特許第5776314号(P5776314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776314
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ給湯機
(51)【国際特許分類】
   F25B 30/02 20060101AFI20150820BHJP
   F24H 1/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   F25B30/02 H
   F24H1/00 611P
   F25B30/02 J
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-101934(P2011-101934)
(22)【出願日】2011年4月28日
(65)【公開番号】特開2012-233626(P2012-233626A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2014年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100107445
【弁理士】
【氏名又は名称】小根田 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山上 薫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏信
(72)【発明者】
【氏名】大友 一朗
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−340535(JP,A)
【文献】 特開2009−186121(JP,A)
【文献】 特開2010−048518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 30/02
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、給湯用熱交換器と、減圧手段と、熱源用熱交換器とを冷媒循環配管で順に接続した冷媒循環回路と、給水ポンプにより前記給湯用熱交換器に入水させた水を前記圧縮機から吐出された冷媒で熱交換加熱して出湯させる給湯回路とを備えたヒートポンプ給湯機において、
前記冷媒循環回路に循環される冷媒としてHC系冷媒を用い、
記圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度を検出する吐出温度検出手段と、
外気温を検出する外気温検出手段と、
前記給湯用熱交換器に入水される入水温度を検出する入水温度検出手段と、
前記給湯用熱交換器を通過することで熱交換加熱されて出湯される湯の温度を検出する出湯温度検出手段と、
記圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度と、前記給湯用熱交換器から出湯される湯の出湯温度との間の温度差であって、前記外気温検出手段により検出される検出外気温と、前記入水温度検出手段により検出される検出入水温度と、設定出湯温度とに対応する目標温度差を決定する目標温度差決定処理手段と、
前記出湯温度検出手段により検出される検出出湯温度が前記設定出湯温度になるように、前記圧縮機の作動制御量を変更制御する第1制御手段と、
前記吐出温度検出手段により検出される検出吐出温度と、前記検出出湯温度との間の温度差が前記目標温度差決定処理手段により決定された目標温度差になるように、前記減圧手段の作動制御量を変更制御する第2制御手段と
を備え、
前記第1制御手段により前記圧縮機の作動制御量を変更制御し、次に、その変更制御した作動制御量で前記圧縮機の作動を一定に維持した状態で、前記第2制御手段により前記減圧手段の作動制御量を変更制御するように構成されていることを特徴とするヒートポンプ給湯機。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートポンプ給湯機であって、
