(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持部材、前記第1の回動部材及び前記第2の回動部材を前記支持部材と対向する面に向かって付勢する付勢手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の調芯機構。
前記付勢手段は、前記ネジ穴に締結される前記ネジとの間にバネ座金を介在させることによって、前記保持部材、前記第1の回動部材及び第2の回動部材が前記支持部材側に付勢される構造を有することを特徴とする請求項2に記載の調芯機構。
前記調整部材は、前記第1の回動部材の第1の支点と前記第2の回動部材の第2の支点とは前記光学素子の光軸を挟んだ反対側の外周部に設けられた凹部に係合されていることを特徴とする請求項5に記載の調芯機構。
前記調整部材は、前記支持部材に回転自在に取り付けられた偏心ピンと、この偏心ピンを貫通させる長孔を有して前記凹部に係合された係合部材とから構成されていることを特徴とする請求項6に記載の調芯機構。
【背景技術】
【0002】
従来より、レンズ鏡筒に配置された複数のレンズのうち、ズーム(バリエータ)用レンズとフォーカス用レンズとを光軸方向に移動させることによって、変倍(ズーミング)と合焦(フォーカシング)とを行う、いわゆるインナーフォーカス式のズームレンズある。
【0003】
このようなインナーフォーカス式のズームレンズは、フォーカシングによる全長の変化がなく、小型・軽量化が可能なため、例えば、デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラなどの撮像装置、プロジェクタなどの画像投影装置といった光学機器において幅広く利用されている。
【0004】
ところで、ズームレンズでは、レンズ鏡筒に配置された複数のレンズのうち、一部のレンズをレンズ保持部材に保持し、このレンズ保持部材をレンズ鏡筒に組み込んだ際に、レンズの光軸ずれ調整(調芯という。)が行えるように、レンズ保持部材の光軸と直交する方向における相対的な位置調整を行うレンズ調芯機構を備えたものがある(特許文献1,2を参照。)。
【0005】
例えば、下記特許文献1に記載のレンズ調芯機構では、一眼レフカメラ用交換レンズにおいて、そのレンズ鏡筒の変形防止を兼ねた板金でレンズ保持部材を押圧保持し、このレンズ保持部材を専用の調整治具で保持しながら、光軸と直交する方向に移動させながら、レンズ保持部材に保持された光学素子の光軸ずれを調整する構成となっている。しかしながら、この構成の場合、調整後に調整治具を取り除く際に、レンズ保持部材に加わる応力が緩和する方向にレンズ保持部材が動いてしまう欠点がある。
【0006】
一方、下記特許文献2に記載のレンズ調芯機構では、一眼レフカメラ用交換レンズにおいて、そのレンズ鏡筒の変形防止を兼ねた板金でレンズ保持部材を押圧保持し、光軸と直交する回転軸を中心に回転させる偏心部材によって、レンズ保持部材を光軸と直交する方向に移動させながら、レンズ保持部材に保持された光学素子の光軸ずれを調整する構成となっている。しかしながら、この構成の場合、光学素子の光軸ずれを高精度に調整できるものの、調整箇所が3箇所となるため、調芯作業が複雑となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、簡便な構成で、光学素子の光軸ずれを精度良く調整でき、なお且つ調芯作業を容易に行える調芯機構、並びにそのような調芯機構を備えたレンズ鏡筒、及びそのようなレンズ鏡筒を備えた光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る調芯機構は、光学素子を保持する筒状部と、筒状部から外側に向かって突出されたフランジ部と、フランジ部に形成された複数の貫通孔とを有する保持部材と、光学素子を外方に臨ませる開口部と、開口部の外側に複数のネジ穴とを有し、保持部材に対向して配置されて、保持部材を対向する面内において互いに直交する第1の方向及び第2の方向に移動可能に支持する支持部材と、筒状部を第2の方向に対して
互いに平行
となる一対の平行部
