(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776241
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】バーナおよびボイラ
(51)【国際特許分類】
F23D 11/28 20060101AFI20150820BHJP
F23N 1/02 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
F23D11/28
F23N1/02 101
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-60020(P2011-60020)
(22)【出願日】2011年3月18日
(65)【公開番号】特開2012-193930(P2012-193930A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2013年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】蔵野 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 務
(72)【発明者】
【氏名】明上 鉄平
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−116214(JP,A)
【文献】
実開昭57−19715(JP,U)
【文献】
特公昭45−24514(JP,B1)
【文献】
特開2008−134037(JP,A)
【文献】
特開平9−229311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 11/28
F23N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の送り路と戻り路とが接続され、戻り路の流量を調整して噴霧量を変化させるリターンフローノズルと、
このリターンフローノズルに着火させるための着火用ノズルとを備え、
前記リターンフローノズルは、バーナ中心軸に沿って配置されるか、前記着火用ノズルよりもバーナ中心軸に近くなるよう配置され、
前記リターンフローノズルが前記着火用ノズルで着火された後、前記リターンフローノズルのみで燃料を噴霧し、
前記リターンフローノズルの噴霧量を調整して、燃焼量を変更し、
前記各ノズルを取り囲むように円筒状の整流筒が設けられ、その整流筒を取り囲むように円筒状のエアレジスタが設けられ、
前記整流筒と前記エアレジスタとの間の円筒状空間には、周方向等間隔に複数の空気パイプが、前記エアレジスタを上下に貫通するよう設けられ、
燃焼用空気が、第一空気路により前記整流筒および前記空気パイプを介して供給されると共に、第二空気路により前記エアレジスタを介して供給され、
送風機からの空気は、共通空気路を介して、前記第一空気路と前記第二空気路とに分岐され、
前記共通空気路には第一ダンパが設けられ、前記第二空気路には第二ダンパが設けられ、前記第一空気路にはダンパが設けられず、
高燃焼、低燃焼および停止の三位置で燃焼量を変化させるか、高燃焼、中燃焼、低燃焼および停止の四位置で燃焼量を変化させる
ことを特徴とするバーナ。
【請求項2】
円筒状の燃焼室の上部中央に、下方へ向けて前記バーナが設けられ、
前記リターンフローノズルは、燃焼室中心軸に沿って配置されるか、前記着火用ノズルよりも燃焼室中心軸に近くなるよう配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のバーナを備えたボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼量を変更可能なバーナと、そのようなバーナを備えたボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高燃焼用ノズルと低燃焼用ノズルとの二つのノズルを備えるバーナが知られている。この種のバーナでは、低燃焼時には、低燃焼用ノズルからのみ燃料を噴霧し、高燃焼時には、高燃焼用ノズルと低燃焼用ノズルとの双方から燃料を噴霧する。
【0003】
この種のバーナでは、高燃焼用ノズルと低燃焼用ノズルとの二つのノズルを備えるので、両ノズル間の中点をバーナ中心軸に合わせて配置されるのが通常である。そのため、いずれのノズルもバーナ中心軸から偏心して配置され、それ故、燃焼室内で火炎に偏りが生じ、燃焼性に改善の余地があった。
【0004】