目標温度差決定処理手段は、前記目標温度差として、圧縮機の作動量に対し前記冷媒循環回路側におけるエネルギー消費効率が最大となる前記温度差の値を決定するように構成されている、ヒートポンプ給湯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ給湯機に関し、特に冷媒としてプロパン等の炭化水素(HC)系冷媒を用いたヒートポンプ給湯機に好適に適用し得る技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機、給湯用熱交換器、減圧手段及び熱源用熱交換器を冷媒循環配管で順に接続した冷媒循環回路と、給水ポンプにより前記給湯用熱交換器に給水した水を前記圧縮機により圧縮された高圧冷媒で熱交換加熱して給湯に利用する給湯回路とを備えたヒートポンプ給湯機が知られている。かかるヒートポンプ給湯機では、通常、圧縮機により圧縮されて吐出される高圧冷媒の吐出温度が所定の目標温度になるように、圧縮機,減圧手段や給水ポンプの作動制御を行うことが提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。これらのヒートポンプ給湯機では、いずれも二酸化炭素(CO)を冷媒として用い、これを圧縮機で臨界圧以上に圧縮することで超臨界状態の冷媒を用いて熱交換加熱を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3601369号公報
【特許文献2】特許第3843963号公報
【特許文献3】特開2004−361046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明の発明者らは、冷媒の一種として知られてはいるものの、種々の難点があって従来は現実には冷媒として採用されてはいなかったプロパン等の炭化水素(HC)系冷媒を用いたヒートポンプ給湯機の開発を進めてきた。かかるHC系冷媒はCO冷媒と比べ圧縮能力の低い圧縮機の使用が可能になる反面、給湯用熱交換器での熱交換により凝縮して相変化が生じるため、圧縮機からの吐出温度の管理では出湯温度の制御が困難になったり、良好なエネルギー消費効率の実現が困難になったりするという問題点を抱えている。すなわち、給湯用熱交換器における熱交換は、CO2冷媒の場合には相変化が生じない顕熱での熱交換であるため、熱交換加熱による出湯温度管理を比較的容易に行い得るものの、HC系冷媒の場合には気・液相に変化する潜熱での熱交換となるため、出湯温度管理が困難なものとなる。これに対処するために、CO2冷媒の如く圧縮機からの吐出温度ではなくて給湯用熱交換器での凝縮温度を管理するようにすることも考えられるが、そうすると、水の熱交換加熱に寄与しない無駄なエネルギー消費を伴うことになってエネルギー消費効率の最適化を阻害してしまうことになる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、出湯温度を精度良く制御しつつ、エネルギー消費効率の最適化を図り得るヒートポンプ給湯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、圧縮機と、給湯用熱交換器と、減圧手段と、熱源用熱交換器とを冷媒循環配管で順に接続した冷媒循環回路と、給水ポンプにより前記給湯用熱交換器に入水させた水を前記圧縮機から吐出された冷媒で熱交換加熱して出湯させる給湯回路とを備えたヒートポンプ給湯機を対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、前記冷媒循環回路に循環される冷媒としてHC系冷媒を用い、前記圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度を検出する吐出温度検出手段と、外気温を検出する外気温検出手段と、前記給湯用熱交換器に入水される入水温度を検出する入水温度検出手段と、前記給湯用熱交換器を通過することで熱交換加熱されて出湯される湯の温度を検出する出湯温度検出手段と、前記圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度と、前記給湯用熱交換器から出湯される湯の出湯温度との間の温度差であって、前記外気温検出手段により検出される検出外気温と、前記入水温度検出手段により検出される検出入水温度と、設定出湯温度とに対応する目標温度差を決定する目標温度差決定処理手段とを備えることとする。加えて、前記出湯温度検出手段により検出される検出出湯温度が前記設定出湯温度になるように、前記圧縮機の作動制御量を変更制御する第1制御手段と、前記吐出温度検出手段により検出される検出吐出温度と、前記検出出湯温度との間の温度差が前記目標温度差決定処理手段により決定された目標温度差になるように、前記減圧手段の作動制御量を変更制御する第2制御手段とを備える。そして、前記第1制御手段により前記圧縮機の作動制御量を変更制御し、次に、その変更制御した作動制御量で前記圧縮機の作動を一定に維持した状態で、前記第2制御手段により前記減圧手段の作動制御量を変更制御する構成とした(請求項)。