を含む孔部の内側と嵌合させる枠部と、枠部から外側に向かって突出されたフランジ部と、フランジ部に形成された複数の貫通孔と有し、支持部材と対向する面において光学素子の光軸を通る第2の方向に対して平行な
線上に位置して設けられた第1の支点を中心に回動自在に支持される第1の回動部材と、筒状部を第1の方向に対して
互いに平行
となる一対の平行部
を含む孔部の内側と嵌合させる枠部と、枠部から外側に向かって突出されたフランジ部と、フランジ部に形成された複数の貫通孔と有し、支持部材と対向する面において光学素子の光軸を通る第1の方向に対して平行な
線上に位置して設けられた第2の支点を中心に回動自在に支持される第2の回動部材とを備え、保持部材、第1の回動部材及び第2の回動部材は、互いに重ね合わされたフランジ部の各貫通孔を通して、これら貫通孔よりも径の小さいネジをネジ穴に締結することによって、支持部材に取り付けられた構造を有し、第1の回動部材は、支持部材の第1の支点に位置する軸部又は軸孔と係合される軸孔又は軸部を有することによって、第1の支点を中心に回動自在に支持されると共に、枠部の
孔部の内側において筒状部を
一対の平行部に沿った方向に移動可能に保持し、第2の回動部材は、支持部材の第2の支点に位置する軸部又は軸孔と係合される軸孔又は軸部を有することによって、第
2の支点を中心に回動自在に支持されると共に、枠部の
孔部の内側において筒状部を
一対の平行部に沿った方向に移動可能に保持し、第1の回動部材と第2の回動部材との何れかの回動操作に伴って、保持部材が支持部材に対して第1の方向と第2の方向との何れかの方向に移動することによって、光学素子の光軸と直交する方向における相対的な位置調整が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明に係る調芯機構では、第1の回動部材と第2の回動部材との何れかの回動操作に伴って、保持部材が支持部材の対向する面内で移動する簡便な構成によって、光学素子の光軸と直交する方向における相対的な位置調整を精度良く行うことが可能である。また、このような調芯作業を容易に行うことが可能である。
【0011】
したがって、本発明によれば、そのような調芯機構を備えたレンズ鏡筒、及びそのようなレンズ鏡筒を備えた光学機器を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した調芯機構、レンズ鏡筒及び光学機器について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、例えば
図1に示す一眼レフカメラ用の交換レンズ(光学機器)1に本発明を適用した場合に挙げて説明するものとする。なお、
図1は、この交換レンズ1の内部構造を示す断面図である。
【0014】
この交換レンズ1は、
図1に示すように、複数(本例では15枚)のレンズL1〜L15が光軸方向に並んで配置されたレンズ鏡筒2を備え、このレンズ鏡筒2に配置された複数のレンズL1〜L15によって、インナーフォーカス式のズームレンズが構成されている。
【0015】
具体的に、このズームレンズは、物体側(交換レンズ1の正面側)から順に、レンズL1,L2,L3からなる第1レンズ群G1と、レンズL4,L5,L6,L7からなる第2レンズ群G2と、レンズL8からなる第3レンズ群G3と、レンズL9からなる第4レンズ群G4と、レンズL10,L11からなる第5レンズ群G5と、レンズL12,L13,L14,L15からなる第6レンズ群G6との6群のレンズ構成を有している。また、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間には絞りSPが配置されている。
【0016】
そして、このズームレンズでは、固定の第1レンズ群G1に対して、残りの第2〜第6レンズ群G2〜G6を光軸方向に移動させることによって変倍(ズーミング)を行い、第4レンズ群G4を光軸方向に移動させることによって合焦(フォーカシング)を行う。
【0017】
