(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
送配電線設備に設置された配電機材の接地線に接続され、前記配電機材の劣化により前記接地線に流れる漏れ電流を検出して前記配電機材の劣化を表示する劣化表示器であって、
前記配電機材の劣化に応じて表示状態と非表示状態との間で移行可能にハウジングに収容された表示部と、前記ハウジングに収容され、前記表示部に取り付けられたプランジャを磁力で吸引することにより前記表示部を非表示状態とし、前記漏れ電流により吸引磁力を実質的に相殺する磁力を現出させて、前記プランジャを吸引解除することにより前記表示部を表示状態とする自己保持型ソレノイドとを備え、
前記表示部に設けられた磁石と同極性の磁石を有する治具を前記ハウジングの外部から表示状態にある表示部に近接させることにより両磁石間に現出した磁気反発力で前記表示部を表示状態から非表示状態へ移行させるようにしたことを特徴とする劣化表示器。
前記ハウジングを少なくとも下部が透明な筒状部材で構成し、前記自己保持型ソレノイドを前記ハウジングの中央部に配置すると共に、前記表示部をハウジングの中央部と下部との間で移行可能に配置し、表示状態にある表示部をハウジングの下部で目視可能とした請求項1に記載の劣化表示器。
前記自己保持型ソレノイドは、課電側端子と接地側端子との間に接続された検出抵抗に流れる前記漏れ電流により発生する両端電圧を整流回路により整流し、前記整流回路の出力に基づいて吸引磁力を実質的に相殺する磁力を現出させる駆動回路を具備した請求項1〜3のいずれか一項に記載の劣化表示器。
前記駆動回路は、課電側端子と接地側端子との間に前記検出抵抗の両端子にそれぞれ接続された接点を有し、前記漏れ電流により吸引磁力を実質的に相殺する磁力を現出させて前記プランジャを吸引解除する時点で前記接点を電気的に閉じる短絡回路を具備した請求項4に記載の劣化表示器。
前記短絡回路は、ハウジング内で固定配置され、前記課電側端子と接地側端子との間に設けられた一対の導電性固定片と、前記ハウジング内で移行可能に設けられた表示部に取り付けられ、前記漏れ電流により吸引磁力を実質的に相殺する磁力を現出させて前記プランジャを吸引解除する時点で前記導電性固定片に接触して一対の導電性固定片を繋ぐ導電性可動片とで構成されている請求項5に記載の劣化表示器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述の特許文献1で開示された劣化表示器では、劣化表示のために溶断した導電性樹脂ヒューズを元の状態に復元することができず、一回限りの使用となる。そのため、保護素子が劣化した避雷器を新たな避雷器に交換する際に、それに付設されている劣化表示器についても導電性樹脂ヒューズを新たなものに交換する必要がある。このヒューズの交換を避雷器の交換時に行うとすると、一連の作業が煩雑なものとなることから、避雷器の交換現場でこれら作業をすることは実際上非常に困難である。このため、避雷器の劣化の有無の点検の際には、その避雷器だけでなく劣化表示器についても交換する必要があり、避雷器の点検時にはつねに劣化表示器も携帯しなければならず、点検・交換業務を非常に煩雑なものとしており、交換作業現場で、劣化表示を非劣化表示の状態に容易に復帰させることができる劣化表示器の実現が強く望まれている。また、それ以外の変圧器や開閉器等においても、経年的な劣化によって無視できない値の漏れ電流を生じることがあり、送配電線設備等に装架された状態でその劣化の有無を容易に目視判別でき、なおかつ繰り返し使用が可能な劣化表示器の実現が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、前述の改善点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、避雷器等の機材の交換現場においても、簡易な手段でもって劣化表示を非劣化表示の状態に容易かつ確実に復帰させることができ、その繰り返し使用が容易で簡易な構造の劣化表示器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、送配電線設備に設置された配電機材の接地線に接続され、接地線に流れる配電機材の漏れ電流を検出してその劣化を表示する劣化表示器であって、配電機材が正常または正常であるとみなし得ることを示す非表示状態と