【0008】
発明の場合、第1制御手段による変更制御によって、給湯用熱交換器において水との熱交換により冷媒が凝縮して相変化を生じるような冷凍サイクルが冷媒循環回路において実行されたとしても、給湯用熱交換器での熱交換加熱を経た出湯が設定出湯温度になるように温度制御することが可能になる。その上に、第2制御手段による目標温度差に基づいた変更制御によって、前記の如き相変化して潜熱領域での熱を熱交換に利用する冷凍サイクルが前記冷媒循環回路において実行された場合であっても、特に圧縮機の作動に伴うエネルギーを無駄に消費することなくエネルギー消費の観点から最適化を図り得ることになる。特に、給湯用熱交換器での水との熱交換によって凝縮して相変化することになるHC系冷媒をヒートポンプ給湯機の冷媒として採用しても、前記の如く精度良い出湯温度制御と共に、エネルギー消費効率の最適化をも図り得ることになる。又、給湯用熱交換器での熱交換により凝縮する冷媒の凝縮温度を凝縮温度検出手段により検出してその検出凝縮温度が前記設定出湯温度に基づいて決定される目標凝縮温度になるように圧縮機の作動制御量を変更制御するよう第1制御手段を構成した場合と比べ、凝縮温度検出手段を省略することが可能となり、部品点数やコストの削減化が図られる。
【0009】
以上の本発明における目標温度差決定処理手段として、前記目標温度差を、圧縮機の作動量に対し前記冷媒循環回路側におけるエネルギー消費効率が最大(成績係数:COPが最大)となる前記温度差の値として決定する構成とすることができる(請求項)。このようにすることで、前記第2制御手段による変更制御によって、確実にエネルギー消費効率を最適にした運転を実行させることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上、説明したように、本発明のヒートポンプ給湯機によれば、第1制御手段による変更制御によって、給湯用熱交換器において水との熱交換により冷媒が凝縮して相変化を生じるような冷凍サイクルが冷媒循環回路において実行されたとしても、給湯用熱交換器での熱交換加熱を経た出湯が設定出湯温度になるように温度制御することができるようになる。その上に、第2制御手段による目標温度差に基づいた変更制御によって、前記の如き相変化して潜熱領域での熱を熱交換に利用する冷凍サイクルが前記冷媒循環回路において実行された場合であっても、特に圧縮機の作動に伴うエネルギーを無駄に消費することなくエネルギー消費の観点から最適化を図ることができるようになる。特に、給湯用熱交換器での水との熱交換によって凝縮して相変化することになるHC系冷媒をヒートポンプ給湯機の冷媒として採用しても、前記の如く精度良い出湯温度制御と共に、エネルギー消費効率の最適化をも図ることができるようになる。又、給湯用熱交換器での熱交換により凝縮する冷媒の凝縮温度を凝縮温度検出手段により検出してその検出凝縮温度が前記設定出湯温度に基づいて決定される目標凝縮温度になるように圧縮機の作動制御量を変更制御するよう第1制御手段を構成した場合と比べ、凝縮温度検出手段を省略することができ、部品点数やコストの削減化を図ることができる。
【0013】
特に、請求項によれば、目標温度差として、圧縮機の作動量に対し冷媒循環回路側における出力熱量が最大となる温度差の値を決定することで、第2制御手段による変更制御によって、確実にエネルギー消費効率を最適化した運転を実行することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るヒートポンプ給湯機の模式図である。
図2図1のヒートポンプ給湯機を用いた参考形態の制御ブロック図である。
図3】ある外気温・入水温度・設定出湯温度の組み合わせ条件下で、圧縮機の作動回転数を一定に維持した状態で膨張弁開度を変更した場合の吐出温度,出湯温度及び凝縮温度の変化について試験した結果の一例を示す関係図である。
図4図3のものと同じ外気温・入水温度・設定出湯温度の組み合わせ条件下で、圧縮機の作動回転数を一定に維持した状態で膨張弁開度を変更した場合の出力熱量及びそのときのCOP(成績係数)の変化について試験・演算した結果の一例を示す関係図である。
図5図2の出湯温度制御に係る制御フローチャートである。