そこで、下記特許文献1に開示されるように、低燃焼時の燃焼性を改善するために、低燃焼用ノズル(4)を高燃焼用ノズル(5)よりもバーナ中心軸(8)(燃焼室中心軸(7))に近くなるよう配置したバーナ(1)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−302010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、そもそも高燃焼時に、高燃焼用ノズルと低燃焼用ノズルとの二つのノズルから燃焼を噴霧するのでは、各ノズルからの燃料や火炎に重なりが生じてしまい、局所的に高温部が生成されてしまうことが避けられない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、各燃焼段階の燃焼性を改善するバーナおよびボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、燃料の送り路と戻り路とが接続され、戻り路の流量を調整して噴霧量を変化させるリターンフローノズルと、このリターンフローノズルに着火させるための着火用ノズルとを備え、前記リターンフローノズルは、バーナ中心軸に沿って配置されるか、前記着火用ノズルよりもバーナ中心軸に近くなるよう配置され
、前記リターンフローノズルが前記着火用ノズルで着火された後、前記リターンフローノズルのみで燃料を噴霧し、前記リターンフローノズルの噴霧量を調整して、燃焼量を変更し、前記各ノズルを取り囲むように円筒状の整流筒が設けられ、その整流筒を取り囲むように円筒状のエアレジスタが設けられ、前記整流筒と前記エアレジスタとの間の円筒状空間には、周方向等間隔に複数の空気パイプが、前記エアレジスタを上下に貫通するよう設けられ、燃焼用空気が、第一空気路により前記整流筒および前記空気パイプを介して供給されると共に、第二空気路により前記エアレジスタを介して供給され、送風機からの空気は、共通空気路を介して、前記第一空気路と前記第二空気路とに分岐され、前記共通空気路には第一ダンパが設けられ、前記第二空気路には第二ダンパが設けられ、前記第一空気路にはダンパが設けられず、高燃焼、低燃焼および停止の三位置で燃焼量を変化させるか、高燃焼、中燃焼、低燃焼および停止の四位置で燃焼量を変化させることを特徴とするバーナである。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、リターンフローノズルを用いて燃焼量を変化させるので、高燃焼時に複数のノズルから同時に噴霧することもなく、燃料や火炎の重なりを防止して、局所的な高温部の発生を防止し、燃焼性を改善することができる。さらに、リターンフローノズルを、バーナ中心軸に沿って配置するか、着火用ノズルよりもバーナ中心軸に近くなるよう配置するので、燃焼性を改善することができる。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、まずは着火用ノズルに着火し、その火炎をリターンフローノズルへ移して、リターンフローノズルが着火後には、リターンフローノズルのみで燃料を噴霧することができる。このようにして、リターンフローノズルの着火を円滑に行うことができる。
【0012】
さらに、
請求項2に記載の発明は、円筒状の燃焼室の上部中央に、下方へ向けて前記バーナが設けられ、前記リターンフローノズルは、燃焼室中心軸に沿って配置されるか、前記着火用ノズルよりも燃焼室中心軸に近くなるよう配置されることを特徴とする
請求項1に記載のバーナを備えたボイラである。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、リターンフローノズルを、燃焼室中心軸に沿って配置するか、着火用ノズルよりも燃焼室中心軸に近くなるよう配置することで、燃焼段階によらず燃焼性を改善したボイラとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各燃焼段階の燃焼性を改善したバーナおよびボイラを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のバーナの一実施例を示す概略縦断面図である。
【
図2】
図1におけるバーナのノズル先端部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のバーナの一実施例を示す概略縦断面図である。また、
図2は、
図1におけるバーナのノズル先端部の拡大図であり、
図3は、そのIII−III断面図である。
【0017】
本実施例のバーナ1は、液体燃料を燃焼させるバーナであり、リターンフローノズル2と着火用ノズル3との二つのノズル2,3を備える。各ノズル2,3は、それぞれ、ノズルパイプ4,5の先端部にノズルチップ6,7が設けられて構成される。
【0018】