、それが劣化したことを示す表示状態との間で移行可能にハウジングに収容された表示部と、そのハウジングに収容され、表示部に取り付けられたプランジャを磁力で吸引することにより表示部を非表示状態とし、所定値を超える漏れ電流により吸引磁力を実質的に相殺する磁力を現出させてプランジャを吸引解除することにより表示部を表示状態とする自己保持型ソレノイドとを備え、表示部に設けられた磁石と同極性の磁石を有する治具をハウジングの外部から表示状態にある表示部に近接させることにより両磁石間に作用する磁気反発力で表示部を表示状態から非表示状態へ移行させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
本発明の劣化表示器では、通常、自己保持型ソレノイドがプランジャを磁力で吸引することにより表示部を非表示状態としている。一方、配電機材が劣化すると、その配電機材の劣化により接地線に流れる漏れ電流が増大する。一定値を超える漏れ電流が流れると、自己保持型ソレノイドに、プランジャを吸引保持する磁力を実質的に相殺する磁力を発生させて、そのプランジャの吸引状態を解除する。このプランジャの吸引解除により表示部を非表示状態から表示状態へ移行させ、その表示部を表示状態とする。
【0009】
この表示状態にある表示部に対して、その表示部に設けられた磁石と同極性の磁石を有する治具をハウジングの外部から表示部に近接させると、両磁石の磁気反発力で表示部が劣化の表示状態から通常の非表示状態に移行する。このようにして、劣化表示の状態から通常状態すなわち非表示状態にその表示を復帰させる際に、劣化表示器を分解することなく、ハウジングの外部から専用の治具による簡単な操作でもって表示部を表示状態から非表示状態へ移行させて通常状態に復帰させることができるので、劣化表示器の繰り返し使用を容易に行うことができる。
【0010】
本発明の劣化表示器において、ハウジングを少なくとも下部が透明である筒状部材で構成し、自己保持型ソレノイドをハウジングの中央部に配置すると共に、表示部をハウジングの中央部と下部との間で移行可能に配置し、表示状態にある表示部をハウジングの下部で目視可能とした構造が望ましい。本発明のような劣化表示器は、送配電線設備の配電機材が設置された近傍の高所部位に取り付けられることから、前述のような構造とすれば、ハウジングの透明な下部をその下方の360°四方から目視することが容易となり、検査者などにとって表示状態にある表示部が認知し易くなる。無論、従来品のような部品交換の必要性もなく、劣化機材の調査に際して、部品交換のための部材の準備やその携帯の必要性も解消される。
【0011】
本発明における自己保持型ソレノイドは、ハウジング内の固定部位に弾性部材を介して取り付けられた構造であることが望ましい。前述したように、劣化表示器は、送配電線設備の配電機材が設置された近傍の高所部位に取り付けられることから、ハウジングへの落雪、突風や鳥類などによりハウジングに衝撃が加わることがある。このような衝撃がハウジングに加わった場合でも、弾性部材の緩衝作用により自己保持型ソレノイドが衝撃により振動することを効果的に抑制することができる。これにより、衝撃による振動で自己保持型ソレノイドのプランジャが吸引保持されていた状態から解除されて表示部が非表示状態から表示状態へ移行するという誤動作を確実に回避することができる。
【0012】
本発明における自己保持型ソレノイドは、課電側端子と接地側端子との間に接続された検出抵抗に流れる漏れ電流により発生する両端電圧を整流回路により整流し、吸引磁力を実質的に相殺する磁力を現出させる駆動回路を具備した構造が望ましい。このように自己保持型ソレノイドの駆動回路を構成すれば、自己保持型ソレノイドの定格電圧を低く設定することで漏れ電流の検出抵抗として小さい抵抗値のものが使用できる。また、自己保持型ソレノイドを駆動するための電源を別途用意する必要もない。
【0013】
本発明における駆動回路は、課電側端子と接地側端子との間に検出抵抗とその両端子それぞれに接続された一対の接点を有し、漏れ電流により吸引磁力を実質的に相殺する磁力を現出させてプランジャを吸引解除する時点で両接点間を閉じる短絡回路を具備した構造であることが望ましい。このように自己保持型ソレノイドの駆動回路を構成すれば、その短絡回路に漏れ電流が流れることにより、大きな値の漏れ電流が生じても自己保持型ソレノイドを保護することができる。また、検出抵抗には比較的小さい抵抗値のものを使用することができることから、それを設けたことによる配電機材の接地抵抗の増大の影響を著しく軽減することができる。