図6図1のヒートポンプ給湯機を用いた施形態の制御ブロック図である。
図7施形態で用いるテーブルを説明するための図3相当図である。
図8図6の出湯温度制御に係る制御フローチャートである。
図9】給湯用熱交換器に対する入水流量を変更していった場合の吐出温度と凝縮温度との変化について試験した結果の一例を示す関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るヒートポンプ給湯機を示す。このヒートポンプ給湯機は、HC系冷媒(例えばプロパン;以下、単に「冷媒」という)を用いた冷媒循環回路1と給湯回路2とを組み合わせたものであり、冷凍サイクルを利用して給湯回路2の水を熱交換加熱し得るようになっている。冷媒循環回路1は圧縮機11と、給湯用熱交換器(凝縮機)12と、減圧手段としての膨張弁13と、熱源用熱交換器(蒸発機)14とを冷媒循環配管15で順に接続したものである。又、給湯回路2は、貯湯タンク21と、貯湯タンク21内に貯留された湯水を前記給湯用熱交換器との間で循環させる水循環配管22と、貯湯タンク21の底部から水を前記給湯用熱交換器12へ圧送し、加熱後に給湯用熱交換器12から貯湯タンク21の頂部へと導く給水ポンプ23とを備えて構成されている。そして、これら冷媒循環回路1と給湯回路2とがコントローラ3により作動制御されて、給湯用熱交換器12において水がリモコン(図示省略)に入力設定された設定出湯温度に加熱されて貯湯タンク21に貯湯されるようになっている。
【0019】
圧縮機11は電動モータにより作動され、その回転数を作動制御量としてコントローラ3により作動制御されるようになっている。回転数は、コントローラ3から与える運転周波数を変更することで変更制御される。より高圧に圧縮するには回転数を上げ、より低圧にするには回転数を下げることになる。この圧縮機11で圧縮されることで高温気相状態の冷媒が圧縮機11から冷媒循環配管15に吐出され、その吐出温度が吐出温度センサ16により検出されて検出吐出温度がコントローラ3に出力されることになる。ここで、本実施形態ではHC系冷媒を用いているため、CO2冷媒を用いた場合よりも大幅に低い圧縮能力のもので圧縮機11を構成することができる。
【0020】
給湯用熱交換器12は、冷媒循環配管15の一部が内部に通される一方、逆方向から水循環配管22の一部が内部に通されて、両者間で熱交換するようになっている。すなわち、冷媒循環配管15に圧縮機11から吐出された高温気相状態の冷媒と、給水ポンプ23により貯湯タンク21の底部から供給された水とが熱交換され、水が熱交換加熱により湯となり、その熱交換により熱が奪われた冷媒は凝縮して液相に相変化する。この相変化のときの凝縮温度が凝縮温度センサ17により検出され、この検出凝縮温度がコントローラ3に出力されることになる。この凝縮温度センサ17による凝縮温度の検出は、給湯用熱交換器12における熱交換過程の中間位置での冷媒の温度を検出するものである。
【0021】
膨張弁13は給湯用熱交換器12で液相状態になった冷媒を減圧するものである。この膨張弁13は、その開度を作動制御量としてコントローラ3により作動制御される。
【0022】
熱源用熱交換器14は、その回転作動により外気を送風するファン14aを備え、この外気と、膨張弁13により減圧された冷媒とを熱交換させることで、冷媒を蒸発させて気相状態に変換するようになっている。この気相状態になった冷媒が再び前記の圧縮機11において圧縮されて高温気相状態になる。
【0023】
一方、給湯回路2では、給水ポンプ23の作動により貯湯タンク21内の水が給湯用熱交換器12に圧送される際に、給湯用熱交換器12の入口前で入水温度センサ24により熱交換加熱前の入水温度が検出され、この検出入水温度がコントローラ3に出力されるようになっている。又、給湯用熱交換器12を通過することで熱交換加熱されて出湯した際に、給湯用熱交換器12の出口側で出湯温度センサ25により出湯温度が検出され、この検出出湯温度がコントローラ3に出力されるようになっている。併せて、外気温が外気温センサ26により検出されて、コントローラ3に出力されるようになっている。給湯用熱交換器12で加熱された湯は貯湯タンク21の頂部側に戻されて貯留され、以後の給湯に利用されることになる。給湯により貯湯タンク21内の湯水量が減れば、その分だけ給水されるようになっている。
【0024】
