<成形型構成の数値限定の意義について>
上記成形型の表面層として熱浸透率b値の大きな表面材料を用いた場合は、賦形体から容易に熱を背後に分散させてしまうので、熱容量の比較的に熱容量の小さい加熱空気や冷却空気では容易に賦形体を加熱冷却できなくなり、この値が10を超える材料である場合は、能率的に熱処理を行う成形を行うことができない。この値は小さいほうが好ましいが、0.01より小さいものは強度など使用に耐える材料がない。
上記の成形型において2層以上の構造とし、表面層の背面層を一定温度に制御して、賦形体を介して加熱気体および冷却気体により昇温降温変化する表面層の成形面温度を所望の基準温度へ迅速に回帰させることができる。
この場合、表面層の厚みが30mmを超える場合は背後層の制御が、上記表面温度と呼応して定常状態に至る時間がかかりすぎ、実施的に効果がない。また、この厚みが0.03mmを下回る場合は背後層の温度の影響を大きく受けて、迅速な賦形体の昇温降温を促進する効果がなくなる。例えば、公知の成形方法において、潤滑離型のために金型に仮に弗素樹脂等のコートが成されることがあったしても、そのコート厚みは30μm程度以下の薄いものであり、それを厚くする必要もなく又厚くするには困難もあって、本発明の効果を発揮させるよう成形型は従来製作されてこなかった。
なお、上記したように単体一材料のものでも良いが、この場合、成形型への直接の温度制御はあってもよく、またなくてよく、その場合は所望表面温度の定常化に多少の時間をかければ所望の温度で成形は可能になる。しかし、この場合、熱浸透率b値(kJ/
m2s1/2K)が0.01〜3の単一材料で構成してされたものでは加熱温調機構がないものが好ましく、またそれが3以上の単一材料で構成されたものは加熱温調機構を備えたものがより好ましく使用できる。
なお、上記の成形型は、真空賦形又は賦形時の排気が可能にする微細孔を有し、真空引き可能なように先記成形型収納ボックスに収納されることが望ましい。
【0041】
(3)<賦形体の温度測定について>
なお、本発明の装置においては、なんらかの方法で成型型表面温度あるいはと型と賦形体の界面温度の変化、または賦形体の温度変化を測定することは重要である。具体的には例えば、成形型の成形面上に、極めて繊細な測定プローブ、例えば線径0.1mm程度の熱電対先端を突出させておいてこれを測定することができる。別の方法としては賦形体を反対面から赤外線温度計非接触で測定する方法がある。しかし、これらには留意すべき点がある。
前記のS線の温度はパターンA、Cでは、成形型自体を積極的に温度調節制御を行うが、それでも成形表面からの距離、あるいは熱源からの距離によっては温度傾斜をもって、成形サイクルを繰り返す中で定常化する値でもある。
賦形材料の熱処理温度あるいは離型可能温度を厳密に考えるとき、これらの温度はここで示される表面温度あるいは界面温度とはかなり乖離があることは留意する必要がある。秒単位あるいはそれ以下の単位で加熱冷却を行う場合は、賦形体の厚み方向で大きな温度傾斜が発生するからである。また、赤外線等で賦形体裏面から温度測定も、材料温度を正確に表すものでなない。また本発明では表面温度(界面温度)で表現しているがこの温度とも乖離があり、相対的な値として考慮する必要がある。
【実施例1】
【0042】
図2の装置構成で冷却手段のみ変更して、延伸PETシートの熱処理を伴う成形をおこなった。
1)成形材料;ホモポリエチレンテレフタレート樹脂の2.5倍一軸延伸シー(但し熱固定を行っていないもの)、厚み0.23mm非熱固定品を使用した。
2)成形装置
成形機; 枚葉真空圧空成形機、圧空能力10tonのものを使用した。
圧空ボックス;
図2の30に示す常温圧空方式の、アルミニウム材で320× 360mm圧空面(ボックス内寸)を持ち、間隔10mmの碁盤格子 の交点毎に径1mmφの噴射孔を穿った噴射面をもつものを使用し た。
冷却手段;
図4に示す方式のものを使用した。
成形型;
図2の60に示す表面層/背後層方式のもので、アルミニウムA 5052を背後層とし、その上にPEEK樹脂(b値は0.35) 0.2mmの表面層を形成させたものを使用した。
成形物は深さ直径90mm、深さ30mmの丸皿形状物で、成形型
外寸を110mm角としたもの6個を加熱ヒーター内蔵の固定板に固 定し、内寸222×332mmの収納ボックスに収めた。なお、成形 型の上面は収納ボックス側壁より3mm低くなるようにし、又側壁と は1mm間隙を設けた。
温度測定;成形面には細線熱電対先端露出させ、成形面温度及び 賦形体
界面温度を測定できるようにした。また、同様に細線熱電対を加熱板の裏から貫通させて配置して圧空温度の測定ができるようにした。