【0014】
本発明における短絡回路は、ハウジング内で固定配置され、課電側端子と接地側端子との間に設けられた一対の導電性固定片と、ハウジング内で移行可能に設けられた表示部に取り付けられ、漏れ電流により吸引磁力を実質的に相殺する磁力を現出させてプランジャを吸引解除する時点で接点としての一対の
導電性固定片に接触してそれらを電気的に接続する導電性可動片とで構成された構造が望ましい。このように自己保持型ソレノイドの短絡回路を構成すれば、一対の
導電性固定片と表示動作時にその間を接続するための
導電性可動片からなる簡単な機構でもって短絡回路を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表示状態にある表示部に対して、その表示部に設けられた磁石と同極性の磁石を有する治具をハウジングの外部から表示部に近接させて両磁石の磁気反発力で表示部を表示状態から非表示状態へ移行させることにより、劣化表示器を分解することなく、ハウジングの外部から専用の治具による簡単な操作でもって表示部を表示状態から非表示状態へ移行させて通常状態に復帰させることができるので、劣化表示器の繰り返し使用が容易となる。その結果、配電機材の劣化による交換作業時に、劣化表示器の復帰作業も非常に容易に行うことができることから、その作業性が大幅に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る劣化表示器の実施形態を以下に詳述する。以下の実施形態では、送配電線設備に設置された配電機材として高圧避雷器(以下、単に避雷器と称す)に適用した場合について説明するが、例えば、変圧器や開閉器などの配電機材についても適用可能である。
【0018】
劣化表示器1は、
図3に示すように、送配電線2を支持する電柱上等に設置された避雷器3の接地線4に接続され、その避雷器3の劣化により接地線4に流れる漏れ電流を検出して避雷器3の劣化を表示する。この劣化表示器1は、
図4および
図5に示すように表示器本体を構成する透明樹脂製の円筒状ハウジング11の上部12および中央部13に耐候性を有する不透明な樹脂製カバー15を装着することによりハウジング11の上部12および中央部13を被覆して保護すると共に、ハウジング11の下部14を露呈させて後述の表示部18を目視可能とした構造を備えている。この劣化表示器1は、ハウジング11の上部12に課電側端子21および接地側端子22(
図1参照)が設けられており、その課電側端子21を避雷器3の接地線4の中間部分に挿入して避雷器側に接続すると共に、接地側端子22を大地側に接続した状態で、例えば電柱16にバンド17によって締め付け固定される。
【0019】
劣化表示器1は、
図1および
図2に示すように、避雷器3の劣化について表示状態と非表示状態との間で移行可能にハウジング11に収容された表示部18と、自己保持型ソレノイド20とからなる主要部を備えている。自己保持型ソレノイド20は、そのハウジング11に収容され、実質的な非通電時または所定値未満の値の微弱電流の通電時には表示部18に取り付けられたプランジャ19を重力の作用に抗して磁力でハウジング上部12内に吸引保持することにより表示部18を非表示状態とし、所定値以上の値の漏れ電流により吸引磁力を実質的に相殺する磁力を現出させてプランジャ19の吸引状態を解除することによりハウジング下部14内に自重で落下させ、表示部18を表示状態とする。なお、
図1は前述の表示部18の非表示状態であることを示し、
図2は表示状態であることを示す。
【0020】
ハウジング11の上部12には、避雷器3の接地線4が接続される課電側端子21と接地側端子22が設けられている。これら課電側端子21および接地側端子22(ねじ頭部)のそれぞれからハウジング11の下部14まで垂直に延びる導電性棒23,24(ねじ脚部)に絶縁材25,26を被覆することにより、ハウジング11の底部近傍まで達する二本のロッド27,28を形成している。この二本のロッド27,28の下端部を強磁性金属からなる支持プレート29で連結している。
【0021】
このハウジング11の外周面の中央部13と下部14との境界部位にフランジ30が形成されており、前述したようにハウジング11の上部12および中央部13を被覆するカバー15(