以上のヒートポンプ給湯機の作動制御は、MPUやメモリ等を備えたコントローラ3により実行されるようになっている。コントローラ3は、設定出湯温度を目標温度として給湯用熱交換器12により給湯回路2側の水を設定出湯温度まで加熱するように制御する出湯温度制御手段31と、その制御に用いる目標温度差を決定する目標温度差決定処理手段32と、目標温度差等を決定するために用いる目標値テーブル331やFF値(フィードフォワード制御値)テーブル332等が予め記憶設定された記憶手段33とを備えている。
【0025】
参考形態における湯温度制御手段31は、第1制御手段としての圧縮機制御部311と、第2制御手段としての膨張弁制御部312とを備えている。圧縮機制御部311は検出凝縮温度が設定給湯温度に基づいて決定される目標凝縮温度になるように圧縮機11の回転数を変更制御する一方、膨張弁制御部312は圧縮機11の回転数を一定に維持した状態で検出吐出温度と検出凝縮温度との温度差が目標温度差決定処理手段32により決定される目標温度差になるように膨張弁13の開度を変更制御するようになっている。
【0026】
目標温度差決定処理手段32は、現在の運転時点での外気温センサ26からの検出外気温と、入水温度センサ24からの検出入水温度と、設定出湯温度との組み合わせにおける圧縮機11からの吐出温度と給湯用熱交換器12での凝縮温度との温度差であって、エネルギー消費効率が最大(成績係数:COPが最大)となる当該温度差を、目標温度差として決定するようになっている。この決定処理は、前記の検出外気温、検出入水温度及び設定出湯温度の組み合わせに基づいて目標値テーブル331から目標温度差を割り出して決定するようになっている。目標値テーブル331には、外気温、入水温度及び設定出湯温度を様々に組み合わせた条件下においてCOPが最大となる、吐出温度と凝縮温度との温度差の値が予め試験・演算により求められて定められている。
【0027】
このような目標値テーブル331における目標温度差の値は次のようにして得ればよい。図3は、ある特定の外気温、入水温度及び設定出湯温度(例えば65℃)の条件下で、圧縮機11の回転数を一定に維持した状態で膨張弁13の開度を変化させた場合に、吐出温度、出湯温度及び凝縮温度がどのように変化するかを試験により求めたものである。又、図4は、図3の場合と同じ外気温、入水温度及び設定出湯温度の条件下で、圧縮機11の回転数を一定に維持した状態で膨張弁13の開度を変化させた場合に、出力熱量がどのように変化するかを試験に求め、その際のCOPを演算により求めたものである。ここで、図4を見ると、膨張弁開度が90ステップの状態で出力熱量が最大となってCOPも最大値を示している。そこで、膨張弁開度が90ステップの状態における吐出温度〜凝縮温度の温度差Dgを図3から読み取ると、ほぼ25℃であることが得られる。このようにして、前記のある特定の外気温、入水温度及び設定出湯温度(例えば65℃)の条件下においてCOPが最大となる吐出温度〜凝縮温度間の温度差Dgの値は25℃であることが得られることになる。従って、前記の特定の外気温、入水温度及び設定出湯温度(例えば65℃)の条件下であれば、25℃を吐出温度〜凝縮温度間の目標温度差Dgに設定して、この目標温度差Dgになるように膨張弁13の開度を調整制御することで、最適エネルギー消費効率を実現しつつ、圧縮機制御部311による制御とも相俟って設定出湯温度への熱交換加熱を精度よく行うことができるようになる。そして、このような目標温度差Dgの値について、種々の外気温(例えば0℃〜35℃)、種々の入水温度(例えば5℃〜25℃)及び種々の設定出湯温度(例えば60℃〜80℃)の組み合わせ条件において試験により求め、求めた多数の目標温度差Dgを対応する組み合わせ条件との関係テーブルにして前記目標値テーブル331に設定するのである。
【0028】
又、FF値テーブル332は、圧縮機11の回転数と膨張弁13の開度とについての運転開始時の制御量を、それぞれFF値として予め定めて設定したものである。このFF値も、外気温、入水温度及び設定出湯温度の組み合わせ条件との関係において予め定められている。従って、運転開始時には、その時の検出外気温、検出入水温度及び設定出湯温度に基づいて、該当するFF値を割り出して運転開始時の制御量として設定することになる。
【0029】
