【実施例】
【0030】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
なお、実施例1は参考例である。
【0031】
<実施例1〜3、比較例1〜4>
次の表1に示す2種類の酸化物(第1酸化物(X)及び第2酸化物(Y))からなる蒸着材をそれぞれ用意し、厚さ75μmのPET基板上に反応性プラズマによって同時に蒸着する共蒸着法によりバリア膜を成膜した。第1酸化物(X)及び第2酸化物(Y)の種類及びその含有割合を表1に示す。
【0032】
<比較試験及び評価1>
実施例1〜3、比較例1〜4で得られた水蒸気バリア膜について、以下に示す手法を用いて膜厚、水滴接触角θ、水蒸気透過率S
1、水蒸気透過率WVTRを求めた。その結果を表1に示す。
(1) 水蒸気バリア膜の膜厚
触針式表面形状測定器を用いて基板上に共蒸着した膜の膜厚を測定した。
(2) 水蒸気バリア膜表面の水滴接触角θ
基板上に共蒸着した膜を、温度25℃、相対湿度50%RHに設定したクリーンルーム内に1日放置した後、この水蒸気バリア膜表面にイオン交換水2μLを滴下してから、2秒後の接触角を水滴接触角測定装置(協和界面科学株式会社製;FAMAS)により測定した。
(3) 水蒸気透過率S
1(算出値)
上記式(1)に示す関係式に、測定した水滴接触角θ、第1酸化物(X)の塩基度及び第2酸化物(Y)の塩基度を代入することにより算出した。
(4) 水蒸気透過率WVTR(実測値)
MOCON社製の水蒸気透過率測定装置(型名:PERMATRAN−Wタイプ3/33)を用い、バリア膜を、温度40℃、相対湿度90%RHに設定した上記水蒸気透過率測定装置内で1時間保持した後、温度40℃、相対湿度90%RHの条件で水蒸気透過度を測定した。
【0033】
【表1】
表1から明らかなように、実施例1〜3,比較例1〜4では、水蒸気透過率の実測値WVTRと、上記式(1)から算出される算出値S
1とは非常に近似した値となり、上記式(1)に示す関係式から算出されるS
1値は実測値WVTRと同様の傾向を有しており、算出値S
1は信頼性の高い数値であることが確認された。
【0034】
また、θ×ΔBが50未満の比較例1〜4では、水蒸気透過率が実測値及び算出値ともに0.1g/m
2・dayを越え、水蒸気バリア性に劣る結果となった。一方、θ×ΔBが50以上の実施例1〜3では水蒸気透過率が実測値及び算出値ともに0.1g/m
2・day未満と、優れた水蒸気バリア性を示す結果であった。この結果から、色々な酸化物の組み合わせの膜であっても、所望の要件を満たすことで、水蒸気バリア性に優れたバリア膜が実現できることが確認された。
【0035】
<実施例4〜8、比較例5〜8>
次の表2に示す1種類又は2種類の酸化物(第1酸化物(X)及び第2酸化物(Y))からなる蒸着材をそれぞれ用意し、厚さ75μmのPET基板上に反応性プラズマによって同時に蒸着する共蒸着法により、その含有割合を変化させたバリア膜を成膜した。第1酸化物(X)及び第2酸化物(Y)の種類及びその含有割合を表2に示す。
【0036】
<比較試験及び評価2>
実施例4〜8、比較例5〜8で得られた水蒸気バリア膜について、上記比較試験及び評価1と同様に、膜厚、水滴接触角θ、水蒸気透過率S
1、水蒸気透過率WVTRを求めた。その結果を表2に示す。
【0037】
また、実施例4〜8及び比較例6,7で得られた水蒸気バリア膜における、第1酸化物(X)及び第2酸化物(Y)の含有割合と水蒸気透過率WVTRとの関係を
図3に示す。
【0038】
【表2】
実施例4〜8及び比較例5〜8は第1酸化物(X)と第2酸化物(Y)との含有割合のみを変動させたときの例であるが、表2から明らかなように、1種類の蒸着材から形成された比較例5,8では、水蒸気透過率の実測値が0.1g/m
2・dayを越え、水蒸気バリア性に劣る結果となった。また、表2及び
図3から明らかなように、一方の含有割合が少ない比較例6,7では、水蒸気透過率が実測値及び算出値ともに0.1g/m
2・dayを越え、水蒸気バリア性に劣る結果となった。これに対して実施例4〜8では水蒸気透過率が実測値及び算出値ともに0.1g/m
2・day未満と、優れた水蒸気バリア性を示す結果であった。この結果から、2種類の酸化物の含有割合には、水蒸気バリア性に優れた範囲が存在することが確認された。
【0039】
<実施例9〜15、比較例9〜11>
次の表3に示す2種類の酸化物(第1酸化物(X)及び第2酸化物(Y))からなる蒸着材をそれぞれ用意し、厚さ75μmのPET基板上に反応性プラズマによって同時に蒸着する共蒸着法により、その膜厚のみを変動させたバリア膜を成膜した。第1酸化物(X)及び第2酸化物(Y)の種類及びその含有割合を表3に示す。
【0040】
<比較試験及び評価3>
実施例9〜15、比較例9〜11で得られた水蒸気バリア膜について、上記比較試験及び評価1と同様に、膜厚、水滴接触角θ、水蒸気透過率S
1、水蒸気透過率WVTRを求めた。その結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
実施例9〜15及び比較例9〜11は膜厚のみを変動させたときの例であるが、表3から明らかなように、θ×ΔBの値及び水蒸気透過率の算出値は、実施例9〜15及び比較例9〜11の全てが同値であった。しかしながら、膜厚が薄い比較例9や膜厚が厚い比較例10,11では水蒸気透過率の実測値が0.1g/m
2・dayを越え、水蒸気バリア性に劣る結果となり、水蒸気透過率は、実測値と上記式(1)から算出される算出値とで相関が得られていなかった。これに対して、実施例9〜15では水蒸気透過率が実測値及び算出値ともに0.1g/m
2・day未満と、優れた水蒸気バリア性を示す結果であった。この結果から、水蒸気バリア膜の膜厚には、水蒸気バリア性に優れた範囲が存在することが確認された。