また、このズームレンズは、第5レンズ群G5を光軸と直交する方向に移動させることによって、手振れ等に起因した像振れを補正することが可能となっている。なお、ズームレンズの構成については、上述した6群15枚のレンズ構成に限らず、そのレンズの枚数や組み合わせなどを適宜変更して実施することが可能である。
【0018】
レンズ鏡筒2は、このようなズームレンズを構成するため、第1レンズ群G1を保持する第1のレンズ保持部材3と、第2レンズ群G2を保持する第2のレンズ保持部材4と、第3レンズ群G3を保持する第3のレンズ保持部材5と、第4レンズ群G4を保持する第4のレンズ保持部材6と、第5レンズ群G5を保持する第5のレンズ保持部材7と、第6レンズ群G6を保持する第6のレンズ保持部材8と、これら第1〜第6のレンズ保持部材3〜8のうち、第2〜第6のレンズ保持部材4〜8を内側に収納する固定筒9と、この固定筒9を内側に収納した状態で、固定筒9の外周部に周方向において回転自在に取り付けられたカム筒10とを概略備えている。
【0019】
第1のレンズ保持部材3は、全体が筒状に形成されて、その内側に第1レンズ群G1を保持した状態で、固定筒9の前面側に取り付けられている。
【0020】
第2のレンズ保持部材4は、第2レンズ群G2を内側に保持する保持枠4aを有して、固定筒9内において軸線方向に移動可能な状態で収納されている。また、保持枠4aの外周部には、複数(本例では3つ)のガイドピンが周方向に並んで設けられている。
【0021】
第3のレンズ保持部材5は、第3レンズ群G3を内側に保持する保持枠5aを有して、第4のレンズ保持部材6(後述する保持筒13)の前面側に一体的に取り付けられている。また、第3のレンズ保持部材5の背面側には、上記絞りSPの開口を調整するアイリスユニット(絞り調整機構)11が取り付けられている。
【0022】
第4のレンズ保持部材6は、第4レンズ群G4を内側に保持する保持枠12と、この保持枠12を内側に収納する保持筒13と、この保持筒13内で保持枠12を光軸方向に変位駆動させるためのボイスコイルモータ(VCM)等からなるフォーカスアクチュエータユニット(レンズ駆動機構)14とを有しており、保持筒13は、固定筒9内において軸線方向に移動可能な状態で収納されている。また、保持筒13の外周部には、複数(本例では3つ)のガイドピンが周方向に並んで設けられている。
【0023】
第5のレンズ保持部材7は、第5レンズ群G5を内側に保持する保持枠15と、この保持枠15を光軸と直交する面内で移動可能に支持する支持枠16と、この支持枠16に対して保持枠15を光軸と直交する方向に変位駆動させるためのピエゾ素子(PZT)等からなる防振アクチュエータユニット(像振れ補正機構)17とを有している。そして、この第5のレンズ保持部材7は、第4のレンズ保持部材6(保持筒13)の背面側に一体的に取り付けられている。
【0024】
第6のレンズ保持部材8は、第6レンズ群G6を内側に保持する保持枠18と、この保持枠18を光軸と直交する面内で移動可能に支持する支持枠19と、この支持枠19に対する保持枠18の光軸と直交する方向における相対的な位置調整を行うレンズ調芯機構20とを有しており、支持枠19は、固定筒9内において軸線方向に移動可能な状態で収納されている。また、支持枠19の外周部には、複数(本例では3つ)のガイドピンが周方向に並んで設けられている。
【0025】
固定筒9は、全体が略円筒状に形成されて、その内側に収納された第2〜第6のレンズ保持部材4〜8を光軸方向に移動可能に支持している。具体的に、この固定筒9には、光軸方向に平行に延びる直線状のガイドスリットが周方向に複数(本例では3つ)並んで設けられている。そして、固定筒9は、これらガイドスリットに上記第2〜第6のレンズ保持部材4〜8の外周部から突出された各ガイドピンが係合されることによって、第2〜第6のレンズ保持部材4〜8を光軸方向に移動可能に支持している。
【0026】
カム筒10は、全体が略円筒状に形成されて、その内側に収納された固定筒9の外周部に周方向において回転自在に取り付けられている。具体的に、このカム筒10には、上記第2〜第6レンズ群G2〜G6の移動軌跡に対応する曲線状のカムスリット(図示せず。)が、上記第2〜第6のレンズ保持部材4〜8のガイドピン毎に、それぞれ周方向に複数(本例では3つ)並んで設けられている。そして、カム筒10は、これらカムスリットに上記固定筒9の各ガイドスリットから突出された上記第2〜第6のレンズ保持部材4〜8の各ガイドピンが係合された状態で、固定筒9の外周部に周方向において回転自在に取り付けられている。