以下、図5のフローチャートを参照しつつ、出湯温度制御について説明する。まず、図示省略のリモコン等に設定入力された設定出湯温度と、検出入水温度と、検出外気温とに基づいてFF値テーブル332から対応する圧縮機11の回転数FF値及び膨張弁13の開度FF値を決定すると共に、同様に設定出湯温度と、検出入水温度と、検出外気温とに基づいて目標値テーブル331から対応する、吐出温度と凝縮温度との目標温度差を決定する(ステップS1)。又、設定出湯温度に基づいて目標凝縮温度を決定する(ステップS2)。この目標凝縮温度の決定も予め設定出湯温度と目標凝縮温度との関係を定めたテーブルから割り出して決定するようになっている。すなわち、凝縮温度センサ17の位置での冷媒の凝縮温度が何度であれば、給湯用熱交換器12の出口から出る湯の温度が設定出湯温度になるかについて、予め試験又は演算により求め、その凝縮温度と設定出湯温度との関係を定めたテーブルが予め記憶設定されている。
【0030】
次に、前記の回転数FF値により圧縮機11を、開度FF値により膨張弁13をそれぞれ作動開始させて運転を開始させる(ステップS3)。そして、圧縮機11の回転数(作動制御量)を、検出凝縮温度が目標凝縮温度になるように変更制御する。すなわち、検出凝縮温度が目標凝縮温度よりも低ければ回転数を高くし、逆に高ければ回転数を低くして、検出凝縮温度が目標凝縮温度に合致することになるように回転数を調整する(ステップS4)。そして、そのときの回転数を一定に維持した状態で圧縮機11から吐出される冷媒の検出吐出温度と検出凝縮温度との温度差を演算し、その温度差の値が目標温度差になるように膨張弁13の開度を変更制御する(ステップS5)。すなわち、実際の温度差が目標温度差よりも大きければ膨張弁13の開度を開き、逆に小さければ膨張弁13の開度を閉じる側に絞る。これにより、圧縮機11から吐出される冷媒の吐出温度と、給湯用熱交換器12での凝縮温度との温度差が目標温度差に維持されるようにする。
【0031】
そして、以上のステップS4,S5を停止信号(例えば運転スイッチのOFF操作信号)が出力されるまで繰り返し(ステップS6)、停止信号が出力されれば制御を終了する。
【0032】
以上の出湯温度制御によれば、圧縮機11の回転数を、検出凝縮温度が目標凝縮温度になるように変更制御しているため(ステップS4)、水との熱交換により気相から気液相、気液相から液層に相変化するHC系冷媒を用いて冷凍サイクルを構成したとしても、給湯用熱交換器12での熱交換加熱による出湯温度を設定出湯温度になるように温度制御することができる。その上に、圧縮機11から吐出される冷媒の検出吐出温度と検出凝縮温度との温度差の値が目標温度差になるように膨張弁13の開度を変更制御するようにしているため(ステップS5)、前記の如き相変化して潜熱領域での熱を熱交換に利用するHC系冷媒を用いた場合であっても、COPを最大にできるようになる。又、ステップS4及びS5の処理を繰り返すことで、圧縮機11の回転数も頻繁に変更されることなくほぼ一定値に収束するようになり、特に夜間運転時に圧縮機11の作動騒音の発生を低減させることができるようになる。
【0033】
施形態>
図6施形態に係るコントローラ3aを示す。この施形態は参考形態の制御で用いていた凝縮温度に代えて出湯温度を用いた点でのみ、参考形態と異なるものである。それ以外の構成については参考形態と同じであるため、参考形態と同じ構成については参考形態と同じ符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0034】
すなわち、施形態の出湯温度制御手段31aを構成する第1制御手段としての圧縮機制御部311aは、検出出湯温度が設定給湯温度になるように圧縮機11の回転数を変更制御する一方、第2制御手段としての膨張弁制御部312aは圧縮機11の回転数を一定に維持した状態で検出吐出温度と検出出湯温度との温度差が目標温度差決定処理手段32aにより決定される目標温度差になるように膨張弁13の開度を変更制御するようになっている。
【0035】
このように参考形態における凝縮温度に代えて出湯温度を用いることができる理由は次の通りである。例えば図3に示した温度変化をみれば分かるように、圧縮機11の回転数を一定に維持した状態で膨張弁13の開度を変化させた場合、給湯用熱交換器12内の凝縮温度と、水循環配管22に出湯される出湯温度とはほぼ5℃程度の差を保ちながら常に比例する関係を維持することになる。従って、参考形態での制御で用いていた凝縮温度に代えて出湯温度を用いたとしても、参考形態と同様の作用効果を得ることができると考えられる。
【0036】