図4および
図5参照)はこのフランジ30で係止される。このフランジ30よりも下方に位置する透明なハウジング11の下部14をカバー15から露呈させた構造とすることにより、この下部14に表示部18が位置する状態でその表示部18をハウジング11の外部から目視可能としている(
図2参照)。なお、ハウジング11は、上部12を構成する蓋体と中央部13および下部14を構成する有底円筒状部材であるハウジング本体とからなり、ハウジング本体の開口部に対してOリング31を介して蓋体を取り付けたシール構造を有する。
【0022】
表示部18は、樹脂製の有底円筒状部材で、二本のロッド27,28に対して上下動可能に挿通されて、ハウジング11の中央部13に位置する非表示状態とハウジング11の下部14に位置する表示状態との間で移行可能に配置されている。表示部18の外周面には、赤色などの彩色を施すことにより目視が容易なようにしている。この表示部18の中心部には、下方に開口する凹部32が設けられており、取り付け部材33を介して固定された磁石34が凹部32の開口端近傍に配置されている。この凹部32の天板部には導電性の可動片35を介して自己保持型ソレノイド20のプランジャ19が立設されている。
【0023】
表示部18がハウジング11の下部14に位置する表示状態で、前述の可動片35と当接するようにそれぞれのロッド27,28に一対の接点を構成する導電性の固定片36,37が設けられている。一対の固定片36,37はロッド27,28の軸中心に埋設された導電性棒23,24と接触するように取り付けられている。これら表示部18の可動片35とロッド27,28の固定片36,37とで後述の短絡回路48を構成している。ロッド27,28の下端部に取り付けられた支持プレート29の中心部は、表示状態にある表示部18の磁石34が吸着しないように孔38が形成されている。また、ハウジング11の底部中心部位に形成された突起39が前述の支持プレート29の孔38に嵌まり込むことにより二本のロッド27,28を位置決めするようにしている。
【0024】
自己保持型ソレノイド20は、課電側のロッド27に取り付けられてハウジング11の中央部13で表示部18から垂直方向に延びるプランジャ19の上方に配置されている。この自己保持型ソレノイド20は、ハウジング11内の固定部位である課電側のロッド27に弾性部材であるL形金具40を介して取り付けられている。L形金具40は、ばね性を有する例えばリン青銅製の板材で構成され、衝撃を吸収する機能を発揮する。このL形金具40の水平部の一端を課電側のロッド27に固定すると共に、その垂直部に絶縁材41を介して自己保持型ソレノイド20が固定されている。
【0025】
プランジャ19は、表示部18が上方へ移動する際に自己保持型ソレノイド20の内部42にスムーズに挿入することができるように、その先端部43をテーパ形状とし、その一部分が自己保持型ソレノイド20の内部42に入り込んだ状態で磁力によって保持されるように自己保持型ソレノイド20との相対位置関係が設定されている(
図2参照)。なお、自己保持型ソレノイド20は、接地側のロッド28に取り付けることも可能である。
【0026】
この自己保持型ソレノイド20の上方位置には、劣化表示器1の回路構成部品(
図1では図示省略)の実装された配線基板44がハウジング11に固定されている。この配線基板44に実装された構成回路を
図6に示す。自己保持型ソレノイド20は、同図に示すように、課電側端子21と接地側端子22との間に接続された検出抵抗45に流れる漏れ電流により発生する両端子間電圧を整流回路46により整流し、その整流回路46の出力に基づいて吸引磁力の過半を相殺する磁力を現出させる駆動回路47を具備する。
【0027】
この駆動回路47は、課電側端子21と接地側端子22とにそれぞれ接続された一対の接点(導電性の固定片36,37に相当)を有し、通常の状態すなわち自己保持型ソレノイド20がプランジャ19を吸引保持して、漏れ電流により自己保持型ソレノイド20が吸引磁力を実質的に相殺する磁力を現出させてプランジャ19を吸引解除し、それを自然落下させる時点で、可動片35が固定片36,37に接触することにより前述の接点間を閉じる短絡回路48を具備する。
【0028】