3)成形方法と成形条件;
樹脂シートの予熱; 予熱オーブンで約95℃に予熱
背後層温度; 195℃(固定板温度とほぼ等しい)
成形面予熱温度; 180℃
圧空ボックスへの導入空気; 25℃ 元圧力0.4MPa
圧空真空圧空賦形;6秒、 圧空圧0.4MPa、圧空空間は閉鎖空間であり、実 質的に賦形後のブロウは行われていない。圧空温度約60℃(セン サー位置により少し変わる)熱処理温度(界面温度);約172〜 177℃(部位によるバラツキ)、賦形時に上記表面温度は瞬間的に 約160℃に低下し、回復してこの温度になった。
冷却手段作動時間 ; 3秒
離型時に表面(界面)温度は120℃に低下し、その後数秒で元の設 定温度に回復した。
4)成形結果;
得られた成形品は、点状マーク、火傷状マークなどがなくつややかな外観で透明度が高く優れたものであった。耐熱120℃のシリコンオイルの2分間浸漬試験では、目立った変形、収縮はなく、耐熱性の優れたものであった。使用した成形型では、表面温度設定が容易で、又容易にブロウ冷却ができ、そして、表面温度の回復が速く、高速成形ができることがわかった。
なお、なお、短尺シートによる、繰り返しテストでも安定に成形できることがわかった。
【実施例2】
【0043】
実施例1の装置構成で、圧空ボックスを
図1の30に示すものに変更して、実施例1と同じ材料により熱処理を伴う成形を行った。
1)成形材料; 実施例1と同じもの
2)成形装置
成形機;実施例1と同じものを使用した。
圧空ボックス;
図1に示す態様で、実施例1に示すものと同形、同寸法であるが加 熱ヒーターを内蔵し、導入気体及び気体送出面(成形型対向面)を加 熱する構造とした。なお気体送出面には耐熱黒色塗料を塗布して赤外 線放射効率を高くした。
なお、圧空ボックス側壁には各面に排気口を設け、任意に必要な程
度に排気できるようにした。
成形型 ; 実施例1と同じものを、同じ構成で使用した。
3)成形方法と成形条件 ;
樹脂シートの予熱;実施例1と同様にした。
背後層温度;220 ℃設定(固定板温度とほぼ等しい)
成形型設定表面温度;185℃
成形型/賦形体界面の到達最高点温度 ;195℃
加熱板への導入空気; 温度350℃、元圧0.4MPa
圧空真空圧空賦形; 3秒、 圧空圧0.2MPa、
圧空空間は完全閉鎖でなく、高温圧空空気の排気がなされながら賦形と 賦形体の昇温が行われた。
圧空温度は約280℃(センサー位置により変わる)となった。
冷却手段の空気ブロウ時間 ; 6秒
離型時に表面(界面)温度は130℃に低下し、その後数秒で元の設定 温度に回復した。
4)成形結果 ;
得られた成形品は、点状マーク、火傷状マークなどがなくつややかな外観で透明度が高く優れたものであった。150℃のシリコンオイル二分間浸漬テストで、目立った変形や収縮はなく耐熱の優れたものであった。なお、短尺シートによる、繰り返しテストでも安定に高速成形ができることがわかった。
【実施例3】
【0044】
実施例2と同じ構成で成形型のみ変更し、実施例1と同じ材料で熱処理を伴う成形をおこなった。
1)成形材料; 実施例1と同じもの
2)成形装置
成形機;実施例1と同じものを使用した。
圧空ボックス;
図1に示す態様で、実施例2に使用したものを使用した。
加熱ボックスには外部生成した加熱圧縮空気を導入できるようにし た。
成形型 ;
図8の説明で示した発熱層を有する構造のもの。
3)成形方法と成形条件 ;
樹脂シートの予熱;実施例1と同様にした。
成形型設定表面温度;185℃ (背後加熱層の加熱により)
成形型/賦形体界面の到達最高点温度 195℃
加熱板への導入空気; 温度350℃、元圧0.4MPa
圧空真空圧空賦形; 3秒、 圧空圧0.2MPa、
圧空空間は完全閉鎖でなく、高温圧空空気の排気がなされながら賦形と賦 形体の昇温が行われた。
圧空温度は約280℃(センサー位置により変わる)となった。
冷却手段の空気ブロウ時間 ; 6秒
離型時に表面(界面)温度は130℃に低下し、その後数秒で元の設定温度に回 復した。
4)成形結果 ;
得られた成形品は、点状マーク、火傷状マークなどがなくつややかな外観で透明度が高く優れたものであった。150℃のシリコンオイル二分間浸漬テストで、目立った変形や収縮はなく耐熱の優れたものであった。なお、短尺シートによる、繰り返しテストでも安定な高速成形が可能とわかった。
(比較例1)
【0045】
実施例1の装置構成(
図2の構成で冷却手段を変更)で、成形型のみ公知の通常用いられるものを装着し、実施例1と同じ成形材料シートを使用して以下のテストを行った。