目標温度差決定処理手段32aは、現在の運転時点での外気温センサ26からの検出外気温、入水温度センサ24からの検出入水温度及び設定出湯温度の組み合わせにおける圧縮機11からの吐出温度と給湯用熱交換器12からの出湯温度との温度差であって、エネルギー消費効率が最大(成績係数:COPが最大)となる当該温度差を、目標温度差として決定するようになっている。この決定処理は、前記の検出外気温、検出入水温度及び設定出湯温度の組み合わせに基づいて目標値テーブル331aから目標温度差を割り出して決定するようになっている。目標値テーブル331aには、外気温、入水温度及び設定出湯温度を様々に組み合わせた条件下においてCOPが最大となる、吐出温度と出湯温度との温度差の値を、参考形態と同様に予め試験・演算により求めて定めればよい。
【0037】
このような目標値テーブル331aにおける目標温度差の値は次のようにして得る。まず、参考形態で説明したと同じ条件で膨張弁13の開度を変化させた場合の吐出温度、出湯温度、凝縮温度の変化を測定して図3の試験結果を得る。同様条件での出力熱量及びそのときのCOPの変化の試験結果として図4を得て、COP最大となる膨張弁13の開度(この条件下では90ステップ)を得る。そして、そのCOP最大の膨張弁開度における吐出温度〜出湯温度間の温度差Dy(図7参照)を得る。かかる温度差Dyについて、参考形態で説明したと同様に、種々の外気温、種々の入水温度及び種々の設定出湯温度の組み合わせ条件において試験により求め、求めた多数の目標温度差Dyを対応する組み合わせ条件との関係テーブルにして前記目標値テーブル331aに設定するのである。なお、FF値テーブル332は、参考形態で説明したものと同じものを用いる。
【0038】
以下、図8のフローチャートを参照しつつ、施形態の出湯温度制御について説明する。まず、図示省略のリモコン等に設定入力された設定出湯温度と、検出入水温度と、検出外気温とに基づいてFF値テーブル332から対応する圧縮機11の回転数FF値及び膨張弁13の開度FF値を決定すると共に、同様に設定出湯温度と、検出入水温度と、検出外気温とに基づいて目標値テーブル331aから対応する、吐出温度と出湯温度との目標温度差を決定する(ステップS11)。
【0039】
次に、前記の回転数FF値により圧縮機11を、開度FF値により膨張弁13をそれぞれ作動開始させて運転を開始させる(ステップS12)。そして、圧縮機11の回転数を、検出出湯温度が設定出湯温度になるように変更制御する。すなわち、検出出湯温度が目標出湯温度よりも低ければ回転数を高くし、逆に高ければ回転数を低くして、検出出湯温度が設定出湯温度に合致することになるように回転数を調整する(ステップS13)。そして、そのときの回転数を一定に維持した状態で圧縮機11から吐出される冷媒の検出吐出温度と、給湯用熱交換器12から出湯される湯の検出出湯温度との温度差を演算し、その温度差の値が目標温度差になるように膨張弁13の開度を変更制御する(ステップS14)。すなわち、実際の温度差が目標温度差よりも大きければ膨張弁13の開度を開き、逆に小さければ膨張弁13の開度を閉じる側に絞る。この際、圧縮機11の回転数は一定に維持させる。これにより、圧縮機11から吐出される冷媒の検出吐出温度と、給湯用熱交換器12から出湯される湯の検出出湯温度との温度差が目標温度差に維持されるようにする。
【0040】
そして、以上のステップS13,S14を停止信号(例えば運転スイッチのOFF操作信号)が出力されるまで繰り返し(ステップS15)、停止信号が出力されれば制御を終了する。
【0041】
この施形態の場合にも、圧縮機11の回転数を、検出出湯温度が設定出湯温度になるように変更制御しているため(ステップS13)、参考形態と同様に、水との熱交換により気相から気液相、気液相から液層に相変化するHC系冷媒を用いて冷凍サイクルを構成したとしても、給湯用熱交換器12での熱交換加熱による出湯温度を設定出湯温度になるように温度制御することができる。その上に、圧縮機11から吐出される冷媒の検出吐出温度と給湯回路2の側の検出出湯温度との温度差の値が目標温度差になるように膨張弁13の開度を変更制御するようにしているため(ステップS14)、参考形態と同様に、前記の如き相変化して潜熱領域での熱を熱交換に利用するHC系冷媒を用いた場合であっても、COPを最大にできるようになる。又、ステップS13及びS14の処理を繰り返すことで、圧縮機11の回転数も頻繁に変更されることなくほぼ一定値に収束するようになり、特に夜間運転時に圧縮機11の作動騒音の発生を低減させることができるようになる。さらに、実施形態の場合、参考形態では必要となる凝縮温度センサ17を省略することができ、部品点数削減やコスト低減化をも図ることができるようになる。