各ノズル2,3は、それぞれ、軸線を上下方向へ沿って配置され、近接して並列に設けられる。この際、各ノズル2,3のノズルチップ6,7同士は、近接してほぼ同一高さに配置される。
【0019】
着火用ノズル3には、点火装置8が設けられる(
図3)。具体的には、着火用ノズル3に近接して着火碍子が設けられ、その下端部の電極10,10間にスパークを発生させることで、着火用ノズル3からの噴霧燃料に点火することができる。
【0020】
各ノズル2,3には、それぞれ、オイルタンク11からの燃料が、給油路12を介して供給可能とされる。具体的には、オイルタンク11からの給油路12は、燃料ポンプ13と第一燃料元弁14とを介した後、二股に分岐され、一方の給油路15はリターンフローノズル用燃料弁16を介してリターンフローノズル2に接続され、他方の給油路17は着火ノズル用燃料弁18を介して着火用ノズル3に接続される。
【0021】
リターンフローノズル2は、オイルタンク11からの燃料の送り路(給油路)15の他、オイルタンク11への燃料の戻り路19も接続される。戻り路19には、リターンフローノズル2の側から順に、流量調整弁20、第二燃料元弁21および逆止弁22が設けられる。
【0022】
各燃料元弁14,21は、ボイラの運転時には開放状態に維持される。従って、燃料ポンプ13を作動させた状態で着火ノズル用燃料弁18を開くと、着火用ノズル3へ燃料が供給され、そのノズルチップ7から下方へ燃料が略円錐状に噴霧される。一方、燃料ポンプ13を作動させた状態でリターンフローノズル用燃料弁16を開くと、リターンフローノズル2へ燃料が供給され、そのノズルチップ6から下方へ燃料が略円錐状に噴霧される。この際、流量調整弁20の開度を調整して、戻り路19を介してオイルタンク11へ戻す流量、言い換えれば戻り路19の油圧を調整することにより、リターンフローノズル2からの噴霧量を変化させることができる。
【0023】
バーナ1は、さらに、各ノズル2,3を取り囲むように、整流筒23とエアレジスタ24とを備える。整流筒23とエアレジスタ24とは、それぞれ円筒状であり、その軸線を上下方向へ沿って配置されると共に、同心円筒状に配置される。そして、各ノズル2,3は、整流筒23の径方向中央部において、整流筒23の上部開口から下端部まで差し込まれた状態で保持される。これにより、各ノズル2,3を取り囲むように整流筒23が設けられ、その整流筒23を取り囲むようにエアレジスタ24が設けられる。
【0024】
整流筒23の下部開口には、バッフル板25が設けられる。このバッフル板25は、整流筒23の下部開口を塞ぐように設けられる邪魔板であるが、
図2および
図3に示すように、各ノズルチップ6,7および点火装置8の下端部と対応した箇所に開口26が形成されている。
【0025】
整流筒23とエアレジスタ24との間の円筒状空間の下端部には、所望により空気開口形成板27が設けられる。本実施例では、円環状の板材からなる空気開口形成板27が設けられ、この空気開口形成板27には周方向等間隔に同一形状の複数の開口28,28,…が形成されている。この際、空気開口形成板27に単に開口を形成するだけでもよいが、本実施例では、空気開口形成板27から下方へ突出して短円筒状の空気ノズル29を設けている。各空気ノズル29は、整流筒23およびエアレジスタ24と同心円状に配置される。
【0026】
このようにして、整流筒23とエアレジスタ24との間の円筒状空間は、周方向等間隔に配置された複数の空気ノズル29の中空穴を介して、下方へ開口する。但し、空気開口形成板27に設ける開口や空気ノズル29の個数や形状は適宜に変更可能である。また、場合により、空気開口形成板27の設置を省略して、整流筒23とエアレジスタ24との間の円筒状空間の全域を開口させてもよい。
【0027】
さらに、整流筒23とエアレジスタ24との間の円筒状空間には、周方向等間隔に複数の空気パイプ30が設けられる。各空気パイプ30は、その軸線を上下方向へ沿って配置され、上端部がエアレジスタ24より上方へ延出する一方、下端部がエアレジスタ24よりも下方へ延出し、図示例の場合、空気ノズル29に差し込まれて空気ノズル29の下端部付近まで延出している。
【0028】
整流筒23およびエアレジスタ24の下方には、燃焼筒31が設けられる。燃焼筒31は、整流筒23の周方向に配置された複数の空気ノズル29,29,…を取り囲む大きさの円筒状で、エアレジスタ24と同等の直径を有する短円筒状である。また、燃焼筒31は、整流筒23およびエアレジスタ24と同心に配置され、適宜の取付材(図示省略)によりエアレジスタ24の下端部に保持され、図示例では、各空気ノズル29の下端部が燃焼筒31の上端部とほぼ対応した高さに配置される。
【0029】