【0027】
以上のような構造を有するレンズ鏡筒2では、カム筒10の回転操作により、各ガイドピンが各ガイドスリット及び各カムスリット内を相対的に移動しながら、第2〜第6のレンズ保持部材4〜8が、各カムスリットの形状に合わせた軌跡を描きながら、固定筒9内を光軸方向に移動することになる。
【0028】
交換レンズ1は、このようなレンズ鏡筒2に、手動又は自動でフォーカシングを行うための機構や、手振れ等を検知するための機構、一眼レフカメラに取り付けるための機構、その他の公知部品等を取り付けることによって構成されている。
【0029】
そして、この交換レンズ1では、一眼レフカメラに取り付けられた状態において、上記レンズ鏡筒2のカム筒10を回転操作することによって、第2〜第6レンズ群G2〜G6を光軸方向に移動させながらズーミングを行うことができる。また、ズーミング時に第4レンズ群G4を光軸方向に移動させることによってフォーカシングを行うことができる。さらに、この交換レンズ1では、第5レンズ群G5を光軸と直交する方向に移動させることによって、手振れ等に起因した像振れを打ち消す(キャンセル)することができる。
【0030】
ところで、上記レンズ調芯機構20は、本発明を適用した調芯機構によって構成されている。以下、本発明を適用したレンズ調芯機構20について、
図2〜
図5を参照して説明する。なお、
図2は、このレンズ調芯機構20の外観を示す斜視図、
図3は、このレンズ調芯機構20の断面図、
図4は、このレンズ調芯機構20を一方側(図中左側)から見た分解斜視図、
図5は、このレンズ調芯機構20を他方側(図中右側)から見た分解斜視図である。
【0031】
このレンズ調芯機構20は、
図2〜
図5に示すように、上記第6レンズ群G6(光学素子)を保持する保持枠(保持部材)18と、保持枠18に対向して配置されて、この保持枠18を対向する面内で移動可能に支持する支持枠(支持部材)19と、支持枠19に対向して配置されて、保持枠18を保持しながら、この支持枠19と対向する面に設けられた第1の支点S1を中心に回動自在に支持される第1の回動板(第1の回動部材)21と、支持枠19に対向して配置されて、保持枠18を保持しながら、この支持枠19と対向する面に設けられた第2の支点S2を中心に回動自在に支持される第2の回動板(第2の回動部材)22とを備えている。
【0032】
保持枠18は、上記第6レンズ群G6を内側に保持する筒状部23と、この筒状部23の支持枠19と対向する側の外周部から外側に向かって突出されたフランジ部24と、このフランジ部24に形成された複数(本例では3つ)の貫通孔25とを有している。
【0033】
支持枠19は、上記第6レンズ群G6を外方に臨ませる開口部26と、この開口部26の外側に複数(本例では3つ)のネジ穴27と、第1の支点S1及び第2の支点S2に対応する位置に第1の軸部28a及び第2の軸部28bとを有している。
【0034】
第1の回動板21及び第2の回動板22は、保持枠19の筒状部23を内側に保持する枠部29と、この枠部29から外側に向かって突出されたフランジ部30と、このフランジ部30に形成された複数の貫通孔31と、第1の軸孔32a及び第2の軸孔32bとを有している。
【0035】
そして、このレンズ調芯機構20では、保持枠18の筒状部23を支持枠19の開口部26の内側に位置させた状態で、フランジ部24を支持枠19の対向する面に接触させることによって、この支持枠19の対向する面内で移動可能に取り付けられている。
【0036】
また、第1の回転板21は、枠部29の鉛直平行部に保持枠18の筒状部23を嵌合させると共に、保持枠18と互いのフランジ部24,30を重ね合わされた状態で、第1の軸孔32aに支持枠19の第1の軸部28aを係合させることよって、支持枠19の対向する面に第1の支点S1を中心に回動自在に取り付けられている。