このように短絡回路48を構成することにより、漏れ電流が自己保持型ソレノイド20に流れ続けることを回避できるので、自己保持型ソレノイド20の焼損などの破損を未然に防止できてその保護が図れると共に、大きな抵抗値を持つ検出抵抗45を使用することなく、検出抵抗45として小さい抵抗値のものを使用することができ、接地抵抗の低減化が図れる。
【0029】
劣化表示器1の構造(
図1および
図2参照)では、表示部18がハウジング11の下部14に位置する表示状態、つまり、漏れ電流により自己保持型ソレノイド20が吸引磁力を相殺する磁力を現出させて、それが一定値を超えたときにプランジャ19の吸引保持を解除し、プランジャ19およびそれに取り付けられた表示部18等を自重で落下させた時点で可動片35と接触するようにロッド27,28に設けられ、ロッド27,28の導電性棒23,24と接触するように取り付けられた一対の固定片36,37と、表示部18に取り付けられた可動片35とで短絡回路48を構成している。このようにして、可動片35と一対の固定片36,37とからなる簡単な機構でもって短絡回路48を形成している。
【0030】
なお、前述の駆動回路47では、比較的大きなサージを吸収する放電ギャップ49、比較的小さなサージを吸収するバリスタ50、それらサージから整流回路46を保護するためのサージアブソーバ51が課電側端子21と接地側端子22との間に接続されている。また、それら課電側端子21および接地側端子22と整流回路46との間には保護抵抗52,53が直列に接続されている。
【0031】
以上の構成からなる劣化表示器1の動作例を以下に詳述する。この劣化表示器1において、通常状態では、
図1に示すように、自己保持型ソレノイド20がプランジャ19を磁力で吸引することにより表示部18をハウジング11の中央部13に配置している。このハウジング11の中央部13はカバー15(
図4および
図5参照)で被覆されていることから非表示状態となっている。
【0032】
ここで、劣化表示器1は、送配電線2の避雷器3が設置された近傍の高所部位に取り付けられることから、カバー15への落雪、突風や鳥類などによりハウジング11に衝撃が加わることがある。このような衝撃がハウジング11に加わった場合でも、その衝撃がL形金具40の緩衝機能でもって著しく緩和されるので、自己保持型ソレノイド20が衝撃により振動することを抑制できる。これにより、衝撃による振動で自己保持型ソレノイド20のプランジャ19が吸引解除されて表示部18が非表示状態から表示状態へ落下移行するという誤動作を確実に回避することができる。
【0033】
一方、避雷器3が劣化すると、その避雷器3の劣化により接地線4に漏れ電流が流れることから、劣化表示器1では、課電側端子21と接地側端子22との間に接続された検出抵抗45に流れる漏れ電流を検出する(
図6参照)。この漏れ電流により発生する検出抵抗45の両端子間電圧を整流回路46で整流し、その整流回路46の出力に基づいて自己保持型ソレノイド20を駆動する。漏れ電流が増大し、それが一定値を超えると、この自己保持型ソレノイド20にプランジャ19の吸引磁力を実質的に相殺する磁力を現出させてそのプランジャ19を吸引解除する。
【0034】
このプランジャ19の吸引解除により、
図2に示すように、表示部18がその自重でもって落下してハウジング11の下部14に配置される。このようにして、表示部18を非表示状態から表示状態へ移行させる。つまり、ハウジング11の下部14は透明でカバー15により被覆されていないことから、その表示部18をハウジング11の外部から目視可能な表示状態となる。劣化表示器1は、通常、電柱等の上部に設置された避雷器3近傍の高所部位に取り付けられることから、ハウジング11の透明な下部14をその下方の360°四方から目視することが容易となり、表示状態にある表示部18を認知し易くなっている。
【0035】
以上のようにして、表示部18がハウジング11の下部14に位置する表示状態、つまり、一定値を超える漏れ電流により自己保持型ソレノイド20が吸引磁力を実質的に相殺する磁力を現出させてプランジャ19の吸引を解除すると、表示部18の可動片35がロッド27,28の固定片36,37に接触する。この可動片35により一対の固定片36,37が繋がれることで、短絡回路48が構成される。つまり、可動片35が一対の固定片36,37に接触することにより、課電側端子21−導電性棒23−固定片36−可動片35−固定片37−導電性棒24−接地側端子22の短絡回路48が形成される。