バーナ1は、さらに、下方へのみ開口した略円筒状のウィンドボックス32を備える。ウィンドボックス32の下部開口付近に設けた円環状の取付板33に、エアレジスタ24の外周部に設けたフランジ34が保持される。これにより、ウィンドボックス32は、整流筒23の開口26、エアレジスタ24の開口28(空気ノズル29)、および空気パイプ30を介してのみ、下方へ開口する。
【0030】
ウィンドボックス32の周側壁上部には、送風機(図示省略)からの空気路(第一空気路35、第二空気路36)が接続される。各ノズル2,3から燃料を噴霧して燃焼を図る際には、ダンパ(第一ダンパ37、第二ダンパ38)や送風機を制御して、燃焼量に応じた量の空気が燃焼用空気として燃焼室内へ送り込まれる。
【0031】
本実施例では、ウィンドボックス32は、仕切板39で上下に仕切られている。そして、送風機からの空気は、共通空気路40を介して、第一空気路35と第二空気路36とに分岐されて、ウィンドボックス32の上下の各空間へ供給される。共通空気路40には、第一ダンパ37が設けられ、第二空気路36には第二ダンパ38が設けられている。
【0032】
ウィンドボックス32の上部空間には、整流筒23と各空気パイプ30の上端部が開口する。このような構成であるから、第一空気路35を介してウィンドボックス32の上部空間に供給された空気は、整流筒23および各空気パイプ30の上部開口へ送り込まれる。そして、その空気は、整流筒23の内側を通りバッフル板25の開口26から吐出されると共に、空気パイプ30の中空穴を通りその下部開口から吐出される。
【0033】
一方、ウィンドボックス32の下部空間には、エアレジスタ24の上端部が開口する。そのため、第二空気路36を介してウィンドボックス32の下部空間に供給された空気は、エアレジスタ24の上部開口へ送り込まれる。そして、その空気は、整流筒23とエアレジスタ24との間の円筒状空間を通りその下部開口(空気ノズル29)から吐出される。
【0034】
このようなバーナ1は、ボイラ41の缶体42上部に設けられる。この缶体42は、典型的には、多数の水管を円筒状に配列して構成される。そして、その円筒状の水管列の径方向中央上部に、バーナ1が下方へ向けて設けられる。バーナ1から吐出される燃料は、円筒状の水管列の内側で燃焼を図られる。つまり、円筒状の水管列の内側が、燃焼室として機能する。
【0035】
本実施例では、リターンフローノズル2は、バーナ中心軸Xに沿って配置されるか、着火用ノズル3よりもバーナ中心軸Xに近くなるよう配置される。バーナ中心軸Xとは、整流筒23の中心軸であり、また通常、缶体42および燃焼室の中心軸と一致する。
【0036】
本実施例のボイラ41は、まずは点火装置8を用いて着火用ノズル3からの噴霧燃料に点火し、その後、着火用ノズル3からの火炎をリターンフローノズル2からの噴霧燃料に移した後、着火用ノズル3からの燃料の噴霧を停止すればよい。そして、流量調整弁20の開度を調整して、リターンフローノズル2からの噴霧量を調整して、燃焼量が制御される。この燃焼量の制御は、周知のとおり、ボイラ41からの蒸気圧に基づき、蒸気の使用負荷を監視して、圧力センサ(圧力スイッチを含む)により行うことができる。この際、たとえば、高燃焼、低燃焼および停止の三位置で制御してもよいし、高燃焼、中燃焼、低燃焼および停止の四位置で制御してもよい。
【0037】
本実施例のバーナ1およびボイラ41によれば、リターンフローノズル2を用いて燃焼量を変化させるので、高燃焼時に複数のノズルから同時に噴霧することもなく、燃料や火炎の重なりを防止して、局所的な高温部の発生を防止し、燃焼性を改善することができる。さらに、リターンフローノズル2を、バーナ中心軸Xに沿って配置するか、着火用ノズル3よりもバーナ中心軸Xに近くなるよう配置するので、燃焼性を改善することができる。
【0038】
本発明のバーナ1およびボイラ41は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、燃焼用空気は、第一空気路35により整流筒23および空気パイプ30を介して燃焼室へ供給すると共に、第二空気路36によりエアレジスタ24を介して燃焼室へ供給したが、燃焼用空気をどのように燃焼室へ供給するかは適宜に変更可能である。要は、リターンフローノズル2とその着火用ノズル3とを備え、リターンフローノズル2をバーナ中心軸Xに沿って配置するか、着火用ノズル3よりもバーナ中心軸Xに近くなるよう配置すれば、その他の構成は適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 バーナ
2 リターンフローノズル
3 着火用ノズル
15 送り路(給油路)
19 戻り路
20 流量調整弁
23 整流筒
24 エアレジスタ
41 ボイラ
X バーナ中心軸