【0037】
また、第2の回動板22は、枠部29の水平平行部に保持枠18の筒状部23を嵌合させると共に、第1の回転板21と互いのフランジ部30,30を重ね合わされた状態で、第2の軸孔32bに支持枠19の第2の軸部28bを係合させることによって、支持枠19の対向する面に第2の支点S2を中心に回動自在に取り付けられている。
【0038】
また、第1の支点S1と第2の支点S2とは、上記第6レンズ群G6の光軸を挟んで互いに直角(90°)を為す位置に配置されている。具体的に、第1の支点S1は、上記第6レンズ群G6の光軸を通る鉛直線上に位置し、本例では
図2中に示す上記第6レンズ群G6の光軸を挟んだ下側に配置されている。これにより、レンズ調芯機構20では、第1の回動板21を第1の支点S1を中心に回動させることによって、この第1の回動板21に保持された保持枠18(すなわち上記第6レンズ群G6)を、支持枠19と対向する面内において左右に振るヨーイング方向(第1の方向)に移動させることができる。
【0039】
一方、第2の支点S2は、上記第6レンズ群G6の光軸を通る水平線上に位置し、本例では
図2中に示す上記第6レンズ群G6の光軸を挟んだ右側に位置している。これにより、レンズ調芯機構20では、第2の回動板22が第1の支点S2を中心に回動することによって、この第2の回動板22に保持された保持枠18(すなわち上記第6レンズ群G6)を、支持枠19と対向する面内において上下に振るピッチング方向(第2の方向)に移動させることができる。
【0040】
また、レンズ調芯機構20は、保持枠18、第1の回動板21及び第2の回動板22を支持枠19に固定する固定手段として、互いに重ね合わされたフランジ部24,30,30の各貫通孔25,31,31を通して、これら貫通孔25,31,31よりも径の小さいネジ33をネジ穴27に締結することによって、保持枠18、第1の回動板21及び第2の回動板22が支持枠19に固定される構造を有している。
【0041】
さらに、レンズ調芯機構20は、保持枠18、第1の回動板21及び第2の回動板22を支持枠19と対向する面に向かって付勢する付勢手段として、ネジ穴27に締結されるネジ33との間にバネ座金34を介在させることによって、保持枠18、第1の回動板21及び第2の回動板22が支持枠19側に付勢される構造を有している。
【0042】
そして、このレンズ調芯機構20では、第1の回動板21及び第2の回動板22の回動操作に伴って、支持枠19の対向する面内で移動する保持枠18が、バネ座金34の付勢力によって、その光軸方向の位置を保持できる程度に、ネジ穴27に対するネジ33の締結力が調整されている。すなわち、これら保持枠18、第1の回動板21及び第2の回動板22は、少なくとも調整前は支持枠19に対して半固定状態で取り付けられている。
【0043】
また、このレンズ調芯機構20では、ネジ33が第1の回動板21及び第2の回動板22の貫通孔31に遊嵌された状態となっているため、この貫通孔31の内側でネジ33が相対的に移動する範囲で、第1の回動板21及び第2の回動板22が回動可能となっている。
【0044】
また、レンズ調芯機構20は、第1の回動板21と第2の回動板22との回動方向の位置を調整する調整機構(調整手段)35を備えている。具体的に、この調整機構35は、支持枠19の外周部に回転自在に取り付けられた一対の調整部材36a,36bを有している。一対の調整部材36a,36bは、中心軸に対して偏心された偏心部37aを有する偏心ネジ(偏心ピン)37と、この偏心ネジ37を貫通させる長孔38aを有する係合部材38とから構成されている。
【0045】
そして、一方の調整部材36aは、第1の回動板21の第1の支点S1とは上記第6レンズ群G6の光軸を挟んだ反対側(
図2中に示す第1の回動板21の上側)の外周部に設けられた凹部39aに係合部材38を係合させた状態で、偏心ネジ37が支持枠19に設けられた突出部40aのネジ孔に螺合により取り付けられている。また、他方の調整部材36bは、第2の回動板22の第1の支点S2とは上記第6レンズ群G6の光軸を挟んだ反対側((