成形型; 一般的に用いられるアルミニウム材A5052製の単純構成のものを、 実施例1同様に加熱ヒーター内臓の固定板に固定して、成形型収容ボック スに収容して使用した。
樹脂シートの予熱; 95℃ 実施例1同様に予熱。
圧空ボックスへの導入空気温度; 25℃
真空圧空賦形; 0.4MPa、3秒(但し成形型側の真空引きも同時作動させ た)圧空空間は閉鎖されており、実質的に賦形後のブロウは行われていな い。圧空温度約70℃(センサー位置により変わる)成形型表面温度;固 定板温度調整により185℃予熱して成形テスト。
賦形の瞬間に、成型型表面温度(界面温度)は約10℃低下し、熱処理温 度は約175℃となった。
冷却手段作動時間;20秒
離型時の成型型表面温度(界面温度)は大約155℃であった。
テストの結果;
成形品は、上記表面温度の予熱を175℃とし、冷却ブロウ時間を20秒として、一応の形状を保って離型できたが、十分に精密なものではなかった。更にこの方法は、長い冷却時間とともに、離型後の上記表面温度の予熱温度への回帰に少なくとも10秒程度の時間を要し、高速の連続成形に適し難いことがわかった。
(比較例2)
【0046】
比較例1に用いた装置構成で成形型のみ変更して装着し、実施例1に用いたものと同じ樹脂シートを使用して以下のテストを行った。
成形型;ウレタン樹脂発泡体(三洋化成製、サンモジュール33)から切削加工によ り製作した公知の単純構成ものを、加熱ヒーターを内臓するアルミニウム製 固定板に固定した構成とした。
樹脂シートの予熱;95℃ 実施例1同様に予熱。
成形型表面温度;34〜54℃(部位による差20℃)
固定板温度を成型型材料の耐熱(70℃)を超える90℃設定して予熱して もこの程度にしか上昇させることができなかった。
(なお、テストの最後に固定板温度を120℃に設定したとき成形型は破損 した。)
賦形圧空;0.4MPa、4秒 圧空空間の温度約75℃
(但し成形型側の真空引きも同時作動)
冷却手段作動時間;4秒。
テストの結果;
熱処理には成形型表面温度は少なくとも160℃程度に達することが必要であるが、この温度への到達は全く無理であった。得られた成形品は透明であるが、耐熱性は65℃程度しかなかった。
(比較例3)
【0047】
実施例2の装置構成で、成形型として公知のアルミニウム製の単純構成のを用い、実施例1と同じ成形材料シートを使用して以下のテストを行った。
成形型; 比較例1のテスト1に使用したものを同じ固定板に固定して使用した。 樹脂シートの予熱;95℃ 実施例1同様に予熱。
成形型表面温度;固定板温度の設定調整により、155℃に予熱してテストした。
加熱板への導入空気; 温度400℃、元圧0.4MPa
真空圧空賦形;0.2MPa、6秒
(但し成形型側の真空引きも同時作動)
圧空空間は完全閉鎖でなく、高温圧空空気の排気がなされながら賦形と賦 形体の昇温が行われた。
成形型表面(界面)温度の降下はなく、約10℃上昇し約170℃になっ た。
冷却手段作動;空気ブロウを20秒作動させて離型、
テストの結果;
成形品は、20秒という長時間冷却ブロウで、一応の形状を保持して離型できたが、十分に精密なものではなかった。
なお、成形品には、高温気体排気口の跡が表れ、繰り返しテスト中に、排気口付近の高温化しその欠陥が大きくなった。なお、離型後の上記表面温度の設定予熱温度への回帰も少なくとも10秒程度の時間を要し、この装置構成は高速の連続成形に適し難いことがわかった。
(比較例4)
【0048】
実施例2の装置構成(比較例3と同じ構成)を、成形型として公知のウレタン樹脂製単純構成用のもの変更して、実施例1と同じ成形材料シートを使用して以下のテストを行った。
成形型;比較例2に使用したものを同じ構成で使用した。
樹脂シートの予熱;95℃ 実施例1同様に予熱。
成形型表面予熱温度;75℃
但し固定板加熱に合わせて約300℃の熱風ブロウによりこの温度に予熱 した。
加熱板への導入空気温度; 400℃
真空圧空賦形;0.2MPa、 8秒
(但し成形型側の真空引きも同時作動)
圧空空間は完全閉鎖でなく、高温圧空空気の排気がなされながら賦形と賦 形体の昇温が行われた。
成形型表面(界面)温度の降下はなく、183℃に上昇した。
冷却手段作動;空気ブロウを5秒作動させて離型、
離型時の成形型表面(界面)温度は113℃であった。
テストの結果;
最初に得られた成形品は、良好で耐熱性もあった。
この装置構成では、冷却は非常に容易であるが、大幅な昇温のために過酷な加熱条件設定が必要であった。そのため繰り返しテストを行うと、成形型表面層の部位による温度ムラが次第に大きくなり、遂には、エッジ部などが過熱で亀裂を生ずるなど成形に支障を来し下した。