【0042】
<他の参考形態>
なお、上記参考形態又は上記実施形態では、第1制御手段である圧縮機制御部311,311aにより圧縮機11を制御対象にしてその回転数を変更制御しているが、これに限らず、第1制御手段として、圧縮機11に代えて給湯回路2の側の給水ポンプ23(例えばポンプ駆動モータの回転数)を制御対象にして給湯用熱交換器12に対する入水流量を変更制御する構成のものを他の参考形態として採用するようにしてもよい。この場合は、給水ポンプ23の作動を変更制御することで出湯管理し得るため、圧縮機11の作動制御量(回転数)は一定に維持しておく。
【0043】
すなわち、圧縮機制御部311に代えて給水ポンプ制御部を第1制御手段とし、この給水ポンプ制御部により、検出凝縮温度が、設定給湯温度に基づいて決定される目標凝縮温度になるように給水ポンプ23の作動制御量(例えば回転数)を変更制御して給湯用熱交換器12に対する入水流量を変更制御する。この場合の図5のフローチャートでは、そのステップS4において、給水ポンプ23の回転数を、検出凝縮温度が目標凝縮温度になるように変更制御すればよい。すなわち、検出凝縮温度が目標凝縮温度よりも低ければ入水流量が少なくなるようにし(給水ポンプ23の回転数を低くし)、逆に高ければ入水流量が多くなるようにして(回転数を高くして)、検出凝縮温度が目標凝縮温度に合致することになるように給湯用熱交換器12への入水流量を調整する。
【0044】
又、圧縮機制御部311aに代えて給水ポンプ制御部を第1制御手段とし、この給水ポンプ制御部により、検出出湯温度が設定給湯温度になるように給水ポンプ23の作動制御量(回転数)を変更制御して給湯用熱交換器12に対する入水流量を変更制御すればよい。そして、図8のフローチャートでは、そのステップS13において、給水ポンプ23の回転数を、検出出湯温度が設定出湯温度になるように変更制御すればよい。すなわち、検出出湯温度が設定出湯温度よりも低ければ入水流量が少なくなるようにし(給水ポンプ23の回転数を低くし)、逆に高ければ入水流量が多くなるようにして(回転数を高くして)、検出出湯温度が設定出湯温度に合致することになるように給湯用熱交換器12への入水流量を調整する。
【0045】
以上のように制御対象を圧縮機11から給水ポンプ23に変更した場合、給水ポンプ23の作動を変更制御している間は圧縮機11の作動制御量(回転数)を一定に維持することができ、圧縮機11の回転数変更に伴う騒音発生を解消することができる。この点は、特に周囲が静かになる夜間において有用となる。このような給水ポンプ11の作動を変更制御することで圧縮機11の作動を変更制御するのと同様の作用効果が得られる理由は次の通りである。すなわち、図9は、圧縮機11の回転数を一定に維持した状態で給水ポンプ23の回転数を変化させて給湯用熱交換器12に対する入水流量を変更した場合の圧縮機11からの吐出温度の変化と、給湯用熱交換器12における凝縮温度の変化とを試験により測定したものである。この図9の試験結果によると、入水流量を大小変化させることで、圧縮機11の回転数を一定に維持したとしても、圧縮機11からの冷媒の吐出温度や給湯用熱交換器12における冷媒の凝縮温度をほぼ線形に変更することができる。従って、圧縮機11に代えて給水ポンプ23を制御対象にして給湯用熱交換器12に対する入水流量を変更制御することによっても、出湯温度の制御を行うことができる。
【0046】
<他の実施形態>
なお、上記実施形態ではHC系冷媒としてプロパンを用いているが、この他にHC系冷媒として例えばイソブタンやプロピレンを用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 冷媒循環回路
2 給湯回路
11 圧縮機
12 給湯用熱交換器
13 膨張弁(減圧手段)
14 熱源用熱交換器
15 冷媒循環配管
16 吐出温度センサ(吐出温度検出手段)
3 給水ポンプ
24 入水温度センサ(入水温度検出手段)
25 出湯温度センサ(出湯温度検出手段)
26 外気温センサ(外気温検出手段)
2a 目標温度差決定処理手段
11a 圧縮機制御部(第1制御手段)
12a 膨張弁制御部(第2制御手段)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9