【0036】
この短絡回路48に漏れ電流が流れることで、自己保持型ソレノイド20に漏れ電流が流れ続けることを回避できるので、自己保持型ソレノイド20の破損を未然に防止できてその保護が図れる。また、比較的小さな電流でプランジャの保持状態を解消する自己保持型ソレノイドが実用に供されていることから、検出抵抗45に比較的小さい抵抗値のものを使用することができ、それによる接地抵抗の増大を抑えることができる。
【0037】
また、表示部18に設けられた磁石34が強磁性金属からなる支持プレート29に吸引されることで、固定片36,37に対して可動片35が密着状態で確実に接触する。これにより、短絡回路48において、可動片35と固定片36,37との間の接触抵抗を低く抑え、短絡状態を確実なものとすることができる。
【0038】
以上のようにして、劣化表示器1により避雷器3の劣化状態が表示されたことに伴って、その避雷器3を交換した後、劣化表示器1を通常状態に復帰させる要領は次のとおりである。
図7および
図8に示すように、表示状態にある表示部18に対して、その表示部18に設けられた磁石34と同極性の磁石54を有する治具55をハウジング11の外部から表示部18に近接させることにより両磁石34,54の磁気反発力で表示部18を表示状態から非表示状態へ移行させる。
【0039】
劣化表示器1を通常状態に復帰させるための専用の治具55は、劣化表示器1のハウジング11の下部14が収納可能な開口凹部56が形成され、その凹部56の底部に表示部18の磁石34と同極性の磁石54を設けた治具本体57を有する。また、この治具55は、電柱などの高所部位に設置された劣化表示器1に対する操作が可能なように、治具本体57の下部に長尺な操作棒58が連結された間接活線工具としている。
【0040】
表示部18がハウジング11の下部14に配置された表示状態で、操作棒58の先端の治具本体57の凹部56をそのハウジング11の下部14に嵌め込んで被せることにより、その治具本体57の凹部56の磁石54と、同極性にある表示部18の磁石34との磁気反発力でもって、表示部18がハウジング11の下部14から中央部13へ上昇する(
図8矢印参照)。この時、治具55の磁石54と表示部18の磁石34との間に介在する支持プレート29には孔38が形成されていることから、表示部18に磁気反発力が作用し易くなっている。この表示部18の上昇によりプランジャ19が自己保持型ソレノイド20の内部42に挿入されて磁力により吸引され、ハウジング11の中央部13に位置する状態が保持される(
図1参照)。表示部18はカバー15に隠されることで非表示状態となり、このようにして劣化表示器1を通常状態に復帰させる。
【0041】
このようにして、劣化表示器1を分解することなく、ハウジング11の外部から専用の治具55による簡単な操作でもって避雷器の交換作業現場で表示部18を表示状態から非表示状態へ移行させて通常状態にきわめて容易に復帰させることができ、かつ、劣化表示器1の繰り返し使用が可能となる。
【0042】
なお、以上の実施形態では、自己保持型ソレノイド20を取り付けるための弾性部材としてL形金具40を使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、
図9または
図10に示すように弾性的に支持する構造であってもよい。
【0043】
図9に示す構造は、ばね性を有する例えばリン青銅製の平板状金具59の先端に絶縁材60を介して自己保持型ソレノイド20を固定したものである。また、
図10に示す構造は、ばね性を有する例えばリン青銅製の平板状金具61の下面に絶縁性を有する被膜62を形成し、その被膜62を介して自己保持型ソレノイド20を固定したものである。これら平板状金具59,61の基端を課電側のロッド27あるいは接地側のロッド28に固定する。
【0044】
いずれの構造も、ハウジング11に衝撃が加わった場合、その衝撃を平板状金具59,61の緩衝機能でもって吸収することにより自己保持型ソレノイド20が衝撃により振動することを抑制できる。これにより、衝撃による振動で自己保持型ソレノイド20のプランジャ19が吸引解除されて表示部18が非表示状態から表示状態へ移行する誤動作を確実に回避することができる。
【0045】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。