図2中に示す第2の回動板22の右側)の外周部に設けられた凹部39bに係合部材38を係合させた状態で、偏心ネジ37が支持枠19に設けられた突出部40bのネジ孔に螺合により取り付けられている。
【0046】
そして、この調整機構35では、一対の調整部材36a,36bの偏心ネジ37を回転させると、この偏心ネジ37の偏心部37aが係合部材38の長孔38a内で相対的に移動することによって、係合部材38の突出部40b上における位置が切り替わる。これにより、第1の回動板21と第2の回動板22は、凹部39a,39bに係合された係合部材38の移動によって回動するため、その回動方向の位置が調整可能となっている。
【0047】
以上のような構造を有するレンズ調芯機構20では、第1の回動板21と第2の回動板22との何れかの回動操作に伴って、保持枠18が支持枠19の対向する面内で移動する簡便な構成によって、上記第6レンズ群G6の光軸と直交する方向における相対的な位置調整を精度良く行うことが可能である。
【0048】
また、このレンズ調芯機構20では、上述した一対の調整部材36a,36bの偏心ネジ37を回転操作することによって、上記第6レンズ群G6の光軸ずれ調整する調芯作業を容易に行うことが可能である。特に、上記レンズ鏡筒2に組み込まれた後も、上記固定筒9及び上記カム筒10に設けられた開口部(図示せず。)から調整治具を通して、上述した一対の調整部材36a,36bの偏心ネジ37を回転操作しながら、上記第6レンズ群G6の光軸ずれ調整を容易に行うことが可能である。さらに、上記レンズ鏡筒2のズームレンズを通して撮像されたチャートの画像をモニターで見ながら調整作業を行う際に、調整治具等が画像に映り込むことなく、上述した一対の調整部材36a,36bの偏心ネジ37を回転操作することが可能である。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記レンズ調芯機構20では、支持枠19側に軸部28a,28b、第1及び第2の回転板21,22側に軸孔32a,32bが設けられた構成となっているが、支持枠19側に軸孔32a,32b、第1及び第2の回転板21,22側に軸部28a,28bが設けられた構成とすることも可能である。
【0050】
また、上記レンズ調芯機構20では、支持枠19側に調整部材36a,36b、第1及び第2の回転板21,22側に凹部39a,39bが設けられた構成となっているが、支持枠19側に凹部39a,39b、第1及び第2の回転板21,22側に調整部材36a,36bが設けられた構成とすることも可能である。
【0051】
また、上記レンズ調芯機構20では、上述した一対の調整部材36a,36bの偏心ネジ37を回転操作しながら調芯作業を行う構成となっているが、このような調整機構35の構成に必ずしも限定されるものではなく、第1の回動板21と第2の回動板22との回動方向の位置を調整できる機構であれば、その他の機構を用いることが可能である。さらに、上記調整機構35を省略し、治具等を用いて第1の回動板21と第2の回動板22とを直接回動させながら、上述した調芯作業を行う構成とすることも可能である。
【0052】
また、上記実施形態では、上記第6のレンズ保持部材8に設けられたレンズ調芯機構20に本発明の調芯機構を適用した場合を説明したが、本発明の調芯機構は、上記ズームレンズを構成する複数のレンズL1〜L15のうち何れかのレンズ又はレンズ群の光軸ずれを調整する場合に適用することが可能である。また、本発明の調芯機構は、上述したレンズに限らず、光学フィルタなどの光学素子の光軸ずれを調整する場合にも適用することが可能である。
【0053】
さらに、上記実施形態では、一眼レフフィルムカメラに用いられる交換レンズ1に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、レンズシャッタカメラ、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラなどの撮影装置や、プロジェクタなどの画像投影装置といった光学機器、並びにそのような光学機器が備えるレンズ鏡筒に対して、幅広く適用することが可能である。